現SCEの会 Part63

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5It's@名無しさん
日経エレクトロニクス2006年6月6日号より

SCEのY崎の頭には、できるだけ単純なコアを数多く集積した東芝の案を推したい気持ちが
こびりついていた。しかしJim KahleをはじめとするIBM社の担当者の熱意に圧倒される形
で、プロジェクトチームとしてはPOWER4を集積したアーキテクチャを提案することになった。
プロジェクトを開始してから初めての節目となるミーティングである。いつもにもまして多い
出席者が見守る中、報告が始まった。
「えーっ、以上の理由から、POWER4をベースにしたマルチコア構成が適切であると判断
 しました。プロジェクトチームとしては、この方向で細部を詰めていきたいと。。。」
担当者が一通り説明を終えようとすると、その言葉を遮って久多良木が口を開いた。
「分かった、分かった。もういい。至急、別のアーキテクチャを検討してほしい。」
既に基本設計を終えていたPOWER4をベースとするアイデアが、世界を変えるマイクロ
プロセッサを創りたい久多良木の琴線に触れなかったことは誰の目にも明らかだった。
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日経エレクトロニクス2005年6月20日号より抜粋

この構成は、コンピュータアーキテクチャの常識から見れば明らかに奇異だった。APU(SPU)に
キャッシュではなく専用メモリを組み込むという選択は通常はあり得ない。格納するデータ
をハードウェアが管理するキャッシュならば、プログラマがその存在を意識する必要がない
のに対し、専用メモリではデータをソフトウェアで明示的に管理しなければならないからだ。
(中略)
「なんでこのご時世にメモリ空間を制限する必要があるんだ?」
Cellの開発チームの中でも、専用メモリを採用することに疑問を呈する意見は根強かった。
そんな声を封じ込めたのは、熱烈なゲーム愛好家であるSCEのY崎剛だった。
「ゲームはリアルタイムで反応することが命。キャッシュはそれを妨げる。」
(中略)
ゲーム好きを持って任ずる自らの信念から、Y崎は専用メモリにすることの重要性を、米IBM
と東芝の技術者たちに繰り返し説いた。キャッシュの採用を推していた技術者たちは、
最後はY崎のこだわりに根負けする形で、専用メモリの採用を了承せざるを得なかった。