【脳天気】 平井一夫 【危機感ゼロ】

2013,12,20, Friday 09:56 AM
2013年を振り返って

2013年も残りわずかとなりました。
今年一年、One Sony戦略を推進し、5月の経営方針説明会で掲げたソニーグループにおける
重要施策の実行と経営目標の達成に向けて走り続けてきました。実にさまざまな事があり
ましたが、最近の印象的な出来事の一つに、先月、米国と日本で開催したエンタテインメント
事業説明会が挙げられます。

これまで、株主やメディア、投資家などの方々から「ソニーがエンタテインメント事業を
持つ意味は？　シナジーは何か？」といったことを何度となく聞かれて来ました。その度に、
ソニーのエンタテインメント事業について社外でも高い関心を寄せてくださっていると
痛感してきましたが、その一方で、お話ししても記事には反映されないことも多かったので、
内心、歯がゆく思っていたこともまた事実です。エンタテインメント事業に関しては、
皆さんもご存じの通り、今年の5月に、サードポイントLLCからソニーに提案があり、
そのことで多数の報道記事が紙面を賑わせることとなりました。

中にはネガティブな論調のものも見受けられ、不安を抱いた方も少なからずいらっしゃったかと思います。
しかしながら、このことに端を発し、ソニーのエンタテインメント事業が改めて注目を浴びることになり
ました。先日の事業説明会のような場を設けることでこれまで余り知られて
来なかったソニーの一面をより深く世間に知ってもらえたことは、またとない
良い機会だったとも思うのです。

先に述べた説明会では、映画および音楽事業の現状と今後の方向性をマイケル・リントンさんなどトップマネジメントの皆さんと共に、ビジネスカテゴリー毎に一つひとつ説明していきました。
メディアの受け止め方は賛否ありましたが、アナリストの方々からは総じて前向きなコメントをいただきました。また、エンタテインメント事業をより正しく理解いただく取り組みとして、
この第2四半期の決算からは両事業のカテゴリー別売上高を含む詳細な経営状況の開示も開始しました。説明会の開催とこれらの情報開示は、社外の方々だけでなく、これまで直接エンタテインメント
事業に関わる機会が少なかったり、十分な情報が届いていなかったりした社員の皆さんにとっても、よりビジネスを理解するきっかけになっていればうれしく思います。

先般、日米を対象に自社でおこなったブランド調査によると、ソニーが映画や音楽のエンタテインメント事業をグループ内に保有していると認識している人は、していない人に比べ、ブランドイメージが高く、
特に「創造性/Creative」の項目で高く評価しているという結果も出ています。ビジネス、ブランド双方の観点から、エンタテインメント事業がソニーにとって欠くべからざる領域であることは、言うを待ちません。

エレクトロニクスとエンタテイメントは車の両輪」。ファウンダーの盛田さんは両事業の関係をこう表現していました。同じグループの一員として、互いの事業をより深く理解し議論することは、表層的でない真の連携を促し、ソニーならではの商品やサービスの創出
につながります。事業内容は異なっても、互いの動きを十分に把握しながら共に前進していくことでブランド価値を高めることができる。盛田さんは、このような連携を車の両輪に例えられたのだと思うのです。今年はこのような連携が私の知る限りでもいくつもあり
ましたし、来年もさまざまな施策が検討されています。

事業連携とは少し趣が異なりますが、先日のクォータリーミーティングでも述べたとおり、来年から公開される、すべてのSPE製作の映画には、
コロンビアレディーなどのスタジオロゴの前に「S-O-N-Y」のロゴが登場します。これこそ、他社には真似のできないソニーならではのブランド
戦略の一例でしょう。私にとって、これは今年のOne Sonyを象徴する大きな出来事の一つです。この実現に尽力してくださった
関係者の皆さんに心より御礼を申し上げます。来春に世界公開される『アメイジング・スパイダーマン2』の予告編が先日より公開されていますが、
そこにも「コロンビアレディー」「MARVEL」のロゴの前に「S-O-N-Y」のロゴが出てきます。予告映像もすばらしいものに仕上がっていますので、
まだご覧になっていない方はぜひ見てみてください。

最後に、今年最後にお届けするこのコラムの場を借りて、改めて社員の皆さんの努力と貢献に
感謝の意を表したいと思います。市場からの期待に応え、また社員の皆さんが明るく元気に
働ける会社にするために、マネジメントはより一層努力をしなければいけないことを自らの
肝に銘じつつ、来年も皆さんと共に頑張っていきたいと思います。

一年間、皆さんお疲れ様でした。良いお年をお迎えください。