〜参加者一覧[作品別]〜
【魔法少女リリカルなのは】高町なのは/フェイト・テスタロッサ/ヴィータ/八神はやて/アリサ・バニングス
【ローゼンメイデン】真紅/翠星石/蒼星石/雛苺/金糸雀
【魔法陣グルグル】ニケ/ククリ/ジュジュ・クー・シュナムル/トマ
【ポケットモンスターSPECIAL】レッド/グリーン/ブルー/イエロー・デ・トキワグローブ
【デジモンアドベンチャー】八神太一/泉光子郎/太刀川ミミ/城戸丈
【ドラえもん】野比のび太/剛田武/リルル
【魔法先生ネギま!】ネギ・スプリングフィールド/エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル/犬上小太郎
【絶対可憐チルドレン】明石薫/三宮紫穂/野上葵
【落第忍者乱太郎】猪名寺乱太郎/摂津のきり丸/福富しんべヱ
【名探偵コナン】江戸川コナン/灰原哀
【BLACKLAGOON】ヘンゼル/グレーテル
【クレヨンしんちゃん】野原しんのすけ/野原ひまわり
【ドラゴンクエストX】レックス(主人公の息子)/タバサ(主人公の娘)
【DEATH NOTE】メロ/ニア
【メルティブラッド】白レン/レン
【ちびまる子ちゃん】藤木茂/永沢君男
【カードキャプターさくら】木之本桜/李小狼
【テイルズオブシンフォニア】ジーニアス・セイジ/プレセア・コンバティール
【HUNTER×HUNTER】キルア/ゴン
【東方Project】レミリア・スカーレット/フランドール・スカーレット
【吉永さんちのガーゴイル】吉永双葉/梨々=ハミルトン
【ヴァンパイアセイヴァー】リリス
【MOTHER】ネス
【サモンナイト3】ベルフラウ=マルティーニ
【Fate/stay night】イリヤスフィール・フォン・アインツベルン
【みなみけ】南千秋
【武装錬金】ヴィクトリア=パワード
【BLACKCAT】イヴ
【からくりサーカス】才賀勝
【銀魂】神楽
【ひぐらしのなく頃に】古手梨花
【灼眼のシャナ】シャナ
【とある魔術の禁書目録】インデックス
【るろうに剣心】明神弥彦
【ボボボーボ・ボーボボ】ビュティ
【一休さん】一休さん
【ゼルダの伝説】リンク(子供)
【ベルセルク】イシドロ
【うたわれるもの】アルルゥ
【サザエさん】磯野カツオ
【せんせいのお時間】鈴木みか
【パタリロ!】パタリロ=ド=マリネール8世
【あずまんが大王】美浜ちよ
【ポケットモンスター(アニメ)】サトシ
【SW】ベルカナ=ライザナーザ
【Gunslinger Girl】トリエラ
【ぱにぽに】レベッカ宮本
【FINAL FANTASY4】リディア
【よつばと!】小岩井よつば
計86名
〜参加者一覧[あいうえお順(名簿順)]〜
01:明石薫/02:アリサ・バニングス/03:アルルゥ/04:イエロー・デ・トキワグローブ/05:イシドロ/
06:泉光子郎/07:磯野カツオ/08:一休さん/09:猪名寺乱太郎/10:犬上小太郎/
11:イリヤスフィール(略)/12:インデックス/13:イヴ/14:エヴァンジェリン(略)/15:江戸川コナン/
16:神楽/17:金糸雀/18:城戸丈/19:木之本桜/20:キルア/
21:ククリ/22:グリーン/23:グレーテル/24:小岩井よつば/25:剛田武/
26:ゴン/27:才賀勝/28:サトシ/29:三宮紫穂/30:シャナ/
31:ジーニアス・セイジ/32:ジュジュ・クー・シュナムル/33:白レン/34:真紅/35:翠星石/
36:鈴木みか/37:摂津の きり丸/38:蒼星石/39:高町なのは/40:太刀川ミミ/
41:タバサ(主人公の娘)/42:トマ/43:トリエラ/44:永沢君男/45:ニア/
46:ニケ/47:ネギ・スプリングフィールド/48:ネス/49:野上葵/50:野原しんのすけ/
51:野原ひまわり/52:野比のび太/53:灰原哀/54:パタリロ/55:雛苺/
56:ビュティ/57:フェイト・テスタロッサ/58:福富しんべヱ/59:藤木茂/60:フランドール・スカーレット/
61:ブルー/62:古手梨花/63:プレセア・コンバティール/64:ヘンゼル/65:ベルカナ=ライザナーザ/
66:ベルフラウ=マルティーニ/67:南千秋/68:美浜ちよ/69:明神弥彦/70:メロ/
71:八神太一/72:八神はやて/73:吉永双葉/74:李小狼/75:リディア/
76:リリス/77:梨々=ハミルトン/78:リルル/79:リンク(子供)/80:レックス(主人公の息子)/
81:レッド/82:レベッカ宮本/83:レミリア・スカーレット/84:レン/85:ヴィータ/
86:ヴィクトリア=パワード
計86名
〜ロリショタロワ・基本ルールその1〜
【基本ルール】
参加者全員で殺し合い、最後まで生き残った一人が優勝となる。
優勝者のみが生きて残る事ができて『何でも好きな願い』を叶えて貰えるらしい。
参加者はスタート地点の大広間からMAP上にランダムで転移される。
開催場所はジェダの作り出した魔次元であり、基本的にマップ外に逃れる事は出来ない。
【主催者】
主催者:ジェダ=ドーマ@ヴァンパイアセイヴァー(ゲーム・小説・漫画等)
目的:優れた魂を集める為に、魂の選定(バトルロワイアル)を開催したらしい。
なんでロリショタ?:「魂が短期間で大きく成長する可能性を秘めているから」らしい。
【参加者】
参加者は前述の86人(みせしめ除く)。追加参加は認められません。
特異能力を持つ参加者は、能力を制限されている場合があります。
参加者が原作のどの状態から参加したかは、最初に書いた人に委ねられます。
最初に書く人は、参加者の参戦時期をステータス表または作中に記載してください。
【能力制限】
参加者は特異能力を制限されることがある。疲労を伴うようになっている能力もある。
また特別強力な能力は使用禁止になっているものもあるので要確認。
【放送】
放送は12時間ごとの6時、18時に行われる。内容は「禁止エリアの場所と指定される時間」
「過去12時間に死んだ参加者名」など。
【首輪と禁止エリア】
・参加者は全員、爆弾の仕込まれた首輪を取り付けられている。
・首輪の爆弾が起爆した場合、それを装着している参加者は確実に死ぬ。
・首輪は参加者のデータをジェダ送っており、後述の『ご褒美』の入手にも必要となる。
(何らかの方法で首輪を外した場合、データが送られないので『ご褒美』もない)
・首輪が爆発するのは、以下の4つ。
1:『禁止エリア』内に入ってから規定時間が過ぎたとき。
2:首輪を無理やり取り外そうとしたとき。
3:24時間で死者が出なかったとき。
4:ジェダが必要と判断したとき(面と向かって直接的な造反をした場合)。
〜ロリショタロワ・基本ルールその2〜
【舞台】
ttp://takukyon.hp.infoseek.co.jp/cgi-bin/clip/img/76.gif 【作中での時間表記(2時間毎)】(1日目は午前6時よりスタート)
深夜:0〜2
黎明:2〜4
早朝:4〜6
朝:6〜8
午前:8〜10
昼:10〜12
真昼:12〜14
午後:14〜16
夕方:16〜18
夜:18〜20
夜中:20〜22
真夜中:22〜24
【支給品】
・参加者が元々所持していた装備品、所持品は全て没収される。
・ただし体と一体化している装備等はその限りではない。
・また衣服のポケットに入る程度の雑貨(武器は除く)は持ち込みを許される物もある。
・ゲームの開始直前に以下の物を「ランドセル」に入れて支給される。
「食料」「飲料水」「懐中電灯」「地図」「鉛筆と紙」「方位磁石」「時計」「名簿」
「ランダムアイテム(1〜3種)」。
なおランドセルは支給品に限り、サイズを無視して幾つでも収納可能で重量増加もない。
その他の物については普通のランドセルの容量分しか入らず、その分の重量が増加する。
【ランダムアイテム】
・参加者一人に付き1〜3種類まで支給される。
・『参加者の作品のアイテム』もしくは『現実に存在する物』から選択すること。
(特例として『バトルロワイアル』に登場したアイテムは選択可能)。
・蘇生アイテムは禁止。
・生物および無生物でも自律行動が可能なアイテムは参加者増加になる為、禁止とする。
・強力なアイテムには能力制限がかかる。非常に強力なものは制限を掛けてもバランスを
取る事が難しいため、出すべきではない。
・人格を変更する恐れのあるアイテムは出さない方が無難。
・建前として『能力差のある参加者を公平にする事が目的』なので、一部の参加者だけに
意味を持つ専用アイテムは避けよう。出すなら多くの参加者が使えるようにしよう。
【ご褒美システム】
・他の参加者を3人殺害する毎に主催者から『ご褒美』を貰う事が出来る。
・トドメを刺した者だけが殺害数をカウントされる。
・支給方法は条件を満たした状態で、首輪に向かって『ご褒美を頂戴』と伝えるか、
次の放送時にQBが現れるので、以下の3つから1つを選択する。
1:追加のランドセルが貰える。支給品はランダムで役に立つ物。
2:ジェダに質問して、知人の場所や愛用品の場所などの情報を一つ聞ける。
3:怪我を治してくれる。その場にいれば他の人間を治すことも可能。
〜ロリショタロワ・基本ルールその3〜
【ステータス表】
・作品の最後にその話に登場した参加者の状態、アイテム、行動指針など書いてください。
・以下、キャラクターの状態表テンプレ
【現在位置(座標/場所)/時間(○日目/深夜〜真夜中)】
【キャラクター名@作品名】
[状態]:(ダメージの具合・動揺、激怒等精神的なこともここ)
[装備]:(身に装備しているもの。武器防具等)
[道具]:(ランタンやパソコン、治療道具・食料といった武器ではないが便利なもの。
収納している装備等、基本的にランドセルの中身がここに書かれます)
[思考・状況]
(ゲームを脱出・ゲームに乗る・○○を殺す・○○を探す・○○と合流など。
複数可、書くときは優先順位の高い順に)
◆例
【D-4/学校の校庭/1日目/真夜中】
【カツオ@サザエさん】
[状態]:側頭部打撲、全身に返り血。疲労
[装備]:各種包丁5本
[道具]:サイコソーダ@ポケットモンスター
[思考]
第一行動方針:逃げた藤木を追い、殺害する
第二行動方針:早く仲間の所に帰りたい
基本行動方針:「ご褒美」をもらって梨花の怪我を治す
【予約】
・キャラ被りを防ぐため、自分の書きたいキャラクターを予約することができます。
・期間は予約から72時間(3日)。期間終了後は、他の人が投下してもOKです。
・予約しなくても投下することはできますが、その際は他に予約している人がいないか
十分に確認してから投下しましょう。
【投下宣言】
・投下段階で被るのを防ぐため、投下する前には必ずスレで 「投下します」 と宣言を
して下さい。 投下前にリロードし、被っていないか確認を忘れずに。
【トリップ】
投下後、作品に対しての議論や修正要求等が起こる場合があります。
本人確認のため、書き手は必ずトリップをつけてください。
つお
>1乙
>>1乙 by死者スレ代表w
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/ _ } ト--、__ \ / /
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トミン ノ`ー{ l j レ/`>rィ´⌒Yイ 、 \`ヽ、j⌒ヽ_,〉 / /
__ rxム /仍'´yィ^〈 ー〈ソー'´ 〈,ソ i 〃ノ -‐ノ`ヽソー-、 / /
人_,⊥__ |Ckソ斗{/ /ト,、^ー;勹ト┬「ソ 〉 、ゝーくー<__ ノ⌒ヽ/ /
7ニゝ〈 、〈,ル-ー\弋^´八 〈ヽハ`フ^Z⊥.」 ィン^ ー;ヘ、 \ ヾ._ / /ヽr、/\
Z二ニ>込(⌒ヾ⌒ ソハ 〈_ンイイニ/__、ィソ′ 厶ン^\ >、─;-、/ /ハノノ \∠_ゝ
〈广 ̄〈 〈、〉ー^ ̄´ `ー'⌒^7lノニヽ-fソ´、 ,ィ仁´ `7く,r戈X7/ />心_ム<
厂`T7T丁T'ー‐-、__,.、-‐‐'フ火ニ7‐f}−-く^ー‐〉 ノ rノノ{`^ソ /くー′`l ヽ 丶\
ノ__ >jUlU i ,ィ个x‐< `フT T f{ T下 \、」__ {_fバ仏 〈 ∧ ト、__/| l ヽヽド
. 〈 ___Ll、l⊥_l_,xヘ-く-‐'L_f\ \__i | f} `、 \、 ̄\ `^´ 〉-ソ{ノ ^¬_」、ト、 N
厂/ j´〉´ヽ ヽ _ハ Y´ 'トィ^>、_  ̄{ f} \ヽ > / /′ ト」ト小∨
V 〈_,ハ ̄ハ ヽ /V^ヘ ヽ/ `>、_,ハ_下ム f} 、 Y´ ,/ /
ヽ、/ 〈ヽ__ハ ヽ ヽkヘ \ / l | f} 丶 \rj7 /、
{ 人´ ヘ 〈 /ヘノ \`ー‐--- 、__| f} i 、 ヽゝイヾ〉
V__イ`^厂ヽ ヽ ^X _」 ̄丁¬-、__| f} l', 丶 \シ′
〉 个ー^ヘ、ヽ / >亠冖、__」 f} l ', ヽ , ' ,ハ、
{ ^>、 ヘ、\、 / i U | f} l ', ,. -─‐-ヘ / /ヽ
`V ^入_,ノ>、__`ー─亠- 、j | f} l ',//,二ニニ〈///\
. \′〈\_ト、_jスrー┬r-、ヽj f} ─_ニ‐´/ィT 厂ヽ^K´/^ ン′
 ̄`X__/L._〈_ 」 l 「Tヽf}二-‐_´イ〈 l ヽTア‐勹\ン′
. /、ヽL,__〈 l`T^ーzLl_k‐<「 l ノ‐'T´ノ ハノ
ノ^ 、_ン′  ̄ス_ 〈 l | _」_广 ̄ └‐'7^´
,.イ〈、`/ ヽ/⊥工スー宀ナ´ イ
. { 八_ソ ト−‐| / |
,イ,ニニ7 ト- -j / |
l `ー'l ト-‐7 / |
{. / ,辷'7 ,/ l|
`ー‐' {仁フl / / / l |
ノーィ′イ7 〃 〃 N|
/ニコ| 〈/レ//l /l / l/ /| レlリ
/トー-'1 'ヘ,ル/レ/レリ//lV´
{、 ̄ / ′″′
 ̄´
予約を破棄しましたが、完成しましたので
ニア、弥彦、キルア、太一を投下したいと思います。
「…………」
しばらく、自分が手をかけてしまった子供の死体を見ていた。
視線を逸らさず、未だにこみ上げてくる異物も先ほどとは違い、すべて押し込む。
理由はどうであれ、明神弥彦は罪も何もない幼い子供を殺した。
反論の余地もなければ、覆せる内容でもない。
認めなくてはならない事――ゆえに視線を逸らさない。いや、逸らす事が出来ないというのが正しい表現であった。
それでも、それでも体はこの場から去ろうとする。
このままこの場にいるのはとてもまずい事である、と体が伝えてくる。
体が伝えてくる内容を頭で理解しようとする。
即ち、これからどうするべきであるかと……
先ほどまでいた仲間はもういない。
今更追ったとしても、それは追いつける距離でもない。
ならば……どうすればいい?
自分に当然の疑問を投げかける。しかし、彼は体が伝えるもっとも重要な事を忘れていた。
それは、この状況で第三者が現れる事――その危険性は肌のみ感じたが、硬直している体を弥彦が動かす事は出来なかった。
そんな重要な答えに気づかぬまま、事態は悪い方向へと進んでいく。
のびたとカツオが走り去っていった大通り、そこから2人の少年が現れてきた。
弥彦の目が大きく見開く。
このとき、初めて弥彦はもっとも重要な事に気づく。
自分の持ってる刀、着ている服、見なくてもわかる。今そこで死んでいる子供の血だらけであることを……
弥彦の足、手、体、頭すべての部分が自身に警告する。
――この場から去れ、逃げろ!!――
理由など考える暇もなかった。
今まで硬直していたのが嘘みたいに、体が動いた。
くるっと半回転し、一気に足を動かした。
後ろから何か聞こえたが気にしてはならない。
確実に向こうは勘違いしている。
自分があの子を殺したのだと……
(いや、事実殺したじゃないか! 何を言っているんだ俺はっ!)
弥彦は、罪から逃れようとした自分を恥じる。
昔から足は鍛えてある。仮に追って来たとしても追いつかれる心配はあまりない……と思ったが確証はなかった。
故に、弥彦はチラッと後ろの様子を見る。
まだ距離はある。しかしその距離は中々離れず、決して逃げ切れる距離ではない。
何か……何か隠れる所はないのかっ!?
弥彦はちょうどその瞬間、目の前にそびえ立つ建物を見上げた。
自身の世界では見た事もない大きい、高い建物
ここまで大きい建物ならばきっと隠れる場所もたくさんあるはず!
このまま逃げ続けてもジリ貧……弥彦は思い切って建物の中へと入った。
と、
「今入ってきた少年、目の前のエレベーターを使って展望室にまで来てください。」
「え……?」
思わず辺りを見回す。
しかし、人影も何もない。
こうしてる間にも、後ろからは敵が近づいてきている。
弥彦はわけもわからず、とりあえず言われた通り目の前にある小さな部屋に入る。
くるっと振り返りると、扉の右手に何か色々書いてある。
そして『展望室』と書かれた部分を見るや否や、やや出っ張ってる部分を押し込んだ。
(ええぃ! ままよ!!)
と、扉がしまると同時に、上に登っていく感触を感じた。
* * *
結論から言うと、太一は「行こう」という選択肢を選んだ。
確かに殺人者がいるかもしれない。しかし、そんな事で悩んでいたらこの先他の参加者に出会えるわけがない。
さっきの子の事も気になるが、どこに行ったかさっぱり、それならばと思い進む事にした。
先ほどの子が示した方向と首輪探知機を頼りに探し出した。
もしかしたら他の参加者もそこにいることを信じて……
数分だろうか、探知機に1つ光が点滅し始めた。
ちょうど隣にある建物が切れた小さい道にいるのだろう。しかし、その点滅は動かない。
また一つしか点滅しないのも不思議であった。
この機械は首輪に反応する。よって、そこに殺人者と死体があるならば2つ点滅するはず……
と、その時彼の頭の中で1つの結論が出た。
今点滅してるのは死体で、殺人者はもうどっかに行ってしまった、と
キルアも隣から太一の首輪探知機を覗き込んで大体の事情を察したのだろう。
それでも、それでもだ。
ここまで来たんだ、その人を埋葬して弔う事ぐらいしてやっても問題はないはず、と太一は思った。
殺人者がいない事に対しての安心感と他の人と接触できない残念さが交じり合いながら、太一とキルアは小さい小道に入った。
「……え?」
太一は思わず声に出てしまった。
予想外の光景、そこには2人……いた。
見てはいけないものを見てしまった――そう、学校の友達が悪いことをしてる所を偶然見つけてしまって、なんともいえない沈黙が支配す
るあんな感じに
そこには江戸時代の人か? と思えてしまう袴姿の少年と……口では説明できない何かが横たわっていた。
少年の手には、血がべったりとついてる刀が握られ、袴にも血がついていた。
そして、その横たわってる何かは……多分死体なのだろう。しかし、正直目をやるのも辛いぐらいであった。
体型でいうなら本当に小さい少年――5,6歳といえるだろう。
そんな子供を彼が……彼があんな姿にさしたのだろうか?
と、その時だった。
実際の時間は1秒も満たしていなかったのかもしれない。
とにかく、目の前にいる袴姿の少年はいきなり自分達に背を向けて、走り去ったのだ。
「追うぞ太一!」
「え? あ、あぁ……」
キルアに呼びかけられて曖昧な返事をする太一
既にキルアは少年を追う形で走り始めて、太一も慌ててそれに続いた。
逃げていく少年も、キルアも、どちらも足が速かった。
太一もサッカー部のエースと呼ばれているが、離されないよう全力疾走で追うのが精一杯であった。
一方のキルアは余裕の表情で少年を追う。
キルアが本気で追えば、ものの1秒もかからず追いつけるだろう。
しかし、キルアはこのままの状態を維持していた。
状況証拠から、あの少年があの子供を殺したには違いない。
問題はその殺し方、あれはいくらなんでも尋常ではなかった。
キルア自身そっちの世界にはどっぷり浸かった身、ああいった死体は見慣れているのも事実であった。
ならば、あの少年も同じ世界の住人なのだろうか?
また、手には刀を所持している。相手の実力がわからない今、迂闊に向こうの間合いに入るのは難しい。
このまま距離が開かない状況が続けば、相手はなんらかのアクションを起こすはず……それをキルアは狙っていた。
また太一を抱えて追う事を考えたが、嬉しい誤算だったのか必死に食らいついていた。
と、突然目の前の少年がかくっと曲がって、そびえ立つタワーの中へと入っていった。
隠れてやり過ごそうという魂胆なのか、それだったら隠れる場所が限定されるタワーより他のデパートとかの方がいいのでは?
相手の意図がわからないままキルアと太一は遅れて数秒、タワーの中へと入る。
肩を激しく上下に動かし、息を整えようとする太一を放っといてキルアは周囲を見渡す。
小さいフロアで、人が隠れるような場所はあまりない。
気配は感じられない……不意打ちを狙うつもりなのだろうか?
目の前には2つのエレベーター、互いに示す階は『展望台』
(……気配は感じられない。となると、展望台にいるのか?)
1階に人がいないのは確実、不意打ちを狙うならば確実に息があがっている今(ただしキルアは疲労感すら感じていないが)
太一が襲われる様子もない。
ここまで気配を感じさせない人間が、そんな相手に余裕を持たす行動など取るはずがない。
となると、相手は上へ逃げたということになる。
移動手段は、見た限り目の前にある2つのエレベーター、両方とも『展望台』を指しているのはどちらとも最後の利用者が展望台に行った
という証拠でもあった。
「太一、あいつは多分展望台にいる……どうする?」
「決まってるだろ……ここまできて引き下がるわけにもいかないだろ……」
まだ息が整っていないが、その瞳は強い意思を持っていた。
「OK」と呟くと、キルアはエレベーターを呼び寄せるためにボタンを押した。
「相手は刀を持っているからな、気をつけないとさっきの子供みたいになるぞ」
別にキルアは脅したつもりはない。それだけ気をつけなければならない相手である、という事を太一に知ってほしかった。
さらにキルアは続ける。
「とりあえず2つエレベーターがあるから、まず2つともこっちに呼んで退路を絶たせる。
そして俺が先に上に上がるからその後すぐ追ってくれ」
「あぁ、わかった」
太一の実力はキルアと比べたら確実にない。
またキルアであるならば、仮に奇襲されたとしてもうまくやり過ごす実力があると自負している。
その為の作戦であった。
そして、説明を終えたと同時に2つのエレベーターは2人を迎えた。
展望台に辿り着く間、様々な奇襲戦法を考えた。
一番効果的なのが扉が開いた瞬間、展望台という空間に入った瞬間
扉が開いた瞬間刀を突いてくる奇襲戦法は自身が片隅にいけば問題ない。
エレベーターから出ようとした瞬間襲われるのは、全力で離れれば問題ないはず。
敵はさっきのスピードが限界だと思っているはずだから、だ。
最初からエレベーターの上に乗っていて襲う可能性もあり、ずっと上を警戒してるが襲ってくる様子もない。
太一のエレベーター……は大丈夫はずだ。先ほど穴を開けて確認したが、人はいなかった。
と、ポーンという音が鳴った。
目的地の階に到達したという合図、すなわち展望台に着いたということであった。
開かれる扉、キルアは視線を前方にだけ集中する。
ほんのわずか数cmで全て判断する。
(目の前には敵がいないな……ならば!)
自身がちょうど入れるぎりぎりの所で、一気に展望台という空間の中へと入っていった。
常人ではあっという間の出来事、瞬きしてる間に自身の背後を取られたと錯覚するようなスピードであった。
素早くエレベーター周辺を見渡すが、誰もいなかった。
と、続いて太一のエレベーターが着いて、扉が開いた。
そこには先ほど別れた太一がいてひとまず安心する。
しかし……
「どうだキルア? 誰かいるかっていないよう……うわっ!?」
太一はキョロキョロ辺りを見渡しながら前に進んだが、突然キルアが目の前に迫り、再度エレベーターの中へと入っていった。
素早くボタンを押して、扉を閉めるキルア
呆然としている太一は、すぐに今の出来事を聞いてきた。
「おい、一体どうしたんだよ?」
「ガスだ……どんな効果を起こすかまではわからんがな……確実に悪い奴だろう」
と言った瞬間キルアの体がすとっと落ちて膝をつく。
「おい! 大丈夫か……って」
慌てて駆け寄る太一にキルアは片手を使って制止する。
「大丈夫だ……ある程度耐性はついているんでね、お前の方こそ大丈夫か……ってダメっぽいな」
「悪い……頭が……ボーっとして……きた……」
太一も太一で、頭を抑えるように崩れ落ちた。
キルアと太一は、完璧に謀られたのであった。
確かにキルア自身もガスを使った攻撃は考えた。
しかし、ガスを使うのにあの限定された室内で使うのは諸刃の剣、ありえない事だと判断してしまった。
その結果がこれだ。
(くそっ!)
奥歯をぎりっと噛み締める。
敵が見えない理由はわからない、が、相手の策略にまんまとはまって、自分の他に太一を傷つけてしまったのは自分のせいであった。
とりあえず死にいたるようなものではなく、幻覚症状とか昏睡になるとか、そういったタイプの奴だとキルアは判断した。
幸い、自身には耐性がついており、幻覚症状に陥る事はないが、躊躇なく襲い来る頭痛が酷かった。
とにかく、この状況はまずい……早く安全な所で休まなければならなかった。
キルアは太一を担ぐように、とりあえずタワーから離れた。
* * *
「どうやら去ったようですね」
展望室の窓からキルアと太一の様子を伺うニア
そして話しかける相手は弥彦
2人は展望室にいたのであった。
ニアは弥彦が展望室に来るや否や、素早く自分の手にあった眠り火に火をつけ、メタちゃんに指示をした。
それは壁になること。
――この壁を忠実に再現してください――
メタちゃんは言われた通りに壁になり、ちょうど人間が1人通れるぐらいの隙間を作ったのだ。
ニア達の方からは見えないが、窓の風景も完璧にトレースしたのであった。
後は眠り火が自然と燃え、煙が広がるのを待つだけ……
敵は入ってきたと同時に、煙を吸う羽目にあい、自分達はメタちゃんが作った壁のおかげで吸わずに済む。
まぁ、彼らがこの煙の存在に気づいて逃げてしまったのは誤算であった。
本来ならここで眠らして、起きた時にこちらが優位にたったまま、話を進めようとニアは思っていた。
が、過ぎた事を気にしてはならない。今やるべき事をやる。
「あぁ、煙を逃がしたいと思うので両端の窓をちょっと割ってくれますかね?」
言われた通り、弥彦は黙って血まみれの剣の柄を使って小さい穴を開けた。
ニアはそれを確認するとメタちゃんに少し小さくなるように指示して煙を穴から逃がした。
「……どうして俺を助けたんだ?」
「一応ここから双眼鏡を使って一部始終を見さしてもらいました。ですが、あなたの行動は仕方のない行動です。
実際私があの立場にいたら同じことをしないとは言えませんからね」
ニアは続ける。
「そして他の2人はあの場から去った。おおよそ自分はやっていないと思い込んで逃げただけだと思いますがね……しかしあなたは違う。
現実から目を背けず、自分の罪の重さを感じていた。そのような人間が悪い人間ではないはずです。まっあなたを追って来た2人がどう
なのかは知りませんがね」
言いながらも、アクション仮面を片手に弄ってる姿が、真面目なのか人をおちょくっているのかわからないのに、弥彦は少し苛立った。
が、ここは黙っておく。何ていったって自分を救ってくれたからだ。
「多分このゲームから脱出するためには、私みたいな人間だけでは脱出できない……貴方みたいな行動力のある人間が欲しいのです。
本当はあの2人も欲しかったのですが……いささか強行過ぎたようですね。まぁ先ほどの2人から助けた、という事で出来る限り協力的
になって欲しいのですがどうでしょう?」
「……脱出できるといったが、本当なのか?」
弥彦は半信半疑でニアに聞く。
ニアは満面の笑みを浮かべて答えた。
「はい、これは確定事項です。なぜなら――」
正義は必ず勝ちますから
【B-7/タワー内展望室/1日目/昼】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康
[装備]:アクション仮面人形@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×10@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考] :さて、どうすべきですかね
第一行動方針:とりあえず目の前の少年との情報交換
第二行動方針:この場から離れて、なんらかのアクションを起こすべきかどうかの判断
第三行動方針:展望室から見える部分の警戒&逃げた2人(太一とキルア)の警戒(双眼鏡である程度の特徴は掴んでいます)
第四行動方針:メロと接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める (第2行動方針により悩んでおります)
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
【B-7/タワー内展望室/1日目/昼】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:健康、罪の意識を感じている
[装備]:楼観剣@東方Project
[道具]:基本支給品一式
[服装]:道着(血塗れ)
[思考]:……とりあえず殺し合いには参加してないよな……?
第一行動方針:目の前の人と協力すべきかどうか
第二行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安
第三行動方針:出来ればあの子(野原しんのすけ)を埋めてやりたい
基本行動方針:ジェダ達を倒す
【B-7/タワー付近/1日目/昼】
【キルア@HUNTER×HUNTER】
[状態]:頭痛
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 ランダム支給品(個数、内容ともに不明)
[思考]:安全な所……
第一行動方針:安全な所(建物内?)で休む
第二行動方針:ゴンを探す
第三行動方針:太一に協力し、丈、光四郎、ミミを探す
基本行動方針:ゲームには乗らないが、襲ってくる馬鹿は容赦なく殺す
【八神太一@デジモンアドベンチャー】
[状態]:昏睡?(意識は失っています)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品 首輪探知機(左記以外のランダム支給品は不明)
[思考]:……(意識を失っています)
第一行動方針:???
第二行動方針:丈、光四郎、ミミを探す
第三行動方針:キルアに協力し、ゴンを探す
基本行動方針:丈、光四郎、ミミを探した後、この場からの脱出方法を考える
[備考]
キルアと太一がかかった眠り火の効果時間は次の書き手さんに任せます。
なお2人とも大量に吸ったわけではありません。
投下完了しましたっ
>>17乙。
だが、弥彦がまだまだ悲惨な目に合いそうな気がするのはなぜだろう?
ニアの策士っぷりもすげーなwww
概ね書き上がってますが若干の推敲などであと数十分だけ掛けます。
申し訳有りません。
>>17乙
手足を手に入れたニアはどう動くかwktk
勘違いも蓄積されていい感じになってますね
>>21 がんばれ
弥彦はジェバンニなみにこき使われるのか?
予約破棄で残念と思っていたが…ここで書き上げてくれて感謝!乙です
今回嘘は言ってないし最後は格好よく締めたのに説得し易そうな相手を上手くゲットしたように
しか見えないニア…恐ろしい子!w
放送フラグ抱えてるキルアと接触させなかったのも上手いなぁ
読み直してちょっと気になったんですけど
>言いながらも、アクション仮面を片手に弄ってる姿が
弥彦はアクション仮面を知らないはずなので、
例えば「変な人形」とかのほうがいいと思います。
単語は書き手さんのセンスで
投下します。
困った。
地球侵略って、キミはギーグの手下なの――――
何が困ったって、ミス続きの状況に困り果てている。祖国に戻ったら一度制御系統を点検し直してもらおう。
ともかく、今は状況の打開だ。現状を整理整頓取捨選択、そして分析……よし。
私は気絶させた人間をどこか安全な場所に避難させようとしていた。
そこまではよかったのだが、厄介なことに独り言を聞かれていたらしい。
顔を上げると、うさぎの耳をつけた少年が仁王立ちしているのがわかる。
質問を言い放ったきり、目の前の人間はこちらを睨みつけて……いるのだろうか?
つぶらな瞳すぎていまいち判然としないが、雰囲気からしてきっとそうなのだろう。
だが、ギーグという名前に覚えはない。
メカトピアにはそんな名前のロボットがいたかもしれないが、隊長の名前は違ったはずだ。
それにしても困った。地球侵略作戦のことを知られてしまった。
これでは祖国の命運をかけた作戦に支障をきたしかねない。
サトシくんのときは『大事な作戦』としか言ってなかったからいいけど、今回はまずい。
処分するしかないのだろうか? サンプルを無闇に失うのは避けたいところだけど……
……そうか、記憶を消せばいいんだ。
人間の記憶回路は頭部にあるらしいから、頭を切り開いて中身をいじくればなんとかなるだろう。
サトシくんのときは失敗してしまったから、今度こそうまくやらなきゃ。
だけどやっぱり困った。
女の子を抱えている状態では碌に戦えない。相手も抵抗してくるだろうし。
地面に置いておくという手もあるが、それだと戦闘に巻き込まれてしまう。
刀や弾丸が当たったら人間は簡単に壊れてしまうらしい、サトシくんのように。
本当に困った。どうやら一時撤退しか選択肢はないらしい。
まあ、そこまで焦る必要はないかな。
この少年の処置は、女の子を保管した後でじっくりと。
「ねえ、答えてよ。キミは本当に……」
少年が口を開いた瞬間、指から電気ショックを走らせる。
不意を突かれたはずの少年は、特に慌てる様子もなく持っていた立て札でガード。どうやらかなり場慣れしているらしい。
それでいい、別にしとめようと思ったわけじゃない。
立て札がパチパチと爆ぜる音を聞きながら、身体を全力で反転。
一切の交渉努力を放棄して、逃走、開始。
「待て!」
遅い。
ロボットの能力は脆弱な人間のそれより高い。追いつけるわけがない。
それにしても本当に人間はわからない、待てと言われて待つ敵などいないだろうに。不合理だ。
「PK――ッ」
後ろで少年が何か叫んでいるが、それも無視。
見たところまともな武器も持っていなかったし、ランドセルから何か取り出すのにも時間がかかるはずだから。
――と、そう思っていた。
「――フラーーッシュ・γ!!」
膨大な量の光が背中を照らす。
朝焼けの市街地に生まれた場違いな太陽は熱と光を生み出し、影法師を何倍にも膨れ上がらせた。
すわ何事かと思って後ろを見ると、消えゆく光の向こうに口をへの字に曲げた少年のシルエットが映し出された。
……光を生み出すことで目潰しでもしたかったのだろうか? 背中に向けて放っても意味はないと思うけど……
いけない、こんなことを考えている場合じゃない。光に対する詮索は後回しだ。
立ち止まること数秒、女の子を抱えて再び走り出す。
あの少年はきっと追ってくるだろうけど、それでいい。こちらから探す手間が省けるし。
この女の子をどこかに隠したら、すぐに捕獲作戦を考えなければ。
女の子から人間の行動パターンを読み取るのはその後。
「ふふ、あなたはどんな行動を見せてくれるのかしらね……」
機械の少女は走る。道路を踏み締め、橋を越えて。
全裸で。
※ ※ ※
リルルの後を追いながらネスは考える。
PKフラッシュが効かなかった。
「なみだ」か「しびれ」、あわよくば「きぜつ」状態にして動きを止める作戦は失敗みたいだ。
でも、あの女の子はPKフラッシュが効きにくいなんてもんじゃない、あれは完全に『PKフラッシュを無効化する敵』だ。
今まで人間にPKフラッシュを使ったことはあるが、サマーズ&トトのあばれんぼうコップやどすこいおとこには問題なく効いた。
あの女の子と同じようにバチバチ攻撃を繰り出してくるカーペインターさんにも効いた。
だけど、あの女の子には全く効かなかった。
やみのペンダントやうみのペンダントを装備している可能性も……ないか、全裸だし。
普通の人間じゃないとしたら、ゾンビだろうか? 顔色が悪いようには見えないんだけどなあ。
うん、こういうときは経験から推測しよう。今までの冒険を振り返れば何か思いつくかもしれない。
PKフラッシュが効かなかった敵のことを思い出すため、戦いの記憶を紐解いてみる。
カナ・リ・タコ、タコ・ソ・ノモノ、マル・デ・タコ、ミタ・メ・タコ……
見事にタコ型ロボットばかりだ。いや、他の機械系の敵にも効かなかったけど。
もしかしてあの女の子もロボットの親戚だろうか? タコ型ロボットの親戚だったら警戒する必要がある。
……支給された食料、300ドル以上あるかなあ? どさくさにまぎれて盗まれたら大変だ。
さて、他にPKフラッシュが効かなかった敵は……
バチチッ
「っと、ガードガード」
女の子がときおり放ってくる電気ショックを立て札でガード。前言撤回、結構使えるよこの立て札。
ポーラみたいにサイコシールドが使えればこんなことをしなくても済むんだけどね。
遥か後方で爆音が響いているが、ネスはそちらのことは気にしないことにした。
残響は徐々に遠ざかり、距離という名の壁が吸血鬼と狩人による一騎打ちの舞台からネスと少女達を切り離していく。
向こうがシューティングならこちらはレーシング、いやアクションか。
時折放出される電気ショックをガードしつつ、相手を追う。
捕まえれば勝ち、逃げられれば負け、そんなゲーム。
電気ショックで思い出した。エレキスピリットやでんげきバチバチにもPKフラッシュは効かなかった。
でも、あいつらどう考えても人間じゃないしなあ。タコ型ロボットもそうだけど。
ジロリンガとか怪物系を除けば、PKフラッシュが効かない敵はロボット系と電撃系、それに……
「スターマンのむすことDXスターマン、か」
やっぱりギーグの手下なのかな? って、今考えてもしょうがないか。
それより今は女の子を追うことを第一に……って早ッ!? 人一人抱えてるのに早ッ! やっぱりスターマンの一味!?
うーん、PSIを使えば止めることはできるけど、何故か最大PPが少なくされてるみたいだから乱発は避けたほうがいいか。
それに全体攻撃のPSIを使ったら三つ編みおさげの女の子にも当たっちゃうし。
あ、そういえばPKフラッシュγも全体攻撃だった。おさげの女の子、大丈夫かなあ?
「しびれ」か「へん」状態になったら治療が大変だ。
とにかく、早く捕まえないと――
かくして傍から見れば実にわかりやすい鬼ごっこは続く。
鬼の役はうさぎコスプレをして木製の鈍器を持った少年。
追われる役は気絶した女の子をかかえた全裸の少女。
まともな判断力を持った人間なら、どちらが悪かなど一目瞭然だろう。
何時の世も、鬼の名は悪役を任ずる。
善役と悪役を設定するのは、本人達ではなく傍観者達なのだから。
余談だが、少年の持っている立て札は電撃によって焼け焦げ、殆どの文字が見えなくなっていた。
このはし
わたる
べからず
元々こう書いてあったのだが、現在かろうじて読めるのはたった三文字。
こ
る
ず
……「こ ろす」と読めなくもない。
【E-1/道路/1日目/午前】
【リルル@ドラえもん】
[状態]:健康、人間への興味
[装備]:長曾禰虎徹@るろうに剣心、US M1918 “BAR”@ブラックラグーン
[道具]:基本支給品×2、命の水(アクア・ウイタエ)一人分@からくりサーカス
さくらの杖@カードキャプターさくら、クロウカード(花、灯、跳)@カードキャプターさくら
[服装]:全裸にランドセル姿
[思考]:サトシくんのときは失敗したけど、今度こそは成功させなくちゃ
第一行動方針:ククリをどこかに隠した後でネスの頭を切り開き、記憶(地球侵略作戦の部分)を消去する
第二行動方針:ネスの記憶を消した後、ククリとネスの行動を観察する
第三行動方針:兵団との連絡手段を探す
第四行動方針:自分に危害を加えるおそれのある「ロボット以外の参加者」には容赦しない
第五行動方針:のび太を見つけたら、一緒に行動する(利用する)
基本行動方針:このゲームを脱出し(手段は問わない)、人間についてのデータを集めて帰還する
参戦時期:映画「のび太と鉄人兵団」:中盤
(しずかに匿われ、手当てを受ける前。次元震に巻き込まれた直後からの参戦)
【ククリ@魔方陣グルグル】
[状態]:気絶/電撃のダメージ有り/魔力消耗(小)/「なみだ」「しびれ」「へん」のいずれかの状態にかかっている
[装備]:ベホイミの杖@ぱにぽに
[道具]:基本支給品、インデックスの0円ケータイ@とある魔術の禁書目録、目覚まし時計@せんせいのお時間
[服装]:ファンタジーに普通のローブ姿?
[思考]:…………
第一行動方針:起きたら、間に合わなくてもゴンくんとフランドールちゃんの所に……
第二行動方針:勇者さまとジュジュちゃんとトマくんを探す。
基本行動方針:勇者さまと合流してジェダを倒す
[備考]:ゴンに対する誤解は解けた。ゴンとフランドールの戦いを自分のせいだと思っている。
【ネス@MOTHER2】
[状態]:健康/PP消耗(小)
[装備]:立て札(こ るず)@一休さん、ウサギずきん@ゼルダの伝説 時のオカリナ
[道具]:ひろしの靴&靴下(各一足)@クレヨンしんちゃん、基本支給品
[服装]:普通の現代服
[思考]:なんで全裸なんだろう?(マジカントのことは棚に上げて)
第一行動方針:少女達を追い、尋問する
第二行動方針:役立つ物を探す
基本行動方針:ゲームに乗らない
投下終了しました。
投下乙!
立て札吹いたwwwww
誤解フラグ多すぎwww 誰かに見られたらネスやべー、とか思ったけど
マーダーばっかりで近くに正常な思考のやつがいないぜwwww
>PKフラッシュが効かなかった敵のことを思い出すため、戦いの記憶を紐解いてみる。
>カナ・リ・タコ、タコ・ソ・ノモノ、マル・デ・タコ、ミタ・メ・タコ……
>見事にタコ型ロボットばかりだ。いや、他の機械系の敵にも効かなかったけど。
リルルと並べた想像図を連想して噴いたw
立て札と良い実にGJな戦いぶり。
梨々、さくら、レックス、永沢、真紅の投下行きます。
――霧が来る。
寒々しい白い霧が迫る。
廃墟の光景を真っ白に染め上げて、圧倒的で濃密な霧が迫り来る。
「な、なにこれ……」
躊躇う間しか与えられない。
白い少女はその霧に呑み込まれた。
その頭には白いシルクハット。身を纏うは白のタキシード。
白い怪盗服に身を包んだ白人の少女は霧の中で身構えた。
この霧は明らかにおかしい。何かがある。
その警戒に応えるかのように、白い濃霧の中に人影が浮かび上がった。
その人影は少女と同じ金髪碧眼をしていて、青い衣服を纏った少年だった。
手には竜を模した杖が握られている。
「タバ……じゃないか。キミはなんて言うの?」
「え? わ、わたしは梨々。梨々=ハミルトン。あなたは?」
「ボクはレックス」
隠す理由を感じないのかレックスは素直に名を名乗る。
梨々はその目線を読みとった。
(髪と目の色がわたしと同じ人を捜してる。守って……あげようとしてる方。
好きな人? ううん、わたしの髪と目の色ってこの人と同じだから……きっと妹さんだ)
「ねえ、ボクや君と同じ色の髪をした……」
「ううん、知らない」
「え……そ、そう」
準備していて答えが早かったから、少しだけれど戸惑いが返る。
だけど少しだ。レックスにそういった事を疑う思考はあまり無い。
「それじゃ蝶々のマスクを付けた赤い服の人形も知らないかな? この霧を作ってるんだけど……」
「ごめんなさい、それも知らない」
「そっか……」
ほんの短い問答にレックスは長い落胆の溜息を吐いて……止めた。
瞬間、彼の何かが変わった。
梨々はぞくりと寒気を感じて静かに半歩を後ずさる。
(な、なにこの子……)
俯いた表情は見えないが、表情筋の動きから目線を読み、その目線から狙いを見る。
息づかいの変化からその心を聞き取って、全身の筋肉の僅かな動きから行動を感じ取る。
彼が何をしようとしているのか判った。
だから、こわい。危険でおそろしい!
(この子、わたしを――!)
「ごめんね」
声と同時に振り抜かれた杖は僅か半歩の差で、上体を逸らす梨々の鼻先を通過した。
「きゃあ!」
「外した!?」
一瞬の悲鳴と驚愕。
先に状況を把握したのは攻撃を『避けられた』少年ではなく『避けた』少女の方だ。
「ふ……っ!」
梨々は即座に転進し全力で走り出す。
その細い足がカモシカのように地を蹴って、少女は出口を目指しひた走る。
「逃さない!」
だがレックスもそれを全力で追いかけた。
その逞しい足が獅子のように強く地を踏んで、少年は獲物を狙いひた走る。
少年と少女は双方共が子供とは信じがたい程の速度で駆けていく。
この速度なら一つのエリアを横断するのに掛かる時間は3分も掛かるかどうか。
少なくともこの霧を抜けるのに時間は掛からない、それが本来有るべき結果だろう。
しかし1kmを駆け抜け、2kmを駆け抜けても霧を抜ける事すら叶わない。
立ち並ぶ建物は移り変わらず、白い霧が全ての道を霞ませる。
少女はどこへも逃げられない。
不思議の国は決して少女を逃さない。
「はぁ…………はぁ…………」
梨々はぜいぜいと粗い息を吐いて立ち止まった。
幾ら足が速いといっても体力は人間離れしているわけではない。
少女はもう走れなくなる限界に近かった。
(こ、これで……逃げきれててもおかしくないはずなんだけど……)
この霧が特殊な霧である事は気づいていたが、相手も自分を追って走っていた。
それに霧を出しているのは少年とは別の誰かだ。
両方とも迷っているなら条件は同じ、追いつけなくて疲れ果てたりはするはずだ。
梨々は同年代の子供達とは比べられないほどの俊足だったのだから。
だけど。
「はぁ………………はぁ……………………ヒッ!」
息を呑む。
霧の向こうから音がした。
ゆっくりと、確かな足音が迫り来る。
霧の中から姿を表した少年は僅かに息を乱しているだけだった。
単純な足の速さなら、梨々はレックスにもそう劣らない。
だが体力の差は歴然としている。
いくら優れた肉体を持っていたとしてもそれを鍛え始めて長くない梨々では、
天空の勇者としての優れた肉体を長い旅で鍛え上げたレックス相手には分が悪い。
素質の時点で同じなら、積み重ねた経験の差が物を言う。
ちょっと疲れた、その程度。梨々はレックスからそれを読みとり、ただ愕然となった。
「追いつめた」
少年は静かに狩りの再開を告げる。
少女は疲れた体にむち打って身構える。
(もう逃げられないしこの霧からは抜け出せない。戦うしかない! でも……)
……そして、恐怖に震えた。
彼は自分と同じくらい足が速くて、自分よりずっと力が強い。だけじゃない。
それだけなら梨々にだってなんとかできる。
護身術も学んでいるし、先を読むのだって得意なのだから同年代の子供なんかにはそうそう負けない。
だけどレックスは、梨々を殺すつもりだった。
最初の一撃は謝罪の言葉こそ有れど、まるで迷いの無い殺意の篭もった攻撃だったのだ。
(この子わたしを本気で殺す気で、しかも殺す事には慣れている……!)
技術の差。経験の差。武器の差。そして意志の差。
人間と戦う事にはそれほど慣れてないように感じるけれど、あまり慰めにはならない。
戦いのプロが殺す気で襲い掛かってきている事には変わりない。
梨々はレックスに怯えながら、震えるステッキをレックスに向けて、睨んだ。
レックスはそれに良心の呵責が無いわけではかったのだけれど。
「できれば……」
「わ、わたしは痛いのはイヤだけど死ぬのもイヤ!」
「……そう」
残酷で優しい言葉が口から出されるより先に読みとって、拒否した。
揺るぎ無い結論は出された。
レックスの目が、据わる。
(来る……!)
梨々は身構えしかし、少年の目線の動きに気づく。今この瞬間にレックスは――
「ライ――」
(上を見た!?)
「――デイン!!」
巻き起こった雷雲から一筋の落雷が少女を襲った。
「きゃあああああああああああああああああああああああ!?」
閃光が全てを白く染め上げる。
制限下であれ、普通の人間に直撃すれば凶器としては十分すぎる。
それでもレックスは楽観しない。自らの不足は他の参加者の誰よりも知っている。
例えばさっき戦った少女は不思議な刀でライデインを受け止めて見せたではないか。
果たして今回も少女は生きていた。
落雷の瞬間、少女はステッキを運良く近くに有ったマンホールに当てて姿勢を低くした。
雷撃はステッキに直撃した。避雷針として落雷を受け止め、地にそれを捨ててアースしたのだ。
だが導電性も高くない手品のステッキでは威力を弱める程度でしかない。
「う……ああ…………」
梨々は呻き声をあげた。
意識が遠のく。視界が暗くなる。耳鳴りがして頭もガンガンする。
その目に走り迫るレックスの姿が映った。
まともに動けない。まともに見えない。まともに考えられない。
それでも全身に残る電流の痺れの中から必死に五感を掴み取って体を動かした。
――間に合ったのは小さな奇跡だ。
レックスの突きだしたドラゴンの杖はステッキを易々と打ち砕き、その右腕を穿っていた。
「あぐっ」
また呻きが漏れて、梨々の小さな体が跳ね飛ばされる。
少しの距離を飛んで地面に落ち、軽くバウンドして更にもう一度地面に叩きつけられた。
段差に頭をぶつけ幾つもの星を見た。
「う……くぅ…………!」
そのおかげで、逆に意識は冴えてくれた。
痛みに涙を流しながら必死に敵から視線を外さない。
「……まだ仕留めきれないんだ。ごめんね」
そんな少女を前に、レックスが浮かべるのは苦渋の表情だ。
(こんな事ならギガデインを使っておけば良かったな)
ライデインの倍以上という絶大な威力と、威力に比例した消費を誇る大魔法。
レックスの居た世界において事実上最強の攻撃魔法。
それを使えば確実に目の前の少女を仕留められていた筈だ。
服がころころ替わる少女だって随分と追いつめたのに逃してしまった。
苦しめない為にも、消耗を少なく戦い抜く為にも、確実に仕留めていくのが望ましいのに。
だけどそれも終わりだ。少女の逃げる隙は最早無い。
「今度こそ、終わらせるから」
杖を握り締め、トドメの一撃を叩き込もうとして……ハッと周囲を見回した。
別の気配を感じたような気がしたのだ。人形とは、また別の。
だが周囲を見回しても誰も居ない。
「気のせいかな?」
気を取り直して少女に向き直る。
そこには誰も居なかった。
代わりに走る足音が響いていた。
少女が居たすぐ後ろの自動ドアが閉まって、その音は遮断され行く先を如実に指し示す。
建物の中に逃げ込まれたのだ。
「あ、しまった。……でも」
それでもレックスに『逃げられるかもしれない』という焦りは無い。
確かに少女は延命した。
だが迷いの霧は依然廃墟を包み込み、追撃者である彼は依然ここに居る。
「逃げられない。逃がさないからね」
だからその宣言は自信に満ちていた。
少年は足を踏み入れる。
島南東の廃墟の街で、唯一無事な建物へ。
* * *
梨々が足音を立てて走ったのは最初に距離を取る数十秒だけだった。
その後はすぐに足音を忍ばせる。
これでも今の梨々は怪盗……志望である。この位は基本だ。
というより正直かなり疲れて走るつもりになれなかった。
最初にスタートした病院に辿り着けた事は幸運だった。
土地勘があるここなら、レックスをしばらく迷わせ遠ざける事が出来るだろう。
(だけど、逃げられない。あんなに走ったのにここに戻ってきちゃうなんて………)
その事が怖い。でも今はそれよりも考える事が有った。
そっと耳を澄ましてから、部屋の一つに滑り込んだ。
まず必要なのは応急処置だ。
レックスの杖の一撃を受けた右腕を動かしてみる。
「痛ぅ……っ!」
痛みに思わず声を漏らした。
小さな声だから外までは聞こえない程度の声だろうけれど。
(うそ……これ、折れてる……?)
青くなった追い打ちに、物陰でカタンと音がした。
「……だれ!?」
周囲を見回す。
よく見れば部屋は電気こそ消してあるけれど、物を漁った形跡が有る。
誰か居た。いや、まだ居るのだ。
彼女は片腕が折れ、雷による火傷もあり、挙げ句敵に追われる身だというのに。
「い、居るなら出てきて……!」
いつでも逃げられるように扉を背に身構えて呼び掛けると……診療台の影から、一人の少女が顔を出した。
その少女は血塗れで、梨々と同じくらい怯えていて、こちらは左腕に傷を受けていた。
容姿は全然似ていないけれど、それはまるで鏡写し。
恐怖の中で、相手も恐怖している事が怯えを緩和するまでの少しの時間、二人は見つめ合っていた。
* * *
――潜む者達は考えていた。どう立ち回るのが一番効率的かを。
なんにせよ一つ言える事は有った。
隠れ潜んで、様子を見て、自分に有利な状況を待てば良い。
それからが狩りの時間だ。
獲物が誰であろうと関係は無い。とにかく有利な状況を待てばいい。
だから今は何も変わらない。
潜む者達は霧の中で隠れ潜む――
* * *
梨々とさくらは協力して互いの手当をしながら、密やかに話していた。
明かりは無い。見つかるわけにはいかないからだ。
濃霧が周囲を覆っていたが、それでも朝日はうっすらと届いていた。
「それじゃさくらちゃんはまた別の奴にやられたの?」
「うん、そうだよ。それでずっと体が痺れていて……ようやく痺れが抜けてきたの」
二人は誰かに襲われた身で有りながら割合あっさりと互いを信じる事が出来た。
むしろ襲われた身で有るからと言えるのかも知れない。
恐れ怯える心は誰か縋る先を求めるものだ。
相手が自分と同年代でかつ同性で更に同じように怪我をしているとなれば尚更、信じていいと思わせる。
梨々の方は限定的ながら心を読む技術もそれを支えていた。
もちろんそれらは状況によっては騙され手痛い裏切りに叩き込まれるものだ。
心を読む技術だって半端な物だから梨々も人に騙された事はある。
つまり結局の所、全ては運だ。
不運の中で少女達はささやかな当たりを引き当てたのだ。
「ここに居てもその内に見つかっちゃう。やっぱりどうにかして霧を抜けないと。
さくらちゃん、どうにかならない?」
「ごめんなさい。カードが有ればどうにかなるかもしれないけど……」
「カード?」
それはもちろん互いに支え合う仲間として。
さくらが浴びた血を梨々がしっかりと消毒液で拭き取ったり、
梨々が電撃で受けた火傷の手当をしたり、互いの片腕の手当をちゃんとしたり。
服が血塗れになっているさくらに梨々が普段着を貸してあげたりといった、
そういった切実で極一部微笑ましい助け合いはもちろんの事。
「うん。さくらカード……元々はクロウカードっていう魔法のカード。
さくら、魔法使いみたいなもの。杖とカードが無いとダメなんだけど」
「魔法……もしかしてさくらちゃん、リィンちゃんを起こせない!?」
「え……?」
状況を打開できる切り札としても、この出会いは幸運だった。
* * *
病院で周囲に気を配り行動していた者達皆がそれに気づいた。
エレベーターが動き出したのだ。
それぞれ別の階で、互いの気配だけを感じ息を潜めて階層表示を見つめる。
その階層表示は、最上階で止まった。
彼らはそれぞれの行動を決めた。
* * *
レックスは迷わず最上階に向かっていた。
エレベーターはパッと見ではよく判らなかったが、昇降装置という事だけは判った。
たまたま前で立ち止まった時に中を何かが移動していく音が聞こえたからだ。
その中からさっき取り逃した少女が切羽詰まった様子で話している声も微かに聞こえた。
他に誰かが居たようだけれど、纏めて敵なら関係無い。獲物が増えた、それだけだ。
やがて階層表示は一番大きな数字で止まった。見取り図で書いてあった最上階の数字と同じ。
行きたい方向の上向きの矢印を押すと隣の同じ物が開いたから、
中に入ってその最上階と同じ数字のボタンを押した。
エレベーターは扉を閉じて、すぐに最上階を目指して移動する。
「ちょっとおもしろいや、これ」
こんな時でなければちょっと遊んでみたい気もした。
流石にこんな時にそんな事はしないけれど。
最上階に飛び出て足音に耳を澄ます。
微かに聞こえる足音はエレベーターの隣の階段から更に上へ。
「屋上……」
もちろん逃しはしない。
階段に飛び込み一気に残る一階層を駆け上がり、屋上へと飛び出した。
そこは依然真っ白い霧に包まれていた。
半径100mを覆う霧は病院の敷地をすっぽりと覆い尽くしている。
屋上とてそれは例外ではない。逃げる先などどこにも無い。
それでも逃げ切る策を手に、二人の少女がそこに居た。
さっきの金髪碧眼の少女と、また別の少女が寄り添って立っている。
傷の無い右手と折れていない左手が結ばれて、互いを支えて立っている。
「来た! リィンちゃん、方向は大丈夫!?」
「は、はい、判ります! あっち、あの方向です!」
それからその少女の手の中に居る奇妙な少女。
金色の十字架から浮かび上がっている小さくて半透明な少女だ。
少女が霧の奥を指し示す。
「それじゃ行くよ、さくらちゃん、リィンちゃん!」
号令一過。
金髪の少女梨々は傍らの少女を抱き締めて……跳んだ。
霧に覆われて地上すら見えない屋上から飛び降りた。
「え……!?」
レックスは驚き屋上の縁へ駆け付けた。
ばさりという音が聞こえた。
白い真っ白い視界の中に別の白い何かが膨らむのが見えた。
それがパラシュートと呼ばれるものだとレックスには判らない。
だがそれが落ちるよりはゆっくりと消えていくのを見て、なんとなく理解した。
あれはここをゆっくりと降りるための物だ。
「そっか、あれで逃げるつもりなんだ。……逃がさないよ」
攻撃魔法は精度が落ちていて、視界も悪い。殆ど霧に呑まれた相手には届かない。
追いかけて回り込むのが一番だろう。
レックスは近くにあった排水溝に目を付けた。正確にはその先にある雨樋だ。
屋上の縁に走り寄り、それが手掛かりに使えるかどうかを確認する。
脆い樋が折れ砕ければ、少年は無明の白い闇に呑み込まれる。
ただそれだけだ、別になんて事はない。
(ダンジョンの探索で落とし穴に落ちるみたいなものだよね。受け身を取ればいい)
彼の世界ではそういった事は日常茶飯事だったのだ。
だからレックスは恐れもせずにするすると、雨樋を滑り降りて地上に立った。
そしてすぐに追いかけようとして……踏みとどまった。
「えっと……待つのも大事だよね」
追いかけてもあの少女は足が速いから、距離を開けられた今回はきっと追いつけない。
それよりも霧に迷ってまた距離が近くなるのを待てばいい。
前に襲った少女は霧の中から逃げ切ったけれど、今度の少女はレックスと同じく迷っていたのだから。
……すぐに失敗を悟った。
「向こう、向こうです。あ、ちょっと右にずれてます。はい、そうですそっちに真っ直ぐ!」
「うんわかった。こっちだよねリィンちゃん」
「はいそうです、そっちです!」
二人目の少女……さくらという少女がリィンという掌サイズの少女と話す声が聞こえる。
どうやらあのリィンという少女はこの霧の中でも方向が判るらしい。
二人の足音は徐々に霧の中に遠ざかり、消えていった。
「……やっぱりこの霧、邪魔だ」
相手も逃げられないなら攻撃の狙いが互いに少しずれるだけで済むけれど、
相手が逃げられて自分は霧の中から出られないんじゃ追いかけられない。
この霧から逃げられる者がどのくらい居るのかは判らないけど、不利の方が多く思える。
大体、梨々に対する最初の攻撃だってそうだ。
最初の攻撃は半歩距離を取られていたから避けられた。それは判る。
だけどどうして、攻撃の瞬間にすらそれに気づけなかったのか?
方向感覚だけでなく距離感にまで狂いがあるようだ。
その内に致命的なミスに繋がってしまうかもしれない。
(早くこの霧を操ってるあの人形をやっつけないと)
その為には…………。
その時、風を切る音がした。
【G-7/逃走中/1日目/午前】
【不運でちょっぴりだけ運の良い二人】
【梨々=ハミルトン@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:右腕骨折及び電撃のダメージ有り(処置済)
[装備]:白タキシード(パラシュート消費)&シルクハット@吉永さん家のガーゴイル
[道具]:支給品一式 、
[服装]:白タキシード&シルクハット
[思考]:誰も殺さない。
第一行動方針:桜と一緒に安全そうな場所まで逃げる。
第二行動方針:双葉かリィンちゃんの友達を探す。(はやて優先?)
第三行動方針:殺し合いに乗ってない人と協力する。
[備考]
※リィンフォースUと梨々がお互いの知人の情報を交換しました。具体的にどんなことを話したかは後の書き手さんに任せます。
【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:血塗れ、左腕に矢傷(処置済)、全身に痺れ(ほぼ治りかけ)
[装備]:パワフルグラブ@ゼルダの伝説
リインフォースII(待機フォルム)@魔法少女リリカルなのはA's
[道具]:基本支給品
[服装]:梨々の普段着
[思考]:た、たすかったぁ……でも、こわかった……
第一行動方針:梨々と一緒に安全そうな場所まで逃げる。
第二行動方針:他にも協力してくれそうな人を探す。
基本行動方針:小狼と合流する、襲われたら撃退する(不殺?)
霧が細く、ほんの僅かに細く裂けた。
小指の先ほどの太さで白い霧が乱される。
一筋、二筋。そして三筋。
三度目のそれは振り返ったレックスの露出した足に当たる。
呻き声を上げてレックスは突き刺さった矢を引き抜くと、焦ったように周囲を見回す。
血が一筋、たらりと流れる。
四度目のそれは衣服に当たり、突き刺さらずに跳ね返った。
レックスは足を引きずり歩き出した。
五度目のそれは外れた。
歩いて逃げ出した。
六度目のそれは再びレックスの腕に当たる。
すぐに引き抜き、また一筋の血が流れ落ちた。
レックスは病院北の廃墟へと逃げていく。
一転、それは惨めな獲物の姿――。
(元の病院の入り口に向かうと距離が近くて当たりやすくなるから、
別の建物に逃げ込むつもりかな? 僕も侮られたものさ)
狙撃手は病院の二階に居た。
タマネギ頭の少年、永沢は薄ら笑いを浮かべてボウガンに次の矢を装填する。
七度目のそれはまた外れた。
八度目のそれは振り払うかのように振られたレックスの左腕に当たった。
九度目のそれは再びレックスの右足に当たった。
十度目のそれは外れた。
十一度目のそれは、再び左腕に当たった。
永沢は矢が残り一本になっている事に気づいた。
手元を見て他の矢を探す。無い。無い。…………無い。
間違いなくこれが最後の一本だ。
「……チッ、まあいいさ。至近距離からならこれでも十分だね。重いけど剣も有るし」
再び窓から獲物を見ると、レックスは刺さった矢を全て抜き、廃墟をよろよろと歩いていく。
たらたら、たらたらと腕や足から血を流し、その足取りは微妙に震えている。
そして一つのまだ原型を保った廃ビルに飛び込んだ。
間違いない、痺れ薬はちゃんと効いている。
これなら彼にだって十分に殺せるだろう。
「フフフ……狩人は僕なのさ……」
再び薄ら笑いを浮かべた永沢は、レックスを追跡した。
* * *
それを見ていた人形、真紅は怪訝に考え込む。
獲物の姿がそれまでに見たレックスの姿と重なってくれないのだ。
(何かがおかしいのだわ。
……でも、ワンダーランドの中で方向感覚が狂っていればあんな物なのかしら?)
