例えば、青海省東部、共和県の草地にはヒツジ 370万頭の牧養力があると推定され
ている。しかし、1998年末までに実際にはこの数をはるかに超える550万頭に達し、
結果として急速に草地が劣化して、砂丘を多くひかえた砂漠が出現するに至った。
中東では人口7100万のイランで、放牧地に対するプレッシャーの高まりがうかがえ
る。イランではウシ800万頭、ヒツジとヤギを合わせて810万頭が放牧されており、
乳肉の他に特産の絨毯用の羊毛を産出している。人間の数よりもヒツジとヤギの数
が多い土地、特に放牧地が牧養力の限度に近い土地では、現在の家畜の頭数は持続
可能な数字ではないといえるだろう。
過放牧が引き起こす土地の劣化は家畜の生産力の喪失という大きな経済的損失をも
たらす。過放牧の影響は初めに土地の生産力低下というコストとして表れる。過放
牧が続くと、植生が破壊され、土壌浸食につながり、いずれは不毛の荒地を後に残
すことになる。1991年に実施した世界の乾燥地帯アセスメントで、国連は放牧地の
劣化による家畜生産の損失は23億ドルを上回るものと推定している。
アフリカにおける放牧地の生産力の年間損失は推定70億ドルで、これはエチオピア
の国内総生産を超える数字である。アジアでは、この数字は80億ドルを超えている
(こちらの表を参照)。この両地域の損失を合わせると、全世界の損失の3分の2を
占める。
世界の放牧地の劣化を阻止するのは容易ではない。家畜頭数の増加を抑える鍵は人
口の増加を食い止めることだ。イランは過放牧や15年前に直面した人口に関連した
問題の脅威をふまえ、年率4%であった人口増加率を2001年にはわずか1%まで低下
させた。明確な意識を持つリーダーシップの可能性が明白に示された事例である。
http://www.worldwatch-japan.org/NEWS/ecoeconomyupdate2002-2.html