1 :
U-名無しさん:
いきなり2人組の外人が俺のボールをかっさらって
「カモン、ボーイ」
と言って、笑いながら手でチョイチョイってやった。
俺はカチンときたのでボールを取りに行った。
ボールを保持してる外人はフェイントをかけるような仕草をした。
俺はあっさりとひっかかり、かわされた。
なおも取りに行こうとすると、外人はもう一人の外人にパスした。
それから俺はしばらく二人にもてあそばれて、一度もボールに触れる事が出来なかった。
10分ほどすると、外人は満足したのか俺にボールを渡して二人で高らかに笑いながら去っていった。
その後姿を俺は呆然と見詰めた。
お尻がプリッとした、可愛らしい女の子達だった。友達になりたいと思った。
2 :
U-名無しさん:05/01/17 19:33:11 ID:T+NAtiru,
あそ。
3 :
U-名無しさん:05/01/17 19:34:44 ID:ArXISdDD,
4 :
U-名無しさん:05/01/17 19:36:36 ID:/swBsaYl,
この物語がどういう結末を迎えるのか気になるね
毎週報告ヨロ
5 :
U-名無しさん:05/01/17 20:19:13 ID:8YEqqXS1.
あっそっ、そりゃ大変だ
6 :
U-名無しさん:05/01/17 20:21:41 ID:fRInFooh.
1がかわいそうだから
もっと書きこんでやれよw
7 :
U-名無しさん:05/01/17 21:00:13 ID:ZOFw7qbj0
うんこ
8 :
U-名無しさん:05/01/21 19:14:35 ID:Ir6w+yDY0
1
mada-
9 :
U-名無しさん:05/01/25 18:44:25 ID:nmgBprak0
マンセー
11 :
U-名無しさん:05/01/30 20:28:30 ID:ZBDjfo1b0
age
1
15 :
U-名無しさん:05/02/04 22:33:48 ID:NvhUupwX0
17 :
U-名無しさん:05/02/09 17:41:42 ID:cVZxkXss0
18 :
U-名無しさん:05/02/10 02:09:44 ID:0ymdq59tO
だから何!? 知ったこっちゃないんだけど。
妄想終了
その翌日、俺は学校に行った。
ずっと遠征だったから、ずいぶん久しぶりだ。
学校に着くとみんながよってきた。
「すげえ活躍だったじゃん」
「これでぜってえ、次のU-18アジア予選も代表に呼ばれるよ」
軽く受け流すと、タカシの顔が見えた。サッカー部の仲間だ。
輪から抜け出して、タカシに声をかける。
「大活躍だったな」
サンキュ、と礼を言っておく。
しばらく留守中のチームの様子などを話していたが、
ふとタカシに昨日のことを話してみた。
タカシは呆れた顔で、
「お前、外人の男と女の見分けもつかねえのか?
自分が周りになんて呼ばれてるのか知ってるのか?
「超高校級のテクニシャン」だぞ。
お前を手玉に取れる女なんているわけないじゃんか」
いや、でも、と俺は心の中でつぶやいた。
出るところは出ていたし、あれはどう見たって女だって。
そういえば、とタカシがつぶやいた。
「今日、うちの学校に転校生来るらしいぞ」
「へえー。男か、女か?かわいい子ならいいなあ」と
脳天気に言ったところで、ふと予感がする。
「まさか、外人の女だなんていわないよな?」
タカシは何もいわなかったが、
こっちを見返したその目が雄弁に返事を教えてくれていた。
「いまどき、そんな都合のいい展開、才能のない漫画家でもつかわねえぞ。
そんなドラマみてえに話が進んだら世の中苦労いらねえよ」
でも、事実は小説よりも奇なり、という言葉も世の中にはあるのだった。
「今日からうちのクラスで勉強することになった・・」
担任の声を聞きながら俺は呆然としていた。
これじゃほんとにどっかの漫画だ。
担任と並んでたっているのは、まちがいなく、
昨日の二人組みの片割れだった。
担任に促されて自己紹介をはじめた。
といっても日本語がたどたどしいのでよく聞き取れない。
担任の説明もあって、名前をモニカということ。
父親がアメリカ人、母親が日本人のハーフであること。
ずっとアメリカにいたが、父親の転勤で日本へきたということがわかった。
最後ににっこり笑って
「シェ、シュミハfootballです。イッショにplayしましょう」
手に持った紙を見ながらいっている。
どうやらここだけ事前に紙に書いて準備してきたらしい。
俺が腕組みをしていると前に座っているタカシが振り向いた。
「もしかして、ほんとにあいつなのか?」俺はうなづいた。
俺がじっとにらみつけていると、
視線を感じたのか彼女の目が俺と合った。
そして、「ハーーーイ!ボーーーーイ!」と大声で俺に手を振った。
クラスのみんなが何事かという顔で一斉に俺を見た。
これだから外人はいやなんだ。
俺はどうしようもなく、そのままぶすっとしていた。
「なんだ、お前ら知り合いなのか。
いろいろ困ったときはめんどうみるんだぞ」
担任が訳のわからないことをいって、転校生の紹介は終わった。
彼女の席は一番後ろになった。俺も一番後ろだ。
歩いてくるモニカを見てみると、結構かわいい。
胸もでかい。同級生でも十分でかいやつもいるけど、
なんつうんだろ、中に詰まってるものが根本的に違う感じだ。
胸もケツもやっぱり迫力がある。でも決してデブではない。
席に着くときモニカが俺のほうをちらっとみた。
俺が見ているのに気づくと、にこっと笑って指をクイクイと動かした。
またかかってらっしゃい、いつでも相手してあげるわよ、ということか。
くそったれ、むかつく女だ。
25 :
:05/02/15 17:03:35 ID:9PKsbEqq0
オチはまだですか
彼女が生霊だったに50コペイカ
2005年2月上旬。都内のあるビルの一室。
二人の男の姿があった。
ビデオを見終わると、うーんと一声唸って小熊は腕を組んだ。
隣では、アシスタントコーチの滝沢が同じように渋い顔をしている。
こいつとももうずいぶん付き合いが長い。小熊は唐突にそんなことを思う。
滝沢とは同じ高校だった。学年は滝沢が小熊より二つ下になる。
正直、ここまで付き合いが続くとは思わなかったな・・・
けど卒業から30年近くたった今、ふたりは
U-20日本代表の監督とアシスタントコーチとして、
狭い部屋で男二人顔を突き合わせてビデオを見ている。
「そう簡単に見つかるものじゃねえよな」
小熊の言葉に「だな」と滝沢が同意した。
「だがいまのままじゃワールドユースじゃ戦えないのも確かだ」
滝沢が黙ってうなづく。
話が変わったぞ!ヽ(`Д´)ノウワァァァンン!!
29 :
:05/02/16 16:54:22 ID:gRbQb3Cd0
期待とちがう! orz
30 :
U-名無しさん:05/02/16 16:57:46 ID:yirfwjc40
______,,,,,,,,,,,,,,,,______
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,,::"::::::::::::::/ ヽ/ ヽ:::::::::::::"::,,
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i':::::,、-‐-、. `'''‐- `‐-‐' -‐'''´ ,.-‐-、::::::::i,
i'::::/ ──----- | -----── ヽ:::::::i,
i':::::{. -----‐‐‐‐‐ │ ‐‐‐‐‐----- }::::::::i
.|:::::i ヽ., _____,,,,,,,,|,,,,,,,_____ ,ノ i:::::::|
.|::::| `'t‐----‐''''''´ `''''''‐---‐t''´ |::::::i
i::::i i i i:::::i'
.'i:::i i i i::::i'
, -‐‐- 、::i, ヽ. / /::i'
/ ヽi, ヽ /゙゙゙゙゙゙゙"'‐--‐'"゙゙゙゙゙\ / /:i'
{ } ヽ \ / i/ ./'´
31 :
U-名無しさん:05/02/16 17:04:08 ID:pUVKvrKrO
こういうのはくるぶしにタイガータックルカマすのが一番!
二人が頭を痛めているのは、中盤の核となる選手だった。
FWは平山を軸に森本、カレンである程度の目処が立った。
DFも決して十分ではないが、増嶋を中心になんとか闘えるレベルにはなった。
問題は中盤だった。期待していた選手が怪我で使えるめどがたたず、
彼らを欠いたU-20代表は最近の試合でまったく精彩を欠いていた。
中盤を完全に制圧され、ゲームを組み立てることができない。
このままじゃ間近に迫ったワールドユースでグループリーグ突破もおぼつかない。
そのため、ふたりは新たな戦力はいないかと、Jリーグやユース大会のビデオを
目を皿のようにして片端から見ているのだが、ピンと来る選手はいなかった。
小熊が考える日本のサッカーには、チームの軸となる中盤の選手が不可欠だった。
パワーで欧米に、スピードとしなやかさでアフリカに、そして個人技で南米に。
それらの部分では世界のライバルにひけをとることは、
日本人の肉体の特性もあって否めない事実だ。
しかし日本には日本のよさがある。日本人のよさ、それは組織だ、と小熊は考えていた。
往々にして組織は個を殺す。そのリスクは小熊も十分身にしみている。
個の重要性については、ここ数年若年層の大会で代表を率い、
世界と対峙して苦杯をなめてきた自分がもっとも痛感しているとさえ思っている。
しかしそれでも日本人でチームを作る以上、組織をないがしろにはできない。
南米勢のように、技量に優れた選手をセレクトしてフィールドに送り込めば
チームとして自動的にバランスがとれる。日本人はそういう民族ではない。
あくまでも組織の上に個の力を乗せるのが日本のサッカーだと考えていた。
そのためには、やはり中盤で負けることだけは許されない。
バランスのとれた技量を持ち、できるならば十分なキャプテンシーを持つ選手がほしい。
前回は今野がいて小熊の考える中盤を支え、かつチームの軸となってくれた。
誰かいないのか・・と小熊の考えはまた最初に戻ってしまう。
「ところでよ」と不意に滝沢が口を開いた。「お前、このあと暇か?」
「なんだ唐突に。まあ今日は家帰ってもビデオ見るくらいだから暇だが・・」
「なら、埼玉まで行かないか?」
「さいたま?」小熊は聞いた。「なんでまた?」
「ほら、いま代表が最終予選の直前合宿やってるだろう?」
小熊はうなづく。最終予選の初戦を一週間後に控えた日本代表は、
初戦の会場となる埼玉スタジアムで合宿を張っているはずだ。
「今日は練習試合で、ほら、岩崎のとこと試合やるらしいんだよ」
ふふんと小熊は納得する。岩崎はいまは公立高校のサッカー部の監督だが、
小熊たちと同じ高校だった仲だ。学年は滝沢と同じ。
小熊が三年のとき、小熊をエースFWに、中盤に滝沢、岩崎の一年生コンビを配して、
彼らの高校は冬の選手権を制したのだった。
小熊が卒業した翌年は、二人が主力となって選手権連覇を達成した。
大学を出ると教師の道を選んだ岩崎は、サッカー部を指導するようになり、
何年か前に、スタジアムの近くにできた新設校に異動になって、
そこでもサッカー部の顧問を勤めている。
優遇措置のない公立高校なので選手集めには苦労していて、
まだ全国大会の出場経験はないらしいが、
それでも最近は県大会でコンスタントにベスト4に入るようになったらしい。
この前の正月、岩崎からの年賀状に
「今年は期待できる選手がそろいました。全国狙います」と
書いてあったのを小熊は思い出した。
35 :
U-名無しさん:05/02/18 20:22:15 ID:gHrQaZQg0
えっ、つづきはまだあるんでしょ?
36 :
U-名無しさん:05/02/18 21:30:19 ID:HE2RQR2dO
俺は小学生に持久力で負けた…
「そっか、久々に岩崎の顔でも拝んでやるか。それにしても熱心だな」
小熊が言うと、滝沢がにんまりと笑った。小熊は、ん?といぶかしんだ。
滝沢がこういう顔をして笑うときはたいてい裏がある。
長い付き合いだ、それくらいはすぐわかる。
「ただの練習試合なら俺もわざわざ見に行ったりしないさ。
今日の試合には、あっと驚く仕掛けがしてあるんだよ」
仕掛け?代表の練習試合でなにを仕掛けるんだ?
「なんてったってキャプテンも一口かんでるらしいからな。
かんでるというよりは黙認という形らしいが・・・」と楽しそうに笑う。
「キャプテン?川内さんが?いったいなんのことだ?」
猪突猛進で有名な小熊の勢いをいなすように、滝沢は手をひらひらさせて
「それはいってみてのお楽しみさ・・とりあえずさいたまへいってみよう。
小熊さんならまちがいなく食いついてくると思ったよ」
俺はスパイクの履き心地を確かめる。そして首をぐるっと回して周囲を見る。
金網に覆われたさいたまスタジアムの練習グラウンド。
平日の昼間だというのに、結構な数の人が金網を取り巻いている。
カメラを抱えたマスコミも多い。もちろんお目当ては反対側の
サイドに座っている彼らだ。
俺はもう一度、その集団を見る。手前にいるのは褐色の肌。アレックスだ。
その奥に見えるのは宮本。生で見るとほんとにほれぼれするほどかっこいい。
追っかけが黄色い悲鳴をあげるのも無理はない、と思う。
その宮本と何かを話しているのがジーコだ。身振り手振りで何かを示している。
おそらくこの試合で、試しておきたいことを確認しているのだろう。
それ以外に顔が確認できるメンバーを数えてみる。
加地がいる、松田がいる。松田のくつろいだ感じをみるとスタメンではないのか。
その他にも小笠原、川口、田中誠・・・そうそうたるメンバーだ。
彼らが日本代表だ。
日本のサッカープレイヤーの、サッカーを愛する人の、夢と希望を背負う日本代表だ。
そう思うと反対側のサイドからオーラのようなものを感じはじめた。
俺はそれを首を振って振り払う。そんなのは関係ない。ピッチにたつ以上は対等だ。
全国にでたことのない無名の弱小高校でも、ピッチにたてば同じプレイヤーだ。
俺たちにも今日は大切にしたい意地がある。
頼む。段落で改行してスペース入れてくれ。長くて読みにくいぞ。
早く2つの物語がリンクしてハッピーエンドを強く望む。がんばってください。
つづきを楽しみにしています
お気に入りに登録したので、がんばって〜
で、いつ小林ひとみでてくるのさ?
俺たちは監督のまわりに集まる。
監督が改めて今日のスタメンを確認する。
「ゴールキーパーは代表の楢崎さんが助っ人で入る。DFは・・」
DFはうちのレギュラー陣の名前が順調に呼ばれる。
うちのチームは4−4−2のシステムを採用している。
中盤は4人が横に並ぶ。俺のポジションは真ん中の右。攻撃的な役割を担う。
「MFは左に山口、右に田中、真ん中の右に樋口・・」
順当に俺の名前が呼ばれる。
「そして今日は左にモニカに入ってもらう。いいな?」岩崎がモニカを見つめる。
モニカが力強くうなづく。けど「OK」と返した声が少し震えてた気もした。
「FWは高田、そして田村。以上だ」最後に名前を呼ばれたタカシが気合を入れる。
「今日は日本代表との試合だ。細かくいうことはない。ただ」
一度、岩崎は言葉を切って
「勝つつもりでやれ。
可能性は極めて低いが、このチームはそれができるだけの力がある。
俺がいままで監督やってきた中でも、このチームは一番可能性を感じるチームだ。
確かにまだ俺たちは全国大会にもでていない。
しかし、お前らの潜在能力は、高校のトップクラスにも、
Jのユースにも負けないものがある。
だが、ぼうっとしていればそれは可能性のままで終わってしまう。
だから今日の試合からひとつでも多くのことを学べ。
一分一秒を大切にプレイしろ。そして相手よりも常に一歩でも多く走れ。
技術では負けても絶対に気合負けだけはするな。」
43 :
:05/02/20 00:46:02 ID:ymoziHZo0
このペースだと大河ドラマになりそうだな。落ちないようにあげておく
「すいません、そろそろお願いします」
俺たちに声がかけられた。サッカー協会の人なんだろうか。
その人の後ろから一人走ってきた。楢崎さんだ。
「楢崎です。今日はよろしく」近くで見るとやはり大きい。
よろしくお願いします、と俺らは素直に頭を下げた。
俺たちを笑顔で見渡していた楢崎さんが、突然ぎょっとした表情になった。
視線はモニカで止まっている。
「ご、ごめん、もしかして君は女の子・・かな」
モニカはもう慣れた、というようににっこり笑う。
この一ヶ月で見る見るうちに上達した日本語で、
「モニカです。今日はヨロシクおねがいシマす」
よ、よろしく・・と返した楢崎さんはまだなにか聞きたそうだったが、
試合の始まりが近づいていた。
キャプテンの山口が今日の戦術を確認する。
モニカがいる以上、今日はちょっと工夫しなければいけない。
でも、みんなの意思統一はばっちりだ。やるべきことをやってきた。
気合だってひとり残らずぱんぱんに詰まってる。
大丈夫、これなら絶対いい試合ができる。いける。
捕手
46 :
U-名無しさん:05/02/21 10:24:26 ID:UvrsGZlK0
以上をもって、このスレッドは終了です。誠にありがとうございました。
47 :
:05/02/21 12:14:30 ID:tnKMo57i0
ほしゅ
48 :
U-名無しさん:05/02/21 12:20:51 ID:QdvJIuxlO
なんか俺の書いてる小説とかぶりまくりだな
俺のより面白そうだがorz
49 :
U-名無しさん:05/02/21 15:07:42 ID:j2f9mO8/0
今から試合が始まるんだな ワクワク
ここからどういう展開になるんだ?
試合後のロッカールームで泣いてるとこから始まったりするなよ
ちゃんと試合を書いて欲しい(・Д・)
50 :
U-名無しさん:05/02/21 15:20:27 ID:ejoOnx5d0
そういや一昔、
>>1のじいちゃんがサッカーを始めたスレがあったなあ。
ピッチの中央で整列する。うちのやつらがきょろきょろと落ち着きがない。
無理もない。サッカーをやっている高校生にしてみれば、
プロというのは憧れだ。それが代表なら言うまでもない。
でも、俺はゆっくりと左から右へ相手を見渡してやった。
大丈夫だ、力んでもいないし落ち着けてる。
よく見ると代表の面々がモニカを見てびっくりしているのがわかる。
みんな鳩が豆鉄砲をくらったような表情だ。
モニカの正面にたった加地さんなんか、
モニカを見たまま口が少し開いたままになっている。
礼をして解散になっても、モニカを見ながら何人かの選手が話をしていた。
何を言ってるかは聞こえなかったが
「なんで女がいるんだよ?」ぐらいのことを話しているのだろう。
選手がそれぞれのポジションに散らばっていく。
キャプテンの山口がコイントスでボールをとったらしく、うちのキックオフになる。
FWのふたりがサークルの中に入って、審判の笛を待つ。
俺は反対側のサイドに目をやって、メンバーとポジションを確認する。
今回も海外組の早期召集はかなわなかった。
ジーコは連携不足に苦しめられた昨年の苦い経験も踏まえ、
国内組中心の布陣で、北朝鮮戦に臨むことを公言している。
システムは最近定着している3−5−2でまちがいないだろう。
GKはアジアカップでの鬼神のような活躍が記憶に新しい川口。
DFは田中、宮本、中澤。高さと技術を兼ね備えたメンバーだ。
ボランチに遠藤、福西。左にアレックス。右に加地。
このふたりの起用はもはやジーコの信念といっていい。不動のメンバーだ。
トップ下に小笠原。中村俊輔とのポジション争いが騒がしい昨今、
レギュラー奪取へ今日も気合の入った表情をしている。
FWは鋼の肉体を持つ鈴木と抜群のスピードを持つ玉田。
これがアジアカップを制したアジア最強の、
ワールドカップを争うアジアのライバルたちが恐れる日本代表だ。
53 :
:05/02/22 13:41:20 ID:dYn3FhpP0
しつもんです。
モニカは二人組みだったよね。相棒はあぼーん?
Oh〜♪ モニカ〜♪
期待age
審判が笛を吹いて試合が始まった。
タカシが後ろを向いてボールを下げた。俺の足元にボールが転がってくる。
それをダイレクトで左へ。芝を転がるボールをモニカがトラップする。
今日はポニーテールにまとめた金髪、大きく存在感を誇示する胸。ぷりっと丸い尻。
どこからどうみてもナイスバディの女の子だ。
はじめて着るうちの白いユニフォームもなかなか似合っている。
冬用で生地が厚いし、アンダーも着ているからブラが透けないのが残念だ。
ボールを持ったモニカは睥睨するように周囲を見渡した。
あ、雰囲気あるな・・と俺は思う。口で上手く説明するのは難しいけど、
すごいやつはたまにボールを持ってるだけで、
なんかオーラみたいなものを感じることがある。
足元にボールを収めたモニカの堂々とした立ち姿は、
彼女が今日の試合で「お客さん」なんかじゃないことを雄弁に物語っていた。
モニカの存在に気づいた周囲の観客から、一斉にざわざわとしたどよめきが起こる。
モニカがそんな外部のとまどいを気にすることなく、
落ち着いた足捌きで、ボールをいったんDFラインに下げる。
そのボールをCBの内藤が大きく前線へ蹴りこむ。
ボールを追ってタカシが小笠原を背後に背負いながら走る。試合の始まりだ。
「どういうことだ、いったい!」小熊は思わず口にしていた。
「女じゃねーか。岩崎のやつ、何考えてんだ?大切な代表の調整だぞ」
そこまで口にしたところではっと気づく。
隣に座る滝沢をみると案の定にやにやしている。
「これか、お前の言ってた仕掛けというのは。
それにしても代表が相手だぞ、ばかにするにもほどが・・・」
そこでまたはっと思いあたる。
「お前、キャプテンが・・っていってたよな。
ということは、女がでてくるとキャプテンも知ってるんだな?」
滝沢は相変わらずにやにやするばかりでなにもいわない。
さらに滝沢を問い詰めようとしたところで、
おや小熊さんじゃないですか、と後ろから声をかけられた。
声の元を振り返ると「上島さん・・」
優しい表情をした上島の姿がそこにあった。なでしこジャパン監督。
昨年、女子代表を五輪に導いたことで、一躍その名は有名になった。
一時はJの監督へ転出するとの噂だったが、引き続き今年も指揮を執ることになった。
「上島さんまで来てるなんて・・おかしい。ますます怪しい。
いったいどうなってるんだ。おい、滝沢、早く言え」
まあまあ、と滝沢はいつものあいまいな笑いを浮かべると、
「とりあえずじっくり試合を見ましょうよ。
結構いい試合になりそうな気がするんですよ、この試合は・・」
58 :
U-名無しさん:05/02/23 04:47:17 ID:6ySpPQN+0
でも対人戦では松沢監督には敵わないと思い、
上島さんの願いもむなしく、卒業式はやってくる・・
女子マネージャーからキツイ洗礼をうけた高橋は、
ほくそえむ。
曖昧な供述を繰り返してきた中西には到底、アドバンテージは効かない。
今年も下位に甘んじることはできないのは百も承知だ。
田中「随分前からプレーシャーが激しくなり、オフサイドになるか、
ならないか?とのとこでラインズマンと同じ距離を保ってた。
明日もどういう試合になるかは判らないが、
マンU戦みたいな試合にならないことを心から願う・・」
前線の守備も怠らないウイリアムHメイシーは明後日の試合には
間に合うはずだ。ヒューには散々迷惑をかけてるにも関わらず
クッピーラムネを手渡す傍若無人ぶりだ・・
情け容赦の無い言葉はまさにこの事、リューの胸倉をつかみ激しく叫んだ!
次の日、助けてもらった相手に恩情の声と絶賛の声、二手に分かれた。
特にフェイントをするでもないし、4バック相手に
その陣形はない。戦後50年のサッカー界の歴史の中でも頻繁に
あるフォーメーションだ。
59 :
U-名無しさん:05/02/23 05:15:42 ID:nB7JUoJf0
俺のDF構想は決まってる
あきた、もりおか、そして、やまがた だ!
>>57 他の人の長文と混ざるとややこしいので、トリップつけてください。
次、楽しみにしてます。
鈴木の足元にこぼれ玉が入った。エリアの外。
「囲め!囲め!」誰かの声。いわれなくたってわかってるよ、と
俺は後ろから挟み込みに行く。
シュートコースはセンターバックの内藤がしっかり切っている。
だが、その状態から鈴木は強引にターンして右足を振りぬいた。
一瞬ひやっとするがキックはボールの芯を食わず、
シュートはゴールの脇を力なくそれていった。
俺はベンチの下級生に声をかけて時間を確認する。15分経過です、と返事がきた。
よし、第一段階はクリアだ。
俺たちはキャプテンの山口の指示に従って、ここまで守備偏重の布陣をしいていた。
DFの4枚に両サイド、そして俺まで引き気味になっての実質7バック。
幸いになんとか無失点でここまではきている。
さすがに代表は違うな、というのが試合がはじまってみての正直な感想だった。
大事な試合の前の調整目的ということもあって、
覚悟していたよりは接触プレーの機会は少なく、スタミナを削られずにすんでいる。
しかしトラップをはじめとしたボールコントロール、狭い地域でのボール捌きの確かさ、
そしてスピード、ひとつひとつの判断の早さ。
やっぱりプロは違うんだな、というのが偽らざる実感だ。
けど救いは、俺も最近は毎日モニカのテクニックを見ている。
だから代表のプレイを見ても必要以上にびびることはなかった。
モニカのテクニックはこいつらにだってひけをとってない。
ボール扱いだけならプロとも遜色ないモニカの怪物っぷりを改めて痛感した。
まったくなんて女だよ、と俺は心の中で呟いた。
とりあえずいつもの保守ね
さてもう、みんな緊張も解けたことだろう。
代表のスピードにもとりあえず少しは慣れたはずだ。
ひきこもりまくっての0−0が俺たちが欲しい結果じゃない。
「15分経過だぞー」俺はみんなに大声で叫んだ。
それは単なる時間経過を知らせる声ではない。
俺たちのシフトアップの合図だ。
ゴールキック。タカシが落下点に入るが、福西のほうが高い。
ヘディングでボールが跳ね返される。
小笠原が胸でトラップするが、すかさずFWの高田がへばりつく。
この時間からは前、前でプレスをかけていく。
ボールの動きが落ち着かない。
誰の足元にもボールが納まらず、ハーフウェーラインをはさんでボールが行き来する。
このボールはとりたい。とって相手陣地へ攻めこみたい。
その願いが通じたのか、俺の前でボールを受けた玉田のトラップが少し流れる。
そこをいいタイミングでボールをかっさらうことができた。
そのままスピードを上げて相手陣内へ入る。すばやく首を振って、周りの動きを確認。
みんなわかってるじゃん。
高田とタカシはDFの前で、少しでもギャップを作ろうとかく乱している。
右の田中が俺の斜め前、モニカが俺の左斜め前、少し距離があるとこを走っている。
引きこもりはもうおしまいだ。これからは打ち合いだって覚悟の上だ。
チェックに来る福西。俺は左にボールを少し長く蹴り出して、
一気にスピードで振り切る。
俺がまったく躊躇せずに来るとは思ってなかったのだろう、福西の反応が遅れた。
体を入れられかけるが身をよじってなんとか交わす。
目の前にスペースがある。そのままドリブルで突き進む。ペナルティエリアが見えた。
遠藤が左からスライドしてきて、内を切ってくる。
ぎりぎりまでひきつけて、小さめのモーションで左のアウトサイドでパス。
遠藤のマークが外れたモニカがフリーだ。
モニカは間髪いれずそのボールをダイレクトで前にはたく。
グラウンダーで、エリアのわずかに外にいる高田の足元。
高田は田中誠の前、ラインすれすれで待っている。
高田は自分の左側にいる田中に背を向けて半身に開き、
ボールを右足に引っ掛けて運んで、DFの網をかいくぐろうとする。
田中誠が前をふさぎにいく。高田が転ぶ。そのとき、笛が鳴った。
ファールだ。流されててもあまり文句は言えなかったが、うちにとってはありがたい。
エリアすれすれだったが、フリーキックの判定。さすがにPKというのはおしが太い。
田中誠が苦笑いしながら審判になにかいってるが、当然審判は無視する。
すばやくモニカとアイコンタクト。意思が通じる。
田中さん、余裕だな。でもこのキックが終わった後でも余裕があるかな。
モナカ王
69 :
U-名無しさん:05/02/25 10:44:30 ID:AS42mQjm0
いいかんじ
70 :
U-名無しさん:05/02/25 12:35:30 ID:mnpctpKH0
FK (;´Д`)ハァハァ
俺はわざと時間をかけてゆっくりとボールをセットする。
位置はペナルティエリアのわずかに外、俺たちから見てゴール正面やや左。
テレビ中継があれば今頃アナウンサーが
絶好の位置でのフリーキックです!と叫んでいることだろう。
ボールの右にモニカ、左に俺が立つ。
モニカの左足でゴール右へ巻くか、俺の右足でゴール左を狙うか。
この位置のフリーキックじゃお約束みたいなものだが、壁が近い。
審判に抗議すると、心持ち下がったがほとんど変わらない。
本気で気にしてたわけじゃなかったので、別にかまわなかった。
俺はふと横のモニカを見て、なにか変な仕草をしてるのに気づいた。
右手で股間を軽くおさえるように何度か叩いている。
こいつ、なにやってるんだあ?