方向感覚が狂えば矢が飛んでくる方向にもぶれが有る。
取ろうとした回避運動で逆に当たっている様子も見受けられた。
何にしろ、レックスを殺すなら今だろう。
自分の手で殺せば“ご褒美”の足しにする事も出来る。
あの邪魔なタマネギ頭も仕留めてしまえばいい。
何かが引っかかっていた。だけど、それについて考える時間も惜しかった。
あのタマネギ頭がトドメを刺す前に仕留めなければならない。
(………………直前まで隠れて様子を見れば良いのだわ。
様子を見て、どうしてもおかしければ見送れば良い)
少し迷った末にそう決めると、真紅は二人の後を追跡した。
(狩人は――私)
蝶の羽が濃霧の中を舞った。
* * *
血痕は左右に振れながら廃ビルの奥に続いていた。
永沢はそれを追う。足音を立てずに浮遊して更に真紅もそれを追う。
追跡の終着点は大きな部屋だった。
レックスの姿はその壁際に有った。
か細い息を吐きながら俯き、壁にもたれて立っている。
窓は近いが、ここは4階くらいまで上がっている。
全身が痺れた状態で飛び降りればただではすまないだろう。
しばらく様子を見てその動きが緩慢な事を確かめてから、永沢は目前に姿を表した。
「ふふふ…………痺れ薬は思いの外よく効いているようだね」
その声でようやく気づいたかのように、レックスはゆっくりと顔を上げる。
しかし目線が合うまでは上がりもせずに、半端なところで頭は止まる。
細い息が、漏れる。
俯く顎から一筋の汗が滴って、埃っぽい床を湿らせる。
「これで終わりさ。悪いけど、恨むなら簡単に崩れてしまう“毎日”を恨むんだね」
レックスがピクリと震える。
永沢がビクリと震える。
だけどそれ以上に動く様子は無い。
永沢は安堵の息を吐くと、ボウガンをしっかりとレックスの胸に照準して。
「それじゃさよならだね。フフフ、狩人は僕なのさ」
…………ゆっくりと、引き金に力を篭めた。
レックスが顔を、上げた。
* * *
真紅はもうしばらく様子を見るはずだった。
レックスが容易く殺されるとは思えないからだ。
かなりの手傷を負ったとはいえ、まだ戦う力は残っているはずだ。
戦闘になった、あるいは終わった隙を突いた方が良い。
しかしレックスは、タマネギ頭の少年が目の前に現れてもなお動こうとはしない。
思い悩む真紅の前でタマネギ頭から答えが明かされる。
「ふふふ…………痺れ薬は思いの外よく効いているようだね」
(痺れ薬? 矢に毒が塗ってあったのね)
それなら納得できる気がした。
方向感覚が狂わされている中で正確な狙撃を受ければ如何に彼でも避けられないだろう。
更にそれに痺れ薬が塗られていたのなら、動きは鈍り逃げきれないだろう。
その身を次々と狙撃が襲ったのならば、ハリネズミのようになりながら隠れるしかないだろう。
そうだとすれば、敗北はどうしようもない必然だ。
(……気のせいなのだわ。何も可笑しくはないもの)
苦戦したレックスに対する畏怖の感情と、あまりに小物なタマネギ頭への蔑視の感情が食い違う。
だけどそれはただの感情で、何の理屈にも沿ってはいない。
それに時間がない。既にボウガンの照準はレックスに向けられている。
真紅の撃墜数としてレックスを数える為には、今殺すしか他に無い!
(獲物は頂くのだわ!)
静かな気迫と共に真紅は必殺の花弁を撃ち放つ。
同時にボウガンの矢も放たれた。
ボウガンの矢を追い越して真紅の花弁が宙を裂く。
永沢の先は越した。そうなれば真紅の花弁がレックスの命を奪うことは必然だ。
――だが。
真紅は、いつの間にかレックスが顔を上げている事に気が付いた。
その顔に浮かぶ表情を目にした。
真紅はその瞬間に直感した。
自分が何かの罠の中に捕らわれた事を。
蝶を捕らえる蜘蛛の巣が張られていた事を。
そしてレックスの発した声が、真紅の耳に届いた。
「――キアリク」
* * *
放たれたボウガンの矢は瞬時にレックスの目前に迫り。
放たれた薔薇の花弁は瞬時にレックスの目前に迫り。
紡がれた呪文の力は瞬時にレックスの自由を取り戻した。
全ては刹那の一瞬。
力を溜めていた腕は瞬時に跳ね上がり、薔薇の花弁とボウガンの矢を打ち払う!
固い物が床に叩き落とされるような音が、二度。
花弁は粉砕され、矢は天井まで跳ね上がり、跳ね返って床に落ちて二度だ。
床に落ちた矢は折れ曲がって、転がりも突き刺さりもせずに地に伏する。
驚愕に満ちた4つの視線がレックスに集まる。
レックスは引き続けて唱えた。
「ベホイミ」
中程度の回復魔法。元の世界ならともかくこの世界で大した傷は癒せない。
だがたった一度のそれだけで、レックスの矢傷は全て塞がった。
傷はたったのそれだけで、流れた血は傷の数の比べてあまりにも少なかった。
ようやく狩人達は自分達こそが獲物だった事を理解する。
「スクルトを重ね掛けしておかないで良かった。
一度で服も貫かれなくなったんだもん。その武器、威力が低すぎるよ」
子供らしい自慢が、彼らしくもない感情を押し殺した声で紡がれる。
畏怖すべき事実に永沢も真紅も凍り付く。
狙撃が始まると同時にかけておいた防御魔法スクルトはレックスの防御力を高めた。
更にレックスは反撃を捨てて筋肉を固める事で『身を守った』。
無数の戦いを抜け鍛え上げられた強靱な肉体でだ。
その上、永沢の使ったボウガンは痺れ薬が塗ってあるだけで威力は極めて低かった。
ここまで重なれば攻撃が通用する方がおかしい程だ。
真紅は気が付いた。
先程の狙撃で放たれた矢が、正確に手や足だけに突き刺さっていた事に。
回避行動すらも裏目に出て当たっていた事に。
確かに方向感覚が狂っている中で正確な狙撃を受ければ避ける事は難しいかもしれない。
だがここに一つの見落としが有った。
――どうして、永沢にそんな事が出来るのだ?
レックスと同じく完全にワンダーランドの影響を受けていた永沢に。
答えは一つ。レックスは“わざと当たっていた”。
全ては真紅を誘き出すその為に。
「行くよ!」
レックスの咆哮が空気を揺らす。
二人の獲物が我に返った時にはもう遅い。
レックスはその手の内にある杖を掲げて、叫んだ。
「ドラゴンの杖よ、ボクに力を!」
瞬間、大気が溢れた。
膨れ上がった体積に押し出され、溢れた大気が風となって戦慄を奏でる。
吹きすさぶ風が薄く漂い始めた霧すらも一時的に吹き飛ばす。
恐怖が全身を駆け抜ける。
そして、薄明かりの中にそれは顕現した。
それは金属的な光沢すら誇る硬質な鱗。
人を握りつぶせようかという程に強靱で巨大な鍵爪を備えた腕。
獰猛な肉食獣のような、いや、そのものの脚。
薄暗い部屋でよく判らないがその背には翼も生えているように思えた。
人を睨み殺しそうな、同時に知性を秘めた矛盾する爬虫類の瞳が、開く。
その強靱な顎の奥には刃のような牙がずらりと並んでいる。
「ド、ドラゴン……!?」
恐れるべき呼称が捧げられた。
だがそれら全ては、余剰だ。
剣の如き牙に意味は無い。その強靱な腕に意味は無い。
何故なら、ドラゴンにはそれら全てを凌駕する最強の武器が有るからだ。
レックスが変身したドラゴンはその強靱なあぎとを開き。
――灼熱の劫火を吐き出した。
「うわあああああああああああああああっ」
永沢は自分でも意外な程に早く反応し、走り出していた。
恐怖に立ちすくむのではなく、恐怖に逃げ出すという常識的な反応に進めた。
それは小さな奇跡だったのかもしれない。だが。
彼が生き残るにはその数倍の奇跡が必要だった。
地面を踏みしめた筈の脚が宙を舞う。
(くそ、どうしてこんな時に……!)
こんな時に無様に転んだ不運を嘆きながら立ち上がろうとして、再び転んだ。
床に頭を打ち付けた。痛みは感じなかった。
「ど、どうして……」
永沢は気づかない。
自分の膝から下が劫火の直撃を受けて炭化して、あっさりと砕けてしまった事に気づかない。
もうどうしようもなくなっている事に気づかない!
何も判らず気づけずにただ満面に恐怖を浮かべて振り返った彼を、二度目の劫火が迎えた。
「か……か、か…………」
視界全てが真っ赤な劫火に包まれた。
永沢は否応なしに思い出す。自分があまりに多くを失ってしまった日の事を。
平穏な暮らしを送っていた永沢の心にあまりにも暗い影を落とした悪夢の記憶を。
あの火事の日の記憶を。
再び訪れた炎は永沢の命をも焼き尽くした。
「火事はいやだあああああああああああああああああああああああああああ」
それが、永沢少年の最期の言葉だった。
「む、むちゃくちゃなのだわ……」
真紅は必死に心の平静を保って周囲の状況を把握する。
逃げ道は二つ。入ってきた扉と、壁際の窓だ。
だが入ってきた扉は無理だ。
ただでさえ扉は限定された空間で、その上に異臭を放ち燃え残る人間だった物が邪魔だ。
あそこを通ろうとすれば確実に二度は燃やされる。
そして壁際の窓は……そのすぐ横にレックスが居た。
最初からその位は考えた場所で待っていたのだ。
駆け抜ければ一度で済むかもしれないが、その一度は確実に至近距離の直撃になる。
(それならば戦うしか……ダメ。これは勝てない……!)
レックスは立ちつくす真紅に狙いを向けて、再び灼熱の劫火を噴きかける。
「クッ……!」
薔薇の花弁を叩きつけた。だが炎は一瞬で花弁を燃やし尽くして迫る。
やはり効かない。火力の差は圧倒的だ。
さっき奪ったバットで戦うか?
……無理だ。接近戦でレックスに敵わない事は散々に証明された。
(残るのはアリス・イン・ワンダーランド密集状態で幻覚をぶつける位しか……)
だがそんな隙が何処に有る?
劫火は部屋の全てを嘗め尽くし、燃える物の殆ど無い廃ビルすらも火の海に変えていく。
逃げ道は無く避ける事すら難しい。屋内に制限された空間では飛行能力も意味が薄い。
この状況で真紅が辛うじて避け続けていられるのはアリス・イン・ワンダーランドのおかげだった。
拡散状態で放出を続けているチャフがレックスの方向感覚や距離感に僅かな狂いを与え、
その僅かな隙に滑り込む事で辛うじてレックスの攻撃を避けしのぐ。
密集状態にしようものならその瞬間に焼き尽くされる。
だがその頼みのチャフさえも、劫火に薙払われ吹き飛ばされ、焼き尽くされて減っていく。
あと何分保つ? いや、あと何秒保つ!?
(無理だわ、避けに徹してももう限界……!)
劫火がドレスを掠めて火を付けた時、真紅は遂に覚悟を決めた。
一つだけ、可能性は見つけていた。
拡散状態のアリス・イン・ワンダーランドは方向感覚と距離感を狂わせる。
レックスの選んだこの廃ビルは一つだけ真紅に有利な特性を備えていた。
それでもレックスを倒せる可能性は限りなく零に等しい。
ただ逃げ延びるだけでさえ成功率は万に一つだ。
そして失敗すれば、確実に真紅は炭と化す。
(それでもこの万が一に賭けるしか生き残る術は無い)
だからそうするしかない。
真紅は拡散状態のチャフを一気にレックスに叩きつけた。
方向感覚や距離感が少しでも大きく狂うように。
そしてレックスへと……その背後の窓へと走った。
レックスは大きく息を吸い込み大量の劫火を溜め込む。
恐怖。そして追いつめられた絶望。それでももう走るしかない。
ワンダーランドの羽と自らの飛翔力の全てを纏めて推力に叩き込んで突き進む。
前へ。ドラゴンの目の前へ。唯一の逃げ道へ。窓へとひた走る。
遂にレックスの目前を通り過ぎる。
その瞬間、レックスは灼熱の劫火を吐き出した――!
凄まじい爆炎が真紅に襲い掛かる。
「うくっあぁああああああああああああああああああああああああああぁっ!!」
真紅はそれを背中で受けた。出来る事はそれだけだ。
基本支給品のたっぷりの水まで含まれるランドセルを盾にする。
だが当然、十分に溜め込んだ灼熱の劫火はその程度では防ぎきれない。
一瞬にしてランドセルが消し飛び、水の入ったペットボトルが弾けて水が水蒸気に爆発する。
その爆発すらも推力となって真紅に味方する。
それでも本来ならまだまだ足りない。一人分の飲料水では壁としてあまりに不足。
しかしここで一つの幸運が真紅に味方した。
真紅はジュジュを殺した時にその支給品を奪い取っていた。それは食料も含めてだ。
つまり真紅の背にある飲料水は……二人分。
更なる強烈な衝撃が真紅を打ちのめす。
二人分の水が蒸発する水蒸気爆発は真紅をビルの外へと叩き出した!
しかし尚、依然、真紅が生き残るにはまだ足りない。
水蒸気爆発は炎の熱を軽減して、しかし零距離の爆発として真紅を襲った。
更に真紅の全身は軽減しても尚消えきらない灼熱の劫火に包まれている。
こんな状態で炎に包まれていて耐えられる時間はほんの僅かしかないだろう。
……だから真紅は、落下速度を殆ど緩めなかった。
廃ビルの四階から廃ビルの周囲に残っていた霧の中を突っ切って遥か下へと落下する。
ギリギリで耐えられる程度に緩和した速度で、真紅は“水面に叩きつけられる”。
そう、この廃ビルは湖岸に建っていた。
それこそがこの廃ビルにおいて唯一、真紅に有利な条件だった。
高々と水柱が上がり、真紅の姿は湖面へと……消えた。
丁度、ドラゴンの杖によるドラゴラムの効果も切れた。
元に戻りながらレックスは眼下に広がる湖を見つめる。
廃ビルを選びはしたけれど、湖に向かって、それも湖際まで来ていた事は気づかなかった。
その失策がトドメを逃した。
再びドラゴンの杖を使った所で炎で水は焼き尽くせない。
どうしようもない。逃げ切られた。
(そしてあいつは再びボクを襲う。あるいは……タバサを襲う!)
激情はレックスを咄嗟の攻撃に走らせる。
レックスは遥か下方の水面を睨み付け、天高くその手を掲げて。
「まだだぁっ! ギガデイン!!」
追撃の轟雷が波打つ水面に突き立った!
* * *
真紅は水面に沈んでいく自分の体を、感じた。
そう、感じた。まだ体は壊れていない。
両腕も両足も、胴体も、お腹も、頭も、全て痛みはしたものの砕けてはいない。
(散々……だったのだわ…………)
ドレスは背中から無惨に焼けこげている。
肌も背中は酷いことになっているだろう。
どういう因果かパピヨンマスクが残っているのは不幸中の幸いだが、淑女の身だしなみとしては失格だ。
……そんな事を考えられるだけ幸運なのだと自分を慰める。
(とにかく、ワンダーランドを核鉄に戻し……)
そう思った次の瞬間、水面で何かが光って。
全身を駆け抜けた衝撃が真紅の意識を刈り取った。
* * *
「…………やった……のかな?」
レックスは少し自信なさげに呟く。
激情に任せて放ってしまったが、幾らギガデインとはいえ水中ではかなり拡散するはずだ。
直前に与えたダメージを思えば十分な威力にも思えたが、確信は持てない。
まだ生きているかもしれない。
だけど追う事は出来ない。レックスは水際で戦う経験は有るけれど、逆に言えばそこまでだ。
水中ではまともに戦う事が出来ない。
だからこれで十分な戦果だと自分を納得させる事にした。
迷いの霧を作っていた人形はそのまま壊れたかもしれないダメージを与えて撃退した。
更に確実に一人を殺し……その支給品を手に入れた。
「良い剣だね、これ。天空の剣……ううん、メタルキングの剣みたいだ」
永沢は振り返って劫火を受けた。
大量の水分を含む人体と、飲料水の蒸発で熱量を緩和したランドセルは燃え尽きなかった。
いや、こちらの剣に至っては例え素で劫火の中に有ったとしても燃えなかっただろう。
それほどの秘剣。あるいは聖剣か、魔剣かだった。
レックスは彼の最後の支給品も自分のランドセルに放り込み、エーテルを一本取りだす。
ごくごくと一気に飲み干すと、全身に魔力が漲っていくのを感じ取れる。
(それに、最後以外は消耗も少なくできたしね)
これほどの激戦になりながらも魔法力は節約出来た。
最後にあんなに不確かな状況でギガデインを撃ってしまった事だけは失敗かもしれない。
だけどそれだけだ。
本当に上手くやれた。上手くできた。上手く戦って勝てた。
方向感覚も距離感も狂う霧に包まれて、常に追われ、狙撃されながらも一人で戦い抜き、勝利した。
だから。
(だから……もう怯えるな、ボクの心!)
レックスは天空の勇者だ。
過酷な戦いの末に家族や仲間と共に大魔王ミルドラースを打ち倒した英雄だ。
その腕力と体力は父が仲間とする怪力無双の魔物にすら匹敵し、
伝説の武具を身に纏う資格を持ち、最強の攻撃魔法を放ち、最大の回復魔法を使いこなす。
他の強力な力を持った参加者も……いや、きっとジェダですら、
レックスが元の世界で戦い抜いた巨悪より特別強い敵だとは言えないだろう。
だけどあの時は一人じゃなかった。
レックスは制限で全力を減じられてはいなかった。
伝説の天空の武具がレックスの身を包んでいた。
タバサも居たし、父に母、召使いのサンチョや父の連れた強く優しい魔物達が居た。
その全てを結集してようやく勝利したのだ。
戦力だけじゃない。
元から方向音痴のレックスをしっかりと道案内してくれた妹のタバサは離ればなれだ。
霧は払ったけれど、それでも道に迷ったら今度は自分で道を見つけないといけない。
(迷わないようにしないとダメなんだ)
多種多様で強力な回復魔法は使えるけれど、それも全て自分で使わなければならない。
斬り結びながら回復なんて芸当は難しいだろう。
(あの矢傷から痺れが走った時だって、本当は怖かった)
元の世界でもキアリクはレックスの他に父の仲間の魔物にしか使えなかった。
他の誰かが麻痺した時はレックスがキアリクを使ってあげればよかったけれど、
レックスが麻痺してしまって馬車も近くに無い時は本当に怖かったのだ。
指一本動かせず、父達が急いで敵を倒してくれるまでずっと見ている事しか出来ない。
もしもみんなが倒れてしまえば意識を保ったままなぶり殺されるしかない。
だからスクルトを掛けて安堵して受けた小さな矢傷から痺れが走った時、本当に寒気がした。
そして痺れが即効性なだけでとても弱いものである事に気づいて、考えを決めた。
弱い物だけど痺れる矢は確かに恐ろしい。
『だからこそ放っておけない。誘き出して殺してしまおう』と。
慎重に痺れの具合に注意して三発に一発だけ腕や足に当てて逃げ出した。
そして目的の場所に辿り着いたら、場所を選んで待ち受けた。
顎から滴り落ちる程に冷や汗が流れていた。
(わかってたんだ。恐がる必要なんてぜんぜん無い。
不思議な霧の中でスクルトをかけたからって、全然当たらなくて当たっても痛くない攻撃なんだもん)
だけどそれでも怖かった。
だから恐怖を抑えて強がって、相手をコケにして強がって。
戦いが始まったら真っ先に、ボウガンの少年を焼き尽くした。
先に人形の方を壊してしまえば、素人の子供なんて後からでも追いついて殺せたのに。
…………なんだか自分が情けなく思えてきた。
「なにやってるんだろ。勇者なのに、こんなに怖がっちゃってさ」
妹以外の全ての参加者を殺し尽くすという非情の道を選んだ。
慎重になるのは必要だろう。
だけど怯えてどうする。今更迷ってどうする。
それは弱さにしか繋がらない。
だから最後にもう一決意をしよう。そう。
「早く、からないといけないよね。ボクの……弱い心」
自らの強さで自らの弱さをかりとろう。
その時には今度こそ、理想の狩人になれるだろう。
レックスは再び旅を再開した。
狩人の旅へ向けて、歩き出した。
【永沢君男 死亡】
死体は黒こげでG-6湖畔の廃ビルの一室に有ります。
【G-6/湖底/一日目/午前】
【真紅@ローゼンメイデン】
[状態]:昏倒、背中に火傷及び打撲(人形だけど)、電撃のダメージ
[装備]:パピヨンマスク@武装錬金、核金LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)核鉄状態@武装錬金
[道具]:マジカントバット
[服装]:背中を中心に大部分が焼けこげたドレス、パピヨンマスク
[思考]:あ………………
[備考]:ランドセルは吹き飛んでいます。マジカントバットは正確にはすぐ近くに沈んでいます。
第一行動方針:生き延びる。
第二行動方針:参加者と接触し、情報を得た後殺害する。
基本行動方針:最後の一人になる
【G-7/廃墟/一日目/午前】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:若干疲労/精神的疲労も有り
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り3回)、ラグナロク@FINAL FANTASY4
[道具]:基本支給品、エーテル×4@FINAL FANTASY4、不明支給品×1
[思考]:まずは……どっちから捜そうかな。
第一行動方針:梨々、さくら、アリサを探して殺す。見つからなかったら諦める。
第二行動方針:タバサの居場所を知るために、三人殺してご褒美を得る。
第三行動方針:タバサ以外の参加者を全て殺し、最後に自殺してタバサを優勝させる。
第四行動方針:もしタバサが死亡した場合、自分が優勝を目指し、タバサの蘇生を願う。
基本行動方針:兄妹どちらかの優勝(タバサ優先) できれば二人でグランバニアの両親の元に帰る。
参戦時期:エンディング直後
[備考] エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
※:ラグナロクと不明支給品は永沢の死体から回収しました。
投下完了しました。
攻撃魔法の威力、真紅の負傷、レックスの疲労についての詳細はややぼかしています。
GJ!
桜となしなしはホント幸運だった……こいつらに襲われたらひとたまりもない
永沢、南無。結構がんばったほうだが相手がちょっと悪かった。真紅はうまく流れれば翠のローザミスティカGETできそう。
しかしエーテルは強力だな……誰かが奪い取らんとかなりヤバい。
乙。正式投下されるまで我慢して待っていたぜ。時間かければさくらがリインを使う展開もあるのかな。
あ、ドラゴラムの使用回数が3回のままですよ。
感想ありがとうございます。
>>52 うあ、しまった。状態表修正します。
【G-7/廃墟/一日目/午前】
【レックス@ドラゴンクエスト5】
[状態]:やや疲労/心労有り
[装備]:ドラゴンの杖@ドラゴンクエスト5 (ドラゴラム使用回数残り2回)、ラグナロク@FINAL FANTASY4
[道具]:基本支給品、エーテル×4@FINAL FANTASY4、不明支給品×1
[思考]:まずは……どっちから捜そうかな。
第一行動方針:梨々、さくら、アリサを探して殺す。見つからなかったら諦める。
第二行動方針:タバサの居場所を知るために、三人殺してご褒美を得る。
第三行動方針:タバサ以外の参加者を全て殺し、最後に自殺してタバサを優勝させる。
第四行動方針:もしタバサが死亡した場合、自分が優勝を目指し、タバサの蘇生を願う。
基本行動方針:兄妹どちらかの優勝(タバサ優先) できれば二人でグランバニアの両親の元に帰る。
参戦時期:エンディング直後
[備考] エンディング後なので、呪文は一通り習得済み
※:ラグナロクと不明支給品は永沢の死体から回収しました。
wikiに記載ないんだが弥彦の参戦時期は最終回以降?
55 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/03/08(木) 07:53:28 ID:Hj+7chjU
投下乙。
MPの消費量について。
エーテルは6本でレックスの最大MPの1.5倍程度と書いてある。
つまり、1本で25%回復。
今回の話の状態表でレックスはMPを消費してないから、戦いでは25%以下しか消費しなかったことに。
これだと、テスト投下スレに投下された話と変わらない(あっちではMPを3/4残していた)
状態表でMP消費の記述をつけるなり、エーテルを2本使うなりした方が良いと思われ。
MP消費は曖昧でいいと思うぞ。てか、数字計算するのは逆にウザい。
DQのMPをFFのアイテムで治してる時点で、もう何やってんだか、って計算だから。
個人的には、エーテルの説明欄のも今から修正して「1.5倍」という数字を削るべきだと思うくらい。
やや疲労、の中にMP消費も含まれると考えて、
次の書き手が自由にその程度を決めてもいいんじゃないかな。
>>56 曖昧にするなとは言ってないよ。
現状だと減ってないように書いてあるから、それだと前の話と消費が変わらないって言ってるだけ。
ギガデインのような大技は消費を大きくするべきって意見がいくつかあったっしょ。
MP消費(小)でもなんでもいいから、少しは消費したような状態にしておいた方がいいと思うよ。
やや疲労は体力的なものだから、MPと一緒にすると混乱する。
ゲーム的に処理するとMP消費は真紅〜アリサの連戦の時程度なのは変わらない。
あの戦闘は描写内以外にもベギラマ一発くらい撃ってそうだから、
もしそうだとすれば今回の方がかなり消費が軽いくらいになる。
と、この程度しか呪文を使わず勝った事は変わってなかったりします。
ただ、前回も少し疲労と書いてありました。
問題があるなら、これがMP消費を含んでいた事にすれば良いと思います。
そうすると今回のやや疲労はそれよりも更に幾らかMPを消費した事になります。
MPの消費自体を増やしたいなら、追加でもう少し呪文を使わせる案も考えています。
MP消費(小)くらいはさせる事ができます。
あと、毎回MP消費にばらつきが出る事にしてしまう手も有りますが……これは微妙かも。
>ギガデインのような大技は消費を大きくするべきって意見がいくつかあったっしょ。
ここね。
追加で魔法を使う必要も、消費をゲーム的に考える必要もない。
大技は消費をでかく。それだけ。
そこか。
原作の消費のバランスを変えてしまって大丈夫なんでしょうか。
ギガデインの威力も明確ではないですし、どこまで大技なのか不明です。
消費のバランスを変えると使えなくなったり、それでも使う価値が有る=威力が桁外れになりませんか。
ちなみに現時点はライデインの相対比2.5倍くらいの消費をしています。
これが数値的にどの程度なのかも不明なわけですが。
必殺技としてそれ以上の大技にしておきますか?
>>60 現状、既に威力が桁外れ。
ライデインでさえ「制限下であれ、普通の人間に直撃すれば凶器としては十分すぎる」と描写されている。
ギガデインの威力は倍以上。
はっきり言って、消費と威力が吊り合っていない。
と言うか、これはライデインにもいえることだから、呪文の威力を今からでも大幅に下げた方がイイのかもしれない。
このままベギラゴンとか出てきても、同じような問題が起こりそう。
ベギラゴンはどっちも使えないのか。
タバサのイオナズンとかでもってことにしといて。
個人的には、ギガデインには勇者専用の必殺技、の名に見合うだけの威力が欲しい気分。
もちろんそうなると、消費の方を厳しめに見なきゃいけないけど。
ゲームやってるんじゃないんだから、実際がどうこうより、技の持つ「印象」を大事にして欲しい気がする。
これは、他の呪文にも言えることだけど。
でも十分痛めつけられていた小柄な真紅への直撃でも殺せなかった上に、消費も甘い……
つまり単なる弱体化なら、ちょっと勿体無い。
序盤ケチったんだから、真紅への追い撃ちもライデインにするのも一案かも。
そうすると消費の方も甘くてもいいか?となるだろうし。
水で電気が拡散、というのも、
レックスほどの本気のキラーが計算間違えて殺し損ねた「理由」「言い訳」として利用するのも手。
ドラクエのゲーム中じゃ、水で拡散して威力減少なんて状況は無いわけでね。
5のライデインはベギラゴンやマヒャドにかなり近い威力が有りますしね。
(この二つ、特に範囲も狭いベギラゴンが弱いだけかもしれないが)
ロワ内でも脇に落ちた余波で何mも吹き飛ぶ位だから直撃すれば十分死ぬとは思うのですが……
衝撃が強いだけで殺傷力は低めに抑えましょうか。
どの位にすれば良いのかがピンと来ないのですが。
>>63 ああ、では最後の攻撃をライデインにしましょうか?
それで解決になるならその方向に修正します。
>>63>>65 トドメをライデイン。そうか、それでいいのかも。
大技の消費や威力に関しては、今後みんなで話し合えばいいことだし。
ライデインの威力は…そうか、衝撃だけで吹っ飛んでるんだっけ。
その辺は深く追求しないことにしてさw
でも消費6しかなくて、だから連発できて、それで人も殺せる、これじゃ強すぎだと思わない?
ギガデインは強くてもいいけど、ライデインは少し抑えるべきかと。
この機会にレックスに限らず、ゲーム系キャラの能力制限を再度話し合った方がいいと思う
ゲーム的に見るとネスやリディア、リリスとかも結構シャレにならないし
69 :
◆gMrrx6WqIM :2007/03/08(木) 17:28:03 ID:8hfPQMCy
しんべヱ予約します。
あげてしまった……ごめんOTL
>>68 他のゲームはよく分からないけど、一度じっくり話し合った方がいいとは思う。
魔力消費はゲーム内の消費量に捕らわれず、強い魔法には大きく制限をかけるとかしたい。
切り札的な大技は特に消費を大きく。
そういえば各参加者の切り札的必殺技ってどうなっているんだろう?
別に威力や消費を一律にしたいわけじゃないけど、少し気になった。
とりあえず、
>>71には同意。
ところで狩人と獲物がまだ午前のままなのは……?
ネスのPKカッコイイものは初期設定のPKキアイか?
デフォルト名がPKキアイだからそれにしておいた方が無難かな
>>73 うあ、しまった。レックスと真紅は昼になっていたか。
梨々は外を出歩いていての遭遇だから2時間経過していてもなんとかなりそうで、
さくらと永沢の方は午前までは進んでいたから……なんとかなりそうです。
状態表と前編の内容に若干の修正を入れて対応します。
一つ案を出してみる。
・ギガデインやブリザガを食らったら一般人はほぼ即死、その代わり全快状態でも数回しか撃てない。
・逆にメラなどの弱めの魔法は使用回数を相当緩くして、一般人が受けても骨折や四肢の欠損などの大きなダメージにはしない。
このくらいにすると魔法使い系のキャラでも弱い魔法で牽制して隙をついて大技、とかできて描写の幅が広がると思うんだけどどうだろ?
ジーニアスがストーンブラストで翠星石を気絶させたけど、弱い魔法が直撃してもあのくらい、もしくはそれよりも弱いイメージで。
適当に分かる範囲で原作の戦力を比較。リリス以外の二人はトリッキー系だなw
コンピューターRPG系
リディア:ドラクエに比べて数字の上では文字通り1桁違うスペックを誇る。
参戦時期不明の為、幻獣界での修行中から参加となれば召喚魔法の大半を使用可能。
(普通に進めればLV10-15くらいだがプレイヤーのやりこみ具合によっては99まで)。
最強攻撃(?)は召喚魔法(幻獣界の前だとチョコボしか使用できない)を除けば、
デジョン(LV12、異次元送り)やトード(13、カエル化)、ストップ(15、時間停止)かな?
意外にもサイトロ(周辺の地形を把握する)が活躍するかも。回復のケアルも使える。
テーブルトークRPG
ベルカナ:ドラクエに比べて数字の上では1桁違う弱さを誇る。
TRPGなので各種魔法は想像力の許す限りトリッキー(捻くれた)な使い方される事が多く、
原作の時点でそれらを考慮して細かい設定がされている(戦闘以外での活躍の場が多い)
最強攻撃:SWでは精神力を数倍消費する事で強化できるため、上位魔法1発より初級魔法の
数倍消費の方が安定して強かったりする。決まれば一発の「眠りの雲」や「麻痺」、
「解呪(対象の魔法全解除)」と「変身(魔法以外の能力はコピーできる)」が強力か。
対戦格闘ゲーム
リリス:格ゲーなんで比べにくい。行動速度がフレーム単位なので細かくて早いと思うw
ゲームだと普通の戦闘に見えるが、実際にはデラタメな威力の攻撃をデタラメな耐久力と
回復力で受け止めてる、文字通り化け物同士の戦い。
同作品のキャラが人間や建物などに攻撃するシーンが、アニメ(Vハンター)版にあるのだが
小攻撃で人が切断されたり石壁が砕けたり、大技出すと余波で数十人が消し飛ばされて城やら
コロシアムが粉々に。その攻撃を平然と受けたり防いだりして殴りあうモンスターども。
魔剣ダイレク(イフリートソード)一振りで村一つが焼き払われるとか、人外魔境っぷりを発揮。
必殺攻撃:無難にルミナスイリュージョン(分身して乱舞攻撃)かな?
個人的には漫画版の「沢山の人々の想いを込めた光の矢」が見たい気もするが無理そうw
>>78 リディアのレベルと時期はどの位だろうな。
他のRPG系と違って幼少時だからクリアレベルじゃないだろうし。
やり込みだと全キャラ中最強になるらしいけど流石にそれも無いだろうw
リメイク版では大人になった後で子供になるイベントが有ったらしいけどその時期も無いよな。
裏を返せばロワ内でレベルアップして魔法習得とかも有りか?
あと、幼少時でもプッツンイベントならタイタンを召喚出来るんだっけw
ttp://www.asahi-net.or.jp/~xi5s-msd/kyara/ridhia.htm ぐぐってでてきた参考サイト。
最凶魔法バイオはLv26だから少なくとも現時点では使えなさそうだ。
>>79 レベルアップって希望が膨らむ響きだよな。でもFFやドラクエの経験値は相手を
逃がさずトドメを刺さないと入らないわけで(ガクブル)
逆にイベントクリアで経験値の入るベルカナは守勢でもレベルアップしやすそうだ
>>80 ベルカナの中の人が1ゾロ出しても経験点が10点入るでよ
……ごめん、只の戯言だから気にしないで
レミアル予約者です。
すいません、もう少しお待ち下さい。
二回連続で期限を守れないとはお恥ずかしい……
>>82 良い作品を作る為ならば仕方の無い事
頑張って下さい
レミアルって誰だっけ?
と一瞬本気で考えてしまった
書きたいけど携帯じゃあなぁ…
この前も投下した時遅かったし……orz
>>85 誰だか特定してしまった。投下時にぎこちなかったわけだ……。
学校とかネットカフェ使えばどうだろう。まぁ、できるならとっくに試しているか。
>>86 パソも携帯も打つのが遅いんですよ…
投下前に書きためてはおくのですが、コピーできるのが少ない為に貼り付けるのが遅い遅い…
しかも、急ぐ余りか、何処かに失敗が…('A`)
お待たせしました。レミリア、アルルゥ投下します。
89 :
紅楼夢(1/8) ◆bmPu6a1eDk :2007/03/09(金) 01:54:55 ID:npP8OMmh
冷えた、薄暗い廊下をレミリアは歩いていた。
堅牢な石造りの壁は外敵はおろか外の光や風をも遮断し、所々に開いた小窓のみがかろうじて廊下を「薄暗い」程度にすませている。
もっとも闇に生きる吸血鬼の少女にとっては、小窓から差し込むわずかな光すら忌むべき対象でしかないのだが。
「まったく、落ち着きの無い子ね……それに礼儀がなってないわ」
不機嫌そうに翼を揺らし、レミリアは一人ごちた。
つい先程自分を置いて消えた、黒髪の少女。
命を助けてやったというのに(たしか人間はあの程度の傷でも死ぬはずだ)、礼どころか返事の一つもよこさないとはどういう了見なのか。
探し出したら、そのあたりしっかり教育してやらねばなるまい。
ちょうどあの娘はフランと会ったようだし、無礼を詫びさせた後は謝礼を兼ねてあの瞬間移動能力で道案内をさせてやろう。
その後はまあ、あの娘の態度次第で従者にしてやるなり食料にするなりしよう。うん、それがいい。
唯我独尊な思考に基づき行動方針を決める。
もっとも、これはさして重要度の高いものではない。
フランが命に関わるほどの深手を負う事態などそうあるものでないし、
自分がどうするにせよフランにはそう苦労せずに会えるだろう、とレミリアは思っていた。
なにせ彼女にとっては滅多に無い外出で、しかも監視する者がいないのだ。
あの瞬間移動娘の怖がりようから見てもかなり派手に「遊んで」いるのだろう。
大きな音や光が出ている方へ向かえば、そこにあの遊び好きな妹はいる。
ひょっとしたら日光を嫌ってどこかに隠れているかもしれないが、そうなら夜に探すだけだ。
兎に角、フランの事はのんびり探していけばいい。
それとは別に、レミリアにはしたい事が三つあった。
一つ目は服の替え。
彼女の服は血に塗れたままである。いつもは汚しても従者がすぐ替えを持ってくるので、放置していると気持ち悪いのだ。
二つ目は爆薬の実験。
爆薬を翼につけて大加速、というのに心惹かれる。だが、広い空間がまだ見つからない。
そして三つ目が――彼女が手にもつ紅い槍、魔槍ゲイボルグ。
レミリアはあまりこういったマジックアイテムを使わないし、知識も深くはない。
そんな物を使わなくとも本人が十分すぎる程に強いのだ。
故にゲイボルグを見ても説明書に書いてある以上のことは分からず、一度試してみる必要があった。
どのくらいの魔力を注ぎ込めば発動条件を満たすのか。
「真名を解放する」とは、スペルカードを宣言するようなものだろうか。
条件さえ満たせば、目を瞑って適当に放り投げても相手の心臓を貫くのだろうか。
確認しなければならない事は多い。
新しいおもちゃを早く使ってみたい、というのが半分以上本音なのだが。
しかしあいにくというか案の定というべきか、城の中にはネズミどころかゴキブリ一匹の気配も無い。
この分では外の森や湖にも心臓のある生き物は居ないのだろう。
動かない的相手では意味が無いと思ったので使わなかったが、やはり瞬間移動娘で試しておくべきだったか。
ちなみに銃という道具は元の場所に置いてきた。
あんな小さくて速いだけでちっとも美しくない、無粋極まる弾など使う気にならなかった。
決して自爆したことが恥ずかしいとか腹が立つとかそんな理由ではない。断じてない。
――どこかで扉が開く音がした。
おや、と顔を音源の方へ向ける。少し遠い。
瞬間移動できる者が律儀にドアを開けるかは疑問だが、誰かが居るのは間違いない。
ちょうどいい。
幼い顔つきに似合わない、不気味な笑みを浮かべた。
誰であろうと、心臓があるなら今の私の役に立つだろう。
欲を出すなら服の替えを持っていて、自分のことを怖がってくれて血液型がBだとなお良い。
B型の血が一番美味しいのだ。
「ここみたいね」
他よりも一回り大きく豪華な扉を開いた。先程も聞いた重々しい音が響き――目に飛び込む明るさに思わず眉を顰める。
扉の奥は大きな礼拝堂だった。
重苦しい城の廊下とは違い、そこは開放感に満ちている。
細長い大きな開口部、十メートルは軽く越えるアーチ天井に軽やかな壁面構成。明らかに建築様式からして違う。
(センスは悪くないけど、ここは駄目ね)
十字架などは怖くないが、日光が差し込んでいるのはいただけない。
ステンドグラス越しの光なので浴びても影響は無いが、用が済んだらさっさと出て行くべきだろう。
済ませるべき用は、視界の中央にあった。
二十メートルほど先、二列に並んだ木の長椅子に挟まれて、何をするでもなく立ち尽くしている少女。
獣のような耳と尻尾が、彼女が人間ではないことを物憂げに主張していた。
(……あれでいいか)
人間でないことや、着ている服のサイズが自分に合いそうでないのが残念だが。
幻想郷の紅い悪魔・レミリア・スカーレットは、槍を手に構えて少女を呼んだ。
「そこのお前」
少女が、振り返った。
ほとんど役に立てない小ネタと思うが一応書いときます
プレセアの使用技で牙旋豪斧と崩昇襲撃は数秒ダウン(気絶orピヨ)させる効果有。
PS2版追加の雷襲崩撃は雷属性なので水場など状況次第では活用できるかも。
木こり設定のためか武器の種類に関係なくデフォで植物には大ダメージ
◆
冷えた、薄暗い廊下の中をアルルゥは歩いていた。
限界が近かった。
三度の召喚による疲労に加え、思いきりハサミによる強制的な意志の固定。
断ち切り音の呪縛から解かれた後に訪れるのは、相反する二つの情報による行動指針の喪失。
度重なる精神の酷使は、アルルゥから思考力を奪っていた。
――君達には世界を救うためにお互いに魂の選定、”殺し合い”をしてもらう。
――あ、あの、ごめんなさい! ちょっと混乱してたんです!
言葉の切れ端が意識に浮かんでは、思考の段階に達する前に消えてゆく。
道があるから歩く。丁字路にさしかかったから曲がる。
足取りは雲を踏むように頼りなく、瞳は霞を眺めるようにおぼつかず。
今のアルルゥは、肉体だけが惰性で動いているようなものだった。
――みんなで諦めなければ、絶対に帰れる!帰る方法は絶対に見つかる!
――みんなを殺して生き延びたりしたら……きっと君のお父さんは、怒るぞ……
扉があったから開く。道があるから歩く。
道が無くなったので、立ち止まる。
見回すと、七色の玻璃が光を溢れさせている。
並び立つ柱と半円形の架構の群に光の破片が降り注ぐ様はどこか森に似ていて、居心地が良かった。
そのまま何をするでもなく、呆けたように立っていた。
もはや「行き止まりに当たったら引き返す」という当たり前の発想すら出てこない。
引き返したところで何をするわけでもないのだ。
彼女の足を動かしたいのなら、せめて、場当たり的にでも彼女の行動の指針になるものを与えなければ――
「そこのお前」
声をかけられたので、振り返る。
そして、アルルゥは、見た。
少女の服にこびりついた、錆びた紅を。
己が心臓に向けられた、鮮烈な紅を。
行動の指針を。
耳と尻尾がぞわりと逆立ち、アルルゥの中の戦士がなけなしの気力を振り絞る。
◆
「オピァマタッ!!」
思いがけない大きな声に少し驚く。
少女が掲げる宝石の光に呼応するように空間が歪み、見たことのない丸い獣が姿を現した。
少女と獣、四つの瞳が戦意を込めてレミリアを睨む。
「問答無用という事? 」
どこかの巫女や魔法使いといい、先程の瞬間移動娘といい、話を聞かない輩の多いことだ。
まあいい。話をしないならそれでも構わないし、使い魔か式神か知らないがあの獣はいい実験台だ。
ゲイボルグに魔力を注ぎ込む。反応が鈍い。思ったより大喰らいだ――いや、自分の魔力の方が制限されている?
紅茶のカップを傾けるように、少し多めに魔力を注いでみる。
来た。
ぴん、と周囲の空気が凍りつく感覚。運命を定めんとする、世界の力。
ごひゅう、と耳障りな音を立てて獣が息を吸い込んだ。獣風情には運命の恐ろしさが理解できないと見える。
少女は何もしようとしない。闘いは獣に任せるつもりか。
巨大なゴムマリのような獣に狙いを、運命を定めた。
レミリアの足が地を蹴った。
人間にはあり得ないほどの前傾姿勢。翼を広げ風を受ける、滑空に近いフォームで彼我の距離を一気に半分も詰める。
「ゲイ――」
風切り音とともに、槍を引く。必殺の運命が槍に充填される感覚。
そしてレミリアを迎え撃つかのように、大きく開いた獣の口から濃緑のガスが噴き出した。
見るからに毒々しいその色彩。見た目熱くも冷たくもなければ、魔力も無い。
吸い込んだ者を死に追いやる毒のブレスに、レミリアは凶悪な笑みでもって、避けることなく突っ込んだ。
レミリア・スカーレットは吸血鬼。人とは比べ物にならないその強靭な肉体に、毒など効くはずもない。
獣はもう目前。固い表皮も、分厚い脂肪の層も、野太い胸骨も何の役にも立たない。
さあ、運命の力を体で理解して逝くがいい。
「ボル――
ゥ……あ……?」
毒など、効くはずもないのに。
視界が斜めに傾げる。体の勢いは止まらず、獣の巨躯に弾かれる。
真名を開放されなかった槍は力を失い、その矛先は宙を突いた。
かろうじて受け身を取った。
視界の回転が止まらない。
頭が警鐘を鳴らしている。
胃の底から何かがこみあげてくる。
自分の身に起こったことが、信じられない。
「こ……れは……」
聞いたことがある。
知り合いの人間や妖怪たちがする話。
食べてはいけないキノコを食べてしまった話。調合を間違えた魔法薬を飲んでしまった話。鈴蘭畑の毒にやられた話。
彼らが、どのような苦痛に見舞われたか。
聞いたことしかない。
私は今、毒に侵されている?
(身体能力や魔力だけじゃない、吸血鬼の性質そのものが抑えられている!?)
追撃を掛けてくると思って構えたが、予想に反して獣は何もせずに消えていった。
再び傾ぎそうになる視界を押し留める。
レミリアは、彼女を知る人間が見れば驚くほど狼狽していた。
毒の苦痛を恐れているのではない。
自分の体のことが、まったく分からないのだ。
毒に侵されたことなど無く、それどころか最後に体調を崩した時のことすら遠い忘却の彼方にある彼女は、
今自分の体を蝕む毒が、どれほど危険なものなのか想像しようとも出来ないのだ。
――実を言えば、レミリアを蝕む毒は、彼女の体からすればそこまで恐れるほどのものではなかった。
一時的に気分が悪くなりこそすれ、それ以上は無い。その程度の毒。
彼女が以前にも毒に侵されたことがあったなら、正誤はともかくそれを基準に判断することが出来ただろう。
高熱を出して寝込んだとか、
酒宴の翌日酷い頭痛に悩まされたとか、
痛んだ食べ物に手をつけてトイレの友達になったとか、その程度でもいい。
そんな経験をしたことがあったなら、それと同じ程度と開き直ることも出来ただろう。
生まれついての強者であるレミリアには、弱者が努力して得た、ともすれば当たり前に持っている知識や経験が無い。
それは彼女の怠慢ではなくむしろ当然の事。
だが強者が本来の強者たりえないこの異常な状況下にあって、「当然の事」は「致命的な問題」になりえてしまうのだ。
喉元までせり上がってきた何かを、口に手を当てて飲み込む。
美しくない弾を吐き出す道具。使い魔とも式神とも違う使われ方をする獣。そして吸血鬼としての力を削がれた自分自身。
ここが幻想郷とは違う掟に依っている事を、今更ながらに実感する。
(……ちょっと遊びすぎたみたいね)
「ンア……ヴィ……ワ……」
かすれた声が聞こえた。
再び空間が捩れ、翼を持った赤銅色の獣が顔を出す。
爬虫類のようだが、やはり見たことの無い姿だ――だが、彼奴が何をするのかは想像がつく。
相手の行動を制限し、本命の一撃を叩きこむ。
弾幕ごっこでも馴染みの勝利の方程式。
自分のそれよりも大きな翼が空を打ち、高く天井まで舞い上がる。
獣耳の少女は完全な無防備状態。それどころか今にも倒れそうだ。
だが少女を討ったとしても獣が消えるとは限らない。
ごおう、という吸引音。ブレス。
咄嗟に光弾を放った。しかし揺れる視界のために狙いは大きく逸れ、長椅子に穴を開けることしか出来なかった。
どこかに逃げるか――思うように飛べないだろうし、遮蔽物になりそうなものはない。
核金か爆薬で――取り出している暇が無い。
このコンディションの自分でも、確実に獣を倒せる物。
紅い槍。しかし――手を離れても死の運命は届くのか?
迷っている時間は無かった。
自分らしくもない、毒だろうと槍だろうと、分からないことはいちいち考えても仕方が無いではないか。
床に転がっていた槍を持ち直す。
ステンドグラスの光を背に、獣が口を開いた。溢れ出すのは、逆光にも負けない鮮やかな紅。
炎が、空気を円柱状に焦がしながらレミリアに襲い掛かった。
「ゲイ――」
もはや逃げる場所も猶予も無い。
レミリアは紅い槍を再び構え、紅い瞳で紅い柱を真正面に見据え、
「――ボルグ!!!」
込められるだけの魔力を注ぎ、ありったけの臂力を持って、投擲した。
視界が、紅に染まった。
◆
耳鳴りがようやくおさまった。
じゃり、と埃と小石まみれの床を這うのを止める。
「っ、はぁ……」
レミリアは礼拝堂の床に伏していた。
服も体も埃まみれ。
だがそれ以上に目を引くのは、彼女の体のいたる所からまるで線香のように立ち昇る煙だ。
煙の正体は他でもない、日光を浴びて気化したレミリア自身。
あの瞬間に何が起こったかを理解できたものは居なかった。
レミリアの手を離れたゲイボルグは、主の期待通りに炎を裂き、獣の心臓を貫いた。
そこまでは良かった。
しかし、槍はまるでそれでは物足りぬと言わんばかりに、礼拝堂を揺るがすほどの大爆発を起こしたのだ。
突き穿つ死翔の槍(ゲイボルク)。
大量の魔力を込めて投槍として使った時に発動する、ゲイボルグのもう一つの、いや本来の能力。
数十の兵を一撃で吹き飛ばす、炸裂弾のごとき「対軍」宝具。
その爆発の余波は獣を跡形も無く消し去り、レミリアを襲う残り火を吹き飛ばし、堂に堆積していた埃を舞い上がらせ、
そしてステンドグラスを砕いた。
堂内に入り込んだ日光は、吸血鬼であるレミリアの体を射るように灼いた。
「浪費は……嫌いではないけど……」
疲弊した体で言葉を紡ぐ。
不安は無い。日光なら浴びたことがある。自分がこの程度で死なない事は分かっている。
この陰でしばらく休めば、体力は戻る。
しかし、疲れて気を失うなど何十年ぶりだろうか。
獣耳の少女は探すまでもなかった。
レミリアのすぐ目の前、ともすれば息がかかりそうな程近くに横たわっている。
ゲイボルグの攻撃を受けたわけではない。爆風の余波で倒れただけである。
口から垂れた涎がいっそ清々しい。
「これで獣一匹は……さすがに割に合わない……な」
それだけ呟いて、レミリアは歳相応の幼子のように体を丸めて眠りについた。
レミリアは気づかなかったが、彼女の姿勢はアルルゥのそれとちょうど鏡あわせになっていた。
七色のガラスがおもちゃのように散乱する礼拝堂。
その中で向かい合って寝息を立てる二人の姿は、まるで遊び疲れて眠る仲の良い姉妹のようにも見えた。
【F-3/城内の礼拝堂/1日目/昼】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力大消費+毒+日光浴のダメージによる気絶。葵から血を飲む時に零して服は血塗れ。全身埃塗れ。
[装備]:飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心
[道具]:支給品一式、シルバースキンATの核鉄(No.52)@武装錬金
[思考]:…………
第一行動方針:もうちょっと真面目に行動するか……?
第二行動方針:目の前の小娘をどうしてくれよう。
第三行動方針:フランを知っている瞬間移動娘を探す。
第四行動方針:血塗れになった上に汚れた服の替えはどうしよう。というか体を拭きたい。
第五行動方針:時間があったら爆薬で加速の実験をする。
基本行動方針:フランドールを捜す。
[備考]:シルバースキンATは185cmのブラボーサイズで生成されます。
毒の効果は気分がかなり悪くなる程度。時間経過で治ります。
本人の再生能力+核金の効果により通常より早く体力が回復します。
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:精神疲労限界突破+転倒による気絶。頭にたんこぶが出来た。全身埃塗れ。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品、クロウカード三枚(スイート「甘」、バブル「泡」、ダッシュ「駆」)
[思考]:…………
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
思いきりはさみの効果は消えました。
※二人とも、礼拝堂の中央付近で寝ています。レミリアは椅子と柱の陰にいます。
礼拝堂のステンドグラスが砕かれました。
ゲイボルグの行方は不明です。
以上です。
99 :
91:2007/03/09(金) 02:07:50 ID:Qn5wr5pG
リロードせず書き込み大変申し訳ありませんでした
投下GJ
レミリア大ダメージだな……でも召喚獣二匹撃退したのはすげえ
アルルゥもあれだけ暴れれば気絶はしかたないか、丈にトマにと毒とトラブル撒き散らして
しかし、これから戦場になりそうな城で気絶するのは危ないぞ……
>>98 GJ。
どっちが死んでもおかしくないなと期待半分ハラハラ半分で見てました。
今後もどう転ぶか判らない状況だけど面白そう。
ゲイボルグは……湖にでも沈んでそうだなw
105 :
103:2007/03/09(金) 03:59:51 ID:RyUqlDAQ
マーダーマークっていうか危険人物マークになってきましたけどね。
ここらでどこから赤で囲むかの線引きも決めた方が良いかも。
多分、完全なマーダーは半分くらいですよきっと。
ほら蒼星石だって……
やたらエロくて微妙な武装の白レン
あんまり強くない隻腕のイシドロ
「蒼星石はわたしの仲間だよね……?」のタバサ
……仲間が一番怖い件について。
>>98 GJ! アルルゥマーダー脱却のチャンス到来か?
ゲイボルグ使用の余波がいろんなところで影響しそうだ。
>>103 仕事の速さに笑った。北東と南西以外全部危険地域に見えるw
あと深夜にwiki大量更新してくれた人も乙!
>>103 乙!
みか先生とベルフラウは何やってんだろうな
真紅もレックスもそこら辺通ったのにスルーしてるんだな
>>103 乙です。ぱっと見蒼星石がやばいw
>>78 質問なんですが、リディアの参戦時期が幻獣界での修行中であるならば召還魔法が大半使えて尚且つレベル10〜15なんですか?
>>109 FF4の召喚魔法の大半はイベントで習得するのでレベルは関係ない。
以下、記憶にある限りでリディアについて解説してみる。
ゲーム序盤にパーティーに加入(7才でレベル1から)し、黒魔法を得意とする。
序盤山場でリヴァイアサンに船を沈められた際に行方不明に(他のメンバーも。
普通にゲームを進めるとこのイベントまで大体10から20レベルくらいで到達する)。
その後、行方不明のままゲームは進み、中盤のピンチに「成長した姿(17才?)」で再登場し
強力な召喚魔法で仲間を救う。この時、大半の召喚魔法(幻獣界にいた奴ら)は習得済みになっている。
急激な成長について、要約すると
「海に落ちた後、幻獣界に辿り着いて助かった。優れた召喚師の素質があったので
そこで幻獣達と暮らしながら修業していた。幻獣界は時間の流れが早いから既に
何年分もの時間を向こうで過ごしてたけど、仲間のピンチに駆け付けた」
て感じだったかと。うろ覚えなので細部は間違っているかも。
つまり幻獣界での修業期間は描写が無いのでグレーゾーンとして色々妄想できる
では、自分も記憶にある限りでベルフラウについて語ってみる。
殴り合い特化型生徒のナップや召喚術特化型生徒のアリーゼと違い、
HP、MPあたりは他のユニットに比べ平均〜やや高めのレベルで、
飛びぬけて強キャラというわけではない(参戦時期にもよるが、今のところ不明?)。
ちなみに、射撃を攻撃の主体とするためか、LUC(幸運値)が他のキャラに比べ高め。
ゲームの特徴として、攻撃力や魔力に経験値を自由に振り分けられ
それによって成長の方向も変わってきたりするのだが(TRPG等のキャラメイクに類似?)
ここでは基本の「弓使い+召喚術」タイプが無難と思われる。
ただし、サモナイト石がないと召喚術は使えない、弓がなければ戦えないので、
現状においてゲーム系参加者では最も弱いと思われる。
ベルフラウ個人の持っているスキルとしては、
「魔抗」(魔法ダメージ軽減)、「見切」(投擲・射撃系攻撃の回避率向上)など。
また、「誓約の儀式」といって、キーアイテムを媒介にしてサモナイト石を使うことによって
召喚術を生み出すことができる。ただし鬼属性(シルターン)と無属性限定。
(生み出した召喚術はサモナイト石に宿り、その後も使うことができる。
また、他のキャラに渡して使わせることも可能)
【誓約の儀式の例】
鬼のサモナイト石+かきかたの本=「ミョージン」(沈黙攻撃ができるユニット召喚)
鬼のサモナイト石+召魔の水晶=「ムジナ」(暗闇攻撃+ダメージ)
鬼のサモナイト石+電気モーター=「金剛鬼」(中程度の単体or範囲ダメージ、マヒ)
鬼のサモナイト石+わら人形=「ノロイ」(中程度の範囲ダメージ、憑依召喚)
無のサモナイト石+目覚まし時計=「サモンマテリアル」(鍋や鉄アレイを降らせる)
無のサモナイト石+学術教本=「シャインセイバー」(5種の武器を降らせてダメージ)
無のサモナイト石+飛竜の牙=「ダークブリンガー」(シャインセイバーの黒化版)
また、作品の参考として、プロモを以下に。
ttp://www.youtube.com/watch?v=l5ozZ9yxWEg&mode=related&search= 赤い帽子で金髪のロリがベルフラウ。
ちなみに3:26あたりで出てくるピンクのと青いのが「タマヒポ」。
リディアの登場話を読み返して彼女の参戦時期を推測すると
サンダーが使える→セシル達と合流後というは確定
原作の仲間の事を気にしてい→パーティー離脱後?
火魔法を躊躇→トラウマ克服前?
奥義の書や他の攻撃系の幻獣を知ってる→幼女期には登場しない(元々知識持ち?)
無難なところだと序盤のトラウマ克服イベント前かな。レベル激低だけどw
>>112 ボブルの山攻略前かよ! ヤンすら登場してねーじゃなーかw
Wikiの魔剣ダイレクの説明見て思ったんだが、
イエローの能力でダイレクの意思を読み取ったりできるのだろうか?
ポケモンでないから多分無理だろうけど、ダイレクについてはよく分からないので詳しい人に聞いてみたい。
あれって意思は持ってるけど、剣自体が生物だったり何かの霊が宿ってるというわけではない、でおk?
>>114 詳しくは不明。戦闘中に放置するとグニャリと曲がったりするので魔法生物かも。
どちらにせよ持ち主の意志を読み取って動くから、イエローがポケモンとして接すれば
イエローが望むポケモンとしての対応をすると思う。
【予約まとめ】
3/07(水)の予約(〜3/10(土)まで)
◆IEYD9V7.46 :フランドール
3/08(木)の予約(〜3/11(日)まで)
◆gMrrx6WqIM :しんべヱ
〜 一作しか書かれていない参加者 〜
【ベルフラウ@サモンナイト3】(H-6/廃墟側川岸)
【鈴木みか@せんせいのお時間】(H-6/廃墟側川岸)
【リディア@FF4】(D-2南部/森林)
【現時点のMAP】
>>103 〜各地のフラグまとめ? 〜
@北西エリア(湖上の城、平原、商店街etc.)
・【F-3】城内の一室で葵VSベルカナ&イエロー。
レミアル戦の影響があるかも? プレセアは……。
・【E-1】ククリを抱えたリルルをネスが追いかけています。
ひょっとするとゲイボルグがすっ飛んでくるかもしれません。
@北東エリア(大森林、工場、廃病院、謎の塔、モニュメント跡)
・【B-1】死体遊びに興じるグレーテルを、ミミが仕留めようか迷っています。
・【A-2】シャナ&小太郎が森を南下中。
・【B-2】双葉が【B-3】の廃病院(イヴ・ビュティ・ブルーが休憩中)へと向かっています。
・【C-3】イシドロ調教中の白レンを、タバサ&蒼星石が発見。
@中央エリア(学校、森)
・【D-5】「小狼・コナン・ネギ」組と「梨花・リンク・灰原」組が、学校【D-4】を目指しています。
・【E-4】乱太郎を戦闘とした、ヘンゼル、メロ、金糸雀の地獄列車が学校【D-4】付近に。
@南西エリア(市街地、タワー、山脈、道路)
・【B-5】山頂にてリリスVSエヴァ&ニケ。
・【B-5】山麓にて勝VSヴィータVSなのは。危険物×3も転がっています。
・【B-7】弥彦&ニア。何らかのアクションを起こすか?
@南東エリア(湖、橋、廃墟、病院、シェルター)
・【F-6】橋の上にレン&はやて、その下の湖にはイリヤ。
橋をはさんで東側に満身創痍の真紅、西側に翠星石のローザミスティカ。
・【H-6】雛苺がノーパソ抱えて逃亡中。
・【G-7】さくら&梨々がリインに導かれ逃亡中。
・【E-8】パタリロ組がよつばを連れて、ちよを助けに【D-8】へと急行中。
>>116 乙だが、スカーレット嬢ならレミアルではなくレミリアだったと記憶しているが……?
>>118 把握した
だからこの間からレミアルレミアルって発言が出てたんだな……成る程
ネタを思いついたがベルカナの精神力が2点足りねぇ……
ところでちゃんと6時間寝なくても少しづつ回復ってルールになったの?
