とっとこハム太郎5なのだ!

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ハムちゃん図結成からまる一年が経過、ついに新ハム10匹の出演が
正式に発表された。その頃ハムちゃん図の内部ではある噂が飛び交い始めていた。
普段出番がなく、自己アピールに欠ける存在を会員から除名するというのだ。
遊び仲間に除名もなにもないと開き直るものも中にはいたが、
会員の大多数はこの噂を信じ、大将らに積極的な自己アピールを
日々続けて行くのだった。
そんなある日の事。遂にハムちゃん図全員にに召集令がかかった…
地下ハウスにて

公太郎「タイショーくん、リボンちゃんはおくれるみたいだけどそろそろ始めよう」
大将「そうだな…みんな聞いてくれ!」
向き合う一同。
大将「よく集まってくれた!…トンガリは欠席か…まあ仕方ねえや…
今日はおめえらに重大な発表があるんだが…」
のっぽ「ああ、除名処分の話ですか」
トラハム妹「のっぽくん!いくら噂になってるからって単刀直入が過ぎるわよ!!」
のっぽ「いいじゃありませんかトラハムちゃん。どうせこれは既に決められた
ことなんですから」
パンダ「除名処分?いったいなんのことだヨ〜」
かぶる「ぼくもそんなはなししらないぞぉ〜」
トラハム兄「俺は聞いた事あるけどなんかやな噂だな〜」
のっぽ「君達はのんき者ですね〜辞めさせられるのも知らないで」
トラハム妹「ちょっと!それどういうことよのっぽくん!
タイショーくん説明してよね!」

大将「おっ、おほん…まあ大筋はのっぽの言うとおりなんだが」
こうし「えっ??ほんとなんですかタイショーさん!!そんなことって!!」
大将「まあ落ち着けよ。少なくともメシに詳しいおめえじゃねえ事は確かだ」
こうし「へっ!?ああぁ〜〜〜よかったなぁ〜〜タイショーさんや公太郎さんと
遭えなくなると思うと夜も眠れなかったんですよ〜天にものぼる気分〜へろん〜♪」
こうしはそのまま眠りについた。

大将「やれやれこうしの奴…話に戻るか。最近俺様と公太郎で
メンバー増員対策について話し合ったんだが、結論として
現在のメンバーのうち数名を除名する事が決定したんだ。
それで今日はその発表日と言うわけだ…」
ざわめく一同。

まいど「ほんまでっかタイショーはん?まさかタイショーはんも除名タイショーに…」
大将「…………」
まいど「…なんやタイショーはん、いつもと様子が違いまっせ」
めがね「やな予感がしますねクワバラクワバラ…」
マフラー「いったいどうなっちゃうんだろ〜」
ちびまる「う〜うきゅ〜ぅ」

公太郎「タイショーくん、じらさないで除名リストを
読み上げてほしいのだ…相手によってはいい知らせかもしれないのだ…」
大将「おう。それじゃ、今から除名処分対象者を発表するぜ」

大将はそういうと一枚の紙切れを取り出した。
大将「まずは…ねてる」
ねてる「え、なに?なんかいった?よくきこえないよむにゃむにゃ…」
大将「そら、誰か叩き出せ!」
のっぽ「さっさと出てけ!食料ドロボーめ!!」
のっぽはそういって地下ハウスの玄関を開けるとねてるを蹴飛ばした。

のっぽ「やれやれ、部屋が片付きましたね」
公太郎「のっぽくん、あんたやっぱり鬼なのだ」
のっぽ「ふふ、誉め言葉として聞いておきましょう」
沈黙する一同。

大将「次は…トンガリ」
公太郎「トンガリくんは今日は来ていないのだ。だから僕がどこかで遭った時に
必ず伝えておくのだ」
まいど「言伝なんて吉報に限りまっせ…トンガリはん怒るでっしゃろ」
公太郎「そうなのかまいどくん?」

