これから真っ赤な皿が…
>>882 それはお前だろ。
煽りしか出来ない馬鹿はこれだから困る。
885 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/05(木) 17:10:26 ID:mWiUf6V9
>>884 あわてないあわてない。一休み一休み。
このスレの救世主一休さんがやってきました。
最後にはID変えて釣り宣言かw
分かりやすい奴だなw
春ですからな
延長宣言。
携帯からですんません。
たしか〆切りが今夜だったんですよね?
一応、今夜0時過ぎが期限。
色々と書き辛い部分だろうけど、頑張って下さいな。
期待してます。
期限教えてくれてありがとうございます。
推敲の時間を考えると、やはり今夜中には間に合わないもので。
期限に間に合わなくて申し訳ない。
ふと気になってトリップ付きの作者が作中で何人死亡させているか集計してみました。
トリップの有る無しを使い分けている方がいましたら結果は変わるかもしれません。
9人
cx94bMr2cU氏……菅柳平、石山広明、ララ・ゴンザレス、塚本天満、冬木武一、三沢伸、
サラ・アディエマス、麻生広義、花井春樹
※ララと天満が死亡した「Defect」については「スクールランブルバトルロワイアル7」の369で本人が作者と認めている。
4人
PhRNUx7oBQ氏(1氏)……種田芽衣子、塀内羽根子、飯合祐次、坊乃岬大和
X7WwwzkoUU氏……嵯峨野恵、大塚舞、スズキマサル、鬼怒川綾乃
2人
RDbrutUMF6氏……斎藤末男、結城つむぎ
X7M9O2x/96氏……ハリー・マッケンジー
Z1xfCTNt6U氏……野呂木光晴、東郷雅一
7ILEob33QI氏……音篠冴子、田中一也
1人
qmigqrQIks氏……吉田山次郎
8wje/adj.Y氏……周防美琴
.//7O0o0p6氏……城戸円
トリップ無しの作者による死亡者
天王寺、梅津、永山、寄留野、今鳥、奈良、砺波、岡、西本、烏丸
あ、X7M9O2x/96氏は1人だけでした。
初期からトリップ必須ならやりやすかったんですが。
投下数の多いRHLa6nIQ9U氏は一人も死なせてないのが印象的でした。
>>895 これ見て気づいたが、X7の人って二人いたんだな
ずっと同じ人だと思ってた
ロワなのに誰も殺してない書き手って一体何考えてるんだろう
単発ならともかくRH氏は何作も投下してるというのに
GEI氏同様ロワの意義を完全に見失ってるんじゃないかなあ
つ【適材適所】
アソサラ以外に興味のないGEI氏と一緒にするなよ
>>899 何を言う
誰かが死ぬような展開に仕向けるのもまたロワ書きの醍醐味
そして自分の目論見どおりそのキャラが死ねば、パソコンの前でニヤニヤするのだ
ただそれが露骨過ぎて展開絞ったりするとまた問題あるけどね
殺し合いを仕向けるパスならCb氏は多いな
「接触を目指して」とか「束の間の休息」とか「合流、そして動揺」とか、結構前振りになってる作品が多い。
SM、黒つむぎ、城戸らを南の診療所へ集めようとしてた節もあったな(城戸は途中で止まったが)
見返したらスクロワ、モブ同士の掛け合いが少ないな
組むことはあってもバトルの時はほとんどどちらかにメインがいる
殺すより繋ぐほうが遙かに難しいということを知れ
「上手な繋ぎ」なら文句ないんだけどね
俺がスクロワに期待しているのは殺し合いそのものよりそこに至る過程や心理描写の方が多いかな。
だから戦闘や死亡話を書かない人でも問題あるとは全く考えない。
むしろ誰かが死ぬと「もうこのキャラのやり取りが見れないんだな」と思ってしまう。
殺したら殺したで、駄作だのなんだの文句言うくせにw
>>908 そこら辺の線引きは難しいな
ロワである以上キャラ同士が壊れ合って殺し合うのを楽しむのも目的だし、その辺の両立は特に難しい
投下します。
題名は、【マチガイサガシ】
「……つぅっ!」
樹木の陰に隠れてしゃがみこみながら、それでも一条は大声で痛みを訴えるようなことをせず小さく一つだけ息を漏らす。
距離は、銃弾が急所に直撃してもおかしくないような近さであった。それでも致命傷にならなかったのは高野が即座に銃の引き金を引かなかったということもあるだろうし、
そもそも片手のみで銃の反動を抑えきるのは困難だったからであろう。
しかし、そんなことは今の一条にはどうでもよかった。撃ち抜かれた肩からは血が噴出している。
遊ぶ暇も無く鍛え抜いた筋肉が、金属の塊の通過によって刹那の間に奪われてしまった。