ある有名な選手が、緊張したとき自分のアレをぎゅっと握ってリラックスした、
というエピソードを聞いたことがあるが、モニカもそういう癖があるのか?
だがモニカが壁のほうを見ながらにやにやしてるのを見て、
そして壁に入ってる中澤や宮本が、一瞬呆然と、
ついでみるみるうちに顔が怒りで赤くなるのを見て、その仕草の意味がわかった。
モニカは、私のフリーキックが当たって、あなたたちの大事なアソコがつぶれないよう、
しっかり手で守ってなさい、と身振りで示しているのだった。
顔中から冷や汗が出た。代表に挑発かますとは、まったくなんて女だ。
こっそり横目で審判を見ると、さっき俺が抗議した壁の距離を
もう一度確認していて、こっちには全然注意を向けていない。ほっとした。
審判が二、三歩下がって笛を吹いた。
モニカの股間(;´Д`)ハァハァ
保守
75 :
U-名無しさん:05/02/27 05:04:18 ID:oM/SIw3k0
モニカがスタート。俺も一拍ずらして動きはじめる。
しっかりと左足を踏み込んで、蹴る準備。
だが、それより早くモニカの左足がゴルフのティーショットよろしく
ボールを刈りとっていった。
ここまでゴールに近ければモニカのキック力で十分狙える。
モニカの蹴ったゴールは壁の上をきれいに弧を描いて越えた。
俺が蹴ると思いこんでいた、壁の面々はまったく反応できない。
ボールは壁を越えたところで急激に落下し、
川口が横っ飛びで伸ばす手の先を抜けてゴール右隅に吸い込まれた。
その瞬間、俺の耳にはゴール裏の金網の向こうに陣取った観客の、
「うおお」という悲鳴のような歓声が聞こえた。一瞬遅れて審判の笛。ゴールだ。
モニカが雄たけびをあげて両手を突き上げる。
俺もガッツポーズ、そしてモニカとしっかり抱き合う。
無名高校が日本代表から先制点を奪ったんだ、こんな痛快なことがあるか?
モニカの胸の感触を自分の胸で感じて楽しんだのもつかの間、
あっというまに俺たちはチームメイトに取り囲まれる。
おい、もうちょい楽しませろっつーの。
小熊は思わず立ち上がった。隣で「ぐお」という声を漏らしたのは滝沢か。
「なんじゃ、いまのフリーキックは・・・すさまじいキレだったぞ」
「・・・壁を越えてすとん、と落ちましたね。それも半端じゃない落ち方だった」
滝沢の声も驚きにかすれてる。
Jでもめったにお目にかかれない弾道だった。
あのクラスのFKを蹴れる日本人はいったい何人いる?
比喩じゃなくてほんとうにケツが浮いたぜ、まったく・・・
ふたりともそのまましばらく言葉が出ない。
フィールドではボールが中央に戻され、試合が再開された。
だがそこかしこに今の強烈なフリーキックの余韻が漂っている。
代表の選手も、毒気を抜かれたような、それとも夢でもみたような、
いま見たものが信じられないというふわふわ感が抜けていない。
ゴール裏にいたお客さんはいいものみたな、と小熊は思う。
あれは金払ってでも見る価値がある。
できるなら俺もゴールの裏でいまの弾道を拝みたかった。
「しかしまあ見事に決めましたね」
「代表の連中、油断してたからな・・」小熊は振り返る。
「あのお姉ちゃんがあれだけ左が蹴れるとは、
いまの15分ちょっとの時間じゃわかりっこないだろう。
ロクにボールにも触っていなかったしな。
おまけにボールをセットしたのはあの男の10番だったし、
お姉ちゃんが先に走り出せば、お姉ちゃんはダミーで、
蹴るのはあの10番だって思っちまったのも無理はない。
川口もいつもに比べれば、最初の反応が遅かった」
「あの子が蹴るかもしれない、とわかってたら違いましたかね」
小熊は沈黙する。
川口なら止めたかもしれない。
だが、確実に止められたかと聞かれれば、わからない。
それが小熊の結論だったが、口にはしなかった。
79 :
U-名無しさん:05/02/28 16:25:07 ID:5IKbQHWs0
先取点 (;´Д`)ハァハァ
左サイド、DFが振り切られる。玉田が一気に高速ドリブルでエリアに侵入。
CBがカバーに行くより早く、玉田の左足が振りぬかれる。ナイフのような切れ味。
やられた、と思ったが、楢崎さんの体が横に飛んだ。
そのまま長身の体が地面で弾む。よし、ボールはしっかり体の下にある。
さすが、代表キーパー。頼りになるったらありゃしない。
上出来、上出来、いいよ、その調子。とDFを励ます楢崎さんの声が聞こえる。
そんなことはない。さっきから再三、DFが振り切られている。
決定機だけで4,5回はあっただろう。それを全部止めているのは楢崎さんだ。
まあ楢崎さんにしてみれば、4,5回で済んで上等なのかもしれないが。
とりあえず今日の楢崎さんがアタってるみたいなのが俺たちにとっては救いだ。
先制点をとったあとは、一方的に攻め込まれる試合展開になっている。
引いて守る気はないし、先制直後はまだ中盤でのプレスがかかっていたが、
時間の経過とともにボールが奪えなくなり、
ゴール前にボールを入れられることが増えてきた。
こうなるとさすがにうちのDFラインがじりじりと下がりはじめた。
おそらく時間は30分を過ぎたあたり。
やばいな、と思う。このままじゃジリ貧だ。前半持ちこたられるか。
ここは一発流れを変えるようなプレーが欲しい。
楢崎さんのキック。ボールがハーフウェーラインを越える。
タカシが落下点に入るが、福西に押えられてきつそうだ。
先制してから少しずつ向こうの当たりも強くなってきてる。
タカシもここしばらく、DFが必死で蹴り飛ばす方向の定まらない
クリアボールを右に左に追っかけ続けてる。スタミナはきついだろう。
ポストというより福西と競ったタカシの体に当たったボールが
偶然ではあるがどんぴしゃで俺のところへ転がってきた。
それを見た右サイドの田中が走る。
さっきの攻撃で上がっていたアレックスの戻りが緩慢だ。右サイドがあいている。
体に電撃が走った。これはチャンスになる。
82 :
U-名無しさん:05/03/01 14:44:10 ID:wiQQPjhD0
追加点!? (;´Д`)ハァハァ
カウンター クルー!
右サイドへドリブルで進む。田中が俺の前、ライン際を走っている。
さっきまでタカシと競っていた福西がアレックスの穴を埋めるべく詰めてくる。
このまま内をきって俺を外へ押し出すつもりか。
ちんたら考えることは許されない。即座に判断する。
かといって判断だけ速くても意味はない。
状況を見極めて適切な選択肢を考えた上で判断しなければならない。
見る、考える、決める、動く。そのサイクルを最大限のスピードで繰り返し続ける。
それがピッチに立つという行為だ。
スペースがなくなる前にフリーの田中にパスを送る。頼む、中澤さん、動いてくれ。
田中がサイドラインぎりぎりでトラップ。
「左!左!」「つめろ!つめろ!」「戻れ、戻れ!」声が錯綜する。
田中にボールが渡ったのを見て、中澤さんがゴール前を離れ田中につく。
狙い通りだ。
田中がすばやくボールを横に入れる。
よくわかってるじゃん。そのとき、俺は福西の左脇をすり抜けている。
ボールを受ける前にルックアップして中を確認。
視野の左すれすれでモニカが走ってるのが見える。
ボールを右足でトラップ。俺と田中のワンツーのような格好になった。
置き去りにした福西が俺のすぐ後ろから追ってきてる。あの人の潰しは強烈だ。
本気でこられたらトラックに轢かれたカエルのようになるのがオチだ。
足元に目がいくのをこらえて、ルックアップ。
右サイドの田中を見る。DFラインを見ながらライン際で張っている。
俺の目の動きにつられた中澤は田中から離れられない。すぐ後ろから人の気配がする。
頼む、わかっててくれ。心の中で祈る。
左前方へ右足のインサイドでグラウンダーのパス。
さっき中を見たとき、DFラインの前、遠藤の後ろにスペースが見えた。
あのときのモニカはそこを狙って走っていたはずだ。
きっとモニカにもあのスペースが見えている。
86 :
U-名無しさん:05/03/02 12:37:06 ID:2ireAlJE0
モニたんどこにいるの?
モニたん期待あげ
どんぴしゃ。宮本の前のスペースに走りこんできた
モニカの足元に俺が出したボールが吸い込まれる。
一瞬、対峙する格好になった宮本があわてる。チェックに行きたいが後ろがいない。
裏を取られる格好になった遠藤が慌てて後ろから挟みこむ。
だがお構いなしにそれより早くモニカは左へさらに流す。早い判断。
またたく間にボールが右サイドから左サイドに移る。
俺たちの流れるようなパス回しに、周囲の観客から歓声が上がる。
聞こえてるか、モニカ。あれは俺たちのプレイへの歓声だぞ。
サイドを転がるボールを受けたのは山口。
加地が左サイドの攻防に釣られ、やや中に絞っていた分、
山口にはサイドのスペースが存分に与えられている。
あいつのあんないい上がり、はじめてみたかも。走りながら俺は思う。
山口がワントラップ、ライン際まできれこんでから、
落ち着いてしっかりと中を見てからクロスをあげる。
いくら代表が相手でも目の前にいなければ、普段の試合と違いはない。
中央にいいクロスが上がる。ペナルティスポットあたり。川口は前に出ない。
タカシが宮本相手に懸命にポジションを競っているが、さすがに分が悪い。
宮本がタカシにわずかに競り勝ってヘディングでクリア。
だがこの時間はサッカーの神が俺たちについている。
タカシが競った分、ヘディングのボールに力がない。
ペナルティエリアの少し外。ボールはモニカの正面へ落ちてきた。
足元にぴたりと落として、左足でボールを持つ。
遠藤がすばやくチェックに行ったその瞬間、モニカがついに牙を剥いた。
左足の裏でボールを後ろに引いて、そのまま右足を軸にターン。
絵に書いたように美しいルーレット。金髪のポニーテールがきれいになびく。
刹那の後、モニカは完全に遠藤と体を入れ替えている。
目を疑う出来事に、さすがの代表のDFも一瞬ボールを見てしまう。
一秒にも満たないほんのわずかな時間の思考停止。
だがピッチという戦場では、それが時に命取りとなる。
そのミスを許すことなくモニカが即座に宮本の横を通すスルーパス。
俺はDFラインの間を駆け抜けて、一気にエリアに侵入する。
トップスピードでラインの裏に抜け出た俺の足元にぴたりとボールがくる。
誰かが手を上げてオフサイドをアピールしているが、旗は上がらない。
90 :
U-名無しさん:05/03/03 12:27:57 ID:f0OS04Wa0
あとはヨシカツたんだけか!?
最後のショーブだな
右のインサイドでトラップ。ボールを右足の前に置く。
川口がおどろくほどの瞬発力でボールに飛び込んでくる。
早い。すさまじい反応の早さだ。けどまにあわない。まにあわせない。
コンパクトな振りで、軽く。けれど十分な強さを与えて蹴る。
俺の足に心地よい感触を残して、ゴールへ飛んだボールは
川口の手を抜けて静かにゴール右下におさまり、
ネットを水面に広がる波紋のように、きれいにきれいに波打たせて揺らした。
審判の笛が鳴る。2点目だ。
観客からのぱらぱらとした拍手が、俺の耳に届く。
派手なガッツポーズはしない。代わりに右のこぶしをぎゅっと握り締める。
モニカからもらったパスの感触が、打ったシュートの余韻が、
まだ俺の右足に残っている。
タカシが顔をくしゃくしゃにして飛んでくる。
「やったな、この野郎」お前、祝福してくれるのは嬉しいけど、力入れすぎ。
ばしばしと叩かれた頭がひりひりした。
でも、チームの誰が点を入れても、一番先に飛んでくるのはタカシだ。
そんなタカシが喜んでる姿を見るのが俺も実は結構好きだ。
みんながかわるがわる祝福に来る。
練習試合だから抑え目だけど、なんてったって相手は日本代表だ。
モニカもきた。「nice shoot!」
ご褒美のチュぐらいあるかと思ったが、それはさすがに無理な頼みだった。
代わりに手と手を合わせて喜びを分かち合う。
目の前でモニカの夏みかんのような胸が上下にリズミカルに揺れた。
ふと、こういうふうにモニカと一緒に喜べる試合は当分ないんだな、と思う。
もしかしたらもう二度とないのかもしれない。
でも感傷に浸ってる暇はなかった。後ろを振り返る。
まださっきのはラッキーゴールということもできたかもしれない。
もうそれは通らない。無名のガキんちょどもに
2点のリードを許した代表のメンバーから熱いオーラが立ち上っている。
さっきまでと顔つきが違う。男の怒りだ。
93 :
:05/03/03 23:20:46 ID:P9SdO1e30
モニカタソ (;´Д`)ハァハァ
夏みかん(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
代表のキックオフで試合開始。
ボールを受けた小笠原がいきなりロングボールを蹴りこむ。
俺のところだ。見上げて距離を目測。その瞬間、壁にぶつかったような衝撃。
鈴木だ。鈴木の背中が俺の前に立ちふさがっている。
熱が、熱さが、鈴木の背中から伝わってくる。怒りの熱だ。
少し下半身で押してみるがびくともしない。むしろこっちがずり下がっている。
完璧にポジションをとられている。トラップ際を狙うしかない。
だがボールは股の間からいれた俺の足の届かない位置にきれいに落とされた。
くそったれ。なにもできないじゃないか。
鈴木が上がってきた福西にボールを受け渡す。福西はすぐに左のアレックスへ。
ライン際でボールを運ぶアレックス。田中が並走する。
アレックスは一瞬、ドリブルで抜くそぶりを見せたが、
中央に下がり気味にきれこむと、流れてきた小笠原にパス。
しまった、俺がついておくべきところだ。
後ろを振り返ると、鈴木はもう前線に上がっている。
DFに任せていそいで小笠原の前を切る。
小笠原は俺に目もくれず、中央に横パス。遠藤が受ける。モニカが対処。
遠藤はさらに右へ。田中誠が上がっている。
FWの高田が横から追うが、追いつく前に田中はボールを前へ。加地がひいて受ける。
そのまま中へ少しドリブルしてすぐにまた中央へ。もう一度遠藤。
やばい。ボールが回りはじめた。
遠藤から横パス。小笠原がトラップ。俺がつく。
小笠原は左にターンしてパス、と見せかけてボールは出てない。フェイントだ。
すかさずきりかえして右を向くと、右サイド奥へロングボール。
いつのまにか加地のマークが外れている。
SBの渡辺が必死に追っているが、あれはクロスが上がるのを止められない。
加地がしっかりと中を見てからクロス。
俺は小笠原と絡み合うようにしてゴール前へつめる。
クロスが上がる。これはボールが来る。小笠原が飛ぶ。俺も飛ぶ。
小笠原の背中のユニフォームを引っ張ってみるが効果がない。やばい。
だが、ボールの弾道は俺たちを越えていく。ラッキーと思ったのもほんの一瞬、
後ろにいやな気配を感じる。見なくてもわかる、鈴木だ。
鈴木がワントラップして強烈なシュート。コースに飛び込んだ内藤の体がブロック。
内藤がもんどりうって倒れる。銃で撃たれたような倒れっぷりだ。
こぼれたボールにアレックスが走りこんでくる。今度は神様は向こうの見方らしい。
これは俺の役目らしい。しょうがない。スライディングでシュートコースに飛び込む。
ばちんとすねのあたりに鈍い衝撃。まにあった。
だがそのボールは今度はゴール正面にいる小笠原のまん前に転がる。
神様、勘弁してくれ。小笠原の強烈なミドルシュート。ゴール左上に一直線。
楢崎さんが横っ飛び、間一髪のタイミングで弾き出した。
ボールはそのままゴールラインを割る。セーーフ。
どっと疲労が体中に押し寄せる。負け試合でよく経験するあの嫌な感覚だ。
前半はあと残り何分だ?もうそんなにないはずだ。
97 :
U-名無しさん:05/03/05 04:13:37 ID:vEtIUcUk0
何も小笠原が蹴らなくても・・・
楢崎が再三ファインセーブするが、内藤はハンカチを落とすそぶりをしない。
アレックスには加地をつかせ、
山田には未だに一次予選の失態が目に浮かぶ・・田中の連携で勝ってるが
未だにチョウには勝てない自分もいる。需要があると思わせておいて
先月の売上幅は到底、右肩下がりだ。
ハーフタイムのロッカーでは監督の怒号が聞こえる。前半ふがいない
戦いを見せられて、堪忍袋の緒がきれたのか中西を呼びつけた。
中西と監督との確執を記事にしようと欧州からも記者が駆けつけた・・
後半せめあぐねたら、三国無双の非にもなりうる。
ごーるを割らせるひまがあったらおつかいのでも出てほしいものだ。
98 :
†ケン† ◆kiM4qXVHAg :05/03/05 04:37:17 ID:kKiUVK8u0
つまらん3点!
99
100
101 :
U-名無しさん:05/03/05 18:39:30 ID:Io76/8WDO
保守
102 :
U-名無しさん:05/03/05 18:42:55 ID:lU+kOA+g0
。
時間のたつのが遅い。
ロングボールを競ったタカシが空中戦で福西にあっさりとつぶされる。
つんのめって倒れるタカシ。笛が鳴らないかな、と期待するが、審判は無視する。
こぼれたボールを右サイドの田中が持ちかけるが、アレックスと中澤に囲まれる。
コブラツイストのような格好で体を抑えられるともうなにもできない。
田中が倒されてボールを奪ったアレックスがドリブル。笛は鳴らない。
田中がいない分、前が開いている。
俺が寄る。「モニカ!中!」俺のカバーはモニカに頼む。
俺と向き合ったアレックスが妖術師のような足捌きで怪しいリズムを刻み始める。
勘弁してくれ、と内心愚痴のひとつもでる。
こっちも足に来はじめてるのにこれを抑えろってか?
淡々としたリズムからいきなりボールがすぱーんとライン際に蹴りだされる。
アレックスの体が躍動する。懸命についていく。
だが、追いついたアレックスは急ブレーキ。右足に持ち替えて中へ切れ込む。
腰が踏ん張りきれない。俺の左側をアレックスが抜けていく。
そのままクロス。エリア内に上がっている。鈴木と内藤の競り合い。
頭ひとつ高く抜け出した鈴木がヘディング。ループ気味の軌道。
ジャンプして飛びついた楢崎の手の上を越える。
決められたか?と一瞬息が止まったが、ボールはバーに当たってエリア内に跳ね返る。
はねかえったボールを小笠原が迷いなくシュート。
DFの誰かに当たってボールが跳ね返る。
こうなるとラインも戦術もあったもんじゃない。ただの肉壁だ。
エリアの外へ転々と転がったボールをモニカがとりにいくが、
それより早く、遠藤が後ろから全速で走りこんでくる。強烈なミドルシュート。
ボールは弾丸のようにあっというまにエリアを抜けて、
そのままバーの上を飛んでいった。枠をそれた。思わず、ふーっとため息がこぼれる。
そこに女神様の声にも聞こえる審判の笛。ようやく前半が終わった。
酒池肉林(;´Д`)ハァハァ
モニカタソ (;´Д`)ハァハァ
ベンチに戻る。みんな疲れている。どさどさと倒れるように座り込む。
大の字になって寝ている奴もいる。
俺の脇でタカシもどっかりと地べたに座り込む。
相当消耗が激しいようだ。無理もない。
高校生の中ではかなり体格のいい部類に入るタカシだが今日は相手が悪すぎる。
あの相手に45分がりがりやられることを考えただけで、身震いが来る。
タカシは後半持つだろうか?そう考えてる俺自身もあと45分持つのか?
「なに、シケたつらしてんだよ」声にはっとすると、タカシがにやにや笑ってる。
「お前、もう俺がバテバテで後半もたねえんじゃねえか、と思ってるんだろ」
俺はそのとおりだ、とも言えずに黙っている。
「あそこに何人か人がいるだろ」タカシは顎をしゃくってピッチの反対側をさした。
その方向を見てみると、見学者はみんな金網の外にいるのだが、
何人かの男が金網の中、タッチラインから少し離れた場所で談笑している。
関係者だろうか。
「レッズのスタッフだよ。代表にきてるメンバーの様子確認がてら来てるんだろ。
ユースのスタッフもいるよ」タカシがさらりと言った。
109 :
U-名無しさん:05/03/08 00:13:10 ID:1vq2jsTA0
age
110 :
U-名無しさん:05/03/08 07:04:34 ID:y6PYW4cTO
ユースのスタッフもぬめふ。
タカシはかゆいと言った。
ひそかにこのスレ応援してます
がんばって!
タカシが中学までレッズのジュニアユースにいたことは、みんな知っている。
というかうちの県内で俺と同い年でサッカーやってた奴ならば、
タカシの名前は一度や二度、耳にしてないほうがおかしい。
あちこちの大会でレッズのジュニアユースのFWとして
アホみたいに点を取り捲っていたし、見るからに動きの次元が違っていた。
だから、タカシがユースに昇格できなかったらしい、と
風の噂で聞いたときは驚いた、というか、
あれでもだめならプロってのは無茶苦茶次元が高いんだな、と思った。
その次に驚いたのは、入学式でタカシと顔をあわせたときだ。
いくら昇格できなかったとはいえ、タカシほどの力があれば、
どんな強豪校だって好きなとこに入れただろう。
てっきり県内か近隣の私立で、特待生扱いでサッカーを続けると思ってただけに、
多少強いとはいえ、こんな普通の公立高校に来るとはまったく予想外だった。
俺とタカシはすぐにすっかり意気投合した。
点取り屋らしく多少性格にアクはあるけれど、
自分が上手いことを必要以上に鼻にかけることはない。
ただ、はっきりと口にすることはなかったが、
タカシが自分が昇格できなかったことに納得してないことは、
一緒にいると自然と言動から感じとれた。
自分を落とした連中をいつか絶対に見返してやる。
だからタカシの練習には、いつも俺たちとちょっと違う凄みがあった。
俺はもっと上に行くんだ。練習中、たまにタカシの背中が
そう叫んでいるように見えることがあった。
当時一緒のチームにいた訳じゃないから、俺にはタカシが昇格できなかったことが
妥当なのか、それともまちがった判断なのかわかるよしもない。
でも、そんなタカシの姿に時々痛々しさを感じたのも事実だった。
もちろん本人には言わないし、俺の勝手な感情だ。
俺たちの学校は埼玉スタジアムに近い。
グラウンドから外をおおぎ見れば、埼スタの白い屋根がすぐに目に入ってくる。
いわずと知れた浦和レッズのホームスタジアム。
順当に昇格していれば、自分が熱烈なサポーターの声援の下、
プレイしていたかもしれない可能性のある場所。
こいつはどんな気持ちであの白い屋根を見てるんだろう、なんて思ったりもした。
そしていま、このサブグラウンド。
あの白屋根は普段よりずっと近くに見える。
モニカまだぁー? (・∀・ )っ/凵⌒☆チンチン
タカシガンガレ!!