大将「気にすんな公太郎。続けるぜ…次は、パンダ、かぶる」

パンダ「ええぇ〜っ!そんなのないヨ〜」
かぶる「あんまりだぞぉ〜タイショーくん〜!」
大将「かぶる、おめえはただ突っ立ってるだけって事が多いからなぁ。
パンダ、おめえはいちいち俺様の気に障るようなことばっかりしやがって!
おめえら見てるといらいらするんだよ!!さっさと出てけ!」
パンダ・かぶる「…………」
大将「出てけってんだよ!!」
公太郎「これ以上タイショーくんを怒らせちゃだめなのだ!!」
黙って出て行くふたり。

大将「トラハム兄妹、悪いがおめえらも」
トラハム兄「そんな!あんまりだぜ…俺まだリボンちゃんもマフラーちゃんも
ものにしてないのに…」
トラハム妹「ひどいわよタイショーくん!確かに私達欠席が多いけど、入れ替え
だからって私達を辞めさせる事になんか意味があるっていうの?
のっぽくんも答えてよ!!」
のっぽ「知りませんね〜さあ出てってください〜」
トラハム兄「何すんだよのっぴ!おいコラタイショー!!俺は…」
トラハム妹「いいかげんにしてよのっぽく〜ん!!」
大将「……」
兄妹を追い出したのっぽ。
のっぽ「すっきりしましたね〜」
大将「それから…まいど、めがね、マフラーちゃん、ちびまる」
まいど「な、なんやて!?わいが何したっちゅうねん?」
めがね「そうですよ!わたしが一体何を?まいどくんはともかくとして」
まいど「コラめがねはん!んなときに足引っぱっとる場合かい!!」
マフラー「そうよふたりとも〜!こんな時に争ってなんかいられないわ〜」
めがね「マフラーちゃんの言う事じゃ仕方ありませんね〜」
まいど「はぁ〜、全くやれやれやな〜めがねはんも〜」
ちびまる「うきゅ!うきゅきゅ〜っ!!」

大将「すまねえがおめえらは、少しの間休んでもらいたいんだ。
新ハムの入会後、しばらくの間は混乱期に突入すると俺様たちは予測しているんだが、
統制が取れて落ち着いたら、おめえらにはまたここで活動を続けてほしいんだ」

めがね「えっ?除名処分じゃないと?」
大将「そういうことだ」
公太郎「説明がたりなくてごめんなのだ」
まいど「けどなんかうさんくさい話やな〜」
大将「ま・い・ど〜〜〜!!」
まいど「うっうわっ!わかりましたタイショーはん!意向に従いまっせ」
マフラー「しばらくおやすみかぁ。予定がとれたらタイショーくん必ずまた呼んでね」
大将「おう。まかせろ」

マフラー「…けどトラハムちゃんたち気の毒だわ〜」
ちびまる「うきゅ〜」
のっぽ「気の毒なんかじゃありませんよマフラーちゃん。君たちは
トラハムちゃんたちより有能で、個性的だからこうして仮に残れたんですよ」
マフラー「そうなのかしら…タイショーくん、やっぱり除名なんて考え直してよ」
大将「うーん…」
公太郎「わかったよマフラーちゃん。あとでタイショーくんと検討してみるのだ」

まいど「ほな、さいならタイショーはん」
めがね「またお会いしましょう〜」
マフラー「それじゃよろしくね公太郎君」
ちびまる「うきゅ〜」
MMボーイズとマフラー&ちびまるも立ち去った。

