ココで働け取材班
ttp://www.mynewsjapan.com/kobetsu.jsp?sn=132 新機種が華々しく発売されていく裏で、開発現場の労働実態は厳しさを増している。
2003年3月、ソニーの独身寮で、携帯電話の開発を進めていた若手社員が亡くなっている
のが発見された。外部の人間が入れない状況での、首吊り自殺だったという。
まだ20代半ば、入社2年目を迎えようかという時期だった。生前の彼を知る社員は、
「普通に明るいヤツだったので意外だった」と驚きながらも「精神的に追い詰められて
いたのだろう」と一定の理解を示す。
別の社員も、入社当時、「ウチは、自殺は多いよ」と先輩から聞かされたが、事業部で
製品化プロセスを担当している開発者の激務を知り、あってもおかしくないな、と思った
という。
ソニーが手がけるパソコン、デジカメ、携帯電話といった分野は、次から次へと新機能
が盛り込まれ、製品サイクルも短くなる一方だ。3ヶ月ごとに新機種の発売を求められる
なか、必然的に、スケジュールが最優先事項となる。製品の発売日は決まっているから、
現場の個人の事情など考慮していられない。時間のプレッシャーは、とにかく強い。
新製品の設計から工場で量産体制を構築するまでの、R&Dの最終プロセスを担当する
開発者は、忙しいときは朝8時半から深夜0時くらいまでの長時間勤務が連日続き、深夜3時
まで勤務することも珍しくない。しかも、実験が中心なので、基本的に「立ち仕事」が
多く、体力的にも限界に近づく。
独身寮に入る若手社員は、寮と会社の往復だけで毎日が過ぎ、外の世界とも遮断される。
時間に迫られる精神的プレッシャーと長時間勤務による肉体的な限界、そして、プライ
ベートな時間も十分に持てず、ストレスが積もり積もって、追い詰められていく。
自分で生活をコントロールできないため、家庭が崩壊している人は多く、離婚者も実際
に多いという。現場の労働環境と自殺者の実態については、会社側としては社員に対して
事実は公表しておらず、同僚など身近な人を通して流れるだけなので、本当のところが
つかめない不安感もある。本来、社員の立場で実態を明らかにすべき労組も、そもそも
同社では労組への加入が自由のため組織率が低いこともあり、機能していないようだ。