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NASAしさん:
【モントリオール】 一部路線の乗入規制により地域全体の衰退に繋がった例
近年の潮流・航空政策に反する「乗入規制」「強制的な機能分担」は地域にどのような影響を与えるのか。これは目に見えるものではないが、空港問題を考えるにあたって、非常に重要な問題である。
そこで、過去に一部路線の乗入規制を行った、カナダ・モントリオールの例を紹介する。
609 :
NASAしさん:2007/04/25(水) 23:33:21
【1】カナダ・モントリオールの概要
モントリオールは、カナダ東部ケベック州の中心都市で、1970年代まではカナダ第一の都市であった。現在は、都市圏人口約350万人(2001年)で、トロントに次ぐカナダ第2の都市である。
住民の大半はフランス系であり、パリに次いで世界第2の規模をもつフランス語圏の都市でもある。
1976年には夏季オリンピックが開催され、女子体操でルーマニアの妖精コマネチが活躍した大会として多くの人の記憶に残っている。
また、ICAO(国際民間航空機関)本部や、カナダ最大の航空会社エアカナダ、世界第三の航空機製造会社ボンバルディアの本社が立地するなど、古くから航空の先進地でもあった。
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:35:48
【2】モントリオールにおける一部路線の乗入規制
モントリオールでは、市の中心部から約25kmにある「ドーバル空港」が都市圏の航空需要を担っていた。
しかし、将来需要に対応した拡張が困難などの理由から、1975年、中心部から約60km離れた場所に、新たに「ミラベル空港」を開港させた。
ミラベル空港の開港に伴い、ドーバル空港に就航できる便を国内線及びアメリカ行きのみに限定したため、ヨーロッパ線などの長距離国際線はミラベル空港を利用せざるを得なくなった。
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:37:59
【3】モントリオール「ドーバル空港」への乗入規制の結果
この乗入規制により、国内線と国際線の乗り継ぎが不便になり(両空港間の距離は約40km)、乗り継ぎ客が減少した。また、ミラベル空港が中心部から遠いこともあり、モントリオールを起終点とする旅行者にも嫌われた。
一方で、当時モントリオールとほぼ同じ都市規模であったトロントには、国内線と国際線の両方が発着する大空港(ピアソン空港)があったことから、モントリオールからトロントへと国際線を移す航空会社が増えた。
このような状況が続いたことから、モントリオールは、これ以上の航空ネットワークの縮小を食い止めるべく、2004年、ミラベル空港を諦め、再び中心部に近いドーバル空港に国際線を戻し、国内線と国際線を集約する決断を下した。
現在、ミラベル空港は、貨物便およびチャーター便専用の空港として利用されている。
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:42:59
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:44:38
【4】モントリオールの衰退
約30年もの間、国内線と国際線を分離するとともに、アメリカ行きを除く国際線は約60kmも離れた空港を利用させるという利用者にとって不便な政策が続けられた。
その結果、モントリオールの航空ネットワークは発展せず、人口も伸び悩み、トロントとの航空ネットワークや人口などの差は開く一方である。
また、1969年に発足したカナダ初のメジャーリーグ球団「モントリオール・エクスポズ」は、観客減少により2005年にワシントンDCに移転するなど、都市力が明らかに衰退している。
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:45:52
【5】モントリオールと東京など巨大都市との乗入規制に関する違い
モントリオールの例は、人口300万人前後の都市規模では、利用者無視の「乗入規制」「強制的な機能分担」は、上手くいかないことを物語っている。
もちろん、モントリオールの例は東京の羽田・成田とほぼ同じであるが、東京のような巨大都市では、巨大な航空需要があるため、遠くて不便な空港(成田)でも多くの利用があり、その悪影響は目に見えにくい。
しかし、羽田と成田との「乗入規制」「強制的な機能分担」は、東京あるいは日本の競争力低下の一因となっている。このため羽田の4本目の滑走路増設に合わせ、東京でも国内・国際の分離を見直すこととなった。
東京より小さい関西圏では、伊丹・関西の分離が地域全体の競争力低下の一因となっているのは明らかである。これらを踏まえて、中部圏では、国内・国際を分離させず中部国際空港に一元化させる方針となった。
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NASAしさん:2007/04/25(水) 23:49:28
【6】モントリオールの例からの教訓
福岡空港の路線の一部(国際線など)の乗入を規制すること自体はやれないことではないだろう。
しかし、北部九州の都市規模や航空需要を勘案すると、一部路線の乗入規制によって、規制された便が福岡空港に乗入れていた時と同等の便数を確保したまま他の空港(北九州空港など)に移るとは到底考えられない。
需要の少ない他空港では、採算性の問題から大幅に就航便数が減少すると予想される。
そうでないとすれば、佐賀空港や新北九州空港が開港している今、既に福岡空港の混雑は大幅に緩和され、3空港の就航便数・旅客数はある程度均整が取れているはずである。
北九州空港や佐賀空港は、北部九州の人口・産業・航空需要等の中心である福岡市の中心部から80km程離れており、モントリオールのミラベル空港と比較しても、さらに遠い。
モントリオールとほぼ同じ都市規模である福岡においては、一部路線の乗入が規制されれば、モントリオール同様、悪い方向に作用することが当然予想される。
この教訓からも、都市の衰退の要因となり一部路線の乗入規制を撤回せざるを得なかったモントリオールの二の轍を踏むべきではないことは明らかである。
福岡・九州の将来のためには、トロントのような容量・機能の高い空港を備え、利用者の利便性を向上させることにより、航空ネットワークの拡大と地域の発展に繋げるべきである。