激震半導体試練の日本メーカー(1)実態なき需要追い大赤字、巨額投資の代償大きく。
2008/12/24, , 日経産業新聞, 5ページ
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半導体業界は、もともと巨額資金なしにビジネスは成り立たない。ここへ来て、それに拍車がかかっている。
かつては工場一つの投資額は数百億円程度といわれていたが、今では数千億円は必要。一般に大型投資を
要する自動車業界でも新工場の投資額が一千億円強程度であることを考えると、半導体がいかに資金を
必要とするビジネスかが分かる。それはリスクを大きくすることでもある。
資金調達は失敗
「一にマネー、二にマネー、三にマネーだ」――。そう語っていた坂本社長と力晶半導体側との会談から
わずか九日後、エルピーダは五百億円もの資金調達に失敗。第三者割り当てによる新株予約権付き社債で
十一月に調達したばかりの資金を、株価急落により前代未聞の強制償還という形で返済を迫られたのだ。
「他社よりも一歩先を行くため」と、坂本社長が懸命にかき集めた資金。だが、株主価値を大幅に損なうと
既存株主がその資金調達法に「ノー」を突き付け、調達失敗につながった。
しかし、それを見越したかのように事前に持たれたのが、力晶との会談だった。五百億円の繰り上げ償還の
可能性が高まり、新たな資金源と生き残りの策を台湾に探るべく坂本社長は動いたのだ。しかし社長自身、
「四十年間、このビジネスをやっているが、本当に今が一番つらい」と吐露する。十月からすべての報酬も
カットするなど不退転の決意を示したが、強気で知られる坂本社長がこんな弱音を見せるほど苦悩は深い。
三十兆円規模の世界の半導体産業だが、もはや勝ち組は米インテルのみともいわれる異常事態だ。
世界の半導体メーカーから生産を受託し、一躍業界の勝ち組にのし上がった台湾の台湾積体電路製造
(TSMC)。これまで、営業利益率三〇%を叩き出すなど、コンスタントに利益を上げていた同社でさえ、
今月から強制的に社員に週一日の無給休暇をとるよう通告。実質、年間一五%の給与カットに乗り出し、
業界を驚かせた。
ある台湾メーカーでは「水道、電気代が払えず、工場は事実上ストップに追い込まれている」(台湾業界
関係者)というほど、惨たんたる状況が続いている。
台湾では半導体が液晶産業と並ぶリーディング産業に位置づけられる。当局は十六日、国内DRAM
メーカーに対し、債務返済の先延ばしや公的資金の注入も視野に入れた支援策の実施を発表した。
業績低迷が深刻なキマンダを抱えるドイツでも二十一日、政府による救済策が示され、サムスン電子や
ハイニックス半導体を抱える韓国も政府が自国半導体企業の支援に頭を悩ませる状況が続いている。