待ってますー
侍ってます
投下GJです!
グレーテルとニケの戦いと会話とてもよかったです
一休さんの頓知と殺生に走ったことによる信仰の差が勝敗を分けたという死に様も見事でした
命を曝しても信仰を貫き通したグレーテルこええ
しかもまさか原作のあれを出してくるとは…
ギャグのすけべ大魔神から繋げたのもあってまじびびった
あれ見てそれでも輝けるニケマジ勇者
メロのおまえのせいだ(以下略)はあまりにもキャラにあってなくて吹いたww
似合わないにも程があるw
千秋は負けるな!頑張れ!
色々気づいて更にこんがらがる頭。……完成しきらなかった。ごめんなさい。
近日中には完成しますが、これは予約破棄扱いでお願いします。
話として一応区切りがつきそうな前半だけで切ってしまう手も有るのですが、
テストスレに投下してこれで行っていいか意見を聞くのが良いのでしょうか。
変に予約みたいな事にならないか不安ですが。
どうも今は頭が鈍りかけで、良い方法が思いつきません。
お待たせした方々にはすみません。
乙です。
一体安泰だと思われたレックス組に何が…!?と気になる所です。
仮投下の件ですが、前半だけでも読んでみたい気がしますが……氏にはこのロワでの実績があります。
住民も氏のことを信頼していますし、特例としてまた予約して欲しい所です。
氏の作品を楽しみにしてる身としては横からかっさらわれたら泣きます。
まあこれは私の意見だけでは決められないでしょうが個人的な意見としてひとつ。
お疲れ様です。無理をしないで体に十分な休息を与えてやって下さい。
>>882 とりあえず、今日1日、ココのことを忘れて、心を落ち着かせてから、
改めて考えてみたらいかがでしょう?
乙ー
ニケの周りの評価がただの馬鹿から光の変態に上がったなw
息があればブルーもメロも生かしてくれそうだ。
>>882 非常に話が気になるところですし、仮投下で見てみたいと思います。
>>884のいうとおり、一度落ち着いてから、見せて欲しいです。
仮投下ッ!仮投下ッ!仮投下ッ!仮投下ッ!
落ち着け、催促しているように見えるぞ
仮投下に何か来たとかと思って見に行ったら、何もなかったじゃないか。
CFbj666Xrw さんの仮投下は、1日待って投下されなかったんだから、あきらめろ
テスト投下スレに前半を仮投下してきました。
後半では考察を書いていたのですが、今焦って書くべき事でも無い気もしてきましたし、
(ザオリクが)タバサ教へも影響を与えうるため、タバサの方が一段落してからの方が面白い気もします。
ですので、尻切れトンボになっていなければこのまま投下したいと思います。
最近派手な話ばかり書いてたから、繋ぎとか考察の腕が鈍ってたみたい。
多分、逆の方に意表をつけたとは思いますがw
予約切れして申し訳ありませんでした。
二方とも乙です。
修正は問題ないと思います。お疲れ様です。
仮投下も乙です。
ベルカナみたいなキャラがいるとやっぱり違いますねw考察が進んでる
問題ないと思います。
考察をまた繋ぐのも面白いかと。
本投下楽しみにしています
>>889 梨々と桜のことについても入れておいてほしい。
アイゼン視点では梨々はFライン開始から見てなくて、
桜はレミリアが重傷を負うほどの爆弾岩の爆発で別れたきり。
アイゼンが爆弾岩の特性に気付いているか不明ですが、
桜は中央森のどこかで瀕死の状態と考えるのが自然だと思います。
小太郎がそれを放っておくとは考えにくいです。
>>890 問題ないと思いますよー。
あ、ひとつ指摘点。爆弾石の回収は中断したんでしょうか?
あとベルカナの服。ずっと下半身裸…
あとは特に問題点は見つかりませんでした。
後半もこの調子なら、問題ない気がします。
見てみたい。
感想は本投下後に。
>>889 修正乙です。
>>892 アイゼンは梨々の名前知らないはずだから話し様がないんじゃないか?
金髪の女の子なんていくらでもいるわけだし。小太郎だって写真とか持っているわけじゃない。
>>893 そうでした。
ジーニアスとプレセアの話読み返したけどどこでも梨々名乗ってない(
桜は名乗ってたの確認しました。
>>889 修正乙です。
特に触れられていないけど4人(+2)ともヴィクトリアは死んだという認識でいいのかな?
もしそうなら、備考あたりに入れておいたほうがいいかも。
>>890 仮投下乙。ここもまた情報量の多いパートでしたね。
諸々の事情からあんまり無責任なこと言えないので、ここで本投下するかどうかは氏にお任せします。
ただ、こういう情報交換パートがあるのはありがたいとだけ。
お二方とも乙です。
>>889 個人的には、これで問題ないように思います。
>>890 1つ気になったのは……既に指摘されてますが、ベルカナの格好。
言及されていないのが気になりました。(前回すごい格好で終わってましたから)
あと、ここで終わらせることを検討しているなら、状態票も出して欲しかった気もします。
展開や「ここで終わらせることの是非」は問題ないと思います。
>>890 ものごっつい枝葉の部分のような気もしますが1つだけ。
城の出典はマリネラ王宮@パタリロ!だとする描写が過去にどこかでありませんでしたっけ?