適切な処置を迅速に下したとしても、完全に元通りというわけにはいかないだろう。
日常生活ならいざ知らず、レスリング選手としては一条かれんの命は今この瞬間に尽きたのだ。
「こんなことって。こんなことって……!」
傷付くことを覚悟していなかったわけではない。むしろ自覚はしていなくとも、一条自身は誰かのために危険に身を投じるといった行為に憧憬の思いを抱いている節はあった。
それは今鳥という模範のような存在が彼女を支えていたから。今鳥が一条かれんの為にその命を投げ出したという“認識”が一条の内部に存在していたからこそ、彼女の生が保たれているのだから。
けれど、実際に肉体的な痛みが現実のものとなった時、彼女の選んだ道は身を賭した“守るべき者の救出”ではなく“自らの生への執着”であった。
頭が働かない、手足が思うように動かない。
傷口が焼けた鉄の棒を押し付けられたような感覚を一条にもたらし、しかし他の身体の各部はまるで冷凍室にぶち込まれたかのように急激にその温度を下げ、一条の顔は蒼白に染まっていた。
涙目になりながら、震える手をゆっくりと抉られた右肩へと持ってゆく。
目をその場へは向けられなかったため手探りで運ばれた左手は、ぬるぬるとした感触を伝いながら最終的に露出した肉の手触りをその指先で直に感じ取った。
痛みと、悔しさと、口惜しさと、やりきれなさと。その他言葉では表しきれない様々な感情が一条の心を支配し、彼女の心をゆっくりと蝕んでいく。
「これじゃ、こんなことじゃ……」
もうレスリングなんてできない。大切な人を次々に失ったうえに、今度は自分自身の青春を賭けていた大切な事さえ失ってしまった。
徐々に涙で霞む足元をじっと眺めながら、一条は思う。
なんで自分がこんな思いをしなくてはいけないのか。これはどういう状況なのだろうか。
この世には神も仏もないというけれど、もしかしたら悪魔だけはいるのかもしれない。
自分にこんな不幸を次々と背負わせ、どこかで嘲笑っている悪魔が。
不意に浮かんだのは、姉ヶ崎の顔。
そして次に谷、加藤、刑部、笹倉、郡山。一条達をこんな殺し合いの場に連れてきた張本人達が――もっともわかりやすい敵の顔が、霞む景色の前にはっきりと浮かんだような気がした。
許せない。
報復するべきだ。
殺さないと。
歯を食いしばり、流れる涙を拭うこともせずに左手だけで首もとのリボンをほどいた。
傷口から少しだけ心臓に近い部分にそれをかけ、幾度か失敗しながらも左手と歯を使い、なんとかきつく縛り付ける。
形のみの止血だが、今の一条にはそれだけで十分であった。
目は血走り、髪の毛は乱れていたが、意思は真っ直ぐに唯一つの方向へ。
こんなところで死ねはしない。自分は、今鳥によって生かされたのだから。全てのものに罰を与えなくてはならない。
自分から大切なものを奪い、そして今も奪おうとしている全てのものに、罰を与えたい。
許さない。
報復したい。
殺してやりたい。
そういったベクトルの意思の奔流が、今の一条を突き動かす全てであった。
まずは目の前の障害を排除せねばなるまい。左手のみで扱わなくてはならなかったスパス15は散弾銃であるから、多少狙いがぶれたとしても高野を葬り去るだけの力は十分に残しているだろう。
だが、それは雪野を同時に殺してしまうということ。
雪野は、雪野だけは守らなくてはいけない。
彼女だけはまだ穢れていない――人を殺したり、殺そうとしたりしていないのだから。
それが一条の殺しの衝動をすんでのところで押しとどめていた。雪野を自らの手で殺すわけにはいかない。
だが……、しかし。
高野が、雪野を殺してしまった後ならどうだろうか。
自分が手の出せないうちに雪野が高野の手によって殺され、それすらも復讐の理由として高野を罰するという筋書きはどうだろうか。
雪野の血で濡れる高野を自らの手で葬り去り、その後絶命した雪野を抱きしめながら彼女の無念を晴らすために全力を振るうことを決意する自分の姿。
そんな夢想に、一条は陶酔するのだった。
哀しい美談の一つ一つが、自らの行為をさらに肯定することになる。
一条はそう信じて疑いなかった。スパス15を杖にする形でゆっくりと、しかし確実に木を背にしたまま立ち上がる。
疑いは微塵も無い。それは一条と同じように木の陰に隠れながらも、必死で何かを叫んでいる播磨を見つけた瞬間にも変わることは無かった。
※ ※ ※ ※ ※
「高野っ! てめぇなんで出てきたっ! まずは俺に任せろって言ったじゃねぇかっ!」
声を荒げながらも、播磨はこの展開を全く予想していなかったわけではなかった。