SWのルールだと5時間50分で起こされても全く回復しないんだが
>>120 そいつは残念。生き残れたら再利用するか、没ネタに放り込むかで。
細かいMP計算が出来ちゃうキャラって不便だな。限界を越えられない。
最後の力を振り絞って呪文を唱えた→しかしMPが足りないw
>>110,112
サンクス
ようはレベルが激低+召還獣なしと考えるのが無難って事か……
>>120 MP回復については議論の途中。
個人的には徐々に回復でいいと思うがね。
魔法のダメージや消費と同じで、ゲーム的に杓子定規に考える必要はないと思うから。
>>121 SWは小説でもルールは細かく守ってるから仕方ないかな。
巻末で必ず登場キャラとアイテムのデータを乗せるようなシリーズだから。
>>123 分かっちゃいるんだが、状態表で具体的に残り精神力が書かれると、
その中で何とかしようとか、この時間でこれだけ回復したからとか考えちゃって……OTL
週末だしどこか書こうと思ったら、書けるキャラがみな知らないキャラと一緒で/(^0^)\フッジサーン
作品調べしてて気付いたんだが、みか先生、ニケやヘンゼルと同じ声なのか……
のび太ときり丸予約します。
どうなるか想像しにくい組み合わせwktk
「being」と「正義は必ず」の改行ミスを修正
後ニアの眠り火の個数を10→9に変更
後
>>25で指摘された通りアクション仮面を変更
遅くなってすみませんでしたorz
そしてリディアを予約します。
明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナを予約してみます
気が付けば薫の周りには誰もいなくなっていたよ……今一番の空気キャラかw
でも薫は寝てる間に変なフラグ立ってるw
ベルカナとイエローと乱太郎とヘンゼルとプレセアからは危険人物だと認識されてるわ、
そのせいで葵を誤解暴走させるわで愉快な事に。
……絶チル勢は一体どうなるのやら。
フランドール投下します。
平原にてディバインバスターにより少女を攻撃。消息不明。
商店街にてプロテクションEX派生技により少年を攻撃。消滅確認。
魔導士の杖は何度目になるか分からない状況確認を終えた。
ユーノ・スクライアからマスター高町なのはへと託された後、自身の魔法が人間を焼いたことはなかった。
マスターと自分が振るう魔法は、常に誰かを幸せにするために行使してきたのだ。
だが、それも呆気なく破られた。
恐れも躊躇もなく、狂ったように笑いながら圧倒的な魔力で少女を砲撃した仮マスター。
典型的な快楽殺人者。レイジングハートはフランドールをそう評した…………はずだった。
その認識が揺らいだのはつい先ほどのことだ。
驚異的な身体能力を誇る少年――ゴン・フリークスに勝利し、さぞ充実したことだろうとフランドールの顔を覗いてみた。
確かに彼女は満足そうな表情をしていた。だがそれが一点の曇りもないものなのかと訊かれれば違うと答えるだろう。
魔力を使いすぎたのが不服なのか、腕を粉砕されたことが気に入らなかったのか。
あるいは、ただの殺人者なのではなく、何か独自のロジックに基づいて動いているのだろうか。
レイジングハートは理解できない。フランドールは行動に矛盾点が多すぎるのだ。
だが、その矛盾の正体を見極めることができたなら、あるいは自分にも何かできるのかもしれない。
* * *
白を基調とした清潔感あふれる空間がある。
内装はごくシンプルで、目に付くものはクローゼット、ベッド、アンティークのランプ、落ち着いた柄のカーテン。
昼間だというのに太陽の光を嫌うかのように厚めの布地が光を遮る。
薄暗い寝室の中。
ベッドの上で仰向けに寝ている金髪の少女に対して赤い宝石が言を発する。
『仮マスター、少しよろしいですか?』
「……どうでもいいけど、あなたはいつになったらマスターと呼んでくれるのかしら?
高町なのはっていう人間を壊せば私のことをマスターって認めてくれるの?」
常人なら身の毛立つような物騒な話ではあるが、そこに深い意味はない。
フランドールは自分の言葉が他者にどのような影響を与えるのかをうまく悟ることができないのだ。
人を壊すなどという内容も、彼女にしてみれば今日の天気は良い、あの本は面白かったなどの世間話の延長線上にあるものに過ぎない。
何を話せばいいのか分からないから、思ったことを率直に述べる。
そうすることで不器用ながらもコミュニケーションを図りたいという無意識が働いているのかもしれない。
「まぁ、いいわ。用事ってなに?」
『仮マスターへの理解を深めるためにいくつか質問があります』
「理解?」
『私はインテリジェントデバイス――意思ある杖です。
仮マスターの思考や性格を把握することで自身を調節し、より効率よく魔法を運用することが可能になります』
つまり質問に答えればより美しい弾幕を展開できるということか、とフランドールは考える。
疲労が募っているので、やることがなければ寝るだけだ。
フランドールは睡眠欲とレイジングハートがこれからするという話を秤にかけてみた。
休むことなどいつでもできる(殺し合いの場ではあるがフランドールはそう思っている)
ならばレイジングハートの質問に答えたほうが面白そうだ。
遠くの楽しみよりも目先の楽しみ。
些細な娯楽でも楽しもうという好奇心が睡眠欲に勝った。
「ふーん。分かったわ。何でも答えてあげる」
『ありがとうございます。では最初の質問を。
仮マスターはゴンという少年との戦闘の中で……本気を出しませんでしたね。
私の見立てではあなたはデバイスなしでも魔法ランクS以上の実力はあると考えられます。
対処方はあったはずです。片腕を負傷してまで本気を出さなかったのはなぜですか?」
レイジングハートの問いかけがフランドールの心を微かに揺らす。
自分のことを分かってくれていたんだ、という嬉しさに胸が少し満たされる。
喜んでばかりもいられないので、問いに対する答えを整理するためレイジングハートへの視線を僅かに逸らして考える。
「……分かってたんだ。そうね、私はスペルカードを使わなかったわ。
あなたの魔法と私のスペルカードを組み合わせればあの子に何もさせずに勝つこともできたかもしれないし、逃げる手段だっていくらでもあった」
でも、と前置きをしながらフランドールは赤い宝石へと再び顔を向ける。
「あの場面で逃げたりしたらつまらないじゃない。それに、私はレイジングハートと一緒に遊びたかったし
……レイジングハートと仲良くなりたかった。本気で制御したアクセルシューターはとても楽しかったわ。
私の弾幕と似ているようで違うんだもの」
『分かりました。では次の質問です。
先の戦闘に勝利したというのに元気がないのはなぜですか?
あなたの目的は人を壊すことではないのですか?』
レイジングハートの質問はフランドールにとって考えさせられるものばかりだ。
当人にとっては当たり前過ぎるがゆえに、改めて説明しろと言われてもそれを言語化することが困難なのである。
深く考えるのが億劫になったのか、繋がりが粗い見解をフランドールは口にする。
「……えーと、弾幕ごっこは楽しい。相手の生死を気にするのは面倒。
というか生きるとか死ぬとかがよく分からない。
……でも壊れた相手とは二度と遊べないからそこが少しだけ寂しい。こんな感じでいい?」
『はい、理解しました。これで質問は終了です。ご協力感謝します』
「それで、質問の答えを聞いたあなたはいったい何をしてくれるの?」
『提案があります』
フランドールが破顔し、赤い宝石を見つめる。
期待に胸が膨らむ。今の状態でも美しい弾幕を描くことは可能だ。それが更に向上するとレイジングハートは言ったのである。
弾速や制御、同時発動数を高まったりするのだろうか?
プロテクションEXのような派生魔法を新たに生み出すことができるのだろうか?
どんどん夢が広がっていく。
ある種の芸術の創作意欲が止め処なく溢れてくる。
現在のフランドールの心境はまさにプレゼントを貰う子供のそれと同じもの。
何時間も待ちわびていたかのように今か今かとレイジングハートの答えを待つ。
しかし、次に赤い宝石が放った予想外の言葉にフランドールは撃ち抜かれることになる。
『僭越ながら私があなたの友達になります。そして、あなたに人を壊させません』
「……え?」
フランドールの思考がぐちゃぐちゃになる。
トモダチという言葉で喜び、驚き、そして何か温まるものを得ることができた。
壊させないという否定の言葉が失望、怒り、悲しみを打ちつけてきた。
正負の激情が濁流のように同時に襲ってきて心情の絶対値が跳ね上がり――――その全てが暗い気持ちに変換される。
さっきまでのやりとりはいったい何だったのだろうか。
分かってくれるかもしれないと思っていた。きっと仲良くなれると心のどこかで信じていた。
だけど。
結局、レイジングハートは自分のことなんか理解してはくれなかったのだ。
体中が熱くなり、視界が暗くなるのを感じる。
様々な感情が無秩序にかき混ぜられた結果。
行き場が分からない衝動は狂笑という形をなして現れる。
「……は、はは、――――あははははははははははははははははは!
何を言っているの? トモダチになる? 人間を壊させない?
言っていることが全然繋がっていないわ。
壊させないってことはつまり私から弾幕ごっこを取り上げる気なの?
私のたった一つの楽しみを、たった一つの遊びを!
せっかくこんなに遊び相手がいる島に来たのにさ!
いくらレイジングハートの言うことだからってそんな頼み聞けるわけ――――」
『さきほど、仮マスターはこう仰いました。――私と遊ぶのは楽しい。
だから、ゴン・フリークスとの戦闘においてスペルカードは使いたくなかった。
私と共に遊びたかったと』
「えぇ、言ったわ。それが何だって言うの」
『私の魔法は非殺傷設定をかけることで外傷を抑え、魔力値にダメージを与える設定に切り替えることが可能です。
相手の魔力が枯渇したとしても死ぬことはありえませんし、数時間で回復もするでしょう。
もしも仮マスターが通常弾幕とスペルカードを封印してくだされば、あなたの攻撃で人が死ぬことはありません。
同じ相手と二度と遊べなくなることを防ぐことが可能です。
手加減や相手の生死を気にする必要もありません。
あなたが全力で魔力を制御、放出しても、私が全て受け止めます。
仮マスターが望むなら、私はそれに応えます。あなたに、人殺しはさせません。
そして人を殺すことをやめたなら…………きっと私のマスター、高町なのはもあなたの友達になってくれます。
――――いかがでしょうか?』
フランドールは息を呑み、体を硬直させる。
レイジングハートは自分がどういう提案を行っているのかを承知の上で発言している。
もとの世界では犯罪者を非殺傷魔法で無力化した後、時空管理局が逮捕もしくは保護をするという仕組みを取っていた。
時空管理局のバックアップ、そして綿密なシステムがあったからこそ、PT事件や闇の書事件のようなロストロギアの絡む大事件においても驚くほど死傷者は少なかったのである。だが、この場ではそんなものは通用しない。
この島は問答無用の殺戮の場だ。
非殺傷設定の魔法で戦闘力を奪われた参加者を保護する存在が都合よく現れる可能性は極めて低い。
無力化された参加者は他の参加者の手で死ぬことよりもつらい運命を降りかけられるかもしれない。
そう。レイジングハートがやっていることは結局のところ問題の先送りでしかないのだ。
フランドールに殺人を止めろと言ったところで聞くはずがないと判断した上での苦肉の策。
弾幕ごっこをさせつつ、その興味を徐々に他のものに逸らしていき、広い世界を見せる機会を与え、生きる楽しみを教える。
せめて殺すことだけでもやめさせられれば何かが変わるのではないか。
何かきっかけが訪れるのではないか。
意思ある杖はそう、思った。
マスター高町なのはと出会い、その感性に触れたレイジングハートはフランドールの殺戮を止めうる針の穴のような可能性に掛けてみたくなった。
そして、殺人を犯した者だろうと何だろうと救えるものは全員救おうとする主の精神が魔導士の杖の中には根強く宿っている。
だから、助けられるものは全力で助ける。
マスターがフェイト・テスタロッサを救ったように。八神はやてとヴォルケンリッターを連環する運命から解き放ったように。
文字通り思考回路を積んでいるレイジングハートの出した答えがこれだ。
傲慢で独善で偽善で全てが徒労に終わる可能性が高く、周囲の人間を不幸にするかもしれない論理的とは言い難い思考。
だが、幾度となく思考を繰り返そうとも高町なのはのデバイスが行き着く先は、全てを救おうとする道以外はないのだ。
それが、救うこと叶わずに散ってしまったゴン・フリークスへの弔いになると思った。
彼の遺志を無駄にはしたくない、フランドールに届かせるには足りなかった彼の想いを汲み取り、補いたかった。
提案を受けたフランドールは考える。レイジングハートの要求を撥ね付けるのは簡単だ。
杖が何を言おうとも供給した魔力分の魔弾は射出されるのだから、実用上の問題はなにもない。
そうなると残るのは精神・感情論だけだ。
ゴンとの戦いの中、本当に殺されるのかもしれないと思った。
それでもレイジングハートと一緒に遊びたいと思った。
導き出されるのは、自分の命よりもレイジングハートと遊ぶことのほうが重要だという結論。
通常弾幕とスペルカードを封印することはどうなのだろう。
さっきの弾幕ごっこで本気を出したと思えて、しかも一番楽しかったのは――――レイジングハートの魔法を使っているとき。
あの楽しさがあるなら、能力を使わなくても退屈することはないのではないか。
自分はレイジングハートとどう接していきたいのか。
魔導士の杖が見せてくれる世界とはどんなものなのだろうか。
レイジングハートがトモダチになってくれるかもしれないと言った高町なのはという人間はどのような存在なのか。
未来予想図が幾重にも重なり、その全てが繋がり広大な物語が作られる。
目の前が開けていき、鼓動が高鳴る。
気が付けば、答えは決まっていた。
「……1つ、条件があるわ」
『何でしょうか?』
「あなたは私のトモダチになってくれるんでしょう? それなら、その証を見せて」
『証……ですか?』
フランドールは告げる。契約の儀式、最後の課題を。
「なまえを呼んで。私があなたのマスターになれないのなら、私のことを名前…………やっぱり愛称で呼んで。
“仮マスター”や“あなた”という呼び方は違うの。
レイジングハートは家来でもメイドでもないトモダチなんだから。
トモダチって愛称で呼び合うんでしょう?
お姉様とパチュリーだってそうだもの。
だったらレイジングハートにも私のことを愛称で呼んでほしいわ」
レイジングハートは他者を区別する目的以外で人名を呼ぶことは少ない。
ましてや、愛称などつけたことがあるはずがない。
……けれども。
この場面では極自然に、吸血鬼の少女に名を贈ることができた。
『分かりました――フラン』
* * *
太陽が高く上る。寝室のカーテンの隙間から漏れ出る光の帯がその存在を増していき、フランドールの体に明暗の模様を映し出す。
彼女は少し手を伸ばし、カーテンをしっかりと引いて鬱陶しい光を遮ろうとして……その手を止める。
そのままベッドへと倒れこみ、首に掛けた赤い宝石を見て外見相応の少女のように満足そうに微笑む。
(……今はレイジングハートがいるんだもの。日の光なんて全然平気。
…………たまにはこのくらいの日光浴も悪くはないわ)
次に外に出たとき、見える世界は違うのだろうか。
【H-1/ちょっと良い家/1日目/昼】
【EXボスな妹様】
【フランドール・スカーレット@東方Project】
[状態]:左肩粉砕骨折/疲労困憊/魔力大消費(回復中)/バリアジャケット(半脱げ)
[装備]:レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのは
[道具]:支給品一式、ランダム支給品1〜2個(不明)/ひらりマント@ドラえもん/i-Pod@現実?
[服装]:片方の肩付近が大きく破れた半脱げ状態
[思考]:レイジングハート(非殺傷設定)を使って弾幕ごっこで遊ぶ(特に殆ど見た事が無い人間に興味津々)
[備考]:バリアジャケットのおかげで直射日光も平気です。
両腕で杖を保持できなくなった為、反動の大きい放出系魔法の精度が落ちています。
荷物の取りだし等にも不便すると思われます。
殺傷力のある弾幕及びスペルカードは使わない(?)
第一行動方針:まだしばらく休憩する。
第二行動方針:人を見つけ次第弾幕ごっこを仕掛ける。
第三行動方針:レミリアを捜す。
基本行動方針:遊ぶ。
※非殺傷性@魔法少女リリカルなのは
魔法の物理ダメージを攻撃対象の魔力値へのダメージに変える設定。
非殺傷性が適用された魔法を受けると、酷い外傷を負わない代わりに魔力値が減り、魔力が枯渇すると気絶してしまうこともある。
この設定のおかげで街一つ吹き飛ばしそうな魔法が炸裂しても建造物が破壊されずに済んだり、誤って人を殺す確率を減じたりすることができる。
なのは作中で非殺傷性の魔法が直撃して大怪我(四肢の欠損等)を負った例はなく、
外傷で言えばせいぜい打撲くらいのものにしかならない。それなりに痛みや衝撃があるので気絶や昏倒の可能性はある。
非殺傷性魔法は設定上生物以外に決定打にはなりえない。例えば、リルルのようなロボットには非殺傷性魔法の効果は
あまりなく、破壊したければ設定を解除して物理ダメージを有効にする必要がある。
投下終了です。
疑問点、問題点、指摘などありましたらよろしくお願いします。
ただ、今から所用がありますので修正等は今夜になると思います。すみません。
弱音を吐きたい衝動がorz
レイジングハートの想いが身に浸みる。
良い話GJ。
何時か出る設定とは思っていたけど遂に出たかー。
全俺が泣いた
さすがレイジングハート!!そこに痺れる憧れるゥ!!
乙、今回で完全にレイジングハートに堕ちちまったぜ。
いい話だなー(ノ∀`)
原作未見なんで「非殺傷性、そういうのもあるのか!」って驚いたわ。
ただの武器だと思ってたから。
これで無差別マーダーだったフランドールも何か変わるかな?
ちょ……レイジングハート、ええ奴やなぁ……(´Д⊂ヽ
フランドールの、こっちに来てから初めての「ともだち」がまさかコイツとは……やばい、かなりウルッと来た
……でも感動している心の隅っこの方でレイジングハート破壊されたらフランドールどうなるんだろうって考えてる自分がなんか嫌だorz
みか先生とベルフラウを予約します。
【予約まとめ】
3/08(木)の予約(〜3/11(日)まで)
◆gMrrx6WqIM :しんべヱ
3/10(土)の予約(〜3/13(火)まで)
◆JI0DYaB8oI :のび太、きり丸
◆NaLUIfYx.g :リディア
◆uOOKVmx.oM :明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナ
◆ou3klRWvAg :みか先生、ベルフラウ
【現時点のMAP】
>>103 【各地の状況】
>>116 予約ラッシュktkr
のび太、きり丸を投下します
「ドラえも〜ん!どこ行っちゃったんだよぉ!早く助けに来てくれよぉ!」
あの凄惨な現場から恐慌状態で走り去ってから、どれほど経っただろうか。
恐怖と全力疾走とで、のび太の心身は大きく疲弊していた。
ドラえもんの名前を叫びながら、彼が早く助けに来てくれることをひたすら願い、ただただ歩き続けている。
さっきまでは、タワーからジャイアンやリルルを探すつもりであったはずが、今やタワーからかなり離れた場所まで来てしまった。
だが今さらあの場所に戻る気にはなれないし、この先どこへ行くあてがあるわけでもない。
目的が持てないまま、のび太はただ歩き続けていた。
歩きながらのび太が思うのは、あの子豚の正体について。
バラバラで血塗れの死体など思い出したくもないが、嫌でも脳裏に焼きついて離れない。
…しっかり確認したわけではないが、あれは小さな男の子だった。
少なくとも、あの時はそう思った。
のび太の知り合いで名簿に載っていたのはジャイアンとリルルだけ。
だから、あの子はのび太の知り合いではないはずだ。
知り合いじゃなければ良いと言うわけではないが、それでもいくらかは安心できる。
だが、のび太は悪い方へと想像を働かせてしまう。
もしあれがジャイアンだったら…と。
ジャイアンにしては死体が小さかったのだが、今ののび太は冷静な判断ができなくなっている。
そして、一度ジャイアンかもしれないと思い始めると、ますますその方向へと考えが向かってしまうのであった。
心の中で「ジャイアンじゃない」と否定する度に、「でも、ジャイアンだったかもしれない」という思いが強まる。
「(ジャイアンだとすれば、僕にしつこくつきまとってきたのも納得できる。
きっとジャイアンは僕という知り合いに出会えて嬉しかったんだ。
どこかへ連れて行こうとしたのは、きっと子豚の姿にされたことと関係があって…それで……)」
しだいに、脳裏に映るバラバラ死体がジャイアンの姿に変換されていく。
バラバラ死体の頭部がギロリとのび太を睨み…
(のび太〜…よくも俺を殺したなぁ〜)
「わーーーーーーーっ!」
「ジャイアン!いたら返事してくれよぉ!生きてるって言ってくれよぉ!」
のび太は泣きじゃくりながらジャイアンの名前を叫びつつ、ひたすらジャイアンとの再会を願っていた。
生きてジャイアンと再会できれば、あの子豚は自分と無関係なただの子供だと確かめられるから。
* * *
やがて。
「ジャイアン……ドラ…えもん…」
その場に倒れ伏すのび太。
もちろん死んだわけではない。
疲労がピークに達したため、ちょっと気を失ってしまっただけである。
そこへ、ビルの陰から人影が近づいてきた。
「……ちょっと様子を見すぎたか?これじゃあ情報も入手できないな」
出てきたのはきり丸。
グリーンたちをやり過ごした後、南西の街へ入ったきり丸は、その大きな建物ばかりの街並みに感心しながら歩いていたが、
やがて大声で叫びながら歩くのび太を見つけると、彼を尾行し始めた。
様子を見て、お人好しそうなら声をかけてみるつもりだったのだが…
少しばかり慎重になりすぎたようだ。
できれば乱太郎たちのことを知らないか尋ねるつもりだったが、相手が気絶してしまっては意味がない。
「助けてやる義理なんてないんだけど、どうするか」
だがこのまま放って置くのも、何のために尾行していたのか分からない。
尾行し損というのは絶対に避けたいきり丸は、せめて何かないかと辺りを見回す。
「…ん、なんだこれ?」
そこできり丸は、倒れているのび太の近くに落ちているモノに気がついた。
「よく分からないが、珍しい道具だ…ゼニになりそうだな。こんなものが都合よく落ちてるなんてついてるぞ」
きり丸にとって、拾ったものは自分のもの。
もしかしてのび太のものかもしれない、そう思うより早く「それ」を拾うとランドセルにしまいこんだ。
「さて、これからどうしようかな」
と、その場から去ろうとして、きり丸はのび太のランドセルに目を向ける。
「………やっぱりこのままってのは拙いかな。あの大声を聞いて誰か来るかもしれないし」
本当に気になるのはのび太ではなく、のび太のランドセルの方だ。
珍しいものが入ってるかもしれないな、と想像を働かせる。
助けてやって介抱でもしてやれば、礼くらいは貰えるだろう。
きり丸自身はほとんど何もしなくても、何か道具と、それに情報が手に入る。
こんなに美味しいことはない。
ゼニになりそうなモノももちろん大事だが、乱太郎たちの情報が手に入れば言うことはないわけで。
「よし……仕方ないなぁ。助けてやるか」
誰に聞かせるわけでもなくそうつぶやくと、きり丸はのび太を抱えて近くのビルへ入って行った。
ビルのソファーにのび太を寝かせると(余談だが、きり丸はソファーの柔らかさに驚いた)、
きり丸はのび太のランドセルに手を伸ばす。
別に盗もうと言うわけではない。
のび太の持ち物から水を取り出して飲ませてやろうと思っただけである。
だが、自分の水を飲ませるのはもったいないとケチったのが災いした。
水を取り出そうとのび太のランドセルの中身を探り始めたちょうどその時、
「う、う〜ん……ん?」
「…げっ」
のび太が目を覚ましてしまった。
しかも間の悪いことに、きり丸がのび太のランドセルに手を突っ込んでいる状態で、である。
ふたりは互いに見詰め合ったまま、しばらく硬直していた。
「いや、これは違…」
「ど、泥棒ー!」
【B-6/ビルのロビー/1日目/昼】
【摂津のきり丸@落第忍者乱太郎】
[状態]:健康 警戒
[装備]:デッキブラシ@テイルズオブシンフォニア
[道具]:基本支給品一式 魔晶石(15点分) テーザー銃@ひぐらしのなく頃に
[服装]:青い忍者服
[思考]:やばいっ!
第一行動方針:誤解されないように何とか説明する
第二行動方針:目の前の少年(のび太)を介抱して、代わりに道具と情報を手に入れる
第三行動方針:この街でゼニにつながるものを集める
第四行動方針:この街で乱太郎、しんべヱを探す
基本行動方針:生き残り脱出する。他人には極力会わないし、会ってもまずは疑う
[備考]:きり丸にとって、テーザー銃はあくまで「拾った」ものです
【野比のび太@ドラえもん】
[状態]:心身ともに疲労
[装備]:なし
[道具]:なし
[服装]:いつもの黄色いシャツと半ズボン(失禁の染み付き)
[思考] :…泥棒!?
第一行動方針:目の前の泥棒(きり丸)への対処(まだテーザー銃の紛失には気づいていない)
第二行動方針:子豚≠ジャイアンだと確かめるために、ジャイアンを探す
第三行動方針:誰も信じない
基本行動方針:死にたくない、殺したくない
[備考]:精神的動揺から、子豚の正体がジャイアンだったかもしれないと思っています
それを自身で否定しようとしていますが、否定しきれていない状態です
※のび太のランドセル(基本支給品一式、ロボ子の着ぐるみ@ぱにぽに、林檎10個@DEATH NOTE)は、
きり丸とのび太の間に置かれています
投下オワリです。
タイトル入れるの忘れました。
「子豚=ジャイアン?」ということでお願いします。
>>152乙
第忍者乱太郎勢はゲームに乗っていなくてもろくなことにならないなぁ。
これはまさかのび太のマーダー化フラグジャマイカ?
第一放送を聞いたら……
すいません、どうも今日中に完成しなさそうです。
予約破棄しますね
のび太の第二第三行動方針から危険な感じがするな。
蒼星石、タバサ、白レン、イシドロを予約。
よし、プロット出来たっ!
弥彦、ニア、藤木、パタリロ、千秋、よつばを予約します。
ニアとパタリロwktk
【予約まとめ】
3/10(土)の予約(〜3/13(火)まで)
◆NaLUIfYx.g :リディア
◆uOOKVmx.oM :明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナ
◆ou3klRWvAg :みか先生、ベルフラウ
3/11(日)の予約(〜3/14(月)まで)
◆CFbj666Xrw :蒼星石、タバサ、白レン、イシドロ
◆o.lVkW7N.A :弥彦、ニア、藤木、パタリロ、千秋、よつば
【現時点のMAP】
>>103 【各地の状況】
>>116 【現時点での不明支給品所持者まとめ】
・フランドール(レイジングハート・エクセリオンetc.):1〜2個
・永沢(FNブローニングM1910、小型ボウガン):1個 《レックスが所持》
・レベッカ宮本(木刀、15歳のシャツ):0〜1個
・翠星石(ウツドンetc.):1〜2個 《ベッキーが所持》
・ジーニアス(ネギの杖etc.):1〜2個 《ベッキーが所持》
・ひまわり(ガードグラブetc.):1個
・八神太一(首輪探知機etc): 0〜2個
・古手梨花(エスパー錠etc.):1個
・ベルフラウ:1〜3個
・キルア:1〜3個
現時点の不明支給品総数:8〜18個
……まだ結構あるね?
2,3日空けたらすごいことになってるなコレ…
正直読むのがキツイ……
個人的には蒼い子と白い子に期待
蒼星石、タバサ、白レン、イシドロを投下します。
目の前にはタバサが居る。
そしてその更に先には、先程襲ってきた少年と白い少女が居る。
少年は先程の戦いでタバサに片腕を切り落とされ、更にここでまた戦闘になったらしく、
白い少女に破れ、眠らされ、何かをされている。
タバサはそれを問答無用で打ち倒し、それから話を聞けば良いと言っている。
それが蒼星石から見て取れる今の状況だった。
(どうする……)
蒼星石は考えていた。
これからについて。その為に目の前の現状について。
息を潜めて隠れながら、物事を整理して考え込んでいた。まず。
――あの少年は危険なのだろうか?
考えるまでもない、危険だ。
あの少年は殺し合いに乗っている。
撃退して隻腕にはなったけれど、手負いの獣はむしろ危険だ。
タバサの言うとおり、仕留めておくのが正しいのかもしれない。だけど。
――別の少女の餌食になったのに?
………………まだ死んではいない。
(殺すのか? あれを。片腕を切り落とし、他の参加者の餌食にもなった少年を。
そこまで……彼はそこまで危険なのか?)
死んではいない。生きていて、片腕でもまだ戦えるかもしれない。
事実、白い少女にも戦いの痕跡が有った。
誰かと戦う力を持っていて、依然殺す意志の有る相手。
やっぱりどう考えても……殺す…………しかないのかもしれない。
タバサの言うとおりなのかもしれない。
それでも蒼星石は、殺すという結論を出せずにいる。
いっそ、あの白い少女が少年を殺してくれれば……
(何を考えてるんだ、ボクは。そんなのただの……逃げじゃないか)
そもそもあの白い少女は何をしているのだろう?
少年に襲われたなら、彼を殺してもおかしくはない筈だ。
事実タバサは襲ってきた少年を殺そうとした。
だが白い少女は少年を眠らせ“何か”をしているだけで、殺意は感じ取れない。
――あの白い少女は危険なのか?
判らない。
もしかしたら隻腕の少年を白い少女の方が襲ったのかもしれない。
だけど白い少女も危険だとすれば尚のこと、少年が生きている理由が判らない。
(そういえばタバサは、きっと白い少女が催眠攻撃で少年を眠らせたんだって言ったっけ。
催眠……夢…………もしかして……!)
ハッとなり意識を集中した。
……確かに感じ取れた。
自分の知っているある感覚を。
「nのフィールドが開いている……いや、違う。夢の扉を開いて干渉しているんだ」
漏れた呟きをタバサが聞き取った。
「nのフィールド? 夢の世界? 蒼星石、なあにそれ?」
「一言でいうと、あの白い女の子はあの男の子の夢の中で何かをしてるんだ」
「何かって?」
「それはちょっと見てみないと判らないけど……
でも、覗いてみればあの女の子が危険かどうかも判るかもしれない」
「覗くって……蒼星石はそんな事できるの?」
「うん、そうだよ。本当は夜になるのを待って、タバサの夢からお兄さんを捜そうと思っていたんだ。
親密な人の夢は繋がっているはずだから。
お兄さんも寝てないといけないから、今は無理だけど」
ここまで話して蒼星石はタバサの顔色を窺う。
何らかの力を言わないでいた、いわば隠していた事に腹を立てはしないだろうか。
「なんだか妖精さんみたい。ねえ、それじゃ今はどう使えるの?」
タバサは気にせずに続きを促す。どうやら杞憂だったようだ。
こういった話はタバサにとって『仲間』という認識を変えるものではないらしい。
「今ならあの女の子が夢に干渉しているから、横からあの男の子の夢に忍び込むのは簡単だと思う。
そうすればこちらから動く前に、相手の様子を見ておけるんだ。ただ……」
「ただ?」
「本当は相手の枕元でやるものだから、ここからだと自分の夢を経由する必要が有るかな。
ボク自身、少しの間だけ眠らないといけない。
その間、様子を見て護っていて欲しいんだけど……良いかな?」
「良いけど、様子なんて見ずにやっつけちゃえば良いじゃない。モンスターだよ」
タバサは躊躇いも迷いも揺らぎ無く、素直に問い掛ける。
(……本当にその方が良いのかもしれない。危険を冒してまで様子を見る必要なんて無い。
あの少年は間違いなく危険で、白い少女も危険かもしれない。
見ず知らずの危険かもしれない相手なんて放っておくか、あるいは倒してしまった方が良いのかも知れない。
だけど……)
タバサを見ていて思う。
それを間違っているとは思い切れないけれど、何処かで何かを見落としている気がする。
やっぱり気のせいで本当に正しいのかも知れない。
だけどどうしても迷いを振り切れない。
だから。もし白い少女も危険なら戦う、それで良いから……
「すまない、タバサ。
これはボクのわがままだけど……出来るだけ、よく判らない相手とは戦いたくないんだ」
そう言った蒼星石に、タバサはにっこりと笑って答えた。
「うん、良いよ。対策は事前に練った方が良いもんね」
それはあくまで、戦いを前提とした答えだったけれど。
それでも蒼星石には十分だった。
(きっとボクは、理由が欲しいんだ。どうすれば良いか自分で決めるための……理由が)
蒼星石はタバサの助けを借りてそっと眠りに就いた。
……彼女の戦場に向かうために。
* * *
彼女達に見つからないように、眠りに就く前に少し距離を取った。
だけどそれでも少しだ、隣接する夢はすぐに見つける事が出来た。
(ここが彼の夢の入り口か。
眠りに就いたのはすぐだからまず間違いなく、白い少女はあの何かをまだしているはずだ)
こうもすぐに眠りに就けたのはタバサのラリホーのおかげだ。
タバサの呪文の力は多種に及ぶらしく、この眠りにおいてもそれは力となってくれた。
(媒体は無いからあまり長くは居られないな。タイムリミットは30分という所か。
それを過ぎたら……夢の中に閉じこめられる)
そうなれば意識は自らの夢から出る事が出来なくなり、体は一種の廃人と化すだろう。
急がなければならない。
(だけどあの白い少女は本当に何をしているんだろう。
ただ夢を見せるだけならあんな……キス、なんてしなくても良いだろうに)
思い出して少し赤くなった。
理想の少女となるべく作られたローゼンメイデンにそういった経験が有る筈もない。
断続的ながら数百年に渡り動き続ける中で知識の面まで遮断する事は流石に出来なかったが、
それでも人とは色々と適合しないサイズの人形である少女、その中でも少年のような容姿の彼女は、
知識ではともかく経験の面では全くと言って良いほどに疎く、うぶで、言うならば幼かった。
だから。
頭に浮かんださっきの光景を振り払い飛び込んだ先で蒼星石が見た光景は。
衝撃的と一言で表すには余りにも激烈な光景だった。
それは猥雑なる抱擁だった。
少年は衣服を剥がれ女達に組み敷かれていた。
「やめろファルねーちゃん!」だの「くそ、シールケなんでテメェまで!?」だのと声が聞こえていたが、
更に別の「あー……あー……」と譫言のような声を漏らす褐色の肌の女が覆い被さった辺りから、
抵抗の声は千々に乱れ、獣に捕らわれた草食獣のように貪られる男の呻きが漏れるだけになった。
それは姦淫なる悪夢だった。
何がどうなったのか少年は逃げて走っていた。
だが何処へ逃げても閉じられた世界にキリは無く、周囲からは女の魔が湧き続ける。
やがて少年は闇の中で女達に捕らわれる。
恐怖と快楽、絶望と喜悦に満ちた絶叫が闇の中から響き続けた。
それは邪悪なる調教だった。
あの白い少女が拘束された少年の上に座り込んでいた。
時折少年の呻き声が漏れていた。
白い少女は少年を弄びながら問い掛ける。
「それじゃもう一度聞くわよ。貴方は私の騎士になってくれるのね?」
「なる、なるって言って、だからもう、ヒッ、や、やめ……!!」
「あら、忠誠心が篭もっていないわ。もう一度、前のユメに戻してあげようかしら?
貴方如きにこの私を護らせてあげるのよ。
私を護って戦いぬけば快楽も栄光も思いのまま。
私を襲った事も綺麗さっぱり流してあげる。素晴らしいでしょう?」
「だ、だからなるって言って……!」
少年の顔は概ね怯えに支配されている。
あの闇の中の悪夢はよっぽど精神的に負担を掛けるものらしかった。
「心が篭もっていないって言ってるの。
口の聞き方はじっくり紳士らしい礼儀作法を教えてあげる。
どうせそう身に付かないでしょうけれど、まあそれで我慢してあげる。
イシドロなんて名前も品が無いけど気が向いたら新しい名前を付けてあげる。
私を襲った事も多目に見てあげる。
でも忠誠に曇りが有る騎士は置いておけないわ。
さあ、もう一度だけ聞いてあげるわ。これで最後。
ふふ……あなたの本心からの言葉を聞かせてちょうだい」
一拍だけ間が有った。
それから少年は、観念したように、あるいは受け入れたように力を抜いて。
「騎士になるから……アンタを護るから……いや。
………………護らせてくれ…………お願いします……レン様……。
成り上がるなら…………アンタの下が……良い……」
屈服の意志を、漏らした。
白い少女は笑い、指を鳴らした。
「ご褒美よ。貴方の求めるユメを見せてあげる」
それは絢爛たる栄光だった。
少年は騎士となっていた。
身にそぐわないほどの立派な武具を身に纏い、大剣を振るい、並み居る敵を薙払っていた。
白い少女に襲い来る敵共を軒並み薙払い、民衆に称えられ、金も地位も思いのまま。
逞しい肉体で武勇を誇り好きな時に女を抱き酒を飲み歌う豪傑のユメ。
少年の単純で、純朴で、世俗的刹那的な野望の絵だった。
「そう、これが貴方の掴める未来。私に従い続ければ得られる未来」
白い少女は少年に囁いた。
「怖いユメは忘れさせてあげる。貴方が私に従う限り。
嫌なユメは忘れさせてあげる。貴方が私に従う限り。
好きなユメを見させてあげる。貴方が私に従う限り。
そう、だから貴方は……!」
「アンタの……騎士になるぜ……!」
少年は、完全に陥落した。
「な…………な、なに……を……」
蒼星石は茫然とそれを見ていた。
全てが理解でき、理解できなかった。
何をしているかという行為を知識としては知り、しかし何が起きているのかを理解しえなかった。
白い少女レンは襲ってきた少年を返り討ちにした。
そして夢を見せる力で少年にある種の悪夢を見せて服従を迫った。
現実では短い、しかし夢の中ではとても長い時間の中で少年は屈服した。
その過程の行為も遮断できる類の知識では無く、蒼星石は大筋を理解した。
それでも目の前の状況を理解できない。
唐突で蒼星石の見た事がない世界に対応する事ができない。だから。
「なにって、ただの調教よ」
蒼星石はその声でようやく、顔を真っ赤にしてへたりこんでいる自分の姿と。
いつの間にか目の前に立っている白い少女の姿を認識した。
「――っ!!」
息を呑み戦輪を構える。夢の世界でも元の装備は自らの延長として持ち込めるようだ。
手が震える。息が粗い。
人形だというのに動悸が乱れるのを感じて、思考がまるで纏まらない。
(落ち着け……落ち着け!
この武器は使い慣れてないけど、この距離なら外しはしない……! 怯むな!)
もちろんこれが敵の強大さに対する怯えでない事は判っている。
蒼星石を呑み込んでいるのはその異質さ、そして――
(考えるな、今はただ敵の事を……!)
その敵が口を開く。
「ユメの中でも早速争い? 血の気の多い方ね」
「そ、それは君が……!」
「私が貴方に何かしたかしら?」
白いレンはくすくすと上品な笑いを零す。
蒼星石は反論を呑み込み思いとどまった。
確かにレンは今のところ、蒼星石には何もしていない。
茫然となっている蒼星石に不意打ちを掛けもせず、ただ話しかけてきただけだ。
「だ、だけど彼にあんな事を……」
「彼は私を殺そうと襲い掛かってきたのよ。それを殺さずに生かして私の騎士にしてあげた。
すぐに殺すよりずっと平和的な解決だと思わなくて?」
「それは……!」
蒼星石は絶句した。
その論理は結局の所、彼女の『仲間』であるタバサと変わらない。
『モンスターはとにかく倒して、その後で仲間になりたそうなら話を聞けば良い』
いや、それどころか……。
レンのそれは相手を襲ってきた相手に限定して、しかも積極的に仲間にしようとしている。
もたらす結果を考えればタバサよりよほど平和的な位だ。
感情的には嫌悪感も違和感も溢れているが、蒼星石には理屈は正しいように思えてしまう。
レンは蒼星石の迷いを掴み取る手応えを感じ取った。
「ところで貴方、彼を知っているのね。仲間ってわけじゃないようだけれど。
彼の片腕を切り落とした相手かしら?」
「…………そうだ」
躊躇いの後に返答する。
正確にはイシドロの腕を切り落としたのはタバサだが、大差が有るわけではない。
「ふうん。じゃあ近くに居るのね、仲間と一緒に」
「………………」
沈黙は肯定だ。
レンのそれは半ばカマ掛けに近かったが、蒼星石は完全に呑まれていた。
場の雰囲気に。レンの言葉に呑み込まれ、抗する言葉が出てこない。
「そう。それじゃ貴方とその子、合わせて仲間になってもらえないかしら?」
「え……!?」
突然の提案に蒼星石は慌てふためく。
「彼、イシドロも危険は無いわ。しっかりと調教したもの。
もう私には逆らわないし、逆らえない。
こんな島だもの、共同戦線は重要だと思わない?」
蒼星石に突きつけられる言葉は迷いと躊躇いを連鎖的に拡大させる。
確かに共同戦線は重要だ。
しかし……信用できるのか? あんな――光景を繰り広げて調教を行う少女を。
だけど。
(このレンという子を疑ったら……タバサまで疑う事になる)
レンは理屈の上ではタバサより平和的な、より正しい気すらする理論を述べている。
それに戦いを回避出来るのならそれもまた良い事に思える。
感情的には納得できない。
だけど蒼星石は感情的な恐れ、迷いや悩みを……タバサに向けても感じている。
感情でレンを否定する事は、タバサに感じる悪い感情を認め彼女を否定する事に思われた。
確かに蒼星石はタバサに恐怖を感じつつある。
それでも彼女のことを仲間だと、そう思いたかった。
どこかに穴が有る気もする。
どこかに矛盾がある気もする。
何かを見落としてきてしまっている気がする。
だけどそれが見つからない。見つけられない。見失った。
未だに熱があるように思考はぼやけ、惑い、動揺している。
抗えない。逆らえない。呑み込まれた。
感情的な否定は、できない。
そして理論でも否定する事ができない。
蒼星石に白い少女を否定する材料は何一つ無い。
それを見て取った白い夢魔は――楽しげに笑った。
【C-3/塔の前/1日目/真昼】
【白レン@MELTY BLOOD】
[状態]:腹部に大きなダメージ(休んでマシになってきた)
中度の疲労、体の所々に擦り傷
[装備]:エーテライト×3@MELTY BLOOD(一本はイシドロに接続)
ヴェルグ・アヴェスター@Fate/hollow ataraxia
[道具]:支給品一式、バイオリン@ローゼンメイデン
[服装]:いつもの白いドレス(洗ったばかりなので一部が少し湿っている。深い意味はない)
[思考]:??????
基本行動方針:優勝して志貴を手に入れる。
第一行動方針:蒼星石とその仲間に取り入る?
第二行動方針:できれば『ご褒美』で傷を治したい。
第三行動方針:なので状況や場合によっては三人目はイシドロにする。
※以後、ヴェルグ・アヴェスターはイシドロに対しては使用不能です。
【イシドロ@ベルセルク】
[状態]:左腕の前腕部から先を喪失(乱暴にだが止血済み)。右頬にかすり傷。
失血と疲労による消耗。睡眠中。後頭部に白レンのエーテライトが接続。
腹部に痛み(傷はありません。白レンがヴェルグ・アヴェスターを解除すればなくなります)
[装備]:なし
[道具]:支給品一式(食料の半分は上着の裏)、手榴弾×2
[思考]:白レンに従う。
第一行動方針:白レンを護る。
基本行動方針:白レンの騎士として栄光を掴む。
[備考]:白レンに徹底調教されました。ただし悪夢の部分は忘却しています。
【C-3/塔の手前の森/1日目/真昼】
【蒼星石@ローゼンメイデン】
[状態]:健康。睡眠して夢の世界内。姉妹達への精神的な壁、タバサに対して隠しきれない恐れ、
[装備]:戦輪@忍たま乱太郎×9
[道具]:支給品一式、ジッポ、板チョコ@DEATH NOTE、
ころばし屋@ドラえもん、小銭入れ(10円玉×5、100円玉×3)
[思考]:白レンを否定できない。激しく動揺し思考が纏まらない。
タバサの態度が少し正しくも思えて、深く踏み込むのが恐い。
姉妹たちには会いたい。けれど会わせる顔がない。相反する感情に迷っている。
第一行動方針:白レンとイシドロを、タバサと会わせて同盟を組む?
第二行動方針:タバサに協力する(ただし、まだ迷いが生じている)
第三行動方針:タバサの『夢』に入ってレックスと接触する。そのための準備をする。
基本行動方針:タバサに協力しつつ自分探し?
[備考]:戦輪の命中精度に不安はありますが、とりあえず投げれば飛びます。
現在、意識は自分の夢を経由したイシドロの夢の中で白レンと会話中です。
夢に入っていられるタイムリミットは残り15分ほど。
【タバサ@ドラゴンクエスト5】
[状態]:爆風で小ダメージ、MP消費(小)、バリアジャケット展開中(蒼星石と同じ服装)。
[装備]:バルディッシュ・アサルト@魔法少女リリカルなのは(カートリッジ残数5)
[道具]:支給品一式
[思考]:蒼星石、まだかな?
第一行動方針:蒼星石が起きるまで様子を見ながら護る。
第二行動方針:とりあえずイシドロ達を倒してから、仲間になりたそうなら話を聞く。
第三行動方針:自分と仲間の身は「何としても」守る。
第四行動方針:信頼できる仲間を捜す。
第五行動方針:塔の探索。難しいようならば出直す
基本行動方針:「どんな手段を使ってでも」レックスを捜し出し、仲間と共に脱出する。
[備考]:
「ドラゴンクエスト5」内でタバサが覚える魔法は全て習得しています。
ミッドチルダ式魔法について、バルディッシュからある程度説明を受けました。
投下完了。
想像する人の数だけ情景が有るのです。
ちなみに悪夢の二つ目は“触”の魔物を全部女の魔にしたの図。とても悪夢。
投下乙です。
蝕の魔物が全部女って、酒池肉林ってレベルじゃねーぞ!
GJ
蒼星石の仲間は危険人物ばっかになるな……カワイソス
放送聞いたら蒼星石自身が危険人物になるかもしれんが。
戦闘せずに仲間になるモンスターといえば……ザイル?
よく考えるとイシドロとザイルってメチャ似てるな。
投下乙
早速この続きを……時間が無いから無理かorz
>>171 のど飴飲み込んじまったじゃねーかw
リディア投下したいと思いますー
――殺らなければ殺られる――
そんな言葉がずっとリディアの頭の中を支配していた。
瞳は赤い、しかしもう泣かない。
決心した。自分から戦わなければならない、と
リディアは唐突に自分が被ってる帽子に触った。
(レッド……さん)
リディアはつい先ほどのことを思い出していた。
* * *
ほんの1時間、いやもっと短かったかもしれない。
それでも、それでもこの場でほんの少し安らぎの時間を与えてくれた大切な人
ポケモンというのに1回会ってみたかった。
もっと話してみたかった。
思えば思う程、彼女の心は後悔という重圧に押しつぶされそうになる。
リディアは一瞬だけ顔を歪めた。
そう、全ては自分のせい。
もし自分に火の魔法が使えたら、もし自分にもっと力があったら、
――レッドさんはまだ生きていたのかもしれない――
だけど、もう済んでしまったことを嘆いても何も変わらない。
悲しみに打ち明けた後、残っていたのは冷静な自分
故に考える。今後どうすればいいのかを……
出来ることなら、レッドの仇を討ちたい。しかし、それは彼女の力では不可能であった。
自分は魔法専門、対する向こうは魔法も格闘戦も出来る様子であった。
どちらが有利? と聞かれたらそんなの答えるまでもなかった。
今は倒せない。ならば倒せるようにするまで
まだ使えない魔法もある。未知なる魔法もある。新しく覚える魔法は強力な魔法かもしれない。
つまり、新しい魔法を手に入れる事が、彼女の生き残る術である。
ならばどうやって新しい魔法を手に入れる?
簡単なことだ。敵を倒せばいいのだ。
敵は一体どこにいる? ここにいる人達のことだ。
それはつまり……殺すということ
その結論に至ったとき、リディアは顔を伏せた。
出来るのだろうか? 他人を殺す事を?
――殺らなければ殺られる――
唐突に浮かんだ言葉、だけどそれはすべてを納得させる一種の魔法の言葉
そう、ここに居る人達は私を殺しに来る。殺らなければ殺られる。最初から私のするべき事は決まっていた。
武器はない、頼りになるのは今まで覚えてきた魔法、新しい魔法を覚えるまでなんとか殺さなければならない。
大丈夫、落ち着いて、武器がなければ見つければいい。襲われても対抗できる場所を探せばいい。
リディアはランドセルの中からバッと地図を広げた。
そして唱える。魔法を、
「『サイトロ』」
自分の頭の中に周辺の地形がズラーと展開された。
そして地図を照らし合わせる。
どうやら自分がいる地点は、大体D−2の南東部からD−3の北東部
ここから一番近くて、武器らしきものが見つかって、襲われても対処できるであろう場所……
それはD−4にある学校だ。
学校ならば銃とかまではいかないが、刃物系といった武器があるかもしれない。
また沢山の部屋に沢山の隠れ場所、こんな森の中よりもよっぽど安全であり、よっぽど戦略が練れる場所であった。
ならば、ここからの最短距離を計算しよう。
この森は入り組んでいる。サイトロ常時展開するのは魔力の無駄遣い、防ぐべきことであった。
ならば、一旦E−2の方にまで行って、そこから草原と森の分かれ目を走ればいいのではないか?
草原なら見晴らしがいい。こちらも見つかりやすいが、こちらも見つけやすい。
見つかったら森の中に入って行方を暗ませばいい。心配することなんて何もない。
と、チラッと見る。レッドの死体に……
自分が助けられなかった人、出来ることなら埋葬してやりたいが、今は1秒も惜しい。
だからなのだろうか、ただなんとなくなのだろうか、彼の帽子を取り、被る。
ちょっと大きい、でも帽子の後ろ側に調整する部分があり、いじくって自分ぴったしのサイズにした。
(レッドって……赤だよね……)
途端、少し震えた。
自身の村、実の母を失った原因でもある大火事、それらを象徴する赤
違う! 違う! リディアは必死に頭を振りそれらを忘れ去ろうとする。
火に怖がってたから、レッドを失った。ならば、次に火を怖がっていたら今度は自分に厄災が降りかかってもおかしくない。
怖がってはいけない。恐れてはいけない。もう――大切な物を失いたくない。
その一心が彼女を変える。
そして、今に至る。
彼女は走る。疲れたら歩く。疲れが取れたら再度走る。その繰り返しであった。
今は何時だろう?
ふと思い上を見上げる。
太陽は高く高く上がっていた。
感覚で言うならば、午後にはなっていないはず。
右手にある山がちょっとづつ近くなっていく。
目標の学校まで後もう少し……
「やらなければ……やられる。信じられるのは私だけ……」
【D-3/南東部/1日目/昼】
【リディア@FINAL FANTASY 4】
[状態]:右手に切り傷(血はとまりました)、火に対して若干克服?、強い決心
[装備]: レッドの帽子
[道具]:基本支給品、メイド服(ミニサイズ、詳しくは調べてない) 虫取りアミ@ゼルダの伝説、奥義の書@FINAL FANTASY4(ただの本)
[思考・状況]
第一行動方針:学校に行く
第二行動方針:安全な場所の確保、新しい武器の調達
第三行動方針:敵を殺してレベルアップし、新しい魔法を手に入れる
第四行動方針:レッドの仇をとる
基本行動方針:とにかく生き残る
投下終了です。
リディアのキャラ把握が中々出来ず、曖昧な形となってしまいましたorz
なので疑問点、問題点、指摘がありましたらお願いします〜
投下乙
ただ一つ、レベルアップて可能なのか?
いや、何て言うか…
例えばリディアが銃で5人殺してレベルアップしたとして、新しい魔法覚えるの?ってこと
分かりにくくてゴメン
乙〜。
レベルアップは、ジェダによる「制限対象」のような気がしなくもない。
まあ強敵を倒せば大量の経験値入りそうだけど、
レベルアップ条件満たしてもレベル上がりそうにない。
でも、リディア自身気づいてないのはアリかな。
てか、レベルアップ時に全回復したりHPやMPが増えたりするゲームは、
もう1つの「ご褒美」としてそれ狙う可能性もあるか。
……FFやDQってどうなってたっけ? やったのずいぶん昔のことだからなぁ。
乙、ただやっぱレベルアップとかは不味いんじゃないかなぁ。
1.戦闘を重ねるごとに魔法を編み出していく(ファイア何回も使ってたらファイラ出てきたよー)
2.何かしらの媒体を使えば上級魔法が使える(神々の怒りとか、不明支給品まだあるし)
3.もういっそ飲み込まれる直前までにしか使えない魔法まででいいや(弱いリディアで何とか戦えばいいや)
因みにリディアは幼年期でも99まで上げれば〜ラ系魔法を除き全部覚えるんだよな。
といってもせいぜいLV20前半までの魔法ぐらいだろうけど。
弱いリディアのままの方がいいかも。
「強い魔法は使えない、だから頭を使って相手を殺す方法を考えなきゃいけない。
私の小さな魔力と、この世界に溢れる色んな道具を使って。
ここにいる人々を、殺していく」
みたいな。
>>178 >>179が言った通り、リディアがマーダーになる理由付けとして一番最適だと思い選びました。
レベルアップするかしないかは多分制限にかかって不可だと思っています。
ってよくよく考えたらFFの世界観でレベルアップという概念がないっすよね……
敵を倒して魔法を覚えるという考えはあると思うので、それは大丈夫かな?
第三行動方針を「敵を殺して、新しい魔法を覚える」に変更したいと思います
バトロワの魅力と言えば、機関銃相手でも進め方によっては鉛筆で勝てる…
書き忘れてた orz
作者さん二人共 乙
二人とも投下乙。
やっぱ、タバサが一番怖いかもしれない……でも、DQ世界だとこれが普通なのかな。
リディアはレベルアップ云々だけど、状態表の最後に一言
「リディア本人はレベルアップできると思っていますが、実際に出来るかどうかはわかりません」
と書けばOKなきがする。
>>184 そっちの方がいいかな? このまま意見がなかったらそうしたいと思います。
ちょっと大きく動かしてみようかな
一休さん、コナン、ネギ、小狼、リンク、梨花、灰原、乱太郎、ヘンゼル、メロ、金糸雀
を予約してみたいと思います。
なんという大所帯……これは間違い無く波乱
>>185 エロに期待……
じゃなかった。超展開に期待!
ちょっ、絡みそうなの全員動かすッ!? 激しく期待
あー…魔法覚えるのは
>>180の案1のとき?
それとも何でもいいから殺せば覚えられるもの?
その辺は書き手任せ?
そんな感じのことを聞きたかったんだ
>>185 ちょww破綻しないように頑張ってくださいなww
>>180にちょっと語弊があるな。
Lv上げりゃメテオだのまで使えるようになるが普通のプレイじゃそこまで行かないということです。
ややこしい書き方でごめん。
>>185 FFの世界観的にレベルアップっていう概念はないけど、リディアの口から言わせなければOKかと。
適当に「実戦を繰り返すと魔力が上がる」と認識してても変じゃないと思うし。
一応ジェダがロワを開いた目的の一つが「幼い魂の成長」とかだった気がするから、
実際に経験を積んでレベルアップするのも有りかもしれない
え? ないのか、レベルアップ。
んじゃ、FF4でセシルが初回登場時にレベル10だったり、リディアが登場時にレベル1だったりしたのは
一体何なんだ?
中の人たちが「レベルアップ」って言葉をそのまま使うんじゃなくって。
「経験を積み重ねたら強い魔法とか使えるようになる」って考えてるわけじゃないのか?
レベルだとかそにうもんじゃねーと思うけどな。
それをプレーヤー側で勝手にレベルと置き換えて認識してるだけ
>>193 現象としての「レベルアップ」はあっても、
作中人物が「レベルアップ」という単語で認識してない、
ということじゃないかな.。
確かに作中人物が自己のレベルの数値を把握してるのって間抜けになるんだよねw
魔方陣グルグルじゃそれを逆手に取ってギャグに使ってたけど。
被った……orz
thx、言われて見るとそうやね
たしかlv3とか4ぐらいだったっけ、ニケとククリは。
それでトマがlv10と……。
なのに二人で世界を救ってしまった勇者と魔法使い、他のRPG系をなめてますな。
確かベルカナは自分のレベルを知ってたような。
というかリプレイ版だと自分や仲間、敵のステータス値まで把握して作戦立ててたし
リプレイは、プレイヤー発言とキャラクター発言が混在してるからなぁ。
使いこなせる呪文とかで「自分の格」は把握できても、実際には数値は口にしてないと思うが。
ただ、かなり自分たちの能力限界などを正確に把握しているのは確かだ。
ポケモンではちゃんと、トレーナー自身がポケモンのLvを認識してるっぽい
今の議論では関係ないけどね
>>201 それはポケモン図鑑で見れるからじゃね?
実際、図鑑の持ち腐れしてたイエローなんかは「レベル? 進化? 何ソレ?」だったし
あとは、達人なら見るだけで強さがだいたいわかるとかそんなもんだとオモ
テイルズやサモンナイトのレベルアップ概念はどうなってるのかな。
ドラクエ勢みたいにEND後からの参戦なら、あまり気にしなくてもよさそうだけど
>>202 ジーニアスは時期的にメテオスォーム以外殆ど使えると思う。
プレセアは〜〜以降ってあるからどうだろ? ジーニアスと同じくらいの時系列で来たと考えても矛盾はないはず。
今後の書き手次第かと。
まじめな話、このスレが適合する板ってどこだろうね……
とうとう来たか……今のところログは全部保存してあるからいざという時にしたらばにでも動いてもなんとか大丈夫
しかし……悲しいものがあるな。どっかのバカの乱立は止まらずに、こっちが止まる候補に挙げられるとは……
なんでもありや難民はID出ないから適さないし、ホントどこが適当なんだろうな……
ジャンプ2ndみたいなことにならないだろうな……
※ジャンプ2ndの悪夢
ジャンプキャラの方は週間少年漫画がふさわしいなどと言って削除しておきながら移転先でもスレストとか削除をしてくる
>>207 予約をしたらばに回せば何とか稼動できんか?
感想とかで酷い嵐が吹き荒れそうだが……
エロパロ…は流石に駄目か。
ほとんどの作品が漫画化しているからそっちのほうの板に……
ってどっかのバカが乱立したばかりだから絶対に無理だorz
まあ、とりあえずみなさん、避難所のアドレスは各自押さえておくように。
もしサックリ削除されたら避難所でお会いしましょう。
それ以外はとりあえず様子見かな。
削除人の判断も分からないし、本気で行き場のないスレだからね。
最終手段としてクラウンがある。お勧めはできないがな……
週間少年漫画でやってたジャンプキャラに削除依頼出した奴と
今回のロワ纏めて削除依頼の奴は同一人物なんだよなぁ……
明らかにただの粘着なんだが。
ま、削除されたら避難所で会いましょう、ね。
【予約まとめ】
3/10(土)の予約(〜3/13(火)まで)
◆uOOKVmx.oM :明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナ
◆ou3klRWvAg :みか先生、ベルフラウ
3/11(日)の予約(〜3/14(水)まで)
◆o.lVkW7N.A :弥彦、ニア、藤木、パタリロ、千秋、よつば
3/12(月)の予約 (〜3/15(木)まで)
◆NaLUIfYx.g :一休さん、コナン、ネギ、小狼、リンク、梨花、灰原、乱太郎、ヘンゼル、メロ、金糸雀
【現時点のMAP】
>>103 【各地の状況】
>>116 【現時点での不明支給品所持者まとめ】
・フランドール(レイジングハート・エクセリオンetc.):1〜2個
・永沢(FNブローニングM1910、小型ボウガン):1個 《レックスが所持》
・レベッカ宮本(木刀、15歳のシャツ):0〜1個
・翠星石(ウツドンetc.):1〜2個 《ベッキーが所持》
・ジーニアス(ネギの杖etc.):1〜2個 《ベッキーが所持》
・ひまわり(ガードグラブetc.):1個
・八神太一(首輪探知機etc): 0〜2個
・古手梨花(エスパー錠etc.):1個
・ベルフラウ:1〜3個
・キルア:1〜3個
現時点の不明支給品総数:8〜18個
とりあえず、茶でも飲みながら経過を見ておきますかね
つーか削除依頼出されたら必ず削除されるって訳じゃないだろ
ジャンプ2ndは以前削除された
ジャンプが削除されたからここも削除されるってどんな理屈ですか
>>220 厳密に言えばジャンプ2の他にサブラノも削除されてる。
他にも削除依頼が出された当時存在したロワ全てにも依頼が出されていたが、進行が早くて難を逃れてる。
(これは前回の削除が実行されたのが依頼が来て数ヵ月後だった為。その為進行が早いロワは次スレに行ってた)
でも今回は次スレに移行してるかもしれんから考慮してとまで書かれてるからやばいかも、って話。
前回の削除対応を見る限り、基本的に削除人から見てロワはサブカルに相応しくないって見解のようだし。
最悪とかおいらロビーでもいい気がしてきた
最悪、こんな内容だしVIP……
ほの板は…!?
明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナを予約している者ですが申し訳ありません。
三日も時間を頂いていたのに完成していません。
明日中には完成しそうなので、もし宜しければ予約を1日延長させていただけないでしょうか?
当然、他に予約をしたい方がいらっしゃれば、そちらを優先させていただきます
三月の年度末進行を甘く見ていましたorz
>>225 一般の人は忙しいもんねぇ。一日ぐらいいいんじゃね?
俺はいいよ!
◆uOOKVmx.oM氏は十分このスレでの実績あるし、許さない理由もないかと。
どうせならそろそろ、延長可のルール作らないか?
三作以上作品書いたことある鳥の人限定で、期限の3日間を5日までOKにするとか。
ところで未登場の支給品としてバトロワ原作本(ハカロワ全7巻かどれロワでも可)を出してはどうだろう
グリードアイランドのスペルカードの使えるんじゃないか?
ほら、例えば…小悪魔のキッスとか小悪魔のキッスとか小悪魔のキッスとか
>>227 俺は予約期限破ったことがあるから延長制度作るならありがたいな。
3日目で進行状況報告して完成しそうなら延長、無理なら潔く破棄。
5日目の期限まで破ったらまた何作か採用になるまで延長の権利なしとか。
この手の議論を振るときはなぜか人が少ない気がする。話を切り出す時間が悪いのだろうか。
制限や回復の議論も途中だし……。制限を細かく決めなくていいという人が多いから
話に乗る人が少ない、というわけではないんだろうしなぁ。
延長制度は自分としては問題なし。
ただ、新規の人や捨てトリ派の人に少々逆境になってしまうのがデメリットといえば
デメリット。
自分としては少しぐらい遅れるだけだったら申告さえしてくれれば目くじら
立てる必要もないんじゃないのかと思ったりする。
自分も延長ルールはあっていいと思うな。
ただ、あくまで「延長」ね。
できるだけ3日以内の完成を目指す、3日以内に進行状況を必ず報告する、などは必要かと。
あとは、延長可能な長さと、延長を許される条件の議論かな……。
ただまぁ、これは暫定的に
>>227の案で行ってみる・また問題出てきたらさらに変更も考える、でもいい。
アアアア湖周りのフラグ多すぎて時系列とかフラグとかの把握で死ぬorz
ベルフラウとみか先生を動かそうとしたら、ちょうど拡声器惨禍の一連の流れとレックス&真紅の
二つの激戦連続地帯両方に噛んでしまって、Wikiと首っ引き状態……
ということで、フラグや時系列の矛盾がないかの推敲で投下が少し遅れます。
夜明け前には投下できるよう頑張ります。
話が変わってしまって悪いんだけど…
実績がある、言われても書き手氏の鳥をいちいちメモっとくわけにもいかないと思うんだ
だからwikiの方に鳥判別で書き手氏ごとの追跡表とかあったらありがたいな、と思うんだけど…
自分には出来そうもないんで、面倒な作業化とは思うんだけどどなたかやって下さる方はいないだろうか…?
>>233 頑張れw 自分もその調査で手間取ってみか先生たち動かしづらかったのよねw
ってか、湖方面も絡めるのか、そりゃ大変だなぁ。
>>233 確かに複雑だw
レックスと真紅は昼でイリヤとはやてとレンは午前だもんな。
>>234 アニロワとかにある書き手紹介みたいな奴?