>>898 誰かが言うだろうと思っていたけど、それは番外SSの話。
本編SSより優先するものではないと思う。
それにマリネラ王宮をジェダが持っていったにしても、実際に会場に配置しなかったって解釈にもできる。
適当に建物奪っていって何かの研究したとか参考にしただけとか理由はいくらでも作れるし。
ではもう少し修正を入れて状態表も付けたら、前半部までで投下する事にします。
服とか加筆してみますw
>>898 外伝でマリネラ王宮がジェダに盗られている場面ならあります。
ただ、ロワ内の城がマリネラ王宮であるという描写は無いんですよね。
ですのでマリネラ王宮は『盗ってはきたけど使わず(異次元にでも)捨てた』事にしようと考えています。
鈴木みかが使用した電話などはマリネラ王宮の物かもしれません。
>>889 修正乙です。とくに問題は無いと思います。
>>900 こちらも乙です。本投下楽しみにしています。
>>894>>895 その辺まで行くと、正直ちょっと細かすぎるような気がする
情報を交換したってこと自体はちゃんと書かれているんだから十分じゃないか?
「今後はこの話で言及されなかった部分については触れてはいけない」ってわけでもないんだし
どうしても気になるんだったらネタばれ名簿あたりにまとめておけばいいんじゃないかな
>>901 小狼に捜索を頼まれてるから、小太郎なら反応すると思います。
6時にタワーに向かってるはずで、その後の足取りが不明のシャナよりは、
大まかな場所がわかってる桜を優先するんじゃないかなと。
>>889 修正乙です。おおむね問題ないと思います。
以下は強いて言えば…な、物凄い重箱なんで全然スルーしてもらっても構わんのですが、
小太郎がなのは→ヴィータの情報を提供して、「繋がりは無い」と否定までした直後
「そういや接点ないな」とまた言い直しているところに微妙に違和感ありました。
話した直後なのに、そういやっておかしくないかなあと。
修正前の名残だと思うんですが、ここは仲間に尋ねるだけでもよくなったのではないかと。
>>900 こちらも乙です、本投下期待してます。
しかし、グランバニア城で服への加筆って…これはw
>>903 ちょwwwまさか…w
それは服とはいわないww
>>902 ああなるほど、失念していた
そういうことなら確かに何か反応あったほうが自然かも
906 :
905:2008/06/29(日) 21:27:17 ID:CTXJiGhf
反応だけな。あくまで「何か反応はあったんだろうな」って思っただけ
>>907 あれなぜかパパスが装備出来るんだよな…
だが待ってほしい
ハードレザーの防具はベルカナの古代語魔法を阻害するので好ましく(ry
「問題ない」という意見を多数頂き、ほっとしております。
では再びいくつかのご意見に。
◇小太郎の「そういや接点ないな」発言
すみません、つまらない凡ミスです……。
早い話がただ、台詞の一部を消し忘れただけでした。
Wiki収録時に自分が修正を加えるという方向でここは一つ……。
◇桜は?
自分の今までの事と皆の情報を合わせた結果、小太郎はシャナを優先した。
そういうことです。
◇小太郎の反応は? つーか情報交換中の会話の数が少ない!
情報交換シーンでの会話の羅列はあくまで
「いくつかこんな会話も繰り広げながら情報交換してたんだよ」
という表現をしたかっただけに過ぎません。
「描かれたこと以上に情報交換も会話も行われてるんだろな」
と思っていただく為の努力はしたつもりです。
改めて乙。
乙。
過剰な修正要求すみませんでした。
それでは投下を開始します。
ティーポットに満たされた熱湯の中で、紅茶の葉が踊る。
ゆらゆらくるくる、流れに翻弄されて激しく踊る。
それは銀のティーポットの内側で誰に見られる事も無いのだけれど、
お茶を淹れた事があれば誰でも想像できる当然の現象だ。
隠しても隠し切れない単純さ。
(人には隠したい物が有るものですが……人の心はこのくらい判りやすければいいのに)
ベルカナは一息を吐いて、言った。
「それでは望み通りティータイムと洒落込みましょう。気を落ち着けて、ね」
梨々=ハミルトン。それからレックスと、アルルゥ」
温かい紅茶と、パンの乗った皿がテーブルに並べられる。
テーブルを挟んだ向こう側には、名を呼ばれた三人の姿がある。
中央に座る少年レックスは頷き、話し始めた。
――時計の針が九時を回った。
* * *
――時刻、午後八時過ぎ。
「少し、お話よろしいでしょうか」
突如現れたベルカナの言葉に彼らが示す反応は三者三様だ。
困惑、動揺、警戒。
共通するのはその誰しもが隙を見せずいつでも対処できるよう身構えた事だろう。
レックスは刻み込まれた経験から、梨々は怪盗としての心得から、アルルゥは純粋な警戒心から。
ベルカナはそれぞれの理由から警戒を受け、逆に胸を撫で下ろしていた。
この島で突然接触してきた人間を警戒するのは当然の事だ。
問答無用で攻撃を受けはしなかったし、予想外の対応もされなかった。
この反応はむしろ、対処しやすい。
「何かな?」
ベルカナは頷き応える。
「幾つかあなた達に聞きたい事が有ります。ちょっとした情報交換などできるでしょうか?
