( * )力士のホモ小説読んだ事あるか?( * )

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14待った名無しさん
 秋も深り、あんなに暑かった夏の面影すらどこにも見当たらなくなってしまった晩秋の霧雨が降る夜。ある大柄の人影が杉並の豪華マンションの前に立っていた。

 「ふぅ、今日は久し振りに仕事も休み。美恵子と子供は世田谷の実家へ泊まりに行った事だしこんな日もたまにはいいよな。」
ここの住民でありながら過密スケジュールで普段はくつろぐ暇も無い藤島親方(元若乃花)ことマサルにしては珍しく一人で相撲を感じさせない広々とした部屋でつかの間の休日を過ごしていたのである。
「しかし・・・いざとなって見ると一人で自宅に過ごすのって案外寂しいな。いつも家族はうるさいし、マスコミにも追われてうんざりしてるのに・・・。」
そう言いながらふと少し伸びた自分の髪を軽く引っ張ると、
「思えば髷を切ってもう1ヶ月たつんだな・・・。断髪式の時は頭が軽くなってほっとしたけど何か物足りない。今の気持ちだろう・・・。」
マサルは少し悲しげに笑いながらそうつぶやいた。だが少し小さめのソファーの上で寝返りを打つとある事にふと気付いた。
「・・・そう言えば、ダイスケ断髪式にこれなかったんだなぁ。九州も全休だしな・・・。」
実は日頃自分の弟以上にかわいがり、更に平成12年春場所5日目くしくも最後の相手になった栃東ことダイスケが秋場所中右肩を傷め、途中休場した為に断髪式に参加出来なかったのである。
「でもダイスケに髷切られたらきっと光司以上に泣いちゃってたんだろうな・・・。」
自分の冗談にマサルはゆっくり起き上がると久し振り見る自分の前髪を指で軽く捩りながら少し笑った。
 ―ピ〜ンポ〜ン
15待った名無しさん:02/10/24 22:50
突然、柔らかではあるがそんな生ぬるい時間を引き裂くかのようなインターホンの音が部屋中にこだました。
「またマスコミかよ〜。いいじゃねぇか!たまには家に一人でいたって!」
マサルは憮然とした表情でソファーから立ち上がり、インターホンの受話器を上げた。それと同時にモニター画面の人物が少しづつ浮かび上がった瞬間、
「ダ、ダイスケ・・・?」
映し出されたのはうざいマスコミではなく久し振り見るダイスケの姿であった。しかも霧雨に打たれたのか浴衣とセカンドバックは多少湿り気を帯び、顔は多少俯き加減。だが不審者と思われたのか管理人が現れ「誰ですか?」と訪ねている様子である。それを見たマサルはすぐに、
「おい、ダイスケ!とにかく上がれ!」
そう言って出入り口の自動ロックを解除した。

 「ダイスケどうしたんだよ?濡れながらやってきてさぁ。」
「・・・・・・。」
すぐにマサルはダイスケの顔や肩をタオルで拭いた。
「それと怪我は雨に大敵なんだぞ!悪化したらどうする!?・・・まぁ、とにかくこれに着替えろ。」
マサルは俯いたまま無言のダイスケをたしなめると大きめのバスタオルと自分が普段着てるトレーナーを手渡した。どうやらダイスケは一人で足立区にある部屋から電車を何本も乗り継ぎ途中霧雨が降る中、最寄り駅から杉並のマンションへ歩いて来たらしい。
「ったく、コンビニとかあっただろ?傘でも買えば良かったのに。」
「・・・・・・・。」
マサルは半分呆れながら風呂場の脱衣所に連れて行かせたが依然ダイスケは無言だった。
「着替えたらソファーにでも座ってろよ。」
脱衣所に付くとマサルはその場から立ち去った。
16待った名無しさん:02/10/24 22:59
 「こんな時間に訪ねてごめんです・・・。」
しばらくして着替え終わったダイスケは居間のソファーにゆっくり座るとようやく
口を開き始めた。
「出来れば来る時僕の携帯にかけて欲しいな。特に僕の場合必要以上にマスコミに
追われてる身だし・・・。」
マサルは真向かいのキッチンで背中を向き何かをしてようとしていた。
「所でどうしたんだ?」
