神奈川大学142号館

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796学籍番号:774 氏名:_____
漏れが学園の生徒だったとして、そしてエステルちゃんがほんの一時のお客として
学園に、それも漏れのクラスに滞在することになって・・・。ハキハキと自己紹介を
するエステルちゃんに一目で惚れ抜いてしまうだろう。エステルちゃんの、他の女子
生徒とは違った自然そのもので、のびのびとした健全な美しさ。エステルちゃんのいや
みの全くない気取りのなさ。警戒心の薄く、それでいてサービス精神の強いエステル
ちゃんは漏れがどんなにおずおずと話しかけたとしても、満面の笑みでもって返答して
くれるんだろう。でもエステルちゃんはみんなにそれをする。漏れだけ特別というわけ
では決してない。みんなに対して、冗談を言い合ったり世間話をしたりする。漏れは
エステルちゃんの美しさに対して、無遠慮で平気に軽口をたたける者達を少し疎ましく、
少し羨ましく思うのである。漏れはエステルちゃんが漏れに対して特別にしてくれない
ことに対して、何とも言えないほど心苦しく思い、もし一部のエリート意識に凝り固
まっている連中のように、エステルちゃんを学のない、尻軽のお調子者として軽蔑を
もって憎むことが出来るのであれば、どれだけ楽になれるのか、とも思うのである。
エステルちゃんはほんのわずかしか学園に滞在することが出来ない。漏れとエステルちゃん
の別離は既に決定済みのことなのである。もっと決定的なことに、どだいエステルちゃん
が漏れを愛の対象として見てくれる可能性は非常に低い。これも、漏れがエステルちゃん
を知る前から既定の出来事だ。漏れはそういった漏れにとって絶望的な状況を考慮
すればするほど、エステルちゃんを殺害して漏れも死ぬといった過激な方向にさえ思考
が及んでしまう。愛らしいエステルちゃん、もしかしたら漏れのような思いをエステルちゃん
に寄せる者は過去にも何人もいたのかもしれない。陳腐な言い回しだけれども、エステル
ちゃんとエステルちゃんの美しさはそれだけ罪深いと言えるのである。エステルちゃんの物語
に、漏れは決してあらわれることはないのだろうけれど。ああ愛おしいよエステルちゃん!
エステルちゃん、劇の打ち上げ、もしくは別れ際にどさくさに紛れてエステルちゃんの肩を
抱いてみたい。一瞬鋭い視線が漏れに刺さるのが分かるけれど、それでも漏れの一世
一代のばくちなのである。躊躇することなくガバッとエステルちゃんを抱き締めたい。漏れは
そのエステルちゃんの体温をと香りをいつまでも手に残しておくことを望むのだ。