「大相撲はスポーツではない。あいまいで矛盾を抱えているものです」 [スポーツ図書館]
土俵の矛盾・舞の海秀平著
琴奨菊の大関昇進が決まったが、昨今の角界は新弟子暴行死、薬物、野球賭博関与、八百長と不祥事続き。その原因はどこにあるのか、この先大相撲はどうなるのか、どうすべきか。元小結の舞の海秀平氏がその答えに迫ったのがこの本だ。
――そもそもどういうきっかけでこの本を書いたのですか?
「もともとは師匠(50代横綱佐田の山=先代出羽海親方)のことを書くつもりでした。それが八百長問題などが起き、出版社からそれを含めて書いて欲しいとなったのです」
――舞の海さんは本の中で相撲は神事、伝統芸能、格闘技、武士道などの要素を持ち合わせ、スポーツではないと書かれてますね。
「相撲の歩んできた道を考えるとスポーツというより国民の娯楽、楽しみという方が近いと思います。国民の生活の中で日々、感じていること、心の動きを表現しているのが大相撲です。例えば相撲には『待った』があります。
陸上(短距離)ではフライングで失格、待ったはありません。取組前にマイクで東誰々、西誰々とアナウンスしてもいいが、行司が扇子を持って呼び上げて、力士は土俵に上がる。スポーツという位置付けには問題があると思います」
――ただ、勝ち負けを決め、番付を決め、興行として入場料を取る以上、ファンはスポーツとして見ているのではないか?
「相撲をひとつに押し込めるのがそもそも間違いだと思います。長い間、先人たちがいろいろなものを融合させて、生き残るために知恵を絞ってきた。相撲はあいまいで、矛盾を抱えているものなのです」
――スポーツとだけ見るからファンはフェアとか公正とかを求め、八百長にも厳しくなると……。
「不祥事が起こると、相撲界だけは起こしてほしくなかったとか、国技なのに、とか言われる。でも相撲が国技だといつ誰が決めたのでしょうか。相撲界だけ清廉潔白を求められるのはどうでしょうか。
世間を騒がせましたが、人気低迷中の大相撲なので、一般の人は八百長に関心は少ないと思います。現状では相撲にそんなに関心を持っていないのですから(笑い)」
(続く)
日刊ゲンダイ 2011/10/1
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