花田景子!相撲部屋は教育上本当によくないのか?8

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521待った名無しさん
 北の湖が入門する前の三保ケ関部屋は明日の米代を心配するほどの弱小相撲部屋であった。
そんな中、親方(初代増位山)とおかみさんがこんな話をしていた。
「こないなことでは、いつまでたっても貧乏から抜け出せませんね」
「米櫃になるような、いい新弟子が欲しいな」
「北海道の壮瞥町に立派な身体をした坊やがいるそうやね」
「う〜ん。話にはきいとるがな」
北海道に173センチ、93キロという小学6年生の怪童がいて、
金の卵を求める親方達がスカウト合戦を繰り広げている話は三保ケ関親方の耳にも入っていた。
そういう逸材がいるなら何はさておいても訪ねたいと思うのだが、
擦り切れた畳も替えられない小部屋の親方・三保ケ関は最初から諦めていた。
「駄目でもともとと思うて一度訪ねてみてはどうかしら」
おかみさんの方が積極的であった。
「洞爺湖でも見て一緒に目の保養でもしてこようか」
雌鳥にすすめられた格好で、やっと三保ケ関親方は重い腰を上げた。
522待った名無しさん:2005/12/04(日) 18:17:45
しかし、いざ北の湖少年に会っても親方は
「また来年の今頃来てみるからね。それまでにはもっと大きくなっていろよ」
というのが精一杯でなんとも煮え切らない。
 帰郷したおかみさんは少年のために手袋を編んだ。三保ケ関部屋に来てくれるなどとは露ほども考えなかったが、
石臼のように泰然としていた少年が日頃見慣れた都会っ子に比べて、何ともいとおしい気がしたのである。
 おかみさんは手袋に手紙を添えて送った。
「冬がきたら、この手袋をはめて元気いっぱい遊びなさいね」
 たったこれだけの文章が純真無垢な北の湖少年の心を打った。
「あのおばさんがいる東京へ行ってみようかな」
 中学生になった北の湖少年の胸に灯がともった。おかみさんの手袋が貧乏相撲部屋に福をもたらした。
「あの子がうちへ来るのです」
そのために縫い上げた着物を、いとおしむように撫でるおかみさんは、いつしか涙ぐんでしまった。
 夕方になって、三保ケ関親方に連れられた大きな金の卵が到着した。