会計士協会会長への質問状

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1賛同者(転載)

拝啓

 日々、会計士制度および会計制度・監査制度改革にご尽力のことお喜びもうしあげます。このたび、我々若手有志が集い貴殿の一連の改革を振り返り、忌憚無くご意見を申し上げることに致しました。何かの機会において、次の諸疑問に関し貴殿のご意見頂戴したく願い申し上げます。

●はじめに
 貴殿はしきりに「改革、改革」を唱えられ、会計士協会HPにおいても、「アピール宣言」なるものを大々的に広告しておられますが、その改革の真価はいかなるものか、私たちには疑問に思えて仕方ありません。考えようによっては、「改革」どころか「改悪」としか考えられないようなものもあります。これらのような改革が上意下達により一方通行のまま進められていくようでは、残念ながら会長としての資質に我々は失望せざるを得ません。貴殿は民主主義の国、米国に留学経験がおありとか。米国において議会が強大な権限・社会的正当性あるのも、その議論が徹底的に公開され、国民が納得する形で討論がなされているからに他なりません。従いまして、次の質問に真摯に答えて、納得させていただける回答があれば我々も得心のうえ貴殿の方針を受け入れることができると思います。そのために、この質問状を提出させていただきました。
2賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:28

●一連の粉飾・倒産劇に対する社会的責任に関して
 「幽霊社員」というのをご存じでしょうか?監査報告書にサインはしているが、会社には一回もいったことのない監査法人社員(パートナー)のことです。このような幽霊社員が監査法人には大勢いるやに聞きます。一度も会社にいかずに、はたしてその会社の適正がわかるのでしょうか?きけば何十社もサインしている方もいると聞きますが、個人でサインしてらっしゃる先生ならご存じでしょうが、普通1社でも監査するのは大変なのに、それを何十社と監査で見ることが物理的に果たして可能なのでしょうか?たしかに、監査には補助者がいます。おそらく我々若手のほとんどがそれに当たるでしょう。しかし、自分が「監査していることになっている」会社にたったの1日もいかずに、サインしている人が責任を負うことになっているのです。そして、その監査報告書が堂々と上場企業の決算書に添付されているのです。そのような監査報告書に、どれほどの「社会的信頼」があるのですか?その幽霊社員も、ほとんど1年中ゴルフや接待に明け暮れています。年功序列がまかり通る役所ならつゆ知らず、監査人の真価は現実に会社に足を運んで試されるものではないのですか?現にそんな方が、大型倒産企業で各企業をサインしておられました。しかも、それらの方が責任をとられて、退職金も辞退した上、自発的にやめたという話は、例外なく聞いたことがありません。こんな緊張感のない監査のどこから、「社会的責任」というコトバが出てくるのでしょうか?基本的な構造腐敗から治さずして、なんのための監査改革なのでしょうか?協会も、監査人からの報告で誰が何日会社に足を運んだか分かっているはずですね。このような本質的欠落を看過して、小手先だけの改革をしてもごまかしにしかすぎないようにみえるのですが。ちなみに、会長は1年平均何日ご自分のサインしている監査会社にいっておられるのでしょうか?
3賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:28

●新会計基準に関して
 税効果会計・年金資産・時価評価と、続け様に新しい会計処理を発表してらっしゃいますが、それだけで倒産・不正がなくなるとは思いません。たしかに国際会計基準とか、ちょうど重なったこともありますが、それを一方的に受け入れて果たして、「社会的責任」の履行になるのでしょうか?げんに現場では、かなりの混乱がみられます。一連の倒産劇のあった銀行でも、繰延税金資産の計上などかえって実態と乖離した経理にお墨付きをあたえたとの評もあります。アメリカにはアメリカの土がありアメリカの草木が生え、日本には日本の土があり日本の草木がはえるように、日本には日本のやりかたがあっていいとおもいます。「人から言われた」とか「外国もやっているから」では、なんの理由にもなりません。むしろ、外圧に対しても言うべきコトはいう、主張すべき所はすべきではないのですか?我々には、なぜかくも早急に新会計基準導入を急ぐのか理解に苦しみます。段階・暫時的導入により様子をみながら導入を図るべきなのではないのですか?とくにインフレ成長型企業の多い日本において、アメリカ型の会計基準が正しいとは100%いいきれません。ましてやバブルの後遺症も治らないこの混乱期に、果たしてそこまで積極的に急いで導入すべき必然があるのでしょうか?仮にこの導入により、企業会計・企業経営にとりかえしのつかない事態を生ぜしめた場合、会計士への信頼はますます離れるでしょう。いまのようなやり方には、我々は反対です。
4賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:29

