青園CSK社長は日経ビジネスの取材に対し、「(両社から)相談は受けました。セガとサミーはもともと近い関係にあり、(合併は)自然発生的に生まれてきたものです」と文書で回答を寄せた。
しかし、CSKの置かれた状況は、それほど余裕のあるものではなかったはずだ。
CSKの持つセガ株の簿価は2400円。今年3月期末にセガの株価が簿価の50%以下なら、減損処理(強制評価減)を余儀なくされる。そのセガは、家庭用ゲームソフト事業が期待を裏切り、
今期の業績下方修正を再度迫られている。株価急上昇は期待できない。
減損処理が現実となると、CSKの損失額は500億円前後に上り、会計上、株主資本の過半が消えてしまう。加えて、株主資本が傷めば銀行からの借り入れ条件に抵触する恐れもあり、
CSKの経営を揺るがしかねない。
時間切れが迫る中、青園CSK社長は結局、かつて経営危機の際に大川氏から資金支援を受けた経緯がある旧知の里見治サミー社長に話を持ちかけ、セガの株価を上向かせて、減損処理を
逃れるしか手がなかったようだ。
しかし、CSKによるセガの株価対策が出発点となると、本当に事業の統合効果を見込めるか定かではない。両社は早いうちに合併比率などの詳細な条件と事業計画を示す必要がある。
説得力のある統合効果を示せなければ、短期的に財務が悪化すると見られるサミーの株主はもちろん、自主再建が可能と考えるセガの株主、それに合併比率によっては損失と受け取るCSKの
株主らが黙ってはいないだろう。6月の両社の株主総会で、3分の2以上の賛成を必要とする特別決議を得てすんなり合併が承認されるかどうか、予断を許さない。
何より皮肉なのは、青園CSK社長の思惑にもかかわらず、肝心のセガの株価が合併効果への不透明感から、下落し続けていることだ。2月18日の終値は761円と簿価の3分の1以下にとどまった。
CSKにとってセガ株減損処理の危機は、いまだ終わっていないどころか、今後さらに深まる可能性さえある。(降旗 淳平)