前の作品に対して後からでも感想を付けられるから良いと思うが、整理が大変でw
>>234 偶然だが、個人的に書き手データをまとめている最中だった。
これ、結構捨てトリ派の人がいる様子だな。1話だけの書き手が結構多い。
とりあえず、wikiに収録された91話「紅楼夢」までで、
6話投下
◆CFbj666Xrw ◆uOOKVmx.oM ◆3k3x1UI5IA
5話投下
◆JI0DYaB8oI ◆2kGkudiwr6 ◆gMrrx6WqIM ◆o.lVkW7N.A
4話投下
◆IEYD9V7.46
3話投下
◆nhqbjDwFas ◆RW6PC/GPu. ◆bmPu6a1eDk
というところ。
どうでもいいが、wiki編集には自信ないから、これのメモを避難所のデータスレにでも投下しようかしら。
いつの間にか、6つも書いてたんだ……。
イヴ、ビュティ、ブルー、双葉 以上4人予約します。
すみません。
今書いている作品に、カツオの存在が必要になってしまったため、
もしできればカツオを追加で予約させてください。
勿論、他にカツオを書きかけている方がいるなら、彼無しで何とかします。
ニア、藤木、パタリロ、カツオって策謀のニオイがプンプンするなw
予約入っていないしいいのでは。むしろより楽しみになった。
書き手紹介の目次だけ作ってみた。一からページ作るの初めてだから変なところがあるかも。
中身のほうも時間があるとき手をつけようと思う。
データスレに落としてくれた
>>238氏に感謝します。また参考にさせてもらいます。
>>243 乙!
結構たくさん書き手いるんだな……
三つも鳥使いまわしててサーセンwww
>>238 やっぱ沢山書いてる人には大物が多いな。
とりあえず
>>238の時点で5作以上書いてる人を印象で語ると、
派手展開で多人数を上手く動かすと同時に、賛否両論巻き起こる◆CFbj666Xrw氏、
恐怖などの心理面の描写に長けており「こぶたのしない」怖い◆uOOKVmx.oM氏、
「蒼星石は私の仲間だよね?」、リリカルサーカス三すくみ、乱太郎カワイソスと爆弾設置魔な感がある◆3k3x1UI5IA氏、
繋ぎ中心だけど面白い状況を上手に提供しリレーしやすい雰囲気の◆JI0DYaB8oI氏、
白レンの淫夢ほか魔法の使い方の上手い◆2kGkudiwr6氏、
冒頭から「ひんにゅ〜」でニケのスケベ大魔神を決定付けた◆gMrrx6WqIM氏、
密かにカワイソスな状況を次々と生み出している◆o.lVkW7N.A氏、
とどれも凄まじい。
もちろん、作品数の少ない人や捨てトリ派の中にも傑作は多いわけで……
作品数多くて大変なのに、マジで書き手に恵まれてるな。
予定より随分長くなってしまった……orz。夜になって人が増える前にトウカしておこう。
と、いうわけで、ニア、弥彦、藤木、カツオ、パタリロ、よつば、千秋投下します。
お互いの知識を話し終えた後、ニアは相手に気付かれないよう小さく息を吐いた。
目の前の少年、弥彦から聞いた数々の話は、この異常な状況を更に複雑化させるものだった。
ニア自身、名前を書くだけで相手の命を摘み取るノートや、それを扱う死神らの存在を知っている。
自分に支給された『メタちゃん』も、現代の科学で考えれば、明らかに奇怪な生物だ。
超常的な現象に対して「信じられない」と一蹴するほど、狭い了見は持ち合わせていない。
しかしそれでも、相手が明治生まれの少年だと聞けば、多少の驚きは当たり前だった。
ジェダは、様々な時代・地域から多種多様な人物を集められるだけの力を持っているのだろうか。
初めに集められた室内で、現代のそれとかけ離れた服装の持ち主を多く見たことを考えれば、その推測は正しいのかもしれない。
――――即ちジェダは時間移動能力、或いはそれに順ずるだけの能力の持ち主?
馬鹿馬鹿しい、とは言い切れない。だが一方で、本当にそんなことが出来るのかと不信にも思う。
尤も、譬えそうであったとしてもニアに恐れは微塵も無かった。
特殊な能力には、えてして相応の『ルール』と『ペナルティ』が存在する。
あの驚異のノートですら、効力を発揮するためにはいくつもの縛りがあり、同時に穴があったのだ。
ジェダの能力も同様に、何らかのルールに基づいて発動されているのではないだろうか。
ニアは組み立てたその推論を頭の片隅にとどめ、これからやるべきことを思案した。
否、正確に言うならば、『やるべき』ことではなく、目の前の少年に『やってもらうべき』ことだ。
ランドセルをごそごそと弄り、鉛筆と紙の束を取り出すと、そのうちの一枚を床に置いた。
芯のよく尖った鉛筆を手の中でくるくると弄びながら、周囲にゆるりと視線を向ける。
監視カメラらしき物は見当たらなかったが念を入れ、折って立たせたメモ用紙で白紙の周りを取り囲んだ。
これで、よほど上手い角度からでもない限り、この紙に書かれた文字を認識するのは難しいだろう。
『私たちの会話は、ジェダに盗み聞かれている可能性が高い。
ですから、今からこの紙に書くことは、決して口に出して読まないで下さい。
貴方は、私の言葉に相槌を打っていてくだされば構いません』
紙の上端にそれだけ書いて、弥彦の眼前へと突きつける。
突然の行為に驚いた弥彦が目を白黒させるのを見て、多少なりとも不安になる。
だが、仕方ない。彼には、自分の代わりにしてもらわねばならないことが山ほどあるのだから。
『いいですか?』
先ほど書いた二文の真下にそう書き連ね、念を押すように指先でトントンと叩く。
少々緊張気味の、それでも力強い顔で頷いた弥彦の反応に心を決め、ニアは口を開くいた。
「私には探さねばならない『モノ』があります。しかし私はここを一度出て行った後、生きて帰ってこれるだけの自信がない。
ですから貴方には、非力な私に代わって『それ』を探しに行ってもらいたいのです」
「俺が?」
弥彦の問いかけに首を縦に振ると、ニアは表情を崩さぬまま唇を動かして言葉を紡いだ。
それと同時に右手に持った鉛筆をカリカリと床上の紙に這わせ、文字を書き始める。
ニアの記すその文字列へ、弥彦の視線が吸い寄せられるように真直ぐと向く。
「それは、私の友人です」
『そしてもう一つが「首輪」です』
目と耳それぞれから飛び込んできた相反する二つの内容に、弥彦が首を捻って奇妙そうな顔をした。
思わず声を上げそうになったのを、自ら両手を口に当てることで、すんでのところで押しとどめている。
しかしその瞳には、拭い様のないこちらへの懐疑心が確実に宿っていた。
不審そうな視線を自分の側へと向ける相手に、だがニアは臆すことなく自身の考えをぶつける。
無表情で放つ言葉は、どこからどう見ても友人を憂うごく一般の少年そのもの。
しかし握られた鉛筆から綴られる一文一文が、彼の本来の非凡さを覗き見せている。
「はい、『メロ』という名の友人です。……尤も、向こうが私を友人だと思っているかは定かではありませんが」
『はい、首輪です。この『ゲーム』、抜け出すために必要な課題は、最低でも二つある。
まず、この首輪を爆破させることなしに解除すること。そしてジェダの居場所と能力を探ることです』
すらすらと紙の上に記されていくニアの文字を読みながら、視線の先の弥彦がこくこくと首を縦に振る。
ニアは弥彦のその反応に気を良くするが、生来のつまらなそうな表情は微塵も変化させない。
大丈夫だ。自分の方針に、問題は無い。彼程度、説得し『駒』として動いてもらうことは容易なはず。
「メロは有能な人物です。彼の頭脳は、私に勝るとも劣りません。
彼と手を組むことが可能なら、主催者への反抗はより確実な物になるでしょう
しかし、残念なことに、彼は私をひどくライバル視しています。そうですね……、憎んでいるといっても過言ではない。
彼が今、この殺し合いを収束させようとしているか、それとも乗ってしまっていっているかは私にも分かりません。
メロの性格を考えれば、短絡的な思考に基づいて殺人を行っている可能性も十分考えられる。
ですが、メロと私、二人の協力が、ジェダを打倒するには不可欠……、それは間違いありません」
『しかし後者は、おそらく私一人では不可能です。あなたと私の元居た時代の差、豚になる子供、そしてメタちゃん。
それらから想像するに、彼は何らかの特殊な能力を持っていると考えられます。
現状ではまだ、彼の力について考察するには材料が足りません。よってこちらは、今のところ後回し。
ですが、首輪の解体・解析ならば私の独力でも十分に可能です。
首輪に備えられた機能の確認、使われている技術や回路と材料の分析、爆発に至るまでのプロセス、爆破の威力。
そういったものを出来る限り調べておくことが、首輪の解除へと繋がるはずです』
「ですから、探して下さい。私の友人を」
『そして「首輪」を』
* * *
目の前に突きつけられたその二つの依頼に、弥彦は大きく頷いて了解の意を示した。
友人に会いたいという願い、首輪を解析することで出来るだけ脱出を容易にしたいという思考。
ニアの考えは双方共に、弥彦でもすんなりと受け入れられるものだった。
確かに、どんなにジェダが憎くとも、ただ怒りと恐怖に震えているだけでは何の解決にもならない。
自分には首輪を解体するだけのからくりに対する知識はないが、おそらくニアにはその自信があるのだろう。
彼の頭脳と冷静さは、こうして対峙しているだけでも弥彦に伝わってくる。
然程荒事に慣れ親しんでいるようには見えないが、落ち着き払った様子は十二分に英傑性を感じさせる。
彼がこの殺戮の舞台を終焉に導く上で、重要な人物であろうことは間違いない。
だがその一方で、ニアに運動・格闘能力が著しく欠けているのもまた事実だ。
神谷道場で毎日汗水垂らして修業をしてきた身からすれば、軽く見ただけでも一目瞭然である。
彼の身のこなしや筋肉のつき方は一般人同然――、否、むしろそれ以下だろう。
その彼を、殺人の横行する危険な島内のあちらこちらへ出向かわせるのは、博打が過ぎる。
彼は確かに、人並みはずれて回転の早い頭と、説得力ある弁舌を兼ね備えているが、問答無用で襲われればそれまでだ。
きっと、逃げ切ることさえかなわずに、襲撃者の一撃であっけなく殺される。
――ならば自分がすべきことは、一つ。
ニアの代わりとして動き、彼の求めるだけの道具や情報を手に入れてくることだ。
自分に十分な頭がないから、特別な力がないからといって何もしなくては、始まるものも始まらない。
己の出来る精一杯の働きをする。今の自分にとって、それは即ち、ニアの手足として駆け回ることだ。
「分かったぜ、ニア。俺、やるよ。お前の代わりに、俺がそいつを探す」
『お前の友達も、首輪もな』
弥彦はそう言いながら、自分のランドセルから取り出した鉛筆で力強く付け加えた。
視線の先のニアが、変化の乏しい表情を僅かに崩して笑ったように見えたのは、気のせいではないだろう。
「ではメロの外見を説明しましょう」
『ではやってもらいたいことの確認をしましょう』
ニアが握り締めた鉛筆を再び紙の上で躍らせるのを、弥彦はじっと見据える。
愚直なまでに強靭な意志を感じさせる瞳が、ニアの書き記す文字を射抜いた。
「メロは私と同年齢の男性で、金色の髪をボブカットにしています。右目の周囲に大きな傷があり……」
『まず首輪の捜索。これは、貴方が手に掛けた少年の遺体を探せば、すぐに手に入るでしょう。
但し、出来れば一つよりも複数あったほうが都合良い。ですから貴方は、このタワーから東へ向かってみて下さい』
『どうしてだよ』
『三時間ほど前、少女が殴打されているのをここから見ました。
殴られた少女は東へ走っていきましたが、あの傷ではおそらく持ちこたえられなかった筈です。
ですから、D-6から7付近を捜索すれば、彼女の遺体が発』
平然としてそう書き続けるニアに、弥彦は言い知れぬ恐怖と憤怒とを同時に抱く。
知らず指先に力がこもり、掌を無理やり覆い被せるようにして、鉛筆を滑らせるニアの動きを止めた。
無表情の中に僅かに不愉快そうな面持ちを覗かせてこちらを見上げるニアに、たまらず弥彦は訊ねる。
『お前、その子を見殺しにしたのか』
乱暴に書かれた文字の跳ね具合が、弥彦の動揺を如実に表している。
ニアはその文字を一瞥すると、再び表情を鉄面皮に戻して、何でも無いことのように返した。
『その言い方は適切ではありませんね。私は確かにここから彼女達を見ていました。
しかし彼女は、この塔とは逆方向に走っていってしまった。私の足では、到底追いつけなかったことでしょう』
ニアは、白いパジャマの裾を捲って、ろくに筋肉のついていない貧相な腿を弥彦に見せた。
しかし弥彦にとって、そんな事実は意味を成さない。むしろ、不快なだけの言い訳を聞かされている気分だ。
咄嗟に、刀の柄を強く握り締めようとするのを押さえ込んで、眼前の彼に重ねて問う。
『お前は、皆を救いたいわけじゃないのか』
先刻彼は、自信に満ちた素振りで自分に告げた。「正義は必ず勝ちますから」と。
ならば彼にとっての正義とは一体何物なのか。弱い者を見捨てて自分達だけ生き残ることが、果たして正義と呼べるのか。
腹から込み上げる怒りの感情に任せるようにして、握った鉛筆をぶっきらぼうに動かす。
しっかり紙を押さえておかなかったせいもあり、書いている途中で紙面に小さな穴が開いた。
黒い点のようにぽつんと開いたそれは、さながら弥彦の心に穿たれた空洞を表しているかのようだ。
けれど瞳の先のニアは、動じていなかった。苛立つ弥彦の言動も意に関さず、飄々とした態度を崩さずにいる。
弥彦とは正反対の静謐な空気を周囲に纏ったまま、彼は先刻と寸分変らぬ字体を記した。
『勿論私は、この場に居るできる限りの人間を助けるつもりです。
ですが、一を救うことで十が死ぬのなら、私はその一を切り捨てる』
ニアが当然のようにそう書き終えた瞬間、彼とは絶対に分かり合えないと弥彦は感じた。
弥彦は知っている。大切な人々が死んでしまう悲痛、その苦しみと絶望を。
彰義隊に加わり戦の中で命を落とした父、遊郭で必死に働きながら病に倒れた母。
両親が死んだとき、自分は確かに陽も差さないどん底に居た。
そこからお天道様の見える場所まで這い上がることが出来たのは、道場の皆が居てくれたからこそだ。
剣心の下、剣の道を志したのもまた、強く在りたかったから。
大切な人を一人残らず己の力で守るため。もう誰も自分の目の前で死なせないという願いを叶えるため。
その誓いは皮肉にも、自身の振るった剣によって破られてしまったけど。
――――そう。けれど、だからこそ俺は。
「ニア、お前の言ってる事が分からないわけじゃない。でも、俺は一人でも多くの人を助けたい!」
弥彦は一心にニアを凝視し、腹から声を出して叫んだ。最早、ジェダの盗み聞きなんぞを気にしている余裕はなかった。
ニアの言うことは良く分かる。冷静に理屈で考えれば、彼の方法が効率的なものだと判断できる。
それでも弥彦は、ニアの提示するそのやり方を許すことなど決して出来なかった。
弥彦はすっくとその場から立ち上がると、眼下のニアに吐き捨てるようにして告げた。
「悪いけど俺、お前のやり方には従えない。仲間が要るなら他の奴をあたってくれ」
「……仕方ありませんね」
ニアはかぶりを振って、エレベーターのある方向へと顎をしゃくる。
「勝手にすればいい」という意思表示であろう。
弥彦はそれを確認すると、床に散らばった自分の鉛筆や紙束を乱雑に放り込み、ニアへ背を向けた。
握り締めている長刀の柄がどうしてか、氷柱のように冷たく重苦しいものに感じられる。
息を長く吐きながら、エレベーターへ向かって振り返ること無しに歩を進めた。
弥彦が一歩前へ進む度に鉄扉との距離は縮み、同時にニアとの距離が遠ざかっていく。
心苦しさがない、といえば嘘になる。それでも、弥彦は歩みを止めようとはしなかった。
再び次の一歩を踏み出そうとした瞬間、しかし弥彦は異様な気配に足を止める。
背後から迫り来る風切音に咄嗟に振り返り、背中めがけて飛んできた何かに向けて、手にした剣を振りかぶった。
ふわりと大きな放物線を描いてこちらに向かってくるそれに狙いを付け、両手を添えた剣を頭の高さに構える。
爆薬の可能性も考え後方に大きく跳躍しながら、身体を反らせて横薙ぎに鋭く刃を一閃させる。
狙い定めたそれを床へと叩き落と――――そうとして、弥彦は己の意識が朦朧としていくのを感じた。
膝がかくんと力を失い、自身の体重を支えきれなくなる。
意思と裏腹に床へと転げた弥彦は、もやがかかったように薄れていく思考の中で、自分が打ち落としたものの正体を理解した。
自分が切り裂いたのは、支給品のパンが入っていた透明な袋。そしてその中に充満していたのは――。
「さっきの煙、か……? く、そっ……!!」
先ほど窓から外へ煙えお逃がした際、僅かな量を移しておいたのだろう。
丸く膨らんだ袋は、弥彦が峰で払い落とした衝撃によって破れ、開いた穴からもうもうと煙を立ち上らせていた。
弥彦は悔しそうに顔を顰め、前歯でぎりぎりと唇を噛みしめる。
意識を無理やりに繋ぎとめようと必死で身体に力を込めるが、襲い掛かる強制的な睡魔は僅かばかりの抵抗も許さない。
重く圧し掛かる両の目蓋がついに弥彦を屈服させ、彼を完全なる睡眠へと誘う。
ばたんと派手な音を立て、彼は身体ごと床へと倒れ伏した。
* * *
弥彦が完全に意識を失ったのを確認し、ニアは、自身を覆っていたメタちゃんの姿を原形へと戻させた。
メタちゃんをバリケード代わりに煙から逃れる作戦は、先刻同様にまたしても上手くいったようだ。
うつ伏せの弥彦に近づき、ツンツンと指先で突付いて起き出さないのを確かめる。
耳を近づければ何事かぶつぶつと呟いていたが、すぐに意識を取り戻す様子は無かった。
「仕方ないですね……。本当は、こんな事はしたくないのですが」
平時と変らぬ顔つきでそう口にすると、ニアは朦朧としている弥彦の肩を抱き、ゆらゆらと揺り起こした。
ニアの動きに合わせて弥彦の半身が左右に揺れ、頭部が危なっかしくグラグラと傾く。
構わず刺激を与え続ければ、弥彦はどんよりとした光のない瞳でこちらに視線を向けた。
「何、だ……?」
「弥彦、貴方に頼みたいことがあります」
「俺に、たの、み……?」
ぼんやりとした口調で訊ね返す弥彦の耳元に唇を近づけて囁く。
どうやってジェダが監視しているか分からない以上、出来れば口に出して言いたくはなかったが、仕方がない。
せめてもの抵抗として、蚊の泣くような小声でニアは告げる。
「はい、首輪を探してきて下さい。数は……、出来るだけ多いほうがいいですね。
それから、解体に必要な工具も見つけてきてください」
「……わかった」
意思のない機械のような声音で了承の言葉を返すと、弥彦は再び立ち上がった。
煌く剣を手にして歩み出すその後姿に、最早迷いはない。
エレベーターへと向かって歩いていく少年の背中を見つめ、ニアは小さく唇の端を吊り上げた。
* * *
「……あいつったら、一体どうしたっていうんだろう?」
磯野カツオは、ビルの谷間にあるごく細い路地から首だけ出して、それを見ていた。
視線の先にいるのは明神。最前まで自分と行動を共にしていた少年だ。
彼は今、自身の剣で細切れにした少年の亡骸の前で跪き、各部位を丹念に選り分けていた。
既に赤黒く汚れている衣服が更に血塗れるのも気にせず、一心に何かを探している。
よくもまあ、あのグロテスクな死体を前にして、あれだけ平静に検分ができるものだ。
少年を殺してしまった直後は、あれだけ取り乱していたというのに、全くどういう心境の変化だろう。
彼の行動に好奇心を喚起され、カツオは自分でも知らぬ間に不敵な笑みを口元へ湛えた。
本来ならもっと見やすい位置まで近づきたいところだが、油断は禁物だ。
さっきの二人組が未だこの周囲をうろついている可能性は高いし、そもそも明神自体、カツオ自身とは比較にならない格闘能力の持主だ。
下手に接近して見つかれば、厄介なことになるのは目に見えている。
仕方なく、カツオは現在地から動かずに、明神の動向を注視した。
頭部、頚部、掌、右腕、左腕、胸部、腹部、腰部、右脚部、左脚部。
まるでパズルのピースのようにバラバラになったそれらのパーツを、明神は一つ一つ手にとっている。
山と詰まれたその肉塊を見つめる彼の瞳は色を失い、どこか幽鬼に似た気配を感じさせた。
カツオは彼の行動に一旦首を捻り、すぐにある可能性に気付いて顔を顰めた。
「もしかして、首輪のことに気付いたのかな? ううん、まずいなぁ」
明神本人の直情的な性格を考えれば、彼自身がその事実に勘付いた確率は低い。
だからここで問題になるのは、今しがた、彼が接触していたと思われる相手の方だ。
ついさっき、明神はあの二人組に追いかけられ、タワーへと逃げ込んでいた。
あの時は、せいぜいが面白い見世物だとぐらいにしか思わず、ここから高みの見物を決め込んでいた。
だが今になって思えば、聡明そうな彼ら二人を明神に引き合わせたのは失敗だったかもしれない。
彼ら二人のどちらかが弥彦の話を冷静に聞き、その上で入れ知恵した可能性は大いに在り得る。
そうだ。死体を探っても首輪が見つからなければ、首輪を持ち去った人間の存在が容易に浮かび上がる。
明神は、その推論を確認するために、死体漁りをしているのではないのだろうか?
カツオはその推測に眉をひそめ、自分の犯した重大な失敗に舌打ちした。
さて、このミスはどうやって挽回しようか?
視界に映る弥彦は、漸く納得がいったのか、死体弄りをやめて立ち上がった。
くるりと方向転換し、こちらとは正反対の方向へと歩き出す彼の背中をじっと見据える。
追いかけるべきか、逃げるべきか。――――それが問題だ。
* * *
藤木茂はガラス戸一枚で隔たれた先にいる相手に、激しく恐怖を募らせていた。
一刻も早く水が飲みたい、という思考に囚われていた彼は、火傷の治療が出来るであろう東の病院を目指そうとしなかった。
現在地から少しでも近い場所を目標とした彼が選んだのは、襲撃現場から西にあるC-8東端の住宅街。
下草に足を取られるのを鬱陶しく思いながら十分ほど草原を歩き続け、ようやっと住宅地へと辿り付く。
目に付いた家屋のドアを大慌てで開け放つと、藤木は靴も脱がずにずかずかと屋内へと進んだ。
廊下の奥にバスルームを見つけ、いてもたってもいられず即座に裸になる。
逸る手つきで蛇口をいっぱいまで捻ると、シャワーヘッドから溢れた恵みの水が、藤木の全身をしとどに濡らした。
激しい水流を身体中に受け、藤木はその心地よさにうっとりと瞳を瞑る。
未だひりひりと熱を持っていた腹の火傷を十分に冷やしながら、彼はごくごくと喉を鳴らして水を貪り飲んだ。
口腔内から喉元へと滑り落ちる冷水が渇いた身体を潤すと、彼は張り詰めていた息を一斉に長く吐き出した。
安堵の息を漏らした藤木は、ふっと笑って蛇口に手を伸ばし、――瞬間、指先を凍らせた。
シャワーの水音に紛れて、確かにパタパタと鳴る足音が聞こえる。
しかも最悪なことに、その音源は窓の外から響いているのではない。
音のする先は家の中、――それも曇りガラス一枚に遮られた、すぐ脇にある脱衣所だ。
藤木は思い返す。そういえばこの家を見つけたとき、自分はドアをきちんと閉めただろうか?
一秒でも早く水が飲みたくて、ドアの開け閉めにまで気を使う余裕が無かったのでは?
「ど、どうしよう……。ににに逃げなきゃ……っ」
そうは言っても、自分は今、完全に真っ裸だ。タオルの一枚さえ、この風呂場には無い。
大体風呂場の窓は小さく高い位置にあり、どうやっても出ることなんて不可能そうだ。
怯える彼の事情など微塵も構わず、ドア越しの相手はノブへと手を掛けた。
ガラガラと音を立てて引き戸が横に滑り、襲撃者の姿が眼前であらわになる。
「うわぁぁああっ!!! た、助けて、助けてよぉおっっ!!」
軽いパニック状態に陥り、目の前にあったプラスチック製の手桶や石鹸置きを投げつける。
へろへろとした軌道で投擲されたそれを何でもないかのように、相手はひょいと身を引いてかわした。
「殺さないでよぉっ! 何でもするから殺さないでくれよぉっっ!!」
頭を床へ擦り付けんばかりに這い蹲って、必死の表情で縋るように懇願する。
相手は血塗れの胴着姿を隠そうともしない少年。その手に握られているのは、鋭い長剣。
それでも死の覚悟など到底出来ず、藤木は豚のように無様に媚び諂う。
一瞬の後、彼を待っていたのは、煌く刃の一太刀――ではなく、一つの質問だった。
「……お前、この辺りで死体を見なかったか?」
「……えっ? ししし死体?」
唐突に訊ねられ、藤木は答えに詰まる。
死体なら知っている。当たり前だ、さっきこの手で自分が殺したのだから。
だがそれを正直に口にしてもいいものなのか。第一なんで、こいつは死体なんかを捜してるんだ?
訳が分からない。何のためにこんなことを訊いているのか、その理由がさっぱり理解できない。
藤木は突然の状況に激しく混乱していた。だが藤木の生存本能は彼から思考を奪い、勝手にその口を動かした。
「た、多分、ここから十分ぐらいあっちに歩いたところにあった……はずさ。
そそ、そう。そうだよ。さっき通ったときに、確か見かけた、から……」
恐慌に震える喉で対峙する少年へそう告げ、来た道の方角を指差した。
嘘ばかりだったが、仕方ない。
真実――、その少女を死体にしたのが自分だということなど、言えるわけないではないか。
藤木は恐怖に目をぎゅっと瞑り、カチカチと鳴る歯を食い縛った。
「本当だよ。う、嘘だと思うなら行ってみればいいだろ」
「……そうか、分かった」
吐き出すように叫んだ言葉にそう返され、藤木は少々面食らう。
眼前の相手は納得したように小さく頷くと、そのまま直線的な足取りで廊下を戻り、藤木から遠ざかっていった。
玄関の戸が閉まるギィという金属音を耳にすると同時に、風船から空気が抜けていくかのように全身が脱力する。
ふと、腿を流れる生温かい感触に気付いて、藤木は自身の内股へと手を伸ばす。
――――失禁、していた。
* * *
「おい、おまえ方角も分からないのか。どっちに行ってるバカ野郎」
背中にしがみ付いているチアキの声に、パタリロは元祖ゴキブリ走法をぴたっと停止させて立ち止まった。
短い首を梟のようにくるっと後ろへ捻らせて、千秋に小声で告げる。
「アホかおのれは! あの音が聞こえないのか!」
「音……? そういえばさっきもよつばの泣き声に気付いていたな。地獄耳が」
「先祖代々の地獄耳を馬鹿にするな! とにかくあの先から何か音がした。安易に近づくのは危険かもしれん」
「どういうことだ?」
「流石に襲撃者がまだ留まっているとは思えんが、うーん、火事場泥棒を狙う死体漁りかもしれないな」
そう言ったパタリロの言葉に、チアキが露骨に嫌な顔をする。
だがパタリロはそれに気付かず、更に気色の悪い想像を披露した。
「いやいやもしかしたらそれ以上かも分からないぞ。
相手がロリータコンプレックスのネクロフィリアででもあった日にゃぁ……ムニャムニャムニャ」
「ネクロフィ……? 何だそれは」
「ふん、ネクロフィリアも知らんのか。ネクロフィリアとは即ち死体愛……、
……っとまずいまずい、これ以上言うと全国三十万の純真な花ゆめ読者を敵に回しかねん」
「……? まあ、よく分からないが、とにかく危ないヤツがいるかもしれないんだな」
チアキの台詞にうんうんと頷いて、パタリロは未だ背中に乗っかったままの少女二人に訊ねた。
「で、どうするんだチアキ、よつば。言った通り、今行くのは危険だぞ」
危ない橋は渡りたくないところだが、ここで引き返しても二人の気持ちは収まらないだろう。
予想通り、視線の先の少女達はこくんと首を縦に振って力強く返答した。
「そうは言っても、ここまで来て様子を見に行かないわけにはいかないだろう」
「よつばもいくぞ。はやくちよをたすけるんだ!」
その決意にパタリロははいはいとあまり気のない返事で返すと、再び足に力を込めた。
元祖ゴキブリ走法、再びのスタートである。
丸っこいフォルムをしたペンギンの着ぐるみが、カサカサと奇妙な音を立てて草原を疾走する。
脅威の速度を誇るその人間離れした足捌きを、ふとパタリロは制止させた。
先刻から鼓膜を打ち続けてきた物音が何であるか、その正体の目星が付いてしまったからだった。
耳朶に醜く響くそれは恐らく――――。
「チアキ、よつばの目を塞いでいろ。ついでにお前も目を瞑れ」
「はぁ? 何言ってるんだパタリロ。意味が分からないぞ」
理解不能な目でこちらを見てそう反論するチアキに、パタリロは思わず吐息する。
全く、ネクロフィリアも知らんようなガキ共に、あんな光景見せられるわけがない。
大体、こんな描写は少女誌の範疇を超えているだろうがーーーーーっっ!!
叫びだしたくなる衝動を抑え、パタリロは大きく深呼吸をした。
丈のある草の間を掻き分ければ微かに、剣を振るう少年の姿が遠目に見える。
――そう、聞こえていた正体は、剣を振る風切音。
そして少年が今迫っているのは、自分達が探していた少女の眼前だ。
集中し耳を澄ませれば、穏やかな呼吸に紛れ彼の呟きが鮮明に聞き取れた。
「やっと見つけた。こいつの首輪を……持って帰る」
【D-8/ちよの遺体の前/1日目/昼】
【明神弥彦@るろうに剣心】
[状態]:健康、眠り火の催眠効果により『死体を捜し首輪を持って帰る』が最優先事項
[装備]:楼観剣@東方Project
[道具]:基本支給品一式
[服装]:道着(血塗れ)
[思考]:……首輪を持って帰らねえと。
第一行動方針:首輪及び解体に使えそうな工具をタワーに持って帰る(催眠効果発動中)
第二行動方針:ニアの力量は認めるが考え方には反対。彼の考え方が変らない限り従いたくない。
第三行動方針:のび太とカツオがどうなったか不安
第四行動方針:出来ればあの子(野原しんのすけ)を埋めてやりたい
基本行動方針:ジェダ達を倒す。一人でも多くの人を助ける。
[備考]:眠り火の催眠効果時間は、後の書き手さんにお任せします。
【D-8/ちよの遺体から数百メートル離れた叢/1日目/昼】
【小岩井よつば@よつばと!】
[状態]:まだかなり不安。極度の疲労(衰弱)。チアキに背負われている。泥だらけ
[装備]:核鉄(シルバースキン)@武装錬金
[道具]:支給品一式
[思考]:ちよー待ってろー!!
第一行動方針:ちよを助けに戻る
第二行動方針:とーちゃんとかぐらを探す
基本行動方針:とーちゃんかに会いたい
[備考]:とーちゃんがこの島に居ると思っています。 パタリロを信用していません。
※…シルバースキンの説明を中途半端にしか見てないため、リバースの方は知りません。
【南千秋@みなみけ】
[状態]:健康。ペンギンの頭に掴まっている
[装備]:ロングフックショット@ゼルダの伝説/時のオカリナ
[道具]支給品一式、祝福の杖(残二回)@ドラゴンクエスト5
[思考]:パタリロは何を言ってるんだ?
第一行動方針:よつばに協力してちよって子を助けよう!
第二行動方針:火事場泥棒?の存在にやや恐怖しているが、パタリロ達に怯えは見せたくない。
第三行動方針:人が死ぬとか、殺すとかはあまり考えたくはない。
最終行動方針:どうにかして家に帰りたい。
【パタリロ=ド=マリネール8世@パタリロ!】
[状態]:健康、ペンギン状態、ゴキブリ走法中
[装備]:S&W M29(残弾6/6発)@BLACK LAGOON
ペンギンの着ぐるみ@あずまんが大王
[道具]:支給品一式(食料なし)、ロープ(30m)@現実
44マグナム予備弾17発(ローダー付き)
[思考]:……はてさてどうしようか
第一行動方針:弥彦の態度を様子見て、どう対応すべきか決める(逃走、交渉、応戦etc)
第二行動方針:チアキとよつばは気の済むようにさせる(フォローくらいはしてやる)
第三行動方針:打倒ジェダの仲間&情報集め
第四行動方針:好戦的な相手には応戦する。特に異能力者と自分を騙そうとする相手には容赦しない
最終行動方針:ジェダを倒してお宝ガッポリ。 その後に時間移動で事件を根本から解決する。
[備考]:自分が受けている能力制限の範囲について大体理解している。
彼は着ぐるみ着用でも普段と同じ行動が可能です(変わり身などがある分むしろ強い?)。
【B-7/タワー内展望室/1日目/昼】
【ニア@DEATH NOTE】
[状態]:健康
[装備]:アクション仮面人形@クレヨンしんちゃん
[道具]:基本支給品、モンスターボール@ポケットモンスターSPECIAL、
眠り火×9@落第忍者乱太郎、タワー内放送用マイク
[思考] :あの少年、うまくやってくれるでしょうか?
第一行動方針:弥彦が首輪を持ってくるのを待って、解析作業
第二行動方針:展望室から見える部分の警戒&逃げた2人(太一とキルア)の警戒(双眼鏡である程度の特徴は掴んでいます)
第三行動方針:メロまたは、ジェダの能力を探る上で有用な人物と接触したい
基本行動方針:自分では動かず、タワーを訪れる参加者と接触して情報や協力者を集める
最終行動方針:殺人ゲームを阻止する
[備考]:盗聴器、監視カメラ等、何らかの監視措置がとられていると考えています。
そのため、対ジェダの戦略や首輪の解析に関する会話は、筆談で交わすよう心掛けています。
ジェダを時間移動能力者でないかと推測しました。
【A-7/人目につかない建物の間/1日目/昼】
【磯野カツオ@サザエさん】
[状態]:全力疾走による若干の疲労、高揚感
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、天体望遠鏡@ネギま!、禁止エリア指定装置、首輪(しんのすけ)
[服装]:オレンジ色のシャツ、紺色の短パン、中島風伊達眼鏡、茶髪のカツラ(イメージは夜神月@デスノート)
[思考]:明神が気になるなあ。どうしようかな?
第一行動方針:弥彦の動向を観察
第二行動方針:キルアと太一の動向には気を配る(特にキルア)
第三行動方針:臨機応変に動き、状況の変化に惑わされない
第四行動方針:首輪を調べてみる。または交渉に利用する
基本行動方針:優勝する
【C-8/民家の風呂場/1日目/昼】
【藤木茂@ちびまる子ちゃん】
[状態]:お腹や脚に火傷(命に関わるほどではない)、脛に切り傷、腹部に大きな傷(焼け付いた服を剥がしたため)
[装備]:焼け焦げたルーンの杖@ファイナルファンタジー4 拾った石×10
[道具]:基本支給品、青酸カリ@名探偵コナン、的の書かれた紙(10枚)@パタリロ!
[思考]:……ああ、怖かった。う、上手くごまかせたかな……。
第一行動方針:弥彦の動向が気になる(でも追いかけるのは怖い)
第二行動方針:火傷を治す
第三行動方針:よつばを始末したい
第四行動方針:強そうな人を探して頼る。倒せそうな相手は隙を見て殺す
最終行動方針:自分だけでも助かりたい
トウカ終わりました。
正直、眠り火の効果にかなり不安が残っているので、指摘、意見等あったらガンガンお願いします。
全体的にGJ
全裸な人がまた増えたか。藤木だけど
ニア恐ろしい子!
GJ!
上手くたくさんのキャラを動かせてて凄いですね。
ニアは手段選ばないなぁ…弥彦がカワイソスw
パタリロたちと遭遇しちゃったから、目的が完遂できるか微妙か?
…で、ちよちゃんの遺体は……(((( ;゚Д゚)))
ニアやべぇwwwwww
ジャンロワのLを見てると一層好きになれなくなった
>>259 GJ! ついにショタからも全裸者が現れたかw
ニアって本当に手段を選ばない奴だな。知性派だけど怖い奴だ
ちよちゃん……安らかに
このロワのショタは洗脳されやすいのかな。ネギ(治った?)、イシドロ(調教)、
弥彦、お前だけ相手が可愛い女の子じゃないけど頑張れよ
ここはグロとエロが素敵に入り混じるインターネッツですね
遅くなりましたが、明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナを投下します
遠くのオデン屋で一人の少女が愚痴を零している。まるで飲んだくれの親父ようだ。
その近くでは少年が鼻歌交じりに鍋をかき混ぜたり、何人かで談笑していたりもしている。
ボーっと立っていると、後から来た少女や少年が横をすり抜けて談笑の輪に加わって行った。
何だか楽しそうだ。何かから開放されたような安堵感、小学校の休み時間のような感覚。
そういえばさっきから紫穂と葵の姿が見えない。二人とも何処に行ってしまったのだろうか。
いつだって一緒だった二人。自分の一部と言ってもいい程、何の遠慮もなく付き合える仲間。
大声で叫ぶが応答は無く、薫は自分一人だけ取り残されたような恐怖さえ感じた。
泣きたくなる恐怖心を深呼吸して振り払い、冷静に周囲を見回すとどうだろう。
目に映るもの何もかもが歪んでいた。コーヒーに垂らしたミルクのように空間が歪んでいる。
それに気がついた瞬間、足元の感触が消えた。奇妙な浮遊感と共に湧き上がる不安感。
プールで溺れたかのように手足をバタつかせるが、何故か超能力が使えず、声も出ない。
そして助けを求めて遠くで談笑している少年達の方へ視線を送り、愕然とする。
首の無い少年少女、薬品で爛れた少女、包丁が刺さっている少年、四肢がバラバラの少年。
楽しげに談笑していたそれらが、一斉に薫の方を向いた。
「うわぁぁぁぁ―――――!!!」
跳ね起きた明石薫を待っていたのは、光の存在を許さない完全な闇だった。
だた暗いだけなのだが周囲の静けと相まって不気味さを醸し出し、薫を混乱へと導く。
眠っている間に見た夢の内容など覚えてはいない。だが漠然とした不安だけは残されていた。
無差別に開放した念動力が周囲の木々を砕き吹き飛ばすが、闇に遮られてそれを確認できない。
破壊の手応えを感じながらも不安に狩られた薫は、我武者羅に闇の中から飛び出した。
「うおっ、まぶしっ!!」
思わず腕で視界を遮る。闇に慣れていた薫の目に、眩しい陽光は強烈だった。
彼女が吸血鬼なら間違いなく灰になって消滅していたことだろう。
周囲の木々を薙ぎ倒したおかげで、森の中だというのに直接日光が降り注いでいたのだ。
薫は眩しさに顔を顰めながら、ゆっくりと明るさに慣れるように目を細く開こうとする。
その時、上空からの響く音を聞いた。例えるなら高速で飛行する時の風きり音。
反射的に顔を上げた薫の瞳に、眩しい太陽を横切る影が映った。
(誰かがいる? 葵?! いやさっきの女か?!)
それは突き穿つ死翔の槍。礼拝堂を崩壊させても勢いは衰えず、遥か彼方へ向けて飛翔する。
何処から来たのか、何処へ行くのか、それは分からない。何故なら――
「目が、目がぁ――!!」
直射日光を目の当たりにした薫は、目を押さえてのたうち回っていた。
○ ○ ○
「あんたら、薫と紫穂を知っとんの? 二人に何しよったん?」
ベルカナの首筋には鋭利なガラス片が突きつけられ、圧し掛かった戸棚が動きを封じていた。
いたるところに突き刺さった破片は血を滲ませ、確実に命を削っていくのが感じられる。
分かる範囲であばら骨を何本か、それと四肢も骨折している可能性が高い。
身動きが出来ないので正確ではないが、手足の感覚が失われていないことは幸いだった。
目前の少女のように四肢を欠損してはいないが、問題は首がいつまで繋がっているか。
負傷と束縛に加えてここは閉鎖空間、都合良く助っ人が来ること期待できない。
(絶体絶命とは、こういう状況のことですわね)
他人事のようにベルカナは状況分析をしていた。身体に走る痛みが頭を鮮明にする。
今必要なのは泣くことでも怒ることでもなく、僅かな情報から活路を搾り出すこと。
身動きが取れないのだから、他に出来ることが無いと行えばそれまでだったが。
迂闊に口を滑らすと痛い目を見る、今それを身体で思い出させてもらったばかりだ。
素直に情報を吐けば助かるなどとは、新米の盗賊でも考えはしない。
情報の重要性と有用性は、上司である盗賊ギルドの女幹部に散々思い知らされていたから。
先ほどの言動からして、目前の少女は森で出会った赤毛の少女の仲間というのはほぼ確実。
思えばあの少女もフォース・エクスプロージョンやフライト、テレキネシスを自在に操っていた。
その同類と考えれば、目前の少女がテレポートやアポートを自在に操れても不思議はない。
(厄介な奴らに目を付けられてしまいましたわね。まったく運が悪いですわ)
だが悲観的な情報だけではない。仲間の情報を欲しがるということはロケーションや
マインド・スピーチといった探知系や念話系の魔法は使えないということだ。
悪魔の中には、魔法のような力を特殊能力として好き放題に使いこなせるタイプも存在する。
彼女らが系統立った魔法を習得しているのではなく、独自の特殊能力だとすれば納得もいく。
「なに黙っとんのや、薫と紫穂をどうしたって聞いとんよ?!」
いつもなら一瞬で数時間ほど議論したような検証を行うのだが、待ってはくれないらしい。
たった数秒、返答を遅らせただけで少女が声を荒立てて、ガラス片を首筋に軽く当てる。
薄っすらと血の糸が引かれた。冷静で落ち着いて態度に見えるが、案外そうでもないらしい。
この子も自分と同じように精一杯の虚勢を張っているのだと、そう思うと少し笑みが零れた。
「ベルカナさん!!」
「――!?」
悲鳴に似たイエローの声に、驚いた少女が視線を向け、ガラス片が首筋から僅かに離れた。
あの子はまだ無事のようですわね。ホッとすると同時に、最悪でも彼女だけは逃がさなければ、
そんな思いが再度込み上げる。それを嘲笑うかのように戸棚は重く圧し掛かっていた。
戸棚の下敷きになった少女は自分の質問に答えないばかりか、薄っすらと笑みを浮かべていた。
突き付けたガラス片をものともせず、葵を嘲笑っているようにすら見える。
薫や紫穂に何かしたのか、それを思い出して笑っているのか。
葵の脳裏に青髪の少年の死体が浮かび、それが血に塗れた二人の姿に摩り替わった。
恨めしそうにこちらを見つめる頭部だけになった薫と紫穂の姿に。
血液を沸騰させそうなくらいの怒りが込み上げて、ガラス片を持つ手に力が入る。
そうだ、サクッと首筋を掻き切ってしまえばいい。
こんな女、苦痛と苦しみの中で懺悔させればいい。
だが葵の手は動かない。後一歩と言うところで動かせない。
無意識に直接人を殺めることに対する禁忌を感じているからか。
そうではない。求めているのは希望、二人が無事だという希望と確証。
それを得たいがために、彼女は命を奪う数ミリ前で留まっていたのだ。
「ベルカナさん!!」
「――!?」
背後からの叫び声に葵は驚き振り向く。この部屋にもう一人いるとは計算外だ。
ベルカナが葵に出会った時の衝撃と困惑を今度は葵自身が受けることとなった。
声の主は小さな、といっても葵と同じくらいの少女。この女の仲間か。
汚れたシーツに包まっていたので気がつかなかったのか。
「ベルカナさんに何を!」
激しい敵意を放つ少女を確認して葵の顔色が変わった。
見れば手には何も持っておらず素手。恐れることは何もないはず。
だが葵の注意を引いたのは彼女自身ではない。彼女の周りにあるもの。
小石や砕けた戸棚の破片、割れたガラス片、それら諸々がカタカタと震えている。
室内だと言うのに風が巻き上がるような感覚は、薫が念動力を制御し切れない時の感覚に似ていた。
「サイコキノやて?!」
サイコキノ(念動力者)は能力がシンプルな分、高い超度を持つ者も多く存在する。
目の前の少女の超度が実戦レベルであったなら、今の葵が正面から勝てる可能性は薄い。
最強超度を誇る明石薫は例外としても、その能力は非常に戦闘向けとされており、
特に逃げ場のない空間では無類の強さを発揮する。正面から相手するのはバカか薫のやることだ。
「邪魔や、引っ込んどれや!」
超度不明な少女を他の部屋へテレポートさせようとするが、何故か効果が無かった。
間違いなく上方数m、上階の部屋へと送ったはずなのに少女の身には何も起こらない。
何度テレポートさせようとしても、少女は転移する様子もなく葵を睨み付けていた。
そればかりか少女は葵に向かって駆け出そうとする。
「く、来るな!」
少女にテレポートが通じない、それは葵に蕾見管理官の言葉を思い出させた。
『テレポートはね、近い念波で干渉しちゃえば発動しないのよ』
この少女は、そんな高度な技術を持ったエスパーなのだろうか。
咄嗟に近くにあった物、ベルカナに落としたのと同じ戸棚を少女の頭上へとテレポートさせた。
焦ったためか、思ったより少女が小柄だったのか、頭上数十cmに戸棚が現れる。
「上ですわ、イエローさん!」
「?! ダイレク、お願い!」
葵はテレポートが完全に封じられていないことに一抹の安心を得た後、驚愕した。
転移させた戸棚が、空中で方向転換して壁に激突したからだ。
ベルカナの声に反応したイエローの巻き起こした突風が、ほんの一瞬だけ戸棚の落下を防ぐ。
それと同時に巨大な――葵よりもイエローよりも巨大な大剣が意思を持った獣の如く飛び上がり、
回転する斬撃で落下物を壁へ叩き付けたのだ。
斬撃の余波で天井や石壁に幾多の傷が付けられ、戸棚は床に落ちて砕けた。
一仕事終えた大剣はイエローの周囲をフワフワと漂っている。間違いない、サイコキノだ。
「お、大人しくせんか! こいつがどうなっても知らへんで!!」
「この……!」
葵はベルカナに再度ガラス片を突きつけた。期待通りイエローと大剣の動きが止まる。
こんな低脳犯罪者のような台詞など、口にしたくなかったが仕方がない。
まだまだ優位だと自分に言い聞かせ、葵は湧き上がる恐怖心を押さえ込み、イエローを睨み返す。
ゲームに乗るような連中でも仲間は大切なのかと、しかし薫と紫穂はもっと大切なのだと。
お互いに相手の存在を否定しあう。その僅かな膠着を崩したのは階下から響く爆音だった。
「な、なんや!?」
「なに、この音!?」
遠くのような近くのような、それでいて城を揺るがすほどの爆発音。
何が起こったのか。周囲に気を配っても、礼拝堂で起こった大爆発を彼女達が知るすべはない。
両者に走った僅かな動揺、お互いが僅かな隙を狙い、そして警戒して二人は再び睨みあった。
「ひぃっ!?」
葵が短い悲鳴を上げた。
いつの間にか片腕の自由を取り戻していたベルカナが葵の腕を横から掴んだのだ。
爆音の主でも目の前のサイコキノでもない、無力化したはずの少女に腕を捕まれただけ。
たったそれだけのことだが、ホラー映画の途中で悪戯された子供のように虚を突かれたことと
爆音が連想させたフランドールへの恐怖心が重なり、葵は反射的に手を引っこめるかのように
ベルカナからテレポートで数m離れてしまった。
「今だ、行ってダイレク!」
葵自身が失敗したと認識するより早く、睨み合いの呪縛から逃れた大剣が彼女に迫る。
斬撃を避けるため、今度は緊急テレポートで鉄扉の前まで移動するが、大剣は葵のいた場所の
手前で大きく曲がるとベルカナに乗っている戸棚へと突き刺さった。
そのままフォークリフトのように持ち上げると、大剣は戸棚を葵に向かって投げ付ける。
(あの子、直接戸棚を動かしたり、殴りには来ぃへん? もしかして大きな物は動かせないん?)
砕けながら飛来する戸棚を危なげなくテレポートで回避しつつ、そんなことを考える。
危惧したよりも超度が低いか、自分と同じように能力を制限されているのかは分からない。
他に分かることは室内にある武器として扱えそうな物が底をついたこと、巨大な剣を自在に操る
サイコキノには迂闊に接近できないことくらいだ。
ベルカナに駆け寄るイエロー、そして空中の大剣が番犬のように葵を威嚇していた。
「……セコい真似しくさってからに!」
葵はギリギリと鳴らしながら親の仇のようにイエローを睨み付けた。
飛び回る大剣の余波で部屋の物品は砕かれ、床は台風が通った後のように散らかり放題だ。
それが意味するところは、武器になりそうな物を奪われたというだけではない。
床一面に散らばった破片は、サイコキノにとって絶好の凶器に早変わりするのだ。
室内で四方八方から襲われれば、今の自分で逃げ切れるものではない。
そしてもう一人の少女。サイコキノではなく、あっさりと押し潰された方だ。
弱いのは当然だが、あの状況で腕を掴んできた。それは、ただの悪足掻きだとは思う。
だがもしサイコキノと組んでいるエスパーだったら。そう一度意識すると疑心暗鬼になってしまう。
戦闘向きでなければテレパスか、でなければサイコメトリーか。
寄り添って立つイエローとベルカナの姿が、薫と紫穂の姿とダブった。
怒りに任せて飛び掛かかり、寄り添う二人を八つ裂きにすらしたくなる。
だが薫と紫穂を助けるまで無茶は出来ない、してはいけないと自己を押さえつけた。
「覚えとれよ! あんたら必ずギッタンギッタンにしたるわ!」
ドラマに出てくる関西風ヤクザのような捨て台詞を残して、葵は室外へとテレポートした。
「え、退いてくれた……良かった……」
静まり返った部屋の中で、サイコキノと誤認されたイエローが安堵の息を漏らしていた。
○ ○ ○
葵は城内を次々とテレポートを繰り返してゆく。寝室、私室、書斎、書庫その他もろもろ。
二人組のエスパーとはいえ片方は重症、部屋に出口は一つしか無く、遠くにはいけない。
城内にいるスカーレット(姉)に見つかれば、弄り殺されることだろう。
薫と紫穂のことを聞き出せなかったのは辛いが、仕方がない。
どうせ本当の事を言うとも限らないのだから、最初から躊躇せず殺せばよかったのだ。
あんな二人組にどうこうされる薫と紫穂ではないだろう。今はそう信じるしかない。
(でも、あいつら見逃してええんか?)
少年の惨殺死体が脳裏に浮かぶ。今は、まだ、薫と紫穂に何もしていないのかも知れない。
だが、これから、何かするかも知れない。あの少年のように惨殺するかもしれない
(とーぜん、見逃したらアカンよなぁ)
葵は手当たり次第に目に付いた部屋に入ると中の家具を廊下へとテレポートさせていた。
既にベルカナ達のいた部屋の前には、ベッドを二つばかりテレポートさせ逃げ道を奪っている。
5分ほどで次々と近くの部屋から家具が、先程の部屋前へと積み上げられていった。
葵の悩んでいたのではない。
薫と紫穂の情報を聞き出さずに、あの少女達を殺すことを自分に納得させていたのだ。
(逃げ場はないで。防げるもんなら防いでみい)
山と詰まれた家具と、開いた形跡のない鉄扉。
その二つを前にした葵は深呼吸して心を落ち着かせて、静かに呟いた。
「死にさらせ」
質量という名の兵器を矢継ぎ早に部屋内へテレポートさせた。
たった三十センチの高さから落とすだけでも、重量だけで徐行する車並の破壊力を持つ。
無数の部屋から掻き集められたそれらが一つの部屋へ放り込まれるまで、一分も掛からなかった。
普段ならこの程度の連続テレポートなど造作もないのだが、今はやけに疲れる。
葵は乱れた息を整え、静かになった部屋の中へとテレポートした。
確認したかった。二人は死んだだろうか、もし生きていても重症は逃れないだろう。
もし生きていたなら、もう一度だけ薫と紫穂のことを聞いてみよう。
漠然とそんな事を考えていた。もしかして防がれたかも、そんな不安も心の隅にあった。
「ゴホッ、ゴホッ、やったんか?」
部屋の中は埃が舞い上がって凄い事になっていた。
もう少し待ってから入ればよかった、そんな事を考えつつ周囲に気を配る。
万が一、サイコキノが生きていても対処できるように細心の注意を払って死体を探す。
(凄い埃やなぁ、ん?)
宙を舞う埃は眩しい日光の中に、プランクトンのような幕を作っていた。
だがどこか変だ。小さな窓には鉄格子が嵌っていたはず、その影がないのだ。
壁際までテレポートすると鉄格子を外された小窓を見上げた。
(逃げられた? あんな所から?)
暫し愕然とするが、すぐに気を取り直す。絶対に逃がしはしない。
自分の黒星はチルドレンの黒星、薫と紫穂がいないからと言って負けるわけにはいかない。
そう心に誓った時、足に妙な感触を覚えた。まるでケーキを潰したような柔らかい感触。
恐る恐る視線を向けると、ドロリとした奇妙な形に拉げた物体が目に入る。
家具に潰された人間の頭が、浜辺で割られるスイカのように砕け、潰れ、飛び散っていた。
その内容物の上に葵は立っていたのだ。右か左かも分からない眼球が虚空を見つめていた。
「――――!!」
込み上げる嘔吐感を両手で押さえて無理やりに飲み込む。
覚悟はしていたが、覚悟だけでどうにか出来るものでもない。
己の意思に反して残された片膝がガクガクと笑い、身体をその場に投げ出す。
改めて潰れた頭部を見れば、頭部に青い毛髪が残っていた。これはさっきの少年の生首か。
直接殺したのが自分ではないと少し安心する反面、恨めしい表情の生首がクチャっと
潰れる様を想像して葵は身悶えた。
(こ、この子はもう、ええよ……え?)
少年の頭から視線を逸らそうとした先に、まだ人の姿をしている少女を見つけた。
壁際にいくつか積み重なった家具の隙間に助けられているようにも見える。
逃げようとして間に合わなかったサイコキノか、もう一人の方か、両方か。
(あれだけやってまだ生きとるんか? 悪運の強いやっちゃな。でもウチの勝ちや。
薫と紫穂を傷つけるような奴は、ウチが全部排除したる)
○ ○ ○
「え、退いてくれた……良かった……」
静まり返った部屋の中で、サイコキノと誤認されたイエローが溜め息を漏らした。
助かったと思うと同時に、相手の子を傷つけないで済んだという安堵も含んでいるのだろう。
「あ、ベルカナさん、大丈夫ですか?!」
「ええ大丈夫。ありがとうイエローさん、助かりましたわ」
「だ、だって血がこんなに……」
「出血しているので大袈裟に見えますけれど、幸い軽傷ですわよ。冒険者にはよくある事です」
体中から血を流し、全然大丈夫そうには見えないベルカナが平然と言い放った。
それでも心配するイエローを「大丈夫」の一言で黙らせる。精一杯の虚勢。
本当は立っているだけでも辛い、だがここでイエローに弱気を見せるわけには行かない。
「あの子、一体――」
「シー!」
――ゴトッ、ゴトッ
喋りかけたイエローの口をベルカナが塞いだ。
鉄扉の向こうで何かが動くような、何か置かれたような音だった。
(出口を塞がれましたか。となると次は―――)
冒険者もモンスターや討伐相手を洞窟や室内に閉じ込める事がある。
その後に取る代表的な方法は二つ。増援や準備万端にしての再侵攻、もしくは焼き討ちだ。
この状況で見逃してくれると考えるのは楽観的過ぎるだろう。
もしも自分が彼女のように無制限にテレポートを使えるのなら、即席で効果的な戦法は一つだ。
それに相手がテレポートを使うのでは、ここで普通に逃げても直ぐ追いつかれてしまうだろう。
「急いで逃げないといけませんわね。イエローさん、小窓の鉄格子を斬れますか?」
「うん、多分。ダイレク、お願い」
ふわりと舞い上がった魔剣が、まるで鉄格子がチョコレートであるかのように軽く切断した。
明かり取りの小窓は小さいが子供なら、小柄なイエローなら何とか通れるだろう。
それを確認したベルカナは荷物から首輪と一枚のコインを取り出し、イエローの手に握らせた。
「あなたはそこからお逃げなさい。私は多分すぐ戻ってくるあの子を引き止めてみます」
「え? やだ、そんなのやだ! 一人で逃げるなんて、ベルカナさんまでいなくなったら僕――」
「あらあら、何を勘違いしているのかしら。それは後であなたを探すための目印ですわよ」
「でも――」
納得のいかないイエローの口に、ベルカナは人差し指を当てて言葉を封じた。
イエローの耳元で時間がないこと、自分に勝算があること、二人一緒だと危険なことを
適当に含ませ、とびきりの笑顔を見せて、彼女に一人で逃げることを承諾させた。
純真なイエローを言いくるめるなど、闇市で値切るよりも容易いことだった。
「うふふ。私のいない間、悪い子に騙されちゃ駄目よ。あなたは素直すぎですからね。
ダイレク、イエローのことをお願いね」
飄々と騙している本人が警告をする。自分が一緒にいる間は騙されてもいいのだ。
少女を頼まれた魔剣はクルクルと戸惑ったように回転していた。
「はい……でも本当に大丈夫ですか……本当にまた――」
「大丈夫、魔法使いのお姉さんを信用なさい。じゃあ、また後で」
「……また、後で」
意を決めたイエローが小窓から城外へ飛び出す。下が水とはいえ城の四階、十分危険な高さ。
だがシルフェのフードが風を巻き上げ、彼女の身体を押し上げると足元にダイレクが滑り込む。
魔剣に乗った彼女は、まるで風の波でサーフィンでもするかのように空を駆けて行った。
(さて、私も悪足掻きをしますか)
ベルカナは少し躊躇した後、拾ったガラス片を胸元から下へ滑らせ、一気に衣服を切り裂く。
まだ男に見せた事のない白い肌、揺れるほどない小振りな胸は流れ出る血と傷に汚されている。
幸いにして幾多の裂傷は致命的ではない。だが服と共に傷口から追い出されたガラス片達は
更なる流血の花を置き土産としていった。治療せずにいれば長くは持たない。
このまま時間が立てば鮮血で編んだドレスで着飾ることになるだろう。
傷の重さを知りつつも、ベルカナは下着をも切り裂いて一糸纏わぬ姿を晒した。
お調子者の貧弱盗賊が覗いていないかと少し背筋が寒くなったが、服を脱いだからだろう。
どうせ自分の裸を晒すわけではないから全裸でもいいか、そう考えていたのだが、
やはり気恥ずかしさを感じ、汚れが少ないシーツを身に纏う。
服を切り裂いた行為に特に意味はない。ただ脱ぐ時間が惜しかっただけだ。
脱ぎ掛けで死ぬなんて、全裸で死ぬよりも恥ずかしい。
切り裂いた衣服は、見つからないように砕けた戸棚の影へと放り込んだ。
装備品もまとめてランドセルに放り込み、丈のランドセルと一緒に投げ出す。
(後は気力と――運次第ですわね)
ふとイエローに幸運を呼ぶコインを渡したことを思い出す。
後で居場所を探すロケーション用だったが、彼女が自分の幸運を持ってくのなら悪くない。
イエローに吹き込んだように勝算はある。多くて一割か二割。上手くいけば一石三鳥な作戦。
問題は生存率が五割以下と予想できる上に、生き延びても後は運任せ、他人任せなことだ。
それでも高確率で足止めになることを考慮すれば、悪くはない作戦だと思う。
他の方法も考えたが、正面から迎え討てる相手ならイエローを先に逃がしたりはしない。
(上手くいったら御喝采)
ベルカナは自分の腕にガラス片を突き立てた。鋭い痛みが頭に響く。
多少回復したとはいえ残りの精神力は少ない、というかハッキリ言って足りない。
魔法を使った後に気絶しては元も子もないのだが、そもそも魔法が発動するかも怪しい。
だからといって諦めるわけにはいかない。足りなければ搾り出す。無理矢理にでも。
ベルカナは残された経験点を精神力へ注ぎ込むかのように、痛みで意識を支えて詠唱した。
――シェイプ・チェンジ
それは術者を全く別の存在に変身させる魔法。ベルカナの小柄な身体が、手足が縮んでゆく。
長い栗色の髪は赤みを帯びて短く、発展途上と言い張る小振りな胸もまな板へと萎む。
一瞬で女性を感じさせていたベルカナの肢体は、二次性徴期前の少女のものへと変貌した。
(長くは……意識が……持たない……か)
少女の綺麗な腕にガラス片を突き立て、ベルカナは辛うじて己を現実へ縛り付ける。
先程の魔法でベルカナの精神力は限界を迎えていた。
一瞬でも気を抜けば、死神に根こそぎ意識を刈り取られ、そのまま目覚めない事だろう。
姿を変えてからどれだけ経過したか。数秒か、数分か? 霞む意識では分からない。
何も無い空間から戸棚が、本棚が、ベッドが現れては床に叩き付けられてゆく。
思ったよりも早く、もしくは遅くあの少女が準備万端で殺しに来たのだ。
(やはり……そう……来ました……か)
歯を食い縛って虚空を睨むが容赦なく視界は霞み、壁を背にズルズルと倒れこんでしまう。
『き、君はまだこっちに来ちゃいけない! 頑張ってくれ!』
幻聴か、城戸丈の声が聞こえたような気がした。
そんなことは言われなくても分かってる。だからあなたは安心して眠りなさい。
目の前の床に転がっている城戸丈の首に向かって、そう視線で答える。
空元気でも声を出せる余裕は残っていない。
頭上から襲い来る凶器に残された全ての気力を叩き付け、そしてベルカナは意識を失った。
○ ○ ○
「何があったん!? しっかりせい! ウチや、葵や!」
葵は折り重なった家具の隙間にいた少女へ必死に呼びかけていた。
彼女の頭には、先程までの物騒な考えなど微塵も残っていない。
家具の山から少女を助け出し、力一杯に抱きしめていた。
なぜなら、その少女は人を殺してでも守ろうとした大切な仲間だから。
見間違えるはずは無い。明石薫だ。親よりも長く付き合っている仲間。
彼女が何故ここにいるかなど、深くは考える余裕は無かった。
抑えていた色々な感情が、最も大切な仲間と再会できたことで爆発していたのだ。
「起きろや薫! あいつらにナニされたん!? 返事せぇよ!」
必死に薫へ呼びかけるが、意識の戻る気配は一向に無い。
薫の身体には無数の打ち身と裂傷はあるが大きな外傷は見当たらず、骨折も無いようだった。
拷問でもされたのか腕を刃物で抉られた傷が残っているが、命に別状は無いだろう。
それなのに薫の意識は戻らなかった。
平らな胸にそっと手を当てるとトクン、トクンと温かい生命の鼓動を感じられる。
生きている、その穏やかなリズムは葵の心を落ち着けていく。
そうだ。薫や紫穂が死ぬわけない。大丈夫、すぐに紫穂も見つかる。
なぜなら薫は見つかったのだから。そして自分と薫の二人が探すのだから、すぐに見つかる。
「相変わらず、アンタはねぼすけやなぁ。ええわ、ウチが守ったるからゆっくり寝とき」
腕に抱いた薫の頬を軽く指先でつつく。普段は騒々しいが寝顔は天使のように可愛らしい。
葵は薫の体を優しく拭う。バベルの制服を着ていたはずなのに、シーツの下は何故か全裸だった。
あの二人にどんな酷い事をされたのだろう。もう少し遅かったら、そう考えただけでも恐ろしい。
偶然ここに気が付かなかったら、今頃は青髪の少年のようにされていたのだろう。
あの少女がバベルの制服を知っていたのは、薫を脱がして酷い事をしたからだ。
猟奇殺人のイメージから、あの二人に性的な暴行を受ける最悪の事態を思い浮かべて――
しまいそうだったが、葵の乏しい性知識では薫が二人にセクハラしている姿しか浮かばなかった。
とにかくあの二入が薫に酷い事をしたに違いない。
「起きたら一緒に紫穂を探そうな。ウチらなら直ぐ見つかるに決まっとる。
そんで三人揃って、あの女達をぎったんぎったんに仕返ししたろうな」
自分の腕に抱いている薫が、殺意を向ける相手ベルカナ本人だとは想像もしていなかった。
○ ○ ○
その頃『本物』の明石薫はというと――
「あっちゃー、こっちに飛んでったと思ったんだけどな。」
飛翔するゲイボルグを人影と勘違いした薫は、槍の飛んでいった方向、南へ向かっていた。
湖上でキョロキョロと周囲を見回すが、湖の周辺に人影は見当たらない。
視力が完全に回復する前に無理して追いかけたため、あっさりとゲイボルグを見失っていたのだ。
湖の中に、ダムに飲み込まれた廃村のような街を見つけた薫は、ジーッと湖底を見つめる。
少し顔を水に突っ込んで探して見てみたが、すぐに飽きた。
「水の中に人がいるわけないよなー。向こう岸に降りたのかな……ん、なんだありゃ」
波も少ない湖上を静かに漂う赤い宝石に薫は首を傾げた。なんで宝石が浮いているんだろ?
