再び謎
新型インフルエンザの新しいニュース(河岡グループによる。リンク先は朝日新聞記事)。
動物実験の結果サルに肺炎を起こす毒性が強いという結果は,動物実験だからメカニズムが
わからないとヒトへの適用可能性はわからないが言いたいことはわかる。
しかし,「……20年以降に生まれたそれ以下の年代の血清では、抗体がある人はほとんどいなかった」
(注:太字は中澤による)というのがわからない。少しはいたのだろうか。
Natureに発表されたというから探してみたら(途中,非常によくまとまったレビュー論文が見つかった。
論文は,「これらのデータは,1918年パンデミックウイルスあるいはそれにきわめて関連の強いヒトH1N1
ウイルスへの感染はS-OIVsへの中和抗体を導いたけれども,1920年代,1950年代,あるいは
1977年以降にヒトで流行した多様な抗原性をもつウイルスへの感染は(S-OIVsへの中和抗体を)
導かなかったことを示す」
(These data indicate that infection with the 1918 pandemic virus or closely related human H1N1 viruses,
but not infection with antigenically divergent human H1N1 viruses circulating in the 1920s to 1950s,
and again since 1977, elicited neutralizing antibodies to S-OIVs.)
と議論しているが,だとすると,ドナーグループ2でCA04に対して高い抗体価を示した1977年生まれと
1978年生まれの2人は,どこでその抗体価を獲得したのかがわからない。
ざっと見た限りではこの論文の中では論じられていないように思うが,4月時点で,既に感染して治癒した人が
国内にいたということを示すとしたら,新型インフルエンザのストーリーが大きく変わってしまうので
大変なデータなはずで,どうしてスルーされているのかわからない。
http://phi.med.gunma-u.ac.jp/memo2/20090714.html