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無名草子さん:
『そして殺人者は野に放たれる』本日発売。アマゾンより↓
この本は、10年がかりで取材と思考を結実させたものです。私の代表作に
なった、という満足感があります。これ以上、何も書き加えることがなく、何
も削るべき事柄もありません。
心神喪失という言葉は、比較的よく知られるようにはなってきました。それ
は、小さな問題なのでしょうか?
日常的に犯罪が起きています。過去も、また未来に向かっても、残念ながら
犯罪がなくなることはありえません。犯罪には、軽微なものと、凶悪なものと
があります。では、凶悪犯罪は、正常な人間が行なうのでしょうか、それとも
異常な人間が行なうものなのでしょうか。
私は、正常(責任能力あり)と異常(責任能力なし)の区別など全く意味が
ないと思います。が、「異常」であれば「事件をなかったことにしよう」とい
う、まさに異常な発想が日本には明治以来ずっと定着してきてしまいました。
試みに、このアマゾンで「心神喪失」と検索してみると、処遇がらみのもの
が数点あるだけで、この国には「犯罪」と「被害者」と「心神喪失」を真正面
から論じた本が1冊も流通していないことがわかります。この問題への関心が
ないのでしょうか。
そうかもしれません。平和なことです。しかし、本当に小さな問題でしょう
か。
精神障害犯罪者による犠牲者は、少年犯罪による犠牲者よりずっと多いので
す。全人口に対する少年の比率より、精神障害者の比率のほうが桁違いに少数
であるにもかかわらず!
私は、現代版「罪と罰」を書いたつもりです。
犯罪と人間の精神について考える契機になれば幸甚です。
(2003年12月12日)
日垣 隆