●監査法人・会計士事務所へのクオリティコントロールに関して
 目下会計士協会から各事務所へ「クオリティコントロール」の名の下に別事務所の会計士が派遣され、監査調書等のチェックが行われています。しかしながら、そのやり方があまりにマニュアル化され、現実にそぐわないものが散見されます。とくに協会から派遣される方の質的な問題もあるかと思います。長年監査会社と苦楽を伴にされ、それこそ風雪をともにくぐり抜けた個人事務所の諸先生の方法論を、協会から派遣されて数日だけ事務所に来て、監査会社の実態もしらずにあれこれ指示することが、果たして可能なのでしょうか?たとえば、マニュアルではここが足りないという弱点も、他の場所でフォローされていることがかなりあるはずです。それすらも分からずに、協会から急遽派遣されて、しかも監査会社にもいかないで、書面しか見ていない人が、どうこういうべき資格があるのでしょうか?第一、監査制度はそれぞれの監査人のみが法的責任を最終的に負担するはずなのに、それを協会が指示するというのは、その指示が仮に不適切で法的な責任が生じた場合、協会も共同責任ということになるのではないのでしょうか?監査人は強度の独立が社会的・制度的に保障されていますが、それは協会からの独立も同時に意味するのではないのでしょうか?現に公的資格を受けて、その資質が確保されているのに、それをさらに検証するというのは、どこまで検証すれば、「社会的責任」確保のために妥当なのか、延々とイタチごっこになってしまう愚問だとおもいます。私には協会の職責を超えている監査人への干渉としか思えません。協会は補助的・事務的業務に徹するのがしかるべきで、過度の業務干渉はむしろ危険な空気さえ感じます。
5賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:29

●協会研修制度に関して
 協会研修が近々義務化と聞きます。しかしその研修とは名ばかりのお粗末そのものです。「本を読んだことを自己申告する」とか、「軽井沢でのゴルフ合宿は高ポイント」とか・・・、これが研修でしょうか?たしかにアメリカには研修制度がありますが、それを日本に、しかも形骸化したまま導入して、監査人の質が向上するのでしょうか?それぞれの監査人には、それぞれのキャリアを生かした特技があるはずです。現に転職組の会計士は、会社勤務で培ったさまざまなノウハウがあります。ひきかえ、監査法人で純粋培養された人たちは、すべて会計ベースの思考の枠から抜け出せず、ときとして会社ならずとも一般人でも首をかしげたくなるような答えすらすることがあります。むしろ、実社会との接点を高く評価すべきではないのですか?現に会計士でも、監査だけでなくコンピュータ・コンサルティング・税務と、さまざまな分野で活躍されている先生方がいっぱいいます。それらの方は、お話もおもしろく、はるかにためになります。こう考えると、一律に研修で、しかも協会がよいと決めたもので縛るのは、なにか的はずれな気がします。それこそスタンプで押したような会計士の大量生産がなされることでしょう。研修制度のウェイトからして、監査=会計士業務というのは、ようするに監査以外なにもできなくてもよい、なにもしなくてよいということなのでしょうか?たしかに、目下監査の質的低下の問題というのもありますが、監査以外で活躍されている会計士の方は、遙かにいらっしゃいますし社会的ステータスも評価も高いです。さまざまな専攻分野があって、さまざまな人材がいてこその会計士監査が実質化されるのではないのでしょうか?研修制度は多様であるべきであると同時に、なんら強制されるべきものでなく自発的なものであってこそ、初めて研修なのではないのでしょうか?単位制度などというのは、ナンセンスそのものです。
6賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:29

