週刊新潮8月9日号 p50-51
「仮病」朝青龍の診断書を書いた「医師の評判」
名古屋場所で21回目の優勝を飾った朝青龍(26)、疲労骨折と診断されて静養しているのかと
思いきや、モンゴルで中田英寿(30)らとサッカーに打ち興じていた。横綱は「仮病」だったのか。
診察した医師の評判を聞いてみると……。
千秋楽翌日の7月23日、朝青龍は三重県四日市市の四日市社会保険病院で診察を受けた。診断書には、
<左肘内側側副靭帯損傷、左尺骨神経障害、急性腰痛症、第5腰椎(椎弓)疲労骨折>
と記載されている。
<左肘関節痛、左前腕から手にかけてのしびれ、脱力感、ならびに腰臀部痛、下肢のしびれ感を訴えます。
よって約6週間程度の休養、加療を要します>
これで8月3日からの夏巡業を休むお墨付きを得たのだが、25日にテレビのニュース番組で放送された
モンゴルの映像を見ると、朝青龍は子供のように駆け回り、サッカーボールを追っていた。シュートを決めると、
中田氏と抱き合って大喜び。ケガに悩む様子は微塵もなかった。
「疲労骨折はレントゲンを撮らなければ、診断できません。骨にひびが入っている状態が疲労骨折です。
第5腰椎の疲労骨折なら当然運動はできません」(医学博士の中原英臣氏)
朝青龍が「仮病」を使っているとすれば、医師が見抜けなかったのか、あるいは横綱の意を受けて「ニセ診断書」を
書いたのか――いずれにせよ相撲協会にはファンの抗議が殺到。巡業部の不知火副部長(元関脇・青葉城)は、
朝青龍側から提出された診断書を報道陣に公開した。
朝青龍の診断書を書いたのは、四日市社会保険病院整形外科部長の森下浩一郎医師である。
平成4年に三重大学医学部を卒業。専門は整形外科一般と脊椎外科。日本整形外科学会専門医であり、
日本脊椎脊髄病学会の中部地区の指導医でもある。
四日市社会保険病院の松本好市院長が言う。
「森下先生は、整形外科医としての実力は申し分ありません。院長としての贔屓目かもしれませんが、私は信頼できる
先生だと思っています。患者さんからのウケもいいんですよ」
松本院長が続ける。
「森下先生が検査結果を横綱に説明しているのを聞いていて、何ら不自然なところはなかったですね。”仮病疑惑”
なんて信じられない。森下先生は実にまじめで、患者におもねるようなこともありません」
朝青龍の都合のいいように書いた「ニセ診断書」ではないと明言した。
森下医師ご本人に話を訊いてみると、
「7月18日、朝青龍から病院に受診したいとのオファーがあり、翌19日の午後7時から30分だけ診察することになりました。
問診の後、横綱が痛みを訴える(左)肘、腰、股関節のレントゲン検査と腰のMRI検査をやったのです。主に肘が重症で、
他の部分を連鎖的に痛めている症状がうかがえました」
横綱の肘はコップを持っても落とすような重症だったそうだ。
「肘と腰を治して相撲に復帰するには6週間かかると申し上げました。横綱が、”モンゴルで治したい”というので診断書を
書いたのです。テレビで横綱のサッカーを見て、腰を痛そうにしていましたが、医師の言うことを聞いてくれないと思いました。
横綱が休むための診断書を、都合よく書いたことはありません。十分に責任を持って診断したと思っています」
全治6週間のケガ人がサッカーをやるなど、想像もしなかったという。モンゴルで治すべきものは、肘ではなく「心がけ」だったようだ。