純、時々考えるんだ。
お前は不幸を与えられたのか、それとも幸福を奪われたのか。
敢えて口にはしない。言う優しさがあるなら言わない優しさもあるはずだ。
それにそろそろ気づいてもいい年齢のはずだ。息子を信じて何が悪い。
少し酒を飲むと饒舌になる純一。普段は急いで飯を済ませすぐ2階に戻りパソコンをする純一。
年越しと言う事もありよく喋る息子の話を紅白を片目に、ただただ聞いていた。
純、気づいてくれ。俺はすっかり丸顔になった息子を見つめ、声にならない声で訴えた。
「親父、アフィリエイトって知ってる?来年はFC2ってとこで配信してたくさん稼ぐからよ」
純、気づいてくれ。
「親父、俺は特別な生活を送っているからな。普通に生活していたら自分の話を何百人に聞いてもらう機会なんてねえからさ。」
純、気づいてくれ。
「親父、また酒でも買おうか?遠慮しないで言ってくれよ。」
純、気づいてくれ。
「親父、来年はアフィ代でPS4でも買おうかな。一緒にしようぜ。」
純、違うんだ。気づいてくれ。
「あっそうそう!ゆで卵をレンジで作れる調理器具、アマゾンで見つけたんだ。面白そうじゃね?」
敢えて口にはしない。言う優しさがあるなら言わない優しさもあるはずだ。
それにそろそろ気づいてもいい年齢のはずだ。息子を信じて何が悪い。