●会計士増員に関して
 日本の会計士を今後数年で2倍増員なる計画を企図されておられると拝聴しました。すでに申し上げたとおり、はたしてアメリカのやっている通りにするだけですむ問題か?というのが一つにあります。それに貴殿も周知の通り、アメリカでは税理士業務は会計士が専属的にやっておりまして、会計士+税理士の人数からすれば、すでにアメリカより人数過剰かと思います。しかも貴殿が、実際に往査会社に足を運んでおられるか、どうかは存知ませんが、会社側の対応として、多くの若手会計士・新人を送り込まれて会社の経理体制の質問を一から説明するのは非常な事務負担を増やすものです。とくに最近多い、経理担当者の苦情としては「なぜ、あんな初歩的な質問をするのか?」というのがあります。会計士個人への知識面での不信・不安・不満、そしてひいては社会的不信を、かなりの会社がもっています。現に主な監査法人でも、たいした研修を行わず、大卒の士補をすぐフィールドに送りだして、「OJTの一環」といって会社にいろいろ負担をかけている実例は目に余ります。たんに人を増やせば問題が解決するというのは、あまりに短絡する発想ではないのですか?現状の会計士の力不足を補わずして、人だけ増やすというのは、ようするに人的資産としての質を余りに軽視しすぎているとまで思えます。別に我々は既得権益もない若手ですが、わずか数年で2倍にするなどとは、明らかに質的低下は明白です。拙速の極みとして永劫に誹りを受ける改革ではないのでしょうか?それでなくても、年々会計士のステータスは低下してます。それも監査法人の社員研修の責任放棄に起因するものです。このような現状もかえりみずに、単に人だけ増やせば問題が解決するというのは、何か問題認識不足の気がしてなりません。
7賛同者(転載):2000/07/29(土) 22:30

●改革の手法に関して
 いままで一連の改革をみたところ、ほとんどがあまり意見聴取もないまま、上意下達、一方通行の方針決定で決定されています。公聴会などもあったようですが、ほとんどが監査法人勤務の我々実戦で活躍している会計士にとってはとてもではないですが、参加の機会が事実上与えられているとはいえません。外圧があるとか、改革時期に来ているとかいいますが、そんな消極的な理由だけですまされることなのでしょうか?それに拙速すぎます。全員とくに現場に実際にいっている人間に討論参加の機会を与えないで、協会の一室で決定したものを押しつけてくるのでは、なんのための会計士協会なのでしょうか?そもそも協会は、全国の会計士がその持つ英知を寄せ合い妥当な結論を出し、それを全国的に納得させるための連絡組織ではないのですか?なすべきことをなさずして、アメリカのマネ、それも数字とか形式とかでは、混乱を招来せしめこそすれ、とてもではないが、あなた方の世代の犯した過ちが糺されるとは思えません。

●さいごに =すべて方へのアピール=

 会計士というものは、ある意味「空気」みたいな存在でした。バブル後の大型倒産劇で、いまその真価が問われているといわれだしましたが、マスコミ報道をみてもどうも片面的な見方に終始しているような気がしてなりません。とくに妥当な意見を捻り出すには、多くの様々な立場の人が集まって、長いこと話し合って、答えを探すというのが必要不可欠です。
 それを欠く改革は、改革ではありません。そして、我々にはいまの会計士協会主導型の改革には、その気配がしてなりませんでした。これが失敗したら、おそらく日本の企業会計制度への信頼回復のみならず、景気回復は永遠にありえないでしょう。我々はいろいろな立場の人間です。それこそ大監査法人で高い地位を占める者もいれば、個人で開業している者もいます。それらの者が利害を超えて「いまの協会のやり方は、おかしい」という意見で一致したのです。そして、この問題は我々小集団の問題ではなく、みなさん一般の方一人一人にもすぐ身近な問題だと認識していただきたいのです。たとえば、あなたの勤めている会社が、粉飾をしていて今倒産し、「明日からこなくていい」と今すぐ電話があったらどう思いますか?会計の問題は経済の問題です。経済の問題は、直接生活に影響します。その会計がいま重大な曲がり角にきているのです。ぜひ一度、考えてみて下さい。


                                敬具

                       会計士改革を考える会

 ※なお、当会にご賛同いただける会計士・会計士補の諸先生はじめ、実務界で活躍されてらっしゃる同意見の方がいらっしゃいましたら、各所にご転載いただけますと、幸いです。その折り、転載者が簡単なコメントを付記していただけると反応を見る上で助かります。また転載は無制限でこれを許可いたします。

                         平成12年 吉日

                          有志15名一同
8名無しさん@1周年
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