とっとこハム太郎5なのだ!

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521かぶるくんの秘密<1>
トラハムくん「ひどい…みんな溺れちまったなんて……おーい!
マフラーちゃーん!リボンちゃーん!タイショー!太郎〜!ウシ〜!……」
トラハムちゃん「のっぽく〜ん!!」
かぶるくん「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!パンダくんひどいぞぉ〜!
僕をおいて逝かないでほしいんだぞぉ〜!」
トンガリくん「…………」
ハムたちの絶叫の中、黙ってギターを弾いているトンガリくん。

ハムちゃん図の地下ハウスは水没していた。数日前からの雨が原因で
起こった洪水を防ぎきれなかったのだ。浸水の影響で入り口は崩れ去り、
大小様々な水溜りが出来ている。
雨上がりに集まった4匹のハムは、生存するハムを探して必死で周辺を探っていた。
空は厚い雲に覆われ、いつまた雨が振り出してもおかしくない状態だ。

トラハムくん「だめだ…誰もみつからない」
トラハムちゃん「…助かったのは私達だけなの?」
トラハムくん「ああ、多分。この様子じゃ地面の下は…」
トラハムちゃん「そんな…」
かぶるくん「パンダくん…ぼくときみの子供は一体どうなるんだぞぉ〜っ!!」

トラハムくん「…子供だって!?」
トラハムちゃん「まさか、かぶるくんって!?」
トラハムくん「パンダくんとかぶるくんが、そんな関係とは…」
トラハムちゃん「冗談よね?誰の子供か知らないけど…趣味悪いよ」
かぶるくん「冗談じゃないんだぞぉ」
涙を浮かべたその目を見たトラハムくんは、かぶるくんのそばに座り込んだ。
522かぶるくんの秘密<2>:2001/06/01(金) 18:51
トラハムくん「はぁ、もうくたくただぜ…わけがわかんねえよ…なにがなんだか!」
トラハムちゃん「どうしたのよお兄ちゃん!みんなを探しましょ!…ひょっとして
みんなが見つからない方が、お兄ちゃんはいいわけ?」
トラハムくん「俺はほっといてくれ妹…どうせハムちゃん図が無事でも
俺に明るい日なんてこないんだ…今日だって、またお呼びがかからなかったしな」
トラハムちゃん「あきれた。後ろ向きのお兄ちゃんって、あやしい趣味の
かぶるくんととってもお似合いだわ。もう好きにしてよね!わたしはもう少し
遠くまで探してみるから。それじゃ…」

かぶるくん「トラハムちゃん…怒ってるぞぉ」
トラハムくん「気にしないでくれ。あいつ、気の強さだけはハム一倍なんだ」
かぶるくん「何もかもめちゃくちゃだぞぉ〜。隠していたって
しょうがないんだぞぉ〜」
トラハムくん「さっきの話の事か…作り話なんだろ子供なんて?
だいたいオス同士でくっついて子供なんて信じられないぜ…」
523かぶるくんの秘密<3>:2001/06/01(金) 20:03
かぶるくん「ううん……僕は、パンダくんとずっと前から付き合ってたんだぞぉ〜。
ハムちゃん図の付き合いに呼ばれなかった時なんかは、住まいの工務店で
いつも一緒に遊んでいたんだぞぉ〜…でも…」

トラハムくん「でも?」
かぶるくん「ある日、庭で遊んでいるときにいきなりパンダくんが
目の色を変えて僕に飛びかかってきたんだぞぉ。そして押し倒したあとで
僕の上に覆い被さってきたんだぞぉ〜…」
トラハムくん「な、なんて奴だ!男の風上にも置けないぜ」
かぶるくん「それからだぞぉ。パンダくんの態度がどことなく変わり始めたんだぞぉ。
地下ハウスではなんとなく僕を避けるようになったし、ふたりきりで遊んでいる時は
ぼくを「ちゃん」付けで呼ぶようになったんだぞぉ」
トラハムくん「か、かぶるくん!?もしや…はっ、最近君のお腹が膨れてるように
見えたのはそのせいなのか…?」
かぶるくん「パンダくんに押し倒されるまで知らなかったんだぞぉ…
ぼ…………ぼく、ほんとは………メスハムなんだぞぉ」

トラハムくん「!!!!!!!!ガーン!!!!!!!!!」

かぶるくん「きっとパパとママは、ぼくのことを去勢済みのオスハムと勘違いして
いたんだぞぉ〜。それで僕はオスハムとして今まで育てられてきたんだぞぉ」
トラハムくん「俺にとって、一生の不覚だぜ…まさかメスハムだったなんて…」
かぶるくん「ぼく、じゃなかったわたし…もうじきパンダくんの子供が
産まれることになってるんだぞぉ…じゃなかった…なっているん、です!」
トラハムくん「パンダくんが、俺より進んでたとは…おめでとう。
けど知ってしまった以上、俺も頭のどっかで君の事、意識してしまうんだろうな…」
かぶるくん「そんなぁ…ほんとはパンダくんだけじゃないぞぉ、トラハムくんにも
いつものままでいてほしいんだぞぉ!…じゃなかった…いてほしい、です!」

トラハムくん「言葉遣いだけど、無理すんなよ。まあどっちにしても、
俺にとってかぶるくんはかぶるくんでしかないんだし…今までどおりの仲で
楽しく遊んでいられりゃ、それでいいじゃん…」

