【創業百年】セーラー万年筆 第29章【経営盤石】

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セーラーの長刀研ぎには思い出があります。
百周年ということで、少し昔の話をさせてください。

あれは私がMonburan MaisutaaShutyukku 149を買ったばかりのころ。
これこそ、生まれが良く育ちも良く、高い教育を受け心身共に健康・健常で見栄えも優れている私にふさわしいペンだと、そう思っていました。

私は早速自らのモノでインクタンクを満たしたペンを片手にほがらかな木漏れ日の差し込む公園に走り、楽しそうに遊んでいる幼女に『お注射』したところ、突如として謎の老人が現れ、
「おぬしは未だ万年筆という山のふもとに立ったに過ぎぬ。いかに生まれが良く育ちも良く、高い教育を受け心身共に健康・健常で見栄えも優れているおぬしでも、この山の頂にだどり着けるかどうか……」
そうトツトツと語りました。

私が、
「万年筆とは男性器の象徴! 最高峰の万年筆たるMonburanを以て最高の女たる
幼女に『お注射』をする。私のこの行動のどこに不足があるというのですか!?」
と謎の老人にたずねると、老人はただ一言、
「樹脂じゃよ」
そうつぶやいて去っていきました。

私は愕然として、思わずへたり込んでしまいました。
そうです。
私のMonburan MaisutaaShutyukku 149は金ペン堂が取り扱いをやめた後、他店で
買った「危なっかしいインク」以外のインクをはじいてしまうほどたくさんの油分を含んだ樹脂で作られた物だったのです。
あの老人は、それを見抜いていたのです。

老人は”N”とだけ名乗りました。
それが姓なのか名なのか、はたまた単なる戯れ言なのか今となってはわかりませんが、その日を境に錨に比べて白い星がみすぼらしく見えてならないのです。