大将「おいのっぽ、知恵係としておめえは残すが、これでよかったと思うか?」
のっぽ「仕方がないと思います。10匹も増えるようでは地下ハウスが崩壊します。
僕も涙をのんでトラハムちゃんの除名に賛成しますよ。彼女の分まで僕は
ハムちゃん図の仕事を頑張りますよ…ううっ…」
公太郎「うそつけなのだのっぽくん…新しい彼女がほしいくせに」
のっぽ「ばれました?はっはっはっはっ…」
大将「のっぽ、おめえなぁ…ほんとに大丈夫かよ…
おいこうし、そろそろ起きろよ。リボンちゃんのお出ましだぞ」
こうし「うう〜ん」
目を覚ますこうし。
まもなくリボンちゃんが地下ハウスにやってきた。
リボン「遅くなりまちたわタイショーくん、公太郎君」
大将「おお、リボンちゃん!」
公太郎「待ってたのだリボンちゃん」
リボン「あら…今日はいつにも増して少ないメンバーでちゅね。
いったいどうなされまちたか?」
公太郎「リボンちゃん、実は…」
こうし「たった今、ハムちゃん図の除名処…」
大将「おいこうし!!」
こうしを抑えこむ大将。
こうし「もご、もご…」
リボン「どうしたんでちゅか?こうしくんは」
大将「い、いやぁ何でもないんだよ、な、なぁこうし」
こうし「うっ、んぐんぐ」
うなずいて見せるこうし。
リボン「…そういえば大事な話はどうなったんでちゅか?」
公太郎「たった今まで、作戦会議をしていたのだ。ハムちゃん図に新入りが10匹
入会するって話をしたところ、何匹かがハムちゃん図を辞めると言い出したのだ」
リボン「そうだったのでちゅか…それで辞めたハムスターは…」

その時、地上で大きな音が鳴り響いた。
大将「はっ!?いったい何の音だ?」
公太郎「ちょっとまつのだ!」
壁に耳を当てる公太郎。
公太郎「…この方角は…ハムちゃん図ランド!みんな行くのだ!!」
単独で飛び出す公太郎。
大将「おい、公太郎」
リボン「なにかがあったんでちゅわ。行きましょうみんな」
こうし「なんなんでしょ〜怖いな〜」
のっぽ「まさか…」

ハムちゃん図ランドに向かう5匹。
先回りした公太郎が見たものは、ハムちゃん図ランドをめちゃくちゃに破壊する
パンダ・かぶるとトラハム兄妹の姿だった。
後を追う仲間に叫ぶ公太郎。

公太郎「みんな大変なのだ!ハムちゃん図ランドが壊されているのだ!!」

リボン「そんな…パンダくん、かぶるくん、それにトラハム兄妹…
これはどういうことなのでちゅかタイショーくん、公太郎君!!」
大将「そ、それはだな…」
公太郎「ええと…」
こうし「リボンちゃんよく見てください!!あの4匹は
ハムちゃん図を辞めて今や鬼ハムスターになったんです」
のっぽ「そのとおり!」
公太郎「(小声で)のっぽくん、4匹もきっと君なんかに言われたくないのだ…」
大将「(小声で)こうし、恩に着るぜ」
こうし「(小声で)いやあ、ははは…」

リボン「やめてくだちゃい!パンダくん、かぶるくんにトラハム兄妹さん!」

トラハム兄「リボンちゃんの頼みだってもう聞くもんか!
地下ハウスでなかっただけ感謝するんだな!!」
パンダ「そうだヨ僕達をこけにするとこうなるんダ〜!!」
かぶる「絶対仲直りなんかしないんだぞぉ〜!!」
トラハム妹「のっぽくんなんか…のっぽくんなんかぁぁぁぁぁぁっ!!」

4匹はジェットコースターの乗り場に集まっていた。

リボン「おねがい!みんな、もうやめてくだちゃ〜い!!」
暴れる四匹に近づいて行くリボン。
大将「おいのっぽ!リボンちゃんをここから離せ」
のっぽ「了解」
背後から近づいてリボンを抱えあげるのっぽ。
リボン「あっ、何をするんでちゅか!はなしてくだちゃいのっぽくん!!」
のっぽ「危険ですから離れててください!」
リボン「はなしてよのっぽくんはなしてってばっ…うっ!!…(がくっ)」
のっぽ「手荒なまねをしてすみません、リボンちゃん」
のっぽは腹を殴り、リボンを気絶させた。
小さな丘の向こう側に逃げるのっぽとリボン。
大将「公太郎、こうし、行くぞ。ここでなめられちゃいけねえ」
ためらいつつもうなずく公太郎とこうし。
大将「いいか?あいつらが暴れている乗り場の
支柱をへし折るんだ。俺様の指示した3つの方向から同時に体当たりするんだ」
公太郎「…うん」
こうし「なんだか気がひけるけど…わかりました」
乗り場を囲うように3方向へ散る3匹。