そう、まずは……あなた達が殺し合いに乗っているかどうか、など」
幸運な事に、返ってきた答えはこの場面において理想的な物だった。
「乗ってないよ。ううん、乗っていたけどやめたんだ。ぼくはもう一度、勇者として生きる事にしたから」
「……アルルゥも、そう」
ただ殺し合いに乗っていないというだけでは信じられなかっただろう。
だがレックスとアルルゥはわざわざ『殺し合いに乗っていたけれどもうやめた』と漏らした。
レックスとアルルゥは、その事をベルカナに知られていないと思っているはずなのに。
黙っていた方が信用を得られるはずなのに、だ。
もちろんベルカナはその一言で全てを信じるほど甘くない。単純な人間を装っているのかもしれない。
悪評が既に広がっていて、曝け出す事で逆に信用を得ようとしているのかもしれない。
それでも切っ掛けは生まれた。
警戒しながらも、互いに歩み寄ってみようとする小さな切っ掛けが。
「あなたはどうなの?」
三人目、白いスーツを着た少女梨々の問いに答える。
「私もです。出来れば互いに協力を求めたいですね」
本当にそうするかはまだ決めていない、だけどそうしたいと思う歩み寄りの意思で。
レックスは頷き、言った。
「情報交換なら、良いよ。でも待って。僕たちはこれから、あの城と霧を調べに行くんだ」
「城と、霧?」
ベルカナが怪訝に繰り返す。
それはさっき空から見た光景の中にあった。だが。
「霧なら、もう晴れましたわよ」
「……え?」
ベルカナの言葉に返る困惑の声。
「城を覆っていた霧でしょう? それならついさっき、急速に晴れましたわ。魔法の霧でしょうか」
今、ベルカナやレックス達が居るのは森の中だ。
レックス達は川に沿って東へ移動していたが、常にすぐ縁を歩いたわけではない。
川淵がちょっとした崖のようになっていたり、沿って移動すれば遠回りになる事も有る。
周囲を崖に覆われた窪地のような場所を通ることも。
ジーニアスがイリヤを誘い込み、その後しばらく連戦の舞台となったのはそんな窪地だ。
ここから外は見えない。
「……行ってみよう」
レックスは城に向けて歩き出した。
* * *
――時刻八時半。
「……ベルちゃん」
城のバルコニーで、梨々は小さな呟きを漏らした。
目の前にある、冷たくなった二人の少女を見下ろして。
「知り合いなの?」
レックスの問いかけに、梨々は曖昧な頷きを返す。
「一緒に戦った……仲間、かな。お互いのことを何も知らずに成り行きで、でも力を合わせた女の子。
もしかしたらイリヤと一緒で私達を騙していたのかもしれないし、そうじゃないのかもしれない。
私はこの子の本名すら知らない」
「ベルって名前じゃないの?」
梨々は首を振る。
「名乗る時、なんだかおかしかったの。多分、咄嗟に偽名を名乗ったんだと思う。
髪が金髪だからもしかしてレックスくんの捜していた妹かもしれないとか考えたくらい」
それが間違いだった事はもう判っている。
だけどどう間違っていたのか、正しい答えが何だったのかは依然としてわからない。
「だから私は、この子をベルちゃんとしか呼んであげられない。ほんとの名前かもわからない名前でしか」
疑いながらも肩を並べて苦難を共有したのに、互いの名前を名乗る信頼さえ得られなかった。
梨々にはそれが悲しく思える。……彼女も、それに共感したのかもしれない。
「……ベルフラウ」
「え……?」
梨々は振り返る。城にまで着いてきた、ベルカナという少女の呟き。
「いえ、思い付きですわ。気になさらないで」
そう言われても気になる。そんな目でじいっとベルカナを見る梨々。
ベルカナはため息を吐いた。
「仕方ありませんね。この話に根拠は何もありません。その上で聞いてください」
頷く梨々。ベルカナは話し出した。
「まず聞いておきます。そのベルという少女、名前を呼んだ時、ちゃんと反応出来ていましたわね?
