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名無しさん@社会人:
さうなると、学校の成績や出身校ぐらゐで人間の優劣を決めなければ、決めやうがない。もしこれが桶屋の試験なら、
桶を作らせてみて巧ければ、学歴もヘチマもないわけだが、目に見えない能力をためすには、学校以外に判断の
基準がない。そこで、いはゆる「いい大学」へ入つて「いい成績」をとるために、親も本人も狂奔するといふわけだ。
(中略)
しかし世間の親の九分九厘は親馬鹿で、親バカといふときこえがよいが、その実、子供はそつちのけで、親としての
エゴイズムと虚栄心にとらはれてゐる。有名校を何度も受けさせて、たうとう落第を重ねた子供がノイローゼになつて
自殺したなどといふのがこの手合で、こんなことなら、裏口入学に秘術を尽くし、ありたけの金とお世辞笑ひを
使つて、低脳息子を有名校へ入れる親のはうが、よつぽど立派である。よつぽどヒューマニスティックである。
ヒューマニズムとは、命をかける代りに金を使ふといふ精神だからだ。
三島由紀夫「社会料理三島亭 お子様料理『試験地獄』」より