116 :
U-名無しさん:05/03/10 20:13:15 ID:gAbzCfms0
age
「ばーか。過去のことは過去のこと、だよ」
俺の心を見透かしたようなタカシの言葉に、ぎょっとして振り返る。
「わかるよ、お前らがなんとなく俺を心配してること。
そういうのって確かにちょっと不自由だもんな。でもな。」
タカシはにこにこと笑って俺を見た。
「やっぱり今日だけは負けられないんだよ。ぜってえにな」
そういって何がおかしいのかひとりでけらけらと笑った。
俺はなぜかちょっとほっとしてタカシを見ている。
「それにな、お前、馬鹿にすんなよ。
俺はな、愛するモニカちゃんのためなら100キロマラソンだって走れるぜ」
「口だけならほんとにプロ並だな。スペースに出したらちゃんと走れよ」
「お前もだよ。今日はいつもみてえに、
ほいほいパス出して、後はお任せって立場じゃねえんだからな」
ちらっと少し離れたところに座ってるモニカを振り返り見ると、
「俺ら一人ひとりでモニカちゃんをカバーするんだ。わかってんだろうな」
わかってるに決まってんだろ、と言い返す。
「後半、お願いします」
さっきと同じ協会の人が俺たちに声をかける。
俺たちはピッチに入り、中央で円陣を組む。
楢崎さんも前半と同じように輪の中に入ってくれた。
山口が気合を入れる。俺たちの気持ちがひとつになる。
円陣を解いて、ポジションにつく。
まだ代表の選手たちはベンチの周りで輪を作っている。
前半で2−0。いくら調整とはいえ、納得できるスコアではないだろう。
いつのまにかキャプテンの山口が俺の脇に来ていた。
「結果には納得してないだろうが、さすがにこの試合で
疲労をためるわけにはいかないからな。
後半はおそらく総とっかえでサブ組がでてくるだろう」
俺の考えを読んだかのように山口がいった。
代表の選手がベンチを離れ、ピッチに出てきた。
顔ぶれを見ると、やはりサブ組だ。
代表のベンチを見ると宮本が険しい顔でピッチを睨みつけている。
この無様な内容のままピッチを退くのは、さぞかし屈辱に違いない。
俺は、ベンチから視線を外し、反対側にいるメンバーを確認する。
GKは土肥。Jで連続出場を続ける鉄人だ。
坪井、松田、茶野の姿が見える。中田浩二と阿部勇樹。
手前に藤田俊哉、三浦アツ。
FWはJの日本人得点王の大黒とどうやら本山か。
ひとり右サイドにいる顔だけがまったく記憶にない。
山口に確認すると、
「たぶん人数が足りないからスタッフが助っ人で入ってるんだよ」
最初は遠目でよくわからなかったが、いわれて見ると他の選手たちとは
明らかに雰囲気が違う。
「4−4−2かな、3−5−2かな。なんとなく3−5−2っぽい雰囲気だけど」
最近のジーコジャパンの場合、4−4−2のシステムは、実際は2バックにして
より攻撃的に行きたいときに使ってくることが多い、と山口は言っていた。
「ま、どっちにしろ、きつい45分になるのはまちがいない。
クラブと違って代表はみんな一流選手ばかり。
監督が違えば、レギュラーでもおかしくない顔ぶれがそろってるんだし」
ふと後ろを見ると、楢崎さんがうちのDF陣に指示をしているのが見えた。
ラインかポジショニングか。身振り手振りで笑顔を交えて話している。
俺はなんか嬉しくなってその様子を見ていた。
ついで左を見る。モニカのすらっとした立ち姿。
前半楽をさせたせいか、スタミナには余裕がありそうだ。
俺の視線に気づくと、にこっと笑って親指を立てた。
スタミナは大丈夫よ、ということなのか、後半も行くわよ、という意味なのか。
いろいろ考えてるうちに、現実に引き戻す審判の笛。
また体のきしむ45分が始まる。
モニカが を立てた(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
>ひとり右サイドにいる顔だけがまったく記憶にない
代表の隠し玉キター
「後半はサブ組ですね、やはり」滝沢が代表のメンバーを確認しながらいった。
「当然だろ」小熊は言う。「代表の目的はこの試合に勝つことじゃない」
「わかってますけど。でももうちょい見たかったですね」
ボールが動きはじめる。代表の動きがいい。またたく間に敵陣でゲームを進めはじめる。
「しかし前半で2−0ですか。ジーコも頭抱えてるでしょうね」
滝沢の目の動きにつられて小熊もつい代表のベンチを見てしまう。
ジーコはピッチ際にたっている。表情が険しい。
「完璧に崩されたからな。あれを狙ってやってたんならたいしたものだ」
「というと?」
立場上、代表チームについて対外的な発言はできない小熊だが、
もちろん自分なりに代表チームについていろいろ思うことはあった。
「代表の守備を見てみると、セットプレーやコーナーキック、
サイドからのクロスには強いんだよ。
クロスから一発ゴツン、なんて失点もなくはないが、思いのほか少ない。
その理由は中澤の存在だ。中澤の空中戦の強さは抜群だからな。
逆に失点を見てみると、
ボランチの後ろ、ディフェンダーの前のスペースを使われることが多い。
意外とエリア手前からのミドルシュートなんかがあっさり決まるんだ。
あそこにスペースができやすいし、結構ボールを持たせちまう。
前半の2点ともあのお嬢ちゃんがあそこに入り込んで、いいボールを配給してる」
小熊の視線の先でモニカがボールを持った。
すばやく周囲を確認してパスを送る。その姿が様になっている。
プレイする姿に破綻がない。雰囲気がある。
「それに右にいる10番も、中澤を中央から引き剥がそうとしていたろう。
アレックスの上がった後、中澤がカバーに行ってサイドに引き出された時も、
日本の失点は多いんだよ。
2点目のきっかけとなった左からのクロス、
中澤が中にいたら、きっちりクリアしていた可能性は高いな」
高校チームのDFが苦し紛れのロングクリア。
FWがけんめいにボールを追いかけるが、それをあっさりあしらって、
代表の松田がボールキープ。そのボールがサイドに渡る。
「後半はどうなりますかね」滝沢が試合から目を離さずにいう。
「お前はどう思う?」小熊は聞き返す。
滝沢はしばらく考えていたが
「代表有利でしょうね。高校生はもう45分走っているのに比べ、
代表はサブ組でフレッシュですし。
それに本番を考えて抑え気味になるレギュラー組に対して、
サブ組はジーコへのアピールという動機付けがありますからね。
ましてレギュラーが2−0で負けた後ですから。目の色変えてやるでしょう」
フル代表やクラブのトップチームが、ユースや高校等のアマチュアと試合をやれば、
勝って当たり前と思うのが普通だが、実はそう簡単なものではない。
この手のマッチメイクはほとんどの場合、プロ側の調整を目的として組まれる。
時には勝ち負けをとりあえず置いてでも、
確認しなければいけない決まりごとや、試したいオプションがあったりする。
その一方、ユース側はトッププロとやれる、という高いモチベーションがある。
失うものなく全力で自分たちのできるすべてをぶつけてくる。
これだけ置かれた立場が違うと、簡単な試合にならなくても不思議はない。
試合自体が拮抗したものになることは、小熊にとって決して驚きではなかった。
ただ2点差がつくとは予想もしなかったが。
この手の試合はたいていはフィジカルと集中力の違いが最後はものをいって、
妥当な結果に収まるのが常だが、この試合もそうなるのか?
だがそれにしてはあのお嬢さんが気になるな・・
お嬢さん♪おじょぉーうさーん♪
後半は一方的に押し込まれている。
俺もモニカもボールを持って前を向くチャンスがない。
全然ボールが相手陣内に行かない。まるでハーフコートのミニゲームだ。
DFがひたすら遠くに蹴っているだけのクリアボール。
FWの高田とタカシは懸命に追っているが、さっきから徒労に終わっている。
うちのDFはもうエリアから離れられなくなっている。
FWとDFの間のだだっ広い空間。
いくら俺が孤軍奮闘してもプレスがかかるわけはない。
両サイドもじりじりと引き出している。その上、明らかに上がりが鈍い。
左サイドの山口が目に入る。奴もかなり疲れている。
またDFからとにかく蹴っとけ、というロングボールが前線へ。
タカシがジャンプしてそのボールを競る。
その瞬間、タカシが鉄砲で撃たれたようにはじかれて倒れる。
すかさず笛。松田が後ろからぶち当たったらしい。
タカシがそのまま倒れている。
審判が松田を捕まえて二言、三言話している。
松田はわかった、わかったとでもいうようにうなづくと、
倒れているタカシの頭をぽーんと叩いて自陣に戻っていった。
一応タカシの様子を見に行く。怪我はないようだ。
「思いっきしきやがったぜ・・練習試合なんだからもうちょい優しくしてくれよな」
手を伸ばす。その手をタカシがつかんで起き上がる。
「2点差だからな。相手もそうそう緩くはしてくれねえよ」
ああ、とうなづいたタカシの顔が妙に凛々しい。
ほんとにこいつよくやるよ。
さっきからフリスビーを追う犬のように右に左に、
ロングボールを追ってあきらめることなく走り回っている。
お前、たいしたやつだよ、と俺は心の中で声をかける。
立ち上がったタカシが
「俺のスタミナは気にしなくていいからな。
出したいと思ったところにパスを出せ。必ず走るから。
モニカちゃんとの大事な試合だ。今日は絶対に言い訳しねえからな」
タカシの目がギラギラしている。
頼む、我慢してくれ。俺は心の中でわびる。そのうち必ずパスを送るから。
いつしか俺はモニカがうちの学校に来てからの記憶をたどりだしていた。
わくわくどきどき&ほしゅる。
129 :
U-名無しさん:05/03/13 15:47:46 ID:v4iz7jWL0
モニカは転向してきたその日から、早速、サッカー部に顔を出した。
珍しく練習の開始前に顧問の岩崎が、部員全員を集める。
「今日から一緒に練習することになった2年生のモニカだ。
正式な部員ではないが、練習は全部一緒に行う」
他の奴らの顔を見るとなんともいえない微妙な顔をしている。
視線がモニカの胸にしかいっていないような
馬鹿面でにやけてるアホどもはおいといて、
多くの連中は、かわいこちゃんと練習できるのは嬉しいが、
はたして練習についてこれるものなのか、足を引っ張られるだけに
終わるんじゃないか、と内心首をかしげているのがわかった。
練習開始、という岩崎の声に、俺たちはグランドに散らばる。
下級生の掛け声にあわせてランニング、ストレッチ。
そのあとはボールを使ったウォーミングアップ。
俺の今日の相手はタカシだ。
タカシの蹴ったボールを頭でトラップ、右膝に落とす。
交互に左右の膝でボールの感触を楽しんでから、
下へ落として足首でホールド。そしてタカシへ戻す。
そのとき、グランドで突然に歓声が起きた。
顔を向けるとみんながモニカを見ている。
みんなの視線の先でモニカはボールを頭の上で静止させていた。
いわゆるオットセイのポーズだ。
その状態からボールを背中づたいに落としたかと思うと、
右足のヒールで蹴り上げる。そのボールをもう一度頭でトラップ。
ボールは小さく弾んだが、またモニカの頭の上で静止した。
その動きが早く流れる。ボール捌きが美しい。
隣でタカシが「ひゃあ」と驚きの声を上げた。
もう一度背中づたいにボールを落とす。もう一度ヒールかと思いきや、
左のアウトサイドでボールをトラップすると、体の正面へ持ちかえた。
「なんや、あれ。前、テレビで小野伸二がやってるのみたことあるけど・・」
ボールに紐か粘着テープがついてるに違いない、と思わせるほど、
そのあともモニカは見ほれるようなボールコントロールを披露した。
いつのまにか部員がみんな練習をやめて、モニカのショーに見入っていた。
「お前の話、信じる気になったわ」とタカシがつぶやく。
アホか、と俺は心の中で呟く。これを見せられて、
それでも信じない奴がいたらそいつは頭がおかしい。
ふと気になってグランドを見渡すと、グランドの隅で岩崎が腕組みをして立っている。
いつもどおり。じっと静かに俺たちを見ている。でも、驚いてる感じはない。
あいつ、モニカの力を最初から知ってたのかな、と俺は思った。
132 :
U-名無しさん:05/03/14 20:46:05 ID:My6Hr+WG0
モニカタソ (*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア
せっかくだから、ということで今日はメニューを変更して紅白戦をやることになった。
キャプテンの高田が岩崎に許可を求めにいくと、
メンバーは自分たちで相談して決めろ、という答えだった。
俺とタカシは、モニカの敵チームに入ることにした。
三人が一緒では、実力差の調整が難しかったし、
それに敵側にいたほうが、よくプレーを観察できる。
あとはレギュラー陣とサブ組を両チームにバランスよく振り分ける。
モニカを抜きにすれば、まちがいなく俺たちが有利だな、と
組み分け結果をみて、心の中でおれは思う。
なんてったってエースFWのタカシと司令塔の俺がいる。
審判役の下級生が笛を吹いて、相手チームのキックオフで試合が始まった。
俺はさっそくモニカのポジションを確認する。センターサークルの後ろ、MFの位置だ。
FWの1年生がボールを下げる。早速、モニカにボールが回った。
それをみたタカシが喜びいさんでチェックに行く。
そのまま抱きついて胸でも揉みかねない勢いだ。
そのダッシュ、普段の試合で見せろよ、と俺は心の中で毒づく。
タカシのダッシュをみたモニカは左前の半身にかまえる。ボールは右足で持っている。
馬鹿正直に正面からくっついたタカシに、
モニカは落ち着いて右のヒールで自分の右後方、タカシの右側にボールを出す。
体を預け気味に右回転させて抜け出す一方、
左手ではきっちりタカシのシャツのすそを引っ張っている。
モニカのスムースな回転にきれいにバランスを崩されたタカシは、
柔道よろしくもんどりうってグランドに倒れた。
あの馬鹿。いくらなんでもなめすぎだって。起き上がったタカシが呆然としている。
こうなりゃ俺が行くしかない。顔を上げたモニカが俺に気づく。
くいくい、とモニカが指を動かす。なめんなよ。
この前は二人相手だったから苦労したが、一対一ならそうはいかないぜ。
モニカが右足でボールをまたぐ。つづいて左足が動く。今度もまたいだだけだ。
ボールは動かない。お前はカズかよ!と突っ込みを入れたい。
そっちが来なけりゃこっちから行くぜ、とばかりに体を入れる。
一応、女相手だ。ふっ飛ばさない程度にがつんと当たる・・予定だったが、
それが罠だった。
ボールは俺の股の間を転がって後ろへ抜けていった。モニカが右に飛びのく。
足、動いてねえのになんで地面にあるボールが動くんだよ?
もちろん、足を動かしてないのにボールが動くわけはない。
限りなくノーモーションのトゥキックでボールを押し出したんだろう。
片足でフェイントをかけてその実、残った軸足でボールをつついて抜き去る。
珍しいテクニックではないが、切れ味がよすぎる。
飛びついた俺が馬鹿だった、ということだ。タカシといい勝負だ。
くそったれ、このままで終われるかよ。俺はきびすを返すとモニカを追った。
しかし。
後ろから見ると実にいいケツだ。
( ゚∀゚)o彡゚ おしり!おしり!!
137 :
U-名無しさん:05/03/15 13:31:39 ID:Lb2j4+XA0
138 :
U-名無しさん:05/03/15 13:47:47 ID:MYLt+LMtO
そして、後ろから押し倒し、オレのいきり立ったイチモツをモニカの熱く潤った蜜壺にあてがう。
結局、紅白戦は2−2の引き分けで終わった。
タカシが1点、俺が1点決めたが、
ゴールを決めてこれだけ気分の悪い試合も記憶にない。
モニカを中心に好き放題パスを回されて、こっちはいいように走らされた。
俺とタカシの個人技による強引なシュートがなくて、
相手チームの1年FWが決定機をもうちょいまともにものにしていれば、
3−0、4−0で負けてもおかしくない試合だった。
「nice fight!」モニカが俺の脇に寄ってきて頭をぽんぽんと叩く。
俺はガキじゃないって。思いっきりしかめっ面をしてやった。
やっぱ、外人には態度で示さないとな。
でもそれを見たモニカは、楽しそうに大笑いした。
ほんと、国際理解ってのは難しいな。言いたいことが通じない。
タカシは俺と違って頭の構造がサッカーゴール程度の単純さだから、
さっそく「how are you?」とか訳のわからんこといってる。
赤点しかとったことのないお前の英語が通じるかっつーの。
なんかモニカがいい、タカシのおどけた声。そしてみんなの大きな笑い声。
やれやれ。一日でチームに馴染んじまってるよ。
俺は顔についた土ぼこりを手の甲でぬぐった。
自陣、ハーフウェーから少し入ったところでモニカがボールを持つ。
モニカの足技の巧みさを知った代表も、もう簡単には取りにこない。
落ち着いてパスコースを切って網をかけ、徐々にその網の目を絞りこんでくる。
一度、DFに預けて立て直したいところだが、
うちのDFがボールをもらいにいくより、相手のFWのチェックのほうが早い。
本山が体を寄せてくるが、モニカはそれをひらりとかわしてキープし続ける。
たいしたもんだ。だがパスの出しどころがない。
やむをえずハーフウェーまでもらいに下がってきた高田にパスを出すが、
その高田に中田浩二がすばやく後ろからチェック。
持ちこたえきれずボールを奪われる。また相手ボールだ。
やばい、スペースがありすぎる。
モニカが少し上がっていた一方、DFラインは引きっぱなしなので、
中盤のあちこちに隕石が落ちても大丈夫なくらいのスペースがあちこちに空いている。
それを埋めるのが今日の俺の役目だ。
俺はすばやく周囲を見渡して、代表の選手の位置を把握すると、DFに指示を出す。
ボールを奪った中田浩二からパスが出る。
モニカの後ろにぽっかり空いたスペースに阿部勇樹が上がってくる。
しかし、そこは俺が網を張っていた場所。トラップ際で完全に体を寄せることができた。
(・∀・)<nice to meet you
143 :
U-名無しさん:05/03/16 10:58:59 ID:r3vnN8cg0
(・∀・)<I’m fine thank you.how are you?
(・∀・)<Good morrning Mr TOKUMITSU !
ちと気は引けるが、ここはしっかりつぶしておくしかない。
強引に足を伸ばしてボールを取りに行く。阿部がバランスを崩して倒れる。
すかさず審判の笛。ここの位置のファールならなんとかなる。
俺はすばやくボールから離れて早いリスタートに備える。
戻ってきたモニカが俺を見て、かすかに笑うと軽く手を上げた。
任せとけって。お前の後ろは俺だけじゃなくみんなでカバーするから。
だからお前はお前のやりたいプレーをやってくれ。
モニカが学校に来た日の翌朝、俺はいつものように公園でボールを蹴っていた。
うちの部は朝は完全な自主練習になっている。出るも出ないも自由だ。
だから、朝は家の近くで自分一人でトレーニングすることにしている。
軽く家の周りをランニングした後、近くの広い公園でボールを使った簡単な練習。
ひとりで練習するときは、いつもこの公園だ。
いつものようにリフティングをはじめたところで、
ふと昨日のモニカのボール捌きを思い出す。
いくつか記憶にあったやつを真似してみようとするが、
ボールが思い通りコントロールできない。
四苦八苦していると、俺の耳に笑い声が聞こえた。
顔を上げると、そこに立っていたのは一昨日の昼間、モニカと一緒にいた女だった。
金髪のショートカット、モニカよりも全体的に細身な印象だ。
足元に旅行に持ってくような、車輪のついたピンクのスーツケースが置いてある。
ボールをよこせ、と彼女が手振りで示したので、俺はボールを蹴った。
彼女はボールを持つと、リフティングをはじめた。
うまい。昨日のモニカにも驚かされたが、この女も相当な腕前だ。
ひととおりのテクニックを見せると、彼女はボールを足元で留め、にっこりと笑う。
「どう?わたしもなかなかやるでしょ?」
まったくもってきれいな日本語だった。
俺たちは近くのベンチに腰掛けて話しはじめた。
彼女の名前がシンディといい、モニカとはアメリカで友達だったこと。
シンディも母親が日本人のハーフであり、それもあってモニカと意気投合したこと。
シンディは子どもの頃日本で暮らしていたこともあるし、
家の中では母親がずっと日本語を使っているので、
モニカと違って日本語がきちんとしゃべれるらしい。
今回、モニカが日本に住むことになったので、
シンディもモニカの引越しにあわせて、久しぶりの日本に旅行に来たこと。
モニカと一緒に京都などを旅行して回ったが、モニカの学校生活が始まるので、
今日、これから飛行機で彼女はアメリカへ帰ること。
そんなことを彼女は話してくれた。
「毎朝、ここで練習してるんだって?モニカから聞いたわよ」
昨日の練習後、モニカにあの公園でいつも練習しているのか、と聞かれたから、
正直に、時間の空いたときや朝は、あそこで練習している、と答えたのだが、
それを耳に挟んだらしい。
シンディは俺にモニカとのいろんなエピソードを話してくれた。
知り合ったのは3年前だったこと。
二人は日本人を親に持つハーフ同士ということで、すぐに無二の親友になった。
同じチームで出た、アメリカの女子サッカーの大会では、
ぶっちぎりの強さを誇ったこと。
いろいろな試合中のエピソードや、日常での笑い話。
そんなことを話しているうちに時間が過ぎていった。
彼女は時計を見ると、もう飛行機の時間だわ、と呟いた。
俺もそろそろ学校に行かなければいけない時間だった。
「そういうわけでモニカのことをよろしく頼んだわよ。
わざわざこんなかわいい娘がお願いしてるんだからね」
シンディはにっこりと笑った。
よく見るとお母さんの遺伝が強く出ているのか、
モニカよりも日本人に近い感じがする。
髪はブラウンだし、顔の彫りは深いけれど、全体的な体の感じが日本人ぽい。
ちらっとみた横顔にも、どこか日本人らしい整った感じが漂っている。
その分、胸も少し小さめだけど、それも人によっては好みだろう。
俺が話を聞いてないと思ったのか、シンディが少しむっとした顔をして
「サッカーがちょっとうまいだけで、17歳の普通の女の子なんだからね。
しかも私と違って、日本は初めてなんだからとても心細いはずなんだから」
あれでかあ、と俺は思わず抗議する。
昨日のふてぶてしく堂々とした態度をみると、とてもそうは思えない。
シンディは反論しようとする俺をにらみつけると
「モニカはね、結構あなたのことが気に入ってるはずだから。
いきなり公園でからかったりするのは、あなたに興味があったからよ。
昨日、学校から帰ってきたあとも、君にあったことを楽しそうに話してたわ」
それでも釈然としない俺をよそにシンディは
「日本では、これも何かの縁ていうでしょ。とにかく一緒にサッカーやるのよ、
そして彼女が困ったときは助けるの。わかったわね」
ここで首を横に振ったらただじゃすまない気がしたので、俺は素直にうなづく。
シンディは満足したようににっこりと笑うと、スーツケースを持って立った。
またいつか会いましょう、see you again! とシンディがかわいく笑って手を振った。
俺も手を振った。
( ゚∀゚)o彡゚ シンディ!ローパー!!
150 :
U-名無しさん:05/03/17 13:16:41 ID:XNAIT1rZ0
151 :
:05/03/17 13:32:05 ID:qv+dlX+w0
そろそろエロシーンきぼんぬ
岩崎が審判に選手交代を告げた。
代わるのはCBの渡辺。相当へばっているようだ。
少しでもフレッシュな選手を入れて持ちこたえようという考えだが、
サブの選手だから力は落ちる。差し引きしたらとんとんか。
山口、田中の両サイドの足ももうほとんど止まっている。
交代させてやりたいところだが、奴らの代わりがいない。
うちはまだそこまで選手層が厚くない。普通の公立高校の限界だ。
となると結論はひとつしかない。
ピッチに残ったやつらはもっともっと走れ、ということだ。
モニカはどうだろう。俺はモニカの様子を遠目で伺う。
なるべくスタミナをセーブしろ、という俺たちの指示に従って、
シンプルなプレーに徹している分、まだ多少余裕はあるようだ。
どんなにワンサイドのゲームでも、どんなに実力差があっても、
1回もチャンスの来ない、完全なノーチャンスのゲームというのは
実際のところなかなかないものだ。必ず後半も1回はチャンスが来る。
それを決定的なものにするにはモニカの力が必要だ。
そのためにはなるべくモニカのスタミナは大事に使いたい。
さくせん
みんながんばれ
→モニカだいじに
ガンガンいこうぜ
めいれいさせろ
154 :
U-名無しさん:05/03/18 14:12:15 ID:ABEUM5bt0
age
>154のIDが阿部な件について
モニカと同じクラスの、そして同じ部の友だちとして
一緒に過ごす毎日がはじまった。
同じ教室で勉強し、放課後はグラウンドで一緒に走る。
昼には学食で一緒にくそまずいラーメンをすすったりもする。
そんなふうに一緒の時間を過ごしていくうちに、
モニカについていろんなことを知るようになった。
サッカーは物心つく前からやっていたこと。
アメリカでも女子のクラブチームに入っていて、攻撃的MFをやっていたこと。
アメリカというとやっぱりメジャーリーグやNBA、NFLのような
他のスポーツのイメージが強いので、
その話を聞くとなんか変な感じがするのだが、
それをいうとモニカは鼻の穴を膨らませて怒った。
確かに男子も女子もFIFAランキングでは、アメリカは日本より上なのだ。
この前の日韓ワールドカップでもちゃんとベスト8に残っている。
俺たちは、そんな話をつっかえつっかえしながらやりとりした。。
モニカの日本語は、お母さんから多少習った程度で、
相当練習する必要があったからだ。
ある日なんか、朝、教室で顔をあわせるなりいつもの大きい声で、
「ハーーーイ、スケベーーー」と叫ばれたのにはあせった。
話を聞くと、それが俺のニックネームだと教わったらしい。
アホなことを教えたタカシとサッカー部の連中を
さんざん俺がしめあげたのはいうまでもない。
事情がわかった後も、すっかりその言葉が気に入ったモニカは、
決して間違ってない、とかいいやがって、時折、スケベーと俺を呼ぶようになった。
そのたびにクラスの女子が、怪訝な顔をして俺を見る。
ほんと、勘弁してくれっつーの。
グラウンドでのモニカはやはりただものではなかった。
ボール扱いだけなら、部の中では一番うまかった。
というかトレセンや試合で見た他の学校やユースの連中まで含めても、
モニカほどうまいやつは俺の記憶の中にはいなかった。
俺たちは練習のはじめと終わりに、
モニカのやってみせる様々なリフティングやボールタッチを、
まねしたり、またはモニカから教わることが日課になった。
「stop!」というモニカの声。
俺は頭の上に載せていたボールを、首の後ろでいったんホールドした後、
背中づたいに落として足で処理する、というトリックの練習をしていた。
けれども頭から落としたボールは、
ホールドするどころか勢いよく転がり落ちてしまう。
そばで見ていた山口が、
「うまい選手は背中でもボールがトラップできるっていうけど、
ほんとなんだなあ」なんて暢気に感心している。
お前も一緒にやれ、といいたいが、
山口はニヤニヤしながら高見の見物を決め込んでいる。
俺の正面にたったモニカが、いきなり俺の頭を両手で掴んだ。
訳がわからなかったがどうやら頭を下げろ、といいたいらしい。
引っ張られるまま、頭を下げて前かがみの姿勢をとると、
モニカが俺の首筋を触った後、そこにボールを載せた。
なるほど、モニカが触ったところにくぼみがある。ここを使え、ということか。
納得して、モニカにわかったよ、と言おうとして視線を上げた俺はぎょっとする。
モニカの巨乳が顔の至近距離にある。
うっかり顔を左右に動かそうものなら当たってしまいそうな近さだ。
よくいう谷間に顔をうずめる、というのはこんな感じなんだろうか?
やわらかくて弾力のありそうな胸が目の前。
くそ、健康な男子高校生には刺激が強すぎるぜ。
「あっ、おめえ、モニカちゃんとなにやってんだ!!」
あー、タカシの声だ。必ず邪魔をしやがる。
( ゚∀゚)o彡゚ おっぱい!おっぱい!! (・∀・)イイ!
↓「ハーーイ! ドスケベー!」
このスレのモニカを全てモニワに脳内変換して読んでみるテスツ
161 :
U-名無しさん:05/03/19 22:56:42 ID:EfbTYGJh0
age
もちろんモニカはボール扱いだけでなく、ゲームでも実力を発揮した。
パスセンスと視野の広さは、俺たちの中では飛び抜けていた。
敵に囲まれた状況の中でもしっかりとボールをキープして、パスを出す。
空いたスペースとフリーの味方はめったに見逃さなかった。
俺がフリーの位置にいるときに、どうせ気づいていないだろうと思っていると、
モニカからどんぴしゃのパスが飛んでくる。
この状況であいつには俺が見えているんだ、という驚きがあった。
それはいままでうちのチームでは経験したことのない感覚だった。
俺たちの年代で将来、Jに行くようなやつと会うと、
次元を超えたモノの違いというやつを痛感させられるらしいが、
俺にとってはモニカがその対象だった。こいつはモノが違う。
ただ、しばらくやっているうちに、モニカにも弱点があることがわかってきた。
弱点というのは酷かもしれない。それは筋力の問題だからだ。
女性としては文句なく十分にトレーニングされていたし、
欧米人の体というべきか、日本人のそれとは比べ物にならない強さがあった。
だがそれでも、やはり筋力の限界というのがあった。
接触プレーなんかは意外と身のこなしや体の使い方で対応できるのだが、
ロングキックやシュートのスピードにはやはり辛いものが見えた。
テクニックでは足元にも及ばない俺たちが、
シュートスピードやキックの飛距離ではモニカを確実に超えていた。
練習でやるゲームでは、モニカは中盤に入るようになった。
俺と一緒のときはさしづめダブル司令塔だ。
本人が元々やっていたポジションというのも大きかったが、
時にロングフィードが必要なDF、激しい身体接触があるFWは
やはり彼女の体の特性を考えると男に混じってプレイするには難しい。
ただ別にそれは俺たちにとって不自由なことでなく、
そういう特性のあるチームメートがいるというだけのことだった。
その一方、俺もタカシも、そして部の連中みんなが、
フィジカルトレーニングに一生懸命取り組むようになった。
ランニングからはじまって敏捷性や運動能力を上げる様々なトレーニング。
今までの俺たちはそういうトレーニングに対して、
不真面目とはいわないが、さほど熱心でなかったのも事実だった。
どのスポーツでも同じだが、やっぱりボールを触ってるほうが楽しい。
でもモニカが入ってからしばらくすると、
みんながトレーニングについて真剣にやるようになった。
トレーニング中のひとつひとつの動きを、指の先まで神経をいきわたらせて行う。
それは単にモニカを見て、筋力の大事さを理解したから、というだけではない。
自分の持ってる体の特性や能力、
それを最大限引き出すことの大切さとひとりひとりが向き合いはじめた。
パワーのあるやつ、スピードのあるやつ、頑丈なやつ。
それぞれが自分の長所を把握して、
それを最大限発揮しようという意識が俺たちの中に自然と生まれていた。
165 :
U-名無しさん:05/03/20 16:40:32 ID:5eTlju7E0
age
大黒が早い反転からシュート。DFがついていけていない。
低いボールが枠に飛んだが、楢崎さんが横っ飛びではじきだす。
ライン際に転がったボールを内藤が必死にタッチラインへ蹴りだす。
大黒の動きがいい。好調という報道はほんとうのようだ。
ピッチを見回して俺たちの状態を確認する。
うちはエリア付近にDFの4人と、両サイドの二人が張りついている。
しかし6枚いても守りきれる、という感じはしない。
ハーフウェーラインにタカシが残っている。
もう一人のFWの高田はもう完全に中盤に下がっている。
モニカ、俺と高田の3人で中盤。6−3−1みたいなもんだ。
攻められっぱなしだから、ずっとこの隊形になってしまっている。
なまじ前線の枚数を減らすと、攻撃に手をかけられてしまうから、
なるべく高め、高めにいるつもりだったが、もう限界か。
タカシを引かせて俺もエリア内に入って守るか?