まるで誰を呼ばれたのか判らないような戸惑いを見せた事は無かったのでしょう?」
「え、うん、まあ」
少し言葉を交わした時、ベルという名前にちゃんと反応していたはずだ。
彼女は頷いて続けた。
「咄嗟に名乗った名前、それも様子がおかしい程なら何か元が有るはずですわ。
それに偽名というのは無理に名乗っても呼ばれた時に反応できない事が有ります。
旧作りの偽名に反応できていたなら、例えば愛称という事が考えられますわね。
あるいは名前でなく苗字だとか、本名を名乗りかけて途中で切ったとか」
「あ……」
「それらしい名前として名簿にはベルフラウ=マルティーニという名前が有りました。
ベルカナは私ですし、イリヤスフィール・フォン・アインツ『ベル』ンまで行くとこじつけですから、
まあベルフラウじゃないかと……推測に推測を重ねたもう憶測みたいな推測ですけれど」
仮に愛称を使ったとしても本名とは関係の無い渾名だってありえるのだしと付け加える。
ベルカナ自身、本当に思い付きだ。ベルカナ自身も名前の一部からベルと呼ばれていた頃が昔有ったから、
もしかしたらこの少女もそうかもしれない、それを偽名にしたのかもしれないと思っただけだ。
だけど梨々は確信していた。それで合っているのだろう。
名乗りかけて切った。言われてみれば、そんな名乗り方だった。
こんな島で少しでもうまくやろうと慣れないことをして、少し失敗した。そんな、偽名でない偽名。
「うん。多分、そうだよ。きっとそう……」
梨々はそっと、声をかけた。
「ごめんね、ベルフラウちゃん。お互い信じる事もできなくて、ごめんなさい。それから」
微笑みすら浮かべて、傍らの少女と手を繋いで倒れているベルフラウに。
「……おやすみなさい」
梨々はさよならの言葉を掛けた。
* * *
――時刻、午後九時より少し前。
「居ないね、誰も」
梨々は肩を落として気が抜けた様な溜息を吐いた。
霧の晴れた城内を探し回ったが、結局雛苺と木之本桜の姿は見当たらなからなかったのだ。
見つかった参加者は全て、死体だった。
ベルカナが介錯したという城戸丈の遺体。それからベルフラウと思しき少女の死体。
ベルフラウと寄り添って死んでいた誰も知らない少女の死体。
そしてレックスが言うには朝方戦い、首は雛苺が持ち歩いていた真紅という少女人形の胴体部。
殺し合いに乗らずとも明確な敵だったらしいが、片腕の無いその姿は無残だった。
それがこの城に有った死体の全て。
加えて主にその周辺で見つかった、誰かの支給品と思しき幾つもの品々。
城の地下で見つかった梨々曰く銃という物は、それが何か唯一判った梨々が持つ事になった。
バルコニーにも一つ銃が落ちていたけれど、そちらは弾というものが入っていないという。
それから梨々が掴んでいた物と同じ六角形の金属塊。刻んである文字がLXXという事だけが違う。
レックスが魔法を掛け、城を覆っていた霧の根源はこれだと断言した。
迷いの霧を生み出す事ができ、そのまま持っていても自己修復の力が有るのだという。
アルルゥは持ちたがらなかったし、レックスだって怪我は無い。
やっぱり梨々が持つ事になりそうだったが、ベルカナが持っていた奇妙な翼と交換を申し出た。
結局そういう事になった。
レックスは首をひねった。
「何処に行ったんだろう、あいつら。あの真紅って人形の胴体が有ったのも判らないし」
何故か残されていた、雛苺が持ち運んでいた頭部に繋がっていた筈の胴体。
「時系列から考えて関係ないのでは? 例えばここでその人形が壊されたのかもしれません。
この周辺で活動していたなら、死体はこの周辺に有ったはずです。様々な偶然でもありえるでしょう」
「あ、そっか。そうかもしれない」
ベルカナの指摘にレックスは納得した。確かに初めて雛苺と遭遇した場所もここから近い。
「だけどそれじゃ、雛苺は何処に? 森を西に行っていない、北の城にも来てないなら東? それとも……」
「南の橋を渡った可能性は低いでしょう。遠目ですが、私はそこを見てきました」
となると東だ、そう結論しようとして。
「私のように空を飛ばなければ、ですけどね。飛べば森から北の川も可能性が出てきます」
ベルカナの更なる指摘に水を差された。
「そういえばあいつ、空飛ぶ人形を呼び寄せたよ。ジャコって呼んでいた」
「人は乗れそうでしたか?」
「子供一人くらいなら乗れるんじゃないかな? おまけに人形が乗っても行けるかもしれない」
木之本桜を連れた雛苺が何処に向かったのか。また結論が遠のいてしまう。梨々は焦った
「でも、北か東かなんでしょう? 二つに一つならまだ可能性があるじゃない!」
「そうですね。それに空が飛べるとはいえ無理も出そうですからまず東と見て良いとは思います。
でも、その後は? 東へ橋を渡り、次は北へ? 南へ? 何処かの建物に入りますか?