パンダ「タイショーくんもう話し合いなんか応じないヨ」
かぶる「この勢いで地下ハウスも撃破だそぉ〜!!」

大将「よし今だ…あた〜〜〜〜〜っちゅ!!」
支柱の一本に体当たりする大将。
公太郎「たぁ〜〜〜〜〜〜っ!!」
こうし「えぇ〜〜〜〜〜いっ!!」
ほとんど同時に端の支柱に体当たりする公太郎とこうし。
たちまち崩れ落ちるジェットコースター乗り場。
トラハム兄「なんだとっ!?ていっ!!」
トラハム妹「それっ!!」
足場を失い落下するパンダとかぶる。
軽い身のこなしで脱出したトラハム兄妹は難なく地面に着地する。

トラハム兄「…どういうことだよ…俺達ごと倒そうなんて!」
トラハム妹「あっ…お兄ちゃん!」

一瞬の気を許したふたりの頭上に支柱と竹の破片が落下してきた。
トラハム兄妹「うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
落下する残骸は、兄妹の上にうずたかく積まれていった…

トラハム兄妹は瓦礫の闇の中で目を覚ました。
トラハム兄「あ、あれっ?俺達…生きてる?」
トラハム妹「お兄ちゃん!無事だったのね…ああっ!!」
間一髪、落下した残骸からふたりを守っていたのはパンダとかぶるだった。
二匹はトラハム兄妹に迫り来る瓦礫の山を必死で抑えている。
パンダ「ウウ…ふたりとも早く逃げて」
かぶる「もう持ちこたえられないぞぉ…」
トラハム兄「す、すまねえパンダ、かぶる!さあ妹…」
トラハム妹「…うん。ごめんね…パンダくん、かぶるくん!」
狭い抜け道をつたって逃げ出すトラハム兄妹。

かぶる「あんまりだぞぉ…こんな最期」
パンダ「ぼくも一緒だヨかぶるくん…」

瓦礫の山から抜け出たトラハム兄妹。
トラハム兄「パンダ!かぶる!待ってろ、今助けを呼ぶからな」
トラハム妹「急ごうよお兄ちゃん!!」
駆けつけた公太郎。
公太郎「ふたりともあぶないのだ!早くここから逃げるのだ!」
トラハム兄「でもあいつらががれきの中に!このまま放っておけるかよ!
大体お前ら、あんな真似しといてよくそんな事が言えるな!!」
トラハム妹「そうよ!なんとかしてよ公太郎君」
公太郎「なに言ってるのだ!遊園地を壊すほうが悪いのだ!!」

大将とこうしもやってきた。
大将「おめえら、辞めてからも迷惑かけんなよ…来い!」
トラハム兄を抱えあげ、猛然と走り出す大将。
トラハム兄「お、おいタイショー!なにするんだよ離せっ…」
公太郎とこうしはトラハム妹を抱えあげた。
こうし「ゆるしてくださいトラハムちゃん〜」
公太郎「仕方のないことなのだ!さあいこう、こうしくん」
こうし「はいっ!」
トラハム妹「離してよ二人とも!離してってばぁぁぁぁぁぁぁっっ!!」
公太郎たちも急いでその場を離れた。

ほとんど同時に、中心を失ったジェットコースターは崩れ落ち、
破片に押しつぶされたハムちゃん図ランドは一瞬にして廃墟と化すのだった。

大将「ちっ、やりすぎたか…」
こうし「あぁあ〜ハムちゃん図ランドが…また直りますよね?ね!?」
のっぽ「いいえ。設計図は僕が処分しました。直そうったって無理ですね」
公太郎「…鬼なのだ…」

ハムちゃん図ランド跡地を前に呆然と立ち尽くすトラハム兄妹を放置し、
5匹は地下ハウスへ帰っていった…

リボン「ほんとうに、こうするしかなかったんでちゅか?公太郎君」
公太郎「ぼくにはわからないのだ…ほんとうならトラハムちゃんたちも
助けたりする事はなかったと思うのだ…」
リボン「わたちはこんなこと、してほちくなかったでちゅわ…うう…」
公太郎「リボンちゃん…」
涙を流すリボンに、公太郎は沈黙するしかなかった。