高野がこちらに協力する意思を持っていないということは理解していたし、彼女にこうするだけの能力があるということも承知していた。
それでも、高野の動向に注意しながら一条達を説得するのは可能であると思っていた。
しかしもちろんそれは、播磨が今現在の一条の心境を把握していなかったための計算違い。突然の銃撃に気をとられた自分が、全ての原因だ。
「確かにそう言ったわね。でもそんなことを私が素直に聞くとでも? 相当なお人好しね、やっぱり」
遠目では、高野がどんな顔をしているのかはわからない。しかし声はいつもどおりのトーンで、これが冗談でもなんでもないことを表している。
状況は最悪。一条は播磨のことを信用していないし、高野は裏切って銃をも手に入れ、雪野は首筋に鎌を当てられて、もうどこから手をつけてよいか皆目見当もつかない状態だ。
思わず嫌になってくる状況だが、ただ黙して事態が推移するのを待っているわけにもいかない。そんなことを選択すれば、訪れる結果はたった一つ。
それなら、まだまだ足掻いてみる価値はある。後で後悔しないために今できること、そして今しなくてはいけないことを。
「こんなことして、なんになるって言うんだ! どうしてお前はこんなバカなことを続けるっ!?」
「言ったでしょう? 気が向いたら教えるって。残念だけど、今はそんな気分じゃないわ。それに……」
「なんだ?」
言いよどむ高野の真意を確かめようと、播磨が木の陰から少しだけ顔と身体を出す。
その瞬間播磨の目に入ったのは、しかし高野と雪野ではなくではなく、自分の方へと銃――それはこの島に来てから最初に突きつけられた銃と同じものであったが――を向ける一条の姿だった。
「なっ!?」
慌てて、もう一度その身を樹木の陰へと隠す。同時に聞こえてきたのは、先程と同じ何かが破裂するような音。
それは一条による銃撃であった。もし即座に反応していなかったら、播磨はこんどこそその命を失っていたことだろう。
「くそっ! なんだってんだ全く!」
「……人の命のことを考える前に、自分の命の心配をしたらどう? 『私と手を組んだ』、播磨君」
小馬鹿にするような、高野の言葉。
播磨は自らの感情の昂りを、拳を強く握ることで抑え込み、とりあえず現状ではどう対処することもできない高野と雪野を後回しにしてまずは一条へと意識をめぐらせる。
樹木から顔を出すわけにはいかないから、瞳の色や顔色を窺うことはできない。だから少しでもこちらの意思が伝わり易いよう、播磨は声を張って叫んだ。
「おいコラ一条っ! お前も、なんでこんなことするんだっ!」
「うるさい。あなたも……あなたも人を殺すんでしょう?」
「殺さねぇ! 俺が望んでんのは、そんな結末じゃねぇ!」
「嘘つき。だったらなんで、高野さんと……高野と一緒にいるんですか?」
「それは……っ」
高野さえも救う。それは、今は亡き砺波の手紙にも書かれていた言葉であり、なおかつ自分が選んだ――否、選ばなくてはいけない道。
そしてもしも自分の好きな人が生きていたらとっていたであろう、とても現実的ではない道。
けれど、たとえ非現実的であろうとも、播磨拳児が選ぶ道はそれしかなかった。
問題ばかりで、上手くいくなんて到底思えない道であっても、播磨の心がぶれることはなかった。
それほどまでに、播磨の中での天満の死が持つ意味は大きかった。それは、自らの命の危機においても変わらない。
「元々はお前ら、クラスメイトだろうが! それがなんで殺しあう必要がある!? 今でもまだ遅くない。協力して、こんなクソみたいな殺し合いはぶっ潰して……」
「もう遅いんですっ!」
播磨の大声をも打ち消すような一条の悲痛な叫びに、播磨は喉から出かけた言葉を飲み込む。
一体、何が彼女をここまで追い込んでしまったのか。
播磨がこの島で曲がりなりにも正気を保っていられるのは、塚本天満という存在がその命を失った後でもなお、彼の心を支えてくれているからであった。
一条にはそういう人物がいなかったのか。
それとも――
「もう皆死んでしまったっ! あなたは、皆を取り戻せるって言うんですかっ? 今鳥さんを、生き返らせることができるって言うんですかっ!?」
――大切な人を、失ってしまったというのか。
「……一条、お前」
「あなたみたいな人には分からないでしょうけど。……今鳥さんは、人殺しから私を守って死んでしまったんです。だから私も、人殺しを許してはいけないんです」
「……そんなんして、今鳥のバカヤローが喜ぶっていうのかよ」
ひねり出した言葉は、一条の耳に届かないような小さいものでしかなかった。