それは見る者を安心させるような柔らかな光を発して、薫の視線を静かに受け止めていた。
【E-6/湖上(飛行中)/1日目/昼】
【明石薫@絶対可憐チルドレン】
[状態]:ぐっすり眠って疲労は回復。右足打撲。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、バレッタ人形@ヴァンパイアセイヴァー
[思考]:何だろ、これ? さっきの影は何処に行っちゃったんだろ?
第一行動方針:葵や紫穂を探す。二人に危害を加える奴は容赦しない
第ニ行動方針:とりあえず、あの女(ベルカナ)に仕返しをする
最終行動方針:ジェダをぶっ飛ばして三人で帰る
[備考]: 湖上のローザミスティカ(翠星石)を発見しました
上空を南に飛んでゆくゲイボルグを人影と誤認した上、見失っています。
(横に投げて太陽光が城内に入ったのでゲイボルグを南方向きに投げたと判断しました)。
【F-3/城外(空)/1日目/昼】
【イエロー・デ・トキワグローブ@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:擦り傷多少、破ったシーツを身体に巻きつけた、深い悲しみ
[装備]:シルフェのフード@ベルセルク、魔剣ダイレク@ヴァンパイアセイヴァー
おみやげのコイン@MOTHER2
[道具]:スケッチブック、基本支給品、首輪@城戸丈、
[思考]:ベルカナさん……大丈夫ですよね? 絶対また会えますよね?
第一行動方針:城から離れる
第二行動方針:レッド達と合流し、このゲームを破る方法を考える
第三行動方針:丈の友人と合流し伝言を伝え、協力を仰ぐ
第四行動方針:丈の首輪を調べる。または調べる事の出来る人間を探す。
基本行動方針:ゲームには絶対乗らない
参戦時期:2章終了時点(四天王との最終決戦後。まだレッドに自分の正体を明かしていない)
[備考]:魔剣ダイレクのソードエレメンタル系は魔力を必要とするため使用不可
魔剣ダイレクとシルフェのフードを併用して飛行中(風で跳んで、ダイレクで滑空を繰り返し)
イエローの進行方向は次の書き手さん任せです
【F-3/城の一室/1日目/昼】
【野上葵@絶対可憐チルドレン】
[状態]:左足損失、超能力の連続使用による疲労、安堵感
[装備]:無し
[道具]:支給品一式、懐中時計型航時機『カシオペア』@魔法先生ネギま!、飛翔の蝙也の翼@るろうに剣心
ベルカナのランドセル(基本支給品、黙陣の戦弓@サモンナイト3、返響器@ヴァンパイアセイヴァー)
[思考]:良かった。薫が無事でホンマに良かった。
第一行動方針:薫はウチが守ったる
第ニ行動方針:薫と一緒に志穂を探す
第三行動方針:レミリアかフランドールに出くわしたら、逃げる
第四行動方針:逃げた変質者(ベルカナとイエロー)は必ずぎったんぎったんにしたる
基本行動方針:三人揃って皆本のところに帰りたい
[備考]:ベルカナが変身した明石薫を本物だと思い込んでいます。
イエローをサイコキノ、ベルカナも何らかのエスパーと認識しました。
なお二人が城戸丈を猟奇的に殺害し、薫に暴行をしたと思っています。
・テレポートについて
葵のテレポートは有効活用すると「装備取り上げ」や「石の中にいる」が強力過ぎと判断し
「意識のある参加者(&身に着けている所持品)は当事者の同意無しでは転移不可」として描写しています。
【偽明石薫(ベルカナ=ライザナーザ@新ソードワールドリプレイ集NEXT)】
[状態]:気絶、明石薫に変身中。左腕に切り傷、全身に軽い打撲や裂傷
[装備]:全裸(シーツを羽織っている)、
[道具]:なし
[思考]:気絶中(ベタだけど記憶喪失のふりでもしようかしら)
第一行動方針:明石薫のふりをして、この場を切り抜ける
第二行動方針:イエローと合流し、丈からの依頼を果たせるよう努力はする(無理はしない)
第三行動方針:仲間集め(イエローと丈の友人の捜索。ただし簡単には信用はしない)
基本行動方針:ジェダを倒してミッションクリア
参戦時期:原作7巻終了後
[備考]:制限に加え魔法発動体が無い為、攻撃魔法の威力は激減しています。
変身魔法を解除した場合、本来の状態(骨折数箇所、裂傷多数、他)に戻ります。
鉄扉に魔法が掛かっている為、ベルカナ以外は解呪か扉を破壊するかしないと開きません。
・「シェイプ・チェンジ」について
明石薫に変身しています。持続時間は永続(本人の任意で解除)で精神以外は完全に薫です。
超能力もコピーされていますが、経験不足なので消耗は激しい上、使い分けは出来ません。
健康体(もう怪我したけど)の薫に変身したため、ベルカナ自身の怪我は一時消えています。
魔法を解除した場合、本来の状態(骨折数箇所、裂傷多数、他)に戻ります。
明石薫、野上葵、イエロー、ベルカナを投下完了しました
予約期限をオーバーして本当に申し訳ありません。
ゲイボルグの飛んだ方向と葵のテレポートについて勝手な解釈と制限をしていますので、
ご指摘やご意見をお願いします。
気が付いたら自己最長になっていた。4人だけなのに……
投下乙!
GUN道とムスカのダブルでお茶を吹かされ、
エスパーバトル(?)に手に汗握り、
ベルカナにどきどきしつつ、助かったことに安堵。
薫といいベルカナといい、ここ何気に死者スレとのリンクが多いなw
前半で送信してしまった……。
ゲイボルグは南行きか。イリヤあたりが目にしたら面白いかな?
翠の子のローザミスティカフラグも回収されそうでGJ
……イエローの行き先が西の森だったらいいなw
プレセアに追われた挙句レッドの死体に遭遇したらいいさ(゚∀゚)
そう来たか……!
GJ。
葵もベルカナも力の使い方が上手いな。イエローも頑張れ。
ところでシェイプチェンジって(一時的)回復にも使えるんだっけ?
最大生命力が変身後合わせになった覚えは有るんだけど。
二人共 乙・華麗様
それと、質問なのですが魔剣ソウルイーターの効果って何でしたっけ?
>>284 仰るとおり調べなおしてみたら完全版だとダメージは引継ぎでした。すみません。
ペラペラーズは完全版ルールですよね。旧版ベーシックの記憶を参考にしていました。
他に大きな不備がなければニ、三日中にその辺を修正して、修正スレに部分投下させて頂きます
>>281 投下乙。逃げたとみせかけてサクッと集中放火って恐いな。本当にサポートキャラかよw
魔剣型ポケモンを振り回すイエローは葵の常識だとエスパーに見えるよな。
ベルカナは葵や薫を悪魔っぽくみてるし、世界観の違いが出てると思った。
あと丈、死んだ後も活躍ご苦労さん。安らかに眠れ
>>285 したらばによるとファフニールに変更になったっぽい。
まあどっちも人一人とどめ刺すごとに僅かに攻撃力うpだったかな
投下乙
序盤も恐怖のおでん屋にうぉ、まぶし!でいろんなタネを
しこんでるのがいいですな
>>288 情報サンクス
まとめサイトを見直してきます
相変わらずこのロワ、エロいな
GJだがどうしてもここの書き手は脱がしたいようでww
特に、シェイプチェンジであんな描写ねーよw
…ところでひとつだけ
イエローの念動力って、周りの物に影響与えたことあったかなぁ?
>>291 あれはシルフェのフードじゃね? 部屋の中で風が吹くとは思わないだろうし
アニメとかでも室内で風が吹くような演出が入ったら普通は闘気とかオーラとかだもんなw
上手いこと偽エスパーになってる
ヘヴィD!「よっしゃ終わったぜ!」
レオモン「こちらも!」
ふみこ「ご苦労様、これで『書き手紹介』のページにSSがリンクされたわね」
レオモン「ええ94話分まで。これも
>>238や
>>243のご助力があればこそ」
ヘヴィD!「何にせよ、これで以前のSSにも個別で感想が書き込めるって寸法よ」
神楽「お前らネタキャラのクセに意外と働き者あるな。アニロワのパクリあるが」
レオモン「そりゃあ、参加者どころか――」
ヘヴィD!「見せしめでもないから、たまには役に立たないと忘れられちまうし」
レッド「結構、気にしてたんだな二人とも」
ふみこ「二人とも、書き手リストに『氏』が入っていないんだけど、どういうことかしら」
レオモン「え、いや、それは、あの――」
ヘヴィD!「あれは俺達じゃ――」
ふみこ「問答無用。どうせ他にも間違ってると思うから、指摘が来るまで死者スレで待機しときなさい」
ちよ「鬼ですね」
サトシ「うん、いつもの事だけどね」
誤爆乙
バイトから帰ったら二作も!お二方GJ。
>>259 弥彦泥沼だな。仲間が死んでいるわけでもないのに何て幸薄いやつだ。
>>281 全員あまり知らないキャラだから逆に次にどんな能力が出てくるのか気になる展開でした。
>>295 何を隠そう、リストに氏を付けなかったのは私だ!決して面倒くさかったとか気力が足りなかったわけ
ではないぞ!ふみこのお仕置きとジャイアンリサイタルは勘弁な!
…悪ノリしすぎた。何はともあれ
>>295も乙です。
ヴィクトリア、しんべヱを予約。
ローザミスティカフラグ拾われた……orz
期限を過ぎてなお、まだ時間がかかりそうで本当に申し訳ないです。
もし、ベルフラウやみか先生を動かしたい方がいらっしゃいましたら、
気にせず上書き予約してしまってください。
アルルゥ、レミリア、プレセアを予約します。
なんか
>>290見て激しい悪寒が………
続き続き…
>>259 今さらだけど、もしや別トリでアニロワで書いてたりしませんか?
トウカという言葉が普通に出てくるあたりw
文見て判断する力はないし、追求する気も特定する気もないけど少し気になった。
もしバトロワでデスノートが出るんなら、どれくらいの制限が必要なんだろ
>>303 ・顔を知っている事
・対象の名前を対象の所属する国の言語で正しく記述する
この二点だけでかなり死ねる
特に後者、現状の「なあなあ翻訳コンニャク(読み書き両方)」状態がなかったらまず無理
305 :
259:2007/03/15(木) 20:21:33 ID:BgBcyLo7
>>302 投下をカタカナ表記にしてたの、指摘されて気付いたよw
あそこは知らないキャラが多すぎるんで、読み専です。
書こうかな?と思わないではないけど、今更手出しするのも気が引けて
どうにも今日中には投下できそうにもない……
すみませんが、予約延長をお願いできないでしょうか?
多分後1日あれば完成できると思いますので……
迷惑かけて本当にすみませんorz
>>306 焦らずに頑張ってください
>>291 短篇集のどれかで似た感じの変身解除描写はあった気はする。
なのは勢もアニメOP風にバリアジャケット装着描写をするんだろうかw
>>306 大人数を扱うということで大変でしょうし、頑張ってくださいませ。
>>307 デバイス持ちのフランドールやタバサやイリヤも、
アニメ風のバリアジャケット装着描写があるのかもな。
作中でそれをこってり描写してくれる神はいないものかw
しかし、デバイスの持ち手は見事にロリばかり……ひとりくらい、ショタにデバイスを持たせて変身させてみたかったなあ
ヴィクトリアとしんべヱを投下します。
葉が青々と生い茂る樹木の下で、膝の上に紙の束を広げる少女が一人。
少女は丁寧に紙の束を捲り、一枚一枚じっくりと検分していく。
最後の一枚を隅から隅まで見つめた後、少女は深い溜息をついた。
「結局、首輪の解析・解体に使えそうな支給品はなし、か。ジェダもそこまで馬鹿というわけではないみたいね……」
長時間酷使した瞼を閉じ、んっ、と背伸びを一つ。膝の上のアイテムリストがパラパラと音を立てる。
首輪の解除に関する情報が少しでもあればと思い、改めて目を通してみたが不発に終わってしまった。
解析系の支給品はせいぜい出力端子がないノートパソコンぐらいで、他は殺し合いのための武器ばかりだ。
まあ、ふざけた支給品も同じくらいの数あるが。
「となると、他の参加者頼みってことか……」
ジェダが錬金術すら超える能力を持っているのは間違いない。
それと同じように、他の参加者の中にも未知の能力を秘めた人物が存在する。
そう、始まりの広間でジェダに立ち向かった女のように。
エマーソンの格言ではないが、無知な者が物事を成そうとするほど馬鹿なことはない。そして、私はジェダの能力について無知だ。
しかし、他の参加者も全員無知であるとは限らない。
ジェダの能力、あるいはジェダに対抗できる能力を知っている参加者がいる可能性もある。
そんな参加者達から情報、特に遠隔操作や自動発動系の能力のことを聞き出すことが首輪解除には必須だ。
なぜなら、おそらく首輪には高い確率で未知の技術が使われているからである。それも、私が知らないような技術が。
簡単に解けてしまうようなものならばゲーム自体が成り立たない。
「私の知識と技術だけじゃ首輪解除には程遠いし、やっぱり仲間探しが急務ね。“あの支給品”が手元にあればよかったんだけど……」
アイテムリストに載っていた支給品のことを思い浮かべる。
その支給品の名は『詳細名簿』。参加者の詳細なデータが記載されているという支給品。
この支給品があれば、首輪解除や島の脱出に役立つ能力を持つ参加者を調べられるだけでなく、
危険な参加者、参加者間の関係、参加者の出身など重要な情報もわかるという優れものだ。
「って、ないものねだりしても仕方ないか。一人一人地道に見極めていくしかないわ」
アイテムリストをデイパックにしまい、立ち上がってお尻をはたく。
隠れていた木陰を後にして南下を開始。隠密行動を基本として、見込みのありそうな参加者がいたら……
「モッチョレーッ!」
いたら……
「キロキローッ!」
……
「トッピロキーッ!」
断言するという行為はそれほど好きではないけど、この奇声を発している参加者は絶対に役に立たない。
「ウニョラーッ!」
青い忍者服を着た男の子が蝶々を追いかけている。
短い手足をバタバタと動かし、太った身体をゴム鞠のように跳ねさせ、子猫のごとく蝶々に飛びついては落ち、飛びついては落ち。
ああ、頭の可哀相な子なんだな。こんな子まで参加させるなんてジェダ許すまじ、と嘯いてみるが、つまらなかったので4秒でやめる。
ドタドタと走る蝶追い人が過ぎ去るのを見送り、身を起こす。
君子危うきに近寄らず。私は何も見なかった。
数十分後、メルヘンな少年の光景を脳内から消去しつつ、私は慎重に歩を進めていた。
見つからないように、気付かれないように……
と、道上にランドセルが落ちているのが目に入った。蓋が開き、中身がいくつか飛び出している。
……明らかに怪しい。怪しすぎる。
ランドセルから30m程度離れた地点で様子見るが、周りに怪しい人影はない。
そのままランドセルを中心とした円を描くように一周。怪しい人影はない。
人間の何倍もの視力を誇るホムンクルスの目で狙撃ポイントを探す。やはり怪しい人影はない。
ランドセルに向けて石を投げる。罠は発動しない。
小枝を投げる。罠は発動しない。
自分のランドセルを投げる。やはり罠は発動しない。
そこまでして、ようやくランドセルに近づいた。その中身は……
「……うそ」
出来すぎだ、出来すぎてる。詳細名簿がここまで簡単に手に入るなんてご都合主義もいいところだ。
反射的に周りを見渡すが、やはり誰もいない。誰もいない、はず。
ジェダが嘲笑っているような幻聴を振り払い、ランドセルを検分する。
詳細名簿の他に入っているのは……これは『天空の剣』か。
確か、アイテムリストに『勇者しか装備できない』と書いてあった剣だ。試しに鞘から引き抜こうとしてもビクともしない。
しかし、“勇者”。なんとも曖昧な表現だ。まさか勇気あるものという意味でもないだろうし。
……この名簿、さっそく使ってみようかな。
道の脇に腰を下ろし、手に入れたばかりの詳細名簿を捲る。
超能力者……獣使い……コソ泥……坊主……忍者……犬神使い……ホムンクルス?
(へえ、私の他にもホムンクルスが参加していたの……生まれつきのホムンクルスですって!?)
確かに『ホムンクルス』を辞書で引くと『人造人間』と書かれているが、私が知っている『ホムンクルス』は違う。
人間型ホムンクルスは全て元人間の成れの果てのはず。それなのに“生まれつき”?
動揺したまま資料を読み進めると、特異なホムンクルスの正体がだんだんとわかってきた。
名簿順11番の少女は、私が知っているホムンクルスとはそもそも定義からして違うらしい。
私とは全く違う方法でホムンクルスになった少女……魔術回路と魔眼を持つ生粋の人造人間。
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、か。
いけない、横道に逸れてしまった。今はとりあえず勇者のことを調べましょう。
生体兵器……吸血鬼……人形……魔法使い……暗殺者……魔神契約者……勇者、こいつか。
ニケ、ね。マヌケな顔してるけど本当に勇者なのかしら?
えっと、プロフィールは……
「モニョレーッ!」
「あッ!?」
軽く持っていただけの詳細名簿が突然の衝撃に吹き飛ばされ、手元を離れて宙を舞う。
背中に突撃してきた肉の塊がその名簿を一瞬で掴み取り、一目散に駆け出した。
あの背中は……さっきの蝶々坊主! まだこの辺りをうろついていたの!?
「くっ……待ちなさい!」
静止の声に振り向いた襲撃者の顔は、なんとも形容し難いものだった。
黒目が異様に大きいネコのような眼は見開かれ、口は獣を思わせる形で半笑いの状態を維持している。
こいつのプロフィールを先に見ておくべきだった……!
【しんべヱはようすをみている】
道路上で、敵意を顕わにして睨み合う。
見つかってしまったものはしょうがない、問題はどう行動するかだ。
この手の相手には言葉が通じないと相場が決まっているから、交渉の余地があるとは思えない。
ならば、いっそ先制攻撃で……
「キロキローッ!」
【しんべヱはにげだした!】
「本当に行動パターンが読めないわね!」
遠ざかる背中を視界に納めたまま、二つのランドセルを引っ掴む。
そのまま追跡のための足を踏み出そうとして……やめた。
(ここで焦ったら、終わる)
奇声を発しながら逃げる少年を追跡するという行為はどれほど目立つだろうか?
棚ぼたで手に入れた詳細名簿に固執した結果、狩人に見つかって殺されるのは御免だ。
今回のことは明らかに私の失敗。名簿を読むのに夢中になって周囲への警戒を疎かにしたという痛恨のミス。
むしろ、何の怪我もなかったことに感謝するべきかもしれない。そのまま殺されていた可能性も十分に有り得るのだから。
隠れ潜むことが私の本分。それを忘れてはいけない。
今回の失敗を肝に銘じ、緩みそうになった心を戒める。
今度こそ慎重に慎重を期して……
「ウニョラーッ!」
遠くで、蝶々を追いかけていた肉の塊が立木に正面衝突していた。
(あの様子なら、詳細名簿もどこかで落とすかもしれないわね……)
大声を出しながら動いているから追跡は簡単だが、その分他の参加者に対しても目立つ目立つ。
そうなると、私自身が見つかってしまう危険性も高くなる。
いや、仲間探しが目的なんだからかえって好都合なのかしら……?
「トッピロキーッ!」
遠くで響く解読不可能な奇声が、不愉快な雑音として耳朶を打った。
【H-3/道路/1日目/午前】
【ヴィクトリア=パワード@武装錬金】
[状態]:健康/満腹
[装備]:なし
[道具]:アイテムリスト、天空の剣@ドラゴンクエストX、基本支給品×2(食料−1)、首輪
[服装]:制服の妙なの羽織った姿、返り血無し
[思考]:あの舌、食い千切ってやろうかしら?
第一行動方針:男の子(しんべヱ)を追いかけて詳細名簿を取り戻すかどうか迷っている。
第二行動方針:首輪を外す。主催者の目的について考える。
第二行動方針:“信用できてかつ有能な”仲間を捜す。 ホムンクルスのイリヤに興味。
基本行動方針:まずは様子見
参戦時期:母を看取った後
[備考]:能力制限は再生能力及び運動能力の低下、左胸の章印を破壊されたら武器を問わず死ぬ。
ジョーカーの存在を疑っています。
『01:明石薫〜46:ニケ』の顔写真とプロフィールにざっと目を通しました。
【G-4/草原/一日目/午前】
【福富しんべヱ@落第忍者乱太郎】
[状態]:凶暴化
[装備]:なし
[道具]:詳細名簿(手で掴んでいる)
[思考]:ウニョラー
[備考]:凶暴化は数時間経つか、呪いを解く効果のある魔法や道具で治ります
投下終了しました。
投下乙です。
しんべヱに翻弄されるヴィクトリアが微笑ましくもあり、この先どう転がるか不安でもあり。
生暖かく和まされたあとはヴィクトリアの状態表の思考にガクブル。
ニケが地味にキーパーソンにw
しかし、解析アイテムは(ヴィクトリアの知識の範囲内では)ノーパソしかないのか……
彼女の知識の範囲外であろう魔法のアイテムが脱出の鍵になるのか?
そしてしんべヱ、あと数時間もこのまんまかよwwwwwテラカワイソスwwwww
和んだ……w
しんべヱと振り回されるヴィクトリアがなんだか可愛い。
真面目なんだけど真面目なだけに和むなあ。
一点だけ、首輪解除のアイテムがノートパソコンのみに確定するのはまずいかも。
この先に何が出るか判らないし。
『殆ど無い、例えばノートパソコンとか』という感じのぼかした表現にしておいてはどうでしょうか。
>>317 了解しました。採用された場合、wikiにて修正します。
乙です。同作からの参加者が少ないロワだから、ホムンクルス繋がりで関わりを持たせるのはナイス。
>>318乙。
ヴィクトリアの冷静さが伝わってくる感じでした。
ところで天空の剣は勇者だと鞘から抜けないのではなく、
勇者でないと大人が二人がかりでやっとこさ運べる重量となる設定だったかと。
>>320 ゲームだけじゃイマイチ設定がはっきりしないのでマンガ(ガンガンコミックスの天空物語)を参考にしました。
そこに「大人二人でやっと運べる」「伝説の勇者にしか抜けない(1巻43ページ)」とあったのでその設定を流用したんですが、
マンガの設定使うのはマズかったですかね?
乙ー。
天空の剣の設定は普通に問題ないかと。
ゲームシステムが色濃く出てるこのロワでは、
「そうびできない」でも面白いかもしれんけど。
ところで天空物語で思い出したが、
正直レックス&タバサより、テン&ソラの方が良かっ(ry
予約期限を大幅に過ぎてしまってすみませんでした。
ベルフラウとみか先生、投下します!
……ちょっと訳あって、ベルフラウとみか先生の最後の時間が「午前/昼」とずれてしまってるので
前半と後半(ベルフラウside&みかside)でお送りします。
聳え立つ廃ビルの森、その北岸沿いに面するビルの陰で、二人の少女が朝陽に輝く湖を眺めていた。
遠くからは、殺し合いなんてしちゃいけないと、呼びかけの声が響き続けている。
(どうしてこんなことになっちゃったんだろう……)
怯えも戸惑いも一過して、みかはあらためて茫洋とせざるをえない。
ここが、ぜんぜん違う世界で。
もとの世界に帰れないかもしれないなんて。
そのうえ、殺し合いをしろなんて。
ベルフラウとの情報交換により知った現状は全く良いものではなくて、むしろ絶望的で、
しだいに気分が重く暗くなってくる。
「うう……だいたい、私、「幼子」じゃないのに……。なんでぇ……」
「いつまでめそめそしてますの! 子供じゃないっていうなら、もっとしっかりなさいな!」
「う……」
年下の子にまで叱咤されるのが情けない。
自分は大人で、先生なんだから、しっかりしなくちゃ。
みかだってそう思わないわけじゃない。
……でもやっぱり、怖いものは怖いし、不安なものは不安なのだ。
そしてそれはベルフラウも同じようで、気丈な言動は自信からくるものではなく、
むしろつついたら壊れてしまいそうな、子供の意地だけでもっているように思えた。
みかも先生として、子供のそういう心理がなんとなく見えてしまうのだが、
さりとて何をしてあげられるわけでもないのが歯がゆい。
ふと目を上げて、みかはベルフラウが何かいじっているのに気づいた。
「ベルフラウちゃん……なにしてるの?」
「さっきの男の子が落としていった銃よ。使えないかと思って拾ったんだけど……」
「もしかして、銃とか使ったことあるの?」
金髪碧眼。外国人じみた容貌から、もしかしたら銃とか使ったことあるのかな?
と安直な推測をして聞いてみたが、ベルフラウは整った眉をしかめて首を横に振った。
「いいえ。私、銃器の扱いのたしなみはありませんし……
でも、身近に銃の扱いに長けたひとはいましたし、見よう見まねでなんとかならないものかと思って」
永沢の落とした銃をためつすがめつし、ベルフラウは首をひねる。
(こんな感じ……? ……ソノラはどうやって撃ってたかしら……)
形だけ構えてみるものの、やはり慣れた弓と違って勝手がよくわからず心許ない。
こんなことになるんだったら、ソノラに銃の使い方を教えてもらうんだったかしら――。
みかはそれを戦々恐々として凝視している。
生で見たことこそないものの、銃器の危険さは常識として知っている。
ベルフラウの銃をいじくる手は、みかの素人目に見てもどうも危なっかしさがぬぐえない。
大人の自分が持ったほうがいいのかもしれないと思うが、没収を言い出すタイミングがつかめなかった。
下手に取り上げようとしたら、よくないことになりそうで……正直に言うと、なにかのはずみに
ベルフラウが自分に銃を向けてくるかもしれないんじゃないか、という恐怖があって、みかはなかなか切り出せないでいた。
やがて、ベルフラウは銃をいじくり回すのをやめた。
どうやら無理そうだと諦めたらしい。
銃を手のひらに乗せたまま、おもむろにみかに声をかける。
「……貴方、銃は扱える?」
「え? む、むり……じゃない!」
言いかけて、みかはあわてて言い直す。
ようやくタイミングが来たのだ。みかはお臍の下あたりに力をいれて、覚悟を決める。
「む、無理じゃないよ! こう見えても私、銃ならちょっと使えるんだから!
だから、ね? ……もしよかったら、それ、私に持たせてくれないかな?」
ぐっと小さな握りこぶしをつくり、精一杯頼もしさを装ってみせながら喋る。
大嘘である。
みかは本物の銃など、撃ったことどころか触ったことさえない。
経験と呼べるものはせいぜい縁日の射的のオモチャの銃ぐらいで、それすらも上手なほうではなかった。
それでも、みかは大人として、教師として、子供の手から危険な銃を取り上げようと必死だった。
「……本当ですわね?」
ベルフラウは半信半疑といった表情でみかを見つめていたが、それでも
信頼してみようという気になってくれたのか、気乗りしない様子ながらも銃をみかに手渡した。
みかはそれを慎重に受け取り、思わず声をあげる。
「あ……」
オモチャのような外見に反し、ずっしりと重い。
本物なんだ。
いまさらのように実感し、みかは背筋が寒くなる。
子供にこんなもの、持たせちゃよくないよ……。
銃を見つめながら、みかは怒りとも悲しみともつかない、もやっとした不快感を覚えた。
「どうしましたの?」
ベルフラウが不安げにこちらを凝視しているのを感じて、みかはさっきと立場が逆になったことに気づく。
ベルフラウの視線に含まれているのは、みかが何かのはずみで自分に銃を向けるんじゃないか――
――そういう、微かな緊張と恐怖。
「あ、う、ううん、なんでもないよ」
みかは慌てて首を振ってみせたものの、ベルフラウの表情はまだどこか不信を残している。
それに真っ向向き合うことができなくて、みかは顔を伏せて手のひらの銃に意識を向ける。
(どうしようかなあ……これ。手に持ったままじゃ危ないよね)
銃をうまく没収したはいいものの、今度は取り扱いに困る。
映画でよく女優さんがやってるみたいに、太ももに巻いたベルトにはさんで携帯する、
なんて方法をさっきまでは考えていたが、この重さだと歩いているうちにうっかり落としそうで危なくてできない。
結局ランドセルに銃をしまいながら、みかは呟く。
「やっぱり、現実と映画って違うよね」
「エイガ?」
「お話と違って、殺し合いって簡単なものじゃないってことだよ」
「…………」
重苦しい沈黙がおりる。
今はいない仲良しの召喚獣のかわりに赤いランドセルを抱きしめてうつむいていたベルフラウが頭をもたげ、
おもむろに湖の東側に目を留めて呟いた。
「……あの霧が動いてますわね。さっきは向こう岸の建物のあたりにあったのに」
気まずい沈黙に耐えかねていたみかも、ベルフラウのほうから振られた話の種に飛びついた。
「う、うん……ヘンだよね、あれ。カタマリになって動いてるし」
「なにかしらね? 自然のものにしては動きがおかしいけど、サプレスの霊なら、ちゃんと形があるはずなのに
……キュウマの使ってた、シルターンの忍術みたいなものなのかしら?」
「忍術……煙幕とか、毒の霧とか、そういうのってこと?」
「そうかもしれませんわね」
真紅の発生させる『アリス・イン・ワンダーランド』の霧を見つめ、その中で始まらんとしている戦闘も知らず
二人は指差してはあれやこれやと推測を言い合っている。
「ともかく、こっちに移動してきて正解でしたわね」
「うん……」
「…………」
「…………」
せっかく生まれた会話が、また止まってしまう。
「……これから、どうしましょうか」
「……これから、どうしたらいいのかな」
ほぼ同時に同じことを口に出し、二人は思わず顔を見合わせた。
辺りは、静かである。
みかは、ぽつりと呟く。
「……呼びかけしてた男の子の声、聞こえなくなっちゃったね」
「……そうですわね」
「……何か、あったのかなあ」
何もできない悔しさからくる苛々を奥歯ですりつぶし、ベルフラウはどこか投げやりな風で応える。
「……何か、あったんでしょ。おおかた、はぐれ召喚獣にでも襲われたんでしょう」
ベルフラウの言葉に、みかは思わず目をつむる。
最初に集められた場所にいたのが、背丈こそみかと同程度とはいえ、小さい子供ばかりだったのを思い出す。
拡声器で呼びかけしていた男の子の言葉を思い出す。
――――すると、何か、「ここでじっとしてちゃいけないんじゃないの?」という気持ちが沸いて来るのだ。
怖いけれど、殺し合いなんてできないけど、こんなところでただ隠れて震えてるのは卑怯なんじゃない――?
そんな想いが胸を去来し、いてもたってもいられない。
みかは胸をうずまく思いに突き動かされ、おずおずと切り出す。
「や……やっぱり、行ったほうがよかったんじゃない……?」
すぐに、苛立った調子の返事が跳ね返ってきた。
「行ったって、なんにもできないに決まってますでしょう!?
あなたはろくに戦えないって言うし、私だって弓もないしオニビもいなくて……。
……先生だっていないのに……」
「せ……先生なら、ここにいるよ! 私、先生だもん!」
「私の「先生」はひとりだけですわ!」
「あうっ」
ベルフラウの言葉がなにげに胸に刺さったが、気を取り直してみかは続ける。
「そ、それより! やっぱり、様子を見に行ったほうがいいんじゃないかな。
もし何かに襲われてるんだったら、助けにいかないと……その、ダメなんじゃ、ないかと……」
「私たちが行って、何ができますの?
助ける前に、自分たちの身の安全だって守りきれるかどうか分からないのに!」
ベルフラウの辛辣な言葉に怯えながらも、みかはもごもごと喋る。
「で、でもね……。これでも……こんなんでも、わたし、先生だからさ……。
……子供が殺し合いやらされるのをただ見過ごしてちゃ、先生失格だって思うんだ……」
「…………」
ベルフラウは沈黙した。
その沈黙の意味がつかめず、みかはおろおろする。
「……も、もしダメだったら、わたしひとりで行ってくるからさ……。
ベルフラウちゃんはここで待っててくれる?」
「…………」
「…………」
ベルフラウは、みかの震え気味な足元を見つめ思う。
……ああ、もう。
どうして「先生」っていうひとたちは、何でもひとりで抱え込もうとするのかしら。
ほんとうに、周りのひとの気持ちなんか、ぜんぜんわかってくれないんだから。
「ダメよ」
「う……ダメって言われたって、困るよ……」
悩む様子のみかに、ベルフラウは背を向けた。
「――あなたが、ここで待っていてくださいませ。私が行ってまいりますわ」
「…………え?」
ベルフラウの意外な言葉にきょとんとするみかを尻目に、ベルフラウは彼方に見える橋のほうを見やる。
「呼びかけが止んでから、まだそんなに時間も経っていないわね。
――今行けば、まだ間に合うかしら」
「……!」
ようやくベルフラウの意図を汲み、みかは目を見開く。
「あなたを一人で行かせるくらいなら、私一人で行ったほうがよほどいいですわ」
「だ、だめだってば! 一人で行くなんてダメだよ!」
さっきの自分のことを棚にあげて、みかが反駁する。
「あなたはさっきの着ぐるみに入って隠れていれば、いくらかは安全でしょうし」
「だめだってばっ! そんなのだめっ!」
「もう、しつこいですわねっ!」
みかの小さな肩を側のコンクリートの壁に押し付け、ベルフラウは顔を近づけて言い聞かせる。
「ろくに戦えもしない召喚獣のくせに、あまり偉そうにしないでくださいませ!」
「でも、……でも、だったら二人で行こうよ! 一人で行くことないじゃない……」
自分を棚に置いたみかの言葉をよそに、ベルフラウは自分のランドセルをごそごそと探る。
「足手まといのあなたを連れて行かなきゃならない道理はないわ」
みかは次々と投げつけられる冷たい言葉に「そんなぁ」と表情を歪ませかける。
ベルフラウはそんな様子のみかを見て、友達の泣き虫の獣人の子どもを思い出した。
思わず、表情がゆるんでしまう。
「……勘違いしないでよ?
先生とか、大人と子供とか、そんなの関係ありませんわ。私は安全な方法を取りたいだけですの」
ランドセルから取り出した一枚のカードを手に、ベルフラウは笑む。
「私の鞄に入ってたこれを使えば、安全に近寄って見てくることもできそうですし……。
……それに、これ、多分あなたは使えませんもの」
・
・
・
廃ビルの立ち並ぶ湖畔で、いかついゲテモノと紅衣の少女が向き合っている。
ゲテモノの中から、多少くぐもった可愛らしい声が響く。
「本当に大丈夫?」
紅い少女が金髪をゆらして頷く。
「大丈夫ですわよ。これでも修羅場はあの島で幾つか潜ってきてますもの。
それより、みかさんの方こそ気をつけて。
万が一の時は私のことなど気にせず、自分の身の安全をはかってくださいませ」
「うん……ベルフラウちゃんも、気をつけて。危ないことがあったら、すぐ戻ってくるんだよ?」
「お気遣い、いたみいりますわ」
心配を寄せられることへの反発と照れで、わざとそっけなく応える。
「あなたのほうこそ、しっかり気をつけるのよ?
ここではあなたの言う魔法みたいな召喚術を使ってくる人間や、危険なはぐれ召喚獣が普通にいたりするの。
だから、あなたみたいな戦う力の無いはぐれ召喚獣は特に気をつけなきゃダメ!
わかった?」
「は、はあ……」
みかの戸惑ったような返答に、ベルフラウはため息をついた。
「……それじゃ、時間も惜しいし、行ってまいりますわ」
「あ、あの!」
「なんですの?」
夷腕坊の口から身を乗り出し、みかは真面目な顔で人差し指を立ててみせた。
「その……、危ないことはしちゃだめだよ! ――先生との約束!」
”先生”という言葉に、ベルフラウの表情が複雑に揺れる。
目の前の少女は、ベルフラウの想う「先生」――赤毛の青年と、あまりにも違いすぎる。
軍学校出の元エリート、という立派な肩書きもない。武術も召喚術もからっきしに見える。
頭もそんなに良さそうにみえない。目の前の少女は、先生として、大人としてみるには、あまりにも頼りなかった。
けど、いきなり召喚されてきて右も左もわからない状況で、殺し合いなんかしなくちゃいけなくて、
自分も不安でしかたないくせに、人のことばっかり心配する。
そんな所だけは……ベルフラウの先生とそっくりで。
(人の心配ばっかりして、本当に、あなたって人は……自分の身のほうを心配しなさいよ)
ベルフラウは、意地を張りすぎた自分の対応を、少しだけ恥ずかしく思った。
「あ、あのー、もしもし? ベルフラウちゃん、聞いてる?」
ベルフラウがむっとした顔で考えこんでいるのを見て、みかが声をかけてくる。
心を読まれたわけでもないのに、ベルフラウはなんだか気恥ずかしくなって頭を振った。
「き、聞いてますわよ!
……あなたの言うことはわかりましたわ。なるべく危ないことは避けるようにします」
いったん言葉を切り、ベルフラウは腰に手を当ててみかの顔を下からのぞきこむ。
「――そのかわり、あなたも危ないことはしないで。
いい? 私が戻るまで、無事でいるのよ!
あなたが本当に先生だって言うんなら、その……子供との約束は、ぜったい破っちゃだめよ!」
「う、うん!」
みかは一瞬驚いたようすを見せたものの、すぐに頷き返した。
「それじゃあ、あらためて……行ってまいりますわ」
「気をつけてね、ベルフラウちゃん!」
「あなたこそ!」
ベルフラウは長い金髪をひるがえし、水辺に立つ。
召喚術を行使する時と同じでいいのか少々不安だったが、支給品のカードの一枚を手に、意識を集中しはじめる。
すると、はじめは小さく、やがて広く大きく――水面に波紋が広がりはじめた。
ベルフラウはカードを掲げる。
「――――『水』(ウォーティ)!」
水面が大きく波立った。
平らかだった水面から飴細工のように水の束がいくつも持ち上がり、ベルフラウの周囲へと収束し囲繞する。
(……行ってきます)
中に空気をはらんだ潜水球の中で、ベルフラウは一度だけみかの方を振り返り――
――覚悟を決めると、地面を蹴って湖水へと飛び込んでいった。
暗くゆらめく青い水の底、ベルフラウを包んだ潜水球はゆるやかな速度で橋のほうへと接近する。
魔法の効果がよく把握しきれていないため、途中で効果が切れてしまったらどうしよう、という恐怖が
最初のうちはあったが、次第にコツがわかってくるにつれ、恐怖は薄れていった。
しかし――程無くして息苦しさを感じはじめ、顔を僅かにしかめる。
(あまり長く保つものじゃありませんわね、これは……)
水球のかたちは維持できても、中の空気は無限ではないらしい。
ならば探索は迅速に行わねばならない。
途中で岸辺の草陰や橋梁の影に身を寄せて息継ぎしては、また潜って進むのを繰り返し、
ベルフラウは広い湖を水面下を移動して横断する。
水面下を移動する間、ベルフラウはこの場についての推測を思い返していた。
・
・
・
タマネギ頭の少年から辛くも助けられたのち、みかとの情報交換の結果、
ベルフラウは以下のような考察を導き出し、みかにもその内容を説明していた。
すなわち、ここはあの名もなき島と似たような場所なのではないかと。
地図を見る限りあの島とは全く違うようだし、ここがリィンバウムのどこかもわからないが、
みかのような異世界からの召喚獣をいちどきに大量に召喚するあたり、
召喚の門のような何らかの施設を使っているとみたほうがいい。
異世界の住人ではないベルフラウが喚ばれてしまったのはなんらかの事故かもしれないが、
あの島を覆う結界を無視して喚び出せたということがやや気にかかった。
なんにせよ、用意が周到すぎる。あの不気味な男ひとりで準備したものではあるまい。
島という閉鎖的な舞台。
召喚したものたちの生殺与奪を掌握することによって反抗を封じる謎の首輪。
革の背負い鞄に入れて手渡された、ベルフラウの知らない力の封じられた「魔法」のカードなどの武器。
これらのものが、たったひとりで準備できるとは思えない。
……無色の派閥絡みなのだろうか?
あのジェダという男は無色の幹部かなにかで、側にいた女の子は彼の召喚獣なのだろうか。
それがもっともありそうな気がする。
では、そのジェダの目的はなんなのだろう。
彼が言うことには「魂の選定」だか、とにかく殺しあいをさせたいらしい。
その真の意図はあいまいで「何のための魂の選定なのか」がいまいちよくわからないが、
魔剣の場合のそれのような、何かの適格者でも探しているのだろうか?
子供ばかり集めたのは、幼い人間の方がいろいろと刷り込みがしやすいからだろうか?
だとしたら、この殺し合いも……もし最後のひとりになって生き残ったとしても、
約束どおり願いを聞いてくれたり、もとの世界に戻してくれたりなんてしてもらえないに決まってる。
最後のひとりになった子をいいように利用するのが目的なのだから。
では、みかが、そしてベルフラウ自身が元の世界に帰れるには、どうしたらよいか。
最後の一人を利用するのがジェダの目的だったなら、言われたとおりに殺し合いをするのは不毛である。
召喚された存在がもとの場所に帰る方法は基本的に一つ。
”召喚者自身”による送還を経なければならない。
もし、この大掛かりな召喚を行ったのがジェダひとりであったなら、彼を締め上げて集めた子供たちを
元の世界に送還させればよい。
しかしそれは、人間ひとりのわざで為せる範疇を明らかに逸脱しているとベルフラウは思う。
ゆえに、それはありえないと考えるのが道理だ。
おそらくは、召喚の門のような施設を利用しているとみて間違いあるまい。
その場合の脱出の方策については、ひとつ――実現は難しそうだが、目処はついている。
もし、この舞台があの名もなき島と同じで、島のどこかに召喚施設があるとしたら、
そこに赴いて召喚の門を開いて送還を行えばよいのだ。
ただし、こんなことが可能なのは条件が整った場合のみである。
必要なのは、まず、優秀な召喚士。
そして、召喚施設を動かすのに必要な知識、あるいは鍵となる「魔剣」にあたるアイテム。
最低でもこの二つが必要であろう。
と、何やら複雑な推測を垂れてはいるものの、あくまでベルフラウの島での経験に鑑みて、
それをなぞるように導いたかりそめの結論にすぎない。
ベルフラウの推論が正しいという証拠はどこにもなく、それどころか実のところ正解と誤謬はほぼ半々なのだが、
ベルフラウ自身が思考の誤謬に気づくに足る事由はまだこの場において得られていなかった。
そもそも、推測らしきものができたところで、実行には大いに難がある。
ベルフラウも、優秀な教師たちの教えを受けて召喚術を多少扱えるものの、召喚術に飛びぬけてすぐれているとは言えない。
せいぜい並より上程度のレベルだ。送還術なんて失われた術を扱うすべも知らない。
ヤードやアルディラお姉さまのような、専門的な知識も十分とは言えない。
先生のように魔剣を使えたなら、ジルコーダ達を送還した時のように、みかのような無理やりこの場に喚ばれてしまった子を
元の世界に帰してやることもできるのかもしれないけど……。
今のところ、ベルフラウにもできそうなことは、仲間となってくれる召喚術士の確保。
そして、召喚施設の発見。
最後に、その施設についての調査。
他にも首輪をはずす方法とかジェダの居場所の捜索とか肝心の倒す方法とか、問題は山積みだったが、
そちら方面はベルフラウにはあまり手が出せそうにないので仕方ない。
ともかくもまずは、仲間を探すのだ。
一人じゃ絶対に無理なことも、仲間がいれば無理じゃなくなることだってある。
ベルフラウは知っている。
仲間の力を。信じることの大切さを。あきらめないことの意味を。
すべて、先生が教えてくれた。
信じる心が運命を決める。
――――それはきっと、奇跡だって起こす。
【G-7/湖に面した廃ビルの陰/朝】
【ベルフラウ=マルティーニ@サモンナイト3】
[状態]:膝に擦り傷
[装備]:クロウカード『水』
[道具]:支給品一式、クロウカード『火』『地』『風』、不明支給品0〜2個(ベルフラウは確認済)
[思考・状況]
1:橋で呼びかけをしていた人や、その近くの様子を確認しにいく。
2:みか先生との約束を守り、危ないことはなるべく避ける(保身を優先)
3:仲間を探し、脱出・対主催の方策を練る。
4:殺し合いには乗らない。
基本:先生のもとに帰りたい。
※ベルフラウは、ロワの舞台がリィンバウムのどこかだと思っています。
※ロワの舞台について、「名もなき島」とほぼ同じ仕組みになっていると考えています。
(実際は違うのですが、まだベルフラウはそのことに気づいていません)
【鈴木みか@せんせいのお時間】
[状態]:エスパーぼうしの使用による小〜中程度の精神疲労(小休憩でやや回復)
[装備]:参號夷腕坊@るろうに剣心、エスパーぼうし@ドラえもん、FNブローニングM1910
[外見]:夷腕坊の操縦席の中にすっぽり収まっている
(ので、外見からでは一見して中に人がいるとは分からない)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]ベルフラウちゃん、大丈夫かな……。
1:夷腕坊に身を隠したまま、ベルフラウの帰りを待つ
2:待っている間を利用して休み、疲労を回復したい
基本:殺し合いはしたくない。他の子にも、できれば殺し合いはしてほしくない。
※みかは、ベルフラウの説明によりここが「リィンバウム」だと思っています。
※リィンバウムについての簡単な知識を、ベルフラウから得ました。
同時に、ベルフラウの考察を教えてもらっています。
共通の前半はここまでで、ここから後半のベルフラウsideとみかsideの各投下に移ります。
もし、リレーやWiki掲載の際などに支障の生じるようでしたら、以降の部分を没にしてください。
水中をだいぶ進み、大きな橋の半ばまで来たところで、ベルフラウは橋脚にしがみついて息継ぎをする。
すでに頭上の橋は静まり返っている。誰の気配も無い。
(――さっきのはぐれは、もう行ったみたいですわね……)
少し前に湖の真ん中あたりで顔を出して息継ぎがてら橋の上の様子を窺ってみた時にはもう、
橋の上には拡声器を使っていたと思しき人間はいなかった。
いや、正確には、「人間はいなかった」。
ベルフラウが見たのは、少年の身体に鋼鉄の蜘蛛足を生やした、不気味なはぐれ召喚獣が
向こうへと駆け去ってゆく姿。
おそらく、あのはぐれは拡声器の騒音を聞いて寄ってきたのであろう。
(やっぱり、みかさんを行かせなくて正解でしたわ)
自業自得とはいえ、拡声器を使った少年の安否が多少は心配だったが、
少なからず疲弊したこの状態でわざわざ確かめにいくのは自殺行為と思われた。
ともかくも、これで確認は済んだ。
(あまりみかさんを待たせてもいけませんし……さっさと戻りましょう)
ベルフラウは大きく深呼吸し、再び潜水しようとして……
――ざぱっ、と遠くで水音がした。
「……!」
全体的に白っぽい印象の、変な格好の女の子が橋脚ふたつぶん離れた場所に浮かび上がってくる。
慌てて橋脚の陰に身をひそめ、息を殺して様子を窺う。
(……女の子? 宙に浮かんでるってことは、サプレスの精霊か何かかしら?)
陰に身を隠したまま、接触してみるべきか否か、ベルフラウは迷う。
(……どうしようかしら?)
仲間は欲しい。しかし……。
先程の、少年に襲われた恐怖が蘇る。
もし、あの子が、あのタマネギ頭と同じような人間で、平気で殺しあおうとする人間だったら――――……。
「…………」
結局、ベルフラウは白い少女を見送った。
(……危ないことは、避けるって約束しちゃいましたものね)
みかとの約束を免罪符に、ベルフラウは少女との接触のチャンスを自ら捨てた。
幸い、向こう側は空中に居る。深く潜って巨大な橋桁の影を縫うように移動すれば、
ベルフラウには気づかないはずだ。
少女に注意しながら、ふたたび潜水しようとして――ベルフラウは視界の端に光を感じる。
「……?」
反射的に顔を上げる。
見えたのは、みかの待っている廃墟側の岸とは逆側の岸の森から立ちのぼる、翠色の光――――
見慣れたその光に、ベルフラウの目は釘付けになった。
(……召喚術!!)
だれが召喚術を使ったのだろうか?
帝国では召喚術の扱いは軍人に限られている。
はぐれ召喚師や無色の派閥ということも考えられるが、この場にいるのは子供ばかりだし……。
みかのようなはぐれ召喚獣が、誓約済みのサモナイト石を拾いでもして、気まぐれに使ったのだろうか?
それとも…………。
(……まさか……もしかして……)
名簿にあった、ひとつの名前が脳裏をよぎる。
――――”レックス”。
彼女の家庭教師の赤毛の青年と同じ名が、名簿の最後のほうにぽつねんと混じっていたのだ。
しかし、最初に集められた場所に、先生の姿は見当たらなかったはずだ。
あんな子供ばかりの場所に大人がひとりだけ混じっていればすぐわかるだろうから、
見落としたということも考えられない。
一番ありそうなのは、単なる同名の子供である可能性。
でも。
不安にゆらぐベルフラウの心は、手近な希望にすがりついてしまう。
……もしかしたら、先生もここにいるのかも。
……さっきのあの召喚術を使ったのは、先生なのかも。
だとしたら……急いで追えば、もしかしたら、先生に会えるかもしれない。
先生に会えたら、きっとなんとかなるかもしれない。
そんな希望が、ベルフラウを鼓舞する。
待たせているみかのことも、目撃した白い少女のことも、先生に会えるかもしれないという
希望の前にすべて吹っ飛んだ。
ベルフラウは残り少ない魔力を集中し、潜水球を再び生成して水中に潜る。
(――――先生……!!)
「――――ぷはっ!」
F-5の木橋の下で水から這い上がり、橋板の裏の影へと身を寄せてベルフラウは息をついた。
先生かもしれない召喚術の使い手を確かめようと夢中になりすぎて、
あやうく魔力を使い切って溺れてしまうところだった。
水を含んで重たくなった髪と服の裾を絞って水気を切る。
靴を脱いで逆さにすると、ぼしゃっと水がこぼれだした。
軽くなった靴を履きなおし、ベルフラウはため息。
途中、慣れない種類の魔法を無理をおしつつ使い続けていたせいか、維持に何度か失敗しかけて
潜水球内浸水の憂き目にあった末の結果がこれである。
白いタイツは濡れそぼって素肌の色が薄桃に透け、それなりに高価な生地の真紅のワンピースも
哀れぐしょ濡れで台無しである。麗しい金髪も水を含んでぺったんこ。
お嬢様らしからぬ、哀れもあられもない姿をさらしたまま、ベルフラウは
ぐったりと橋の陰にうずくまっていた。
(何をやっているんですの、私は……。
こんなところで、じっとしている場合じゃないのに……。
先生がすぐそこにいるかもしれないのに……)
重い体を引きずるようにして起き上がろうとした時、川原の土手の斜面の上、
ベルフラウの頭上を軽いフットワークで駆けてゆく異装の少女が目に映った。
少し離れていても分かる、その頭に生えた獣耳。
(メイトルパの……獣人? もしかして……)
さっきの召喚術は――――この子だったのかしら。
そう思ったとたん、体からどっと力が抜けた。
先生じゃなかったという失望と、徒労の虚無感が気力を蝕みそうになる。
そこを、なんとか奮い立たせる。
どっちにせよ、召喚術士を探していたのには変わりないのだ。
だったら、あの子と接触して情報を得るか、仲間として連れ帰るくらいはしたほうがいい。
単なる無駄足を踏んでしょぼくれ帰るのは、ベルフラウのプライドが許さなかった。
(せっかく追いかけたんですものっ……手ぶらで帰るわけにはいきませんわ!)
もはや意地である。
ベルフラウは滴のしたたる金髪を絞り、立ち上がろうとするが――。
「……っう」
酸欠と魔力の過量消費のダブルパンチで、頭がくらくらしうまく立ち上がれない。
(無茶、しすぎたかしら……)
もし今、さっきのように誰かに襲われたら、まともな立ち回りさえできそうにない。
そんな状態でメイトルパの少女を追うのは、危険かもしれない。
……無理せず、みかの元に戻ろうか?
そんな考えも浮かぶ。
(でも……!)
召喚術使いのメイトルパの少女も気になる。
みすみす接触のチャンスを逃していいのだろうか?
しかし、命の安全あってこそ、ではないのか?
でも、なにもできずに戻っていいのだろうか?
二律背反に、ベルフラウの心は迷い揺れる。
心身両方の疲労と、心の迷い。それが、ベルフラウの感覚をくもらせていた。
背後から、人影が近づいていた。
――――ベルフラウは、気づかない。
【F-5/西岸側の橋下/午前】
【ベルフラウ=マルティーニ@サモンナイト3】
[状態]:体力消耗中程度
カード使用による中〜大程度の精神的疲労(MP残量1/3以下)
膝に擦り傷、全身びしょ濡れ
[装備]:クロウカード『水』
[道具]:支給品一式、クロウカード『火』『地』、不明支給品0〜2個(ベルフラウは確認済)
[思考・状況]
1A:召喚術の主(アルルゥ)を確認し、情報を得る。できれば仲間にしたい
1B:みか先生との約束を守り、危ないことはなるべく避ける(保身を優先)
2:1Aと1B、どちらをとるか悩んでいる。
3:みかの安否が心配。できれば早く戻り、合流したい
4:仲間を探し、脱出・対主催の方策を練る。
5:殺し合いには乗らない。
基本:先生のもとに帰りたい。
※ベルフラウは、ロワの舞台がリィンバウムのどこかだと思っています。
※ロワの舞台について、「名もなき島」とほぼ同じ仕組みになっていると考えています。
(実際は違うのですが、まだベルフラウはそのことに気づいていません)
みかはぼーっと湖面を見つめている。
「ベルフラウちゃん、遅いなぁ……」
夷腕坊の中はそんなに快適でもなく、じっと籠もっているのもなかなかに辛い。
なかなか帰ってこないベルフラウが気になって、みかは夷腕坊の口から外へと出て辺りの様子を窺う。
すると。
「……え、何これ……」
思わずそんな声が出た。
奇妙な霧が、いつのまにか周囲を包んでいることに気づいたのだ。
湖だから霧も出やすいのかな? とそんなことを思いかけて、こちらに移動する前に見た霧を思い出す。
あの霧がこっちに流れてきたのだろうか?
……そういえば、この霧は怪しいってベルフラウちゃんと話したような……
(ど、どうしよう?)
光化学スモッグとか、そういう毒のある霧ではないと思うが、文字通り五里霧中の状態でみかは途方に暮れる。
行ったまま戻ってこないベルフラウも心配だった。
こんな霧の中、はたしてちゃんとみかの元に戻ってこられるのだろうか?
霧を見つめて惑っているみかの頭上で、唐突に腹の底に響くような強烈な爆発音が響いた。
「ひゃあっ!?」
熱を伴った紅い光が頭上を明るく照らし、みかは頭をかかえてうずくまった。
ガラスやコンクリートの破片が、周囲にばらばらと降り落ちる。
「な、なに!? 火事……?」
逃げなきゃ、と思って一歩踏み出しかけて、みかは見た。
熱に焦がされて一瞬晴れた霧のあいまに、確かに見た。
――――炎の勢いに押し出されるようにして空を舞った小さな何かが、
焼け焦げた欠片と煙を空中に散らしながら目の前で湖に落ちていくのを。
「え……!!?」
目の前で起こったことが信じられなかった。
尾のようにはためく金色の髪、真っ黒に焦げた半身、一瞬のそれが目に焼きついて離れない。
遠かったのと霧越しだったのとで、みかの目にはそれが人形だと気づかず、ふつうの小さな女の子に見えた。
金色の髪、ぼろぼろになってもわずかに色の残っている赤い服は、さっき出会ったばかりのベルフラウの姿に容易に結びつき、
「それが人間の女の子である」という誤認識をいっそう強化した。
みかは、動けない。
……いま、目の前で、人が死んだ?
怖いとか悲しいとかいやだとか、そういった感情すらすぐには沸かなかった。
みかは真っ白になって固まっていた。
しかし、そう呆然ともしていられない事態が次に起こった。
「――――――!」
遠く誰かの声が響くと同時に、空気の質が変わった。
「……え……ぇ……?!」
セーターを脱ぐときのような感覚が、うなじや腕、背中にぞわっと走る。
帯電した空気に、みかのおかっぱ髪がぶわっと逆立つ。
間をおかず、みかの視界が点滅し眩めいた。
閃光にくらんだ視力が回復しないうちに、特大の爆竹を焚いたような破裂音が水面を渡って爆ぜる。
みかの目の前に、威嚇するようにいかづちが鋭く落ちたのだ。
「……あ……」
空は晴れている。間違っても自然のものではない。
――ベルフラウは言っていた。
ここには、魔法みたいな力を使える人間や、危険な生き物がいると。
――そういう存在にみかが襲われる可能性も、あると。
「…………あ…………」
みかの体が勝手に震えだしていた。
――――気づかれたんだ。
――――気づかれたんだ!
みかの頭の中をパニックが吹き荒れ、その場で硬直する。膝から震えが全身にひろがり、とまらない。
みかにとって、魔法は未知そのものだった。未知は恐怖に直結していた。
知らないものが一番怖い。
みかは怯えた。思い込みが勝手に自分自身を脅迫する。
あの声の主の男の子が、きっと炎を使ってさっきの小さな女の子を殺したんだ。
で、こんどは自分の番なんだ。
さっきの雷はみかに気づいたぞ、見つけたぞ、っていう脅しの一発なんだ。
きっとこの後すぐに、さっきの物凄い炎が自分めがけてくるんだ。
みかは気づかない。
落雷は湖に落ちた少女人形への追撃で、みかを狙ったものではないことに。
魔法の使い手は、地面近くに濃く淀む霧に隠れたみかの姿に気づいてなどいなかったことに。
みかは気づかない。
だから、ただ、怖い。
だから、ただ――――死ぬのが、殺されるのが、怖い!
逃げなきゃ、という思いと怖い、という思いが心の中で真っ向ぶつかって、
早くここから離れなきゃと思うのに、みかの体は勝手に動いて夷腕坊の操縦席に這い戻っていた。
霧の中をやみくもに逃げるよりじっとしていたほうがいいとか、そんな打算は後付けで、
ただ安全な場所を求めての行動だった。
操縦者の身を守る編み籠のなかにうずくまり、みかは震える。
ここなら、外から攻撃されても大丈夫なはず。
……でも、このままじゃダメなんじゃない?
すぐに見つかってしまうんじゃない?
見つかって、ころ……
(……いやぁ……!!)
自分の考えに頭を激しく振り、狭苦しい編み籠の中でいっそう縮こまった。
数時間前のちょっと立派な覚悟など、本物の恐怖の前にどこかへいってしまった。
逃げ出したかった。
でも怖かった。
安全な自分の家、自分の部屋、あったかい布団を思い出す。
家に帰りたい。
もうやだよ、こんなところやだよ……!
何をどう考えてどうやったのか、みかもよくわからなかった。
ただ、間近に迫ると思われる恐怖に、死の予感を前に、みかの「死にたくない」「安全なところへ行きたい」という
強い意思の集中に、エスパーぼうしは機械らしい正確さで、勝手に応えてくれた。
視界がぶれる。
ひずむ。
体が浮く。
発動したのは、さっき使ったばかりの「テレポーテーション」。
みかの思いはひとつ。
死にたくない。
どこでもいい、魔法の炎や雷から逃れられるところ。安全なところへ――――!
全身が軽くなり、つめたくなり、感覚が瞬間的に消失し――ふいにすべてが元通りになる。
空間転移は唐突に始まり、唐突に終わった。
…………。
……。
夷腕坊の半開きになったままの口から入ってくるのだろうか。
頬にやさしいそよ風を感じる。
ここはどこだろう――――。
外に出て様子を確かめなくちゃ――と思うが、体が動かない。
慣れないエスパーぼうしの連続使用で、みかの精神的疲労は限界に達していた。
ただ、殺し合いの場にあるという緊張が、かろうじてみかの意識をつなぎとめている。
しかし、その緊張の糸も、極大の疲労という重い錘に引っ張られてみるみるちぎれそうになる。
「…………ぅ……ん、」
みかは、今にも閉じそうになる目で周囲を見た。
そこは分厚い肉色の護謨(ゴム(表皮に守られた薄暗い夷腕坊の操縦席。
その、繭のような閉じた空間に安堵を覚える。
ああ、ここならきっと安全なはず。
ここがどこだって、この中にいれば、きっと安全だよね。
なんだか外がうるさい気がするけど、ここなら、きっと大丈夫だよね……。
ベルフラウのことを意識の端にのぼらせる間もなく、みかの意識はそこで途切れた。
【?-?(位置不明)/1日目/昼】
【鈴木みか@せんせいのお時間】
[状態]:極度の精神疲労による昏倒中
[装備]:参號夷腕坊@るろうに剣心、エスパーぼうし@ドラえもん、FNブローニングM1910
[外見]:夷腕坊の操縦席の中にすっぽり収まっている
(ので、外見からでは一見して中に人がいるとは分からない)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]………… …………
1:ものすごく疲れたので、このまま休む
2:怖い。人殺しが起こっているという事実を受け止めたくない
3:ベルフラウのことが心配
基本:殺し合いはしたくないが、どうしたらいいのか具体的には考えてない
※みかは、ベルフラウの説明によりここが「リィンバウム」だと思っています。
※リィンバウムについての簡単な知識を、ベルフラウから得ました。
※みかのテレポート先は、次の書き手のかたにお任せします。
ただ、葵のテレポート同様制限もあって、あまり遠くには行けません。
せいぜいMAP南東エリア内のどこかだと思われます。
※支給品説明
【クロウカード(地・水・火・風)】
クロウカードの中でも上位に位置する四大元素のカード。
破壊力は魔力消費量に比例する。ただ、原作より燃費はかなり悪くなっている。
ファイヤーボールやヒャダルコなどの魔法と違って効果が固定されておらず、
「元素そのもの」を操れるのが最大の特徴であり、ゆえに柔軟な発想による使途が本領。
具体例としては、以下のような使い方など。(原作中の使用例)
『風』:相手を拘束して動きを封じる
『水』:空気を閉じ込めた球状バリアを周囲に張って潜水する
投下終了しました。
キャラの口調や、時系列の辻褄あわせなどに間違いがありましたら、ご指摘お願いします。
力作投下乙!