そのとき、内藤がすっと俺のそばに寄ってきた。
「絶対にカウンターのチャンス作るから」
思わず内藤の顔を見返す。内藤はいつもどおりのくそまじめな顔で、
「なんとか守るから。だから攻撃は頼む。
モニカちゃんとタカシとお前の3枚でカウンター狙ってくれ」
俺は何も言えなくなってうなづいた。
この試合、トータルで見れば内藤がもっともそんな役回りかもしれない。
ひたすら相手の攻撃を耐え忍び、体を張り続けている。
それでもまだ内藤は前を見ていた。目の前に広がる膨大なスペースに
いつかボールが出て、それを俺やモニカが運んでいく様子を。
俺は黙ってエリアの少し外にポジションをとる。
そんなふうにして、モニカが部にもすっかり馴染んだある日曜日。
都内の私立校との練習試合があった。久しぶりの試合だった。
名門校として有名な、そしておそらく今年も格上だと思っていた
その相手に、俺たちは完勝した。
俺自身もプレイしていて、いままでと感覚がまったく違うことに驚いていた。
いままでだったらふらついてたような、相手のがつがつとした当たりを
俺の体はしっかりと受け止める。当然ボールを出すときの余裕も違ってくる。
動きの違いは俺だけじゃなかった。
タカシたちFWは相手のチャージを跳ね飛ばし、競り合いも強引に突破する。
内藤たちDFはロングボールを屈強にはね返し、相手からボールを奪う。
山口、田中の両サイドはライン際を相手選手の倍は走り、クロスをあげ続けた。
チーム一人ひとりが大きく成長していた。
ひしひしと手応えを感じてベンチに引き上げると、
ベンチで待っていたモニカが大喜びで俺たちを迎えた。
「fantasiticネー。ミンナ、ナイスゲーム」
俺たちはモニカと腕をクロスさせて喜びを分かち合った。
その日の帰り道。俺はタカシと一緒の電車に乗っていた。
「なあ」タカシが口を開いた。
「ん?なんだ」
「モニカちゃん、試合出られないのかなあ」
それは俺も何度か気づきながら触れないようにしてきたことだった。
今日の練習試合、モニカはジャージ姿でずっとベンチに座っていた。
「俺もルールとかちゃんと読んだことないからわからないけど、
たぶん女子と男子ってサッカーはきっちり分かれてるんじゃないか」
「だよな。確かセリエAのペルージャが女子選手を入団させようとして、
FIFAからストップがかかったことあったよな」
そのニュースは俺も聞いたことがあった。
「高校サッカーもやっぱりだめなのかな」
俺は返事ができずに黙っていた。
しばらく電車の走行音だけが俺とタカシの間でリズムを刻んでいた。
「モニカちゃん、ほんとにうまいのになあ。
実力だけでいえば、うちでも当然レギュラーだし。
なによりモニカちゃんと一緒にサッカーやりたいよなあ」
その気持ちは俺も一緒だった。
「でも試合のたびに見てるだけじゃモニカちゃんもつらいよなあ。
あれだけサッカー好きなんだもん。一緒にやりたいだろうになあ」
俺は黙って窓の外を見る。街の景色が流れていく。
モニカタソ (*´д`)ハァハァ
170 :
U-名無しさん:2005/03/21(月) 17:15:17 ID:o7YRiCS20
こんなスレがあったのか
一気に全部読んでしまった
俺の中でモニカはミア・ハム
いや、実に痛快で爽快で愉快だね
ある日の練習前、岩崎が部のメンバーを集めた。
「協会から連絡があって、今度日本代表と練習試合をさせてもらえることになった。
ワールドカップ最終予選の前の調整ということだ。
代表がしっかり調整ができるよう、協力したいと思う。きっちり準備しておけ」
みんなから歓声が上がる。代表との試合なんてビッグニュースだ。
いつまでたっても自慢できる貴重な経験だ。
そんな浮かれた雰囲気の中、タカシがすいません、と手を上げた。声がうわづっている。
岩崎がいぶかしげな目でタカシを見る。みんなの視線がタカシに集まる。
「その試合にモニカちゃんを出してください。お願いします」
いきなりタカシが大きく頭を下げた。
「実力はいうまでもありません。だから、モニカちゃんを出してください」
相変わらず、本能のままに動くやつだな・・と俺は心の中で呆れる。
いまどき、スクールウォーズじゃないんだぞ、感動ドラマなんか流行らない。
空気の読めない奴だ、ここは一発俺がびしっと・・・。
俺は一歩前に出て「俺からもお願いします」
タカシの横に出て、深々と頭を下げた。
「お願いします」キャプテンの山口もでてくる。
いつしか部の全員が口々に言いながら、頭を下げていた。
その様子をモニカは口を手で抑えてじっと見ていた。目には涙がたまっている。
ばーか、泣くなよ。俺は心の中で呟く。
当たり前のことをしてるだけじゃん。泣くほどのことじゃないって。
「誰が使わないって言った?」そこに岩崎の声。
俺たちは頭を上げる。
「今回はモニカはスタメンで使う。その分、誰かが出られなくなる。
モニカに負けないようにしっかり練習しておけよ」
みんなにみるみるうちに笑顔がこぼれる。やったー、と喜んでる奴もいる。
岩崎が口元だけにかすかに笑みを浮かべて
「相手が代表である以上十分に作戦を練る必要がある。よく準備をしておけよ」
「ん?」モニカがなにか言った気がして、俺はモニカのほうを振り向いた。
練習の帰り道。冬の陽が落ちるのは早い。もう完全に真っ暗だ。
自転車通学の俺たちは並べて自転車をこいでいた。
「アリガト」
モニカの、南の海のように青い目がじっと俺を見ている。
「シアイ、オネガイしてくれてアリガト」
俺はのどの奥が詰まるような胸苦しさを感じる。
「バーカ。それに礼はみんなに言っておけ」
フフ、とモニカが笑った。
そのまま二人とも黙って自転車を走らせる。
制服の短いスカートから、健康そうな白い太ももが見え隠れする。
普段こいつの足なんてグラウンドで嫌ってほど見ているのに、
こういう状況で見るとなぜかエロくて少し落ち着かない。
一緒にサッカーやってると感じねえけど、こいつ、女なんだよなあ。
大通りの交差点につく。ここを俺はまっすぐ、モニカは右に曲がる。
「ジャアネ、スケベサン」
俺の心の中を見透かしたように一言言うと、
モニカが笑って手を振って夕闇の中へ消えていく。
顔が火照るのを感じながら「うるせえ」と言い返す。
その言葉はモニカの耳に届いただろうか。
モニカタソの太もも (*´д`)ハァハァ
白い太もも キタぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(゚∀゚)ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
監督の岩崎がまた選手交代を告げる。
サイドバックの渡辺が呼ばれ、タッチラインに走っていくが、
足取りが重い。相当疲労している。
その隙にベンチの下級生に時間を確認する。
35分です、あと少しです、頑張ってください、という答え。
よく35分持ちこたえたな、というのが本音だった。
おそらく後半は一本もシュートを打たせてもらってない。
相手のシュートは数えたくもない。たこ殴り状態だ。
でも、まだ2−0でリードしているのはこっちだ。
点をとられていないのが不思議としかいいようがないが、
ツキがこっちにあるのだけはまちがいない。
あと10分。もう正直体は限界に近い。
けど、あと10分で終わってしまうのが惜しい。
その日から俺たちの練習にはいっそう熱がこもった。
代表が相手とはいえ、所詮は大会でもないただの練習試合。
だけど俺たちの気合は冬の選手権にかけるそれにも負けてなかった。
モニカと一緒にできる数少ない試合。
相手が代表といえどぶざまな試合だけは決してできない。
といっても技術ではるかに上回る相手。
いつもと同じサッカーをしていたら、まるで相手にならないだろう。
まずモニカのフィジカルを考え、中盤でのボールの奪い合いは避ける。
DFはボールを持ったら中盤をすっ飛ばして、
徹底して前線にロングボールを入れる。
FWはとにかくそのボールを競り、
そのこぼれ玉をMFがひろって、攻撃を組み立てる。
モニカはキープをなるたけ封印して、速いテンポでパスを捌く。
そのためには俺と両サイドがモニカがボールを持つと同時に、
パスコースができるようすばやく動き出さなければいけない。
言うのは簡単だし、基本中の基本だ。
しかしこれをやり続けるのは至難の技だ。
ばんばん無造作にほうりこまれてくるロングボールをひたすら追いかけて
競ることの辛さは、FWをやったことのある人間ならわかるだろう。
その意味でタカシに今回課せられる指名は苦行に近いものがあった。
俺たちMFもサボることは瞬時たりとも許されない。
代表の攻撃力を考えると、4枚のDFを上がらせるのは無理、と
俺たちは結論を出していた。常に4人は残しておく。
すなわち前線と、おそらく引き気味になるDFラインの間の
広大な領域を俺たちMFで、攻撃に守備にとカバーに走ることになる。
その運動量を考えるとそれだけで気が遠くなりそうだった。
中国大陸を駆け回ったという昔の騎馬民族よりも、
俺たちが走らなければいけない距離は長いんじゃないかとさえ思える。
「一言で言うと、とにかく相手より走れ、だな」
タカシがわかりきったまとめをした。
相手より一歩でも二歩でも、とにかく多く走ること。
技術が上の相手に勝つには、運動量で上回ることが最低条件だ。
その上で数少ないチャンスをものにする。
そのチャンスは必ずモニカが作り出してくれる。その自信はあった。
きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
180 :
U-名無しさん:2005/03/23(水) 02:42:53 ID:3dZgW2wT0
あげ
日本代表が不安になってしまうのは私だけでしょうか
サブ組決定力ないよなw
183 :
U-名無しさん:2005/03/23(水) 06:21:45 ID:hK0St0TPO
楢崎が凄いの!
実際ありそうだから怖いなw
だがそれがいい
モニワタソ(*´д`*)
左サイドからほうりこまれたクロスボール。しかし精度がない。
一歩早く動き出した内藤が落ち着いてヘディングでクリア。
そのボールがエリアの外で待っていた俺の先に落ちてきた。
すかさずトラップ、そして前を見る。
開いている。目の前に誰もいない。
ハーフウェーラインでは、すかさずタカシが右サイドへ猛然とダッシュ。
モニカも誰かにマークされながら中央によってきている。
いちかばちかタカシの前のスペースに、
ロングボールを蹴りこめば、チャンスになるかもしれない。
それとも中央のモニカか。モニカに預けて起点になってもらい、
その間に俺たちが一気に押し上げる。
しかし、サイド際のスペースにほうりこんで、タカシがボールをとれるのか。
モニカに出したとして、一枚ついているマークをモニカは外せるのか。
残り時間を考えれば、DF陣の疲労を考えれば、ここはキープして時間を稼ぐべきか。
迷う。俺は判断に迷ったままドリブルでタッチライン際に進む。
遠くにタカシの怒っている表情。違う、ここは確実に行きたいんだ。
その瞬間、左後方から激しい息と殺気。
本能的に危険を察する。このままだと体ごと刈られる。
考える暇もなく飛ぶ。ジャンプした瞬間、
俺の足元を誰かの体が通っていくのが見える。
俺は無様に前のめりに芝生に突っ込む。倒れたまま首をひねって確認する。藤田だ。
ボールは藤田のスライディングでタッチを割ってスローインの判定。
藤田が芝生に横たわったままの俺の頭をぽんぽんと叩いていく。
その手が俺に言っている。よく交わしたな、なかなかやるな。
屈辱感で胸がいっぱいになる。
手を突いて起き上がる。その時、金切り声が聞こえる。モニカだ。
見るとこっちへ走ってきながら何かわめいている。
すっかり興奮しているので、英語になっている。
何を言ってるのかはわからないが、むちゃくちゃ怒っているのだけは誰が見てもわかる。
意味が通じないのを幸いに俺は無視してストッキングをあげる。
モニカが近くまできて何か言っている。まるで昔磐田にいたドゥンガだ。
ドゥンガに怒られた選手はこんな気分だったんだろう。
審判が、体は大丈夫か、と聞いてきたので、大丈夫です、と答える。
それでもモニカが何事かわめいている。かわいい顔が台無しだ。
そこにタカシが割って入ってモニカをなだめる。
無理やりモニカに回れ右をさせて、ピッチのほうへ送り出す。
モニカはまだなにかわめきながら渋々戻っていった。
代表の選手もそれを呆気にとられて見つめている。
「気にするな。まだチャンスはある」
てっきり怒られると思ってたが、タカシは淡々といった。
「すまなかった」思わず詫びの言葉が素直に口をついて出る。
モニカが怒るのも無理はない。絶好のカウンターのチャンスだった。
それを周りを信じきれずに判断に迷って、中途半端な形でつぶしてしまった。
自分自身への怒りが体の中から沸きあがってくる。
俺たちが今日ここでやりたいのは、勝つために時間を稼ぐサッカーじゃない。
モニカのプレーを、モニカのすばらしいセンスを、みんなに見せてやる。
そしてモニカと一緒のサッカーを最高の対戦相手と試合して楽しむ。
そのために、俺たちは今日の試合に向けて準備してきたはずだ。
藤田のくせに生意気だな
あのハゲ野郎
ボールは全部モニカに集めて!!
よし おれの2個のボールもモニカに・・・
藤田さん、高校生相手に本気のタックルですかwww
スタメンとりに必死ですねwww
194 :
U-名無しさん:2005/03/24(木) 23:29:26 ID:hl+AUH2N0
age
「帰らねえのか」声に振り返るとタカシが立っていた。
部活の終わったグラウンド。
少しずつ陽は長くなっているけど、まだ夕闇の訪れがはやい。
俺はタカシにうなづき返すと、ボールを蹴る。
ゴール右上にイメージしたとおりの弾道でボールは吸い込まれる。
それを見たタカシがひゅーっと口笛を吹く。
「いまのは明日にとっておいてほしいもんだな。
本番は明日だぜ。あまり疲労は残すなよ。」
わかってるよ、と返事する。明日に備えて、今日の練習は早めに切り上げた。
モニカも他のみんなももう帰ったはずだ。
もう一度、ボールを蹴る。ゴールマウスに川口が見える。
もう一度。今度は左下。イメージの中の川口が俺の蹴ったボールに飛びつく。
おい、半分もらうぞ、とタカシがいって、
俺が練習用に転がしておいたボールを半分くらい蹴って動かす。
そのままタカシもシュート練習をはじめた。
シャープに振りぬかれた足がボールを叩くいい音がする。
しばらくの間、お互い黙々とシュートを打ち続ける。
静かなグラウンドに聞こえるのは、俺とタカシの呼吸する音。
ボールを蹴る音。そしてボールがネットを揺らす音。
遠く校舎のほうで、誰かのはしゃぐ声が聞こえる。
やがて俺もタカシも転がっていたボールを全部打ち終わる。
俺たちはゴールの周りにちらばったボールをかごへ片付けていった。
「最近、俺さあ、サッカーがおもしろいんだ」
ボールをかごに放り投げながらタカシがひとりごとのようにいった。
「いや、別に今までがつまんなかったわけじゃねえんだ。
でも、モニカちゃんが来てから、ほんとにサッカーが楽しくてさあ。
ほら、ガキん頃って近所のやつらとサッカーやるじゃん。
誰が上手いとか下手とか関係なく、ただボール蹴ってるのが楽しいじゃん。
モニカちゃんとサッカーやってると、なんかあのときの感覚思い出すんだよ」
なんとなくタカシの言ってることは俺にもわかるような気がした。
ただ単純にうまくなりたかった。シュートを入れると嬉しかった。
いいプレイができると気持ちよかった。
なぜかモニカと一緒にプレイしていると、サッカーが楽しい。
ロナウジーニョのプレイにはサッカーの楽しさが詰まっている、というけれど、
俺たちにとってはモニカがちょうどそんな存在だった。
俺は、誰かにサッカーの楽しさを伝えられるような人間になれるだろうか。
「今日はここまで」とか
最後に日付とか入れてくれませんか?
レス入れていいのか迷っちゃうので。
198 :
U-名無しさん:2005/03/25(金) 23:25:10 ID:hyAk8e7n0
age
>>185 お前のせいでモニワにしか見えなくなった
責任取れ
200 :
U-名無しさん :2005/03/26(土) 20:11:41 ID:puiMCk8f0
hosyu
一方的。サンドバッグ。やりたい放題。
相変わらず代表のシュート練習が続いている。
俺たちは走らされ、倒され、弾き飛ばされ、ピッチに這いつくばっている。
しかし残り10分を切っているというのに点が入らない。
俺はふっとピッチの雰囲気が今までと微妙に変化しているのに気づいた。
どんなスポーツでも、こういう場のムードというのがある。
サッカーで言えば、誰も何も言わなくてもみんながノッてる時、
押し込まれているけどしっかり我慢している時とかいろいろある。
さっきまでピッチには、うちのチームの
いつまで持ちこたえられるだろうという先の見えない不安と、
代表の面々の、じっくり料理してやるぜと
いわんばかりの余裕がたちこめていた。
しかし、いまこの時、俺の肌が感じているピッチの気配は違う。
攻めても攻めても、打っても打っても、点が入らない。
そして残り時間も少なくなってきた。このままではやばい。
たとえ練習試合でも負けて許される相手ではない。
それに気づいてしまった代表のメンバーの雰囲気が変わってきた。焦りだ。
いくら修羅場をくぐり、ロスタイムで劇的な場面を演出してきた
日本代表でもこの時間で高校生相手に2点差をつけられて負けている、という
現実からとうとう逃れられなくなった。
その証拠に、向こうから発せられる声が微妙にとげとげしいものになっている。
無意識にそれを感じとったのか、うちの連中が出す声は逆に大きくなってきた。
流れが変わる。来る。もう一回チャンスが来る。
代表のコーナーキック。蹴るのは本山。
キーパーから曲がって逃げるボールを内藤がヘディングでクリア。
あいつ、ほんとうにたくましくなった。
前はウドの大木みたいだったのに、いつのまにか頼りになるDFになっている。
こぼれたボールが左サイドから下がって守備をしていた山口の足元に入る。
すかさず顔を上げた山口と目があう。
ボールをくれ!と目で叫ぶ。
山口が間髪いれずライナーのボールを蹴った。
周囲を確認。誰もいない。このボールは俺のものだ。
すばやく前線の様子を確認する。
センターサークルで張っているタカシには茶野と坪井の2枚がついている。
タカシはさっきと同じように右に動くとみせて、左へダッシュした。
左サイドではモニカがマークを一人連れて猛然と駆け上がってくる。
走りながらボールをトラップ。スピードを殺すことなくそのままドリブル。
「行けーーーー」という誰かの馬鹿でかい声。内藤か。
あいつがあんな大きな声を出すなんて。
もう一度ルックアップ。左サイドに流れたタカシに坪井がついていく。
茶野はハーフウェーの先で俺が突っ込んでくるのを待っている。
モニカが左からタカシの空けた中央のスペースへ走って来る。
その瞬間背後に誰かの気配。追ってくる。追いつかれる。来る。
とっさにボールの下に足を入れて軽く前に蹴る。
その瞬間にダンプに跳ね飛ばされたかと思うような衝撃。
下半身をなぎ払われる。俺の体は階段を転げ落ちるように芝生の上で回転する。
笛を吹くな!!俺は心の中で絶叫する。
今度こそ、このボールはモニカに届けるんだ。
俺はすぐさま立ち上がりボールを捜す。
チャージされる直前軽く浮かせたボールは、
ライン際イメージどおりの位置に転がっていた。
もう一度ボールを蹴って走り出す。笛は鳴らない。
審判が両手を伸ばしてアドバンテージをとっているのがちらりと見える。
てっきり笛が鳴るだろう、と思って動きを止めたのか、
代表のメンバーはもう誰も後ろから追ってこない。
牢獄から脱走に成功した囚人の気分だ。
いま、俺の目の前にはスペースという名の自由が広がっている。
ハーフウェーラインを超えた。茶野が俺の縦を切る。
その後ろをモニカが左サイドから一気に右へ駆けていく。
茶野にカットされないよう、一回中へドリブルで切り込むフェイクを入れてから、
タッチライン際、モニカの右足めがけて右のアウトサイドでパス。
茶野が伸ばした足の先、ボールはラインめがけて転がっていく。
そのボールにモニカが追いつく。だが、内にぴったりとマークが併走している。
右サイドの代表のスタッフがモニカを追いかけている。
だがモニカは落ち着いていた。そのまま、ライン際を一気にドリブルすると見せかけ、
ボールを右足のヒールで左足の後ろを通して内側へ送り出す。
マークしていたスタッフは、勢いがついていた分行き過ぎてしまう。
モニカがすかさず身を翻してスタッフを置き去りにし、中央へ切れ込んで持ち込む。
茶野が必死にモニカを追う。もうモニカを止められるのは茶野しかいない。
このまま突破されたら決定的だ。
DFとしてはたとえ女相手でも、ここはファール覚悟で止めるしかない場面。
茶野の手がモニカのユニフォームにかかる。
モニカの体が傾く。やはり力勝負ではきついのか、と思った次の瞬間、
ボールがふんわりと上がり、弧を描きながら
中央に走っていたどフリーの俺の足元に微笑みながら落ちてくる。
自分の頭越し、茶野を越える大きなループパス。
まったくなんて女だよ。いつボールを浮かせたんだ?
それよりも俺の位置がなぜわかる?背中に目がついてるとしか思えない。
中央にぽっかりと道が開いている。赤絨毯がゴールまで引いてあるのが見えるようだ。
ペナルティエリアがもうすぐ目の前だ。
ルックアップ。土肥の顔が見えた。しっかりとゴールマウスを見る。右足を振り上げる。
シュートと判断した茶野と坪井が両脇から飛び込んできて足を伸ばし、
シュートコースをふさごうとする。
大丈夫、完璧に見えている。
インパクトの瞬間力を抜く。キックフェイントで左へふんわりとしたボール。
タカシ。約束どおりのプレゼントだ。
坪井のマークが外れたタカシが完全にフリーだ。
オフサイドに引っかかったら殴るぞ、お前。
タカシがトラップで軽く前に出して、利き足の右でシュートできる位置にボールを置く。
覚悟を決めた土肥が飛び出してくるが、タカシは落ち着いている。
しっかりと土肥の動きを見てから、余裕を持って右足を振りぬいた。
きれいなライナーのボールがサイドネットを揺らす。ゴールを告げる笛が鳴った。
3点目。体からふっと力が抜ける。これで勝負は決まった。
タカシは右足のこぶしを高く突き上げてガッツポーズ。
そして誰に見せるのか、タッチラインのほうを向いてもう一度こぶしを突き上げる。
俺はタカシに後ろから飛びついて抱きつく。
「びびって外すんじゃねえかと冷や冷やしたぜ」
「バーカ。スターはああいうチャンスは外さないんだよ」
モニカも来る。
「タカシ、nice goal!」
モニカちゃん、ありがとーといいながらタカシがちゃっかり抱きついてやがる。
ま、いいか。1対1だったとはいえ代表のキーパー相手にきっちり決めたんだから、
それくらいのご褒美はあっていいだろう。
モニカとじゃれあうタカシが今まで見たこともないとびきりの笑顔をしている。
きっとこいつもこいつなりにこの試合にかけてたんだろうな。
自分の仕事を果たした男の顔をしている。
そのまましばらく3人でじゃれあうが、頃合いをみて自陣に戻る。
ふと顔を上げると、楢崎さんが手を叩いてくれている。
内藤が、山口が、田中が、満面の笑顔だ。
俺はもう一度、こぶしを軽く突き上げ、ガッツポーズを見せた。
残り時間ももうほとんどないはずだ。俺たちは日本代表に勝つ。
スタッフ駄目じゃん!
207 :
U-名無しさん:2005/03/27(日) 02:21:24 ID:8wi1YyiX0
このスレまだあったのかw
茶野も使えねーな!
