〜 妄想!似非ふらっしゅないと 第一話 〜
2003年2月30日。
俺は残った仕事を放ったらかしにして、その会場へ向かった。
幸い、四谷の仕事場からその会場までは、タクシーで15分の距離だ。
少し狭い階段を、はやる気持ちで駆け上がる。
熱気は会場の外に漏れ出し、もうここまで伝わってきている。
会場に飛び込んだ瞬間、目に飛び込んできたのは
その安い会場の、床が落ちるかと思うほどの人垣だった。
ここまで運営をやってきた住人仲間たちに声をかける
「悪い、遅くなっちまった」
FLASH50はあきれた顔で振り返り、無言で仕事を促した。
>997
ごめん。まだ昨日を引きずってるみたいだ。
逝ってくる。
〜 妄想!似非ふらっしゅないと 第二話 〜
与えられた機材のセッティングをこなしていく。
リハーサルまでやっているんだ、もちろん間違いなんてない。
淡々と作業をこなしながら周りに目をやると、
招待された職人たちの様子が目に入った。
既にセッティングを終えたゲーム用PCの周りでは、
軟骨がテストと称して「飛び込む紅白」に夢中になっている。
相変わらず、必死な奴だ。
その時、入口付近がどっと歓声に包まれた。
「おいおい、それは相互リンクってやつかよ!」
観客に煽られて、頬を紅潮させるNNSJと公共料金。
だが、今日の主賓であるその二人は、それでも寄り添ったままだ。
幸せか?やっと幸せになるのか?w
〜 妄想!似非ふらっしゅないと 最終話 〜
セッティングを終え、裏の控え室にまわる。
対談のために集まってくれた職人たちは、緊張を紛らわすように、
それぞれの最新作をお互いにチェックしているらしい。
いつも必死なのは、あいつだけでもないようだ。
「ほんとにスミマセン〜♪」
間の抜けた声でそこにやってきたのは、最年長のモナ倉。
Type-Rとskybeeはそろって「おやじ、遅いよ」と非難轟々だ。
だが、これでメンバーが全て揃った。
演出も担当してくれたスキマ産業にGOサインが出る。
司会のかわいい系3人娘も、緊張しながら「準備オッケー」と微笑んだ。
「今夜は長い夜になるな」、俺は誰にともなく呟いた。
妄想終わるまで眠らずに待ってるからな
終わったYO!
終わりかYO!
終わりだYO!
もっと妄想しろYO!
何をだYO!
紅白を振り返って妄想しる!
【それを早く言えYO! 書いちゃったYO!】
〜 妄想!似非ふらっしゅないと エピローグ 〜
最後の機材を運び出すと、俺は煙草に火を付けた。
新宿の空は既に白み始め、ビルの向こうから薄く光が射している。
冷たい空気に体を浸しながら、深く煙を吸い込み、ゆっくりと味わった。
こんな気持ちを味わったのは、あの時、そう、あの年末の夜以来だ。
祭が終わってしまった後の虚脱感は、
それが無ければ良かったとまで思わせる、圧倒的な空しさだった。
ゆっくりと、ピースライト一本分の時間を過ごすと、
音と振動でしびれたような感覚は、寂し気に体から出ていった。
「おいおい、何やってんだよおまえ」
その時、声をかけてきたのは、背中を丸めたKIKIだった。
「...ったく仕方ねえな。みんな待ってるんだから、早くしろよ」
呆気にとられる俺を引きずりながら、奴はニヤッと笑った。
「俺達の本音トークはこれからだろうが。リアルアンチってやつだぜ」
...俺は、会社の留守電に「体調不良のため有給」と吹き込んだ。
(ほんとうに、完)
〜 紅白混ぜたら桃色☆だもの 〜
主宰から告げられていたのは、投入時間だけ。
作品に注いでしまった分、少しやつれてしまったわたしは、
気だるい気分でPCの電源を入れる。
自分の作品の評価が気にならないヒトはいない。
もちろんわたしも例外じゃなく、気のない素振りも防衛本能。
でも。
そのスレッドの様子は溜息をつかせるのに十分な反応だった。
「けっこう頑張ったんだけどな」
ちょっとした愚痴が心ならずも口から漏れた。
それでも、わたしは落ち込まない。
だって。
この二ヶ月は、あのヒトたちに、ある一言を言わせること。
それさえあれば、あとは何にもいらないの。
わたしらしくない緊張感で、そのスレッドを開いてみる。
「だ、駄目だ(w アンチ出来ねぇ!」
わたしは満足して、また自分の世界に帰った。
ハッピーエンド