登場人物が2人とは思えません。
時間てきにちょっと置いてかれ気味だった2人をうまく動かしてたと思います。
後半分の二人の状態表にそれぞれ間違いがorz
それぞれ修正は、以下のように。
【F-5/西岸側の橋下/午前】
【ベルフラウ=マルティーニ@サモンナイト3】
[状態]:体力消耗中程度
カード使用による中〜大程度の精神的疲労(MP残量1/3以下)
膝に擦り傷、全身びしょ濡れ
[装備]:クロウカード『水』
[道具]:支給品一式、クロウカード『火』『地』『風』、不明支給品0〜2個(ベルフラウは確認済)
[思考・状況]
1A:召喚術の主(アルルゥ)を確認し、情報を得る。できれば仲間にしたい
1B:みか先生との約束を守り、危ないことはなるべく避ける(保身を優先)
2:1Aと1B、どちらをとるか悩んでいる。
3:みかの安否が心配。できれば早く戻り、合流したい
4:仲間を探し、脱出・対主催の方策を練る。
5:殺し合いには乗らない。
基本:先生のもとに帰りたい。
※ベルフラウは、ロワの舞台がリィンバウムのどこかだと思っています。
※ロワの舞台について、「名もなき島」とほぼ同じ仕組みになっていると考えています。
(実際は違うのですが、まだベルフラウはそのことに気づいていません)
【?-?(位置不明)/1日目/昼】
【鈴木みか@せんせいのお時間】
[状態]:極度の精神疲労による昏倒中
[装備]:参號夷腕坊@るろうに剣心、エスパーぼうし@ドラえもん、FNブローニングM1910
[外見]:夷腕坊の操縦席の中にすっぽり収まっている
(ので、外見からでは一見して中に人がいるとは分からない)
[道具]:支給品一式
[思考・状況]………… …………
1:ものすごく疲れたので、このまま休む
2:怖い。人殺しが起こっているという事実を受け止めたくない
3:ベルフラウのことが心配
基本:殺し合いはしたくないが、どうしたらいいのか具体的には考えてない
※みかは、ベルフラウの説明によりここが「リィンバウム」だと思っています。
※リィンバウムについての簡単な知識を、ベルフラウから得ました。
同時に、ベルフラウの考察を教えてもらっています。
※みかのテレポート先は、次の書き手のかたにお任せします。
ただ、葵のテレポート同様制限もあって、あまり遠くには行けません。
せいぜいMAP南東エリア内のどこかだと思われます。
GJ
異世界からの召喚に関する知識は脱出の役に立つかもしれないな。
レックス先生勘違いフラグも立てててナイス。
しかし、はぐれ呼ばわりは酷いなw ヘンゼルは融機人扱いかよw
GJ
ベルフラウに接近する影が誰か楽しみです。
でも、午前にその場所にたどり着きうるキャラってあんまり居ないな。
トリエラorトマ
はやてとレン
ジーニアスとベッキー(翠星石を待たずに移動する必要有り。しかし橋に向かうか?)
この位だから、逆に言えばこの内のどれかを接触させないといけない。
>>350 いや、それはないでしょう。時間がずれてるし。
待てよ。
午前:8〜10
昼:10〜12
ベルが9:59分、みか先生が10:00ならいけるか?
えー残す所後推敲のみとなったのですが、これから出かけなければならないので
投下が大体10時〜11時ぐらいになると思います。
皆さんには迷惑ばかりかけてしまってすみません。
そしてギャルゲロワと同時予約してしまったのが原因でこのような事になってしまい本当にすみません
自分の力量を過大評価し過ぎていました……
こうならないよう、もう二度と同時予約なんて事はしないので、許して欲しい限りですorz
>>344 GJ。なるほど、召還という脱出フラグもありですな。
>>349 普通にトリエラorトマかと思った。ジーニアスとベッキーが橋に向かうのはいいけど、
そうなると今度はその時間にはやてとレンが橋にいない理由が必要になる。
可能性があるとすればあとはレン&はやてだけど、イリヤと合流するかしないかの
話も入らないとだしな…。
最後の『人影』は、誰なのか明文化するか、そうじゃなかったら外してほしい。
トマやトリエラ、レン&はやて辺りの面子を全員他の書き手が別方向に移動させちゃって、
結局該当者が存在しない……、なんてことになったらどうしようもないし。
某ロワで有ったな。
服装まで指定されてて、結局登場話で死体だったキャラを引っぱり出して補完された。
>>354 そういうのは後々どうしようもなくさせた書き手と作品の責任であり、この作品の責任じゃないと思うけど
というか6人も候補がいれば十分じゃないか。
>>356 それはちょっと違うと思う。例えば周囲のキャラに別々に予約が入り、
両方橋以外に動かしたSSが投下されたら、遅い方を破棄にする気なのか?
展開を絞るわけだから引きを入れるならキャラ指定して欲しいと思うけどな
『水中追跡行』の結末にて後の展開を縛るような描写を入れてしまい、申し訳ありませんでした。
最後の三行は、あってもなくても内容にまったく影響がない部分なので、
心身両方の疲労〜気づかない、までの最後の三行を削除します。
>>356 いや、案外気づかないものだぞ、これって。
消去法で辿り着くのが誰か考えて動かさないといけないんだから。
知らないキャラだなって放って置いて周囲を動かしてると面倒な事になる。
その周囲一帯に影響を及ぼすイベントだって意識しておく必要はある。
>>355の例だと50話以上過ぎた頃に詰まってるって気づかれてなんとか回収された。
まあ今回は早めに有り得る可能性を明文化されたから、
トリエラ、トマ、はやてとレン、ジーニアスとベッキーが残り一組になった時点で、
残り一組の行動が確定するって事で良いと思うけど。
実質それらの組が既に登場してるって位の意識は必要。
要はこの手の話もその周囲のキャラを動かす人も注意した方が良いって事。
>>359 リロードし忘れた。
話に影響が出ないならそういう事で良いと思います。
対応乙。
>>359 対応乙
他ロワじゃ結構普通に見かける引きなんだけどな、展開を縛る……か。
一理あるのは間違いないけど、そういうの含めてリレーだと個人的には思うんだけどね。
単に自分と他の書き手の腕を信用してるかしてないかの問題じゃないの?
>>362 そうか。この手の引きが問題視されないロワも結構あるんだな。
自分の常駐ロワだと、こういう書き方は大概修正要請が出るから、
ちょっと過敏になりすぎたかもしれない。
>>363 少なくとも自分の腕は信用できないな。
今後、似たようなフラグをあちこちで立てられたら把握、対応できそうにない。
>>365 いや、自分で書くかどうかというのもそうだが、候補になってるやつらが大体動いて、
条件を満たせるのがあと一人二人になったとき、そのことを指摘するというのもある。
こうすれば大抵は誰かが拾う。少なくとも
>>355のようにはならないはず。
まあ後付でも動かせるなら問題はないんだが。
続きが書けるか賭けないかじゃなくて、そういう展開はして欲しくない。
【予約まとめ】
3/12(月)の予約(※延長申請中)
◆NaLUIfYx.g :一休さん、コナン、ネギ、小狼、リンク、梨花、灰原、乱太郎、ヘンゼル、メロ、金糸雀
3/14(水)の予約(〜3/17(土)まで)
◆3k3x1UI5IA :イヴ、ビュティ、ブルー、双葉
3/15(木)の予約(〜3/18(日)まで)
◆CFbj666Xrw :アルルゥ、レミリア、プレセア
【現時点よりちょっと前のMAP】
>>103 〜各地の状況〜
@北西エリア(湖上の城、平原、商店街etc.)
・【H-1/昼】フランドールがちょっといい家でおやすみ中。
・【E-1/午前】ククリを抱えたリルルをネスが追いかけています。
ひょっとするとゲイボルグがすっ飛んでくるかもしれません。
・【H-3/午前】ヴィクトリア、しんべヱを追跡して詳細名簿を取り戻すかどうか思案中。
・【F-3/昼】城内の一室で、葵が偽明石薫(ベルカナ)を保護。
・【F-3/昼】イエロー、ダイレクに乗って滑空し、城から脱出。
@北東エリア(大森林、工場、廃病院、謎の塔、モニュメント跡)
・【B-1/昼】死体遊びに興じるグレーテルを、ミミが仕留めようか迷っています。
・【A-2/午前】シャナ&小太郎が森を南下中。
・【B-2/昼】双葉が【B-3】の廃病院(イヴ・ビュティ・ブルーが休憩中)へと向かっています。
・【C-3/真昼】夢の世界で白レンが蒼星石を懐柔。ミイラとりがミイラになる。近くにはタバサも。
・【D-3/昼】リディア、マーダーになることを決心。「学校」【D-4】を目指す。
@中央エリア(学校、森)
・【F-4/午前】トリエラとトマが接触し、それぞれに別の目的を持って別れる。
・【F-5/午前】橋の下にベルフラウ。アルルゥを追うかみかの所に戻るか迷っている。
・【D-5/午前】「小狼・コナン・ネギ」組と「梨花・リンク・灰原」組が、学校【D-4】を目指している。
・【E-4/午前】乱太郎を戦闘とした、ヘンゼル、メロ、金糸雀の地獄列車が学校【D-4】付近に。
@南西エリア(市街地、タワー、山脈、道路)
・【A-7/昼】カツオ、隠れつつも弥彦の動向やキルア組の動向に気を配っている。
・【B-7/昼】ニア、タワーの展望室にひきこもり中。弥彦が首輪を持って帰るのを待っている。
・【B-5/午前】山頂にてリリスVSエヴァ&ニケ。
・【B-5/午前】山麓にて勝VSヴィータVSなのは。危険物×3も転がっています。
・【B-6/昼】ビルのロビーにて、目覚めたのび太がきり丸を泥棒と思い込む。
・【C-8/昼】藤木、民家の風呂場にてビビり中。弥彦を追うのは怖いがよつばを仕留めたい。
・【D-8/昼】弥彦、ちよの遺体から首輪を持って帰ろうとしている。それをパタリロ組が様子見。
@南東エリア(湖、橋、廃墟、病院、シェルター)
・【F-6/午前】橋の上にレン&はやて、その下の湖にはイリヤ【F-6/朝】。
・【G-6/昼】橋をはさんだ湖東側に満身創痍の真紅。
・【E-6/昼】明石薫が翠星石のローザミスティカを発見。
・【H-6/昼】雛苺がノーパソ抱えて逃亡中。
・【G-7/昼】さくら&梨々がリインに導かれ逃亡中。
・【?-?/昼】みか先生、夷腕坊に乗ったままどこかにテレポート。
……そして数えて気づいた、次の話でめでたく100話目っぽい。
乙。時間帯昼が多くなってきたなー。
ヘンゼルと太刀川ミミを予約します
事前報告ですが、投下する時は遅いです…orz
グレーテルでした…orz
いかん…どうも間違え易い…
>>371 おお、期待して待ってます!
投下速度が心配なら、避難所に落として報告してくれれば、こっちに貼り直すけど。
あー、一瞬意味が分からなかったけど携帯の人かw
>>373 書き込めないみたいです…(´・ω・`)
とりあえず、無料掲示板をレンタルしてそこに書き込む方法を取ろうかと思います
リンクさえ貼れば大丈夫なので、無駄なレスの消費や誤字を無くす事ができるかも知れませんし…
つか もう色々と申し訳ございません orz
>>374 サーセンww
もう色々と…('A`)
予約期間を超えてしまってすみませんでした。
では一休さん、コナン、ネギ、小狼、リンク、梨花、灰原、乱太郎、ヘンゼル、メロ、金糸雀
を投下します。
「み〜、何もないです……」
「そうだね、なかなか見つからないね」
梨花が残念そうに呟き、それに賛同するリンク
ここは学校内、校舎の出来具合から小学校であった。しかし、そこには元気にはしゃぐ子供達や、勉強を教える先生もいなかった。
4-2と書かれた看板、生徒数30人ぐらいであろう教室に、梨花と灰原とリンクの3人が寂しくいた。
灰原は未だに気絶中、リンクと梨花は何やらロッカーの中を物色していた。
3人は学校に入るや否や、颯爽と玄関内へと入り、梨花の提案によりそのまま土足で侵入した。
体操服やスクール水着が置いてある場所といったら教室、自分ぐらいのサイズがあるであろう4年生の教室へと入っていった。
そして梨花の読み通り、教室内の机の脇にかかってある体操着袋に体操服がご丁寧に畳んで入っていた。
さらにはタオルも置いてある。シャワーまでとはいかないが、体を拭くには十分であろう。
梨花が教室内で着替えようとした時、リンクが外に出ようとしなかったので、
「み〜、リンクは僕の姿を見たいのですか?」
と、恥ずかしそうに言う。
リンクはそれにノックアウト、顔を赤くして扉を豪快に開けて外に出て、豪快に閉めた。
その行動に梨花は心の中で笑う。
(リンクはやっぱり可愛い所もあるのね)
廊下でリンクは何を思っているのだろうか? もしかしたら自分の体を想像しているのかもしれない。
……この胸のない体を……
そう思うとちょっぴり腹立った。こういうとき沙都子の体が羨ましく思える。しかし、思っても仕方ない。
梨花はため息を吐きながらも、自身の服を脱ぎ始めた。
テキパキと着替えて、梨花はリンクを呼び、前に着ていた服はランドセルの中へと放り込んだ。
サイズも自身と合っており、殺し合いをする格好には見えないが、動きやすくなった事実もある。
リンクにとっては体操服など初めてみる服、顔を赤くしながらもどうしても目をやるところに困る。
それがおかしかったのか梨花は意図的に机の上に座って露出している太ももあたりを強調する。
さらに焦ったのか、体を反転してなにやらぶつぶつと呟いている。
梨花の読みがあっているならばきっと「落ち着け」なのだろう。
まぁこれ以上弄っても時間の浪費、梨花は「我慢してくださいなのです」と言い、これからの事を相談した。
その結果、こういう事になっている。
今、このパーティで足りない物と言えば武器だ。刀剣類が一つもない今、敵と戦闘になった時確実に不利になる。
そう思って、生徒が使っているロッカーには何か有効活用出来る武器がなにか探していたのであった。
リンクは練習もかねて、あるるかんを使って探した。
出席番号の始まりと終わりから調べていって、結果は現在の状況、収穫は未だになかった。
二人とも出るため息、別の教室のロッカーを探すべきであろうと思ったその時であった。
『わ、わだくじ、忍『ガガ、ピー』属、『ピーガガガッ』寺乱太郎は、人をじなぜてしまいました。
さ、3人も、死なずに済んだ人を死なせてしまいまじ『ガガーッ、ピーー』。
ここに、みなさんにお詫びの言『ピーガガガ』く……』
どこかの窓が開いていたのだろうか、何やら声が聞こえた。
男の子の声、尚且つその子は泣いていた。
そして繰り返される同じ言葉
「あれ? どこにいるんだ?」
「あれは拡声器と言うのですよ、声がとても大きく聞こえる道具なのです」
リンクのない知識を、梨花が伝える。しかし、ところどころ雑音が聞こえて、壊れている様子であった。
加えてその声は涙声、何かあったのは誰だってわかる。
つまり、
「あの子は助けを求めているのかな?」
「そうかもしれません。でも罠の可能性もあるのです」
リンクが1つの結論を言い、梨花が別の可能性を見出だす。
つまり、あの涙声は罠であって他の参加者を呼ぶ餌、餌にかかったらその人物を殺そうという考え
その可能性は十分にある。
ちょっと考えれば、こんな状況でそれを言うことは自殺行為以外何物でもない。
やる気のある人間に居場所を伝えて殺して下さいと言っても過言ではなかった。しかし、あくまで可能性である。
聞こえて来る言葉から推測すると、彼は3人もの人を見殺ししたらしい。
普通の子供がそんなことをしたら、精神など持つはずがなかった。
そして、ランドセルの中にあったのか、外に落ちていたのかわからないが、壊れた拡声器
それらの条件が重なれば、涙声で必死に助けを請う姿が容易に想像できた。
リンクはそっちの姿が浮かんでおり、助けられずにはいられなかった。
梨花を守れるなら守りたい。しかし、すぐ近くに助けを請う人間を見捨てる程リンクは冷たくなかった。
こうしている間にも声が大きくなって近付くのが分かる。
助けられるのは自分ぐらいしかいない。
リンクは梨花の方を向く。
梨花は何か言いたげなのか、不思議そうにリンクの方を見る。
「ごめん、梨花ちゃん……どうしても行きたいんだ」
リンクが自分の思いを伝える。
決心した目付き、こうなったら例え断ったとしても行ってしまうだろう。
梨花はちょっと残念そうな顔になる。しかしそれも一瞬、すぐに笑顔に変わった。
「こうなったリンクは誰にも止められないのです。僕たちはここで隠れんぼしてますので早く見つけてください」
「にぱ〜☆」と可愛らしい声を出す。
これは梨花なりのOKサインであった。
断っても行くのだから、せめて後味が残らないようにと梨花なりの思いがあった。
確かにここには隠れる所はある。
障害物もいくつかある。教室に入っても2箇所出口があるので逃げるのにも問題はない。
それはある程度ここが安全であることの証明だと考える。
梨花自身は罠であると思う。だから梨花が行ってもそれはリンクの足を引っ張ってしまう。
それだけは絶対避けてなくてはならない道、ならば自分が安全な所に居るのがせめてもの慈悲
そこまで梨花は考えていた。リンクも、まさか梨花からそのような答えが返ってくるとは思わなかった。
だが驚くのは一瞬、すぐさま笑みで返す。
「ありがと、大丈夫すぐに戻ってくるから!」
と、手を振って教室を出て行き、声のする方へと向かって行った。
梨花も手を振る。別れを惜しまずに、帰ってくる事を祈って……
(さて、どうするべきかしらね)
ここに人がいるなんて気づくはずがなかった。
それはずっと前から自分達を監視している人ぐらい、そんな人がいる気配などなかった。
ならばリンクが行ってしまったこの時間何をしてよう、窓からリンクの様子を伺うべきであろうか?
未だに拡声器の声が聞こえる。故にどの辺にいるのかもわかる。
その為には気絶している灰原も連れて行かなければならない。と、梨花は気絶している灰原の方に近寄り、座り込む。
仮に戦闘になったとしても、さすがにこの子みたいな人ではないだろう……
「み〜、何であんな薬品を知ってるのか不思議不思議です」
と言うが、もちろん返事は返ってこない。
手錠もかかって身動きは取れない。
仮に暴れたとしても両手が塞がれている灰原には負ける気がしなかった。
(どうせ手が動けないのならここに放っといても大丈夫かしら?)
その考えは辞める。後で起きたら色々聞いた方がいいと、そう思ったときであった。
途端音が聞こえた。
それは小さな音、普通に聞き過ごしてもおかしくない音であったが、梨花は黙りこみ、硬直する。
一筋の汗が流れて、頭が働く。
梨花は見過ごしていた点があった。
この学校に入ってから、2人は定期的に喋っていた。他に話している人はいない。
ある程度の距離にいたら、気付かれてもおかしくなかった。
それでまず監視しなくても2人の人間がこの学校内に入ったと気づかれる。
それに足、外のしかも森の中をずっと歩いていた靴は確実に泥で汚れていた。
そして、その靴でそのまま学校内に入ったらどうなる?
僅かながら廊下に泥が途切れ途切れついても不思議ではない。
確かに梨花の考えは間違いではなかった。しかし、この学校内に元から人がいる可能性を忘れていたのであった。
未だに襲われる気配がなかったゆえに油断した。
その間にも音は大きくなる。梨花は激しく動く鼓動を落ち着かせてどうするべきかと考える。
逃げる? ……いや無理であろう。自分の運動神経はあまりよくない。
相手は準備万端の状態、振り払える自信がない。
隠れるか? それもダメだ。既にこの教室に追い込まれているのだから隠れても探し出されるに決まっている。
今まで梨花が思っていた事は、実は勘違いしていた事が今になってわかる。自分の失敗に激しく後悔した。
ならば最後の選択肢――戦う、それしか梨花の選択肢はなかった。
その結論に至るまで僅か数秒、動くときに邪魔になるランドセルを置いて、掃除用ロッカーからT字箒を取り出した。
一回強く握って、使いやすさを確かめる。
(うん、悪くはない)
昔、彼女がいた別の世界でモップを使って戦った事があった。
あの時は一分だけでもいいから時間を稼げばよかった。しかし、今回は違う。
相手を倒さなければならない。しかも、失敗したら確実に死ぬ。
助ける人はいない。ここは自分がなんとかしなくてはならない。
足音はさらに大きくなり、もう少しでこの教室に辿り着く。
音の方向から入って来る方向は前方入口、梨花は走る。僅かでも有利な状況へと持っていく為に息すらも潜める。
チャンスは一度、相手がこの教室に入った瞬間思いっきり土手っ腹か胸辺りを殴る。
それで倒れない人間などいない。そこで追い討ちをかける作戦であった。
時間がない分作戦は即席、幾多の不確定要素はあるがわがままなど言っていられない。
絶対に帰る、帰って皆で幸せを手に入れる。
それだけが古手が手に入れた最高の世界、それを無駄には出来ない。
足音が止まる、敵とはもう壁という障害物がなければ、顔を見合わせる距離
鼓動が早くなる。全身から汗が吹きだしている感覚が梨花をさらに焦らせる。
疲れているわけでもないが、息が早くなる。
(大丈夫、きっとやれる……やれるはず!)
梨花は箒を軽く頭に叩いて落ち着かせる。
そして……扉は開かれた。
一瞬遅れて入り込む何者か
二瞬遅れて梨花の気合いを入れた声と共に繰り広げられる攻撃
腰の捻りと遠心力を使って自身の持てる最大速度を箒に注ぎ込む。
言うならまさに気付けば……という状態、侵入した子に避ける術はきっとないはず!
そのまま箒は、敵の胸辺りに直撃した。
「げふっ」という声と、何やら重い音と共に宙に浮く敵
そのまま廊下にへと放り出された。
梨花自身手応えはあったが、人間の肌感触ではなかった。
もっとこう……堅い何かが防いだ感じ……
「げほっ、げほっ……」
咳込む敵によって、次するべき行動を思い出す。
脳震盪でもなんでもいいからとにかく気絶させる。
梨花は思い切って開いている扉の真正面――即ち敵の真正面に向かった。
と、そこにいたのは……
手にはモップ! 着物の間にリコーダーをさし、極めつけは頭に赤ブルマ!
あまりにも敵の格好に、肩がずるっと落ちて梨花はこけそうになった。
それを片方の足で踏ん張り、耐えた。しかし、追撃をすべきか悩む。
むしろ敵の格好に困惑した。
(な、な……ヤク女の次は変態男なの……?)
あまりの光景に思わず立ちつくす梨花
咳き込む謎の人物は両手を挙げて降参のポーズを取り、梨花の顔の方へと向いた。
「いやはや……いきなり襲われるとは……ん?」
最後の疑問の投げかけと同時に梨花の下の方を見て、何か閃いたのかポンと手を叩く
「なるほど、これはそうやるのですか」
梨花は直感で感じる。多分赤ブルマのことを言っているのだろう。
そんなことより
(ここにはまともな一般人はいないのかしら?)
心底呆れる梨花
いや、この目の前にいる少年こそ数少ないまともな一般人なのだが……
そして後ろの方で目覚める少女
このタイミング、この状況
彼女のすぐ傍には梨花のランドセルが置いてあった。
【D-4/学校4階、4-2教室内/1日目/昼】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に】
[状態]:色々と疲労困憊、困惑
[装備]:T字箒
[道具]:基本支給品、不明支給品×1(確認済み)、5MeO-DIPT(24mg)、エスパー錠の鍵@絶対可憐チルドレン 、平常時の服
[服装]:体操服。体操着に赤ブルマ着用です
[思考]:もう一体なんなの……
第一行動方針:目の前にいる変態男(一休さん)をどうするか
第二行動方針:リンクを待つ
第二行動方針:同行者を増やす
基本行動方針:生き延びて元の世界に帰る
参戦時期:祭囃し編後、賽殺し編前
[備考]:梨花のランドセルは灰原の目の前に置いてあります
【一休さん@一休さん】
[状態]:胸部に痛み(通常行動にはあまり問題なし)
[装備]:シャインセイバー(サモナイト石)@サモンナイト3
体操着(着物の下)、教科書(服の下に仕込んである)
リコーダー、モップ、赤ブルマ(頭に被っています)
[道具]:エルルゥの薬箱の中身(ワブアブの粉末、カプマゥの煎薬、ネコンの香煙、紅皇バチの蜜蝋) @うたわれるもの
体操着袋、チョーク数本、雑巾、ブリキのバケツ、ホース数m、教科書数冊
[思考]:いやはや、それは穿く物なんですか
第一行動方針:あわてない、あわてない
第二行動方針:目の前の女性(梨花)の誤解を解き、コンタクトを取りたい
第三行動方針:驚く事ばかりだけれど、周囲への理解と食料の確保をしたい
第四行動方針:余裕があれば、森にでも骨格標本を埋葬し供養したい
基本行動方針:ゲームをうまく脱出する
[備考]:懐と体操着袋とバケツに細かい荷物を分けて入れています。
水道の使い方、窓や扉のカギの開け方を理解しました。
ブルーを不思議な力(スタンガン)を持った神仙または学術者の類と思っています。
【灰原哀@名探偵コナン】
[状態]:健康、目覚め
[装備]:エスパー錠@絶対可憐チルドレン
[道具]:基本支給品、ふじおか@みなみけ(なんか汚れた)
[服装]:子供服。着方が乱暴でなんか汚れてる。
[思考]:あれ……ここはどこかしら?
第一行動方針:目の前の状況に対処
第二行動方針:罪を償うため、自分を汚す。
参戦時期:24巻終了後
[備考]:灰原は、この世界を現実だと思っていません。
* * *
ある程度の情報交換を行った三人であったが、とくにそれといった有力な情報は持っておらず、自己紹介程度に止まった。
それらを終えた後、「どうしようか?」と聞く小狼に、「腕が痛いから保健室に行きたい」と答えるコナン
ネギも戦闘による疲労感が溜まっており、小狼もさくらが学校に行くかもしれないと判断、2人共賛成した。
歩いている間は無言であった。
いつ襲われるかわからない状況、そのような状況下で敵の位置を教える会話は無用であった。
とりあえず小狼が先頭に、コナン、ネギと続いた。
小狼が前方を注意、ネギが後方注意という役割で、間に挟まれたコナンは違う事に集中できる余裕があり、この殺し合いについて考え出した。
(とりあえず全ての常識を捨てよう、それが脱出する為の第一条件、ネギと小狼の話を聞く限りこいつらは俺の世界にはいない。
あいつらがこんな事で嘘をつく意味もないし、他の出会った奴らからでも容易に判断できる。
つまり、あのジュダって野郎は幾多の世界の人間をこの空間に呼び寄せた、となる。これらをやる目的とかはどうでもいい。
これから確実に問題となっていくのが脱出手段……がないから困っているんだよな。
1番の邪魔はこの首輪、2番目にこの空間が島であることを……二重の罠が張られているって事だな……)
そう言いながら地図を取り出す。
地図には沢山の施設がおいてある。今から行く学校で休憩してからどうするべきか……と悩む。
(ネギとかの魔法でなんか空間移動的な魔法はないのか? それだったら首輪を解除すればいけると思うのだが……
だがその為には首輪を解除しなきゃならない。あのジュダって野郎がそんな魔法染みだ事をしてるんだから、この首輪も科学じゃなくて魔法で出来ているのだろう。
ようはその役目を担うのはネギや小狼って事なのか? 俺は何にもできねえのか? 落ち着け、考えるんだ工藤新一
お前にしか出来ない事があるはずなんだ。それは逆に言うと俺は死んではいけない存在でもあるんだ。……バーロ)
自分に喝を入れる。俺はこんな所じゃ死ぬわけがねえ、と
ここの殺し合いはよく出来ている。
よく出来ているから完璧に見える。しかし、この世に完璧はない。
どこか必ずミスっていうのが存在する。
1人で見つからないなら二人で探せばよい、2人で見つからないなら3人で探せばよい。
それが仲間ってものではないのか?
このわずか数時間で出来た仲間を信頼しようではないか
彼らもある程度教養のある人達だ。
3人寄れば文殊の知恵、やってやろうじゃねえか
コナンは強く願う。そしてこれからのするべき事を見極める。
「コナン君、大丈夫ですか?」
そんなコナンの様子がちょっと変だと気づいたのか、ネギが声をかける。
小狼は気にせず黙々と歩いていく為、ネギの様子には気がつかなかった。
もっとも、ここで足を止める気などなく、コナンも歩きながら答える。
「あぁ、一人で悩んだってしょうがねえよな!」
「……へ?」
コナンの言っている事がよくわからず、首を傾げなんとも間抜けな声をだすネギ
もう子供の役を演じる必要などない。
この世界での知り合いは灰原だけ、ここで自分の本性を晒しだして何か問題があるのだろうか?
そしてコナンは自然と笑みが浮かべてくる。
敵は強大だ――だからこそ倒しがいがある、それは完全犯罪に挑戦する探偵の顔であった。
* * *
学校までは近かったのか、歩いて十数分程度で着いた。
ご丁寧に校門から堂々と入る。
右手にはプール、左手には体育館、そして正面には学校
目の前に広がる校庭には人影一つない。
学校内はどうなっているかよくわからない。
窓に近づいてくれればわかるのだが、そんな様子はどの窓からもしなかった。
ここですべき事は休養とコナンの骨折の治療、それらに最適な場所は一つ
保健室、そこに行けばある程度の治療薬やベッドが置いてある。
まさに休憩所としてはうってつけの場所であった。
そして学校の玄関に入ろうとしたその時、
『わ、わだくじ、忍『ガガ、ピー』属、『ピーガガガッ』寺乱太郎は、人をじなぜてしまいました。
さ、3人も、死なずに済んだ人を死なせてしまいまじ『ガガーッ、ピーー』。
ここに、みなさんにお詫びの言『ピーガガガ』く……』
声が聞こえた。
それはまだ小さい音であった。しかし、3人の耳にはちゃんと入っていった。
音量や音から拡声器を使っているのかと思われる。しかし、壊れているのか所々声が飛んでいる。
止まる足、音の方向から大体北東であった。
絶えず続く涙声、音は次第に大きくなっていく――近づいている証拠だ。
コナンはこれを罠だと判断できた。
ずっとここまで拡声器を使ってきて、誰一人襲わないし、誰一人助けよう助けようとしない。
そんな事はありえない。ありえるはずがなかった。
それならば答えは一つしかない。
助けに来た人間が殺された。襲ってきた人間を返り討ちにした。
それぐらいの力量を持っている人間だという事
強力な武器か、強力な力か、どちらかはわからないが無闇に突っ込んではならない。
それに疲労感が溜まっているネギに片腕骨折のコナン、挑んでも3対1であるがあまり有利な状況ではなかった。
戦うならば作戦を駆使して不意打ちをかける。それでもリスクが高い。
ならばここはやり過ごすのが得策、三人とも声には出さないが同じ事を考えていた。
こうしている間にも音は大きくなっていく、自分達の存在を気づかれる前に学校内に入ろうとしたが、一人だけ足が止まっていた。
確かに自分達ならばこれが罠であると気づく。しかし仲間はどうだ?
自分の仲間にこれが罠だと感じずにそのまま助けに行く人間を――小狼は知っていた。
(さくら……)
この殺し合いに参加している1人の女性の姿が思い浮かぶ。
彼女なら行くかもしれない。この声を聞いて、彼の元に歩み寄るかもしれない。
さくらがこの学校にいる可能性は高い。こういった建物は少し人を安心させる部分がある。
ここで怖がって隠れていて、あの声を聞いていたら瞬くもの間に行ってしまう、そんな性格であった。
そしたら彼女はどうなる? 決まっている。罠であったら殺され、罠でなくても他のやる気のある人間に殺されてしまう。
小狼の考える事は可能性の低い事
しかし、この近くにさくらがいるだけで成り立ってしまう。
思ってしまったからには頭から離れない。
さくらが殺されてしまう光景だけが頭にこびりつく。
そんな事は防がなければ……
「あのさ、あの拡声器使ってる人の所へ行っていいか?」
わかっている、こんな事を言われてもなんて返されるのか
予想外の提案に驚くコナンとネギ、少し間を置いてコナンが答える。
「な……お前だってわかるだろ? あれはどう考えても罠じゃないか」
わかっている、あれが罠である事ぐらい
だけど行かなければ、たとえ可能性が0に近くても、そこにさくらと出会える可能性があるのならば
二人はずっと止め続けるだろう
正直嬉しい、自分の安否を気遣ってくれるのだから、でもたとえそれでも行かなければならない
それならば、たとえここで別れたとしても
「ならば、俺一人で行く。これは俺一人が決めた事だからお前達には迷惑をかけたくない」
「っておい! 本気で行こうとしてるのか?」
「俺は本気だ。止めても行かしてもらう」
口調が変わった。ここでコナンが力づくで止めようとするならば、こちらも容赦しないと伝えるかのようであった。
髪を乱暴にくしゃくしゃにするコナン、小狼の予想外の言葉に苛立ちを覚えていた。
ネギは黙って悟った。小狼が行く理由を……
と、ネギと小狼の目が合った。
静かに微笑んで小さく頷くネギ、軽く会釈する小狼
それだけ十分だった。二人の意思は互いに伝わった。
小狼はそのまま走り去っていった。
「あっ、おい!」
追いかけようとするコナンを止めるネギ
「僕達が今行っても無駄です。今はコナン君の腕の治療が優先でしょ?」
ネギの思いを伝える。今すべき事はコナンの腕の治療
コナンは無理をしていた。これ以上放っといてしまったらよくない事が起こるのはわかっていた。
なぜ無理をしようとしたのか? それは二人とも小狼を見過ごす事なんて出来なかったからだ。
せっかく出会えた、この殺し合いの中でまともな人間、そんな人を見捨てるわけなどなかった。
コナンもネギも出来る事なら小狼の助太刀に行きたい。しかし、それよりもやらなければならない事もある。
今はコナンの右腕の治療が最優先課題、拡声器の使用者の下へ行くのはその後であった。
それをネギに任せるよう小狼は伝えた。
そしてそれに頷くネギ
二人の意思は確実に的確に繋がった。
そしてそれでも、それでも小狼の事を仲間だと思うなら……
――助けにきてほしい――
その答えも決まってる。
ネギの手を左手で振り払い、早足で前を歩く。
「わーったよ……さっさと済ませるぞ」
ネギの方を見ないで呟くコナン
次の言葉は出さない。
「その後小狼を助けるぞ」とは言わなくてもわかっているのだから……
【D-4/学校1階、玄関内/1日目/昼】
【ネギ=スプリングフィールド@魔法先生ネギま!】
[状態]:胸に斜めに大きく浅い傷痕(ただしダメージはほとんどない)。魔力を相当使ってだいぶ疲労
リリスの唾液の催淫作用は解けました
[装備]:指輪型魔法発動体@新SWリプレイNEXT
[道具]:なし(共通支給品もランドセルもなし!)
[思考]:小狼君……無事でいてね
第一行動方針:コナンの腕を治療する
第二行動方針:その後小狼の元へと急行する
第三行動方針:出来る事なら魔力回復の為休みたい
第三行動方針:二人(エヴァ&小太郎)と、コナンのお友達(灰原)、小狼の仲間(さくら)を探す
第四行動方針:18時のリリスとの約束に遅れずに行く
最終行動方針:ロワから脱出する
[備考]:
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
催淫作用は解けましたが、襲ってくる存在には容赦するつもりはないようです。
【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:右腕骨折
[装備]:はやぶさの剣@ドラクエ
[道具]:支給品一式、バカルディ@ブラックラグーン、銀の銃弾14発、
シルフスコープ@ポケットモンスターSPECIAL
蝶ネクタイ型変声機@名探偵コナン
殺虫剤、リリスの食料と飲み掛けの飲料水
[思考]:急ぐぞ……これで小狼が殺されるなんて絶対あってはならねぇ!
第一行動方針:自身の右腕の応急手当
第二行動方針:その後小狼の元へと行く(拡声器の音の方向から大体の場所を判断しています)
第三行動方針:灰原とネギ、小狼の仲間を早めに見つけたい
第四行動方針:リリスを倒す為に協力してくれそうな人物を探す
最終行動方針:ロワから脱出する
[備考]:
リリスと殺害数を競う約束をしています。待ち合わせは18時にB-7のタワーです。
バカルディと飲み掛けの飲料水は、リリスが口をつけたため弱い催淫効果を持っています。
* * *
もう乱太郎にとっては生きる事はどうでもよかった。
怖かった。あの少年が、怖かった。
あの時彼に出会ったときわかっていた。殺される、と
それでも今生かされている、なぜなんだ?
そんな事を考えるのがどうでもよかった。
ただ言われた通り叫ぶ、自分の罪を告白する。
涙は止まらない、止まることを知らない。
今も自分の後ろには彼がいるのだろう。
言われた通りにしなきゃ殺される。
正直に言えば、別にそれでもよかった。
もう楽に死にたかった。それだけが、乱太郎の願いでもあった。
こう思っている間も自分の罪を拡声器を伝い告白する。
ずっと、ずっと、ずっと、それはもう1つの行動しか出来ない壊れたロボットみたいに……
広がる草原を歩く、しかし誰1人として乱太郎の言葉に対する反応がなかった。
ならば、反応があるまで歩き続ける。
歩く、歩く、歩く、右足が痛い。
血が少しずつ流れていて、必死に引き摺っている。
痛い、痛い、痛い、止まりたいくらいであった。
しかし、止まったらあの子に殺される。
楽に殺されるのではなく、拷問にあって辛い思いをして殺される。
そんなのはわからないが、なぜかはっきしと断言できる。
それは先ほどの出来事が原因なのかもしれない。
怖い、怖い、怖い、やっぱりあの人にだけは殺されたくない。
乱太郎に理性など残ってはいなかった。
口では同じ事を繰り返して、心でも数える程度の単語を何回も繰り返す。
そして、乱視で眼鏡がない乱太郎でも気づく。
既に目の前には学校があった。
目の前の扉は裏口なのだろうか? 小さい扉がキィキィと音をたてて開いている。
行く当てもなく、ただ歩くだけの乱太郎
そんな乱太郎が、このまま学校に入らない理由などなかった。
声が枯れてきた。
涙がどんどん言葉じゃさせなくなってきている。
それでも乱太郎は辞めない。必死に叫ぶ。
裏口から入った乱太郎は、休み時間子供達が遊ぶであろう、見晴らしがいい中央の位置に立った。
もう、動きたくなかった。この学校で人が来なかったら自殺でもしようかと思った。
だから最後に、最後の頑張りを乱太郎は見せた。
「わだくじ、乱だ『ガガッ、ピー』殺じてじまいまじだ……! ごめんなざ『ピー、ガガガ』めんなしゃい……!」
そして現れる。それは学校の方から現れてきた。
走ってきた。そして乱太郎の方を向いて立ち止まる。
もちろん乱太郎には乱視で見えない。だからまだ叫ぶ。
声が続く限り、のどが潰れるまで、それこそ死ぬまで
* * *
小狼がもう1つの校庭に辿り着いたとき、そこは奇妙な光景であった。
中央にポツンと立っている、忍者の姿をした少年
全身血まみれ、各所に見られる切り傷、そして痛々しい右足の傷
そんな少年が叫んでいる。必死に叫んでいる。
自分の存在に気づいていないのだろうか? その目は死んでいる人の目となんら変わらなかった。
とりあえず助けるべきだと小狼は思った。
だから再度走る。彼の元へと辿り着くために、
そして感じる。ここには色々木や小さい建物がある。そこに誰かいると体中の隅々が警告する。
その瞬間だった。
突如風が吹いた。遅れて目の前に迫る何か
それを直感で危険だと感じる小狼は素早く剣のカードを取り出した。
情報交換の最中に交換したクロウカード「剣」、光と共に剣として具現化されて、それを防ぐ。
甲高い金属音、弾ける火花、後退する小狼
そして、いつの間にか乱太郎と小狼の間に1人の少年、ヘンゼルが立っていた。
その少年の太ももには鎌みたいな物が4本付いていた。
思わず舌打ちする小狼
その姿を見て笑みを浮かべるヘンゼル
(やはり罠であったか……)
周囲を見渡すが、さくらの姿はいない。
つまりこの学校にはいないということになる。
ここにいない残念と、ここにいなくてよかった安堵感が混ざり合う。
そして忘れる。今するべき事は目の前の対処だ。
太ももについている武器の動きは自然な動きをしていた――まるで生き物みたいに
長さもこっちの剣の倍程、逃がしてくれる様子もない。
「よかった、2本とも治ってくれて……これなら楽しく遊べそうだね!」
ヘンゼルは嬉しそうに言う。
小狼には何の事かわからない。しかし、それは確実に小狼の立場を危うくしていた。
と、ヘンゼルが小狼との距離を詰めようとし、小狼を剣を構え直す。
2本ブレードを足代わりに、勢いをつけての跳躍――文字通り飛んだ。
それは僅か1秒程で小狼との距離を詰める戦法、そして残りの2本のブレードで小狼を襲う。
左右両方からの攻撃、両方とも胴体を真っ二つにしようとの横一閃
聞こえる音は風を斬る音、そして少しだけ散らばる小狼の髪の毛
ヘンゼルが下を見たや否や、目前には小狼の剣
屈んでからの腕の力を利用した自身の持てる最高速度の突き
しかし、その突きをヘンゼルは余裕の表情で防ぐ。
4本の内の1本? いや、違う!
小狼が気づく時には4本のブレードが襲い掛かってくる。
上2本に、右、左と今度は3方向
小狼は意を決してそのままヘンゼルに体ごと突っ込んだ。
衝突する2つの体、4本のブレードが小狼を切り刻む前に、ヘンゼルの体が倒れこむ。
と、ブレードもヘンゼルと同じようによろけ、その隙を狙って再度距離を置こうとしたが……
「残念ッ!」
ギリギリの所で踏ん張り、再度ブレードを4本小狼の方へと向けた。
死を感じる小狼、カメラのコマ割みたいにゆっくりと迫っていく。
「伏せろ!!」
第三者からの声、それに覚醒する小狼は言う通りにしゃがみこむ。
と、先ほどのスロースピードから元のスピードへと戻った。
上空で風を斬る音を耳で聞き、弾き返されるブレードを頭を上げ、見た。
ヘンゼルもあまりの事態に思わず後退する。
小狼もその隙に本気でいこうと動くのに邪魔なランドセルを取り外す。
そして、隣に駆け込む第三者
手には釣竿を持っており、全身緑の服の金髪、特徴的な耳を持っている少年であった。
「大丈夫?」
「おかげ様でね」
リンクの質問にご覧の通りと肩をすくめて答える小狼
ここにきた思いは違う、1人は拡声器使用者のため、1人は知り合いのため
それでも彼らには関係ない。今すべき事は目の前にいる敵を倒すのみ
そしてその思いは同じ!
「なるほどね、2人で遊んでくれるのねお兄さんたち」
ヘンゼルは心底喜んでいるようであった。
手には先ほど小狼の攻撃を防いだ包丁が握られていた。
距離の間合いは10M弱、いくら2対1とは言え、武装では圧倒的小狼、リンク側が不利
どうでるか楽しみなヘンゼルであった。
しかし、その楽しみを奪ってる人間がいるのもまた事実
「みなざ『ピーーーーガガガッ』ば3人も、死なせでし『ガガガピーッ』を申し上げたく……」
未だに喋っている乱太郎
彼も何かが起こっているのは音からわかった。しかし目で見えない以上、それらが何なのかはわからない。
故に先程の一悶着の間も叫んでおり、今も叫んでいた。
そんな姿を見たヘンゼルは不機嫌へと変わった。
「うるさいなぁ、もう」
「ごめんなゴフッ!?」
それは一瞬の出来事であった。
激しく襲ってくる痛みと熱、乱太郎は恐る恐る自分の体を見る。
ぼやけているが、そこには刃みたいなものが刺さっていた。
刺さっていた箇所は心臓、そこにヘンゼルのブレードが貫通した。
「キミはもういらないから死んでね」
言いながらブレードを抜くヘンゼル、胸から血が噴出した。
ぼやけている景色がどんどん揺らいでいく。平衡感覚もなくなっていく。
倒れたのかわからない。血がどんどん抜けていく感じ、もうぼやけた景色すら見えなくなった。
* * *
私は死ぬのでしょうか?
自分に投げかける問い、自分でわかってる答え
もう自分は死ぬ。
それでもよかった。
もう苦しい思いはしなくて済む、もう辛い思いはしなくて済む。
もしあの3人と出会えたなら謝ろう、「ごめんなさい」って
許されるとは思わない。だけど精一杯謝ろう。
自分の犯した罪は一生償われない。
謝っただけでも償われるわけがない。
死んで償ったとしても、それもまた償われるわけがない。
何でこうなったのでしょうか?
どこで道を外してしまったのでしょうか?
私はただみんなと仲良く過ごしたかっただけなのに……
私が何をしたのでしょうか?
私が悪いことをしたのでしょうか?
教えてください、誰でもいいです。
この罪は償われますか?
たとえ償われなくてもせめて、せめてお願いします。
あの3人に会わせ謝らせてください。
それしか私の出来る事がございません……どうかお願いします。
――ごめんなさい――
そこで乱太郎の意識は途絶えた。
* * *
「これで邪魔者はいなくなったし、心置きなく戦えるね」
ヘンゼルが2人に向けて笑う。その姿はまるで狂気の一言に尽きる。
2人は何も言えなかった。
目の前で殺されるのに助けようともましてや動こうとも出来なかった。
言い訳はできる。乱太郎との距離は離れており、ヘンゼルはほとんど目の前に位置していた。
さらにヘンゼルは残りの3本のブレードで、2人を威嚇していた。
そして、それは一瞬の出来事
ちょっと余所見していたら死んでいた、っていう感じの早さである。
そんな出来事防ぎようがなかった。だから彼らにはなんら非はなかった。しかし、本当は違った。
2人はこの拡声器の声によって来た人間ではないか
彼の必死に助けを請う声に呼ばれて助けてにきた人間ではないのか?
見殺しにした。お前達は助けなかった。
誰かの声、続けて聞こえる死んでしまった少年の「ごめんなさい」という声が何度も何度も
そんな2人の事情など知らず、ブレードを使って襲い掛かるヘンゼル
舌打ちしながらも、剣を使って防ぎきる小狼
リンクは釣竿を使って遠距離から攻撃しようとするが、いかんせんスピードがあまりなく、ヘンゼルに避けられる。
あるるかんを使うべきか悩むリンク、クロウカードの力を借りてヘンゼルの猛攻に耐える小狼
2人は、乱太郎の死という呪縛から抜け出せずに戦闘を開始するのであった。
【D-4/学校、裏の校庭/1日目/昼】
【ヘンゼル@BLACK LAGOON】
[状態]:低度の疲労
[装備]:血のついた包丁@サザエさん、バルキリースカート(4本全て使用可能)@武装錬金
[道具]:支給品一式、スタングレネード×9
[思考]:お兄さん達も強いねっ
第一行動方針:目の前の2人(小狼とリンク)と遊び、殺す(小狼の剣の武器は出来る限り奪いたい)
第二行動方針:手に持って使える鈍器や刃物が欲しい(銃でも構わない。その時は姉様になる)
基本行動方針:いろんな人と遊びつつ、適当に殺す。
【リンク(子供)@ゼルダの伝説 時のオカリナ】
[状態]:健康、助けられなかった事に対しての罪悪感
[装備]:釣竿@ポケットモンスターSPECIAL、あるるかん@からくりサーカス
[道具]:基本支給品
[服装]:中世ファンタジーな布の服など
[思考]:と、とにかく今は目の前の子をなんとかしなきゃ
第一行動方針:目の前にいる子(ヘンゼル)を少年(小狼)と一緒に倒す(最悪殺す)
第二行動方針:第一行動方針を終えたら梨花の下へと行く
第三行動方針:目の前で死んでいる子(乱太郎)に何かしてやりたい
基本行動方針:ゲームを壊す
参戦時期:エンディング後
[備考]:性格は漫画版を参考にしました
【小狼@カードキャプターさくら】
[状態]:健康、助けられなかった事に対しての罪悪感
[装備]:クロウカード「剣」@CCさくら(剣状態)
[道具]:きせかえカメラ@ドラえもん(使用不能)、基本支給品
[思考]:……くそっ!
第一行動方針:目の前にいる子(ヘンゼル)を少年(リンク)と一緒に倒す(最悪殺す)
第二行動方針:桜を探し、守る
第三行動方針:仲間を集める
第四行動方針:生きて出会えたらコナンとネギに謝りたい
第五行動方針:目の前で死んでいる子(乱太郎)に何かしてやりたい
第六行動方針:きせかえカメラの充電
最終行動方針:桜とともに島を脱出する
【猪名寺乱太郎@落第忍者乱太郎 死亡】
*ランドセルは乱太郎が背負っております
* * *
「ちっ……あいつが殺されるのはいけ好かないが我慢するしかねぇな」
「ケケッ、アノ時殺セバヨカッタナ」
チャチャゼロの言う通り、あの時すぐに殺しとけばよかったと後悔した。
まぁこういった展開になって感謝しているのも事実であった。
メロとチャチャゼロは、ヘンゼルにも乱太郎にも気付かれない場所で見張っていた。
そして事の展開をただ傍観、事態の様子を伺っていた。
今、メロの目の前にいるのは、監視していた2人と剣を持った新しい少年であった。
対峙している2人に距離ができた時、メロは移動をし始めた。
「ドウシタンダ一体?」
「あいつらとあんな見晴しのいい所で戦っても勝てる気がしない。
かといってあそこでのんびりと観戦するのは時間の無駄だ。この間に別な事をやるぞ」
メロは気付かれないと思うが、足音を出来る限り消して、塀沿いを走って行く。
やや遠回りであったが、誰にも気付かれずに学校へと侵入出来る最適方法であった。
「何ヲスルンダ?」
「学校にはもともと行く気だったのさ、まぁこうやって来るとは思わなかったがな。
ここには保健室がある。そこには普通に考えて治療薬や包帯があるはずだ。
治療薬は怪我をした時活用出来るし、包帯に関しては騙す事も出来るしな」
チャチャゼロはメロの言葉によって、どういった作戦を練っているのかわかり、納得する。
メロの作戦はこうだ。
あの忍者少年を殺す事に関しては諦める。
自分自身が悪だと他人言われる前に、あの同業者が確実に殺すのだからそれで割り切る。
また、あの同業者は何やら強力な支給武器を手に入れていた。さらにメロにとっては苦手なタイプ
ただの快楽殺人者――そうメロが決めた厄種は、1対1で勝てる気がしなかった。
だが、乱太郎のおかげで状況は変わった。剣を持った少年が表れて今も厄種と対峙している。
否、既に戦闘になっていた……そして次の状況にメロの目が見開く。
少年が殺されそうになっていた。4本のブレードが隙だらけの少年に襲い掛かる。
咄嗟にまずいと言葉が出そうになったが、メロにとってさらに幸運な事が起きる。
釣竿を持った新しい少年、その少年が厄種の攻撃を防いだ。
これで2対1、メロにとっては誰かに感謝したいぐらい理想の展開であった。
いかに厄種が強力な武器を持っていようとも、あの2人の力量の前には拮抗ないし、やや不利になるであろう。
どちらが勝っても問題ない。その勝者は確実に怪我ないし、疲れきって油断しているはず、その勝者をメロが殺せばよかった。
まさに漁夫の利作戦、ここまでが先ほど言った作戦、メロはさらなる作戦を展開する。
ではその決着が着く間、ただ黙って観戦するというわけにはいかなかった。
学校の保健室で薬や包帯を手に入れる。
薬は今後の状況を考えると、非常に重要になっていくアイテムの1つである。
このゲームが進んでいくにしたがってメロ自身も怪我をする可能性がある。
その怪我をある程度治せるのは、この先喉から手が出る程欲しい必須アイテム
さらに言うならば、相手が怪我をしたとき、接触しやすい上に信頼感を置きやすい。
そういった点に関しては包帯にも言える。しかし、包帯にはそれ以上の効果がある。
自分で包帯を巻けば、あっという間に怪我をした人間に移り変わる。
そうしたとき、相手がお人好しであったりしたら助けてくれるだろう。
つまり、薬や包帯に関してはデメリットなしのメリットだらけの最高品でもあった。
そこまで考えていたメロに、チャチャゼロは素直に感心した。
感心したからこそ、思った事をそのまま口にする。
「保健室ニ人ガイルンカモシレナインジャネーノカ?」
と、チャチャゼロの発言に足を止める。
確かに、とメロも納得した。
そうである。同じ事を考えている人や、本当に怪我をした人間が保健室を使うのは至極当然の発想である。
時間帯さえ合えば、衝突するのもおかしくはない。
油断していた。自分の作戦は時々見落とす部分がある。しかも、こんな初歩的なミスをおかしてしまうとは……
――だからニアに出し抜かれる――
ギリッと強く奥歯を噛み締めた。しかし、見落としたミスはチャチャゼロが拾ってくれた。
再びメロは走り出す。
「問題ない、仮に人がいたとしても近くに行けばわかる。そこでどうするかは……ケースバイケースだな」
大丈夫ヘマはやらない。
向こうでもこちらでも1つのヘマが死に繋がっている。
だが俺はまだ生きている。それはヘマを起こしていない証
あの忍者のむかつく声も消えた。きっと死んだのだろう。
目の前には学校の裏口の扉、鍵はかかっておらず開いている。
大丈夫、全ては俺の予想通り……
* * *
「ど、どうするべきなのかしら……」
金糸雀は正直困っていた。
結局どうしようかと悩んだ挙句、行くところがない金糸雀はとりあえず乱太郎達についていく事にした。
そして現在に至っている。
目の前には忍者少年の死体と3人の少年達
もちろん気づかれている様子はなかった。
そして頭に人形を乗せた少年は学校の中へと入っていく。
スケルトン眼鏡を使う事によって学校内にも何人もの人がいるのはわかった。
だから悩む、これからどうするべきなのか
事態は先ほどより悪化していると言える。
このまま何もしないでいたとしても死体は増える事は間違いなかった。
それこそ彼女の立ち回り次第では、救う人も、死ぬ人も増えていくのかもしれない。
もちろんそこにはそれ相応のリスクも伴ってくる。
「ってさっきとほとんど状況が変わらないじゃない!
……どうするべきなの〜〜〜!?」
彼女は思う。
これならばついていかない方がよかったのかもしれなかった、と
【D-4/学校、裏口/1日目/昼】
【メロ@DEATH NOTE】
[状態]:スケボーで転倒した際、軽い打ち身。かるい掠り傷。
[装備]:天罰の杖@ドラゴンクエストX、賢者のローブ@ドラゴンクエストX
[道具]:基本支給品(ランドセルは青)、チャチャゼロ@魔法先生ネギま!
ターボエンジン付きスケボー@名探偵コナン(ちょっと不調)
[思考]:まずは保健室だな……
第一行動方針:保健室へと行き、物資を調達する
第一行動方針:厄種(ヘンゼル)と2人の少年(リンクと小狼)の戦いの勝者を殺す
第三行動方針:『3人抜き』を達成し、『ご褒美』を貰い、その過程で主催側の情報を手に入れる
第四行動方針:どうでもいいが、ドラ焼きでなく板チョコが食べたい。どこかで手に入れたい
基本行動方針:ニアよりも先にジェダを倒す。あるいはジェダを出し抜く
[備考]:ターボエンジン付きスケボーは、どこか壊れたのか、たまに調子が悪くなることがあります。
【D-4/学校、裏の校庭の木/1日目/昼】
【金糸雀@ローゼンメイデン】
[状態]:低程度の疲労、全身打撲(行動にやや支障あり)、服が少し濡れたまま、困惑
[装備]:コチョコチョ手袋@ドラえもん、スケルトンめがね@HUNTER×HUNTER
[道具]:支給品一式、イエローの衣類一式(少し湿っている)
[思考]:もうどうすればいいの……
第一行動方針:ズルして楽して頂くために、とりあえずは状況の推移を見守るかなんらかの行動を取ろうと思う。
基本行動方針:姉妹を探す?
投下完了ッ
とりあえず採用されてWIKIに載せた時、タイトルが変わった所までを前半、変わった後を後半にしてください
乙です
ところどころ。がないのが気になったが概ねGJ
長編投下おつかれさまでした。
状況が動いたな。
校外にヘンゼルVSリンク&小狼。
金糸雀もまだ外。
校内に梨花VS一休さん?、灰原は気絶したまま、
ネギとコナン、それからメロ@チャチャゼロ付きが侵入と。
あと乱太郎南無。……やっぱりあの状況からは生き残れないか。
GJ
拡声器の呪い再び……! 最後までカワイソスだったな乱太郎。
リディアも近づいてるし、学校がまさに戦場になりそうだな。
破壊力はあんまりない面子だが、その分血みどろの戦いが見れそうだ。
しかしショタばっかり死ぬな……
肉弾戦なのが男組
頭脳戦なのが女組
女組は女組でドロドロしている…
男組よりも悲劇的になると…予想…
('∀`)フヒヒ…
この学校は呪われてるんジャマイカ
破壊力も結構ある様な……?
乱太郎ー!
なんというか、死んだことでその場に残された連中が苦しんでるのがさらにカワイソスだな。
校内組は結構自由度高いな。どこがどういう順番で遭遇するかで結構変わってきそうだ。
あとリディアだけでなく、トマやトリエラも絡もうと思えば絡めるんじゃね?
ってさらに混乱するような気もするがw
展開次第では死者スレに大量の机と椅子が落ちてくるな
あと20分ほどで予約の期限が来ますが、微妙にちょっと遅れるかもしれません。
現在本文は一通り書き上げて、最終推敲中。今夜のうちに投下できるとは思います。
>>396 投下乙です。
文章が少々読みにくかったものの、大人数がうまく動いていたと思います。
ログを読み返して思ったのですが……なにげに金糸雀のスケルトンメガネ、
うまく使えば首輪解析に重宝する重要アイテムなのでは?
>>406 ゆっくりご推敲なさってください。
お待たせしました。予約していた廃病院組の4人、投下します。
またもかなりの長文になってしまい、スイマセン……。
ビュティは悩んでいた。
より正確に言えば――悩んでいたというより、苦しんでいた。
理不尽な事件が次々と発生することには、慣れてしまっている。
不可解な人物が次々と出現することにも、慣れてしまっている。
むしろ普段ボーボボや首領パッチが彼女の前で繰り広げていた世界に比べれば、大人しいくらいだ。
ハジケまくった彼らに振り回される日々の中、もう少し常識を知って欲しいものだと何度溜息をついたことか。
だが……その「大人しさ」、「常識の通じる空気」こそが、今、ビュティを苦しめているモノの正体だった。
「ううっ……キツい。場の空気が、合わないッ……!」
「ビュティさん、大丈夫? 何だか顔色悪いよ?」
「い、いや、気にしないで、ブルーちゃん。こっちの話だから」
「??」
真面目なシーンなど3コマも続くことがない世界から来たビュティ。
それでも、眼球を突出させ大声でツッコむ対象があるうちは、まだ良かったが……
幼い少女・ブルーと出くわしてからの1時間というもの、彼女はシリアス過ぎる空気に溺れそうになっていた。
一種の、禁断症状のようなモノである。
廃病院でブルーと名乗る幼い少女と遭遇し、事情を聞き、持ち物を一部交換して――
そして彼女が浴室から出てきてからも、3人の間にはギクシャクした空気が残ってしまって。
ブルーのための服を探している今も、互いに微妙に距離を置き、会話も途切れがちだった。
口数少なく、何やら1人で深く思い悩んでいるらしいイヴ。
「信じてるからね?」と何度も何度も念を押しながらも、不安げな表情の消えないブルー。
その2人の間に立って、頑張って場を明るくしようと努めているビュティ。
けれど、ビュティの努力はどこまでも空回りしてしまって――そりゃ、弱音の1つも出てくるというものである。
「……ビュティさん?」
「あ、イヴちゃん。何か見つかった?」
「ええと……どこも破けてない白衣が一着。ちょっと埃っぽいけど、着れると思う……」
一通り病院内を回ってみた彼女たちだったが、この廃病院、中に残されたモノもかなりボロボロだった。
小児患者用のパジャマでも残っていれば良かったのだが、見つかるものはどれも虫食いや腐食が激しく。
今は、巡り巡って1階の片隅の職員用更衣室を漁っていた所だった。
イヴがロッカーの1つをこじ開けて見つけたのは、まだビニール袋から出されていなかった新品の白衣。
確かに埃に埋もれていたし、下着も無しにコレだけ、というのはちょっと絵的にマズいかもしれない。
それでも、あちこち破けたボロ布を辛うじて纏っている今の姿に比べれば、遥かにマシだろう。
「ブルーちゃん? これ、どう?」
「ありがとう……。それで、その、ちょっと着替えたいから、その……」
「分かった。外に出てるから、何かあったら呼んでね。イヴちゃん、行こう」
「あ、うん……」
先のシャワーの時もそうだったが、歳のわりに周囲の視線を気にするブルーだ。
いや、それともそれは、羞恥ではなく警戒心だろうか? その身に受けた苦痛を考えれば無理もないか。
ともあれビュティは、イヴの見つけた白衣をブルーに渡すと、イヴの背を押して更衣室から出る。
警戒されてしまうのは仕方ないのかもしれないが、せめて、彼女のやりたいようにやらせてあげよう――
自分自身の不安定な精神を必死に抑えつつ、ビュティはそう考えたのだった。
* * *
――だからイヴもビュティも、気付くことができなかった。
少女が職員用更衣室の中で、もう1着、明らかにサイズの合わない別の服を見つけていたことにも。
その服を彼女が、こっそりランドセルの中に滑り込ませていたことにも。
その服と今の持ち物から、彼女がいざという時の「とある作戦」を練り始めていたことにも――。
「なんだか、2人ともそれぞれ余裕無いみたいねぇ。
ま、向こうの事情は分かんないけど……コッチにとっては扱い易くていいわね。ホホホ」
* * *
(う〜、苦手だ。やっぱりここまでシリアスな雰囲気が続くと苦しいなぁ)
更衣室の外の廊下に並び、ブルーの着替えを待ちながら、ビュティはなおも苦しんでいた。
ああ、ツッコミたい。この重たい空気にツッコミたい。
セリフの半分以上がツッコミだった彼女、こうもツッコむ対象がないと、思わずグレたくなってくる。
誰かボケてくれる人は居ないのか。不条理でも理不尽でもいい、何か奇想天外なことをしてくれないものか。
けれど、隣で悩んでいるイヴはどう見てもボケとは無縁な存在だし、ブルーも真面目でしっかりした子だし……
「そうだ、グラサンマン! グラサンマンがいた!」
「??」
唐突に奇声を上げたビュティに、イヴが不審げな視線を向けるが、それに応える余裕もなく。
ビュティは急いで自分のランドセルの中を漁る。
ボーボボの力を宿したあの喋るサングラスなら、そこに存在するだけでツッコむには事欠かないはず!