>>123 >アレックスの上がった後、中澤がカバーに行ってサイドに引き出された時も、
>日本の失点は多いんだよ。
とほほ…。
ベッキーみたいのだったらいやだなぁ
ベッカムに恋してみたいな子がいいな
試合再開の笛。代表が顔色を失ったのが見てとれる。
この時間の3点差。もう勝敗は決している。
ロングボール。ドン引きの高田がヘッドでクリア。
そのまま、ボールが落ち着きなく動き回る。
ゴール前にロングボール。何人かがヘッドで競り合う。
唐突に審判の笛。
これは試合終了の笛じゃない。
はっとしてゴールを見ると、唇をかむ楢崎さんの姿と、
その後ろに転がっているボール。
手をひざについてうなだれる内藤たちDF。
この時間帯まで耐えに耐えたDF陣。
3点目が入って、張り詰めていた緊張が解けてしまったのだろう。
でも、それを責められる奴なんかいるわけない。
どうやらヘッドで決めたのは大黒か。
その大黒がすかさずゴールからボールをかきだして、
小脇に抱えてセンターサークルへ走る。
ああ。まだあきらめてないんだ。
いや、あきらめられないんだ。日本のすべてのサッカー選手の夢を
背負っている彼らは、たとえこの状況でもあきらめることは許されないんだ。
俺たちだけじゃない。みんな何かを背負ってピッチに立ってるんだ。
だがそこで長い笛。大黒の足が止まり、天を仰ぐ。
山口が、田中が、内藤が。いかにも精根尽き果てたと、ピッチにばたばたと座りこむ。
ばーか。まるで負けたみたいじゃないか。勝ったんだぞ。みんなで笑って喜ぼうぜ。
そんな俺もひざにまったく力が入らない。
集中が切れた今、自分の体もうまく操作できない。ゆっくり歩くのがやっとだ。
こんな感触は初めてだ。今日、俺は自分の限界を超えたんだろうか。
一歩、また一歩。みんなのほうに歩いていく。
モニカが座り込んでいる山口に手を伸ばす。その手を掴む笑顔の山口。
そして、今度は田中。モニカが手を伸ばして、順番にみんなを立たせてゆく。
だらしないやつらだ。あれじゃモニカが母親みてえじゃねえか。
そして俺たちは軽く喜びを分かち合った後、中央に並ぶ。
審判の指示に従って、タッチラインのほう、お客さんをむいて礼をした。
拍手が聞こえる。
その後、代表の選手たちと握手。
俺たちはこの人たちと対等に闘って、そして勝ったんだ。胸を張ろう。
ベンチに引き上げる俺たちにまた拍手。
ああ。俺は思う。きっと俺はこの時聞こえた拍手を一生忘れない。
ベンチに戻ったところで、みんなが喜びを爆発させる。
試合に出られなかったメンバーも、笑顔、また笑顔だ。
あちこちでガッツポーズ。暑苦しい抱擁。はしゃぎ声。
そんな喧騒の中、俺はベンチに腰をかけ、スパイクの紐を解く。
目の前に人が立つ気配。靴から手を離し顔を上げるとモニカがいた。
にこにことしている。かわいい笑顔だ。
「楽しかったか?」
目と目で通じ合える。そんなにたくさんの言葉はいらない。
「ウン、日本にきてヨカッタ」
俺はその言葉にゆっくりとうなづき返す。
冬の風が体に冷たい。
試合の終わったグラウンドに、夕闇が少しずつ近づきはじめていた。
試合が終わった両チームの選手が引き上げてくる。
行くか、と小熊は滝沢に声をかけた。滝沢がうなづく。
「そうだ、今日の試合、代表はビデオ撮ってるはずだよな。
滝沢、ダビングしてこっちにも一本回してもらうよう
頼んでおいてもらえないか」
「あの女の子をウチのチームに呼ぶつもりですか」
と滝沢はにやにやしている。
ばーか、小熊は言い返す。
「呼べるものなら呼びたいのはやまやまだがな・・
男だったらこのまま連れて帰りたいとこだぜ。
まあ、仮に呼べたとしても」
小熊は後ろを振り返る。
「あのお姉ちゃんには先約がいるみたいだから、
許可をもらわないとだめだろうけどな」
小熊の視線の先では上島が来た時と同じ優しい笑みを浮かべている。
上島さん、楽しくて仕方ないだろうな、
まったくこんな選手が沸いて出てきたら、監督としてはたまらないぜ・・
小熊は上島に軽く会釈すると、滝沢と肩を並べて歩き出した。
勝ったあああああああああああ
これからどんな展開が・・・(;´Д`)
そこで夢オチですよ。
>>205 >右足のこぶしを高く突き上げ
ヽ(`Д´)ノウワァァン
「右足のこぶし」ってなんだよおおおおおおおおおおおおおおお!
引き続き、お願いします。
220 :
U-名無しさん:2005/03/28(月) 13:00:54 ID:n/KioamJ0
age
221 :
まちこ:2005/03/28(月) 13:07:57 ID:BDs8PrQh0
>>219 福西選手だって、こぶしが右足じゃないですか。
なにがいけないんですか?
>>221 ハッ!そうか!
そうだったな。スマンカッタ。
前足かw
「龍時」が未完のいま、このスレだけが楽しみだ。
けたたましいベルの音。
ああ、俺は寝てるんだ。いま、起きるんだ。
少しずつ意識が戻ってくる。とりあえず目覚ましを止める。
もう起きる時間だ。ベッドの上に起き上がる。
普段と同じ部屋なのに、なんか妙に現実味がない。
寝すぎたからかな・・なにしろ試合が終わった後、
まっすぐ家に帰って風呂入って飯食ってすぐ寝ちまったからな。
あんなに早く寝たのは、何年ぶりだろう?
昨日の試合・・。なんか夢のような気がする。
俺たちは日本代表に3−1で勝った。
モニカが決め、俺が決め、タカシが決めた。
俺たちが日本代表に勝つなんて、ほんと夢みたいな出来事だ。
しかしそれが昨日確かに起きたことなのは、俺の体の痛みが証明してくれている。
とりあえずベッドに起き上がり、体を動かしてみる。
あちこちで筋肉がきしんでいる。錆び付いたロボットのようだ。
1試合やっただけでこんなに体が重いのは記憶にない。
日本代表が相手だったし、俺自身も限界近くまで頑張ってたということか。
心と体に激励のムチを入れて、ベッドを抜け出した。台所へ行く。
台所ではいつものようにおふくろが飯を用意してくれていた。
「ニュース見た?昨日の試合すごいことになってるわよ」
顔をあわせるなりおふくろが言う。
おふくろは普段俺がサッカーをしていることにまったく興味がない。
少年団の頃は、熱心に練習を見に来たり、
自分のガキにあれやこれやとアドバイスしてたり、
はたまた熱心にビデオ撮影したりする親がわんさかといた。。
そのたびにうちとどうしてこんなに違うんだろう、と子供心に思ったものだ。
それはその後も変わらず、トレセンやら遠征やらに呼ばれるようになっても、
うちの親はまったく関心を示さない。
ちゃんと楽しくサッカーをやっているなら、
上手下手はどうでもいいという考えなのは俺もわかってはいるのだが。
そのおふくろが、こんなふうにサッカーの話をするのは珍しい。
「帰ってきてすぐ寝ちゃったから・・テレビつけてみなさいよ。大騒ぎよ」
いわれるまでもなく俺はリモコンをとって、テレビのスイッチを入れる。
ちょうど朝の情報番組がはじまったところだ。
見慣れた顔ぶれが、いかにも売り物っぽいさわやかな笑顔を振りまいている。
てっきり政治かなんかのニュースからはじまると思っていたら、
「今日はサッカー日本代表のニュースからお伝えしたいと思います」
と来たから驚いた。
「北朝鮮戦を控えた日本代表は、昨日、埼玉南高校との練習試合を
行いましたが、その模様を早速ごらんいただきましょう」
早速画面はVTRに切り替わる。テレビスタッフが遠くから映したのか、
普段のサッカー中継とは全然違う、ほぼピッチと水平の位置からのアングル。
「なんと先制したのは埼玉南高校。ゴール前で得たフリーキックを直接・・」
画面の中には代表の壁に向かって立つモニカと俺の姿。
テレビの中でモニカが白い足を振りぬくと、
恐ろしく変化する軌道でボールがゴールに突き刺さった。
なんだよ、これ。俺は人事のように絶句した。
昨日間近で見たときも凄いとは思ったが、改めてビデオで見ると、
まるで中村俊輔が蹴ったような、えぐい落ちっぷりだ。
川口がとれなかったのもなんら不思議はない。
一瞬、俺たちの喜ぶカットが映る。
「日本代表も反撃に出ますが、決定力を欠き得点できません・・」
代表のシュートシーンがいくつか流れる。
玉田が頭を抱え、鈴木が唇をかむ。
「逆に前半終了間際、埼玉南高校は鮮やかなパスワークから攻め込むと、
日本代表の隙をついた見事な追加点」
画面はモニカがボールを持ったところからはじまり、スルーパス。
そのスルーパスを受けた俺が、ゴールに叩き込む。
我ながらすばらしいゴールだ。リプレイを10回ぐらい流す価値はある。
「これ、決めたのお前だよね。ちゃんと点とったんだ。」
おふくろも一緒に画面を見ている。
「でも、えらいのはあなたより、あのパス出した子のほうだね。うまいね、あの子」
おふくろ、代表と試合することの意味、全然わかってないだろ。
ゴールを決めるってすごいことなんだぞ、もうちょい感心しろ。
でも言ってることは正しいので、俺は黙ってテレビを見る。
「前半はこのまま2−0で終了。
後半はメンバーを入れ替えて、サブ組が出場しました」
大黒や松田の抜きの絵が入る。
「後半は日本代表が一方的に攻め立てますが、
高校生チームのキーパーを務めた楢崎のファインセーブ、
そして高校生チームのディフェンスの頑張りもあり、ゴールが奪えません」
雨あられと降り注ぐ代表のシュート。こうやってビデオで見せられると、
点が入らなかったのがほんと不思議なくらい、決定機、また決定機の連発だ。
どさくさにまぎれて守備に奔走する内藤の姿がアップで映る。
地味キャラのくせにいいとことりやがって。
勘違いしないように今日会ったら、釘をさしとこう。
「そしてなんと試合終了間際、
代表のコーナーキックから、埼玉南高校のカウンター」
画面では、ハーフウェーを越えた俺が、モニカへパス。
モニカがあっさりとマークを捌いて持ち込み、
最後は茶野をひきつけて、俺へのループパス。
俺はゴール正面でフェイントを入れて、左のタカシへ。
タカシが鋭くゴールに突き刺した。
うめえ・・・。流れるようなパスワーク。
自分たちのプレイなのに俺は思わず感動のため息を洩らしていた。
モニカが一番重要なプレイをしたのはもちろんだが、
全体の流れを見てもボールの動きが早い。
自分たちのプレイだとは思えないぐらい、華麗なゴールだった。
「ほんとにあの女の子はうまいねえ。お前なんか彼女のおまけだね」
おふくろまでがしみじみとつぶやいているが、そのとおりなので返す言葉がない。
「日本代表は最後、大黒のヘディングシュートで1点を返すのがやっと」
大黒のゴールシーン。
「結局3−1で日本代表は高校生に敗れ、北朝鮮戦に向けて、
大いに不安の残る内容となりました」
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232 :
U-名無しさん:2005/03/29(火) 02:38:18 ID:gcI5D5F90
>>230 俺もその記事見て真っ先に同じこと思った。
我ながら毒されてるなとか思ったけど、やっぱりそれだけの内容があるね。
展開も一区切り、この調子でがんばってくれ!!
というか代表も・・・
高校生相手に前半1点しか取れないフル代表・・・
勝ってもうれしくないじゃん(^_^;)
( ゚∀゚)o彡゚ もにか!もなか!
宮本をはじめ、何人かの選手のインタビューの様子が映し出される。
連携に関して修正しなければいけないポイントが多い。
守備のポイントについて互いに選手同士でよく話しあっていかないと。
相手が引いたときにどう崩すかという意思統一が必要。
代表の選手たちはみな沈痛な面持ちで修正点をかわるがわる口にしていた。
続いてテレビの中では元Jリーグの選手が、解説をはじめた。
ジーコジャパンの問題点とやら。俺には関係のない話なので、
冷え始めた手元のトーストをいそいでぱくつく。
思いのほか解説のコーナーは短く終わった。
画面は切り替わり進行役の男性司会者が、
それでは今日のスポーツ紙を見てみましょう、というと
画面には、スポーツ新聞の一面がずらりと映し出された。
どの紙面も大きな文字で扇情的な見出しが躍っている。
「ジーコ赤っ恥!!高校生に負けたぁ〜〜」
「代表弱ぇーー 高校生に3−1完敗」
これがプロのサッカー選手なんだな、と俺は唐突に思う。
いい結果が出れば、あれやこれやとほめそやされ、
悪い結果が出れば容赦なく、手加減なくボロクソに叩かれる。
これがプロなんだ、プロの世界の厳しさなんだ。
思わず背筋を伸ばしてしまう。
司会者がいくつかの記事を紹介し、もうこれで終わりだろうと思ったら、
「もうひとつ、この試合ではあっと驚く出来事がありました。
こちらをごらんいただきましょう」
司会者がレバーかなんかを操作すると、画面の中の新聞が回転する。
さっきは一面、今度はどうやら裏面らしいが・・
俺はそこに並べた紙面を見て、思わず飲んでいた紅茶をこぼしそうになる。
そこにはズラリとモニカの写真が並んでいたのだ。
「すっげえ、スーパー女子高生 代表撃沈だぁ」
「スーパーFK突き刺した 逆輸入秘密兵器は女子高生」
1面に匹敵するような意味のわからない見出しが並んでいる。司会者の声がかぶさる。
「昨日の練習試合、なんと埼玉南高校には女の子が出場していたのです。
名前はモニカちゃん、アメリカからの帰国子女です。
そして、このモニカちゃんが、代表を手玉に取ってしまいます」
さっきのフリーキックがもう一度流される。そして俺へのスルーパス。
「ゴールを決め、アシストも記録したばかりか、
テクニックでも代表を完全に翻弄」
試合中のボールをキープするシーン、
そして3点目へ至るシーンで茶野のマークを受けながらループパスを出すシーン。
かつてヴェルディの森本がJ最年少ゴールを決めたとき、
まんまと料理された茶野があれこれ揶揄されていたが、
茶野にしてみたら悪夢は繰り返すという感じだろう。
こんなもん全国放送でこれみよがしに取り上げられたら相当へこむ。
俺は心底茶野に同情した。
テレビの中ではいつのまにか、普段サッカーを見てるとはとても思えない
コメンテーターと称する人々が映っている。
ひとりが
「卓球の愛ちゃん、フィギュアのミキティに、
このモニカちゃんといい、もうすっかり時代は女子高生ですね」
と訳わからんことをいうと他の連中が深くうなづいてる。
「しかし日本代表もほんと情けないですね。
プロが女子高生に負けるなんてあっちゃいけないですよ」
まあそうなんだが、じゃあお前モニカとサッカーしてみろよ。
毎日、モニカに部活で手玉に取られてる俺としては、そこは代表を弁護したい。
いかにもサッカーを知らない感じのする中年の女性コメンテーターが
「このモニカちゃんを北朝鮮戦に出すことはできないんですか」
できるわけないだろ、と心の中で突っ込みを入れたが、
素人の人があのVTRを見たら、そう思うのも無理はない。
いや、むしろそう思うのが普通の考え方か、と思い直す。
司会者が、残念ですが・・みたいにフォロー。
だよな、と納得してると、ところがですね、と司会者が妙に力を入れる。
このVTRを見てください、という司会者の言葉とともに、
画面にはどこかで見たことのある中年の男の顔。
一瞬、考えるが画面下に映し出されたテロップを見てはっと気づく。
「アメリカでも評判の選手だったと聞いてますしね。
実力については、今日皆さんもごらんになったとおりだと思います。
はい、3月にはオーストラリア遠征もありますので、
可能ならばそこで一度呼んで見てみたいと思ってます」
この顔はそう、女子日本代表、なでしこジャパンの上島監督だ。
呼ぶってことは、なでしこジャパン、女子日本代表にモニカを呼ぶってことか?
「モニカちゃんは、お母さんが日本人で、日本国籍を持ってるんですが、
アメリカでの代表歴がないので、なんとなでしこジャパンに選出可能なんです。
春には日本代表として、また私たちにそのプレイを見せてくれそうです」
司会者の言葉に無邪気に喜ぶスタジオのコメンテーターたち。
そのあと、そのへんの街角とレベルの変わらないやりとり。
俺はあまりの急展開に呆然として、テレビの音がよく聞こえない。
そんな中、コメンテーターが言った。
「でも、この子は人気出ますよ。これだけサッカー上手くて、
顔もかわいいし、スタイルも抜群。これからほんと楽しみですね」
それを聞いたおふくろが俺の隣で
「そうそう。この子かわいいもん。
なんかスターの雰囲気あるし。絶対に人気出るわ」
細木数子ばりの口調で断言した。
おふくろのこういう言葉は、それが芸能人の離婚であれ、
政治家の失脚であれ、不思議と当たるのだ。
茶野・・・
2ちゃんで叩かれまくるだろうなw
それにしても今後の展開が読めねぇ
モニカを巡っての日米争奪戦
ライス緊急来日で、モニカのなでしこ入りにストップをかける
小泉「冷静に、冷静にね」
モニカちゃん とうとう俺の元から旅立つのか・・・゚ + 。・゚・。・ヽ(゚´Д`゚)ノ ゜゜。ウァァァン
242 :
U-名無しさん:2005/03/31(木) 00:00:48 ID:FEZ2rq5r0
age
けっこう面白いけど、まとめサイト作ってくれないと全部は読めないな。
あと、作者サンはこの作品は「俺」を主人公の名前に置き換えても、
きちんと成立してる、ってことに気づいているのだろうか?
第三者視点混ざったとこに違和感あるのはちょっと惜しい気がした。
昨日はモニカがいないからあんだけ苦戦した。
>>243 作ってみてもいいけど、どの程度までまとめればいいのかな?
小説本編のみそのままコピペでいいなら今から作ってもいいよ。
そんなに大した量ではないと思うが。
朝、おふくろにねだった小遣いで、
俺は通学路の途中のコンビニで、スポーツ新聞を全紙買った。
そしてようやく俺は、昨日の試合が俺の想像を遥かに超える
ビッグニュースとして扱われていることを理解した。
政治的な意味からも注目を集めている北朝鮮戦の直前ということもあるだろう。
大事な試合を控えた代表が高校生に負ける、という出来事のわかりやすさもあるだろう。
しかしなんといっても、このニュースの魅力はモニカの存在だった。
まだ17歳の女子高生が代表をばったばったと斬り捨てた痛快さ。
落ち着いて考えればマスコミが飛びつかないはずがなかったのだ。
驚くべきことに、新聞はもうモニカについても情報を手に入れていた。
ある新聞ではこんなふうに書いていた。
「アメリカの女子サッカー関係者の間では、
先日引退した女子サッカーの第一人者の「ミアハムの継承者」として、
次代の女子サッカーを担う選手として期待を一身に集めていたという。
アメリカのサッカー協会首脳が、
「アメリカはついにサッカーにおいても、世界を驚嘆させる光り輝く才能を産み出した。
ただその才能は、女性の体に宿っている」と性差別すれすれの表現で惜しんだほどだ」
また別の新聞。
「若年層の発掘に定評のあるプレミアリーグとブンデスリーガのあるビッグクラブが、
中学生時代の彼女を見て、すぐさま契約のオファーを出したという秘話がある。
女性だということに気づいた彼らは、オファーを取り下げたが、
それでもあきらめきれないという表情だったという」
「女子サッカーの人気が高いアメリカでも、近年は財政難による女子プロリーグの休止、
そしてスター選手だったミアハムの引退と、厳しい状況になっている。
それを打破し、再び女子サッカーを盛り上げるための起爆剤として、
モニカちゃんには多くの期待がかけられていただけに、
両親の仕事の関係で日本へ移住したことについて、
アメリカの女子サッカー関係者のショックは非常に大きいものがあるようだ。
「プレイ面はもちろん、あのルックスが産み出すスター性。
戦力と人気、どっちの面から見ても大きな損失だ」と、ある関係者は沈鬱に語った」
248 :
245:2005/03/31(木) 23:32:13 ID:0paQKnsI0
まぁいいや、作ろーっと。
本編のコピペのみの予定だけど、意見あったら言ってちょ。
1は最後まで頑張ってくれ。
吉川晃二にテーマソング歌ってもらおうぜ
250 :
U-名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 00:48:36 ID:USC81SPP0
>>248 まとめサイトって商用じゃなければ、ひろゆきの許可はいらんのだよな。
ただ、
>>1が無断転載を拒否する権利はあるから、ほんの僅かの覚悟は必要だぞw
個人的にはレスが増えると鬱陶しいので、連載が終わってからにして欲しいのだが。
251 :
245:皇紀2665/04/01(金) 02:21:17 ID:r/TYwPr/0
>>250 確かにちょっと気になるんだけど、なにしろ1には小説本編以外には
レスをしないという信念を感じるからなぁw
なにか気になることがある時だけはレスしてくれ
>>1 んじゃあ公開は連載終わってからにするか?
いつ終わるかわからんのが心配だけど。
252 :
U-名無しさん:皇紀2665/04/01(金) 02:40:49 ID:USC81SPP0
>>251 じゃあ、間をとって(?)このスレが1000に達した時ってのはどう?
まあ、
>>1が文句言わないなら好きにしておくれ。
モニカが好きです(#^.^#)
ぞうさんも好きです。
254 :
245:J暦13/04/01(金) 08:08:01 ID:r/TYwPr/0
どっか無料でいいサーバー教えて
255 :
245:J暦13/04/01(金) 10:22:15 ID:r/TYwPr/0
一気に作り終えちゃったから公開してもいい?
256 :
245:J暦13/04/01(金) 11:42:30 ID:r/TYwPr/0
>>255 自己レス。
一応1氏がいつも出現する時間までは待ったほうがよさそうだね。
あとトリップいる?>俺
机の上に広げたスポーツ新聞をひととおり読み終わると、
思わず口からため息がもれた。
知らなかった。そこまでアメリカで期待をかけられていた選手だったなんて。
一緒にいるようになってしばらく経つけど、
俺はアメリカ時代のモニカのことをなんにも知らなかったのだ。
ただ記事の内容はよく考えれば当然のことだった。
あれだけのテクニックを持っている選手が、埋もれるなんてことはありえない。
新聞を広げると、またモニカについて書いた記事があった。
「もちろん、これほどの選手が日本に来たことについて、
日本サッカー協会も既に情報は収集していた模様だ。
アメリカでの代表歴がなく、なでしこジャパン入りに支障がないことも確認済みだ。
日本代表との練習試合では、女子代表の上島監督もさいたま市に足を運び、
モニカちゃんのプレーを直接その目でチェックした。
明言こそしなかったが、目的がモニカちゃんだったのは間違いない」
なんか事態の急展開というやつについていけない。
口から思わず深いため息がもれる。
学校の中も今日は朝から大騒ぎだ。俺も外にいるとあちこちから
声をかけられっぱなしなので、こうして教室の中の自分の机に避難している。
同級生の話を聞くと、インターネットでもすごいことになっているらしい。
有名なインターネットの掲示板では、昨日の試合の様子がニュースで流れるや否や、
ジーコ解任派と擁護派が激論を繰り広げはじめ、
北朝鮮戦はもうだめだ、ワールドカップもだめだ、という悲観論が一気に蔓延。
日本のサッカーこれでいいのか、と議論は果てしなく広がり続け、
もはや収拾のつかない状況になっているらしい。
その一方で、モニカの人気もものすごいらしく、
「モニカタソで(*´д`)ハァハァするスレ」というモニカについて話すトピックができると、
あっという間にすさまじい量の書き込みがあったらしい。
歯車というのは回りだすと止まらないものなんだな、と妙なところで実感した。
そこに一段と騒がしい声。顔を上げると、モニカが教室の中に入ってくるところだった。
一番後ろに並んでいる俺とモニカの机。モニカが机の間を歩いてくる。
顔を見ると唇をきゅっと結んでいる。ご機嫌斜めのようだ。
どうした?と声をかける。それくらいの言葉は雰囲気で通じる。
モニカは俺の顔を見ると、表情を和らげて、オハヨウといった後、
眉を寄せて、カメラを持って写真を撮る構えをした。
ん??意味がわからず俺がきょとんとしていると、
モニカと一緒に入ってきた女子が、
「モニカちゃん、知らない人にいきなり写真を撮られたみたいなの。
マスコミなのか、それとも関係ないただの人かわからないけど・・・」
いきなり写真を撮られりゃ誰だっていい気はしない。
俺たちは芸能人じゃないんだし・・と思いかけて、この大騒ぎに気づく。
もうあの騒ぎの中にいる連中にしてみれば、モニカは芸能人と変わりがないのだろう。
俺の気分がちょっと暗くなる。そんな自分自身のもやもやを吹き飛ばすように、
俺はモニカに笑って喝を入れる。
「そんなの気にすんなよ、元気出そうぜ。今日も練習サボるなよ」
言葉はわからなくても意味は通じる。モニカがかすかに微笑んだ。
262 :
U-名無しさん:J暦13年,2005/04/02(土) 22:19:44 ID:6W1p+q430
age
264 :
U-名無しさん:J暦13年,2005/04/03(日) 09:42:39 ID:Wt3O9P+M0
>>264 やっぱりそうかぁ
今見たら見れたからデリられてる訳じゃなさそうなんだけどね。
266 :
U-名無しさん:J暦13年,2005/04/03(日) 17:10:37 ID:Wt3O9P+M0
個人サーバーだからじゃねーの?
妙にサービスいい無料サーバーはだいたい個人が自宅でやってたりする。
267 :
U-名無しさん:J暦13年,2005/04/03(日) 23:23:47 ID:jOSCZ37h0
>>263 乙。
では今後極力、雑談はそちらで・・・
やれやれ、メディアというのはほんとおそろしいもんだな・・
小熊は家のダイニングでテレビを見ながらしみじみと心の中で呟いた。
普段サッカーなんかまったく報じない昼の情報番組が、
昨日の練習試合とモニカのネタをトップに持ってきている。
川内さんの筋書き通りというわけか・・・。
小熊は妻が入れてくれたコーヒーを口に運ぶ。
昨日試合観戦に誘ったときに滝沢が口にした「仕掛け」の中身が
小熊にはもうだいたいつかめていた。
川内キャプテンの公約とも言えるキャプテンズミッションのひとつとして、
女子サッカーの活性化があげられていることは周知の事実である。
アテネ五輪でベスト8に進出し、競技力の向上は実現したが、
一方、女子サッカーをとりまく環境はいまだ厳しいものがある。
男子もJクラブの経営は相変わらず苦しいが、
徐々にリーグのクラブ数も増え、裾野は確かに広がっている。
地域密着の理念、企業からの独立も、少しずつではあるが実現しつつある。
だが、女子選手たちの置かれた環境は、お世辞にも恵まれたとはいえない。
アテネで活躍したFWの荒川はスーパーのレジ打ちのパートをしている、
というのでずいぶん話題となったが、
あのアテネでの活躍後も荒川はレジ打ちのパートを続けているのである。
荒川だけではない。多くの選手が驚くほど貧弱な環境でプレイしているのが現実なのだ。
今年、Lリーグからは1社が撤退した。
幸いに今回は代わりにスポンサードしてくれる企業が見つかって、
チームの解散という事態は避けられたが、
女子サッカーの置かれている状況はそれほどまでに脆弱なのである。
女子サッカーを発展させ、日本に根付かせる。
その目的のためには女子サッカーに人の目を集め続けなければいけない・・・
テレビではモニカのVTRが流れている。
岩崎が顧問をしているんだ、当然サッカー協会との連絡はとっていただろう。
当然モニカがアメリカでどの程度のレベルの選手だったかは調査したはずだ。
抜群の実力に加え、マスコミ受けするルックスと外国人というもの珍しさ。
女子サッカーにとってのどから手が出るほど欲しいスターだ。
ひとりのスターがどれほどスポーツのあり方を変えてしまうかは、
古くはミスターのプロ野球にはじまり、最近では宮里藍の活躍する女子ゴルフを見ても
改めて説明の必要がないほどだ。
スターが生まれることで観客が増え、興行がスムースに成り立つ。
当然、協会としては、その露出方法について考えたはずだ。
それが代表との練習試合。それ以上何かをする必要はない。
彼女の実力なら適当な舞台をあてがえば、あとは自然と輝きを放ってくれる。
それが本物のスターというものだ。
もっともその輝きは少し強烈過ぎたがな・・・小熊はひとり苦笑する。
>>266 文字広告のみってところが意外と少ないんだよなー。
テキスト中心だからFC2(?)のチカチカ文字広告とかバナー広告は
避けたいんだよなー。
もうちょっと様子見てみるけど、それでもだめなら
忍者で妥協するしかないのか…orz
日本人の血が混ざってブロンドってありえるの?
