▽▲▽三島由紀夫の社会学▼△▼

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147名無しさん@社会人
日本人の明治以来の重要な文化的偏見と思はれるのは、男色に関する偏見である。
江戸時代までにはかういふ偏見はなかつた。西欧では、男色といふ文化体験に宗教が対立して、宗教が人為的に、
永きにわたつてこの偏見を作り上げたのである。しかるに日本では明治時代に輸入されたピューリタニズムの
影響によつて、簡単に、ただその偏見が偏見として伝播して、奇妙な社会常識になつてしまつた。そして
元禄時代のその種の文化体験を簡単に忘れてしまつた。
男色は、男色にとどまるものでなく、文化の原体験ともいふべきもので、あらゆる文化あらゆる芸術には、
男色的なものが本質的にひそんでゐるのである。芸術におけるエローティッシュなものとは、男色的なものである。
そして宗教と芸術・文化の、もつとも先鋭な対立点がここにあるのに、それを忘れてしまつたのは、文化の
衰弱を招来する重要な原因の一つであつた。

三島由紀夫「偏見について思ふこと」より