平成17年11月
日本マーガリン工業会
広く食品中に含有されているトランス脂肪酸(以下「トランス酸」という)
の摂取については、 これまで世界各地でさまざまに議論されてきておりま
す。
そして米国においては先般、飽和脂肪酸及び食事由来コレステロールの摂取
の他に トランス酸の摂取が冠動脈心疾患のリスクを高めるLDLコレステロー
ル (「悪玉」コレステロール)のレベルを上昇させるという科学的知見に
基づいて、 2006(平成18)年1月1日以降、食品の栄養成分表示欄に飽和脂
肪酸、コレステロール に加えてトランス酸の含有量も明記することが義務
付けられました (米国連邦政府保健福祉省食品医薬品局(HHS FDA)の2003
年7月11日付け規則)。
トランス酸に関する知見につきまして、当工業会は、おおむね次のような
見解を持っております
1.トランス酸は、先般の米国の措置でも述べられているように、
血中LDLコレステロールを上昇させ、HDLコレステロール(「善玉」コレス
テロール)を低下させるといわれています。
しかしその作用については、トランス酸の摂取量が摂取した総エネルギーに
占める割合 (エネルギー比と言います。単位は%)でみて2%以下であればほ
とんど影響しないこと、 さらに、同時に摂取するリノール酸量がトランス
酸量よりも多いとその作用が低減することが明らかにされています(注1)。
またWHO(国連世界保健機関)/FAO(国連食糧農業機関)の合同専門家協議会
報告書では、 エネルギー比でトランス酸の摂取は1%未満を提唱しています
(注2)。
2.そこでトランス酸の国民一人一日当りの摂取量をみますと、米国では5.8g、 エネルギー比で2.6%(注3)、西欧の14カ国(男性)では1.2〜6.7g(エネルギー比で0.5〜2.1%)(注4) と見積もられています。
これに対して日本人の場合は1.56g、エネルギー比で0.7%と低く(注5)、そ
の上リノール酸を 10.85g(トランス酸の約7倍)摂取しています(注6)。
従って、普通の食生活においてトランス酸の摂取過剰によるリスクを心配する
必要は全く ないものと考えています。
3.トランス酸は、液体の油を固体脂に替える際に生成しますが、自然界には
乳や乳製品、反芻動物にも脂肪中に4〜5%含まれています。
マーガリンやショートニングなどの固体脂(食用加工油脂)はいろいろな
加工食品に使われて、私達の食生活を豊かにするのに役立てられています。
4.また、脂肪酸の摂取と冠動脈心疾患のリスクとの関連を考える時には、
トランス酸と共に飽和脂肪酸に注目する必要があります(米国の措置でも
これに言及しております)。飽和脂肪酸は血中LDLコレステロール濃度を
上昇させる大きな要因といわれております。
従って、私達は摂取する飽和脂肪酸の総量にも気をつけなければなりません。
5.飽和脂肪酸の摂取量(一人一日当り)をみますと、
米国人では25g(注7)、エネルギー比で13%にもなっているといわれており、
アメリカ心臓病協会は その食事ガイドラインで、米国人の飽和脂肪酸摂取量
を全エネルギーの10%以下に制限するよう 勧告しています(注8)。
一方、日本人の飽和脂肪酸摂取量は、1995年で16.5g(注6)と推定されてお
り、これはエネルギー 比で7.3%になります。このように、飽和脂肪酸の
摂取量に関しましても憂慮することはありません。
20 :
日本マーガリン工業会の見解:2006/06/18(日) 11:03:31 ID:dirWFN2i
以上のように、トランス酸及び飽和脂肪酸の摂取に関して、現在の日本人の
食生活において何ら問題はないと考えております。そして日々の食事では、
肉、魚、穀物、野菜、果物などいろいろな 食物をバランス良く採っていた
だくことが何よりも大切と思います。
当工業会としましては、これからも脂質栄養の研究や国際的な規制等の
動向について引き続き注視していく考えです。