禁断症状と期待に震えるビュティの手が、しかし、メガネではなく覚えのない紙を掴む。
?? と首を傾げながら、引っ張り出して見るビュティ。広げてみれば、それは簡潔な置手紙。
『 ランドセルの奥底に自分を見つめる旅に出ます。探さないで下さい。
あと今日はスーパーが特売でところてんが安いはずなので買っておいてね♪ ; 』
「――って、旅に出ちゃったー!?」
ランドセルの中って旅できるほど広かったの!? とか、特売のスーパーってどこにあるのよ?! とか、
この手紙どうやって書いたの?! いや不条理ギャグ相手に野暮言っても仕方ないけどさ! とか、
その署名だと「コンマ」じゃなくて「セミコロン」だよ?! って、ひょっとしてツッコミ待ち!? とか、
まさか前の1話で存在自体すっかり忘れられてたのがそんなにショックだったの?! とか、
あーやっぱり意志持ち支給品無駄に多杉だもんねーってなんで私がそんな心配を、とか、
とにかくまぁツッコミ所は色々あったが、とりあえずビュティは顔面を大きく変形させながら絶叫して。
隣に佇むイヴが目を点にして見守る中、しばしの硬直の後、ようやく相好を崩してへたり込んだ。
「へ、へへへ……よ、ようやくできた〜〜。あーしんど……」
「??」
「? 何かあったの? 凄い声出してたみたいだけど……」
「あー、こっちの話だから。気にしないで、ブルーちゃん」
ようやく更衣室から出てきたブルーが、心配そうに声をかける。
裸の上に、大きすぎる白衣。腕は何重にもまくって調整しているが、裾はかなり地面を引き摺っている。
そんな彼女に、疲れ果てた様子のビュティは軽く手を振って、大きく溜息をつく。
ツッコミ分、僅かではあるが、補充完了。これで暫くは、戦える……?
* * *
「――で、これからのことだけど」
何をするにも、体力は必要だ。ドタバタ続きで、朝ごはんも抜きだったわけだし。
時刻はもう正午に近く、3人は2階のロビーに戻って、簡単な食事を始めながら今後の相談を始めていた。
とりあえず今は、共通支給品の食料と水での質素な食事。
もっと病院内をよく探せば、非常食なども見つかったかもしれないが……
「イヴちゃん、体調の方はどう?」
「『変身』の力なら、だいぶ回復したみたい。でも自分でも限界が分からないのがちょっと怖いかな。
時間と状況に余裕があれば、『天使の翼』以外も色々試しておきたいんだけど……
この場所では、できるだけナノマシンの力を頼らない方がいいのかもしれない」
ビュティの問いに、イヴは明らかに作り笑いと分かる強張った笑顔で答える。
そしてチラリと視線を向けたのは、食事の最中も身近に置いたままのアタッシュケース。
イヴもビュティも、同席していたブルーがしっかりとその様子を観察していたことに、気付かない。
「それより――北の方の事が気になって。この病院にもう用が無いなら、そっちに行こうと思って」
「北? 北って……ああ、空から落ちる前に見てたアレね」
「ブルーさんのこともあって、詳しく説明する暇がなかったんだけど……」
病院の北、森を抜けた先に立っていたモニュメントが倒壊した様子。
その直後、舞い上がる粉塵の中から、人影が1つ、森の方に走る様子を見たような気がするけれど。
銃声のような音が、風に乗って聞こえたような気もしたけれど。
けれどそこでイヴの意識は途絶え、墜落してしまったのだ。
確かに見た・聞いたと言い切れるほどには、はっきりとは見えてない、聞こえていない。
「――ころしあい、していたの?」
「分からない。本当に、分からないの。私が確認できた人影は、モニュメントの前にいた1人だけだから。
何らかのトラブルが起きたのは、間違いないと思うんだけど」
ちょっと大きめの白衣の胸元を掻き合わせ、不安そうに尋ねるブルー。
それに答えるイヴの表情は浮かないものだ。だって、いくら言い繕ってみたところで、
「つまり――みごろしに、したの?」
「!!」
「ちょっと、ブルーちゃん!? それは言い過ぎだよ!?
イヴちゃんだって気絶するほど疲れちゃってたんだし、助けに行く方法も無かったんだし……!」
「……いいよ、ビュティさん。自分でも、そう言われても仕方ないと思うから」
「……ごめんなさい。アタシ、そんなつもりじゃ……ごめんなさい」
ブルーの無邪気な、端的な、しかし言ってはならない問いかけに、ビュティは怒る。
けれど、当のイヴは弱々しい微笑みを浮かべただけで。
当のブルーも、すぐに自分の過ちに気づいて、深々と丁寧に頭を下げて。
その文句のつけようもない態度に、またしてもビュティ1人、取り残されたような感じになってしまう。
重たい沈黙が、ロビーを包む。
* * *
(ああもう、こういう時、ボーボボや首領パッチ君なら、どうするんだろう?)
重苦しい沈黙に耐え切れず、ビュティは考える。
一緒に旅し戦ってきたあの仲間たちなら、どういう行動を取っただろうか?
この気まずい沈黙を前にして、彼らなら……
(……ダメだ! 文脈無視して意味不明な寸劇始める様子しか思い浮かばないぃぃぃッ!)
ビュティの脳内でボーボボや首領パッチがワケの分からないノリで踊り始め、彼女は頭を抱える。
なんで手に手にもずくを持っているんだろう。なんで血と絆と妄執の便座カバーを振り回しているんだろう。
どう考えても君たちの乗ってるその戦車、ハズレセット組み合わせて作り出せる代物じゃないから。うん。
……って、ハズレセットって何? 相変わらず意味不明な光景だ。いやビュティの妄想なんだけど。
(ああ……そうね。あの人たちはいつもマイペースだもんね。
私と違って、周囲の心配なんてほとんどしないもんね。うふふ、うふふ……)
ビュティは次第に壊れはじめる。やっぱりコンマの置手紙1つでは、補充できる気力にも程度がある。
ブルーとイヴが暗い表情で黙り込む中、ビュティ1人、妄想の世界にトリップしていく。
(この調子だと、この辺で唐突な新キャラの登場かな〜。でも驚くのはいつも私1人なんだよね〜。
みんな、「そういやお前誰?」って感じでさ〜〜)
だから、ビュティは気付くのが遅れた。ビュティ1人、気付くのが遅れた。
イヴとブルーがハッと顔を上げる。身を強張らせ、耳を澄ませ、互いの顔を見合わせる。間違いない。
「……ッ!!」
「今……足音、聞こえなかった?」
「え? ……ホントだ、また誰か来たのかな?
――って、本当に新キャラ来ちゃった〜〜ッ!?」
――ギャグとシリアスの狭間にハマると、ロクなことにはならない。
喜劇は容易に悲劇に転じるものだし、笑える状況は常に笑えない状況と背中合わせ。
ほんの少しの運命の悪戯で、天国から地獄にまっ逆さま――
* * *
「――って、本当に新キャラ来ちゃった〜〜ッ!?」
吉永双葉は、いきなり上がった奇声にビクッと身を竦ませる。
不気味な廃病院には相応しからぬ素っ頓狂な声が、無人の廊下に響き渡る。
埃だらけの廊下の上に大小無数の足跡が残っていたから、誰かが既に探索していることは分かっていた。
他の誰かに出くわす危険も承知の上で、双葉は中に足を踏み入れたのだ。
けれどまさか、向こうから大声で居場所を知らせてくれるとは。
「どんな奴がいるんだよ……! ま、まあ、『アイツ』みたいなのは居ないと思うけどよ……」
よくよく耳を澄ませば、最初の叫び声だけでなく、それを咎めるような別の声も聞こえてくる。
複数でつるんでいるということは、殺し合いに乗っている可能性は低いと見ていいか?
双葉は覚悟を決めると、声のした方向、2階に続く階段を昇り始めた。
* * *
――やがて現れた少女は、「吉永双葉」と名乗った。
ビュティが傘を、イヴがアタッシュケースを手に身構える中、両手を上げて抵抗の意志の無いことを示す。
武器を持っていないことが分かると、どうしても視線が向くのは彼女のお腹あたり。
一応の応急処置はしているようだが、オーバーオールの腹部には血の滲む穴がいくつも空いている。
散弾銃の攻撃を受けたのだ。厚手のデニム生地でなければ、もっと酷いことになっていただろう。
「アタシは、殺し合いをする気はない。そっちの3人もそうなんだろ?
この病院には、傷の手当てに来たんだ。見ての通り、結構キツくてさ」
「うん、分かった! 傷を見せて、すぐに治療を……そこの部屋に、薬とかもあったはずだから……」
「ま、待って。その前に――」
すぐにでも双葉の手当てを始めようとしたビュティ、それを押し留めたのは、この場で最も小柄な少女。
彼女は怯えた表情のまま、双葉を見上げて問い掛ける。
「その前に――おはなし、聞かせてもらえる?
北の方で、何があったのか。どうしてあなたが、撃たれちゃったのか」
* * *
ブルーの時から2回目で、余裕が出てきたということもあったのだろう。
武器も持たず、最初っから戦う意志のないことを表明していたせいもあったのだろう。
見るからに深い怪我を負っており、脅威の度合いが低かったこともあったのだろう。
けれど。
(アタシの時に比べると、随分と甘い対応じゃないの。ロクに武装解除もしないで、さ)
4人の中で最も幼い外見をした少女は、心の中で鼻を鳴らす。
不満の言葉を飲み込んで、ブルーは双葉を観察する。
一般的にポケモントレーナー自身は戦闘能力を持たないが、それでも彼らには共通した特技がある。
それは、「他人の戦闘力の目利き」だ。
相手の立ち振舞いや雰囲気を鋭く観察し、相手の大まかな力量を推し量る眼力。
呼吸や怪我を見れば、「戦闘不能」に至るまでの限度、すなわち現時点のダメージを推測することもできる。
本来はポケモン相手に使う技術だから、人間に無理やり当てはめれば多少の誤差も出るだろうが……
それでも、全くの素人よりは深いところまで分かる。
ブルーの見たところ、この双葉、運動神経や体力はかなり優れているが、マトモな戦闘訓練は受けてない。
そして、大人顔負けの強靭な気力だけで耐えているが、その身に受けた傷は相当に深い。
あとほんの一押しで「戦闘不能」――すなわち、死に至るダメージと見た。
ブルーは考える。
(この2人は、アタシが生き残るための「道具」なの。
新しい「道具」が増えるならともかく、余計な「足手まとい」なんて増やしてたまるものですか。
このガキから必要な情報だけ聞き出したら、後は……!)
* * *
「……んで、神楽に後を任せて、アタシは逃げてきたんだ。
悔しいけど、この傷じゃマトモに戦えねーしな。神楽も、そうしろって言ったから」
「うーん、でも双葉ちゃん、仕方ないよそれはー」
「うん……私たちも、何かできたかもしれないのに……」
廃病院の2階のロビー。
暗い表情で淡々と経緯を語る双葉を、ビュティが慰め、イヴは拳を握って自分を責める。
そう、双葉の話は、イヴたちに大いなる後悔をもたらしていた。
北のモニュメントの所で、チャイナ服の少女が、黒い喪服のような服を着た少女に襲われていたこと。
双葉が加勢したが、逆に「神楽」と名乗ったチャイナ服の女に助けられたこと。
持ち物を交換して、後を任せて逃げてきたこと。
逃げながらも、切れ切れに黒い服の女の哄笑が聞こえてきてたこと――
その神楽という少女が、襲撃者を撃退して病院に向かって来ている可能性は、無いとは言い切れないが。
双葉の話を聞く限りでは、ちょっとそれは楽天的過ぎる予想としか思えない。
良くて相討ち。勝っていても神楽の重傷は避けられまい。
悪くすれば、神楽ではなくその「黒い服の少女」がこちらに向かっている可能性さえある。
物事に「もしも」は無いのだけれど――
もしもイヴたちが病院で休もうとせず、疲労を押してでも北に進んでいたら?
ひょっとしたら、双葉と神楽を救えていたかもしれない。間に合っていたのかもしれない。
もちろん、イヴとビュティの2人も、その「黒い服の少女」にまとめて倒されていた可能性もあるのだが……。
再び廃病院のロビーを包む、重苦しい沈黙。
ビュティはまたも1人で苦しみ始め、イヴは思い悩み、そしてブルーは――
「――いくつか、聞いていい?」
「? なんだよ?」
「えっと、その、双葉は、その黒い服の女の子に、槍を持って突っ込んだんだよね?
つまり、双葉は――ころしあい、するつもりだったの?」
「!!」
ブルーは、怯えていた。双葉に対して恐れの視線を向けながら、身を硬くして小さく震えていた。
双葉の表情が、一瞬唖然としたかと思うと、すぐに怒りに染まる。
「な……なんでそうなるんだよ! アタシはただ、神楽を助けようと……!」
「でも、槍で刺されたりしたら、死んじゃうよ?
相手が避けてくれたから良かったけど、普通は、死んじゃうんだよ?
双葉、その黒い服の女の子のこと、ころすつもりだったの?」
「それはっ……!」
被害妄想じみた、けれども簡単には笑い飛ばせない、ブルーの言葉。
イヴとビュティの表情も、どこか強張ったものになる。双葉を見る視線に、疑いの色が混じる。
突撃槍の武装練金、サンライトハート。
確かにそれは、全力全開の突進攻撃のみに特化した武器。「手加減」という言葉からは最も程遠い存在。
命中か、空振りか。一撃必殺か、無傷か。
結果は2つに1つ。中間は無い。
それの本来の持ち主ならばともかく、槍に振り回されるような双葉に、器用な真似ができるはずもなく。
そして双葉自身、そんな武器の特性を十分に理解できていたわけで。
それはつまり、黒い服の少女に対する、紛れも無い殺意があったということになってしまうわけで……。
「双葉、病院に来た時に『殺し合いする気はない』って言ってたけど……
怪我したから、『殺し合いする気が無くなった』だけじゃないの?
元気になったら、チャンスがあったら、また、ころしあい、するんじゃないの? ねぇ?」
ブチン。あまりに執拗な、そして勘繰り過ぎなブルーの言葉に、ついに双葉がキレる。
元々口より先に手が、いや足が出る乱暴者である。これだけの侮辱を受けて、黙っていられるはずもなく。
「んなわけあるかーーッ!!」
ドゲシッ!
絶叫と共に放たれたのは、綺麗に両足の揃ったドロップキック。
おはようの挨拶代わりにガーゴイルにブチかまし、ツッコミのハリセン代わりにブチかます双葉の得意技だ。
イヴもビュティも、止める間も無い。ブルーの小柄な身体が、軽々と吹っ飛んで……。
ロビーの床をゴロゴロと転がっていって、壁にぶつかって止まって、そして、ピクリとも動かなくなった。
「アタシのことを何だと思ってやがる! 黙って聞いてりゃベラベラベラベラと勝手なことを……
…………って、あれ?」
――ギャグとシリアスの狭間にハマると、ロクなことにはならない。
喜劇は容易に悲劇に転じるものだし、お約束のツッコミも暴力行為と背中合わせ。
ほんの少しの悪意の介入で、天国から地獄にまっ逆さま――
* * *
延々と続く、気が滅入るようなシリアスな話。
北のモニュメントのことを後回しにした自分に対する、激しい後悔。
蹴り飛ばされて、ゴロゴロと転がって、そして動かなくなったブルー。
イヴが慌てて駆け寄る姿を横目で見ながら、事ここに至って、ビュティは……
とうとう、グレた。
「――なにしとんじゃい、こんガキがぁ〜〜ッ!」
ビュティの顔が歪む。文字通り鬼のような形相になって、絶叫と共に、傘を構えて引き金を引く!
度重なるストレスに彼女の精神は限界に達しており、冗談の通じない空気に激しい禁断症状を覚えて。
ビュティは、キレた。ついにキレてしまった。
普段ならハジけ過ぎた空気に耐え切れなくなった時に出るブチ切れモード。
その怒りは、「仲間」であるブルーを攻撃した「よそ者」すなわち双葉に向けられて。
ろくすっぽ狙いを定めることなく、手にした『神楽の仕込み傘』を乱射する。
「ちょ、ちょっと待てよオイッ!? アタシの話を」
「待つかコンチクショーッ!! よくもブルーちゃんをッ! 死にさらせワレッ!!」
双葉が悲鳴を上げる。転がるように銃弾を避けながら、慌てて逃げ出す。
咄嗟に近くに放置されていたストレッチャーを蹴って、走り出す。
キックボードのように車輪つき寝台の縁に足をかけて、ガラガラと大きな音を立てて走り出す。
「びゅ、ビュティさん待って!」
『逃げるかこの卑怯者がぁぁぁ〜〜! 大人しくその場に直れ〜!』
イヴの制止の言葉も、グレてしまった今のビュティには届かない。
いつの間に取り出していたのか、仕込み傘を握った反対の手には、拡声器。
投降を呼びかけながら銃を乱射するが、これで止まる奴がいたらギャグでしかない。
逃げる双葉と追うビュティは、騒々しい音を立てて駆けていき、やがて廊下の角を曲がって見えなくなった。
* * *
「ど、どうしよう……! 止めなきゃいけないよね、でも……!」
「んッ……ンんッ……!」
事態の急変に、どうするべきかと慌てるイヴの腕の中。助け起こされたブルーが、呻きながら目を開く。
どうやら大した怪我では無かったらしい。ホッとするイヴに、ブルーは縋り付く。
「い、イヴさん! ビュティさんを、止めてあげて!」
「え……で、でも」
「アタシは大丈夫だから。疑いすぎたアタシが悪かったんだから。
ビュティさんを止めて、でないと……あの双葉ってコ、ころされちゃうかもしれない!」
殺されるかもしれない。ブルーの心配に、イヴの表情も変わる。
確かに、あのビュティの様子は普通では無かった。狙いはつけていなかったが、平気で銃をぶッ放していた。
あんな調子で撃ち続けていたら、本当に双葉に当ててしまうかもしれない。本当に殺してしまうかもしれない。
イヴは頷くと、アタッシュケースを片手に立ち上がる。
「わかった。ブルーちゃんはここに居て。すぐに2人をとっちめて、連れてくるから」
「お願い、イヴさんだけが頼りなの。本当に、あなただけが頼りなのよ?」
よほど不安なのか、くどいくらいに強く念を押すブルー。
泣きそうな表情を浮かべた彼女に、イヴは無言で微笑むと、ビュティたちの後を追って駆け出した。
* * *
「……ふぅ。まさかこうも上手く行くとはねぇ。
色々予想外だったけど、ま、結果オーライってとこね♪」
イヴも走り去り、誰も居なくなった2階のロビーにて。
1人取り残された少女は、砕けた口調で頭を掻いた。
つい先ほどまで不安に怯えていた少女とは思えない、不敵な表情。4歳の少女とは思えない態度。
双葉を仲間に加えないよう、難癖をつけて不信感を煽ったブルー。
もっともらしく「双葉が殺し合いに乗った可能性」を語ってみせたが、彼女自身、本気で信じていたわけではない。
ただ単に、双葉は深く考えることなく、神楽の危機を目にして飛び出してしまっただけだろう。
あの直情な性格、ちょっと見てればすぐに想像がつくことだ。
けれど、深く考えての行動でなかったからこそ、ブルーの指摘に答えられない。
無意識レベルの殺意を仄めかされては、反論する言葉は出てこない。
そして、そこに双葉のドロップキック。
最初から双葉を怒らせ関係を拗れさせるつもりではあったが、向こうから手を出してくれたのは幸運だった。
ほとんど傷らしい傷は受けなかったのだが、咄嗟の機転でそのダメージを大袈裟に見せかけて。
「こんな奴とは一緒に居れない」と駄々を捏ねる予定のはずが、先にキレてしまったのは横にいたビュティ。
「やっぱり、あの傘が武器だったわけね。ホント、2人とも大したペテン師だわ。
イヴちゃんの方も、あのアタッシュケースに何か仕込みがあるんだろうしねェ……」
2人が武器を隠し持っているのは分かっていたが、その正体が掴めたのは収穫だ。
できれば、アタッシュケースの方の仕掛けもこの目で見ておきたいものだったが、これはまたの機会でもいい。
「ビュティちゃんの方は、ちょっと精神的に不安定過ぎるかな。今後がちょっと心配ね。
イヴちゃんは、『変身』とか言ってたっけ? ナノマシンがなんたらかんたらって。
武器無しでも戦えるって言ってたし、空も飛べるみたいだし……その力、そのうち確認しておきたいわね」
あの2人の「道具」の精神状態や能力には興味が尽きないが、とりあえず今の問題は吉永双葉だ。
アレが仲間に加わることは何としても避けたい。
4人がバラけたこの隙を突いて、サクッと襲って殺してしまうのが手っ取り早いだろう。そのためには――
「傷の手当てはまだ済んでないし、ビュティは『そこの部屋に薬がある』って言ってたし、となると……」
ブルーは考える。双葉の立場に立って、双葉の取りそうな行動を考える。
やがて彼女は作戦を決めると、自分のランドセルを漁り、必要になる道具を取り出して並べ始めた。
年齢詐称薬。庭師の鋏。そしてスタンガンとの交換で得た――に、白衣を探していた時に見つけた――!
* * *
イヴは走り続ける。先に向かった2人を追って、走り続ける。
遠くて姿は見えないが、追うのは簡単だ。
なにせ、2人とも気配を隠すつもりが一切なく、派手な音を立て続けているのだから。
ストレッチャーがガラガラと音を立てて、階段を強引に下っていく音がする。
流石に途中でひっくり返ったか、一際派手な音を立てて車輪の音が消える。
だがそれでも2人の進む方向は分かる。散発的に、ビュティが発砲する音が聞こえている。それを追う。
イヴは2人を追って階段を駆け下り、1階に降りる。
階段の下、大きくひしゃげたストレッチャーを横目に見ながら、銃声が聞こえる方に駆ける。
『どこに隠れた、こんガキィ〜〜ッ!!』
「ビュティさん!」
1階の廊下で、ブチ切れたビュティ1人が叫んでいる。拡声器で叫びながら、天井に向けて銃を撃っている。
少なくとも見える範囲に双葉の姿はない。どこかに隠れたのだろうか?
ともかく彼女が殺されていないことにホッとしつつ、イヴはアタッシュケースを構える。
「いい加減、正気に戻りなさい! 自分が何してるのか分かってるの?!」
「なんだ、おんどれヤる気かオイ〜〜ッ!」
グレたままの状態で、イヴの方を向くビュティ。言葉も態度もまるっきり三流のチンピラだ。
不穏な空気に、イヴは覚悟を決める。
(ナノマシンは、使いたくない……疲労が激しいし、何が出来て何が出来ないのか、ちょっと自信が無い。
スタンガンは自分で使うのも怖いし、接近しなきゃ捕捉できない。やっぱりここは……!)
――実のところ、ビュティだけでなくイヴもまた、精神的に追い詰められていた。
頼みの綱のナノマシンの不調。度重なる緊張。自分自身に対する不安。
そして、双葉と神楽を助けに行かなかったことに対する、激しい自責の念。
表面上は冷静に見える彼女も、実は内心、相当に参っていた。大きなストレスに、潰されそうになっていた。
だから――彼女は、彼女らしからぬミスを犯した。普段なら絶対にしない、致命的なミスを犯した。
イヴはアタッシュケースをビュティに向け、スイッチの1つに指をかけ、そして――
廃病院の廊下に、銃声が響いた。
* * *
階下から銃声が響く。
まだあのビュティとかいう女は、あの銃を仕込んだ傘を振り回しているのだろうか?
「2階の廊下」で、双葉は壁に手を突きながらヨロヨロと歩く。
「ち、畜生……! 傷がまた開いちまったか……?! 早く、手当てしねぇと……!」
勢いに任せてドロップキックを放ち、ノリに任せて逃走劇を繰り広げてしまったが。
彼女の腹の傷は、本来かなりの重傷である。
一応、ありあわせのもので応急処置はしてあったが、本格的な治療には程遠い。
頭に血の上ったビュティを上手くまき、こっそり2階に戻ってきたまでは良かったが、もう限界が近い。
目が霞む。止血したはずの傷口から、血が滲み出す。胸を押さえ、双葉は荒い息をつく。
「どっちだったっけ、『薬がある』って言ってた部屋は……」
朦朧とする頭で、それでも双葉は必死で思い出す。
確かにビュティが言っていた。『そこの部屋に薬とかもあったはず』と。
自分にそれらが使いこなせるかどうかは分からないが、とにかくまずはそこに辿り着かないと。
傷の治療をしないことには、この病院から出て行くこともできない。
このままビュティから逃げ病院から逃げ出しても、森の中で野垂れ死ぬのがオチだ。
「だ、誰か居ないかな……病院なんだからさ、フツー、医者とか、いるもんだろ……
ここに怪我人が居るんだからよ、さ、さっさと、助けろよな……!」
ここが古びた廃病院であることも忘れて、居るはずのない医者の助けを求める。
それが無駄だということにも気付かず、クラクラする頭を押さえ、愚痴り続ける。
と――角を曲がったところで、ぼやける視界の中に、1人の女性の姿が映る。
ボディラインの美しい、ナース服を着た女――の後姿。
何故ここにそんな人物が居るのか深く考えることもなく、思わず双葉は呼びかける。
「そ、そこのお姉さん! 助けてくれ! 看護婦なんだろ、アタシは怪我人d――!」
フラフラと、その看護婦に近づいて、そして双葉は絶句する。
静かに振り返ったその女の顔を見て、言葉を失う。いや顔は見えない、何故なら――
そのナースは、奇妙な、不快な、男性の顔を模った、セルロイドのお面を被っていたのだから。
仮面のナースは無言で双葉に近づく。双葉は逃げようとして、足をもつれさせて転倒する。
看護婦が逆手に握り締めていたのは、大きな綺麗な、鋭い鋏。
彼女はそれを大きく振りかぶると、迷うことなく、渾身の力を込めて、双葉の身体に振り下ろし――
2階の廊下に、ザクッ、と、刃が肉を切り裂く音が響いた。
* * *
――ギャグとシリアスの狭間にハマると、ロクなことにはならない。
喜劇は容易に悲劇に転じるものだし、大げさな吐血と死に至る傷は背中合わせ。
ほんの少しのすれ違いで、天国から地獄にまっ逆さま――
「ど……どうして?」
「え……あ……?」
1階の廊下。
ビュティが、信じられない、といった表情で、呆然と呟く。
イヴが、自分のしでかしてしまったことに気づいて、唖然とする。
2つに割れたアタッシュケース。その隙間から顔を覗かせたマシンガン。
その銃口からはうっすらと硝煙が上がり、ビュティの腹には小さな弾痕がいくつか刻まれて。
つぅ、とビュティの口元から血が垂れる。拡声器が手から零れ落ち、床に落ちて耳障りな音を立てる。
アタッシュ・ウェポン・ケース。
イヴと共に仕事をしていた掃除屋スヴェンが、自分のために作り上げた複合武器。
一見したところただのアタッシュケースにしか見えないが、いくつもの武器が仕込まれている。
拳銃、マシンガン、電磁ウィップ、捕獲用ネット、ウォーターカッター……。
様々な武器がスイッチ1つで使い分けられる。使われるまで、敵からは何が飛び出してくるのか分からない。
戦闘において、それは「もしも完璧に使いこなすことができれば」強力なアドバンテージになるはずだった。
だが、しかし……スヴェンはあくまで、「自分で使うために」この武器を作ったのだ。
他人に使われることを一切想定せず、あくまで自分自身が使いやすいように調整していたのだ。
仲間にすらその機能を完全には明かさず、時折手を加えて思いついた新機能を追加していた節もある。
だから、間近で彼の戦いを見ていたはずのイヴも。
押したのは『捕獲用ネット』を射出するスイッチ、のつもりだった。
殺傷力が無く、効果範囲が広く、確実に相手を無力化できる、この状況では最も適切なはずの「武器」。
けれど、実際に放たれたのはマシンガンの弾丸。実際に押されたのは1つ隣のスイッチ。
冷静沈着なイヴらしからぬ、致命的なミスだった。
これが普段通りの彼女なら、こんな間違いを犯すはずもなかったのだが。
「ち、違うの、これは……!」
「こ、来ないで!」
ヨロヨロと、釈明のために一歩踏み出したイヴに、ビュティは仕込み傘を向ける。
撃たれたショックで正気に戻ったビュティ。彼女の記憶は双葉に対してブチ切れた所で途絶えている。
だから、今の自分が置かれた状況が理解できない。
何故か1階の廊下にいて、何故かイヴに武器を向けられ、自分は被弾し、手の中には仕込み傘。
殺されたくない――その一心で、ビュティは武器を構えてしまう。震える手で、身構えてしまう。
出会ってから、数時間足らず。
互いのことをほとんど知らず、ただ「殺し合いをする気がない」というだけの理由で組んだ2人。
おままごとじみた友情は脆くも崩れ去り、2人は互いに武器を向けたまま、しばし凍りつく――。
* * *
「――ふ、ふふふッ。あ、案外、か、簡単なモノね♪」
2階の廊下で、仮面の看護婦は震える声で笑う。
やってしまった。ついにやってしまった。
自分の手で、人を殺してしまった。
奇妙な興奮と達成感に、思わず手が震える。
仮面の看護婦の正体。それはもちろん、赤い年齢詐称薬で元の姿に戻ったブルーだった。
白衣を探していた時に見つけたナース服、それは「彼女の本来の体格」にピッタリで。
もしも「コトを起こす時」にはこれを着て誤魔化すことにしよう、と決めていたのだ。
貴重な年齢詐称薬を浪費するのは少し勿体無かったが、4歳の姿ではリーチが短すぎて大変だし。
それに姿を変え服を変えておけば、万が一イヴやビュティに見られても、誤魔化せる余地がある。
もし目撃されても、その場を一旦逃げ、4歳の姿に戻ってから何食わぬ顔で合流すればいい。
あのお人よしな2人を言いくるめることくらい、簡単なはずだ。
ただ、いざ行動を起こそうとすると――身が震えた。本当にやるのか、と躊躇いが生まれた。
その思いを振り切るために手に取ったのが、このお面。
顔に感じる不快な感触が、しかし今は逆に心を落ち着けてくれて。
これから行動を起こすのは、素顔のブルーではない。「仮面の少女」なのだと自分を納得させて。
――イヴたちにこの仮面を見られたらかなり厄介なことになるのだが、彼女の頭はそこまで回らない。
「死んだかな? 死んだよね?
……このハサミ、どうしようかな。できれば返り血は浴びたくないのよねぇ」
倒れたまま動かない双葉の身体を見下ろし、ブルーは思案する。
双葉の胸に深々と突き刺さった『庭師の鋏』。
あまり使い勝手は良くないし、今後のことを考えると、血に濡れた凶器を持ち歩くのは得策ではない。
でも、できれば代わりの武器は手に入れておきたいわけで。
「そういえば……武器を持ってるはずよね、この子。ランドセルの中かしら」
確かに双葉は語っていた。サンライトハートと交換で、神楽から護身用の武器を受け取った、と。
手に持ってないということは、その武器はランドセルの中に仕舞ったままか。
ブルーはそして、死んだと思われる双葉の身体に、手を伸ばした。
* * *
ポケモントレーナーには、鋭い観察力がある。
個人差こそあれ、相手の力量を見極め、体力の限界を推測できる能力がある。
ブルー自身、優れたポケモントレーナーの1人として、その眼力にはそれなりに自信があった。
けれども1つだけ、彼女たちには限界があった。ブルー自身気付いていない限界があった。
それは、ポケモンバトルの形式に由来する限界。
ポケモンバトルは、殺し合いではない。片方が「戦闘不能」になった時点で、戦いは終わり。
決して相手の命を奪うことを目的としない。気絶させたり、抵抗力を奪ったりできれば、そこで終了。
――だから。
(ちく、しょう……! なんなんだよ、コイツは……!)
双葉は、まだ生きていた。
瀕死の重傷を負い、自由にならない身体で、それでも辛うじて意識を繋ぎ止めていた。
これがポケモンバトルなら、十分過ぎるほどに「戦闘不能」な状態。
たぶんこのまま放置されれば、さほどの時間を待たずに双葉は死に至るだろう。それほどの深手だ。
けれど、まだ今の時点では生きていた。
正体不明の仮面の看護婦の眼前で、苦痛の声を押し殺し、必死で考えていた。
(このまま、殺されて、たまるかよ……! せ、せめて、最後に、何か……!)
指一本動かすのも厳しい状態。今すぐ誰かに手当てしてもらわなければ、確実に死亡する怪我。
そんな中、双葉は必死に考えていた。死んだフリを装いながら、必死で考えていた。
今の自分にできること。
今の自分がしなければならないこと。
今の自分が、たとえ死んでもやっておかねばならないこと――
仮面の看護婦が、双葉の方に手を伸ばす。
何かが出来るとしたら、おそらくこれが最後のチャンス。
そして、双葉は、自分の身体に手をかけようとする仮面の看護婦の前で――!
【B−3/廃病院・1F廊下/1日目/真昼】
【暴走と失敗と誤解の果ての対峙】
【ビュティ@ボボボーボ・ボーボボ】
[状態]:腹部に銃弾数発命中。口から吐血。結構な深手。
ギャグとツッコミが足りず禁断症状気味で精神的にかなり不安定。今は正気(ただしかなり混乱)。
[装備]:拡声器、神楽の仕込み傘(残弾残り少)@銀魂
[道具]:基本支給品一式(食料少し減)、コンマ(ボーボボのサングラス)の置手紙@ボボボーボ・ボーボボ
[思考] ちょ、ちょっと本気なの……!?
第一行動方針:イヴの攻撃から身を守る。反撃も仕方ない?
第二行動方針:イヴから受けた傷の手当てをする。
第三行動方針:ブルー、双葉と行動を共にし、仲間を増やす(イヴのことは一時的に保留?)
第四行動方針:一休を見つけたら、懲らしめる
基本行動方針:困っている人がいたら、できるだけ力になる。 殺し合いを止め、脱出する。
[備考]:
コンマ@ボボボーボ・ボーボボ は、ビュティのランドセル内の無限の空間?のどこかに隠れちゃいました。
気が向いたら(あるいは本気で忘れられるのが怖くなったら)手の届く所に戻ってくるかもしれません。
ランドセルを逆さまにすれば放り出せるはずですが、現時点ではビュティはその方法に気付いてません。
【イヴ@BLACK CAT】
[状態]:激しい精神的ストレス、大混乱。ナノマシンを扱う力はほぼ完全に回復。
[装備]:アタッシュ・ウェポン・ケース@BLACK CAT、スタンガン@ひぐらしのなく頃に
[道具]:基本支給品一式(食料少し減)、G・Iカード1枚(『左遷』)@H×H
[思考] ち……違うの! 私、そんなつもりじゃ……!
第一行動方針:ビュティを取り押さえる。怪我をさせるくらいは仕方ない? 殺したくはない?
第二行動方針:ビュティ、双葉の傷の手当てをする。ビュティの誤解を解く。
第三行動方針:ビュティ、ブルー、双葉と行動を共にし、仲間を増やす
第四行動方針:一休を見つけたら、懲らしめる
基本行動方針:この殺し合いを止め、脱出する。
[備考]:
アタッシュ・ウェポン・ケースの『捕獲用ネット』を使おうとして、間違えて『マシンガン』の引き金を引きました。
今後、『マシンガン』のスイッチを間違えることはまず無いと思われます。
【B-3/廃病院・2F廊下/1日目/真昼】
【仮面の看護婦と死にかけの少女】
【ブルー@ポケットモンスターSPECIAL】
[状態]:健康。微妙に精神的に動揺。14歳モード
[服装]:ナース服。Lのお面で顔を隠している。
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式(食料少し減)、チョークぎっしりの薬箱、年齢詐称薬(赤×4、青×4)、
G・Iカード2枚(『聖水』、『同行』)@H×H、Lのお面@DEATH NOTE、白衣
[思考]:や……やっちゃった♪ 案外簡単なモンね♪
第一行動方針:双葉の「死体」から、スタンガンや庭師の鋏の代わりになる武器を奪う。
第ニ行動方針:ビュティやブルーが戻ってくる前に、もう1度年齢詐称薬(青)を使って4歳児の姿に戻る。
双葉の死体の第一発見者を装い、ついでに「架空の犯人の目撃情報」をデッチ上げる。
第三行動方針:生き残るためには手段を選ばない。自分の手も要所要所で汚す覚悟。
第四行動方針:4歳児の外見を生かし、イヴとビュティを利用する。自分の身を守ってもらう。
なお、使える戦闘要員なら増やしてもいいが、足手まといが増えるのは困る。
第五行動方針:イヴとビュティには、自分の正体がバレないようにする
(=年齢詐称薬の秘匿、説明書の効果時間に基づいた12時間ごとの薬の摂取)
第六行動方針:レッドやグリーン、イエローのことが(第三行動方針に矛盾しない程度に)心配
基本行動方針:バトルロワイアルからの脱出、元の世界への帰還(手段は問わない)
[備考]:
年齢詐称薬で4歳の姿になっていた時の彼女は、裸の上に白衣を身にまとっていました。
袖は何重にも捲り上げていますが、裾は地面に引き摺ってしまう長さで、胸元は大胆に開いています。
このまま何の問題もなく4歳の姿に戻った場合、彼女はその元の服装に着替える予定です。
[備考]
ブルーは、ビュティが持っている傘に銃が仕込まれていることを知りました。
また、イヴが持っているアタッシュケースが仕込み武器である可能性を強く疑っています。
[備考]
ブルーが持っていた 庭師の鋏@ローゼンメイデン は、双葉の胸部に突き刺さったままです。
ブルーは、双葉にまだ息があることに気付いていません。
ブルーは、1階でイヴがビュティを撃ってしまったことに気付いていません。
(アタッシュ・ウェポン・ケースからの銃声も、ビュティの仕込み傘の銃声だと勘違いしています)
【吉永双葉@吉永さん家のガーゴイル】
[状態]:腹部に散弾銃による重傷。相当強い疲労と失血。
胸部に深々と「庭師の鋏」が突き刺さっている(これも早く治療を受けなければ死に至る傷)。
傷が重く、自力でまともに動ける状態にない。とりあえず死んだフリ。
[服装]:血のついたオーバーオール、腹部にカラフルな包帯。
[装備]:コキリの剣@ゼルダの伝説、ショックガン@ドラえもん、メガネ@ぱにぽに
[道具]:基本支給品一式
[思考] や、やべェ……! このままじゃ……!
第一行動方針:目の前の「仮面の看護婦」の攻撃から生き延びる。
第二行動方針:腹部及び胸部の傷の手当てを受ける。
第三行動方針:イヴ、ブルーと共に行動し、仲間を集める。(ビュティについてはちょっと保留?)
第四行動方針:もしこのまま死ぬとしても、最期に何か1つ、「仮面の看護婦」に一泡吹かせてやりたい。
基本行動方針:このふざけた殺し合いを終わらせ、脱出する
[備考]:
双葉は、「仮面の看護婦」が幼女のブルー(4歳)と同一人物であることにまだ気付いていません。
双葉はまだ名簿をちゃんと確認していません。知り合い(梨々)が参加していることに気づいていません。
以上。自己最長記録を更新してしまいました……
おかしいなぁ。プロット構築時点じゃもうちょっと短いと思ってたんですけど。
イヴとビュティが対峙して、双葉が何か最後っ屁をかまそうという所で切り、です。
双葉が最期の力? で何をするつもりなのかは、後の書き手さんにお任せします。
あああああwwwwいいトコで切りすぎだwwww
投下乙!
早くもパーティー崩壊か……
何気にイヴ・ビュティ・神楽と、ジャンプヒロインズが間接的に接触したことに気づいた。
これでヴィクトリアが入っていれば完璧だったんだがw
ハサミを持った仮面のナースとか普通にホラーゲームに出てきそうでテラコワス
ブルーこえぇwwww
心臓がバクバク言いっぱなしですぜ、旦那ぁ!!
手に汗握る展開でワクテカしながら読みましたよー。GJです!
あー、やっぱパーティー崩壊話はいいなぁ。特にブルーの黒さにgkbr。
前半のギャグ度の高さが、後半のどシリアスな展開を引き立ててると思った。
koeeeeee!!!!
なんて疑心暗鬼だ! こんなバトロワ的展開が見たかったんだよ!
最初のツッコミシーンは普通になごんだのになあ。ステルスすげえ。
うは、まさに生殺し。この状態で誰も死んでいないのが逆に怖いってのwww
本当に爆弾置くのが好きな人だなw
ブルー怖ぇぇぇぇ!!
原作の灯台のシーン思い出したんだぜ。
やっぱ女の疑心暗鬼はやばいな…
一晩明けて改めて読んでみたら……
全体的に酷いorz
展開上は問題がなさそうなので、誤字脱字を中心に細かい所をWIKIに載り次第修正という形でよろしいでしょうか?
>>434 それでイイとおもいます。
お疲れ様です。
ビュティさんキレたー!!
せめてヘッポコ丸とかいれば良かったのだろうがwwww
ちょ、これ、ひょっとして……拡声器の呪い、こっちでも発動してる!?
やべーやべー超やべー。ブルー、呪い発動前にさりげなくパスしたってことか。
恐るべしステルスマーダー。
>>431 勝手に命名;
◆3k3x1UI5IA氏 = ボンバーマン氏
とかどうよ
ハンタっぽく略してボマー氏とかw
バクハツさんとか?
>>437 ボンバーボゥイ、略してBボゥイ……
駄目だ、最近何のゲームやってたかバレるw
間を取ってピカチュウ氏
現在島内に放置されているアイテム等まとめ。
ざっと読んだだけなので間違いや抜けがあるかもしれません。
【F-2/桜の見える水辺/1日目/朝】
返り血を浴びたリルルの服
(F-2の水辺から捨てられた。近くの水辺に流れ着く可能性あり )
【E-5/森の中央付近/1日目/朝】
ドラ焼き(かじった跡あり)@ドラえもん ジャイアンの共通支給品
【H-7/海岸沿いの道路/1日目/朝】
神谷薫の偽遺体(首のみ)@るろうに剣心、それを包んでいたポテチの袋
【B-7路地/1日目/午前】
単眼鏡@デジモンアドベンチャー
【C-7/草原/1日目/午前】
ちよの支給品一式
【B-7orA-7/デパート一階のトイレ/1日目/午前】
カツオの靴
【D-3/森の中の小さな空き地/1日目/昼】
イシドロの左腕
戦輪@忍たま乱太郎 ×1
【H-6/北端/一日目/昼】
うさぎのぬいぐるみ(血つき)@TOS
【G-7/路上?/1日目/朝】
折れたマジック用のステッキ@吉永さん家のガーゴイル
【G-7/路上〜廃ビルのあちこち/1日目/朝】
ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×15
【F-3/城内地下/1日目/午前】
F2000R(残弾23/30)@とある魔術の禁書目録
【?/城の南上空/1日目/午前】
ゲイボルグ@Fate/stay night(南に飛翔中?)
【F-3/城の一室/1日目/昼】
ベルカナの服(切り裂かれている)
ググッたらゲイボルグの「突き穿つ死翔の槍」って、
飛距離40kmとか、何かで止めないと飛び続けるとかあったんだけど、
このままだとエリア外まで飛んでいきそう
>>443 乙です。死者スレのまとめの人かな?
F2000Rやゲイボルグみたいな強武器は誰の手に渡るかで夢が広がるな。
ゲイボルグは城から南に飛んでって、薫が目撃したということは……現時点の位置で考えると、
トマ、トリエラ、イリヤ、はやて&レン、真紅、レックス、梨々&さくら、ジーニアス&ベッキー
あたりが目撃、あるいは拾得しそうか。
それにしても、飛距離稼ぎまくってるのは宝具の力とレミリアの人外膂力の相乗効果なのだろうかw
ンワーオ被ったorz
止める手段としては、誰かが気づいて撃ち落すとか(イリヤあたりは見たらゲイボルグだってわかるのかな?)、
あるいは誰かの攻撃(レックスのライディン等)のついでに撃ち落されて落下してくるとか、そういうのがありそう。
強力すぎる武器だから、このままエリア外に葬り去るというのも手だろうが……
MAP端がもしループしていた場合、一周して城に突っ込んでくるという事態もありえそうw
突き穿つ死翔の槍は飛距離40kmって設定あったっけ?
レンジは5〜40だけど数値にどんな意味があるのかとか作中で全く説明されてないし
>>447 元々詳しくないのですが、たまたま見たサイトにFate/hollowataraxia(?)で
士郎というキャラが件の宝具ついて、その用に説明していたと記載されていたので。
別の作品のゲイボルグだったみたいです。すみません
>>445 薫から見て南に飛んでいくのを見たわけだから、
トマ&トリエラは今の位置では無理なんじゃないか?
やっぱり湖かそれ以南かな。3km以上飛んでるw
えーと、ゲイボルグって投げても大して飛ばないってことでいいのかな?
ロンギヌスの槍(エヴァンゲリオン)みたいに成層圏まで飛んでくようなイメージだった。
レンジ5〜40ってSLGじゃm単位くらいだけど、原作はRPGだっけ?
>>448 Fate/hollow ataraxiaはFate/stay nightの続編(というかファンディスク)です。同一のゲイボルグですよ。
「突き穿つ死翔の槍 飛距離」でググると、飛距離40kmって描写があるのは確かみたい。
ただ、本来の持ち主が使用した場合だし、描写も主人公の主観らしいので途中で失速して落ちても問題ないかと。
厨設定過ぎるなそれw
ちょっとした大砲より飛ぶ。
飛距離が1/5になっていたとしてもエリア外までは十分飛びそうですね
レンジ40で40kmっていうと原作はどんなマップで戦ってたんだろ?
というか近距離戦では使用できない(最低レンジ5)ってことの方がショック
ゲイボルグはイリヤに渡らない限り本来の使用法はされないだろうな。
魔力持ちキャラかつ何らかの方法で真名の解放をしないとだし。
アイテムリスト、サイコメトリーのどちらかがないとゲイボルグの特性は分からないはず。
>>453 投げる場合と普通に使う場合のレンジが別に有るんだ。
原理は同じでも消費や威力、射程まで全然違うから。
刺し穿つ死棘の槍の方のレンジは2〜4(槍だから懐が甘い?)。
原作では数十m程度距離を開けてから使用した。
だからせいぜい40mかと思ったら40kmも飛ぶのか。
一体どういう単位なのやら。
一応飛距離40qってのは原作でも出てくる。
ただそのシーンはほとんどギャグだし実際に投げた訳でもないけど
>>457 ギャグっぽいとは言え、原作で解説されてるならそういう武器じゃないの?
このキャラが主観で言ったことだから信用できない、とか言いだしたら切りが無いと思う。
レンジの概念があるのに説明が無いって原作はどんなゲームなんだろ?
>>458 原作は基本的にビジュアルノベル。
かまいたちの夜みたいなノベルゲーにイラストがついたものと思っていい。
だからレンジの概念とかはぶっちゃけオマケ要素で、それを使ってプレイヤーが何か操作するわけじゃない。
キャラクターのステータス画面もあくまで設定の補完としての意味しかないし
簡易ですがシェイプチェンジについて描写と状態表を部分修正いたしました
投げて池ポチャ程度なら、ゲイボルグも修正した方がいいでしょうか?
普通のファンタジーゲームだとレンジ40とかって言うと、街一つくらいですけど
(大戦略ならICBMの射程距離だけど)。
色々とサイトを見て回りましたが、読めば読むほど良く分からなくなるw
レミリアが魔力の大部分を注ぎ込んで飛ばしたけど、どのくらい飛ぶのがイメージ通りなんだろうね。
東方キャラの力上限はよく判らない。
フランドールはお空の流れ星を地上から破壊出来る力がある。
ただしこれは特性的に射程無視必中一撃粉砕の特殊な力だから比較は出来ないし、
そもそもフランドールは破壊力においてレミリアを圧倒しているという設定がある。
破壊力偏重の主人公が山一つ焼き尽くすような武器を遊びで使う世界で、
ラスボスだったり、後の作品で同じく別の自機として参加したり、
肉体能力についてはその世界においてトップクラスらしい設定がある。
更にここにロワの制限が掛かる。
結果……別にどっちでも問題無いのでは?
>>462 現時点のSSでは南へ数キロは飛んで行ってると表現されているから、
あまり飛ばないとなら今のうちに修正が必要だと思うってことで。
飛んだら飛んだでエリア外まで飛んでいく可能性とかもあるけど。
ちなみに私は桃白白@ドラゴンボールの投げた柱みたいな飛び方をイメージしてましたw
ゲイボルグが実際どの程度飛ぶかわからない、レミリアがどの程度の力を持っているかもわからない。
誰にも判断できないんだから、書いたもん勝ちかと。
したらばかこっちか迷ったけど、一応こっちで聞きたいことが。
支給品入れのランドセルは四次元ポケット設定だけど、
中に「死体」あるいは「死体の一部」を詰めて
持ち運ぶことは可能だろうか?
勿論、その分の重量は「支給品以外のもの」として
負荷がかかるとして。
さて、結構危なかったけど完成。
これより投下します。
水中というのは思いの外に危険な場所だった。
濡れた衣服は重たい枷となり、身動きを封じる。
失われた呼吸は思考を動揺させ、反射的に空気を求めて口を開けば水が喉を埋め尽くす。
怪力で水を掻き回しても泳ぎ方を知らないそれは体を逆に沈めてしまう。
そして水は傷口から体温を奪っていくのだ。
咄嗟に手に握っていたハンマーをランドセルにしまい込んだのは正解だった。
玩具のように軽く、しかし浮くような重さではないそれは水中では邪魔にしかならない。
追撃が来たら? どうしようもない。
反射的に飛び込みはしたがもしも追撃がきたら戦えるわけがない。
というより溺れるプレセアにはそんな事を考える余裕すらなかった。
「ゴボ……ガボゴボ……!!」
必死に水を掻いて少しでも浮き上がろうと試みる。
だが水面という壁は目の前まで迫っても遠く、顔が出た次の瞬間には波に呑まれる。
どちらが上かさえ頻繁に見失い水流に翻弄される。
(このままじゃ溺れて……死……!)
必死に腕を動かす。
必死に足を動かす。
時折水面に顔が出て水飛沫諸とも必死に空気を取り入れる。
それでも溺れるプレセアは藻掻き苦しみながら耐え続けて。
(ダメ……ダメ…………!! わた……し………………は……………………)
……意識が途切れる直前、誰かの声が聞こえた。
* * *
ぽかぽかと暖かい日差しが全身を包んでいる。
まるで春の陽気のようなそれは、とても…………眠くなる。
森の中の開けた広場でひなたぼっこをしているような、そんな感じだ。
眠い。とにかく眠い。
だから思う存分お昼寝をしていた。
だけど眠りは何時しか覚めるものだ。
少女にとってのそれも、僅か数時間で目覚めに至った。
「ん…………」
重い瞼をゆっくりと開ける。そして。
「………………う?」
目を開けたアルルゥの目に最初に映ったのは、寝る前に見た謎の少女だった。
少女はアルルゥと鏡合わせのように柱の陰で眠っていた。
「オピァ……」
反射的にタマヒポを召喚しようとして、すんでの所で思いとどまる。
彼女と戦った、彼女は敵だった気がする。
――でも、どうして戦ったんだっけ?
戦いになるのは相応の理由が有るはずだ。
しかしアルルゥの記憶は倒れる前の辺りでぐちゃぐちゃに途切れ、思い出せなくなっていた。
無理もない。
傷も殆ど無いのに精神的疲労だけで倒れるほど精神を酷使したのだ。
気絶直前の記憶が混乱する程度で済んだのはむしろ幸運と言えるだろう。
そして原因そのものを思い出せないなら、その前の状況から想像するしかない。
そう、確か最初にこの世界に連れて来られてから……。
――君達には世界を救うためにお互いに魂の選定、”殺し合い”をしてもらう。
「ころしあい……」
ぽつりと呟く。
知らない世界に連れてこられて、殺し合いを強制された。
最後の一人にならないと帰れないと言われた。
事実最初に出会った少年は、確かに出会い頭に攻撃してきた。
――あ、あの、ごめんなさい! ちょっと混乱してたんです!
「………………」
あれは本当だったのだろうか? それとも嘘だったのだろうか?
どちらにせよ彼は少女に周囲の全てを敵と認識させるには十分だった。
アルルゥは殺し合いに乗り、サモナイト石で幻獣を召喚して彼を殺そうとした。
後で通りがかった時にはまだ生きていたようだけど、殺そうとした事には変わりない。
もしかするとタマヒポの毒で今頃息絶えているかもしれない。
それに他にも二人、殺そうとした。だけど。
――みんなで諦めなければ、絶対に帰れる! 帰る方法は絶対に見つかる!
――みんなを殺して生き延びたりしたら……きっと君のお父さんは、怒るぞ……
その言葉に激しく揺れたのだ。
ジェダの言葉なんか従わなくても帰る手段が有って、むしろそうしないと父に怒られるなら……
「……………………アルルゥ、おこられるのイヤ」
殺し合いになんて乗らない。
今ならそっちの結論に辿り着く。
襲ってくる奴らが敵という事は変わらない。
見ず知らずの殺さないといけない奴らも敵なのだから、殺す事に迷いは無い。
だけど殺さなくても良いのなら、襲ってこない限りは敵じゃない。
敵じゃないなら殺さない。
とても単純な理屈だ。
だけどあの時は何故か、迷って考え直そうとする前に……
――チョキン。
ハサミの音が聞こえて、奇妙なほどに迷いが無くなったのだ。
結局何が起きたのか、今でもさっぱり判らない。
とにかくアルルゥはその音に突き動かされるかのように二人への攻撃を再開した。
二人はよく判らない現象と共にその場を逃げ延びたけれど、アルルゥはそれでも二人を追撃した。
この辺りから記憶が曖昧になってくる。
確か道端の森に最初に襲った一人とあと誰か知らない一人が居たはずだ。
だけどそれを無視して、二人を追って城へ向かった。のだと思う。
思うというのはその時にはもう誰を追っていたのかという記憶すら曖昧だったからだ。
そして。
――そこのお前。
目の前の少女と戦った……ような気が…………する。
「………………わすれた」
記憶は凄く曖昧だ。本当に戦ったのかどうかさえもやもやとしている。
結局何が何だかさっぱり判らなかった。
考えている内に日は頂点を僅かに動いていた。
ジリジリと影の場所が変わっていく。
やがて目の前の少女の指先が日の光を、浴びた。
「あちゃあああああああああああぁあぁあぁっ!!」
素っ頓狂な悲鳴を上げて飛び上がった。
のたうち回ってゴロゴロと転がった。
そして吸血鬼の高運動能力で勢いよく転がった末に。
「あ、はしら」
に、良い感じの角度でぶつかった。
――ストライク。
やたら良い音が響いた。
「ぐぅぅぅっ」
頭を抑えて屈み込む。
寝ている時に痛い目に遭うなんて体験も始めてだったから取り乱してしまった結果だ。
いつもは安全な棺桶の中で寝るし、不意打ちするようなこすい奴も居なかった。
デコピンされた位の痛みでも驚天動地と言うに相応しい。
そして人間外れした運動能力による自滅は人間離れした肉体でもやっぱり痛い。
経験した事も想像もつかない不意打ちには如何な超人とてどうにもならないだろう。
そう、整理するとこれはどうしようもない事なのである。
……別にそれで見た人の感想が変わるわけでもないが。
「……だいじょうぶ?」
人間でない少女ことレミリアはその声にハッと振り返る。
そこに居たのは犬耳の少女、アルルゥだ。先程まで戦い、気絶したのを見て放置した相手。
彼女がそこに居てそんな声を掛けてきたという事は当然。
「………………………………………見たか?」
レミリアは思いっきり凄みの聞いた声で聞いた。
「……アルルゥ、しらない」
アルルゥは全力で首を振った。
* * *
物事は穏便に解決できる時とできない時がある。
今回は前者だった。
アルルゥは敵にならないなら殺す気は無くなっていたし、レミリアは無かった事にしたかった。
効果の実験が殺人に繋がるゲイボルグはどこかにすっ飛んでしまったし、
それによりレミリアと戦った事はアルルゥの記憶からすっぽりと抜け落ちていた。
正確にはなんとなく戦ったような覚えはあるのだが……
「別に玩具で遊んでいただけよ」
というレミリアにとっては本音の言葉にアルルゥはすっかり納得してしまった。
どちらかといえば吹っ掛けたレミリアの方が収まっていないくらいだ。
実際、レミリアはアルルゥを殺そうかと何度も考えていた。
先の戦いで消耗した挙げ句に槍を失った苛立ちは殺したって釣り合わないので理由にはならない。
理由は……みっともない場面を見られたから。
だけどそれだけに、それを見ないフリしてくれたというのはある意味で借りですらある。
(見たなとか訊くんじゃなかったわ。今更殺すとかっこわるいじゃない)
貴族らしい体面を重んじるレミリアにとって格好の良い悪いは死活問題だ。
両者の利害はここに一致し、結果として一つの殺し合いは回避された。
だから一つの話し合いが生まれていた。
「それで、その三人を追ってここに来たの」
「ん」
アルルゥはこくりと頷く。
アルルゥは二人の少年(?)とそれを助けた女性らしき人を追ってきたらしい。
追ってきた理由はアルルゥ自身ぼやけているが、会ってみたい理由は有る。
「かえるほうほう、ほかにもある、いった」
「当たり前の事を言う奴ね」
あっさりとした答え。
「レミリア、しってる?」
「首輪を外す方法を見つけて、あのジェダって奴を捜して、叩きのめせばいい。簡単じゃない」
「…………おー」
自信たっぷりに答えるレミリアにアルルゥは思わず感嘆の声を上げた。
過程が大省略されている事には気づいていない。
ツッコミ役不在のまま話は真面目に続く。
「まあ私は、先にフランを捜すけど。これだって別に夜になってからでもいいわ。
だからジェダは明日でも良い。倒すのは明後日でも良いか」
「ふらん?」
「妹よ。手の掛かる危険物」
「レミリア、おねーちゃん?」
「そういうことになるわね」
「…………ふーん」
アルルゥはなんとなく自分の姉のエルルゥを思い浮かべる。
……別にレミリアとはあまり似ていなかった。
「当面の問題はこの服ね。汚れて見苦しくてしょうがないわ。
アルルゥ、洗濯はできるかしら?」
「う……? せんたく、できる」
「じゃあやりなさい。ついでに水も汲んできて。体を拭きたいから」
「…………や」
だってめんどくさい。
それにレミリアに従う言われも無い。
「私の食料をあげるわ。やれ」
「やる」
しかし食べ物をくれるなら別だ。
アルルゥは即答すると、レミリアの服を受け取り走っていった。
その足取りは実に頼もしかった。
* * *
意識が、薄ぼんやりと目覚めた。
まるで穏やかな春のうたた寝のような、ぼんやりと後を引く眠気。
まるで冷たい冬のような、心まで凍てつきそうな寒気。
その相反する二つが全身を包む中の目覚め。
(寒くて眠い……最悪です……ね……)
どうしてこんなに寒くて眠いのだろうか。
少し考えて思い出した。確か、逃げるために湖に飛び込んで溺れたのだ。
傷口を処置する間も無く。
その上、泳げないのにだ。
(それじゃこのまま寝ていたら……死んでしまうじゃ…………ないですか……)
死ぬのは……嫌だ。
重い瞼をゆっくり、ゆっくりと押し開く。
そこは……陸だった。
懐にはランドセルが有る。どうやらこれを背中から降ろして、掴まったらしい。
あまりにも頼りない浮き板。
だけどこのおかげで岸にまで流れ着く事が出来たようだ。
(あんな状況でよく思いついたものです。……本当に自力で思いついたのでしょうか?)
なんだか自分で思いついたのではなく、誰かが助言してくれた気がした。
『ランドセルを降ろしそれに掴まってください』と。
(………………アリシア……まさか)
思いつき、すぐに理性が否定する。
そんなわけがない。死者の声なんて聞こえるはずがない。
だけどそう思うと、冷え切った体の芯に暖かい想いを感じられた。だから。
(そう思っておきましょう。その方が……良いです)
さあ起きあがろう。
アリシアに会うために。
その為に戦う為に。残る全ての参加者を…………
「…………あ」
「…………え?」
バッチリ目が合った。
目に映ったのは……森で少年達を囲んだ時に向かい側に居た少女。
森の中に二人を追い込んだらしい、獣耳の少女だった。
おそらくは自分と同じように殺し合いに乗った――――
「く……う…………っ」
全身に力を篭めて起きあがろうとするが、叶わない。
冷たい水で冷えた体は思ったより血液を残してくれたようだけれど、代わりに体温を奪っていった。
それでも入れた力が血流を動かして。
――傷が開いた。
「あ…………!」
視界が赤に染まる。
目覚めた意識が再び闇へと引きずり込まれる。
再び暗い奈落の底に落ちていく。
今度はきっと…………もどれない。
「アリシア……ごめんなさい。私は…………おねえ……なの……に…………」
悔やみの言葉が途切れ途切れになるのに重なって。
意識の糸が、切れた。
* * *
「まったく、良さそうな葉が無いわね。……見つかっただけマシか」
レミリアは手の中の小さな缶を弄んでいた。
背後には雑に開かれた戸棚が一つ。
引っかき回された挙げ句に布などを挟みながら乱暴に閉められている。
足場にする為に一度ほぼ全ての引き出しを引いたのは仕方がないが、乱暴な片づけには違いない。
そこまでして見つけた物は、紅茶の缶だ。
ティーポットとカップも見つけておいた。
言うまでもなくティータイムとしゃれ込むつもりなのだ。
ついでにその幼い裸体には適度に切った清潔な白いテーブルクロスを纏っている。
だぶだぶのシルバースキンATよりはそちらの方が好みだったらしい。
といっても流石にこれは好みの問題だけではない。
(まあ、動きにくいよりはマシだろうし。
いくら鉄壁でもあんなに動きにくいんじゃ話にならない。
……昼間に外出するならあれを着るしかないんだろうけど)
いくら彼女だって大小込みで通算三度も痛い目にあえばまじめに考える。
頭部を誤射して本気で死にかけた一度目。
人なら即死だが吸血鬼だってエリクシール無しだと死んでいたかもしれない。
アルルゥとの戦いで毒と必殺の一撃に苦戦した二度目。
自分の体の状態に気づかずにあわや敗北する所だった上に、お気に入りの槍を失った。
おまけに起きた時にゴロゴロのたうち回ってみっともない所を見られた三度目。
傷としては無きに等しく、というよりとっくに治っているのだが恥ずかしい失態だ。
全てレミリア自身の無知と油断が招いた事だ。
(それならどうする? 亀みたいにだぶだぶの無敵防御で守りに入る?