大切な人を失うということの意味が、播磨にとっては痛いほどわかったから。それは他人にどうこう言われて解決するような事柄ではない。
かける言葉が見つからなかった。どうしたらよいかわからなかった。
それを一条は、播磨が反論する術を失ったのだと判断し、勝ち誇ったような声で言葉を連ねる。
「私は、彼によって生かされました。そして今鳥さんは、私に生きろって“言ってくれた”。ええ、そうです。言ってくれたんです」
夢と現実の垣根すら、一条の中では徐々に薄れていた。
「人殺しを放っておいたら、殺されてしまうでしょう? だから……ええ、だから私が罰を与えなくてはいけないんです。彼らを殺すのは、私の役目なんですよ」
なんの疑いもみえない一条の口調に、播磨は冷徹に殺しを続ける高野に感じたのとはまた違う戦慄を覚える。
「私はそれを許されている。だから私が人殺しを皆殺して……いずれ先生達も殺さないといけませんね」
播磨は、怒りにも似た感情をその胸に滾らせる。
一条は、変わってしまった。元々、彼女と親しいわけでもないし、彼女の何を知っているんだと言われれば答えようのないことではあるが、それでも彼女は壊れてしまったのだと播磨は断言できた。
「……そうやって、お前も同じになるのかよ」
一条が悪いわけではないのだと、それは理解していたのだが。
拳を強く握り締め、どこにこの感情の昂りをぶつけてよいかもわからず、播磨はその矛先を一条に向けるしかなかった。
「お前もっ! それで立派な人殺しじゃねぇか!」
「同じじゃないっ!」
即座に返ってきたのは、一条の声。
もしも彼女の銃に銃弾が十分に残っていたとしたら、撃たれていてもおかしくないような怒気のこもった声であった。
「どこが違うって言うんだ!」
「説明したでしょう!? 私は許されたんです。今鳥さんに、嵯峨野に! だから……私は穢れても許されるんです」
「人殺しをして許されるも何もあるかよっ!」
「じゃあ、あなたは何なんですか! ……西本さんから聞きましたよ。沢近さんと三人で、ハリーさんを殺したって」
「それは……」
一番痛いところをつかれて、播磨は返す言葉を失う。
「あなたも人殺しでしょう? そんなあなたに、とやかく言われる理由はありません」
「この……わからずやがっ!」
いつもの播磨なら、ここで実力行使に踏み切って問答無用でこちらの言うことを聞かせるところだ。しかし今はそんなことをするわけにはいかない。
相手が銃を持っているということも理由の一つだが、それ以上に大事なのは砺波の残した言葉だ。
一条も、助けてあげなければいけない。そうすることで、自分の存在意義が生まれるような気がしたから。
だから一条を傷つけることは、あくまで最悪の状況における最後の手段であると播磨は心に決めていた。
「わかってないのはあなたですよ、播磨さん。見てください、今の状況を。あなたは私と膠着状態。そして雪野さんは、高野に殺されかけている。
この状況を作ったのは、他でもないあなたなんです。そんなあなたが人殺しじゃなくてなんだって言うんです?」
「俺が悪いのは認める。ただ、信じてくれ。俺はこんなこと望んじゃいなかった。まさかお前がコレほどまでに変わっちまってるとは」
「私は変わっていません! 変わったのは他の人達……だから私は、こうするしかなかったっ!」
一条の気持ちも、わからないではなかった。
播磨も最初に斉藤と鬼怒川に銃を突きつけられたとき、日常との絶対的な隔たりを感じその理不尽さに怒りと恐怖を感じたものだ。
そんな状況下では、自分の思考が歪んでいったとしてもそれ以上の歪みに覆われ気付かないということも無理はないだろう。
播磨自身、気付かないところではどこか歪んでいるのかもしれない。
けれど、例えそうだとしても、播磨は一条の方が間違っていると確信していた。
一条の方法では、結果として誰も救われない。
「……ああ、そうかい。でもな一条」
「?」
「そうやって皆を殺していって、最終的にお前の言う“人殺しじゃない奴”が生き残ったとする。それでお前は、どうするんだ?」
「どうするって……それは先生達に罰を……」
「わかってんのかお前は? その為に何をしなくちゃならないのかってことを」
「何、を?」
それは自分が馬鹿だと自覚する播磨にだってわかること。
けれども今の一条には、そんなことすら見えていない。播磨は大きく息を吐いてから、一気に言い放った。
「お前が言ってるのは、お前が最後の一人になるってことだぞ。それは……殺すってことだろうが。人殺しかどうか関係なく、な」