272 :
U-名無しさん:2005/04/04(月) 10:49:38 ID:AdbuAiJ90
273 :
U-名無しさん:2005/04/04(月) 12:21:11 ID:d2/aMf380 BE:76999537-
ありえるの。
まさかキャプテンも代表が負けるとは夢にも思ってなかっただろう。
しかし結果としてよりセンセーショナルな話題となり、マスコミは飛びついた。
これからのなでしこジャパンの活動をマスコミは我先にフォローするだろう。
そしてこのニュースを見た多くのサッカーが好きな女子中学生、高校生が、
自分たちの可能性について希望を持つようになるだろう。
それは女子サッカーの競技力向上はもちろん、
彼女たちが観客として、そしていつか母親としても、
日本でのサッカーというスポーツの裾野を広げることにつながっていく。
「ほんとすごいわね、この女の子。モニカちゃんって言うんだ」
妻がテレビを見ながらにこにこと話す。
「男相手にここまで対等にやっちゃうんだもんね。気分いいわあ」
妻の無邪気な横顔を見ながら、小熊は腑に落ちるものがあった。
そうか、女性にしてみると、女性が男と対等に、
いや男以上に活躍するというのは痛快極まりないことなのだ。
一応、男女平等とされる日本の社会でも、現実には
女性はいろいろな理不尽なハンデを負っているのが現実である。
スポーツという正々堂々とした勝負の場で、男をなぎ倒す痛快さ。
きっと世の女性の多くがこのニュースに快哉を叫んでいるのだろう。
しかも女子高生が相手じゃ、嫉妬の感情の湧きようもない。
無条件で諸手をあげて、受け入れられる素地があるわけだ。
いきなりなでしこジャパンでデビューさせてたら、こういう反応はなかったかもな。
「わたしもサッカーやってみようかしら。そしたらあなた教えてくれるでしょ」
若く甘かった時代とは大違いな妻の腹のラインに目を向けると、
小熊はそっとためいきをついた。
「おい、出かけてくる」
どこへ行くの、という妻の声に、協会へ、と短く答える。
昨日の試合のビデオが届いているはずだ。
春が来るのはまだなんだろうけど、
今日のグラウンドは太陽に照らされてぽかぽかと暖かい。
今日もいつもと同じように放課後の練習が始まる。
日本代表との練習試合からもう数週間が過ぎた。
あの試合の後、しばらくは学校の周辺にもマスコミがいたりしたが、
もうさすがに姿を見ることもなくなった。
日本代表は苦戦しながらも、ロスタイム大黒の劇的なゴールで北朝鮮を下した。
テレビで観戦していた俺は、大黒の反転シュートが決まった瞬間、
俺たちの練習試合で点を入れた後、ボールを抱えて走っていた姿を思い出した。
あきらめないことの大切さ。俺たちはあの試合から多くのことを学んだ。
練習試合で日本代表に勝った話はしばらく学校中の話題だったが、
さすがにもうみんな飽きてきた。そんなものだ。
だから、俺たちはいつもと変わりなく練習している。
変わりなく?そう俺たちの目に見える範囲では。
でも、俺たちを取り巻く環境はあの試合の前と後では変化している。
そう、モニカの人気は下火になるどころか、ますます過熱する一方だ。
学校にもインタビューの申し込みが山のように来たらしいが、
岩崎とモニカのご両親が話し合った結果、
取材についてはすべてお断りすることにしたらしい。
だがマスコミはモニカの一挙手一投足を追っている。
276 :
U-名無しさん:2005/04/05(火) 22:22:20 ID:CkP3EEG80
練習試合の後、モニカには地元のLリーグチーム、さいたまレイナスから
練習参加のオファーが来た。
元々厳密にはうちのサッカー部の部員ではなかったモニカが、
レイナスの練習に参加するのには何の障害もない。
といってもLリーグチームは練習場を確保するのも苦労する状況が続いている。
だからモニカは放課後はほとんど俺たちと一緒に練習をしていた。
モニカを巡る環境の変化はそれだけにとどまらない。
あの練習試合から一週間後。
2月下旬からJヴィレッジで行われる女子日本代表の合宿のメンバーが、
日本サッカー協会から発表された。
澤をはじめとしたアテネ組の名前がずらりと並ぶ中、
そこにモニカの名前が記されていた。
五日前からはじまった合宿に参加するため、モニカは今Jヴィレッジに行っている。
マスコミがモニカを追って一斉に福島に押しよせたのはいうまでもない。
スポーツニュースでは澤や小林たちに混じってボールを蹴るモニカの姿が流れていた。
合宿が終わると、女子日本代表はオーストラリア遠征を予定している。
おそらくモニカはその遠征にも帯同することになるだろう、と報じていた。
ついに代表
モニカタソはぁはぁ
女子代表チームの練習後シャワーシーンをぜひ。
279 :
:2005/04/06(水) 12:32:42 ID:qtc5+Tm00
澤のシャワーシーンをぜひ
そいや女子代表に高校生っていなかったっけ
「おい、気合入ってないぞ。怪我しないよう気をつけろよ」
タカシの声にはっとする。うっかりぼんやりしてたらしい。
「モニカちゃんがいなくてさみしいのはわかるけどよ」
タカシが楽しそうにニヤニヤしている。
わかってるよ、と答えたものの、そういうタカシだって
ここ数日は練習しててもどこかつまらなそうだ。
いや、タカシだけじゃない。ほとんどの部員がそんな感じだ。
あいつの存在がこんなにでっかくなってたなんてなあ・・・
「ほんと怪我には気をつけてくれよ。週末は練習試合もあるんだし」
別の声。振り向くと山口だ。
え、今週って練習試合だったっけ?思わず聞き返すと、山口が頭を抱えた。
「お前なあ・・ちゃんと俺ミーティングで言ったぞ。
しかもどことやるかわかってんのか。市舟だぞ。市立舟橋。
あの超強豪がわざわざうちに来てくれるんだぞ、しっかりしてくれよ、司令塔」
これもモニカちゃん効果ってやつだよな、とタカシが呟く。
あの試合の後、うちの練習試合の相手は一気に豪華になった。
今までだったらお願いするのが気が引けるような強豪どころから、
申し込みが次々ときているらしい。
モニカ目当て、話のタネというのもあるだろうが、
強い相手とやらせてもらえるというのはうちにとってありがたい話だった。
そうだな、モニカに負けないようしっかり練習しなくちゃな。
そう自分に言い聞かせてボールを蹴りかけたところで、
ふと職員室のベランダに立つ岩崎の姿が目に入る。
グラウンドとは距離があるから俺たちに何か指示を出そうというわけではない。
俺たちがサボってないのか見ている?いや岩崎はそういうタイプの監督ではない。
よく見ると岩崎の隣に誰かもう一人男が立って、一緒にこっちを見ている。
誰だろう?見覚えのない人影だ。うちの先生じゃなさそうだ。
近くの学校のサッカー部の顧問かな?
「おーい、練習やるぞおー」というタカシの声。
いまいくよ、と返事して俺はタカシのほうへ走っていった。
布か?
284 :
U-名無しさん:2005/04/07(木) 13:20:56 ID:8gfGDyxS0
人間力かぁぁぁぁぁぁl
「まったくどの子を見ても、俺たちのときとは比較にならないほどうまいな・・」
小熊はグラウンドでボールを蹴る部員たちを眺めながら、思わず呟いた。
小熊の立場上、各世代のトップクラスの子どもたちを見る機会は多い。
彼らがうまいのは当たり前だ。小熊の前に出てくるまでに、
何重ものふるいにかけられて、セレクトされているのだから。
だがこうやって普通の公立高校の、ふるいにかけられていない
普通の子どもたちの練習を目にする機会というのは意外とないものだ。
それでも、小熊が同じ年でグラウンドを走っていた頃とは、レベルが違っていた。
底辺がまちがいなく底上げされていることを小熊は実感する。
それがJリーグ発足後に果たされた日本サッカーの進歩だった。
「いまの時代だったら、俺ももっとスマートな
ストライカーになっていたかもしれないな」
「小熊さんが?」岩崎が笑う。
「いや、いくら時代が変わってもそれは無理でしょう」
小熊は現役時代、自他共に認める泥臭いプレイヤーだった。
まともに芯を食って決めたシュートより、
体のどこかにあてて無理矢理押し込んだゴールのほうが多いと言われていた。
それは高校、大学、実業団。そして日本代表でも、
小熊の選手生活中変わることのない特徴だった。
誰も体系だててテクニックを教えてくれない時代。
小熊はもちろん影で技術の習得にも懸命に取り組んでいたが、
最後に頼るのはガッツしかなかった。
ゴール前、自分よりでかい相手にしがみついて、
1センチでも1ミリでも、ボールに先に触る。小熊にはそれしかなかった。
軽い怪我は試合のたびにしていた。幸いに大きな怪我をせずにすんだのは、
バランスのよい体に産んでくれた母親のおかげだと今でも小熊は感謝している。
「でもね、指導者になってみると、
小熊さんみたいな選手が無性に欲しくなるんですよ。
テクニックなんかある程度持っていてくれればいい。
仲間が自分に出してくれたボールの重み、ひとつひとつのパスの重み。
ひとつのパスの重みがわかる選手というのは、ある意味理想の選手ですよ」
小熊は練習風景をじっと眺めている。
滝沢も岩崎も、いつも俺のためにパスを出してくれた。
ゴール前で振り返れば、必ず滝沢と、岩崎と目があった。
どんなときもこいつらは俺を信じてパスを出してくれた。
こいつらが出してくれたパスをゴールに決めることが俺のサッカーのスタート地点だった。
「この前の試合、見せてもらったけどいいチームじゃないか。
マスコミはお嬢ちゃんにばかり目がいってたが・・」
ありがとうございます、と岩崎が応じる。
「うちは普通の公立高校ですから、生徒集めはできないんですが。
今年は奇跡的にいい選手が揃ってくれました」
「あのFWの子はレッズのジュニアユースにいたんだって?」
「ええ」
岩崎の視線の先で、大柄な男の子がボールを蹴っている。
「レッズさんのほうでは上に上げなかったみたいですね。
理由はよく知りませんが・・。
ただ、うちに来てからは、本人も自覚を持ってやってますし、伸びてますよ」
そういえば小熊と元チームメートだったか。
考査があるのでしばらく更新できません。悪しからず。
今をときめくレッジーナの中村俊輔も、横浜のジュニアユースから
昇格できなかった、という有名なエピソードがある。
俊輔の場合、高校サッカーで実力をアピールし、J入りを果たしたが、
それほどこの時期の才能の見極めというのは難しいものなのだ。
それは小熊自身も常日頃、自らを戒めているところでもある。
「そして10番の彼。樋口広樹か」
「ええ。正直、予想外でしたね。ここまでいい選手になるとは・・」
ふたりの視線の先で、FWの男の子とボールリフティングをしている。
ボールが羽根突きの羽根のように二人の間をリズムよく行き来している。
「中学時代は特に目立った活躍もないようだが・・」
小熊が尋ねる。彼についてはもうひととおりのことは調べ上げている。
「ええ、中学のサッカー部はずいぶん弱かったみたいですね。
大会でも実績ほとんどありませんし・・
選抜チームに呼ばれることもなかったようですね」
やはりそうだったか、と小熊は納得する。
いいねぇ。この展開。
トレセン入りか?
292 :
U-名無しさん:2005/04/10(日) 00:30:12 ID:vTxjoYVb0
age
主人公=樋口広樹でおk?
主人公とモニカタンはこれから良い感じになるの?
日本でも若年層の育成のシステムというのは相当進んでいる。
素質を感じさせる子どもたちは早い段階で選抜され、
より高度なトレーニングを行う仕組みが確立されてきた。
いま、Jリーグに入ってくる選手の多くは、子どもの段階から
そういう選抜をくぐりぬけてきた、いわばサッカーエリートなのだ。
だが、ここ数年U-20代表を率いる人間として、
小熊は選抜された者ゆえの弱さ、脆さを強く感じるようになった。
実力で格下の相手に苦戦する。
テクニックで遥かに凌駕する相手にボールを奪われる。
普通にやれば残せる結果が残せない。
素質、トレーニング、練習環境。何一つ負ける要素のない国に試合で勝てない。
それがエリートゆえのひ弱さなのか。
負けるわけがないといわれた絹監督率いるU-17代表が、
地元日本でアジア予選突破に失敗した事実は、小熊にとっても衝撃だった。
外には漏れないが、協会内部では今までの育成システムに
何が問題がなかったのか、徹底した反省と検証を行っている。
そして小熊自身も昨年のアジアユースであわや予選敗退という場面まで追い込まれ、
PK戦を制してかろうじてワールドユースの出場切符を手に入れたのだった。
帰国後、小熊はひたすら自分のチームを見直した。
何かがこのチームに足りないのはわかっている。
だがそれは技術やフィジカルという単純な要素ではない。言葉にならない何かだった。
小熊は前回のワールドユースでキャプテンに指名した
今野泰幸をはじめて見た時の衝撃を思い出す。
こいつなら心中できる。こいつを背骨にしてチームが作れる。
一目見て小熊は体中に力が湧いてくるのを感じた。
だが、当時の今野はまったくの無名で、トレセン経験もごくわずか。
Jリーグチームから声がかかるはずもなく、
地元の社会人チームへ進む話が進んでいた、世間の扱いはその程度の選手だった。
だが、小熊の確信は揺らがなかった。
この子が持つ強さ。これは教えられるものではない。
他のエリートたちが持っていないものを、持っている。
小熊は今野をキャプテンに指名し、彼を軸としたチーム作りを行った。
ブラジルに完敗してチームの挑戦は終わったが、
年代の持つ能力はほぼ引き出せたのではないか、と小熊は自負している。
そうか。こいつもそうなのか。
サッカーエリートのレールにのってこなかったやつなのか。
「彼を呼ぶ気なんですか?小熊さん?」
岩崎が単刀直入に聞いてきた。
わかるか?と問い返すと、
この時期小熊さんがうちまで足を運ぶとしたら、それ以外考えられませんから、と
岩崎はすっかりわかっていた、というように淡々と答えた。
小熊「サンキュー樋口!サンキューな!」
おっ、主人公(とFW)代表候補入りか!?
絹監督・・(;´Д`)ハァハァ
泥臭い10番っていいね
小熊は、代表チームから回してもらった練習試合のVTRを何度も繰り返し見た。
そのたびに、少しずつ小熊の予感は、確信に変わっていった。
俺が欲しかった中盤は、こいつだ。
小熊の視線の先、画面の中では10番をつけた高校生が動いていた。
小熊はいそいで彼に関する資料を集めはじめた。
だが、思いのほか情報は集まらなかった。
いままでほとんど表舞台に出てくることがなかったのだ。
代表歴はもちろん、トレセンにもほとんど呼ばれていない。
唯一手に入ったのは昨年末の国際大会のビデオだった。
ついこの前の年末。東南アジアのある国から、ユース年代の国際大会の招待がきた。
といっても高校サッカーは冬の選手権真っ盛り。
クラブユースもJユース杯とバッティングしている時期であり、
本来なら参加を辞退したいところだが、諸般の事情によりそれはかなわず、
冬の選手権の予選敗退校の選手を中心に急遽編成し、日本高校選抜として参加した。
お世辞にも日本のトップレベルとは呼べない選手たちである。
その時、彼も選手の一人として遠征に参加していたのだ。
小熊はいそいでそのビデオをチェックした。
テクニックが確かだ。そしてセンスもある。何より雰囲気がある。
だが、そのビデオの中の彼は、驚くほど軽かった。
プレイの質が、そして体が。
このまんまじゃとても使い物にならない・・小熊はひとりごちる。
テクニックは凄い。だが、この年代、超絶技巧を持っているやつなんてごまんといる。
小熊の目にはそのプレイは「軽いファンタジスタ」にしかうつらなかった。
厳しい国際大会を勝ち抜くには、軽いファンタジスタはいらない。
相手の息の根を一撃で止めるような、ナタの切れ味を持った選手が欲しい。
だが・・いまの彼は・・。小熊は練習試合のビデオと見比べる。
お嬢ちゃんと組んだことが選手として成長するきっかけになったか。
小熊は一人の選手がこれだけ短期間に変貌するという事実に少なからず驚いていた。
フィジカルの弱いファンタジスタタイプのお嬢ちゃんとコンビを組む過程で、
お嬢ちゃんを生かすために、自分が黒子の役割に回ることにしたのだろう。
ボールを追い、お嬢ちゃんをカバーするためにピッチを走り回る。
フィジカルの強化にも真剣に取り組んだのだろう。
地味で泥臭い役回りをしっかりとこなしたところに成長が伺えた。
守備がよくなると往々にして、攻撃力がなくなりがちだが、
攻撃の勝負どころでは、持ち前のテクニックを駆使して突破する姿勢を失っていない。
見違えるように選手としてのバランスがとれ、完成度が上がっている。
保守
そしてバランスのとれた土台ができたことで、
彼が元々持っている「味」がピッチの中で表現できるようになっていた。
こいつは、エリートたちが持っていないものを持っている。
言うならば「異形の血」とでもいえばいいのだろうか。
子どもの頃から、常に指導者の目に守られ、十分な指導を受けて
栽培されてきた選手にはない根源的な力。
メンタルに宿る意思。
無名選手からアテネを経て次期代表を睨む存在になった今野。
無名高校から練習生を経て、代表の屋台骨になった中澤。
そう日本のサッカーの時代を作ったカズだって、ヒデだって、
その時代の本道を歩んでいたわけではない。
カズは日本のサッカーに背を向け単身ブラジルに渡った。
中田英寿もまた、その強烈な言動は調和を旨とする輪の中で異彩を放った。
そう、日本のサッカーにおいては、みんなレールから外れた「異形」の存在だった。
俺のチームに、その血を、異形の血を注入してくれるのはきっとこいつだ。
いつから呼ぶつもりですか、と岩崎が聞いてくる。
3月の下旬にブラジル遠征がある。この遠征では向こうのクラブと、
全部で6試合のトレーニングマッチを組んでもらっている。
怪我をしてる者を除いて、小熊がワールドユースに連れて行く候補と
考えている選手はあらかた招集をかけるつもりでいた。
ブラジルのチームとの厳しい試合は、選手の力を見極めるのに
うってつけだと小熊は考えている。
「あいつ、どこまでやれますかね」岩崎がグラウンドに目をやる。
小熊はそれに答えず、校舎のベランダから遠くを見る。
先日、日本代表が北朝鮮に劇的な勝利を収めた埼玉スタジアムの白い屋根。
暖かい日差しを受けて輝いている。
代表は、ドイツへの道のりを歩みはじめた。
その道がドイツまでつながっているのか、それとも途中で切れているのか、
それは誰にもわからない。
ただ、進む道がどのようになっていようとも、
日本のサッカーが世界の頂点を目指す闘いをやめることはないだろう。
ドイツ、南アフリカ、そしてまたその次のワールドカップ。
道はどこまでも続いていく。頂点を極めるその日まで。
「ん?」俺は誰かに呼ばれた気がして振り返る。
後ろには誰もいない。気のせいか。
どうしたんだよ、とタカシ。
いや、誰かに呼ばれたような気がしたんだ、というと、
モニカちゃんがいない寂しさでとうとう空耳が聞こえるようになったか、と
タカシがからかってくる。
俺はうるせえ、と言い返すとボールをタカシに向かって軽く蹴る。
ボールが気持ちよく飛んでいく。
新しい季節の訪れ。グラウンドには一足早い春の気配が立ち込めていた。
おもしろいぃっ 保守age
309 :
U-名無しさん:2005/04/13(水) 10:59:52 ID:TZEIN63b0
1は大熊。
まだ続くんだよな?
>>311 >>307の文末からして、大きく時間軸が変わるかと。
代表編なのか、回想になるか・・・
てあんまり予想を書くとうっとおしいな。スマソ
>>303 わざわざありがとうございます。乙。
見やすいですね…orz
で、まとめサイトのbbsの書き込みは本物なのかな?
物語に入っていきづらくなる可能性があるので
読む人は気をつけてくださいな。
まとめサイトの掲示板に作者来てるね。
時間掛かっても良いので、書き続けてほしいっす
>ただ、進む道がどのようになっていようとも、
>日本のサッカーが世界の頂点を目指す闘いをやめることはないだろう。
>ドイツ、南アフリカ、そしてまたその次のワールドカップ。
>道はどこまでも続いていく。頂点を極めるその日まで。
ちょっとジーンと来た。
317 :
U-名無しさん:2005/04/14(木) 23:25:32 ID:ZIG6tbx10
保守
そろそろ川本元五輪代表監督が君臨するわけですね
319 :
U-名無しさん:2005/04/15(金) 17:13:46 ID:z0otfB9l0
毎日チェックしてます。面白い!
つーわけでほしゅあげしようじゃないか。
320 :
U-名無しさん:2005/04/16(土) 13:37:00 ID:Z1oKnOw10
保守保守
ん?307で終わり?
第一部完、みたいなかんじなのかな。
まとめサイトの掲示板に作者が来てたよ。
少し時間下さい、って書いていた。
保守
325 :
U-名無しさん :2005/04/17(日) 22:13:43 ID:aknNMlrl0
hosyu
326 :
U-名無しさん:2005/04/18(月) 17:20:51 ID:TX4UYvsv0
ほしゅ
捕手?
砲手?
続きが来るまで龍時読み直すか……
保守
331 :
U-名無しさん:2005/04/20(水) 14:51:54 ID:mjGEPQSe0
hο∫hμ..._〆(゚▽゚*)
俺なりの相撲。保守
川VvV)<ほ
( ‘д‘)<も
336 :
U-名無しさん :2005/04/22(金) 09:00:30 ID:mPYher960
ハッシュ
そろそろ書籍化か?
ホッシュ、バイ。
「だーかーらーっ!お前ら、なんでここにこんないるわけぇ?」
森本が大声を出すが、部屋にいる誰も聞いちゃいない。
誰からも反応がない、とわかった森本は俺のほうを睨む。
お前からもなんか言えよ、という表情だ。
俺は黙って肩をすくめる。俺が言ったって効果があるとも思えない。
普通のツインに男がひぃ・ふぅ・みぃ・・・、
数えてみたら俺たち含めて10人もいやがった。むさくるしいわけだ。
テレビにつないだプレステでウィイレやる者あり、それを眺める者もあり。
ひとりでPSPやってる奴もいれば、ただひたすら本を読む者もいる。
ここは一応、俺たちの部屋のはずなんだけどなぁ・・
メンバーの中でたぶん一番年齢が近いからということなのだろう、
俺と森本は同じ部屋に割り振られたのだが、
いつのまにかみんなの居場所になってしまっている。
別に部屋でひとりで何かしようということではないのだが、
みんなが自分たちの部屋でのんびりとしてるのを見ると、
森本がしゃくにさわるのも、わからないでもない。
もちろん森本も俺もそう真剣に腹を立てているわけではないのだが。
俺は窓から外を見る。広がっているのは見慣れない異国の町並み。
ああ、ほんとに来たんだなあ・・。俺は実感する。
ここ数ヶ月で俺はそれまでの人生からは考えられないほどいろんな経験をした。
そしていま、オランダにいる。2005ワールドユース。
それが俺たちがオランダに来た目的だ。
340 :
U-名無しさん:2005/04/23(土) 00:37:17 ID:B6iJSWf2O
キタ━━(゚∀゚)━━!!待ってました!頑張れ!
キタ━━(゚∀゚)━━!!
WY編か?
激動の数ヶ月間の間に主人公とモニカタンの仲の進展はあったのか?
アジア予選編もあるぜよ。
うおおおおおおおおおおおお
なんかキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
まさか緑の森本?
345 :
U-名無しさん :2005/04/24(日) 21:36:09 ID:nHq34fcI0
保守
「また、モニカちゃんのこと、考えてたんだろー」
たむろしてる連中を叩き出すのをあきらめたらしい森本が、
今度は俺にちょっかいを出してきた。
俺は馬鹿は相手にしない、とばかりに無視する。
「しっかし、モニカちゃんのパイオツ、最高だよなあ・・
もうぷりぷりって感じで・・あんなのでこすられたら、俺、すぐイッチゃうよ」
軽く森本に蹴りを入れてやった。よく見ると森本の奴、
マジで目が妄想モードに入ってやがる。ほんとコイツ、アホだ。
ヴェルディがメディアに森本のインタビューをほとんど許可しないのは、
建前は森本の健全な成長のため、ということになってるが、
その実、どんなアホなことをしゃべるか怖くてしょうがないからだ、と
カレンがそっと教えてくれたのを思い出した。
最初は冗談だと思ってたが、一緒にいるとだんだん本当に思えてくる。
もっとも、森本の名誉のためにいえば、
この環境でその手の話が出ないほうがおかしい。
考えてみて欲しい、むさ苦しい男ばかり顔をつきあわせて、
やることは練習場と試合会場とホテルの往復だけ。
たまにはスタッフが気を使って、観光に連れ出したりしてくれるが、
別に自分で行きたい場所を決めてコースや日程を組むわけじゃない。
無理矢理気分転換するために、疲れる散歩に連れていかれる、と
いうのが選手の立場としての偽らざる実感だ。
サッカーをやっていないときは、
ひたすらホテルの中でミーティングか体の手入れか、あとはごろごろするだけ。
以前、日本代表のトルシエ前監督だったと思うが、
選手はテレビゲームばかりやっていて、サッカーの話をしないと怒っていたが、
他にやることがない、というのが、俺の正直な感想だった。
もちろん練習後や話の流れによっては、
ベッドの上で輪になってサッカーの話をすることもあるが、
一日中サッカーの話だけしていろ、というのも無理がある。
必然的にちょうどいまのように、集団でだらだらすることになってしまう。
その一方で、俺たちは闘っている集団だ。
端から見ればのんびりしてるように見えても、
ひとりとして集中の糸を完璧に切っているやつはいない。
消防士が仮眠しているようなものだ。寝ているようにみえても、
サイレンが鳴れば瞬時に戦闘モードに突入することができる。
そのためのエネルギーを各自が体の中に溜めこんでいる。
増して活気あふれた俺たちの年頃。こういう生活にはそれなりにストレスがある。
森本の下品な「振り」も、なかば集団の中での役割みたいなものだ。
それを俺も含めて、みんな承知している。
妄想モードに入っている森本は放っておいて、ぼんやりと窓の外の景色を見る。
だが、森本は俺のことを放っておいてくれない。
キタ━━(゚∀゚)━━!!
森本ワロスwww
森本のイメージがぁ。
でもこのスレは好き。
森本=春原陽平
で固定されちまった……
タカシは選ばれなかったか・・・
352 :
U-名無しさん:2005/04/25(月) 07:44:32 ID:BJCy4aUP0 BE:81032966-
キタ━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
復活オメ
今後もがんばって下さい。期待してます。
パイヅリ (;´Д`)ハァハァ
「おい、もうモニカちゃんとはお前やっちゃったのか?