首を少しだけ向いたマサルは少し心配そうに尋ねるとダイスケは唇だけ動かしながら、
「僕・・・親の勧めで中学からずっと相撲一筋でやってきて高校横綱になったり、
プロに入ってからも26連勝したり、格段優勝して順調だった。けど・・・ここ2〜3年
はいい所まで行ってもその後うまく行かなくていつもそれの繰り返し・・・。特に今回は
右肩怪我しちゃって思ったより重症だったから九州にも出られない・・・。」
「ふぅ〜ん。」
切々と語るダイスケにマサルは背中を向けたまま生返事で聞いている。
「・・・・。」
いつものお兄ちゃん(マサル)と違う雰囲気を察したダイスケは突然来てしまった
気まずさと緊張感で口をつぐんでしまった。しかしカチャカチャ何かをしてるマサルは、
「それで?」
17待った名無しさん:02/10/24 23:01
と少し素っ気ない口調で話の続きを促すとダイスケは再び口を開き、
「・・・20歳で幕内に上がった頃は誰にも負けない自信があったし強気だったけど
気が付いたらもう24歳・・・。僕より年下や入門が遅かった力士がどんどん上がって
来て上位で活躍してるのに僕は大関候補と言われながら未だ平行線。入幕した頃は
都民栄誉章まで貰ったのに・・・。」
「それでどうなんだよ?」
冷蔵庫から何かを取り出しそれを鍋に入れ火にかけながらマサルは多少いらだった
口調で更に促すと、
「確かに・・・僕には相撲だけしかない。けど・・・こんな事がずっと続くとどうし
ても相撲を取るのがとても怖くなってしまうんだ・・・。」
組んだ指を強く握り締めながらダイスケは全ての言葉を出し切ったかの様に
「ハァーッ」とため息をついた。だが、徐々に温まるのを待つマサルは逆に腕を組み、
上を向きながら「あぁー。」とうんざりした声を出しながら溜め息を付くと、
「僕の最後の相手がこんな奴だったとはなぁ・・・。」
予想もしないマサルの言葉にダイスケは戸惑った。だが上を向いたままマサルは、
「それって・・・単におまえが今まで『天狗』になってただけじゃないか?勝負って
そんなに甘くないぞ。」
「え?」
18待った名無しさん:02/10/24 23:03
痛い位的を得たマサルの発言にダイスケはドキッとして顔が徐々に赤くなり俯いて
しまった。すると、
「でも・・・」
両手を上に上げ「ンン〜ッ」と伸ばしながらマサルが何か言おうとした時、
「でも?」
ダイスケは少し顔を上げて訪ねると鍋の中が沸騰し吹きこぼれそうになった。
マサルはすぐに火を消し大きめのマグカップを二つ揃えると温めたミルクを均等に
注いだ。そしてそれをダイスケのいるソファーへ持って行くと、
「・・・でも、僕も同じだよ。僕の場合出来の良過ぎる光司がいたからよく比較
されてたけど・・・。」
マサルは低めのテーブルにホットミルクを置くなりダイスケに飛びっ切りの
『お兄ちゃんスマイル』を見せた。「お兄ちゃん・・。」
ダイスケはゆっくりと顔を上げてそうつぶやくとマサルはダイスケの頭を手荒に
撫でながら、
「きっとダイスケは今とっても焦ってるんだよ。わかるよ僕も何度か横綱挑戦する
度に怪我に泣かされたし、一度は引退まで囁かれたしね。けど怪我を繰り返して
学習する場合だってある。だからたやすく腐るんじゃないよ。な、ダイスケ!」
更にマサルがダイスケの頬をつまんで「ニパッ」と口を開けて笑うと、
「お、お兄・・ちゃん・・・。」
ダイスケは凍り付いた気持ちが溶けだしたのか目からドッと涙が溢れ出た。
「おっと、ホットミルクは体が暖まるから飲んで。」
マサルはダイスケの背中を軽くたたき、もう片方の手でダイスケに少し熱めのホット
ミルクを手渡すと、
「それにこんな時は泣けばいい、すっきりするぞ。」
マサルの暖かい手の平で涙が止まらないダイスケは涙を拭いながらマグカップを
受け取った。
「こ、こんな僕の為に・・ありがとう・・・。」
涙で声を詰まらせながらダイスケは両手で抱えるようにふーふーしながら飲むと
目から再び熱い涙が幾粒も溢れた。 