もう一時間は遅れを取ってしまいましたわ。単純に追撃して追いつくのは難しいでしょう。
相手も女の子を無理やり連れてなら早く動けないでしょうけど、それは怪我人の私達も同じです。
闇雲に追跡しても、追いつくことは出来ません」
梨々は冷静な指摘に歯噛みする。
桜を助けたいと思うのに手がかりは希薄で、出来ることはあまりにも限られている。
「でも……無茶だなんて言ってても始まらないよ」
例え困難な事だとしても、諦める事なんて出来るはずが無い。
桜は梨々にとって大切な友達の一人だ。その友達が今も何処かで、辛い目に遭っているのだ。
ベルカナは溜息を吐いて言った。
「情報を交換し、休憩を取ろうと言っているのです。焦って疲弊した頭では思いつくものも思いつきません。
落ち着いて体を休めれば何か糸口が見つかるかもしれません」
急がば回れ。
それがベルカナの主張だった。
「嫌な言い方ですが、すぐに殺されていなかったのは利用価値が有るという事でしょう。
素直に従っているしばらくの間は殺されないのではないですか?」
レックスもそれに同意する。
「それに、悔しいけど僕達に休息が必要なのは本当だよ。
アルルゥや僕も消耗してるし、梨々なんか核鉄で回復しているけどボロボロじゃないか」
事実、レックス達は疲労困憊していた。
梨々とアルルゥは右手が使えず、全身に疲労や負傷が残っている。
レックスも怪我こそ残っていないが疲労し、マジックポイントは殆ど残っていない。
一方のベルカナも、実のところ休憩が目的の一つと言う有様だった。
処置済みとはいえ傷は深く、何より魔法に必要な虎の子の精神力が尽きかけている。
彼女は安心できる集団での休息を求めていたのだ。
「もしかしたら、回復した後なら協力できるかもしれませんわ」
「協力……?」
ベルカナは梨々の鼻先に餌をぶら下げた。
「実は、私は人を捜すのにとても有用なロケーションという魔法を習得しています。
目標の有る方向と大まかな距離を把握する事ができる魔法です」
「本当なの、ベルカナさん!?」
(あら、あっさりですわね)
ベルカナは心の中でほくそえみ、顔には労わりに満ちた優しい笑顔を貼り付ける。
まあ建前の方だって嘘ではない。この取引が相手にもたらす利益に偽りは無い。
「ええ、本当です。ですがこの魔法であなたの仲間を捜すには幾つかの問題が残っているんです」
それ以上にベルカナの得ようとしているリターンが大きいだけだ。
吊り上げようと狙っているのはいくつかの条件、そしてもし持っていればある物品である。
「一つ目は大した問題じゃありません。
ロケーションの魔法で目標を探知するには、目標の事を詳しく知らなければならないだけです」
「それって……どうすればいいの?」
ベルカナは打ち捨てられた真紅の亡骸を指差す。
「雛苺はあれの頭を持っているのでしょう? そしてレックス、あなたはその頭部を見た」
「うん、そうだよ。雛苺は真紅っていう人形の頭を持っていた」
質感は胴体が有る。顔はレックスが見ている。
「それなら後は、その顔について絵を描いてもらえば十分です。その頭部を探知しましょう」
「でも、ボク絵はあんまり得意じゃないよ?」
「私が書く!」
梨々が名乗りでる。
「それで良いでしょう。レックスが話し、梨々がそれを絵にして、私に見せてもらう。
一つ目の問題はそれで十分解決できます。問題は次からです」
ベルカナは話を続けた。
「二つ目。私の魔法は、安定して発動させるために発動体という物が必要となります」
「発動体? それってどんな物なの?」
「主に魔法の杖ですね。指輪状の物もあります。無くても使えない事はありませんが、失敗するかもしれません」
レックスがあっと声を上げて、ランドセルに入れたそれを引き出した。
「ねえ、それってもしかしてこれ?」
それはこの会場でジーニアスが使っていた杖だ。ベルカナはそれを手に取り、確かめてみる。
その杖は元々ネギ・スプリングフィールドが魔法を使う補助として使っていた杖だ。
そう、それはそういう事に他ならない。ベルカナは満面に喜色を浮かべた。
「正しくこれですわ! ありがとうございます、これで問題は残り二つです」
ベルカナは次の問題に進んだ。
「三つ目の問題は、解決方法こそ単純ですが他に手が無い厄介な問題です」
そう断ってから話し出す。
「残念ながら私にはもうその魔法を使う精神力が残っていません。
今無理に使おうとしても発動さえ出来ず倒れてしまうでしょう。
十分な睡眠を取らなければどうにもならないのです」
それが三つ目の条件だ。
「私には6時間の睡眠が必要なのです」
梨々は息を呑んで、それからその事実を把握した。
どう足掻いても休憩は必須なのだ。
「四つ目。最後の問題です。私にも、この島で出会った仲間が居ます」
「それは……っ、その子も助けなきゃいけないの?」
ベルカナは首を振る。
「判りません、何も。だから少しでも早くその子の状況を知りたいのですわ。
危機に陥っているのかも、もしかしたらもう殺されている恐れすらあります」
だからベルカナに木之本桜と雛苺を最優先で捜すつもりは無い。
「もし朝の放送で名を呼ばれなければ、私はその子を捜したいのです」
「その必要は無いよ」
横槍を入れたのはレックスだった。
「どういうことです、レックス」
「その子とは連絡を取りたいだけなんでしょ? それならボクはこんな物を持っている」
そう言ってレックスが取り出したのは一枚のカードだった。
「それ、会った時の……」
梨々はレックスから二枚のカードをスリ盗った事を思い出す。
あの時はカードの記述を見る余裕までは無かった。レックスはその一枚をベルカナに見せ付ける。
「『交信』。この島で出会った参加者と三分間だけ話をする事が出来るカードだよ」
「それは……なるほど、欲しいですわ」
喉から手が出るほど。
「待って、そのカードが有れば桜ちゃんの居場所も……」
思わず梨々は声を上げたけど、レックスは首を振る。
「ダメだよ、危険すぎる。雛苺も近くに居るんだ、どうなるか判らないよ」
「……そっか、そうだよね」
怪盗は予告状を送るけれど、屋敷の主人の目の前で宝の居場所を聞いたりはしない。
どう“対処”されるか判らない。梨々は仕方なく引き下がった。
