ウシ、ヒツジ、ヤギの放牧で生計を立てている牧畜民は世界で1億8千万人。家畜頭数
はおよそ33億に達する。
放牧地の大半は乾燥や急勾配で耕作には適さない土地であり、世界の陸地面積の5分
の1、耕作面積の2倍以上を占めている。このように広大な放牧地で生産力の鍵を握
るのはウシやヒツジ、ヤギといった反芻動物だ。複雑な反芻消化機能が繊維質の草
から肉、乳などの食品や、皮や羊毛などの素材を生産することを可能にしている。
世界で生産される牛肉と羊肉の5分の4に相当する5200万トンは、放牧地で草を食
むウシとヒツジによるものである。穀物の乏しいアフリカでは、ウシを 2億3千万頭、
ヒツジ 2 億4600万頭、ヤギ 1億7500万頭が放牧されている。アフリカ各国の経済
の要とされることが多い家畜の頭数だが、現在の飼育頭数は牧養力を少なくとも半
分以上も上回っている。アフリカ南部の9か国の草地について高まるプレッシャーを
分析した調査は、土地の牧養力が減退していることを明らかにした。
発展途上国の多くでは、牧草やその他の飼料作物などへの需要が持続可能な供給を
上回っている。世界で最も多くのウシを擁するインドでは2000年の飼料推定需要は7
億トン。一方、持続可能な供給量は5億4千万トンだった。ニューデリー発のレポー
トによると、ラジャスタンやカルナタカなど極めて深刻な土壌劣化がみられる州で
は、供給できる飼料は需要量の50〜80%前後にすぎず、ウシの多くは衰弱してい
る。
中国でも同じく困難な状況がみられる。土地の所有権や境界の柵がない中国北西部
は広大な共同の放牧地となっている。1978年の経済改革以後、ヒツジやウシの頭数
を制限する家族に奨励金を出すシステムが機能しておらず、家畜の頭数が急激に膨
れ上がった。中国の擁するウシの頭数は1億3千万であり、同程度の牧養力を持つア
メリカのウシの頭数は9800万だ。しかし、これ以上に大きな差はヒツジとヤギを合
わせた頭数にある。アメリカの900万に対して、中国は 2億9千万に達する。
http://www.worldwatch-japan.org/NEWS/ecoeconomyupdate2002-2.html