<日経>◇出井ソニー会長、「資本の論理」10年間前面に(1)
創業初の外国人トップの登用など経営陣の刷新に踏み切ったソニーはどこに向かうのか。
経営の第一線を退く出井伸之会長兼グループCEO(最高経営責任者)に聞いた。
――低迷が続く中で、この時期に経営陣刷新を決断した理由は何か。
「(トップ交代は)去年、判断している。久多良木(健副社長)さんに加え、井原(勝美副社長)さん、
中鉢(良治副社長=次期社長)さんを経営チームに呼んできた。外からは見えないかもしれないが、
後継者選びの時計はその時点で動き始めていた。時間がたつと、内外でいろいろな見方を言い始める。
『経営の空白』ができてしまいかねない。そこで今、交代すべきだと決めた」
――新CEOに、映画・音楽などを担当する副会長のハワード・ストリンガー氏を指名した。
「1番健全できちんと経営している部門はエンターテインメント。そのトップがハワードだ。
そしてエレクトロニクス部門で1番安定して経営していた中鉢さんが社長になるのは自然だ」
――ソニーは委員会等設置会社だ。社外取締役の圧力があったのでは。
「会社はフルタイムで働く経営者や社員が動かすものだ。社外取締役は、我々経営陣が
『これでいいですか』と聞いた時、良しあしを判断し、監督する立場だ。今回は、彼らが株主に
近い立場で物事を考えたか、という点で、社外取締役制度を評価すべきだろう」
――議論はあった?
「当然だ。細かい課題はあるが、仕組み自体に問題はない」
――次世代のゲーム機や家電の開発に取り組んできた久多良木氏も取締役を退任するが。
「彼はソニーの『4番バッター』だ。商品戦略など大きな筋道をつくることに優れている。ただ、
野球は9人でやるものだ。ハワードには彼をうまく生かしてほしいと話している」