かぶるくん「うん。ぼく、なんだかうれしいぞぉ…」
トラハムくん「さっきは勝手に落ち込んじまったけど俺、今じゃ君の彼氏、
探さなきゃならない気がする」
かぶるくん「よ〜し、ぼくもあきらめないぞぉ〜」
524かぶるくんの秘密<4>:2001/06/01(金) 20:23
そのとき、遠くから犬の鳴き声が聞こえた。
トラハムくん「あっ…太郎のとこのどんちゃんだ」
かぶるくん「もしかして!?」
ふたりの前に駆け寄ってくるどんちゃん。
どんちゃん「うぅ〜」
かぶるくん「なんだって?公太郎君達が?」
トラハムくん「おお、そうか!すぐ妹を呼ばなきゃ」
どんちゃんの耳につかまったトラハムくんとかぶるくん。
トラハムくん「お〜い! 妹、太郎達が!!」
トラハムちゃん「ハム太郎君たちがいたのかしら。はやく行かなくちゃ!
トンガリくんはどうするの?」
トンガリくん「俺はいい。心が旅を求める時まで、俺はここにいる。
雨に消えたハムスター達の魂が安らぐその日がくるまで…」
トラハムちゃん「あっそう。それじゃあまたね!」

トラハムちゃんもどんちゃんに飛び乗った。
525かぶるくんの秘密<5>:2001/06/01(金) 20:31
トラハムくん、トラハムちゃん、かぶるくんを乗せたどんちゃんは、
全速力で春名家の庭へ向かった。犬小屋の前で停止するどんちゃん。
降り立った3匹が犬小屋の日陰の方向を見ると、
そこにはハムスターが掘ったとおぼしきトンネルの入り口が見えた。

トラハムちゃん「あの穴は!無事な友達がいるのね。ありがとうどんちゃん…
私達のことも気にかけてくれたのね…」
トラハムくん「さすが太郎んとこの名犬だぜ」
どんちゃん「わぅ〜」
どんちゃんは3匹に尻尾を振ると、犬小屋に入りこんだ。
トンネルを降りた3匹の前には、短い一本道が続いていた。
ドアを見つけるやいなや駆け出すかぶるくん。
かぶる「パンダく〜〜〜ん!!」
ドアを開けると、そこにいたのは地下ハウスで見慣れたハムちゃん図の一同だった。
ねてるくん「むにゃむにゃ…誰だい大きな声なんかだして…」
大将「おお、お前たち無事だったか!連絡しなくて悪かったぜ」
公太郎「ここはタイショーくんの新しい家なのだ。さっきぼくたちで穴を掘って作ったのだ」
パンダくん「も〜う疲れてへとへとだヨ〜。地下ハウスから逃げるのにも
ひと苦労したんダ〜」
かぶるくん「パンダくん…無事で良かったぞぉ〜!!」
そう言うが早いが、かぶるくんはパンダくんに抱きついた。
パンダくん「ウワ〜〜苦しいヨかぶるくん〜」

のっぽくん「はぁ…当面の間、ここを集会場にする事が決定しています。
これから集会の時はここに来てくださいね」
のっぽくんはかぶるくんとトラハム兄妹を見まわしながら告げた。
トラハムちゃん「…あなたも、無事で何よりだわ…」
のっぽ「ぼくもですよ、トラハムちゃん」
526かぶるくんの秘密<6>:2001/06/01(金) 21:00
トラハムくん「(まったく、憂うつだぜ…俺って、全然、イケてないんだな…)」
思わず肩を落とすトラハムくん。彼がふと誰かに肩を叩かれて振りかえると、
そこにはかぶるくんの姿があった。
トラハムくん「かぶるくん…」
かぶるくん「パンダくんだけど、家具の材料探しに出かけたぞぉ〜」
トラハムくん「そっか。パンダくんも無事でよかったな…」
かぶるくん「トラハムくん、さっきは話をきいてくれてありがとうだぞぉ〜。
ぼく、トラハムくんのやさしいとこ気に入ってるぞぉ………好きだぞぉ」
少し頬を赤らめるかぶるくんに、トラハムくんは動揺を隠せなかった。
トラハムくん「お、おいおい…俺、言い寄られるの始めてだけど、こんなのって…」
かぶるくん「なんか、トラハムくんらしくないぞぉ」
トラハムくん「い、いつもの俺と変わりないさ!な?そうだろ妹?」
トラハムちゃん「へ?」
しかしのっぽくんとの話に夢中のトラハムちゃんは、2匹のやりとりに全く興味を
抱いていなかった。
トラハムくん「ちぇ。妹、聞いちゃいねえ」
かぶるくん「パンダくんだけじゃなくて、君も大切な僕のなかまだぞぉ〜」
そしてトラハムくんにも抱きつくかぶるくん。
トラハムくん「うわっ!ちょっと、ほら、みんな見てるだろ!…」
まいどくん「どうも怪しいでんな〜かぶるはんとトラハムはん、パンダはんは」
めがねくん「私達の間柄のように、ですかね?」
まいどくん「んなわけあらへんやろ!このド阿呆が!」
マフラーちゃん「まいどくんなんだかむきになってない〜?」
ちび丸ちゃん「うっきゅ〜っ!」
大将「かぶるの奴にあんな趣味があったとはな」
公太郎「ぼくもおどろきなのだ」
大将「かぶるをウチに住まわせなくて正解だったぜ。あんなのに絡まれたら
たまったもんじゃねえ…第一俺様はリボンちゃん一筋なのによ〜」
リボンちゃん「うふふ…かぶるくんって不思議でちゅね」
こうしくん「大胆さなら…きっとじゃじゃハムちゃんにも負けませんねぇ〜。
でも相手が…」
リボンちゃん「なんだかたのしそうだし、いいんじゃないでちゅか?」
こうしくん「う〜ん…なんか不安なんですけど…」
かぶるくん「これからもず〜っとなかよしだぞぉ〜。くしくしくし、へかっ!!」
トラハムくん「とほほ…俺、完全に誤解されてるよ…かんべんしてくれ…へろん」

おしまい