19待った名無しさん:02/10/24 23:04
 ・・・晩秋の夕暮れ、12歳になったダイスケ少年は学校の帰り道ボロくなった
ランドセルを背負いながらトボトボ歩いてた。
 ―相撲やったらきっとお父さん喜ぶかもよ。
自分の影が遠くの方まで延びて行くのを見詰めながらダイスケ少年は誕生日に言われ
た母の言葉を思い出し父が昔やってた相撲を取るか、または自分の好きな野球を取る
か悩んでた。
「僕、原選手みたいな投手になりたいのにな・・・。でもお父さん大好きだし・・・。」
その時、背後から「おーい」と誰かが呼んでる声が聞こえた。顔を上げたダイスケ少年は
「誰?」と振り向いた。そこには豚のしっぽ程の短い髷を結った優しそうな顔の
若い力士が彼に手を振っていた。それは年の離れた怖い顔の兄を持つダイスケ少年に
とって何だかとても親近感を感じたのか思わず、
「お兄ちゃ〜ん。」
と叫び手を振った。しかし、
「いつか僕と相撲を取ろう、その日まで待ってる。」
そう言ってその力士は後ろへ後ろへフェイドアウトしてしまったのである。
「お兄ちゃん、お兄ちゃ〜ん。」
ダイスケ少年は手を伸ばしながら泣きそうな顔でその力士を追った。しかし距離は
縮まらない。だが走っていくうちにダイスケ少年の足が縺れて転んでしまった・・・。
20待った名無しさん:02/10/24 23:05
 「はっ!」
手を伸ばしながら目覚めたダイスケの目の前にいたのはマサルだった。しかもマサル
のベッド寝かされていておでこにはマサル愛用の『冷えピタ』。右肩には張り替え
られた大きめの『パテックス』とその上に『アイスノン』が固定されていた。
「うわ〜びっくりしたなぁ。誰かに追われた夢でも見たのかよ〜?それよりおまえ
運ぶ時重かったぞ!あっ力士だから仕方ないか・・・。」
呆れながらも自分の「一人ぼけ突っ込み」に笑うマサルを見てダイスケは夢だって事
に気付いた。
(もしや、さっきのは・・・。)
夢の中の力士がお兄ちゃんことマサルだった気がしたダイスケはふとマサルの方を
向いた。すると、
「ダイスケ、熱と腫れは引いた様だな。」
マサルはダイスケのおでこや右肩に手を当て「ニコッ」と微笑んだ。
「ご、ごめんなさい・・。僕、どうしたんですか?」
ダイスケは申し訳なさそうにマサルに尋ねると、マサルは少し困った顔をして、
「おまえ、泣きながらホットミルクを飲んだかと思ったらいつの間にか僕に寄り掛か
って眠ってたんだよ。そしたら結構熱があってさ、更に右肩も凄く腫れてたから急いで
おでこに『冷えピタ』張ってベッドまで運んで右肩に『パテックス』張って『アイス
ノン』巻いたんだよ。でも熱も肩も大事に至らなくて良かったな。」
ほっとした表情でマサルは軽くダイスケのおでこにデコピンするともう片方の手は
握り拳で自分の腰をトントンたたいてた。
「お兄ちゃん、大丈夫ですか?」
それを見たダイスケは起き上がろうとしたが、
「おいおい、それを言うのは僕の方だろ?心配しなくていいよ、とにかくしばらく寝て
ろ。」
そう言ってマサルは掛け布団を優しく肩の上まで掛けると「これ持ってくぞ」と
『パテックス』持って寝室から出て行った。
21待った名無しさん:02/10/24 23:06
(僕はなにやってるんだろう・・・。)
ベッドの上に残されたダイスケは過去の栄光ばかりを追ってる割にはすぐに挫折して腐って、かわいがってくれる先輩に泣きついて結局迷惑かけてしまう自分に自己嫌悪を感じた。
(でも、僕はもしかしたらお兄ちゃんに出会う為に相撲を選んだのだろうか・・・?)
右肩を庇う様に寝返りを打ちながらさっきの夢の事を思い出すと少年時代、苦渋の末相撲を選択したのにいつしかマサルを慕い、彼の相撲を目標や手本にしていた巡り合わせがとても不思議でならなかった。
(・・・・けど相撲を取るのはお兄ちゃんの為じゃなく僕以外誰でもないんだ。その為には駄目な自分も克服しなきゃ・・・。)
その考えにハッとしたダイスケはこのままではいけないと思ったのか突然ベッドから起き上がった。