「ちっ……違うっ!」
一条は否定した。それは播磨の言った事実のことか、それとも彼女自身のことか。
播磨にはわからなかったが、それでも次の言葉に変わりはなかった。
「お前は生きるんだろ? それも人殺しを殺して。そんなんじゃ、どんどん仲間が……クラスメイトが、死んでっちまう。それでどうするっていうんだ。どうやって、このクソみたいな殺し合いをぶっ潰すっていうんだ」
「私ならできますっ! そう信じてきたから、だから私は……」
「その為なら、他の奴の命はどうでもいいって言うのか!? 自分の目的の為に、クラスメイトの命を平気で犠牲にする。……それが間違いじゃないならなんだって言うんだ!」
播磨の言葉は、一条だけに向けられたものではない。
高野にも、雪野にも。今この場にいない三原に八雲、そして沢近。さらには自分自身にも向けた心からの言葉であった。
もう知り合いを一人も殺したくない。もう知り合いに殺しあいなんてして欲しくない。
甘っちょろい考えだということは誰よりも播磨が一番よく理解していた。
高野がそんな自分の考えを否定し、馬鹿にしている節すらあることだって播磨はわかっていた。
けれども、退くことなんてできない。
そこを譲ってしまえば、待っているのは破滅だけだから。それを教えてくれた人は二人とも、もうこの世にはいないから。
「皆で生き残るんだ。残った奴らで協力すれば、きっとどこかに突破口が見つかる! だから一条、俺に協力してく」
言いかけた言葉は、しかしここで播磨の喉から出ることはなかった。
彼の言葉を遮ったのは――
※ ※ ※ ※ ※
播磨と一条が言い争いを続けている間、高野は雪野を脅してパソコンを操作させていた。
雪野を人質に取っている限り、一条から銃撃を受ける心配はない。彼女の持っているスパス15では、雪野をさけて高野だけを狙撃するなんて芸当は不可能だからだ。
だから高野は安心して、パソコンに向かうことができた。
まずは新機能をチェック。雪野に説明をさせてから地図に表示された名前を見て、高野は内心ほくそ笑んだ。
残っている三人のうち沢近と八雲は、自分と親しい間柄。騙して、そして利用するのに、いくらでも手はあるだろう。
もう一つの新機能をチェック。マーダーランキングなどというあまり役に立たない機能に高野は興味はなかったが、自分の名前が画面の真ん中に表示されたところで雪野のタッチパッドを操る指が止まる。
高野は鎌の刃が雪の首筋から離れないように注意しながら、彼女の顔を覗き込んだ。
「誰が操作を止めていいと言ったの? 続けて、雪野さん」
「……なの」
「え?」
あまりにも小さい呟きを高野は聞き取れず、雪野になど最早なんの興味もなかったが、思わずもう一度聞き返した。
「順子を撃ったのは、わざとなの?」
そういえば、と高野は改めて思い出す。
雪野が自分から離れていったきっかけも、砺波順子の死であった。播磨がああも躍起になってこの殺し合いをつぶそうとしているのも、彼女の手紙が原因だろう。
クラスではそんなに存在感もなく、学園ドラマや漫画であればその他大勢の一人にしかならないであろう地味な子だったのに、こうも自分の前になんども現れてくる名前。
なんの因果だろうかと、高野は少しだけもう死んでしまった彼女に興味を抱いた。
「ねぇ、どうなの?」
黙っている高野に業を煮やしたのか、急かす様に雪野が言葉を続ける。
高野は溜息をつきながらも思考を中断し、目の前の少女の耳元で小さく呟いた。
「……いいえ、わざとではないわ。私が殺したかったのは、彼女じゃなくて烏丸君よ。
まぁ最終的には、彼女もいつか殺すつもりだったけどね」
たっぷりと恐怖感を与えるように。
「私は最初から、皆を殺す予定だった。あなたに出会ったときには既に、永山さんを殺した後だったのよ。
彼女の命を奪ったのは、この銃。硝煙臭さに、気付いてもいいものだけどね」
思わず出そうになる笑い声をかみ殺し、高野は雪野を追い込んでゆく。
この島で初めて出遭ったその時から、高野にとって雪野は単なる駒でしかなかった。
傷つきやすく、それでいて扱いやすいただの駒。それ以上でも、それ以下でもありえない。
使えなくなった駒は、もう必要ない。
だったら、壊してしまえばいい。
「……あの言葉も、全部嘘だったんだよね」
弱々しい、雪野の呟き。しかし高野はそれを聞き逃すことはなかった。
「あの言葉?」
「『私があなたを守るから』って。お寺の前で初めて遭った時、言ってくれた言葉。あの時私は……」
「期待した? 私があなたのことを守って、この殺し合いを止めることを?
