日垣隆〜喧嘩売ります・買います〜

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159無名草子さん
まず、関係資料をアップしとくね。

9月15日朝刊の産経抄

 一枚の写真が目に焼きついている。衝撃の情景は忘れることができない。世界貿易セン
タービルの白い巨大な側壁を背景に、一人の男性がまっさかさまに落下している。片足が
曲がって、体は「4」の字のようである。
 ▼上半身がワイシャツ姿であるのは「さあ、これから仕事だ」というところだったのか
もしれない。この人は爆風によって空中に吹き飛ばされたのだろうか、それとも火勢の恐
怖からビル外へ落ちたのだろうか。全くの想像だが、そのどちらでもなく、自分の意志だ
ったように思える。

 ▼この超高層から飛び降りれば万に一つも助かるのぞみはない。彼にも妻もいれば子供
もいただろう。ではなぜ彼は自らの意志で空中へ身をおどらせたのか。それは卑劣なテロ
リズムへの激しい抗議だった。身をもって訴えたのだと思えてならないのである。

 ▼この憎むべきテロに抵抗し、挑戦したのはこの人だけではなかった。ニューアーク発
サンフランシスコ行きユナイテッド航空93便の乗客のなかに、自宅の妻に携帯電話をかけ
てきた夫がいた。それによると乗客たちは団結し、捨て身になってハイジャック犯から飛
行機を取り戻すことを決意、彼らと格闘した。

 ▼「きっと命を落とすことになるだろう。いい人生を。娘をたのむ」、電話は悲痛な別
れの言葉をのこして切れたという。そのあと同機はピッツバーグ郊外に墜落した。事実だ
とすると、犯人らはそのため標的のホワイトハウスに衝突することができなかった。

 ▼ハイジャック事件には、決して犯人に抵抗するなというマニュアルがある。だがこう
したテロ目的の場合は必ずしもその通りではない。テロには決して屈しないという人びと
の勇気ある意志に、心から哀悼をささげたい。
160無名草子さん:02/04/14 23:31
ガッキィファイター速報 9月20日

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□■□ 日垣隆「『産経抄』異論」が、ボツに。 □■□
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戦争大好き「産経抄」のイケイケドンドンぶりが、あまりにも度が過ぎるので、
連載陣の一人として同じ産経新聞の「斜断機」(9月18日締め切り)に以下
のような文章を書きました。これに対して一言でいえば、自社記事批判を掲載
する許容力が産経にはない、したがってボツにさせてほしいとのことです。
閉じた独善主義は「赤旗」とまるっきり同じですよ、それに、憲法を無視した
日本の参戦がそんなにお望みなら、「産経抄」氏は論説室で妄想ばかり綴って
ないで義勇兵として特攻したらいかがでしょう、と申し上げておきました。

以下は、9月23日「産経新聞」に掲載されるはずだった原稿の全文です。い
ずれ、どこかで、全経過を書こうとは思います。ただ、担当者はまっとうな方
で、直接のトラブルはいっさいありません。どちらかといえば、産経という狭
い「世間」の小さな出来事という感じです。しかし、いくら社内で「産経抄」
が支持されていないといっても、「産経抄」への批判をシャットアウトしてし
まう部下ばかりなら、しっかり支持しているのとどこが違うのでしょう。

それに何より産経の「斜断機」は、どちらかといえば他者を批判するのを好む
コラム欄です。そのような欄をもちながら、しかもまさにその欄で、自社記事
批判をいっさい受け付けることができないというのでは、ただの偏狭党派機関
紙になってしまうのことあるよ。
今回の「斜断機」がボツになり、代わりのものを、と言われましたが、私は代
わりのものなど書く気にはなれませんでした。皆様のご意見をお寄せください。
161無名草子さん:02/04/14 23:33
9月18日締め切りの、問題とされるボツ原稿
「産経抄」異論

日垣 隆

 九月十五日の「産経抄」は、世界貿易センタービルから落下した男性が《爆
風によって空中に吹き飛ばされた》のでも《火勢の恐怖からビル外へ落ちた》
のでもなく、《テロリズムへの激しい抗議だった》との珍説を披露した。
 この爆風が卑劣きわまるテロによるものだと、男性が瞬時に気づいたと夢想
するのは大変なイマジネーションだ。
 同じ「産経抄」後半によれば、ユナイテッド93便の機内から妻に携帯電話を
かけ、直後にハイジャック犯と格闘した男性も、《テロに抵抗》した勇敢な英
雄である。
 ハイジャックと、数千人を殺戮したテロとを、惨事後の感情に照らして混同
したくなる気持ちは、わからぬでもない。しかし、冷静に考えてみていただき
たい。今からホワイトハウスに突っ込む予定である、などとハイジャック犯が
乗客に正しく伝えていたと想定するのは、ばかげている。それに、もし乗客が
テロ計画を知らされていたなら携帯電話でそう伝えたはずだ。
 九月十七日の「産経抄」を読んで、私はのけぞった。
《案の定「報復からは何も生まれない」といった議論がでてきた。「憎悪の悪
循環になるだけだ」とまじめな顔で説く人もいる。テロリストと話し合うこと
が最良の解決策と考えているようなのである》
 この書き手は本気で、終わりなき報復から何か建設的な事態が生まれると考
えているのか。米国CIAこそが、ウサマ・ビンラディンを含め世界各地でテ
ロリストを養成または利用し、様々な破壊活動に手を染めてきた事実も、本当
にご存知ないのだろうか。
 百歩譲って、報復と憎悪の連鎖を前近代並みに正当化したとして、どこの莫
迦が《テロリストと話し合う》ことなど進言しているというのだ。
 証拠を揃えて、卑劣なテロリストどもを合法的に処刑すべきだと私は思う。
しかし、一人の容疑者をあぶりだすために、罪なきアフガニスタンの人々に戦
争を仕掛けていい、とはならないはずだ。
162無名草子さん:02/04/14 23:35
それを捕捉した12月17日のガッキーファィターの抜粋

●ビンラディンと思われる男の録画テープが公開された。この男が言っている
話が本当だとしたら(自慢話の域を出ていないんだけどね)、私が『テロ以降
を生きるための私たちのニューテキスト』(p194−195)で書いたとおり、産
経抄による「一部乗客が自爆テロ阻止のために機内で闘って集団自死を果敢に
も選んだ」説は誇大妄想であることが一層明白となる。んなワケないだろ。闘
いは歴史的には勇敢だったが、他の乗客的には大迷惑だった。パイロット役の
テロリスト以外、お仲間すらホワイトハウスその他に激突することを知らな
かったのだから、乗客が自爆テロを前提として闘うわけがない。仮に共犯者全
員が知っていたとしても、それを乗客に話す莫迦はいない、というのが私の判
断だった。