夕方、ホテルに戻ってもすることがなく、Trip Advisorを調べたら近くに洒落たイタリアン
レストランがあることがわかった。モロッコやチュニジアもそうだが、地中海の南(アフリカ)側
や東(中東)側もオリーブとワイン、丸パンとチーズというのが料理の基本で、イタリア料理
のレベルは高い。ホテルの中のレストランではつまらないので、その店を覗いてみることにした。
地図によると、店は車道を渡ったホテルの正面にあるらしいが、街は暗く沈んでいて
それらしき気配はない。そればかりか、片側2車線の道路なのに、どこを見ても信号も横断
歩道もない。
車はすごいスピードで走っているのでどうやって渡ればいいかわからず、けっきょく5差路に
なっている交差点まで50メートルほど歩いて、一つひとつの道路をおそるおそる渡った
(交差点にもかかわらず横断歩道すらない)。
そのまま真っ暗な歩道をホテルの方角に歩くと狭い脇道があって、そこを曲がった一角
だけが電球で光り輝いている。通りには車がずらりと並び、イタリア国旗が掲げられている
のでここに違いないと階段を上がってドアを開けると、いきなりものすごい熱気に圧倒された。
まだ午後7時前だというのに、ウエイターが申し訳なさそうに「テーブルはもういっぱいで、
カウンターしか席は用意できない」という。それでもかまわないとこたえ、カウンターに
座ったとたんになにかがおかしいと気づいた。カウンターの中には白の調理衣を着たアジア系の
男性がいて、なにやら寿司らしきものをつくっているのだ。私が行こうとしたイタリアンの
店はじつは建物の1階で、2階はスシバーになっていたのだ。
とはいえ、せっかく席を用意してもらったのにいまさら店を間違えたとはいえず、メニュー
からワインと前菜を適当に頼んだ。ヨルダンワイン(これは美味しかった)を飲みながら
眺めていると、アンマンでも和食は人気らしく、スシカウンターには次々と注文が送られてくる。
私は料理にはまったく詳しくないのだが、それでも目の前で料理人の仕事を見ていて、
「それじゃダメだよ」と思わず声をあげそうになった。