なんで桶に入らないの?2nd!!

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96名無し行進曲
部下の田中君と一緒に昼食で街へ向かった。
田中君は若手社員だが俺がとてもかなわないくらいの社内ナンバーワンの営業マンだ。
茶髪結構、ピアス結構、青シャツ結構。結構結構大いに結構。田中君、がんばってくれたまえよ。
俺が吉野家へ行くのだと告げると、田中君は「俺は牛丼太郎で十分ですよ」と言って去っていった。
そうか、俺は構わず吉野家へ入った。昼休みの会社員が牛丼にがっついている。
席に座り、すかさず「並」を注文する。
牛丼太郎は確かに並が200円だ。吉野家より80円も安い。しかしそこまで落ちぶれたくない。
たかが80円だが、心の余裕って奴が違う。貧すれば鈍する、そうはなりたくないもんだ。
そこに吉野家と牛丼太郎があれば、迷わず吉野家を選ぶ。俺はそういう人間が好きだなぁ。
俺はリッチに吉野家で堪能するよ。フン!田中君もまだまだ人生が浅いなぁ。
「お待ちどうさまでした。並でございます。」
早速箸をつける。例えばだ、吉野家の割り箸は約20cmだ。いっぽう牛丼太郎は価格を抑えるために経費節減で
割り箸も割安な約17cmのを使う。この差だ。これがリッチ感だ。仕事をやろうという気持ちになるんだ。
なんだか割り箸が俺と田中の営業成績の棒グラフにみえてくるぜ。牛丼太郎の田中の営業成績グラフは17だが
吉野家の俺のは20を差している。ふふ、俺がナンバーワン営業マンになる日もそう遠くないかな。
「ごちそうさん」なんだか気分良く外に出る。満腹だ。午後もこれで一働きするぞ!
と、ちょうどそこに田中が通りかかっている。
「よぉ」と声をかける。田中は爪楊枝をしている。牛丼太郎から持ってきたのかよ。本当に貧乏臭いやつだなぁ。
ん?なんか違うぞ。あれは爪楊枝じゃない。。あれはサクランボの枝部分。。。?
牛丼太郎でサクランボを食べたのか?いや、そんな変な話は無い。
それに、そもそも田中が来た方向に牛丼太郎は無いじゃないか。
ではどこから来たのかと田中の来た方向を見てみると、高級豚カツ屋が有るぞ!
そうだ!
あれは、豚カツ定食に付いてるポテトサラダに乗っかってるサクランボだ!
間違いない。田中は、田中は、豚カツを食ったんだ!
牛丼太郎へ行って田中は貧乏臭いと優越感に浸りながら俺が吉野家で牛丼を食ってる時に、実はあいつは豚カツを!!!
割り箸はこっちの方が長いんだと俺が嬉しげにしてるときに、田中はナイフとフォークでごちそうさまかよ!
木製の箸と金属製品のナイフ、フォーク。この圧倒的な物質的迫力の違い。
それに加えて、先端を鋭利に研がれたナイフ、三叉に加工されたフォークとただの箸、この加工技術の明らかな差!
田中が「俺の営業成績はお前とは別次元なんだぜ」そう言って俺を見下してる様なもんだ!
大体、田中が吉野家の前をちょうど通りかかってるのが変だ。
そうだ、田中は俺が吉野家からでてくるのを待っていて俺の姿を貧乏臭い中年だと嘲笑してるんだ!とんでもねえ野郎だ!
ふざけるな!なにが俺は牛丼太郎で十分だ!
「うおおおおお、田中!!何がフォークだ、何がナイフだ、このサクランボ野郎!」
俺は田中を殴り倒し捨て台詞を吐いた
「俺だってチェリーボーイなんだ!お前には負けねえよ!」52歳魂の絶叫でありました。