( * )力士のホモ小説読んだ事あるか?( * )

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2721からの続きです
 ソファーで腰に『パテックス』を張ったマサルはジャージを「よいっしょ!」っと
上げると目の前には既に乾いた浴衣に着替えたダイスケがいた。
「おいダイスケ!もう大丈夫なのかよ?」
心配そうにマサルはダイスケに尋ねると、ダイスケは申し訳なさそうにお辞儀をして、
「お兄ちゃん迷惑かけてしまってごめんなさい。冷静に考えると確かに僕の体は他の
力士と比べると小さめだしスタミナも切れやすいからいつもいい所で駄目になって
しまう。でもせっかく僕には相撲があるんだし素質もある。けどここで腐ったら絶対に
一生後悔するだろうからまずは初心に帰って短所も受け入れた上で改善したいと思うんだ。」
「ダイスケ・・・。」
さっきまでの弱気な発言と打って変わったダイスケの言葉にマサルはいつしか腰の痛み
も忘れ彼に駆け寄った。
「だから九州はゆっくり休んで次の相撲に向けて自分の力で頑張ります。お兄ちゃん
励ましてくれてありがとう。」
笑みを見せながらで礼を言うダイスケにマサルは思わずガシッと抱き締め、
「最後の相手がダイスケで本当に良かったよ。」
そう言ってダイスケの背中を軽くたたいた。
「う、嬉しいです。」
そんなマサルにダイスケは一瞬泣きそうになった。だが、
「ほらほらこれからはそう簡単に泣くんじゃないぞ。泣いたら承知しないぞ〜!!」
マサルは冗談混じりにセンチになりかけたダイスケの頭を揺さぶる様に撫でた。
そんなおどけたマサルにダイスケは「やめてくださいよ〜。」と言いつつもいつしか
「微笑」が「笑い」に変わって言った。

 
28待った名無しさん:02/10/25 22:48
 「それじゃ僕帰ります。本当に今日はありがとうございました。」
玄関前で雪駄を履いたダイスケは改めてお辞儀をすると、
「ごめんな、玄関までしか送れなくて。けどその変わりタクシー呼んだから・・・。あっ、そうだ!忘れ物忘れ物・・・。」
突然マサルはスリッパの音を廊下に響かせ部屋の奥へ何かを探しに行った。ダイスケ
はセカンドバックを脇に抱えながら「何だろう?」と立ちすくんでると何やらマサルは
紫の風呂敷に包まれたある物を持って来た。
「ダイスケ、開けてみなよ。」
マサルは包みを渡すなりダイスケにそう促すと風呂敷をほどいた中には平成5年春場所に
マサルが初優勝を決めた時に付けてた深緑色の締め込みが入ってた。
「こ、こんな大切な物を貰っていいんですか?」
相撲を感じさせない自宅にあった締め込みだけに思い入れがあっただろうと感じた
ダイスケは申し訳なさそうに締め込みを返そうとすると、
「もう僕には必要ないからあげるよ。その分僕も21世紀のダイスケの相撲を大いに
期待したいしさ。」
そう風呂敷の包みを結びながらダイスケに渡し返した。そしてマサルは頭を少しかき
ながら、
「その変わり、おまえも知ってると思うけど来年美恵子が子供を生むんだ。もし男の子が
生まれたら絶対にダイスケにあやかった名前を付けるつもりだからくれぐれも僕の子供
を泣かす相撲だけは取るなよ。」
そう言って笑いながらダイスケの左肩をポンッとたたいた。ダイスケはマサルの長男で
ある『将希クン』の名前が某プロゴルファーにあやかって付けられたエピソードを
知ってるだけに想像以上のマサルからの期待に一瞬ビックリしたがその分頑張らねば
って思いで貰った深緑の締め込みをギュッ!っと抱き締めて、
「はい!恥じない相撲を取れる様に頑張ります!!」
と目尻をクリンとさせた笑みを見せながらダイスケは元気な口調で答えた。
29待った名無しさん:02/10/25 22:49
「じゃ、本当に頑張れよな。約束だぞ!」
マサルも笑顔で手を振ると名残惜しそうにダイスケは扉を開け、締め込みを大事そうに
抱えて何度もお辞儀をしながら、
「おじゃましました。ありがとう。」
と言って手を振って静かに扉を閉めた。そしてマンションから出ると既に雨は止み、
少し肌寒い晩秋の澄んだ夜空の月はダイスケを照らしてた。
「お兄ちゃんがいてくれて本当に良かった。」
月と一緒にマンションをも見上げるとダイスケはそうつぶやきながら待機していた
タクシーに乗り込んだ。そしてそれをカーテン越しで見ていたマサルも、
「ダイスケが来てくれて良かったよ。」
とつぶやいたのだった。

 季節は冬に向かっていても二人の心は温かいミルクの様に温かい気持ちになっていた。

おわり