あの巨乳をモミモミしちゃったりしたのか?」
アホか、お前。
「別に彼女でもなんでもねえもん。そんなわけねえだろ」
一応、この誤解してるバカにそこだけははっきりいっておく。
なーんだ、根性のない野郎だな、と
森本はさも俺が甲斐性なしであるかのように言いやがる。
「ああ、モニカちゃんと試合してみてえな。
おい、今度うちのサテライトと練習試合やろうぜ。
お前の彼女でないなら、俺がぜひお近づきになってだな・・・
俺のテクニック見せたらモニカちゃんももうすぐに俺の虜だな。
昼間は足のテクニック、夜は指のテクニックも見せちゃったりして」
俺はもう一度森本に、今度は少し強めに蹴りを入れる。
こいつのことだ、同じピッチに立ったら
絶対にセクハラまがいのディフェンスをするに違いない。
今後どんなことがあっても、こいつだけは
モニカに近づけないようにしようと俺は心で誓った。
「なーに、さわいでるんだよ」
俺と森本がじゃれていると、さっきまでベッドで横になって
雑誌を読んでいたカレンが起き上がっている。
「また森本が発情してるのか」とカレンが笑った。
代表との練習試合で宮本を見たときも、そのかっこよさにしびれたが、
ルックスだけとったらカレンのほうが上かもしれない。
一緒にいて近くでその顔を見ると、
しみじみと容姿ってやつについて考えさせられる。
俺や森本と同じ人間という種族だなんて思えないくらいだ。
カレンと付き合う女性はどんな気持ちなんだろう。
こんな整った顔が目の前にあったら、ほんとうに夢見心地だろう。
「悪かったな、誰かさんみたいなモテモテ野郎とは違うんだよ」
森本が言い返す。
「そういえば、カレンは彼女いたよな?」
森本の問いかけに、
「ん。いるよ」とカレンがさらりと返す。
その余裕が絵になっている。きっと俺や森本が一生手に入れることのない余裕だ。
なんとなく俺は森本と顔を見合わせる。
一瞬の沈黙の後、ああ、これだからモテ男くんは嫌だ、と森本は大げさに首を振った。
「大丈夫だよ、森本も彼女なんかすぐできるって」とまた別の声。
声のしたほうを向くと、平山さんが文庫本を片手にこっちを見ていた。
2年前のUAEワールドユース。そして去年のアテネオリンピック。
いつもひとつ上の世代に混じってメンバー表に名を連ねてきた、
日本の次代を担うセンターフォワード。
だが一緒にいる平山さんは、そんなことを感じさせないほど物腰が柔らかい。
このチームでも俺や森本の面倒を見ているのはなんだかんだいって平山さんだ。
きっとこの人は兄貴肌なんだという感じがする。
子どもと触れ合う先生みたいな仕事はきっと向いているに違いない。
「ていうか相太に言われても、あまり信憑性ないよ」
森本の突っ込みに思わず平山さんが苦笑いする。
356 :
U-名無しさん:2005/04/26(火) 08:14:33 ID:Ybd18QBJ0 BE:110294677-
お、またキテル━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━ !!!!!
どんな展開になるのか楽しみ、楽しみ。
これを本人たちに読ませてみたいな
358 :
U-名無しさん:2005/04/26(火) 08:33:24 ID:Ybd18QBJ0 BE:47269837-
>357
カレンや相太はいいけど森本はおこらねえか(w
「オレはエロガキかよ」てね
森本はチームの誰でも呼び捨てだ。
俺はカレンはなんとなくフランクに呼び捨てにできるのだが、
平山さんにはつい「さん」がついてしまう。
別に二人に対する気持ちに違いがあるわけじゃなくて、なんとなく雰囲気なのだが。
「ていうか、相太は彼女できたの?」
さらに鋭さを増す森本の突っ込みに平山さんは苦笑いしながら首を横に振る。
だめじゃーん、と森本がベッドの上で後ろにひっくり返る。
その姿を見て平山さんとカレンが優しく笑う。
ガキ大将でやんちゃ坊主の面影が強い森本。
ルックスはもちろん立居振る舞いまで含めて典型的な「いい男」のカレン。
気配りにたけ、全体に目を配るいい兄貴分の平山さん。
これほどまでにキャラの違うフォワード陣も珍しいな、と思う。
プレイスタイルだってみんな違う。
高さの平山さんに、スピードのカレン、テクニックの森本。
だが、それがかえって三人のコンビネーションをよくしている。
中盤の選手にしてみると、これだけバラエティに富んだ
フォワードの組み合わせは使いがいがあるというものだ。
森本と平山さんは何か話を続けている。
俺はもう一度窓の外を見る。見慣れない景色。
モニカはいま、日本でどうしているだろう?
モニカをおれの隣りで寝ているよ(^_^)v
361 :
U-名無しさん:2005/04/27(水) 07:25:25 ID:KPXZlBUT0 BE:13505832-
>360
てにをはがまともに書けない奴が煽るなや(w
>>361 起きたばっかりだったんだよー(・ω・`)
363 :
U-名無しさん:2005/04/27(水) 07:42:58 ID:KPXZlBUT0 BE:40517429-
>362
素直でよろしい。
気に入ったyp
アッー!!
3月中旬、U-20日本代表のブラジル遠征のメンバーが発表された。
放課後の職員室、俺を呼び出した岩崎はほとんど表情を変えずに淡々と、
俺がメンバーに選ばれたことを伝えた。
激励の言葉でもあるかと思ったが、それだけだった。
岩崎らしいといえば岩崎らしい。
職員室を出た俺は、図書室のネットにつながってるパソコンで、
発表されたメンバーを調べてみた。
平山、森本、カレン、水本、本田、高柳。
代表やJリーグで活躍するそうそうたるメンバーにはさまって、
俺の名前はいかにも所在無さげにMFの欄の一番下に並んでいた。
事前にパスポートを持っているかの確認等、正式ではないものの打診が来ていたため、
青天の霹靂というような驚きはなかったが、
いざ名前がリストに記されると、実感が少しずつこみあげてきた。
だが、嬉しいという気持ちはほとんどなかった。
むしろ、ちゃんとできるだろうか、という不安のほうが大きかった。
他のメンバーの所属を見れば、Jのクラブ名がずらりと並ぶ。
森本を除けば、みんな俺より二、三学年は上の人ばかり。
その上、俺には何の実績もない。どう考えても俺だけが場違いだった。
なんとなくもやもやした気分のまま、俺はいつものように練習に出た。
タカシが声をかけてくる。
「よかったじゃん、正式発表だってな」
いつものように軽口を飛ばそうと思うのだが言葉が出てこない。
俺は黙ってうなづいた。
そんな俺の様子を怪訝に思ったのか、タカシが俺の顔をのぞきこむ。
「どうしたんだ、お前。プレッシャーでも感じちゃっているのか?」
返事のしようがなくて悩む。今、感じてるこれはプレッシャーなのだろうか?
「プレッシャーつうか・・俺が行って、なにかできるのかなあって。
そもそもなんで俺なんかわざわざ呼んだんだろうって。」
森本の名は既に広く知れ渡っているが、それ以外にも
ガンバの家長、ジェフの水本、グランパスの本田ら、
Jリーグでもレギュラーに近いポジションを確保しつつある選手が揃っている。
まさにこの年代のキラ星たちだ。
俺にとって彼らは、テレビに映し出される
スタジアムの中にいる選手、画面の向こう側にいる選手たちだ。
そんなやつらと同じピッチでサッカーをすることが俺はまだうまく想像できない。
なんとなく俺の気分を察したのか、タカシが真顔になって、
「まあ、そんな真剣に考えるなよ。
第一、お前がレギュラーで試合に出るって決まったわけじゃないんだぜ。
むしろ、どれくらい試しに呼んでみたというところだろ。
この合宿ではアピールして生き残ることだけ考えてりゃいいんだよ。
お前、そういうアピールが下手なところあるからな。
挑戦者の立場なんだから気楽にやってこい」
そうだよな、と俺は答える。レッズのジュニアユースにいたタカシは、
そういうセレクトされる場の経験も豊富だ。
タカシの言うことは100パーセント正しい。
テストしてみて期待通りの働きができなければ、次は呼ばれることはないだろう。
そう、俺は挑戦する立場。失うものは何もない。
そう自分に言い聞かせてみたが、胸のもやもやは晴れなかった。
367 :
U-名無しさん:2005/04/28(木) 00:40:21 ID:X9jwOENt0 BE:144058188-
タカシにも日の目を見させてほしいなあ。
イイ奴じゃん
まあ、主人公が選ばれてるのは1世代上のU20代表だからなぁ。
にしてもWユースの時点でも主人公がモニカタンに手を出していないとは・・・、甲斐性なしだ。
タカシはリアルジャパン7で出てくるよ
いざ練習をはじめても、自分の動きの一つ一つが妙に気になる。
こんな動きで、こんなテクニックで、果たして代表で恥をかかずやっていけるのだろうか。
自分の動きの欠点がやたらと気になる。
いけない、いけないと首を振る。これじゃどんどん動きがばらばらになる。
全体練習が終わって、グループでの練習に切り替わったが、
俺は続ける気になれず、山口に断って抜けさせてもらった。
そのままグラウンドの端に腰掛けて、みんなの練習を見学する。
ひとりになったら思わずため息が出た。なんか煮え切らねえなー、俺って。
ぼんやりしていたら突然背後から声をかけられた。
「キブン、悪いノ?」
振り返るとモニカの心配そうな顔。
俺はモニカを見て無性にほっとした気持ちになる。
この前、女子代表の合宿にいってから、モニカの日本語はいっそう上達した。
共同生活の中で、同じ女性同士、いろいろと話も弾んだのだろう。
凝った言い回しをしなければ、日常会話なら
ほぼ問題なく意思の疎通ができるようになっていた。
驚くべき上達の速さといっていいだろう。
「いや、ちょっと休んでいただけ」
俺の言葉に、ほっとしたというようにモニカは笑顔を見せた。
そのまま俺の隣に座る。俺たちは並んで座って練習風景を見る格好になった。
外から見てると、みんながめきめきと力をつけているのがよくわかる。
モニカのおかげで強豪との練習試合も多くなり、いい経験が積めている。
あの代表との試合をきっかけに、校内での注目度も高くなった。
見られているという意識があるので、毎日の練習もだらけることなく、
充実した内容になっている。もちろんサボる奴なんていない。
それが練習試合でのいい内容につながり、
それが自信となりサッカーが楽しくなり、またやる気を引き出す。
すっかりうちのチームはいい循環に入っていた。
その輪の中心にいるのはいつもモニカだった。
レイナスから改称したレッズレディースや女子代表での練習を経て、
そのテクニックはますます幅を広げ、成長していた。
その一方、練習時には女ということを意識させない捌けた明るい性格。
そのくせ時に、はっと女らしい優しさを感じさせたりもする。
そうちょうど今みたいに。さりげない気配りを見せるのだ。
ボールを無心に蹴る部員を眺めながら、俺はしみじみと思う。
こいつのおかげで、俺たちはこんなにサッカーが楽しくできてるんだなあ・・
「ダイヒョウ、オメデトウ」
モニカも当然俺が代表に選ばれたことは知っている。
サンキュ、と礼を言う。けれどその後の言葉が出てこない。
俺は今、モニカに何を話したいんだろう。何を伝えたいんだろう。
俺とモニカの間に沈黙。
モニカタソ♪(・∀・)♪ヒサシブリ!!
373 :
U-名無しさん:2005/04/29(金) 10:41:13 ID:rJc8Mt4U0
シンディも忘れない アゲ
あしたモニカとディズニーシーに行って来るyp♪(・∀・)♪
俺が言葉を探していると、
「ダイジョウブ、デキルよ」
俺はモニカのほうを振り向く。モニカがじっと俺を見ている。
モニカの金色の髪が白い頬に軽くかかっている。
俺はそのままモニカの顔から目が離せない。
モニカはゆっくりとかすかに微笑む。
呪いが解けるように、俺の中に優しい力が水のように満ちていく。
「デキルよ。ダイジョウブ」
モニカはさらに一言言うと、
ぽーんと俺の肩を叩いてみんなのほうに走っていった。
俺はそのまま座っている。さっきまでのもやもやはきれいに消し飛んでいた。
気づいていた。そう、俺は誰かに言って欲しかったのだ。
大丈夫だよ、と。君はできるよ、と。
代表のメンバーの中に入っても、君は立派にできるよ、と。
自分自身に自信が持てないから、誰かに自信をつけてもらいたかったのだ。
まったくガキとしかいいようがない。
どうしようもない甘えん坊だ。でもそれが今の俺だった。
モニカはそれをわかっていた。俺のだめな部分、弱い部分。
ありがとよ。俺はモニカに心の中で礼を言う。ほんとありがとう。
あとは俺一人で頑張ってみるよ。
ゆっくりと立ち上がる。モニカが去りがけに口にした言葉を小さく呟いてみる。
yes, you can.
そう、俺はやってみせる。
あぁ…やっと更新できたよ…orz
ありがとう黄金週間。
主人公はポエマーだという事が判明
今日も日差しが強い。俺は照り返りがきつい芝生の上で空を見上げた。
今日は何度くらいになるんだろう。
多少慣れてはきたものの、まだ冬の寒さが残る日本から来た身体が、
このブラジルの陽気にちょっと戸惑っている。
スタジアムにはちらほらと人の姿が見える。
この後、トップチームの試合があるとのことで、
待ちきれずにグラウンドに来てしまった人たちなのだろうか。
もう今日のスタメン組はベンチに引き上げた。
メンバーに入らなかった者が、最後のシュート練習を行っている。
俺はここに何しに来たんだろうか?俺はふと自問する。
このブラジル遠征は6日で6試合が組まれているハードスケジュールだ。
相手のレベルにばらつきはあるものの、サンパウロを拠点とするチーム相手に
まるで道場破りのように移動しながら試合を繰り返す。
小熊監督はこの遠征をコンビネーションや
戦術を熟成させるチーム作りのためのものではなく、
誰を連れて行くかのセレクトの場として位置づけていると、
メディアにはっきり語っていた。
その言葉はほんとなのだろう。事実、ここまでの3戦、
怪我など個々の選手の状態を考慮しつつも、ほぼ均等に起用がされてきた。
だが俺に監督から声がかかることはなかった。
遠征メンバーでまだ試合に出ていないのは、
到着後、怪我が悪化した小林さんと俺の二人だけという状況だ。
監督は俺をテストするために呼んだんじゃないのか。
俺の中では疑問が大きくなっていたが、
そのことに対する監督からの説明は何もなかった。
いや、そもそもメンバーに選ばれてからいままで、小熊監督との会話はないに等しい。
小熊監督とはじめて会ったのは、この遠征で集合したときだ。
挨拶はしたが、それ以上の会話はない。
その後遠征がはじまってからもこの過密日程では、
練習も軽い試合に向けた調整程度のものしかなく、
メンバー同士の連携を深める練習時間などないに等しい。
俺自身も他のプレーヤーの癖などわかるはずもないし、
周りも俺がどういう選手なのか、俺をどうやって使えばいいのか見当もつかないだろう。
メディアはこの合宿メンバーに俺を選んだ意図について、
小熊監督に執拗に質問を繰り返したが、
監督は必要だから呼んだ、とのコメントを繰り返すばかりだった。
俺は監督がなにを考えているのかわからない。
この状況で監督は俺にいったい何を期待しているんだ?
日差しがじりじりと俺の焦りを焼いていく。
無性に苛々が高まり、俺はそれを右足ごとボールにぶつける。
シュートはゴールバーの遙か上を飛んでいった。
「ヘイヘイ、枠入れてこうぜー」森本が近くで声をかける。
悪気はないんだろうが、その声がどうもしゃくにさわる。
同い年で本来なら一番とっつきやすいはずの存在なのだが、
どうもこいつとは相性が良くないようだ。
思わずむっとして睨み返した俺の視線など気にもとめずに、
森本が足を振り抜いた。きれいな弾道のシュートがサイドネットに突き刺さる。
そこで練習終了の合図。俺は足元のボールをぽーんとタッチラインへ蹴り出した。
380 :
U-名無しさん:2005/05/01(日) 03:18:32 ID:EpLKzPak0
また笛が鳴った。ボールがゴールの中で転がっている。
喜ぶ相手選手たちと膝に手をついてうなだれる日本の選手たち。
4点目。時間はようやく30分が過ぎるか、というところか。
試合は一方的なものになっていた。
始まってすぐ、コーナーのこぼれ玉を押し込まれて先制されると、
相手の怒涛のような波状攻撃に耐え切れない。
相次いで失点を重ね、そして今のゴールで0−4。
見に来ている相手チームのサポーターはお祭り騒ぎだ。
ベンチの雰囲気も重い。隣にいる平山さんが、
「ブラジルの選手はこういうラッシュがうまいんだよな」と呟く。
前回のワールドユース準々決勝を思い出しているのだろうか。
あのときも、ブラジルに前半で4点を決められるワンサイドゲームだった。
最後、平山さんが1点を返したが結局1−5の完敗。
そのときのことを思い出しているのだろうか。
この遠征を通じて、ベンチから見ていてもやはりブラジルの選手はうまい。
それは認めるが、だが同時に技術だけなら
日本の選手だってそこそこのレベルに達しているというのも実感だった。
ここまで一方的に叩きのめされるほどの違いはないはずだ。
ならばなぜここまで差がついてしまうのか。
何が違うんだろう。俺は考える。
流れが自分たちに向いたとき、
言い替えるなら相手がひるんだとき、相手が背中を見せたとき。
その時、氾濫する川の流れのごとく、一気呵成に相手を押し流すラッシュする力。
一撃で相手の息の根を確実に止めようとする意思。
ゲームのコントロールに関するチーム全体の意思統一が完璧になされている。
ここは行くぞ、となったらチームの一人残らず、相手に襲いかかっていく。
獲物は逃がさない、まさに猛獣を思わせる迫力。
相手に一日の長があるとすればそこだった。
見ているとはがゆい。俺なんかよりはるかに上手い選手たちが、
何もできずにピッチに立ちすくんでいる。恐れおののいている。
もっとできるはずなのに、すっかりびびってしまっている。
くやしい。俺も試合に出たい。痛切に俺はそう思った。
このメンバーの中で一番下手な俺が試合に出ても、
できることはたかが知れているかもしれない。
それでも、たとえドブ鼠の抵抗だとしても、
せめて相手の喉笛に食いついてやりたい。あいつらをびびらせてやりたい。
お前の実力でおこがましいと言われようが、とにかくピッチに立ちたかった。
むざむざ喰われるだけの羊じゃないことを相手にわからせたかった。
だけど、今の俺はチームの中で実績も評価も持たない一番格下の選手。
俺とピッチの距離は近いように見えて遠い。
383 :
U-名無しさん :2005/05/02(月) 22:58:02 ID:h9HIz1ze0
保守
何時も読んでまする・・・。
で、いったいいつゴールにぶち込むの?
インサートするシーンは?
抜いてばっかりはもう見飽きたよ
385 :
U-名無しさん:2005/05/02(月) 23:18:44 ID:W0pXxYmv0 BE:22509825-
くだらんあおり乙。
まーたーりーと待つがよろし
今日は、客を入れたスタジアムでの試合ということもあり、
俺たちは熱い太陽光線によく映える青の代表ユニフォームを着ている。
年代別代表とはいえ、はじめて通す青のユニフォームの袖。
いざ着用して自分の胸についているやたがらすのエンブレムを見たときは、
言葉に出来ない喜びがこみあげてきたが、ベンチに座っていると
そんなさっきの喜びはどこかに消し飛んでしまう。
ユニフォームは戦う人間が着る服。今の俺に戦いの場は与えられるのか。
俺はふと空を見上げる。日本の夏のそれよりも強い太陽の光。
モニカ。
俺はこのブラジルで何を見れば、何をつかめばいいんだ?
そのとき、監督とあわただしく打ち合わせていた滝沢コーチが歩いてきた。
うちの学校の岩崎と同い年で、高校選手権で活躍したという話だ。
そのときの話を聞いてみたいと思ってるのだが、まだ機会に恵まれていない。
「平山、西川、樋口。後半の頭から行くぞ。準備しておけ」
体に電撃が走る。ついに来た。ピッチにたてる。
平山さんと西川さんが短く、はい、という返事。
俺から返事がないので滝沢コーチが俺のほうをいぶかしげな顔で見る。
はい、といそいで返事した声が少しうわずっている。
この状況で俺が起用されるなんていったいどういう意味だ?
そんな疑問も心の中に浮かぶが、いまはそれを考えている時ではない。
「行こう」平山さんの声。平山さんがすっくと立ち上がり、ベンチの外へ歩いていく。
俺は急いでその後ろをついていく。
平山さんと西川さんの二人にならって軽く走る。
さっき試合前の練習でひととおり動かしてあるし、
この陽気ならば大事な代表デビュー戦で体が切れてこない心配はなさそうだ。
ピッチに出たときの自分のプレーをイメージしながらアップする。
その作業に集中していると、前半終了の笛が鳴った。
1点こそ返したものの、結局1−4のスコアで前半は終了だ。
歩いてくる選手の表情が対照的だ。
屈辱とやりきれなさで下を向いて戻ってくる日本の選手たち。
逆に反対側のポンチプレッタの選手たちは笑顔、笑顔。
何を話しているかわかるわけもないが、どうせ
「今日は簡単な試合になりそうだな」とでも思っているのだろう。
いまのうちに笑ってろ、と俺は心の中でつぶやく。
気を抜いてくれれば抜いてくれるほどありがたい。
後半、必ず一泡吹かせてやる。
388 :
U-名無しさん :2005/05/03(火) 23:22:54 ID:TG4fKOzI0
保守
GWも更新、もつかれです。
389 :
U-名無しさん:2005/05/04(水) 02:03:06 ID:dmabcuRs0
保守
390 :
U-名無しさん:2005/05/05(木) 01:15:41 ID:DGYdV3fu0
保守
391 :
U-名無しさん:2005/05/06(金) 16:05:23 ID:peqUI/US0
いすかんだる?
審判の確認が終わったのを見届けて俺はゆっくりとピッチに入る。
芝が薄い感じがする。これじゃボールはよく跳ねて、スピードも上がるだろう。
システムは前半と同じ3−5−2のままだ。
トップ下を務めていた中山さんの後に俺が入る。
前の二枚は辻尾さんと新しく入った平山さん。
俺はもう一度自陣をぐるりと見渡して、メンバーを確認する。
DFにジェフの水本さん、中盤にはセレッソの苔口さんら、
Jでも定位置を確保しつつある顔が見える。
そうそうたる顔ぶれの中、この俺がトップ下として指令塔を務める。
なかなかわくわくできる話じゃないか。
後半開始の笛。
俺は相手の出方をうかがいながらボールを回す。
ロッカールームで監督から修正は入っているのだが、
やはり前半のショックが抜けていないらしく、
うちのボランチとDF陣の腰が完全に引けてしまっている。
風が草木を揺らす音におびえるかのように、理由もなくプレーが消極的だ。
どうするか。俺は判断に迷う。
が、迷ってる暇を与えてくれるほど、サッカーのピッチというのは平和な場所ではない。
相手のドリブル。見ていてそんなにキレがあるとも思えないのだが、
なまじ守る側の腰が引けているだけに、やすやすと突破されてしまう。
カバーに入った水本さんが強引に止めるしかなくなってファール。
前半の悪い流れを切れていない感じだ。
ゴールラインから少し入ったところでのFK。嫌な位置のセットプレイだ。
立ち上がりということもあって、辻尾さんだけ残して、全員エリア近辺まで下がる。
平山さんも戻ってきて、ヘディングではじき返す構えだ。
相手が蹴る。俺や平山さんの頭上を越えてファーに飛ぶボール。
ボールの飛んだ方向を見ると、先制点をとった11番のマークがはずれ気味だ。
DFがなんとか防ごうとするが、体勢を作った段階で負けていては話にならない。
スピードのあるヘディングシュートが、ゴールネットに突き刺さった。
5点目。しかも後半開始早々の失点。
DFのメンバーは顔面蒼白で言葉もでない様子だ。
俺は黙ってボールを拾い上げた。この雰囲気は声でなんとかなるレベルではない。
プレーで、俺たちのペースに引き込むしかない。
どうせ次の出番があるかどうかわからない立場、
たとえ後半途中でガス欠になっても構わないから、
自分のやりたいようにやらせてもらおうと心に決める。
どうせ戦術上の指示なんて受けてないんだし。
試合再開のキックオフ。
頑張れタカシ
喝入れろ。
下げられたボールを前線へけり込む。辻尾さんが落下点めがけて走るが、
それより先に相手の中盤がキープ、ワンタッチで回す。
平山さんのチェック。それを交わしてボールは左サイドへ。
うちの両サイドが少し引き気味になっている分、スペースがある。
「苔口、詰めろ、詰めろ!」俺が大声で指示を出す。
苔口さんがちらっと俺を睨むが、ボールを持ってる相手にチェックに行く。
余裕綽々の相手は苔口さんを相手にせず、いったんボールを横パス。
そこは俺の番だ。懸命にダッシュして相手との間合いを詰める。
気づいた相手はセーフティにいったん、DFにボールを下げる。
俺はさらにそのボールを追う。敵陣から鉄砲玉のように飛び出してきた俺を、
相手のディフェンダーがカミカゼでも見たかのように面食らった顔でみる。
相手の横パス。俺はそれも追いかける。
平山さんも辻尾さんも完全に追い越している。
誰かが俺の名前を呼んだ気がするが、無視した。
プレスの連動性や、約束事なんて知ったこっちゃない。
どうせ戦術練習なんてしていない身だ。ただボールを追う。
無抵抗のまま、殺られるなんてごめんだ。
相手の軽い切りかえしに俺はバランスを崩す。
負けるもんか。くらいつけ。俺は後ろから相手にまとわりつく。
代表との試合でモニカに怒鳴られたとき。
相手に背中を見せたことを怒られたあの時から、
俺はピッチに立ったら逃げちゃいけない、とわかったんだ。
ハーフウェーラインからボールが入ってくれば、
庭を守る番犬よろしくひたすら追いかけ続ける。
さすがにサッカーの本場、ブラジルの選手。ボールは奪えない。
だが、それを繰り返しているうちに、
他のメンバーも積極的に間合いを詰めるようになった。
さっきまで仕掛けられるのを恐れて、間隔を取っていたのが、
積極的に相手の足元に足を入れるようになってきた。
すると相手も簡単に前を向けなくなり、縦のパスが出せなくなる。
必然的に横パスやバックパスが多くなる。
ボールキープこそできないが、試合の流れが幾分落ち着いてきた。
この調子だ。もう少しだ。
相手の中盤の選手にくさびのパスが入る。
すかさず間合いを詰める。後ろに戻すか、と思ったらステップを踏んで抜きにきた。
後ろにばかりパスを出すのはもう飽きた、といわんばかりの動き。
迫ってきた俺を簡単にターンして交わそうとする。
だが予想していたとおりプレーが軽い。大量点で微妙に相手の集中も切れている。
ターンの方向を読み切って足を入れる。
すぱーんときれいにボールだけが足に引っかかった。
しまった、という相手の動揺が空気を伝わってくる。
瞬時にドリブル開始。ここは一気にカウンターだ。
ボールを奪われると思ってなかった相手は、
知らず知らずのうちに前がかりになっている。
きびすを返して戻ろうとするが、油断していた分、こっちのほうが早い。
この小説のタイトルは何ですか?
題名か、なんだろうなぁ。
「青空の向こう側」とか
正直、この小説を読んで泣きそうになっている俺がいる。
なんでか分らん。
懐かしいような原点を見たような、そんな感じだ。
400 :
U-名無しさん:2005/05/07(土) 22:13:09 ID:xLjECpdWO
主人公の闘志に武者震い
前には敵のセンターバックが二人。
少し上がりすぎていた相手のサイドバックが俺と併走する格好だ。
味方は平山さんと辻尾さんの二人。
平山さんは中央で縦に走っている。辻尾さんはやや右サイドに開き気味。
サイドの苔口さんはまだ俺より後ろだ。どうする?