そんなこと、できるわけないのに」
前もってこのゲームの存在を知っていた高野には、この島から脱出する方法が皆無であることは容易に想像できた。
いくら足掻いても助かることはない。殺し合いは、止められない。
「……じゃあ、なんで」
「何がかしら」
「なんで、私をあの場で殺さなかったの! そうすれば、私……」
「利用するためよ」
はっきりと、そう言い放つ。
雪野の瞳が大きく開かれた。そこに宿る光は、この島でよく見慣れた光。
鋭いが、その輝きは鈍く。絶望に彩られた力のない瞳が高野を見つめていた。
「私の目的は、人殺しじゃない。私の目的は、最後の一人になること。
だからそのためには、効率のよい殺しをしなくちゃならなかったの」
雪野の顔に、戸惑いが浮かぶ。
高野は鎌の刃先を雪野の首筋に這わせながら、まるで幼子に諭すような口調で言葉を続けた。
「理解している? それしか――最後の一人になるしか、矢神に帰る術はないのよ。
それなのにあなたと岡君は、自らの手を汚さずに矢神に帰れるとバカな誤解を続けていた。
……ちょうど、今の播磨君みたいにね」
「播磨……君?」
「播磨君はね、この殺し合いを止めたいのだそうよ。救いたいんだって。あなた達も、私のことも」
けれども、雪野と一条は播磨を受け入れなかった。
その結果が、今の状況だ。
「もしもあなた達が播磨君の事を信用してあげていれば……こんな事にはならなかったかもしれないのに。本当に、バカみたい」
「そんな……」
高野の口から放たれた非情な事実は、雪野の瞳をさらに暗くした。
彼女の頭の中に渦巻くのは後悔か、それとも自責の念か。高野にはそれはわからなかった。
うなだれる雪野が、それでもなんとか息を吸い込んでから静かに呟いた。
「……しょうがなかったんだもの」
何度も、何度も。雪野は「しょうがなかった」と呟き続けた。まるで誰かに言い訳をするように。
何度繰り返しただろうか。雪野はまるでいたずらの許しを請う小学生の様に、高野に幼稚な言い訳を放つ。
「私、怖かったからっ!」
「そういえば、砺波さんの時もそうだったんでしょう?
スコープごしに見ていたけど、彼女は烏丸君を信じていたみたいだし……」
そう言って、雪野の顔を覗き込む。
彼女は、汗を流していた。この島が矢神よりは暖かいとはいえ、今は冬。
それに夜であるから、気温はそう高くはないというのに。
じっと地面を見つめている目の焦点はどこかあわず、何物も捉えていないようであった。
「でもあなたは、砺波さんの言葉を信じなかった。もし信じていれば、彼女を失うことはなかったかもしれないのに」
しばらくの沈黙の後、雪野はやっと一言を声に出した。
「……私は、悪くない」
拳はきつく握り締められ、肩はふるふると震えている。
今にも泣き出しそうな声で、雪野は続けた。
「私だけは、まだ」
「人を殺していない?」
嗤いながら、高野は尋ねた。雪野が小さく頷く。
高野は笑った。声に出して嗤った。
顔を上げない雪野の横でひとしきり笑った後、高野は優しく語りかける。
「そうね、確かにそう。でもね、雪野さん。あなたにだって責任はある」
ビクリッ、と雪野が反応する。
まるで何かを恐れているように。何かに気付くことを、恐怖しているように。
けれども、高野はかまわず語り続けた。
むしろそれが、高野の望むことであったから。
「あなたの間違いが、砺波さんを殺したのよ。
ずっと仲の良かった友人の言葉より、甘い台詞を吐いた私を信じたから。……だからね、雪野さん」
耳元に口付けするように、その唇を雪野の顔の横に近づけ。
高野は、言った。
「あなたも、十分に穢れてるの」
その刹那、高野の後方で何かが光った。
それと同時に、けたたましい音が辺りに響き始める。
それは、播磨の声を押しとどめ、そして今この場に降り立った存在。
一条が憎み、播磨が憤り、高野が探り、雪野が忌み嫌う存在。
そして彼女らは、新たな舞台の共演者でもあった。
※ ※ ※ ※ ※
悠然と目の前の光景を見つめながら、刑部が嘆く。
「全く……。私は止めたんだからね、葉子。もう少し様子を見たって良かっただろうに」
刑部の静止も聞かずに戦いの場に乗り込んだ笹倉に、刑部は愚痴をこぼした。
この車両の装備ならこちらの身に危険はないはずであるが、それでもここまで生徒達に接近する必要性はない。
もっと他にも、フラッシュメモリを無効化する手はいくらでもあるはずであるのに。
「ダメですよ。遠くからパソコンを狙撃するなんてまどろっこしい手を使うのもナシです。ここまで来た意味がないじゃないですか。
それに狙いが外れて、誰かさんみたいに撃とうとしてなかった人を撃ってしまうかもしれないですし」
強化ガラス越しに高野を見つめながら、笹倉は楽しげにそう言い放つ。