レックスは内心で思った。
(やっぱりもう一枚のカードについては話さないほうが良いみたいだ)
『磁力』。カードの使用者を、これまでに出会った参加者の許に転移させるカードだ。
これさえあれば桜の許に駆けつけることは難しくない。
ただしたった一人で、雛苺も居る場所にだ。
(一人であいつらの相手なんて出来ないよ。ううん、ボクなら出来るかもしれない。
だけど呪文も殆ど使えない今は無理だ。万全の状態じゃないとあいつらには勝てない)
レックスは自分の限界を把握しつつあった。
ベルカナが応える。
「良いでしょう。そのカードを報酬としてくださるなら、私は木之本桜を助け出す手伝いをします。
その条件でよろしいですわね?」
「うん、良いよ。あ、でもごめん、やっぱりまずいかも」
レックスは一度了承し、しかし慌ててそれを否定する。ベルカナは怪訝に思った。
「まずい? 何故です?」
「だってボク達は……ボクとアルルゥは殺し合いに乗っていたんだ。
たくさんの人にもそのことを知られてる。一緒に来たら危険だよ。
情報交換は良いしロケーションという呪文も使って欲しいけど、その後は離れたほうが良い」
ベルカナは首を振った。
「あなたに肩入れするほどの義理はありませんが、それは気にしないでもらって結構です。
私はあなた達の依頼を受けました」
危険人物と目されていてもこの戦力と協力して動けるメリットは大きいですもの、という続きは伏せた。
非は無いが、野上葵に誤解されている事はもっと伏せる。
「ありがとう」
ベルカナはさりげなく恩を着せると、レックスの礼にどういたしましてと笑って見せた。
「さあ、それでは休息といきましょう。それからあなた達とは交換したい情報も……」
「……アルルゥ、お茶をのみたい」
これまで黙っていたアルルゥが、唐突にそう言った。
困惑の視線が集まる中、思わず尻込みしながらもはっきりと言い直す。
「お茶をのんで、なにかをたべて、お話ししたい」
その理由に対する疑問は後回し。
「それなら向こうの部屋の棚にとっておきの葉がある筈だよ。食堂はあっちのを使うと良いかな」
思わず答えたレックスの言葉に、疑問の視線がそっくりレックスへと移ったからだ。
「ちょ、ちょっと待って! どうしてそんな細かいこと知ってるの? この城に来るの、始めてなんでしょ?」
梨々の言葉に、レックスは曖昧な表情で首を振った。一同の疑問に、やはり困った顔で答える。
「それが、どういうわけか判らないんだけど……ここ、僕の家なんだ」
「家……ここが?」
疑問は困惑へと変わった。レックスは頷く。
「梨々が見つけた電話という物は見覚えが無いし、お店の中は空っぽだけど間違いない。
この城はボクとタバサの故郷、グランバニアの城だよ」
動揺が広がりそして。
「待ってください」
ベルカナが声を上げた。
「この城の何処に何が有るか詳しいなら、一つお願いが有ります」
「お願い?」
「ええ、本当は自分で捜す所ですが時間が掛かりすぎますから後にしようと思っていました。
でもこの城に詳しい者がいるなら話は別です」
レックスは深刻な様子でお願いをするベルカナに向き直る。ベルカナは真剣な表情で言った。
「その、どこかで服をいただけませんか?」
「服?」
レックスはそう言われてどうしてかと首をかしげた。
ベルカナの格好は上半身に病院服一枚である。脚なんて太ももまで露出していた。
「あ、そっか。防御力が低そうだね」
「他に言うことが有るでしょうに!?」
思わずツッコミを入れた。
「えっと……なんだろう?」
レックスは首を傾げて横に振った。
振られたアルルゥも首を傾げる。
「………………んー……すそがみじかい?」
「短いというものではありません! ちゃんと下に履くものが欲しいのです、私は!」
梨々が、あっと声を上げる。
「ごめんなさい、そういうファッションなのかなって……」
「ち・が・い・ま・す! どういう子達ですの、まったく」
レックス、アルルゥ、梨々。正直この三人、他人の格好に対する感覚が実に鈍い。
レックスは性徴前の男の子だったし、事実レミリアの裸にも無反応。
アルルゥは性格から予想できるだろうし、梨々に至っては変な格好に凄く耐性が有った。
純粋無垢で健全な子供の前には、不健全な物などそもそも理解されないのである。
「履くものだよね。それなら前に、持ち物がいっぱいで持っていけなかったあれが残ってるかも」
「アレ? あの、普通の服で良いのですけど」
「でも防具屋はからっぽだもん。女の人用なら呪文を跳ね返す光のドレスとか売ってたのに。
大丈夫、きっとあそこに有る物は見つかってないよ」
そう言ってレックスは案内する。通路を歩き、階段を降りる。
その先に有ったのは教会だ。
「シスターの服ですか?」
「ううん、こっちだよ」
しかし教会を前にUターン。降りてきた階段の陰に足を踏み入れる。
そこには目立たないよう、一つの扉が拵えてあった。
「ここは……隠し部屋?」
「うん、そうだよ。宝物庫なんだって」
そう言ってレックスはその扉を開けた。
「良かった、鍵は前に開けたままだ」
そこに有った物は。
ベルカナは頭を抑えた。ひどい頭痛がする。
「………………一つよろしいですか?」
「うん、なに?」
「どうして、宝物庫にこのような物が? 他には一体何を置いていたのです?」
「確か他には、幸せの帽子と祈りの指輪を置いていたよ。
幸せの帽子は歩いているだけでほんのすこしずつ強くなれて、
祈りの指輪はマジックポイントを回復する事が出来る貴重な物なんだ。
それだけは持ち物がいっぱいだから置いて行ったけど」
「………………」
「それも良い物なんじゃないの? お父さんもそれは良い物だって言ってたよ。
どうしてかお母さんがお父さんを怒ってたけど」
レックスは不思議そうな様子できょとんとしていた。悪意は無い。
純粋無垢で健全な子供の前には、不健全な物などそもそも理解されないのである。
「……ええ、あなたのご両親を見たことは有りませんがその情景はありありと浮かびますわ」
何故宝物庫に、貴重な魔法のアイテムと並んでこのような物が置かれていたのか。
考えても考えても、ベルカナには全くもって理解できない。
(どうして宝物庫に『エッチな下着』なんて置いていますの、この城は!!)