まさか。そんな事を選びはしない。
慎重さは……少しは、必要かな。だけど臆病になるのは違う。
ビクビクと破滅を恐れていたら、破滅の運命に呑まれるだけだ。
弾幕と同じだ、慎重かつ大胆に擦り抜けていけばいい)
だからシルバースキンを、着ない。
恐怖に呑まれてシルバースキンを着れば、自らの俊敏さを殺してしまう。
レミリアは自らの肉体の不死性に驕って傷を負った。
シルバースキンだって同じ事。
着ていればどんな攻撃を受けても大丈夫、だから動きにくくても安心すれば良い。
そんな事を考えて生きていけるはずが、ない。
物質的な守りよりも精神的な覚悟の方が身を守る。
「……でも流石に、これはどうにかしたいわね」
といってもそれとテーブルクロスで満足できるかは別問題だ。
見た目としてはだぶだぶのシルバースキンよりマシだと思うのだが、
それでも幾らかっこつけた所でこんなはしたない格好では決まらない気がする。
隠すところは辛うじて隠せてるし動き易さも問題は無いけれど、やっぱりいつものドレスを着たい。
色々とキメる意味でも。
「それにしても遅いわね。あの娘は何時になったら戻ってくるのかしら」
時間を止めて仕事をこなす完璧で瀟洒なメイドより遅いのは仕方ないとしても、
その前のメイドと比べてもやっぱり遅い。
本職と比べているだからそれでもまだ要求が高いのだが。
「……あ、帰ってきた」
ぺたんぺたんとする足音を鋭敏な聴覚が拾い上げた。
どうも重い気がするのは言いつけ通り水の入った桶も持っているのだろうか。重畳だ。
これでようやくティータイムにして体も拭ける。
ほっと一息を吐く。
「おかえり。遅かった……わね……」
声を掛けようとして、戻ってきたアルルゥと彼女が担いでいる物が目に映った。
アルルゥは一人の少女を担いでいた。
「……ひろった」
「捨ててきなさい」
「…………むぅ」
アルルゥはむくれた。
理由はある。
担がれている少女は深い傷を受け、このままでは死ぬように見えた。
しかしレミリアには見ず知らずの、情報も定かでない人間を助ける理由など無い。
なんでわざわざそんなしち面倒くさい事をしなければならないのか。
(まあ私を恐がるなら食事に良いかもしれないけど……別にお腹は減ってないのよね)
食べてもいいが食べなくてもいい。
わざわざ助けて起きるのを待って恐がったら食べるなんて面倒なことをする気にはなれなかった。
だからこの時点でレミリアは傷付いた少女に対してなんの興味も持たなかったのだが……
「……このひとも、おねーちゃん」
アルルゥの一言が興味をそそった。
「どうしてわかる?」
「……ねごと」
確かに耳を澄ますと、少女はうわごとのように何かを呟いていた。
……レミリアは耳を澄まし、それを確かに聞きとった。
彼女はアリシアという少女に謝っていた。
姉なのに助けて貰って、それなのに何もできなくてごめんねと謝っていた。
どうやら、生き別れた妹らしかった。
(……だからどうした)
それでもやっぱりレミリアにとっては関係のない話だ。
人間の姉妹の事なんてどうでも良い。
生き別れて死んだ妹も、今正に死にかけている姉もどうでも良い。
大半の人間は簡単に死んでしまうものなのだから。
生きようが死のうが関係無い。
………………。
レミリアの手から一発の炎弾が放たれた。
「ひゃ……」
炎弾は身を固めたアルルゥの横を通り過ぎ、暖炉へと突き刺さる。
入っていた薪に、火が灯った。
「…………う?」
「確か人間って、寒くしてると死ぬんでしょう?」
「ん」
こくこくと頷き、アルルゥは背中に背負った少女を暖炉の前に寝かせた。
炎が少女をゆっくりと暖める。
レミリアの手がもう一度振られた。
「…………う?」
アルルゥは唐突に投げられた六角形の物体を受け止めた。
首を傾げるアルルゥにレミリアがその効果を教える。
「それには弱い治癒効果が有る。
切り裂いたテーブルクロスが有るから、これで胸に巻いて押しつけておけば死にはしないわ。
……貸すだけよ。それは私の日傘なんだから」
「……ん!」
アルルゥはこくりと頷くと、処置を始めた。
治療を専門とする姉の見よう見まねは、辛うじて様になっていた。
(……気まぐれが過ぎたかな)
レミリアは独り言ちる。
確かにレミリアはもう核鉄の回復効果なんて要らない程に回復したが、助ける理由も本当に無い。
なんとなく寝覚めが悪い気がしたし、治療もアルルゥに任せるつもりだが、丸すぎる気もする。
結果として大当たりだった最初の支給品は一つも手元に無くなっている。核鉄は貸しただけだが。
(まあいいか。『情けは吸血鬼の為なり』だし)
何か違っていた。
一方のアルルゥにだって、目の前の少女……プレセアを助ける大した理由は無い。
アルルゥにとっては敵と認識するのに不十分な情報しかなくて。
それから、やっぱり自分の姉とはまるで似ていないけれど誰かの姉である少女が、
どうしても、というわけではなくただなんとなく、放っておけないとそう思ったのだ。
ただそれだけ。
レミリアもアルルゥも、人を殺すのに大層な理由は要らない。
人の、特に知らない人間の命なんて何とも思っていないのだから。
種としての傲慢さが、幼い無知が、命の価値を軽くする。
だけど理由もなく殺しているわけではない二人にとって、
プレセアを殺す理由は無くて、プレセアを生かす理由がほんの僅かでも有っただけ。
その気まぐれは人を殺す事も、当然人を生かす事だってあるのだ。
* * *
二度目の目覚めは、とても暖かいものだった。
弾ける薪の音と柔らかい熱が全身を包んでいる。
寒い日に帰ってきた暖かい家のような温もりだ。
頭の中はバターのようにとろけて思考が判然としない。
ただ断片的に覚えている事から考えれば……
(ここは……死後の世界ですか…………?)
溺れた時も死を覚悟したが、幸運にも岸まで流れ着けた。
だけど二度目はどうしようもない。
何もしなければ死ぬような状態で、何も出来なければ殺される状況で倒れた。
これで生き残ったらもう奇跡だ。
だから、目を開けた時に見えた顔は死後の世界のお仲間だと思った。
その背後から光も差していたから。
「……あなたも、死んだのですね」
「…………う?」
獣耳の少女が不思議そうに首を傾げた。
「私を殺した後に殺されたのですか。間抜けな話です」
「ん…………………?」
「でも同じ死者なら恨む気にもなれませんね。仲良くしましょう。
……そうだ、アリシアは何処かに居るかな…………」
「………………」
獣耳の少女は首を後ろに振り向いた。
そっちの方は何故か窓がカーテンを閉められて日陰になっている。
獣耳の少女の後ろの窓はカーテンを開けてあるのに。
明るい所から暗い所を見ているせいで日陰が一層暗くてよく見えない。
(窓……カーテン…………?)
まだ頭がぼんやりとしている。
「アルルゥ、しんだ?」
「それだと私も死んでる事になるじゃないか。勝手にここを死後の世界にしてないで、起きろ」
陰の中で爛々と輝く紅い目の持ち主が、言った。
……眠気が、覚めた。
「……え?」
跳ね起きる。痛みが走った。
「痛!」
痛みは右肩。負傷した場所だ。
そこを見てみると白布の包帯が巻かれ、その下に何か六角形の物を宛われていた。
深手だったはずなのに、血は大して滲んでいない。
冷え切っていた体も若干の痺れが残るだけで動いてくれる。
(包帯……)
上半身の服は脱がされていた。
窓際の椅子に別の服と纏めて干されている。
ハンマーも、ハサミもランドセルも手元には無い。
それでも、生きている事は間違いないらしかった。
この殺し合いの島で、命を救われた。
目覚めてきた意識が、ようやくそれを認識する。
「寝惚けてたのね。人間は脳なんて単純で科学的な思考中枢を使うからそうなのよ」
「…………………」
アルルゥは少し考え込むような仕草をしたが、結局何も言わなかった。
ボケというものは誰も気づかなければ成立しない。
「私はレミリア・スカーレット。そっちはアルルゥ。それであなたは?」
「…………プレセア、です。プレセア・コンバティール。
助けてくれたのですか? …………どうして?」
「気まぐれ」
「なんとなく」
「………………」
身も蓋もない答えが返ってくる。
「敢えて言うなら寝言かな。妹が居たんだって?」
「それは……どういう理由になるのですか?」
「私にも居るわ。どこかをほっつき回ってるけど。
ついでにそこのアルルゥも姉が居るのよ。元の世界らしいけど」
「……そうですか」
奇遇。そう言うべきなのだろう。
彼女達が自らを、あるいは姉の姿を重ね合わせ、その結果として彼女は助けられた。
それだけの理由だ。だから。
「……私のランドセルは返してもらえますか?」
「ああ、これね」
紅い目の少女が手に持っていたそれを軽く投擲する。
それは放物線を描き、プレセアの腕に収まった。
中を確認して、あの手頃なハンマーことグラーフアイゼンが入っているのを確認する。
(体は……体力はひどく消耗していますね。全身に痺れが残っています。
右肩の傷も塞がりはしたけど完治は遠い。右手の痺れは殺し合いにおいては深刻でしょう。
左手、いえ、両手で使わないといけないでしょう。
でも、やろうと思えば今すぐでさえ戦えないわけじゃない。私は……)
「妹を生き返らせる為に優勝を目指すのね」
「!?」
レミリアの言葉に息を呑む。
向き直ると、レミリアは長い食卓で紅茶を飲んでいた。
戦いの気配はない。殺意も、敵意も。
レミリアは手にフォークを握り……皿の上に乗っていたケーキを割いて、食べた。
いつの間にかアルルゥもその横に座り、お皿に載ったケーキを食べている。
こちらはプレセアを警戒する様子こそあるが、それだけだった。
殺し合いに乗っている相手を前にして、何も気にしない。
「あなたも食べる? 魔法で作った物だからちょっと大味だけど、まあまあね。
紅茶も有るわよ」
「……どういうつもりですか?」
「どうって、お茶会」
「止めも、殺しもしないのですか? 殺し合いに乗った相手に」
「………………」
レミリアは紅茶を一口、優雅に口にする。
その後で、言った。
「殺されたいなら殺してやるよ。向かってきたならね。
だけどこれでも人じゃないんだ。同族殺しなんて勝手にやっていれば良い。
絶滅したら困るけど、最後の一人になったら少なくともここからは出られるわけだし問題ないな」
アルルゥは大口を開けて嬉しそうにケーキをほうばった。
その後で、言った。
「アルルゥ、てきならたたかう」
それらの言葉にプレセアの方が、惑う。
彼らの考えが判らない。
動揺が、不安が、悩みが、迷いが、頭の中を埋め尽くす。
(あの音が聞きたい。あのハサミの音が聞こえれば……)
そうすれば迷いなんてきっと吹っ切ってしまえるのに。
しかしランドセルの中からハサミは見つからない。どこかに零れてしまったのか。
疑問や迷いは自ら解決するしかない。
だからプレセアは、訊いた。
「……あなた達も殺し合いに乗っているのですか?」
今度先に答えたのは、アルルゥだ。
「みんなころしてかえったら、おとーさんがおこる、いった。
だから、べつなほうほうでかえる」
「怒られる……」
「プレセアは、おこるひといない?」
「それは…………」
居る、だろう。
仲間達はきっと怒るだろう。怒ってくれる。そしてきっと……アリシアも。
数十人を殺して生き返らせてもらったらきっと、怒るだろう。
レミリアの答えが、続いた。
「皆殺しは無いな。フランが居るんじゃそうはいかないし。
フランが死んだら知り合いも居ないから別にそれでも良いけど、
どっちにしろあのジェダって奴は気にくわないから叩きのめすよ」
「知り合い……」
「おまえは一人連れて来られたんだろう? 暴れるなら勝手にすれば良い」
「え………………」
(……一人?)
そう、その通りだ。
ロイド達は連れてこられていない。…………筈だ。
連れてこられたのは見た目が幼い者達ばかり。
それに当てはまる仲間なんて…………
「…………まさか」
慌ててランドセルをひっくり返す。
残っていた少量の水と一緒にビチャビチャにふやけた食料などが転げ出る。
その中から紙を捜す。一枚の紙切れを。
(これは……違う、地図じゃなくてもう一方の………………有った……!)
参加者名簿。
この殺し合いに連れてこられた全ての参加者の名が記された名簿。
あいうえお順に並んだその名簿は濡れて文字も掠れていたけれど、懸命に文字の意味を拾い集める。
そして、見つけた。
――ジーニアス・セイジ。
「…………ぁ」
掠れた息が漏れる。
それは仲間の名だ。
大切な大切な、仲間の名だ。
同時に。名も知らずに殺そうとしていた85人の中の、1人。
(ちがう私は、私はそんなことを考えてない、私はただ知らなくて、気づかなくてだから……)
……本当に?
何時でも気づく事は出来た。
参加者名簿を見て誰が参加しているのかを確認するなんて何時でも出来た。
だけどそれをせずに自分以外の85人を知らない者だと決めて殺し合いに乗った。
(どうして、私はどうしてこんな、気づかなくて、気づこうとしなくて、どうして……)
天秤に掛けたのではないか? アリシアとジーニアスを。
ジーニアスが別の誰かの手に掛かって死んでくれれば良いとは思わなかったのか?
そうすれば手を汚さずに済む。
そうすればただアリシアを生き返らせれば済む。
ジーニアスの死に悲しんでそれ以上にアリシアの復活を喜んで何食わぬ顔で明日を生きて……
(違う――!!)
そんな『理由』じゃない。そう思える別の『理由』が欲しかった。
ジーニアスも連れて来られていたのに殺し合いに乗ったのは自分のせいじゃない。
ジーニアスを殺そうとしたわけじゃない。
そう思える何か他の『理由』は……
「あ、そうそう」
レミリアの声が、聞こえた。
「助けてやったお礼として、このハサミもらっておくわよ」
「ハサミ……?」
顔を上げるとレミリアの手の中にはあのハサミが有った。
あの綺麗な音で悩みを断ち切ってくれるハサミ。
(あのハサミが有れば……)
この悩みもきっと晴れる。だから『待って』とそう言おうとして。
「それにしても面白いわね。迷いを切ってくれるハサミなんて。
あの槍ほどじゃないけど、人の運命を変えるハサミという所かしら」
「え…………?」
言葉が切れた。
運命を変えるハサミ。
その言葉に胸がざわつく。
「説明書読んでなかったの?
音を聞いた人の迷いを断ち切って思い切った行動をさせる効果が有るそうよ」
「それって……」
目を見開く。
ハサミに迷いを断ち切られて殺し合いに乗った。
その事に『理由』を見つけた瞬間――
これまでハサミに対し抱いた愛着が――
ハサミの音から感じていた昂揚が――
――全て、恐怖へと裏返った。
「あら、心当たりが有るのね」
見開かれたプレセアの瞳には僅かな安堵と激しい恐怖が映っている。
殺し合いに乗ってしまったのは全てあのハサミが『理由』だったのだという安堵と、
あのハサミによって殺し合いに乗せられてしまったという恐怖が。
裁断の音から解放されたはずのプレセアの心を再び翻弄する。
「それにしてもちょっと面白そうね。一度鳴らしてみようかしら」
「や、やめ……!!」
再び殺人鬼になってしまう。
再びジーニアスを殺そうとしてしまう。
その恐怖がプレセアの心を塗り潰し、しかしレミリアへの距離はあまりに遠くて――!
「…………なに?」
「アルルゥ、そのおと、イヤ」
ハサミを鳴らそうとしたレミリアの手はアルルゥに掴まれ阻まれていた。
「そのおと、ヘンになる」
「そう。ならいいか」
レミリア自身も拘る事ではなかったらしく、ハサミは彼女のランドセルに放り込まれた。
プレセアは心底から安堵の息を吐いた。
「それで、あなたは結局どうするのかしら?」
「殺し合いは……もう、やめておきます」
「あら、そう」
「………………お茶……頂いてもいいですか」
「別にいいわよ」
日陰から、日向の境界に。
ティーポットとティーカップが置かれた。
それとお皿に載ったパンが。
「お茶会でそれは華やかさが足りないわね」
その一言でケーキに変わる。
クロウカード「甘(スイート)」。
ありとあらゆる物を甘くしたり、形や形質すら違うお菓子に変える事が出来るクロウカードだ。
本来はアルルゥの支給品だが、アルルゥがパンをただ甘くしていただけなのを見かねて、
横からレミリアが取り上げてケーキを作るのに使ったのである。
アルルゥはこれによりすっかり懐いてしまった。
「料理をするメイドが欲しいわね。
魔法で大雑把に作ったケーキと質の悪い葉しか無いんだから」
そうぼやきつつ出された紅茶は……とても、暖かかった。
* * *
『彼』は思考する。
状況は変化した。
少女プレセアがハサミにより受けていたらしい精神への影響は消失。
反動としてやや殺し合いを忌避すらしているようだ。
(もう、安全になったのだろうか?)
そう考え、『彼』はすぐにそれを否定する。
レミリアという少女の言葉を信じるならば、あのハサミは迷いを断ち切る物だったらしい。
つまりプレセアという少女が殺し合いを選んだ理由の幾ばくかは彼女自身の選択だった事になる。
プレセアは仲間が居た事に気づき殺し合いの継続を断念した。
しかしその仲間であるジーニアスが六時の放送で呼ばれたらどうなるだろうか。
再び暴走を再開する危険は否定できない。
事実、直接的殺害は無く短い間とはいえ、殺人鬼として暴れた反動は精神を不安定にしているようだ。
更にプレセア自身に戦うつもりが無くても殺人鬼だった時に遭遇した者達は彼女を敵と認識するだろう。
彼ら、彼女らがどこでどうしているかは不明だが、悪い噂を広げられている危険も有る。
更に、プレセアを助けお茶会を開いている二人にも不安が残る。
まず片方のアルルゥはプレセアと同じく殺し合いに乗っていたらしい少女だ。
父親に怒られるからと殺し合いをやめたその倫理観は純粋であり、同時に危うい物と言えるだろう。
ふとした事でやはり暴走を再開する危険は否定できない。
またプレセアと同じ事由により、戦うつもりが無くても悪い噂が広がっている危険がある。
更に彼女の場合にプレセアと違う点は、彼女はリンカーコアを持っている事である。
プレセアを拾った時もカードにより魔法の泡を出して服を洗おうとしていたらしい。
彼女が暴走した場合、『彼』を使いこなしプレセアより強大な脅威になる恐れが有る。
もう片方のレミリアについては更に危険だ。
彼女は自分は人間ではないと言い、人命を軽視する発言を繰り返している。
プレセアを助けたのも文字通り気まぐれなのだろう。
悪い事に彼女は肉体派を匂わせる仕草を見せながら強大なリンカーコアを秘めている点だ。
もし彼女が『彼』を悪用しその機能を使いこなして暴れ回った場合、とてつもない惨劇が予想される。
その上、レミリアは『彼』が魔力を秘めたアイテムである事には気づいているようなのだ。
思いきりハサミが彼女の興味を惹いてくれたから良かったが、
一つ違えば今頃はレミリアの手の中でその機能を試されていたかもしれない。
しかも殺し合いに乗らない理由も、彼女の妹も連れてこられているというただそれだけらしい。
レミリアの妹のフランという少女が死んだ場合、彼女に殺し合いに乗らない理由はほぼ消失する。
殺し合いに乗る理由も無いようだが、どう動くかは極めて不安定な存在だといえる。
更にレミリアの言葉の端々には妹のフランが危険人物であるようなニュアンスが篭められている。
彼女の妹がどんな存在なのか詳細は不明だが、警戒すべき人物という事は間違いないようだ。
(……何故だ。状況が悪化したように思える)
森で少年と戦った時、プレセアは自分には仲間が居ると叫び『彼』を振るった。
その言葉から話し合いの余地を感じた『彼』はプレセアに助言を行い延命に協力した。
これは『彼』自身が水底に沈む事を恐れた為でもある。
結果、プレセアはランドセルを降ろしてそれにしがみつき、城へと流れ着いた。
プレセアは殺し合いをやめる事を宣言し、チームを組んでいるらしい二人と一応は友好的に接している。
状況は改善している。その筈だ。
だが『彼』の感じる不安はなかなか消えてくれなかった。
(やはりもうしばらくは様子を見るべきだろう。
彼女達が我が主ヴィータと平和的な接触をしてくれると良いのだが)
『彼』ことアームドデバイス・グラーフアイゼンは静かに――願った。
時刻は三時。
黄金の午後はただ穏やかに過ぎていく。
【F-3/城内の食堂/1日目/午後】
【黄金の午後】
【レミリア・スカーレット@東方Project】
[状態]:魔力消費(小)
[装備]:飛翔の蝙也の爆薬(残十発)@るろうに剣心
[道具]:支給品一式、思いきりハサミ@ドラえもん、クロウカード1枚(スイート「甘」)
[服装]:裸にテーブルクロスを動きやすく纏っている。(服は洗って干している)
[思考]:ひとまず放送を待つか。
第一行動方針:お茶会をしながらひとまず放送と夜の訪れを待つ。
第二行動方針:プレセアと別れる時は日傘(シルバースキンATの核鉄)を返してもらう。
第三行動方針:フランを知っている瞬間移動娘を探す。
第四行動方針:時間があったら爆薬で加速の実験をする。
基本行動方針:フランを捜す。ジェダは気にくわない。少しは慎重に、しかし大胆に。
[備考]:クロウカード「甘」は制限により、食品以外は味しか変わりません。
(剣や銃をお菓子にして無力化などは出来ない)
※:本人の再生能力+核金の効果+数時間の睡眠により概ね回復しました。
現在の魔力消費は残っている消耗です。「甘」の消費は殆ど有りません。
【アルルゥ@うたわれるもの】
[状態]:頭にたんこぶ。
[装備]:タマヒポ(サモナイト石・獣)@サモンナイト3、ワイヴァーン(サモナイト石・獣)@サモンナイト3
[道具]:基本支給品、クロウカード二枚(バブル「泡」、ダッシュ「駆」)
[服装]:いつも通り
[思考]:甘い物くれる人は好きで、しかも戦った理由は忘れた為、レミリアに懐いた。
第一行動方針:とりあえずレミリアと一緒に行動する。
第二行動方針:イエローや丈を捜したい。
基本行動方針:優勝以外の脱出の手段を捜す。敵は容赦しない。
参戦時期:ナ・トゥンク攻略直後
[備考]:アルルゥは獣属性の召喚術に限りAランクまで使用できます。
ゲームに乗らなくてもみんなで協力すれば脱出可能だと信じました。
※:服を洗う時に「泡」を使っていますが、魔力消費は極めて軽微として省略。
【プレセア@テイルズオブシンフォニア】
[状態]:体力をかなり消耗。軽度の貧血。右肩に重度の裂傷(処置済+核鉄で治癒中)。
ツインテール右側喪失。思いきりハサミにトラウマ的恐怖。
[装備]:グラーフアイゼン(ハンマーフォルム)@魔法少女リリカルなのはA’s、エクスフィア@テイルズオブシンフォニア
シルバースキンATの核鉄(No.52)@武装錬金
[道具]:カートリッジ×10@魔法少女リリカルなのはA’s、支給品一式(びしょぬれ)
[服装]:白布の包帯と下着姿(服は干してある)
[思考]:とにかく紅茶とケーキで心を休めましょう。……それに、助けてももらいましたし。
ハサミを持つレミリアへの潜在的恐怖。止めてくれたアルルゥへの潜在的信頼。
第一行動方針:しばらくお茶会に付き合う。その後は未定。
基本行動方針:行動方針未定
※プレセアはアリシアの死を知った以降から参戦。
※グラーフアイゼンはこの状況を警戒しています
[備考]:シルバースキンATは185cmのブラボーサイズで生成されます。核鉄の機能は知りません。
投下完了。
wikiで寸断される可能性を忘れて一繋がりにしてしまいましたが、
掲載時はテキストorワープロモードでページを作るか、
レス(7/12)のプレセアが目覚める前で切ってください。
投下乙です。
姉妹つながりで三人を結びつけたのはGJ。
状況だけ見ればとてもいい感じなのに、グラーフアイゼンの言葉で
どうしようもなく不吉な予感がしてしまう。
そして、リルル、ククリ、ネス、イエローを予約。
【予約まとめ】
3/16(金)の予約(〜3/19(月)まで)
◆2/wC7C1bIk :グレーテル、太刀川ミミ
3/18(日)の予約(〜3/21(水)まで)
◆ou3klRWvAg :リルル、ククリ、ネス、イエロー
【現時点よりちょっと前のMAP】
>>103 【島内に放置されているアイテム等まとめ】
>>443 【現時点の各地状況】
ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi80390.txt.html あちらが落ち着けばこちらがキナ臭くなってくる、といった具合で、
今日もロリショタロワは円滑進行中。
いま平和なのはフランドールのおやすみしている北東エリアくらいで、
はじめわりと平穏だった北西の森・学校のあたりが現在の火薬庫。
森の中を移動中のツンデレーズや脱出派のインデックス、ステルスな紫穂、学校を目指しているリディアやグリーンなど、
絡んできそうなキャラも付近にいて、状況は予断を許さない状況です。
>>479 投下乙。でも回復が早すぎるような気がする
>>465 しんのすけ(ブタ状態)がランドセルに入らなかったのでバラした経緯を見ると、
支給品以外は普通のランドセルのサイズ分しか入らないっぽい
投下GJ
一応無差別マーダーは脱却したけど、三人とも不安定だな……
グラーフアイゼンの心配はもっともだねえ、丈は実質アルルゥが殺したようなもんだし。
……本来の主のヴィータもマーダー化してるね、微妙に空回りな真面目デバイスくんだ。
イエローがこの三人と会ったら間違いなくマーダーチームと思うだろうな。あながち誤解でもない。
>>479 魔力回復が早すぎると思う。
消費大だったのが数時間で小まで回復ってどういうこってすか?
GJ!
これだけの危険キャラ集めておいて、開かれたのは穏やかなお茶会というのが逆に怖いw
でも城の階下はもう午後か……。
城の上の方にいる葵&偽薫はまだ昼だからな……。
上で騒ぎが起きてる間、下の2人は寝てたんだろうけど。さてどう動かすか。
>魔力回復
現時点睡眠で魔力を回復したベルカナのSWでは6時間の睡眠で全快するのを参考に、
(ロワ内でもこの比率で回復している模様)
魔力消費大を75%、中を50%、小を25%くらいかな? と考えて、
核鉄の効果を合わせて3時間くらいの睡眠で50%回復と考えました。
といってもこれは本当にどの程度回復させればいいか頃合いが掴めないんですよね。
もっと少なくしてもベルカナとは別世界って事でも矛盾は無いでしょうけど……
どの程度まで回復させたものでしょう。
投下乙です!
思いきりハサミって凄い上にこの面子でのお茶会がw
さてさてどうなることやら……
そして報告ですが、『1つの決心』でのレベルアップで
>>184さんが言った通りに記述
『別れ、そして……』『衝突、そして……』の誤字脱字など全体的に修正
多分読みやすくなったと思います……
後したらばの雑談で言われてたバルキリースカートのブレード復活の早さについて
とりあえず壊れたのは朝でしたよね? 朝から昼までと言うことでとりあえず使用可能
ですが、耐久力に関しては他の2つよりも脆いという形でよろしいでしょうか?
と思ってたら展開中だと回復しないやら……とりあえず他の人の意見を待ちます
>>480 GJ! そろそろ思い切りハサミの効果が切れるからどうなるかなー、
と思ったらこう来ましたか。一見強力なパーティーが結成されたようだけど
果たしてどうなることやら。
神のような引きで終わった作品に続くのは緊張しますが、
シャナ、小太郎、イヴ、ビュティ、ブルー、双葉を予約します。
地図を更新しようと思ったのだけど……赤枠で囲む危険人物について困った。
太刀川ミミ :現時点ではマーダーキラー。マーダーには変わりないか?
リルル :人間観察が最優先目的になっている。
フランドール:弾幕ごっこの恐怖は変わりないが、直接死にはしなくなった。
ビュティとイブ:単に大混乱状態というだけ。
タバサ :マーダーより怖いけどマーダーでは……ない……?
野上葵 :仲間関連で暴走しただけ?
城お茶会’s:一応現在は殺し合いから降りているものの火種の量が凄まじい。
福富しんべヱ:暴走しているが死ぬほど危険なわけではない。
ヴィクトリア:食人を必要とする種族だが死体で代用した脱出派。
灰原哀 :起きたらまたエロ暴走? 拘束されている上、殺人鬼ではない。
ネギ :リリスの約束に遅れず行ってどうするんだろうwktk
金糸雀 :どう動くんだこいつ。
トリエラ :城のお茶会連中と似た感じかも。
明石薫 :キレて本気で暴れてたわけだがマーダーとまでは……?
ニア :対主催だけど精神操作使ったりなんか怖い。
弥彦 :現時点、首輪を持って帰るだけの催眠のはずだが……。
積極的に殺していくわけではないこいつらを赤ではなく黄色枠で囲んでみようかと思うのですが、
こいつはその必要も無い、あるいはこいつは赤枠の方がらしいというキャラは居ますか?
>>490むしろ赤枠いらない。
そんな思考の自分は異端ですかい?
>>492 いや、一理あると思う。
赤枠はある意味ネタバレだから、ないほうが本来は正しいのかもしれないけれど……
でも、赤枠をつけた張本人としては、
目立つマークがあると状況が把握しやすくてネタが思いつきやすかったりもする。
「こっちにマーダーがいてこっちにもマーダーがいて、うわ包囲網じゃんコレ!」とか
「近くに赤いのがいなくて平穏だなあ……よしこいつを引っ張ってくるか」とか
こういう時は逆に考えるんだ。専守防衛な非交戦派の方に色を付ければいいと考えるんだ
自分でペイント使って赤枠つけるのが手っ取り早い
496 :
490:2007/03/18(日) 18:33:39 ID:+l2iLMHT
撤廃派も居るんだな。どうしたものか。
つけていた方が状況が把握しやすくていいと思うが…。
>>496 俺は赤枠があったほうがいいかなと思っている。地図見ながらプロット練るとき役に立つし。
ネタバレ気にする人がわざわざ地図を見るとも考えにくいかと。
単純に赤枠あると見づらいっていう人が多いなら消すのもありか。
>>487 そう考えると辻褄はあっている気がする。6時間で全快っていう一つの基準があるなら
それに合わせてしまってもいいような。ただでさえ多彩なジャンルから参加しているから
原作でこうだからこの回復はおかしいと言われても煩雑になってしまうのではないかな。
でもベルカナのは精神力であって厳密には魔力とは別物なんだよな。
MPゼロでも普通に動けるドラクエとかと違って、一般人も持ってる気力みたいなものだし。
【のび太】MP0、精神力8/13とか、こんな感じで。
SWは魔力の回復基準に相応しくないと思う
魔力の回復については議論が終わってない。
終わってない議論に触れるようなことを書く場合は、事前に相談してほしい。
「これこれこうこうだと判断しました」って後から言われても、それに納得しない人もいるわけで。
あと、魔力回復について。
核鉄は魔力回復するのか?という疑問がある。
ごめんなさい、カテゴライズに困るようなキャラをたくさん作っちゃって……。
(でも多分懲りない)
真紅、雛苺 以上2名予約します。
>>489 期待してます。
502 :
490:2007/03/18(日) 19:25:53 ID:dcoKOJtM
>>496 俺は赤枠あったほうがありがたいな……。
微妙なやつは黄枠で囲うってのはアリだと思う。
>>498 でも6時間だと朝の初め(6時)から昼の終わり(12時)になってしまうので、大体4,5時間と考えました。
6時間で全快だと考えたら多分このままで問題ない、で大丈夫かな?
>>489,501期待します!
そしてようやくキャラ把握が終わった……
なのは、ヴィータ、勝を予約します。
505 :
◆uOOKVmx.oM :2007/03/18(日) 20:41:35 ID:Wu7Y+JfC
予約ラッシュだなぁ
ではエヴァ、ニケ、リリスを予約します
>>504 一応、派手な音は出さない方針で考えています
sage忘れた。ごめん
>>504-505 うわ、どちらも期待です。
……あまりに書き手がつかないため、そろそろ自己リレーも止むなしか?
責任取ってもっと書きやすい状態に持っていかないといけないか?
などと考え始めていた所だったので……。
良かった、早まらなくて本当に良かった……。
予約状況更新。
【予約まとめ】
3/16(金)の予約(〜3/19(月)まで)
◆2/wC7C1bIk :グレーテル、太刀川ミミ
3/18(日)の予約(〜3/21(水)まで)
◆ou3klRWvAg :リルル、ククリ、ネス、イエロー
◆IEYD9V7.46 :シャナ、小太郎、イヴ、ビュティ、ブルー、双葉
◆3k3x1UI5IA :真紅、雛苺
◆NaLUIfYx.g :なのは、ヴィータ、勝
◆uOOKVmx.oM :エヴァ、ニケ、リリス
【最新のMAP】
>>502 【島内に放置されているアイテム等まとめ】
>>443 【現時点の各地状況】
ttp://kasamatusan.sakura.ne.jp/cgi-bin2/src/ichi80390.txt.html あちらが落ち着けばこちらがキナ臭くなってくる、といった具合で、
今日もロリショタロワは円滑進行中。
いま平和なのはフランドールのおやすみしている北東エリアくらいで、
はじめわりと平穏だった北西の森・学校のあたりが現在の火薬庫。
森の中を移動中のツンデレーズや脱出派のインデックス、ステルスな紫穂、学校を目指しているリディアやグリーンなど、
絡んできそうなキャラも付近にいて、状況は予断を許さない状況です。
(
>>482より引用)
なにこの予約ラッシュ
>>505 こっちは一応派手な音が出る予定……
それだとそちら側に影響するだろうしなぁ……
音が出ない方の展開もちょっと考えて見ます
むしろ山麓三すくみは派手な音が出ないほうが不思議な状況だものな……
ネタバレを含みそうな打ち合わせなら、したらばのほうを使ってみてはどうだろうかと部外者が提案
目の前の戦いに集中していて気付かなかった。
もしくは、気付いていても移動できなかったじゃ駄目ですかい?
部外者その2の提案。
>>509 >>510-511の案にもあるように三竦みの方は派手になると思っていましたので、
遠慮なくドンパチやってください。
こっちに流れ弾が飛んできて大惨事とか以外なら何とでもw
すんません…orz
間に合いそうにないので予約を破棄します…
>>513 予約期限は今日の日付が変わるまでだから、まだ22時間以上あるけど……
それでも無理そうでしょうか?
>>514 予約当日からずっと書いてますが、一向に進まないんです
スランプかと…orz
本当にすみません
>>487 核鉄が回復させるのは体力だか傷だかだけだから、魔力は回復しないと思ったほうが自然じゃね?
魔力消費中くらいまでにしておいたら?
>>512 わかりましたー
流れ弾とかは多分頂上までいかないと思いますw
・レミリアの魔力回復量について
>ベルカナの回復に合わせてしまって良い?
>>498,504
>合わせないで回復量を減らすべき?
>>499,516
>問題提起?
>>500 とにかく核鉄の影響は無し、として良いのかな。
キャラによっては3時間睡眠だけでもこのくらい回復するようですが、
タフな生活が出来る冒険者と違ってこの状況では安眠出来ないなどの理由を付けて、
レミリアの回復量は(中)までとしておきます。
それに対応して細部修正、まとめウィキ載せもやっておきます。
519 :
498:2007/03/19(月) 14:28:41 ID:vStCwyWG
確かに核鉄で魔力回復はないような気がする。
ただ、今回の回復量に反対している人たちにはどのくらいの割合で回復するのが
適切だと思っているのか言ってくれないとやりにくい。
意見を出さずにただ反対だ、っていうだけじゃ歩み寄ることも決着をつけることもできないよ。
ベルカナは原作のルールがシビアだからな
本屋でぺらぺらーず立ち読みしてきたけど、地味にベルカナって生命点も精神点も高いのな
メンバー中最高じゃね?
山の上と下の2組、分割予約で来るなら時期もズレるかな、と思って仕掛けたんで……
(予約の時期がズレれば、先に書かれた方に合わせればいいわけで)
お2方、ご迷惑おかけしてすいません。大変でしょうが、頑張って下さい。
では、自分でも早い気もしますが、薔薇乙女2人の予約分を投下います。
生きることとは、戦うこと――
それが、誇り高きローゼンメイデン第五ドール、真紅の信念だった。
人生とはこれすなわち戦いそのもの。
困難にめげず、危険を恐れず、自らの力で切り開いていくもの。
それは、人形の姿を与えられ、究極の少女アリスを目指す薔薇乙女でも同じことだ。
アリスゲームを進めることに疑問を抱くようになった今でも、その強い信念は変わらない。
だからこの、ジェダによって強制された、この殺し合いのゲームの場においても――
真紅は、戦うことを選んだ。
戦うことで、まだ存在しない道を切り開こうとした。
一応、理由らしきものはあったのだ。
「優勝者に与えられる『願い』の権利を使い、水銀灯を含めた姉妹全員での平和な日々を実現させる」
――けれども、そんなものは、後付けの口実でしかなかったのかもしれない。
姉妹と過ごす穏やかな日々のために、その姉妹の1人である雛苺さえも殺そうとした矛盾。
アリスゲームを自分なりの方法で終らせるために、アリスゲームのような殺し合いに乗った矛盾。
けれど、それは真紅自身の中では、決して矛盾とは感じられなくて。
生きることとは、戦うこと。
それは誇り高きローゼンメイデン第五ドール、真紅の信念。
張り合いのない人生など要らない。逃げ続ける人生など意味がない。
だから、彼女は――!
* * *
孤独――
それこそが、幼きローゼンメイデン第六ドール、雛苺がこの世で最も恐れるものだった。
トランクの蓋を閉めて、それきり開けて貰えない。
さよならを言って出て行って、それきり戻ってきてくれない。
おやすみ、また明日ね、と言っておいて、それきり目覚めない。
幾つもの時代を超えていく中、そんな哀しい別れを何度も繰り返し、その純粋な精神を傷つけられて。
やがて、彼女は強く願うようになる。
1人は嫌だ。1人ぼっちになるのは怖い。1人にはなりたくない。
もしもこの世に1人きりになるくらいなら、死んだ方がマシ。
だから、ジェダに強要されたこの理不尽な殺し合いの中でも、彼女は頼れる「誰か」を求めた。
殺されるかもしれない危険を承知の上で、それでも他の参加者との接触を求めた。
そしてそれを幸いと言っていいのか、雛苺が初めて会った少女・ジュジュは、彼女の傍に居てくれた。
雛苺を保護し、話を聞き、助け、手を引き、そして……。
孤独からの脱却。
それは幼きローゼンメイデン第六ドール、雛苺の願い。
帰ってこない友達なんてもういらない。守られない口約束なんて意味がない。
だから、彼女は――!
* * *
――雛苺は、湖の見える原っぱで、1人膝を抱えて泣いていた。
もう小一時間ほども、泣いていた。
逃げ疲れ、走り疲れて、もう歩くこともできなくなった――というだけではない。
体力そのものは、ここで泣いているうちに大分回復している。
それでもなお、雛苺が動かない理由、それは。
「……遅いの。ジュジュ、すぐに来るって言ってたのに」
待ち人が来ない。どれほど待っても、待ち人が来ない。
……冷静に状況を思い出せば、彼女が確実に致命傷を負っていたのは容易に理解できたはずなのだが。
それに気付きそうになった途端、雛苺はブンブンと頭を振り、思考を閉ざす。
そんなはずはない。だって、ジュジュははっきりと言ったのだ。
「大丈夫、こんなのなんてことないわよ」、と。「先に行きなさい、すぐに追いつくから」、と。
約束したからには、彼女にはあの窮地を脱する術があったのだろう――やや強引に、雛苺はそう考える。
自分自身に、言い聞かせる。
決して来ることのない待ち人を、待ち続ける。
引き返して確認するのはあまりに怖くて、ひたすらここで、待ち続ける。
「…………うにゅ〜〜」
太陽はそろそろ天頂にも届くかという頃で、でも普段は食いしん坊の雛苺が、空腹すら覚えない。
膝を抱えながら、見るとは無しに対岸の様子を見る。
いくつもの廃墟を包み込むように、不可思議が霧が漂っている。自分たちが襲われた時と同じ霧。
そういえばあれは何だったんだろう、と雛苺がぼんやり考えた、その時。
動きが、あった。
「え……? 火……?」
対岸の建物の、3階か4階ぐらいに当たる高さ。窓から噴き出した紅蓮の炎が、霧の一部を打ち払う。
チラリと見えたのは、誰がどう見ても「ドラゴン」でしかない巨大な怪物。
そして、炎に吹き飛ばされたのは、子供よりなお小さな影。
ボロボロになった赤い服、白い肌、奇妙な仮面、そして金色の髪――
「――真紅!」
間違いない。距離はあれど、仮面があれど、ローゼンメイデンの姉妹の姿を見間違えるはずがない。
それがつい先ほど自分たちを襲った「敵」であったことも忘れ、雛苺は叫ぶ。
真紅の身体は水中に落下し、そして――
晴天から舞い降りた雷が、水面に浮かぶあまりに小柄な身体を、狙い撃ちした。
* * *
――真紅は、水の中で目を覚ました。
記憶が混乱している。必死で今の状況を思い出す。
戦闘能力に長けた、杖を持った男の子を追いかけて、廃ビルの中に踏み込んで、そして……
(ああ……私は、勝負を賭けて――負けたのだわ)
撃破数稼ぎのため、無理な追撃をかけた自分を悔やんでみても、今の状況が覆るわけではない。
真紅は冷静に今の自分の状態を確認する。
身体が痺れている。この痺れは、追い討ちで喰らった電撃の余波というだけではあるまい。
鏡で見なくても自分の背中が酷く焼け爛れているのは分かったし、手足も自由には動きそうにない。
とんだ被害だ。とんだダメージだ。
薔薇乙女が恐れるジャンクの一歩手前――いや、もうこの状態は、既にジャンクと呼んでも差し支えないか。
醜く焼け爛れた背中など、究極の少女・アリスの姿には相応しくない。
「お父様」から頂いた大切な身体をここまで傷つけてしまって、これではもう、アリスに成ることはできない。
(ふ……我ながら不思議なのだわ。
「もうアリスゲームはやらない」と決めたのに、まだ綺麗な身体に未練があるなんて)
自嘲の笑みを浮かべるのが精一杯の真紅の身体が、引き摺られるように水中を動いている。
身体に巻きついているのは、ツタのような植物。目を凝らせば、その所々に赤く鮮やかな実がついていて。
それは、どう見ても間違いない。
『苺轍』。ローゼンメイデン第六ドール、雛苺が呼び出し自由に操る特殊能力。
顔を上げれば、向こう岸で小さな影が緑の縄を必死に引っ張っているのが見える。
苺轍そのものが持つ力だけでは足りなくて、使い手自身が泣きながら引っ張っている姿が見える。
思わず顔に浮かんだのは、安堵の笑みか、それとも自虐の笑みか。真紅自身にも、良く分からなかった。
数分後。
小さな漁師が、底引き網を引き上げるように。
真紅とすぐ傍に沈んでいたバットは、苺轍にまとめて絡め取られ、陸の上へと引き上げられていた。
* * *
穏やかな風が頬を撫で、草原を駆け抜ける。
さわさわと、心地よい葉擦れの音を立てる。
見上げた空は青空で、もう太陽はかなり高い所にあって。
白い雲が、ゆっくりと流れていく。
血で血を洗う殺し合いが行われていることなど、うっかり忘れそうにもなる穏やかな景色の中。
「――何故、助けたの?」
「うにゅ……! 睨まれたって、ヒナにも分からないのよ……!
ヒナは1人で、真紅が見えて、それで、その……!」
引き上げられ、絡まっていた苺轍が解けてから、真紅が最初に発したのはシンプルな疑問。
今にもまた泣きそうな雛苺から返ってきたのは、全く答えになってない答え。
――まあ、そんなところだろう。
たぶん、1人きりで居るのが耐え切れず、後先考えず助けてしまったのだろう。
雛苺の性格を考えれば、雛苺の幼さを考えれば、十分ありそうなことだ。
真紅は溜息をつきながら立ち上がる。
身体が軋む。炎と電撃に引き裂かれたドレスの隙間、露わになった球体関節が、嫌な音を立てる。
膝に手を当ててやっと身体を起こしたその姿には、普段の優雅さの欠片もない。
「真紅、だいじょう……!?」
「近寄らないで。私と貴女は、今は敵同士なのだわ」
心配げに駆け寄ろうとした雛苺を、それでも真紅が押し留める。
全身から水をポタポタ垂らし、自慢の髪も力なく垂れたまま、それでもキッと相手を睨みつける。
――どんなにみじめな姿になろうとも、彼女は誇り高きローゼンメイデン第五ドール。
プライドだけは、戦うことだけは、捨てられない。
「ほ、本当に、手酷くやられてしまったものだわ。けれど――方法はある」
「しんく……!」
「既に1人。もしかしたら2人。あと1人か2人倒せば、『ご褒美』が貰えるのだわ」
シェルターに逃げ込んだ少女の生死は、分からない。
致命傷だったとは思うが、もしかしたら手当てが間に合い、死亡者のカウントに入っていないかもしれない。
けれど、たとえそうだとしても、あと2人殺すことができれば確実に。
ジェダが約束した、『ご褒美』の権利を手にすることができる。
この身に負った、ジャンク寸前の深い傷を修理することができる。また戦える身体になる。
恩を仇で返そうというわけではないのだ。この状況を分かっていなかった雛苺が悪いのだ。
まずは1人。その標的は、他ならぬ目の前にいる、雛苺。
――そんな真紅から叩き付けられる殺気を、雛苺は理解できない。否、理解したくない。
「いや……! いやなの……! せっかくまた会えて、せっかく助けられたのに……! ヒナ、嫌ァ……!」
「忘れたの、雛苺? 私があなたにしたことを。私があなたの『お友達』にしたことを。
私は、とっくの昔に本気なのだわ。――武装練金!」
いやいや、と首を振る雛苺の前で、真紅は軋む右腕をすッと上げる。
手の中に握られていたのは、六角形の金属の板。刻まれていたのは、『LXX』の文字。
真紅の手の中で、それは溶けるように姿を崩して――周囲に再び、キラキラと光る霧が立ち込める。
核金ナンバー70、チャフの武装練金、『アリス・イン・ワンダーランド』。
不思議の国は、相手に逃げることを許さない。
一度は見逃した敵を再び霧の中に閉じ込めて、真紅は鋭い声で叫ぶ。
「死にたくないのなら、戦いなさい! それが生きるということなのだわ!
この戦いも、新しいルールのアリスゲームのようなもの――私たちの宿命と、変わらないのだわ!」
戦う意思の無い者に、生きる権利はない。
けれど、戦う意志も無い者を嬲るのは、真紅の趣味ではない。
それはもしかしたら、親しい仲間だった雛苺への気遣いだったのだろうか?
ジャンクも同然の姿で、それでも心だけは気高さを失わずに、彼女は叫ぶ。
真紅の指先から薔薇の花弁が放たれ、赤い槍と化して雛苺を襲う。
「――嫌ぁぁぁぁぁッ!!」
雛苺が叫ぶ。信じたくない現実全てを否定したくて叫ぶ。
目を閉じ、くの字に身体を曲げて叫んだ弾みで、雛苺の頭を狙った薔薇の花弁は紙一重で逸れる。
頭につけた大きなリボンを貫かれながら、雛苺の足元から緑の鞭が伸びて走る。
それは真紅を引き上げた時にも使った苺轍。相手を殺すことなく無力化できるはずの技――
けれども、それは、真紅の身体を捕らえることはなくて。
「――え? な、なんで届かないの!?」
「『アリス・イン・ワンダーランド』が狂わせるのは、『方向感覚』だけではないのだわ。
『距離感』も、なのだわ。今の私を相手に、遠距離攻撃は通用しない!」
真紅の手元から、再び薔薇の花弁が放たれる。
けれども、身体の不調が響いているのか、その動きには普段のキレが無い。鋭さが無い。
転がるように雛苺が避ける。全て避ける。逆に言えば、雛苺に避けられる程度の攻撃しか放てない。
真紅の表情が、険しくなる。
こちらには感覚阻害による鉄壁の防御。けれど、攻撃もまた当たらない。これでは決着のつけようがない。
そのことを見て取った雛苺が、嘆願するような声を上げる。
「も、もうやめよう、真紅? もう無理なのよ、だから――!」
「そう――。お、思っていた以上に、状況は深刻なのだわ」
時代を超えて戦い続けてきた真紅にも、これほどの損傷を受けた経験は過去に無かった。
水銀灯に片腕をもがれたことはあったが、でもあれが真紅の知る限り最大のダメージで。
だから、今の自分に何が出来て何が出来ないのか、よく分からなくて――
それでも、真紅の戦意は衰えない。
まだ、使っていない切り札がある。それでも戦えるやり方がある。
流石に「それ」を姉妹相手に使うことには抵抗もあったが、こうなってしまっては仕方が無い。
彼女は中指でつぃッ、と蝶々の仮面を押し上げ、小さく呟く。
「できれば、あまり苦しめたくはなかったのだけど――」
「な、何!?」
2人の周囲を包む霧が、渦を巻く。雛苺を取り巻く霧が、密度を増す。
不安げに怯える雛苺に、そして真紅は、宣言した。
「『アリス・イン・ワンダーランド』、密集状態――幻覚の中で眠りなさい、雛苺」
光が弾ける。密集した霧が、蝶の姿を取る。
思わず目を瞑る雛苺、その瞼さえもその閃光は通過して、そして、気がついた時には――
* * *
「だ……誰か居ないの……?」
目を開ければ、そこは相変わらず濃い霧の中。
辺りを見回しても、敵だった真紅すらおらず、彼女は寂しさに身を震わせる。
孤独。それは幼きローゼンメイデン第六ドール、雛苺がこの世で最も恐れるもの。
この世で1人きりになるくらいなら、敵でもいい、誰かに近くに居て欲しい――
キョロキョロと、誰か居ないものかと辺りを見回す雛苺の背に、声がかけられる。
「……ひな、いちご?」
「――ジュジュ!」
それはずっと待っていた待ち人の声。念願の再会に、雛苺は満面の笑みを浮かべて振り返る。
だが、その笑みはすぐに凍り付いて。
「逃げろって、言ったじゃない。なんでまだ、こんなところに居るのよ」
「……じゅ、じゅ?」
「あなたのために、命を張ったのに……全部無駄になっちゃったわ。……くそばか」
面白くもなさそうな顔で、最期に雛苺を罵倒する言葉を吐いて、ジュジュは倒れる。
身体に開いていたのは、素人目にも明らかな致命傷。白目を剥いて、血を吐いて、それっきり動かない。
「じ、じゅじゅ! 起きて、ジュジュ! ねぇってば!」
「……ヒナちゃん」
動かないジュジュを揺さぶり続ける雛苺に、今度は別の角度から声がかけられる。
振り返れば、いつの間にそこに居たのだろう? 雛苺と同じ姿形をした、人間の少女。
いや、それは間違いない。雛苺の元契約者である、柏葉巴だ。
「と、トモエ!?」
「ヒナちゃん、やめて……。あ、あたし、苦し……!」
雛苺と同じ服・同じ髪形で、顔だけは元のままの巴が、胸を押さえて倒れている。
慌てて駆け寄ろうとする雛苺だが、憎悪の篭った巴の視線に射竦められ、動けなくなる。
「ヒナちゃんのせいで……やめて、って、何度も言った、のに……!」
「トモエッ!!」
最期に呪詛の言葉を吐きながら、契約の力を使われ過ぎた巴が、がっくりと崩れる。
それはこのうえなく忌まわしい記憶。否、実際には回避していたはずの悲劇。
雛苺は泣きながら彼女の身体に縋り付くが、もうどうしようもない。
もう、全く動かない。
「ヒナちゃん……!」
「この馬鹿人形……!」
「役立たずの、チビ苺……!」
のりが。ジュンが。翠星石が。蒼星石が。金糸雀が。過去歴代の雛苺の契約者たちが。
雛苺の知る人々が、霧の中に次々と姿を現し、雛苺への呪いの言葉を吐いては倒れていく。
みんな、雛苺のせいで死んでいく。
みんな、雛苺1人残して死んでいく。
みんな、雛苺との約束を破って死んでいく。
みんな、雛苺の心に寂しさだけを残し、雛苺を孤独にする。
「いや……いや……!」
雛苺は頭を抱えて、激しく首を振る。
気付いていたのだ。表層意識では誤魔化していたけど、とっくの昔に気付いていたのだ。
ジュジュが助かるはずもないことくらい。ジュジュが死ぬつもりで雛苺を逃がしたことくらい。
優しかった柏葉巴を殺しかけてしまったのは本当だし、過去にもそれに近い例は無かったわけではない。
孤独――
それこそは、幼きローゼンメイデン第六ドール、雛苺がこの世で最も恐れるもの。
深い深い霧の中、無数のトモダチの屍に囲まれて、雛苺はただ1人絶叫する。
「い……嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!」
* * *
――深い霧の中、真紅は雛苺を見下ろしていた。
白目を剥き、涙と涎を流し、うわごとを言いながら、ビクビクと痙攣を繰り返す薔薇乙女の姉妹。
これが人形でなかったなら、きっと失禁でもしていたに違いない。
悪夢のような幻覚に捕らわれ倒れ込んだ雛苺の姿に、真紅は呟く。
「私は、相当に下劣ね。貴女の恐怖も苦しみも何もかも、全て知り尽くしていたはずなのに」
雛苺が人一倍孤独を恐れていることは知っていた。だから、幻覚でそこを突くのも必然だった。
相手の弱いところを突くのは、戦いの基本。上手いと賞賛されこそすれ、卑怯と呼ばれる謂れはない。
――けれども、何故だろう。何故こうも、釈然としないものが残るのだろう。
胸の奥に湧き上がる躊躇いを、真紅は頭を振って振り払う。
「……楽にしてあげる。もう、終わりにしてあげる。
そして貴女のローザミスティカは私の物になり、貴女は私の中で生き続ける。
可哀想な雛苺、貴女は永遠に孤独から解放されるのだわ――」
真紅の手の中に、舞い上がる薔薇の花弁が出現する。
雛苺はなおも倒れ、痙攣するだけ。この距離、この状態なら、外しはしない。
真紅は腕を振り上げ、雛苺に破壊の力を叩きつけようと――
「――え?」
――叩き付けようとして、その動きが途中で止まる。
身体が動かない。金縛りにあったかのように、動かない。
いや……それは金縛りではなかった。
いつの間にか音も無く、身体に巻きついていた緑色の蔦。その所々に揺れる鮮やかな赤い実。
――『苺轍』。
「い、いつの間に……こ、これは!?」
信じられない。
この距離感を狂わせる『アリス・イン・ワンダーランド』の中で、どうやって真紅のことを捕捉したのか?
慌てて首を巡らせ、濃霧の中目を凝らした彼女は、そしてそのカラクリを知る。
――倒れ、痙攣を続ける雛苺の身体を中心として、360°全ての方向に延びた苺轍!
遠近無視の、全方位苺轍。触れたもの全てを縛り上げる、無差別拘束。
確かにこれなら、鉄壁を誇る武装練金の欺瞞効果も意味が無い!
それはほぼ唯一にして確実なる『アリス・イン・ワンダーランド』の攻略法だった。
「ひ、雛苺の作戦が、私の計算を上回った? いや違う、これは――!」
あの雛苺に、そんな作戦立てられるわけがない。幻覚に溺れる彼女が、まともに戦えるはずがない。
これは、単なるヤケクソだ。これは、単なるブチ切れだ。
策士策に溺れ、息を飲む真紅の目の前で、雛苺がゆっくりと立ち上がる。
壊れた操り人形のように不気味な動作で、起き上がる。
「――みいつけた♪ しんく、みいつけた♪」
その虚ろな瞳は、未だ現実世界を見ていない。
密集したチャフによる幻覚の世界を見ながら、それでも雛苺は、にまぁッ、と笑って真紅の方を向く。
苺轍の手応えが彼女に教える、現実の真紅がいるはずの方向を向く。
「探したのよ。みんな、ヒナのこと残して死んじゃって、でも真紅だけ居ないから、探したのよ」
「…………!!」
「でももう、捕まえた♪ もう、ぜったい離さない♪」
雛苺の言葉に、真紅は己の犯した致命的なミスを悟る。
真紅が知る限りの「雛苺の知り合い」を登場させた、『アリス・イン・ワンダーランド』による幻覚。
けれどもそこに、当の「真紅自身」は登場していなかった!
もしも真紅を登場させれば、真紅自身も幻覚の中で死なねばならなくなる。
たとえ現実の真紅に何の影響も無くとも、自分自身がジャンクになった姿は見たくない――
そんな無意識の恐れが、このミスに繋がったのだ。
雛苺は真紅の方に歩み寄る。ギリギリと締め上げられ、動けない真紅の方に歩み寄る。
幻覚世界をいくら探しても真紅だけは居なくて、1人で居るのはあまりに寂しくて。
手当たり次第に苺轍を延ばして、ようやく捕まえた雛苺の「トモダチ」。
締め上げる力が、一際強くなる。既に壊れかけていた身体が、破滅的な軋みを上げる。
苦痛に身じろぎした弾みで、真紅の顔を覆っていたオシャレな蝶の仮面が、零れ落ちる。
「やッ、やめなさい、雛苺……! こッ、壊れ……!」
「だーめ☆ 真紅も、みんなみたいに約束破ってヒナを1人ぼっちにするんでしょ?
だったら、そうなる前に……」
真紅の悲鳴に、雛苺は虚ろに笑う。その、この世の者ならぬ笑顔に、真紅は戦慄する。
幻覚による精神攻撃は、有効だった――あまりに、効果的過ぎた。
そこに居るのは、既に真紅の知っている雛苺ではない。
過酷過ぎた責めに幼い心は砕け散り、彼女は「こちら側」の常識の通じぬ「彼岸の住人」と化した。
もう、真紅の言葉は、届かない。永遠に、届かない。
「真紅は、ヒナの中で生きるのよ。永遠に、ずーっと一緒なの☆」
雛苺は動けない真紅に歩み寄り、その頭にゆっくりと手をかける。
ツインテールにされた金髪を、両手でしっかりと掴む。
嬉しそうに、ニッコリ笑って――
ゴキリ、メキリ、バキリ。
霧の中に、破壊音が響く。悲鳴を掻き消すかのような、無骨な音が響く。
やがて、霧を掻き退けるように、赤いローザミスティカの輝きが現れて――
一瞬のうちに濃密な霧が消滅し、小さな音を立てて核金が落下して。
穏やかな風が草原を吹き渡り、さわさわと心地よい音を立てる。
青空の下、首の無い人形が静かに崩れ落ち、それっきり、動かなくなる。
――後には、ただ沈黙。
* * *
孤独――
それこそが、幼きローゼンメイデン第六ドール、雛苺がこの世で最も恐れていたものだった。
そしてもう、彼女は孤独ではない。
これからは、ずっと真紅が一緒。どんなことがあっても、真紅が一緒。
誇り高きローゼンメイデン第五ドール、真紅……の頭を胸に抱き、雛苺は小さく微笑む。
澄み切った青空の下、雛苺は爽やかに微笑む。
「ヒナ、頑張るの。真紅と一緒に、アリスゲーム、頑張って戦って優勝なの。……ね?」
もちろん真紅は答えない。
首だけになったアンティークドールが、命を失った薔薇乙女が、答えられるはずもない。
それでも雛苺は、まるで誰かの声を聞いたかのようにニッコリ笑って頷くと、歩き出した。
大きなバットを引き摺りながら、しっかりした足取りで、歩き出した。
生きることとは、戦うこと。その信念は、ローザミスティカと共に彼女に引き継がれて。
雛苺は、もう孤独ではない――その壊れきった精神の中で、永遠に、真紅と一緒なのだから。
【G−5/シェルター西側の平原/1日目/真昼】
【雛苺@ローゼンメイデン】
[状態]:真紅のローザミスティカ継承。精神崩壊。見るものの不安を掻き立てる壊れた笑顔。
[服装]:普段通りのベビードール風の衣装。トレードマークの頭の大きなリボンが一部破けている。
[装備]:マジカントバット@MOTHER2、真紅の生首(!)
[道具]:基本支給品一式、ぼうし@ちびまる子ちゃん ツーカー錠x5@ドラえもん
光子朗のノートパソコン@デジモンアドベンチャー、ジュジュのコンパス
[思考]:真紅は、これからずっとヒナと一緒なの。真紅と一緒だから、ヒナも頑張れるの。
第一行動方針:「新ルールのアリスゲーム」(=殺し合いのゲーム)に乗って、優勝を目指す。
基本行動方針:優勝して、「永遠に孤独とは無縁な世界」を作り、真紅を含めた「みんな」と暮らす。
[備考]:
雛苺は真紅のローザミスティカを獲得しました。以後、真紅の持っていた能力を使用できます。
雛苺は自分の支給品をマトモに確認していません。
【真紅@ローゼンメイデン 死亡】
[備考]:
G−5の湖寄りに放置された首のない真紅の残骸のすぐ傍に、
パピヨンマスク@武装練金、核金LXX70(アリス・イン・ワンダーランド)核鉄状態@武装錬金
が落ちています。
以上。
核金は雛苺には使い方が分からなかったために放置です。説明書も無いですしね。
……どうでもいいですが、身長より長いバットを振り回す薔薇乙女って、怖い絵になりそうだなぁ。
雛我物故我太……
そしてジュジュの託した望みも叶わずか……カワイソス。
これは……
なんというか、怖くて素晴らしい
真紅・翠の子→ティウンティウンティウン
雛→ぶっ壊れた
蒼→大ピンチ(色々と)
金→へたれ
誰かを除いてロクないことがないなローゼン勢……
GJ
怖い……怖いよ……最初の頃の純粋がゆえの怖さだよ雛苺。
真紅も冷酷さが裏目に出たな、まーあんな仕打ちすれば仕方ないさ。
薔薇の花弁と苺轍で上下全体攻撃のマーダーとかテラツヨス。
細かいことだけど、核金じゃなくて核鉄ですよ。
ひ、雛が壊れたー!?
真紅……因果応報とはいえ、無惨な。
……GJ。
なんという雛……間違いなく今のこいつは呪い人形。
でもよくよく考えてみれば、漫画での初出時は水銀燈並みにイカレた子だったっけな……
>>536 水銀燈のことかー!
>>537 あ、素で間違えました。単純な表記ミスなので、wikiにでも収録された後に修正しておきます。
>>539 つまりこれは本来のヒナに戻ったにすぎなかったのだよ!!
ほ、ホラードールの誕生や・・・
うはwwwこれは予想GUYデースwwwww
まさか雛がここまでやれる子だとは思わなんだwwwwwすげぇwwwww
効果音こえええええええ……
あ、容量500KB目前なのでどなたか新スレお願いします。
容量よば。次スレ立てる。
雛苺こわいよ雛苺