刑部は手の中のコルトAR15を撫でながら、不機嫌そうにシートにもたれかかった。
「……私の腕を信用していないのかい?」
「念のため、ですよー」
邪気のない、無防備な笑み。
刑部はそんな笹倉を一瞥してから、シートベルトを外し、そして前方を鋭い視線で睨み付けた。
彼女の視線の先には、高野と雪野。どこかの木の陰に、播磨と一条も隠れているはずである。
「ふぅ……、まあいい。ところで、当然この後の事は考えてあるんだろうね」
ポケットに無造作に放り込んでいたワルサーP99を、刑部は自らの利き手で握った。
笹倉はその手に余るようなリボルバーを顔の前で構えながら、ニッコリと微笑んだ。
「モチロン! 簡単なことですよ。だって今のパソコンの持ち主は、フラッシュメモリなんて必要としていない人なんですもの」
そう言って、笹倉はもう一度高野を見つめた。
彼女の顔に浮かぶのは、今までに見たことのない表情。いつも冷静で、感情を表に出すことがなかった彼女が見せる、珍しい色。
笹倉は、それをじっと見つめる。高野の顔に映るのは、挑戦的な色合い。
ぜひこの場で、今の彼女の顔を描きたいと笹倉は思ったが、紙と筆がない今の状況下ではそれも叶わぬ夢。
ならば、と笹倉は記憶に強く彼女の表情を刻み込む。
そうしてしばらくの沈黙の後、誰に聞かせるでもなく笹倉は呟く。
「……高野さん。あなたの望み通りに、皆の希望を奪いにきたわよ」
刑部がワルサーP99のスライドを引く音が、まるで笹倉の言葉に応えるかのように静かに車内に響いた。
【午後:0〜2時】
【播磨拳児】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労。返り血にまみれている。
[道具]:支給品一式(食料4,水2)、鉄パイプ、インカム親機、黒曜石のナイフ3本、UCRB1(サバイバルナイフ)
さくらんぼメモ、烏丸のマンガ
[行動方針]:ゲームを潰す為に生き残りを協力させたいが、この場をどうする?
車でやってきたやつらは、一体何者だ?(まだわかっていない)
[最終方針]:生き残ってマンガを描き続ける。
[備考]:サングラスを外しています。高野を殺人者と認識しています。ゲームの目的を知りたがっています。リュックの一部が破損してます。
【高野晶】
【現在地:E-03北部】
[状態]:疲労。
[道具]:支給品一式(食料0)、シグ・ザウエルP226(AT拳銃/残弾14発)、鎖鎌、薙刀の鞘袋(蛇入り)、インカム子機
雑誌(ヤングジンガマ)、ブラックジャック×2(岡の靴下でつくられた鈍器。臭い)
[行動方針] :一条を殺し、次に雪野を殺す。邪魔をするなら播磨も殺害する。
やってきたのが教師だと認識。
[最終方針] :全員を殺し、全てを忘れない。反主催の妨害。教師達にも罰を与える。 ゲームの目的を知りたがっています。
【一条かれん】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労大、肩を負傷(簡単な止血)、極度の精神不安定状態。人殺し(特に播磨)、教師達に憎悪。
[道具]:支給品一式(食料5、水1)、ショットガン(スパス15)/弾数:2発、東郷のメモ
[行動方針]:1.高野、播磨を罰する。 2.雪野を助ける。 3.教師達も罰する。
[最終方針]:生きる。何があったとしても。
[備考]:自分なりの正義に亀裂が生じ始める。播磨が教師達に優遇され人殺しを行っていると思っています。
【雪野美奈】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労大、首筋に切り傷、極度の精神不安定状態。高野への依存と憎悪が入り乱れる。播磨の真意を知り戸惑い。一条を始め人殺し全員に怒り。
自らの責任を知る。
[道具]:支給品一式(食料6、水1)
雑誌(週刊少年ジンガマ)、パソコン(フラッシュメモリ、バッテリー付き)
[行動方針] :人殺しは嫌。
【共通:盗聴器に気付いています。】
※日本刀、ドラグノフ狙撃銃/弾数9発、工具セット(バール、木槌、他数種類の基本的な工具あり) はリアカーにあります。
リアカーは一条・雪野の傍にあります。
薙刀は高野・雪野の側に落ちています。
ゴメン
>>924修正
【午後:0〜2時】
【播磨拳児】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労。返り血にまみれている。
[道具]:支給品一式(食料4,水2)、鉄パイプ、インカム親機、黒曜石のナイフ3本、UCRB1(サバイバルナイフ)
さくらんぼメモ、烏丸のマンガ
[行動方針]:ゲームを潰す為に生き残りを協力させたいが、この場をどうする?