無性に叫びたくなるのを我慢する。
「他には、他には何かありませんの? 誰か予備の服とか……」
「私は無いよ。元々着ていた普段着はさくらちゃんにあげちゃったから」
これは梨々。
「レミリアのなら、干してる。でもきっと、ちいさい」
これはアルルゥ。
「うーん、タバサの服は小さすぎるし、お母さんの服だと大きすぎると思う」
これはレックス。
ベルカナはこの島に連れてこられた子供の中では少しだけ年長組だ。
「ぐ、確かにだぶだぶの服では魔法の使用に障害が……」
しかもベルカナの古代後魔法は詠唱に複雑な身振り手振りを必要とする。
動きを阻害する金属鎧や、硬い皮鎧を着ては使えないのだ。
「で、ですが大きい服なら締めて着れるかもしれませんわ、案内してください」
レックスを急き立てベルカナは再び階段を逆戻り。
レックスの母親の部屋に駆け込んだ。
………………。
「あ、これなら着れるんじゃないかな?」
「下着みたいな服しか有りませんの、この城は!?」
幸い、ちゃんと下も露出高めのでセットになっていた。
上だけの病院服もちゃんと着た。
ベルカナはレースのビスチェをそうびした。
* * *
――時計の針が九時を回った。
「それでは望み通りティータイムと洒落込みましょう。気を落ち着けて、ね」
梨々=ハミルトン。それからレックスと、アルルゥ」
情報交換を兼ねたお茶会が始まる。
今のところ交換した情報はレックス達の捜し人についてだけだった。
ベルカナは今のところ、巧妙に話を逸らしイエローのことを話していない。
城まで着いてきて幾つかの協力や助言をし、果てには依頼を受けても尚、ベルカナは彼らを警戒していたのだ。
尋ね人の事を聞くのは一見相手から情報を得る行為に思えるが、同時に誰を捜しているのか教える事にもなる。
自分の手札を明かす代わりに助言をしたり、求められた紅茶を淹れる事でバランスを取って会話を続ける。
淹れ方を学んでみたいと梨々が付き添ったが、これは毒を入れられないか警戒したのだろうと想像した。
「あなた達は妹と、友人達。後は敵として吸血鬼と、それから動く人形を捜しているのですね?」
ベルカナの確認に頷く梨々たち。更にアルルゥが付け加える。
「あと、朝に出会った二人」
ベルカナは慎重に尋ねる。もちろんそれがイエローと城戸丈である事は予想できている。
あの二人をその場面からこっそり助け出したのは、ベルカナなのだから。
「どういう子達ですか? 何故捜しているのです?」
アルルゥは答えた。
「帰る方法は他にも有るって言ってた。みんなで諦めなければ、絶対に帰れるって」
「だから、殺し合いをやめたと?」
言ってからベルカナは失敗に気づいた。殺し合いに乗っていたのがその頃だなんてまだ聞いていない。
白いスーツの少女……梨々の視線が僅かに動いた。確証は出来ないが気づかれたのかもしれない。
アルルゥが答える。
「みんなを殺して帰ったら、おとーさんに怒られるって言われた。アルルゥ、おとーさんに怒られるのイヤ」
(……核心を突いてみますか)
ベルカナは少し考え、曝け出す事にした。仮に気づかれたとすれば隠し続けるのは却って危険だ。
「……実を言うと、私はその場面を見ていました」
真正面から切り込む。
「一つ聞かせてもらって構いませんか? どうしてあの時、攻撃を続けたのです?」
その問いにアルルゥは――首をかしげた。
「わかんない」
「……わからない?」
眉をひそめるベルカナに、しかしアルルゥは答えるだけだ。
自分の判るかぎりの事を、判るだけ。
「ハサミの音したら、ヘンになった」
信じてもらえるかどうか、どう言えばいいかという工夫も無い。
正直に話すこと。アルルゥにできるのはそれだけだ。
「とてもきれいな音。きもちよくて、すっきりして、でもイヤな音」
「……矛盾していませんか?」
アルルゥはただ答える。
「アルルゥ、よくわかんない」
要領を得ない、話にならない話しかできない。
だけどだからこそ、ただの言い逃れと切り捨てられない。
人を騙すならもっと判りやすい嘘を吐く。苦し紛れならもっとあからさまな意図が混じる。
アルルゥの話にはそのどちらもが無い。
「でもプレセアおねーちゃんもその音、キライになった」
