走り慣れるほどに膝に痛み
女性ランナー注意 大きな歩幅は着地の衝撃大
ランニング愛好者が増える中、走り慣れた人ほど膝の痛みを訴えるケースが見られる。
特に女性にけがが多いとされ、原因を探るとジョギングとは縁遠そうなスキージャンプの
女子選手に膝の大けがが多いことと関連がありそうだという。
けがを防ぎ、楽しく走り続ける方法は。
【負担を受けやすい骨格】
整体、はり・きゅう治療に加え、スポーツ選手の個別トレーニング指導もしている
「アスリート治療院」(札幌市中央区
http://www.e-athlete.jp/)には、体の痛みを
訴える市民ランナーが訪れる。
竹花智代表(51)によると、膝や腰、アキレスけんなど部位はさまざまだが、
膝の痛みが圧倒的に多い。何年も走り続けたベテランほど、その傾向は強いという。
主な原因は、ランニングフォームにある。歩幅が大きく跳び上がるように上下動が
大きいと、着地の衝撃を吸収できずに膝に負担がかかったり、左右のバランスが
悪いことで一方に偏った力が加わったりする。痛みが出ない人もいるが、
膝を痛める人の多くは太ももの前側の筋肉(大腿筋)が張った状態になっているといい、
竹花さんは「走り慣れてタイムが伸びることで意欲が高まり、練習の走行距離を増やすことに
よって疲労がたまる」と、痛みにつながる要因を指摘する。さらに、来院者には
女性が多いという。
竹花さんは元スキージャンプ選手で、2月のソチ冬季五輪でジャンプの日本代表チームに
同行した。昨シーズンは、日本のエース・高梨沙羅選手(17)のライバルたちが次々と
膝に大けがをし、五輪を断念したり、出場しても本来の力を出せなかったりした。実は、
ジャンプの女子選手のけがは、女性ランナーにけがが多いことと無縁ではないという。
竹花さんは「女性は男性と比べて骨盤が広く、大腿骨が内側に向くため、膝が内側に
入りやすい」と構造の違いを指摘する。ジャンプの着地で膝が内側に入り、さらに膝周辺の
筋力の弱さなども重なり、靭帯損傷や断裂などの大けがにつながる。バスケットボールや
バレーボールでも同様のことが起きるという。ランニングは一つ一つの衝撃は小さいが、
内側に向かって何万回も負荷がかかることで悪化し、靭帯や半月板を損傷する人がいる。
【体全体に筋力をつけて】
どうすれば防げるのか。靴底が偏って擦り減るなどする人は、靴や中敷きを変えることで
改善することがある。米国製シューズ「ALTRA(アルトラ)」は通常の靴と異なり、
つま先とかかとの靴底の厚みが同じで、正しい姿勢を保ちながら着地面積も広げる効果がある。
アルトラの輸入販売などを手がける「ロータス」(東京都立川市)の福地孝さん(37)は、
運動生理学を学んだことも踏まえてランニングの改善点を挙げる。「例えば1分間の
着地回数を180回に保つと、体の重心近くで着地することが学べる。大きすぎるストライドが
改善し、上下動の左右差も減る」と話す。
さらに「体全体の筋力アップも必要」と竹花さん。体幹が弱いとふらつき、左右のバランスを
崩すことにつながるためだ。「市民ランナーの多くは真面目で、痛みが出ても毎日決めた練習をする。
それでも体を動かしたい人には、自転車や水泳など別メニューを提案している」。慣れてくるほど
陥りがちなトラブルを予防し、快適な走りを目指したい。