車でやってきたやつらは、一体何者だ?(まだわかっていない)
[最終方針]:生き残ってマンガを描き続ける。
[備考]:サングラスを外しています。高野を殺人者と認識しています。ゲームの目的を知りたがっています。リュックの一部が破損してます。
【高野晶】
【現在地:E-03北部】
[状態]:疲労。
[道具]:支給品一式(食料0)、シグ・ザウエルP226(AT拳銃/残弾14発)、鎖鎌、薙刀の鞘袋(蛇入り)、インカム子機
雑誌(ヤングジンガマ)、ブラックジャック×2(岡の靴下でつくられた鈍器。臭い)
[行動方針] :一条を殺し、次に雪野を殺す。邪魔をするなら播磨も殺害する。
やってきたのが教師だと認識。
[最終方針] :全員を殺し、全てを忘れない。反主催の妨害。教師達にも罰を与える。 ゲームの目的を知りたがっています。
【一条かれん】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労大、肩を負傷(簡単な止血)、極度の精神不安定状態。人殺し(特に播磨)、教師達に憎悪。
[道具]:支給品一式(食料5、水1)、ショットガン(スパス15)/弾数:1発、東郷のメモ
[行動方針]:1.高野、播磨を罰する。 2.雪野を助ける。 3.教師達も罰する。
[最終方針]:生きる。何があったとしても。
[備考]:自分なりの正義に亀裂が生じ始める。播磨が教師達に優遇され人殺しを行っていると思っています。
【雪野美奈】
【現在地:F-03北部】
[状態]:疲労大、首筋に切り傷、極度の精神不安定状態。高野への依存と憎悪が入り乱れる。播磨の真意を知り戸惑い。一条を始め人殺し全員に怒り。
自らの責任を知る。
[道具]:支給品一式(食料6、水1)
雑誌(週刊少年ジンガマ)、パソコン(フラッシュメモリ、バッテリー付き)
[行動方針] :人殺しは嫌。
【共通:盗聴器に気付いています。】
※日本刀、ドラグノフ狙撃銃/弾数9発、工具セット(バール、木槌、他数種類の基本的な工具あり) はリアカーにあります。
リアカーは一条・雪野の傍にあります。
薙刀は高野・雪野の側に落ちています。
【笹倉葉子】
【現在位置: F-03北部】
[状態]:眠気は改善
[道具]:リボルバー(S&W M686Plus)/弾数 6発、.357マグナム弾20発
[行動方針]:パソコンの元へ向かう。
[最終方針]:ノートパソコンかフラッシュメモリの奪取/破壊
[備考]:なし
【刑部絃子】
【現在位置: F-03北部】
[状態]:眠気は改善
[道具]:自動式拳銃(ワルサーP99)/弾数 16発、9mmパラベラム弾15発入りダブルカラムマガジン1つ
[行動方針]:パソコンの元へ向かう。
[最終方針]:ノートパソコンかフラッシュメモリの奪取/破壊
[備考]:なし
軍用車(詳細不明)には、二人分の様々な荷物、そして島の南部で回収した以下の品を積んでいます。
支給品一式(食料16、水4) 殺虫スプレー(450ml) ロウソク×3 マッチ一箱
スタンガン(残り使用回数2回) キャンピングライト(弱で残り2〜3時間) 診療所の薬類
突撃ライフル(コルト AR15)/弾数:38発(刑部の足元に置かれている)
投下完了です。
遅れて申し訳ない。
投下乙です、それぞれの心理描写が見事で引き込まれました。
真実に気付いた雪野、あくまで皆を助けようとする播磨、教師達を招いた本人の高野、
播磨の言葉に動揺する一条の様子がよくわかります。
一つ気になったのはスパス15の残弾は1発と思います。
929 :
名無しさん@お腹いっぱい。:2007/04/07(土) 01:28:23 ID:TJcuGuI0
乙!!
乙
皆考え方に違いがあるから、読んでいて楽しいです
>>927 GJ
やっぱ上手いなぁと、心からそう感じました
皆の心理面が描写されてるので状況が理解しやすいです
あと、疑問に思った点なんですが、絃子と葉子は軍用車の中にいますよね
そして軍用車には強化ガラスが付いていると書かれていました
それなのに絃子は車内で銃撃をしたとあるんですが、
それは銃撃対象が社外ではなく車内にあるって解釈でいいんでしょうか?