「プレセア? どんな子ですか?」
「かみの毛が桃色の、おんなのこ。ハンマーもってた、ちからもち」
(あの森に居た危険人物の一人じゃないですか)
片手にはハンマー、片手にはチョキチョキとハサミを鳴らしていた少女。
アルルゥと同じく出会い頭にイエローと城戸丈を殺そうとした一人。
「あ」
アルルゥの素っ頓狂な声。
「どうしたのです?」
アルルゥが答えた。
「そういえばレミリア、あのハサミは迷いをたち切るとか、人の“うんめい”をかえるって言ってた」
「……そういう事は早く言いなさい」
話の筋は通る。つまりアルルゥは奇妙なハサミに操られたと言っているのだろう。
ベルカナも毒物で思考力や判断力を鈍らされた事なら有る。魔法のアイテムならもっと有り得る話だ。
もちろん証拠は無い。
(でも全て嘘ではないでしょう。作り話にしては迂遠過ぎます。何処かに嘘がある可能性は有りますけど……)
ベルカナはアルルゥの瞳を見つめる。若干の警戒が混じった、とても澄んだ瞳を覗き込む。
アルルゥだけではなく、その横に居るレックスと梨々の様子を観察する。
情報交換といいながら自分側の情報を極力出さず、協力と引き換えに引き出し続けた無数の言葉。
それぞれの想いと人柄、それに目的。
その中に信じられる確証は何も無い。推測を組み立て判断し選択するための材料が有るだけだ。
それでも、疑い続ければどれだけの証拠が揃おうと信じられない。どこかで信じなければならない。
(安全、と見ましょうか)
ベルカナはようやく息を吐いた。
「信じますわ」
警戒を解いた。仲間か、そうでなくとも協力できる存在だと認める。
それがベルカナの出した結論だった。
「それでレミリアという吸血鬼もその頃は安全だった、と言いましたわね」
「うん」
頷くアルルゥ。
「プレセアおねーちゃんも生きていて、レミリアもこわくなかった。
おやつを食べて、今みたいにお茶をのんで、のんびりして」
アルルゥは感じる想いを幼い言葉で紡いでいく。
あの時に在ったものを伝えるために。
その後に何もかも無茶苦茶になってしまったけれど、それでも。
「きっと、しあわせだった」
あのお茶会は殺し合いばかり起きる島で出会えた、短くも優しい楽園だったのだと。
だからアルルゥは、情報交換をお茶会で行おうと提案したのだ。
* * *
その後も互いについての情報交換を続けた。
だが捜し人については殆ど空振りに終わってしまった。
急を要するとして最優先で捜した雛苺と木之本桜の手がかりは無かったわけだし、
レックスの妹であるタバサを見た者も居なかった。
梨々の親友である吉永双葉の情報も無かった。
ベルカナの捜すイエローも何処に行ったか判らない。
イエローの仲間でありまだ生きているブルーとグリーンの情報は無し。
城戸丈の仲間達は太刀川ミミを除き放送で名を呼ばれ、そのミミについても行方知れず。
レベッカを殺害したというレミリアが何処に消えたのかも不明だ。
レベッカの死体も、城に来るまで川の近くを通った程度では見つからなかった。
ベルカナは、橋で出会った吸血鬼について話さなかった。
その正体に薄々気づいていたが、だからこそ“死んだだけ”の方がマシに思えたからだ。
ベルカナはレベッカと言う名の被害者が、何処とも知れぬ場所でレックス達に知られる事なく滅びるよう祈った。
レックスは思わず呻きをあげる。
「本当に互いの情報が無いよ」
「その事から逆にちょっとした仮説も立てられますけどね」
ベルカナは常々考える人間である。
動く前にまず考える。時間が限られているならその中で精一杯考えに考えてから行動に移すのだ。
そうする事により、単純に物理的な面で脆弱なチームが崩壊しないよう苦心してきたのだ。
情報を整理すること、組み立てることは得意分野と言えた。
「恐らく、最初の会場への配置は完全な無作為ではなかったのでしょう。
イエローと丈の仲間はそれぞれ3人も居ました。
他にもレックスとタバサ、梨々と吉永双葉、木之本桜と李小狼、レミリアとフランドール。
ここに連れて来られる前の仲間同士が殆ど見つかっていません。
私達が出会った参加者の総数を考えれば、確率的にはもっと出会っているはずなのに、です」