【China is】日垣隆・総合スレ★30【Change!】

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629無名草子さん
■書評 偽善系II
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辛口評論家、タブー批判の切れ味  評論家 呉智英

 新進気鋭の評論家、日垣隆の最新評論集だ。日垣の特色は徹底した資料集めとタブーを恐れぬ敢闘精神だろう。
この特色は『「買ってはいけない」は嘘である』で十分に発揮され、自称正義派市民主義者(実は時流便乗デマゴーグ)
を完膚なきまでに叩きのめし、江湖の読者の喝采を浴びた。
 その後も雑誌などでインチキな知識人を果敢に批判、『偽善系』にまとめられた。今回はその続編である。
収録論文はどれも独立しており、これだけでも日垣の魅力はわかる。

 中でも日垣らしいのは、精神障害者の犯罪を論じた二章と人気評論家、
佐高信を完全撃破した一章である。 精神障害者の犯罪は、普段は威勢のよいジャーナリズムも突っ込んで
論じたがらない。その結果、精神障害者の犯罪率は低いという嘘の良識が独り歩きしている。
通貨偽造や贈収賄という犯罪も含めてしまえば低くなるけれど、放火や殺人では高いのだ。
マスコミがこれを伏せているのは「タブーというより記者たちの不勉強」だという。確かに、ちゃんと調べればわかることである。

 佐高批判は、佐高一人にまとを絞った分、さらに苛烈(かれつ)で痛快である。
 辛口評論家で有名な佐高は「他者への罵詈(ばり)雑言で生活の糧を得ておきながら、自己への批判には耐えられず」
日垣の仕事に対し出版社に圧力をかけたことが何度かあった。評者も同様の体験をしているので、その通りだろう。

 その内容も、硬骨の辛口評論家とはほど遠い。
 まず、論理の飛躍、日垣が有田芳生を批判したことを、江川紹子を批判したのと同じように見なし、
日垣を「陰湿ないじめ人間」と断じる。目茶苦茶な論法だ。さらに、驚くべき無節操。「ただの暴君」
「一日も早く辞めてもらいたい」と批判していた石原慎太郎と対決するとなると、「私も応援団」とほめる。

 鉄桶(てっとう)の布陣の批判、今度は佐高も逃げられまい。  (日垣隆著/文芸春秋・1429円)