俺は自分で行くことに決める。スペースのある左サイドへ全力で進む。
一気にライン際までドリブルで持っていく。
追いついたサイドバックが中を切って俺を止めに来る。
目だけ動かしてゴール前を確認、相手選手も戻ってきているが、
その中でもぽつんと高い平山さんの頭が見える。
なるほど、ほんとにあの身長は放り込みやすい。
ライン際、単純にクロスをあげると見せかけてキックフェイント。
すかさず左足でボールを中に戻して、
右足でクロスをあげようとしたが相手がついてくる。
ならばもう一度だ。今度はさっきと逆に右足でボールをライン際へ押し出して左足を振る。
いける、と思ったボールはサイドバックが必死に伸ばした足に弾かれてラインを割った。
二度のフェイントで振り切った感触はあったのに、足が伸びてくる。
これがよくいう、足が思ったよりも伸びてくる、日本でやってるときとの感覚の違いか。
だがボールはこっちのコーナーキック。まだうちのボールだ。水野さんが走っていく。
このメンバーでのセットプレイの練習なんて、まったくしていない。
平山さんがファーにポジションどり。辻尾さんはだいたいエリア中央。
誰かから指示が来るかと思ったが、声がかからなかったので勝手にエリア中央外で待つ。
水野さんのコーナーキック。助走と同時に目の前で選手たちが、
ゴールできるポジションを求めて動きだす。
平山さんがファーからゴール中央へDFをふりほどきながら走る。
水野さんが巻きながらその平山さんの頭にどんぴしゃであわせるボール。
しかし、DFにおされて平山さんがほんのわずかバランスを崩す。
頭の少し上をボールは通り抜け、平山さんが空けたファーのスペースに
移動していた俺の目の前に、こんにちは、と挨拶しながら落ちてきた。
これは決める。
俺は何の躊躇もなく、ワンバウンドしたボールを右足に全身の力を集中させてぶっ叩く。
足の甲に残るジャストミートの感触。
ボールはあっと言う間にゴールへ突き刺さった。
審判の笛。俺は予想外の失点に白けた雰囲気が漂う相手チームを尻目に、
素早くゴールネットからボールを回収する。
まだまだ試合は終わってないんだぜ。悪いけどもう少しつきあってもらうよ。
平山さんがテレビで見慣れたあの笑顔で祝福してくれる。
他のメンバーも集まってきて喜びをわかちあう。俺の回りに輪ができる。
403 :
:2005/05/08(日) 01:23:04 ID:egHrh38P0
いいよ〜
面白いよ〜
次が待ち遠しいよ〜
おいおい点取っちゃったよ!
大丈夫、チームのムードがよくなってきた。前半の雰囲気とは違う。
後半は互角にやれるぞ、という気持ちがみんなから伝わってくる。
おこがましいが自分のプレーが流れを変えた、という実感があった。
そこで俺は唐突にモニカのことを思い出した。
この前の代表戦、俺たちは無邪気にモニカのために、とハッスルしていたが、
そんな俺たちの姿をモニカはどんな気持ちで見ていたんだろう。
モニカ自身は内心では、不安な気持ちでいたんじゃないだろうか。
いくら類い希なテクニックを持っていても、結局は女の子。しかも相手は代表だ。
自分のプレーが通用するかどうか、という不安がまったくなかったはずがない。
しかも俺たちは無責任にモニカなら通用するだろうと期待している。
そういう環境はモニカにとって精神的な負担のかかる状況じゃなかっただろうか。
でも、モニカはそんな不安は、これっぽっちも表に出さなかった。
余裕綽々の顔で、代表をからかってみせた。
そんなモニカの姿を見て、モニカが通用する姿を見て、
俺たちは勇気づけられていたんじゃないか?
モニカのプレーを見て安心して、自分たちを信じてサッカーができたんじゃないか?
だから、あれだけのスコアを残すことができたんじゃないのか。
いま、自分が同じ環境に置かれて、はじめてモニカの気持ちがわかった気がする。
モニカは俺たちのために、プレーでチームを鼓舞し続けてくれた。
この前半で大量失点してしまった試合、
俺がこの状況でやらなければいけないのは、
この前の練習試合でモニカが俺たちにしてくれたことと同じだ。
闘う姿勢を見せ続ける。自信を持ってプレーする。それがチームに力を与える。
結局試合は4−6で終わった。
その後は拮抗した試合になり、相手に追加点も奪われたが、
俺たちも、なんとか2点を返すことができた。
もちろん負けは負けだ。6点とられた事実は重い。
だが、俺自身は試合の内容に満足していた。
俺はびびらなかった。今日の俺は逃げなかった。
「いいシュートだったね」
ベンチに引き上げる途中で、平山さんが俺の頭をなでる。
俺は笑顔で礼を言う。
代表に選ばれてからはじめて、素直に笑うことができた気がした。
上を見上げれば広がるブラジルの空。
モニカがここにいてくれたらなあ。
でも、モニカはオーストラリア遠征の真っ最中だ。
ふたりを隔てる距離はとてつもなく遠い。
そばにいてくれたなら、
今日の試合について自慢できたのに。いろいろ話せたのに。
きっとモニカならいつもの笑顔で喜んでくれる。
モニカ、とりあえず試合に出たよ。点もとったぜ。
モニカがそばにいない寂しさを少し感じながら、
ブラジルの空の下、俺は心の中でモニカに語りかけた。
「モニカに恋して」
:::::i : | ,ヘ ::::::,!
:::::i : !、. // :::::::,! _ r=、
::::::゙、;ヽ、 i^'i :::/ ;'、===ョ ゙iヽ\
:::::::::\ :゙''- 、,,,__i ヽ、'" ! '゙i;:;:;;!/ /`"
----−`'''ー----ヾ、  ̄`⌒゙ ` ,ノ
┏┓ ┏━━┓ ゙''ー-、,, ,;. 、, f
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┃┃ ┃┃ ,/ ,;-'' `ヽ ゙; ┏━┓
┗┛ ┗┛ i i ヽ ヽ、
「タカシとゆかいな仲間達」
中盤の選手からパスが入る。右足でトラップ、すばやくターン。
エリアまでまだちょっと距離がある位置。
前こそ向けたが、タカシがすぐそこまでチェックにきている。
随分下がってディフェンスに来ている。
ボールを両足の間において、タカシの呼吸を計る。
ボールを動かしながら、肩で右、左と細かくフェイントを入れる。
不意にタカシのバランスが崩れたのが気配でわかる。
あっさりとつられたのに少し驚きながら、
俺が間髪いれずにボールを動かすと、タカシはついてこれない。
俺の前に視野が広がる。
1年生のフォワードがディフェンスラインの裏に動き出している。
落ち着いて浮き球のラストパス。
1年生がそれをしっかりとヘディングでゴールに突き刺した。
「なんかお前うまくなったな」
紅白戦が終わると、タカシが声をかけてきた。
俺はなんと返事していいか少し迷う。
いつもだったら「ばーか、俺の実力にようやく気づいたか」ぐらいの
軽口はさらりと言いかえせるのに。
まだ俺の体内にはさっきのフェイントの感触が残っていた。
タカシを簡単にフェイントで置き去りにした感触。
今までなかったことだった。タカシは決定力が売りのフォワードだが、
ジュニアユースで揉まれていただけあって、基本的な技術はしっかりしている。
そのタカシを抜くというのは相当骨が折れる仕事だったはずだった。
だが今のプレーに限らず、最近、部活でプレーしてて
楽だな、と感じることが多くなった。
余裕を持って前を向ける。相手のプレッシャーをいなすことができる。
しっかりと周囲を見てパスを出すことができる。
判断のスピードがまちがいなく俺は早くなっている。
「やっぱ代表でやってくると違うのかなあ」
俺が何も言わないでいると、タカシがぼそりと呟いた。
タカシの言うとおり、代表に参加するようになって、
俺は技術面も含めてレベルアップしたという実感があった。
ちらりと横を盗み見た俺は、
タカシがなんともいえない複雑そうな表情をしているのに気づいた。
見てはいけないものを見てしまったような気分になる。
ブラジル遠征では、ポンチプレッタとの試合の後、
遠征最終日のコリンチャンスとの試合にも、
後半からの途中出場だが、30分ほどゲームに出してもらえた。
その試合では特に可もなく不可もなくというデキで、
ポンチプレッタとの試合で点こそとったものの、
そうそうたる代表候補の顔ぶれを考えると、
その後も呼んでもらえるかは微妙だ、と自分でも思っていた。
だが、四月の国内合宿のメンバー発表でも、
変わらず俺の名前はMFの一番下におさまっていた。
自分が監督からどういう評価をされているかは結局わからないが、
呼ばれている以上なにがしかの価値を見出しているのだろう。
四月の合宿では、梶山さんをはじめ怪我人が出たことや、
Jリーグの試合を優先して召集できなかった選手もいたためか、
最終日に行われたジェフのトップチームとの試合ではボランチの位置で先発した。
メンバーに俺の名前が呼ばれたとき、
周囲のみんなが息を呑むのがわかったが、一番驚いているのは俺自身だった。
ジェフとの試合はほんとうに楽しかった。
なんていったって、ベンチにはサッカーファンの絶大な支持を集める
あの名将オシム監督がどっかりと座っているのだ。
そして俺がピッチで向き合うのは紛れもないJ1クラブのトップチーム。
こんな経験、誰にだってできるものではない。
何ヶ月か前の俺からしてみれば、文字どおり夢のような話だ。
この試合ではボランチのポジションで、
試合前に小熊監督から「守備重視で行け」といわれたこともあり、
ボールを奪って散らす、人に預けるのが仕事のほとんどという90分間だったが、
俺にとっては楽しい時間だった。
早いスピードのサイクルの中に身を置いている自分がとても心地よかった。
相変わらず、監督から細かい指示はなかったし、
自分がワールドユースへのメンバー争いで
どのような評価をされているかはわからなかったが、
俺にとってはそれは今は二の次のことだった。
おお、今日は沢山来てるね!
相変わらず面白いです。
415 :
U-名無しさん:2005/05/09(月) 04:10:36 ID:Uraz8vAg0
龍時くさくなってきたが、小熊が細かい指示を出さないのは何かしら理由がある、というのはやめて欲しいw
オシムキタ=======(>∀<)======!!!
418 :
303:2005/05/09(月) 10:53:56 ID:kpEtOfCO0
>>21 ずっと遠征だったから、ずいぶん久しぶりだ。
学校に着くとみんながよってきた。
「すげえ活躍だったじゃん」
「これでぜってえ、次のU-18アジア予選も代表に呼ばれるよ」
>>296 そうか。こいつもそうなのか。
サッカーエリートのレールにのってこなかったやつなのか。
これは矛盾しないんだろ〜か?
419 :
U-名無しさん:2005/05/09(月) 11:04:02 ID:Zdt3P+e/0 BE:67527465-
>>301 >
> 小熊はいそいで彼に関する資料を集めはじめた。
> だが、思いのほか情報は集まらなかった。
> いままでほとんど表舞台に出てくることがなかったのだ。
> 代表歴はもちろん、トレセンにもほとんど呼ばれていない。
> 唯一手に入ったのは昨年末の国際大会のビデオだった。
> ついこの前の年末。東南アジアのある国から、ユース年代の国際大会の招待がきた。
> といっても高校サッカーは冬の選手権真っ盛り。
> クラブユースもJユース杯とバッティングしている時期であり、
> 本来なら参加を辞退したいところだが、諸般の事情によりそれはかなわず、
> 冬の選手権の予選敗退校の選手を中心に急遽編成し、日本高校選抜として参加した。
> お世辞にも日本のトップレベルとは呼べない選手たちである。
> その時、彼も選手の一人として遠征に参加していたのだ。
この時期の事じゃないのかなあ。
「ずっと」
と言う言葉が若干引っかかるけどね。
>>419 う〜ん・・・・
納得することにする。 かたじけない。
「次は合宿いつあるんだ?」
タカシが話題を変えた。俺は内心ほっとする。
「5月の上旬。選ばれれば、だけどな」
「選ばれそうなのか?」
わかんね、と首を振る。
ネットで見た四月の合宿に関する小熊の俺へのコメントは、
「競争に加わる存在だと思っている」の一言だけだった。
とりようによっては、ダメを出されてないだけいいともいえるが、
Jリーガーがずらりとそろったライバルの名前を考えてみると厳しい気もしてくる。
「サッカーはクラブ名や学校名でやるもんじゃないぜ。
自分がどれだけできるかだ」
俺の気持ちを読み取ったみたいにタカシが言う。
落ち着いて考えればその通りだ。相手がJクラブにいようが、
結局は個人の能力が選ばれるかどうかの基準だ。
タカシはジュニアユースでやってきたせいか、
そのへんの競争に対する考え方というのはしっかりしている。
この前もそうだったが、そんなタカシの言葉は俺にとって結構助けになっている。
「しかしなー、モニカちゃんがいないとほんとさみしいよなー」
さっきの微妙な表情は消えて、もういつものタカシに戻っている。
今日のモニカはレッズレディースの練習に行くため、部活のほうは休みだ。
最近のモニカは大忙しだ。
三月中旬のJヴィレッジの合宿から帰ると、下旬にはオーストラリア遠征。
俺がちょうどブラジルでポンチプレッタとの試合にでた26日、
モニカもオーストラリアで女子日本代表としてのデビュー戦を飾っていた。
不思議な縁ともいえた。
その試合でモニカは2得点を挙げる文句なしのデビュー。チームも2−0で勝った。
モニカ人気は凄いもので、さすがに生中継とはいかなかったが、
試合の模様は深夜にちゃんと録画放送されたらしい。
五月のニュージーランド代表との試合に呼ばれるのも確実だ。
代表とレッズレディース、それにトレセン関係の話も入る。
最近は俺も代表の活動が入ってきたので、チームを留守にすることが増えてきた。
すれ違いばかりで、モニカとゆっくり顔をあわせることが最近ない。
あわただしさの中で忘れていたけど、よく考えると寂しい話だ。
「ま、チームのほうはよろしく頼んだぜ」とタカシに言うと、
「力をつけたお前が合流すれば、今年はマジで冬の選手権に行けるからな。
お前も代表でしっかりやってこいよ」と真顔で返された。
既にはじまってる公式戦では、フォワードのタカシの大爆発で
うちの学校は俺がいなくても快進撃を続けている。
タカシが真剣に冬を見据えているのがひしひしと伝わってくる。
「ああ。頑張るよ。選ばれたら、の話だけどな」というと、
タカシが、大丈夫さ、お前なら、とにっこり笑った。
「意外と人はいってるな」タカシが周囲を見渡して呟いた。
「アテネ効果もあるし、俺たちみたいにタダの人も多いしな。
といっても、一番大きいのはやはりモニカ効果なんだろうな」
俺が応じる。いま、俺たちがいるのは西が丘サッカー場。
文字どおりの五月晴れ。
今日はこれから女子日本代表のニュージーランド戦だ。
観客席は、ほぼ満席といっていいぐらいの混雑だ。
協会加盟選手はタダで見ることができるので、
うちの部も予定がないやつは全員来ているが、
まとまっては座れないのでいくつかのグループに分かれて、ちらばっている。
ピッチではモニカが試合前の練習をしている。
ビブスを見る限り、今日も先発のようだ。
いつも同じグラウンドに立っているとわからないけれど、
こうやって離れた観客席から見ていると、
モニカの動きは女子日本代表の中でも群を抜いている。
なにげないステップやボールの扱い、シュートに行く身のこなし。
「やっぱモニカちゃん、うめえよなー」
タカシが隣でため息を漏らす。
そのため息が届いたわけじゃないんだろうが、
練習していたモニカが俺たちのグループに気づいた。
なんのてらいもなく、笑顔で両手を上げて大きく振る。
うちのバカどもが大喜びで一斉に立ち上がり、手を振り返した。
モニカはそれを見ておかしそうに笑う。
少しすると練習の時間が終わり、モニカも他のメンバーと一緒に
ロッカーへ引きあげていった。
もうすっかりチームにもなじんだのだろう、歩きながらみんなと楽しそうに話している。
やがて選手紹介のアナウンスがはじまる。
GKはアテネでもゴールを守りし、今年は海外へ活躍の場を求めた山郷。
その可憐な容姿で絶大な人気を誇る川上の名も呼ばれる。
澤。誰もが認めるなでしこジャパンの屋台骨だ。
選手の名前が呼ばれるたびにスタンドが盛り上がりを高めてゆく。
そしてモニカ。モニカの名前がコールされると
スタンドは一番の盛り上がりとなった。
男子代表相手にフリーキックをぶち込んだ二月の試合はもはや伝説だ。
この試合が、日本の観衆の前でのデビュー戦となる。
新しいヒロインを目の前で見る興奮に、
客が熱狂的に盛り上がるのも無理はなかった。
発表されたメンバーを見る限り、今日のモニカは4−4−2の
中盤の4の真ん中を澤と二人で努めるらしい。
上島監督は澤とモニカのダブル司令塔というやや攻撃にシフトした布陣を、
これからのなでしこジャパンの基本に考えているようだ。
試合開始の笛が鳴る。
相手のニュージーランドはFIFAランク20位。
数字上は12位の日本のほうが格上となるが、
FIFAランクの誤差を考えるとほぼ互角の試合になるか、という
俺の予想はあっさりと外れた。
425 :
U-名無しさん:2005/05/11(水) 17:33:45 ID:j4YWZ/U/0
保守
開始10分、敵陣で澤が倒されてファール。
モニカの蹴ったフリーキックはゴール前の密集から、
頭ひとつ抜け出した荒川のボンバーヘッドにどんぴしゃりと合った。
ヘディングシュートがゴールに吸い込まれ、あっさりと先制。
さらに25分、モニカがサイドへドリブルで持ち込み、
ゴールライン際の狭いスペースをディフェンダーを翻弄して突破。
キーパーを前に釣りだしたところで、余裕を持ってマイナスのパス。
走りこんできた澤がキーパーのいないゴールへ確実に蹴りこんだ。
さらに40分、川上のロングボールを受けたモニカが、
ディフェンダーの頭上を抜く鮮やかな浮き玉のトラップで裏へ抜け出す。
カバーに来た相手のセンターバックをひきつけてからフリーの荒川へラストパス。
荒川が飛び出したゴールキーパーの脇を抜いてシュートを決め、
前半で3−0。一方的な展開になった。
流れは後半も変わらない。しっかりとボールを持てるモニカを中心に、
なでしこジャパンは圧倒的なボールポゼッションでゲームを支配。
落ち着いたパス回しに、じれたニュージーランドはたまらずゴール前でファール。
ゴールほぼ正面、エリアから2,3メートル離れたところ。
観客席から一斉に歓声が湧き上がる。
モニカが歓声の意味はわかってるといわんばかりに、堂々たるそぶりでボールをセット。
助走からモニカの左足が振りぬかれる。
ボールは相手選手の壁を越え、落ちながら左に曲がり、
相手のゴール左に吸い込まれる。相手キーパーは呆然とボールを見送るだけだ。
相手選手たちはありえないものを見たという表情で立ち尽くしている。
再びピッチ上では日本の選手の喜びの輪ができる。その中心にいるのはモニカだ。
「信じられねえ・・逆にカーブかけたんか・・?」
タカシがあきれたようにつぶやく。
右足で蹴って左に曲げる、左で蹴って右に曲げるのはたやすい。
だが、地面においてあるボールを左足で蹴って左に曲げる、
しかも壁を越えて落としながら曲げるというのは、非常に高度な技術が必要だ。
プロでフリーキックの名手といわれる選手でも、簡単に蹴れる代物ではない。
まったくとんでもないやつだ、なかなか追いつけないわ・・・
俺は、心の中でそっと苦笑いしながら荷物を持って立ち上がる。
モニカちゃんすげぇ〜
荒川がボンバーヘッドだけじゃなかったのが
うれしい。
「どうした?もういくんか?」
タカシが声をかけてくる。
「ああ。試合のほうはもう決まっただろう。
試合終了後だと混みそうだから、余裕持って出るよ」
俺は自分の荷物をまとめる。そばにいた下級生が手伝ってくれる。
「終了後の挨拶だってあるのに。当分、モニカちゃんと会えないんだろ?お前。
なにか話していけよ、モニカちゃんに冷たいぞ」
タカシは少し不満そうだ。
明日から代表の強化合宿がはじまる。今日中に宿舎に集合しなければならない。
合宿中、壮行試合をこなしながら、合宿は5月いっぱいまで続き、
そのまま俺たちはワールドユースの行われるオランダへ出発する。
現地で最終調整を行って、6月10日にいよいよ本番の
グループリーグの初戦、オランダとの試合に臨むことになる。
一ヶ月近く、勝ちあがれたならばもっと長い間、学校のみんなとは会えなくなる。
タカシの憎らしい顔もしばらく見納めだ。
モニカもこの後、そのままロシア遠征へ出かけることになっている。
二人ともいないのはタカシにしてみればずいぶんさみしいかもしれない。
「大丈夫だよ、俺とモニカは心でふかーくつながっているからな」
「ぬかせ、モニカちゃんとつながってるのは俺のほうだ」
とタカシは笑って言い返した後で、真顔に戻って
「おい、あんな舞台誰でも経験できるわけじゃないんだからな。
しっかり気合入れて頑張ってこいよ」
わかってるよ、と俺はタカシの顔を見ながら答える。
こいつが友達でよかった。俺は心底そう思う。
タカシもゆっくりもう一度うなずき返した。
周りに座ってた部のやつらからも口々に、頑張ってこいよ、応援してるぞ、
という声がかかる。俺は一つ一つに返事しながら、
いい仲間を持ったことに感謝していた。
試合を見ている周りの客に迷惑がかからないうちに引き上げることにする。
通路を抜けスタンドの出口まで来たところでピッチを振り返る。
もちろん試合はまだ続いている。ピッチを走るモニカの姿が見える。
その走る姿がなぜか妙に遠いものに見えてしまう。
モニカ、行ってくるぜ。
会えないのはちょっと寂しいけど、頑張ってくるぜ。
俺はズボンのポケットに手を入れて、大事なものがちゃんと入っているのを確かめる。
指の感触が昨日の朝のことを思い出させた。
あああああ泣けてくるのはなぜだあああああ。・゚・(ノД`)・゚・
まさか幸運のマン毛!?
。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
434 :
U-名無しさん:2005/05/13(金) 12:19:58 ID:t/3sv2Qb0
( ;´Д`)も、もう我慢できん・・・!!
Σ⊂彡_,,..i'"':
|\`、: i'、
\\`_',..-i
\|_,..-┘
( *´ω`)ムシャムシャ
つi'"':
`、:_i'
モニカの妹はまだか?
タカシの妹でも構わんが
いつもの朝の日課。
公園で一人でやるリフティング練習。
ボールを蹴り上げる、頭を経由して首の後ろでホールド。
そのまま背中づたいに落として右足のヒールで蹴り上げる・・
はずだったが、背中を転がったボールは足にきっちりあたらず、
見当違いの方向に転がっていった。
あと少しなんだけどなあ。モニカの教えてくれたこのトリック。
突然拍手が聞こえる。びっくりして音のしたほうを振り向くと、
モニカが笑いながら立っていた。
「モニカ!?」俺は驚く。「どうしてここに?」
モニカは明日の親善試合に備えて今日から代表に合流する。
今日は学校は公休扱いで休むはずだ。
モニカが俺の背骨をさわる。どうやらトリックのコツを教えてくれるらしい。
俺が首にホールドした状態から体を起こし、ボールを離す。
モニカが俺の背中で手に持ったボールを動かして、
どういう感じでボールを背後に落とせばいいのか、感覚をつかませてくれる。
2、3回モニカのガイド付きでやった後、実際に試してみる。
さっき背筋に伝わったボールの感触を忘れないように意識しながら、首でホールド。
起き上がりながらボールを離す。ボールが背中を伝って落ちていく。
そこを右足のヒールで軽くキック。ボールがかかとに当たる感触。
狙ったよりは大きくなったが、ボールは見事に弧を描いて俺の正面に落ちてきた。
俺は急いで足を伸ばしてそのボールをトラップする。
「very good!」モニカの拍手。ようやくできた。
俺たちはそのままベンチに並んで腰掛けて、話しはじめた。
「お前、試合のほうは大丈夫なのか?」
モニカが優しく笑って手を出した。その手に何かが握られている。
「明日カラ、当分会えないから渡シニ来たノ」
手のひらの上に袋に入ったお守りがのっている。
「プレゼント。ワールドユースがんばっテネ」
不思議な気持ちで胸がいっぱいになる。俺はそのお守りを手にとる。
暖かい力が自分の中に流れ込んでくるような気がする。
「ケガしないで、がんばっテネ」
「モニカも明日は頑張れよ」こういうときに気の利いたことがいえない。
俺はU-20、モニカはなでしこジャパンにレッズレディース。
最近はどちらかがいない、ということが多くて、
モニカと顔をあわせる時間も随分少なくなっている。
俺は久しぶりにゆっくりとモニカと話ができることが嬉しかった。
神様がくれた初夏の朝のプレゼント。
モニカが話す。なでしこジャパンの練習のこと、チームメートのこと。
同じように俺はU-20の代表の話をする。
身振り手振りを入れながら、サッカーファンの間ではすっかり有名な
小熊監督の試合中のパフォーマンスの真似をする。
モニカは大きく口を開けて笑っている。
もうプロでやってるうまいチームメートのこと。ブラジルで対戦した相手のこと。
よく考えてみれば、モニカに話したいことがたくさんあった。
代表という新しい世界で新しいものに触れ、何かを感じるたび、
自分の見たもの、自分の感じたことを、
俺はモニカに伝えたいといつも思っていた。
きっとモニカなら俺が感じた様々な気持ちを、
一緒にわかちあって、わかってくれるような気がしていた。
チューしろ、チュー!
御守りに下の毛ってジャパンオリジナル?
もっとこう、モニカの容姿について描写しる!
ボールを使って背中をゆっくりとなでるプレイか ....〆(・ω・` )めもめも
age
「おい、モニカ。これ、交通安全のお守りじゃん」
もらったお守りをよく見た俺は思わず声をあげた。
よく見ると大きく「交通安全」と書いてある。
「コウツウアンゼン?」モニカは意味がわからないようだ。
「ううーんと、traffic accidentでいいのか?」
何度か言葉をやり取りして、ようやくモニカにも意味が通じたようだ。
お守りにもいろんな種類があって、
これは主に自動車やバイクに乗る人が事故にあわないように、
身につけるお守りだということを、さらに言葉を費やして説明する。
「ゴメンナサイ。マチガエタ」とモニカがしょげている。
「オーケー、オーケー。これがあればきっと飛行機に乗っても大丈夫だよ」
モニカのしょげっぷりに急いでフォローしたものの、
モニカはほんとうに落ち込んでいる様子だ。
「マダ、日本のこと、ヨクワカラナイ。モット勉強スル」
それでいいんだ、と俺は元気づける。
モニカにはこれからまだまだ時間がある。これからどんどん日本を知ればいい。
俺だって何も知らないガキだけど、日本のことなら少しは教えることができる。
「そうだ、モニカ。俺がワールドユースから帰ってきたら、
一緒に遊びに行こう。いろんなとこ連れてってやるよ」
さりげなくいったつもりが、どきどきしてる。
俺、モニカのことをデートに誘ってるんだ。
モニカが俺のそんな狼狽に気づいたかのように、小悪魔のように笑う。
反応を楽しむかのように、じっと俺の顔を見返す。
思わず俺の視線があらぬところをさまよう。
「イイヨ。イッショに、アソビに、行こう」
モニカの笑顔。
気持ちが通じあえてる、という感覚があった。
「約束だぞ」「オーケー」
もう時間だ。俺とモニカは立ち上がる。
「ワールドユース、ガンバレ」
モニカの声援に俺は任せとけ、とばかりにガッツポーズで応える。
447 :
U-名無しさん :2005/05/15(日) 03:25:23 ID:gekbVU060
age
いかん。読みながらにやにやしてしまう
この後、モニカが不治の病に冒されるのかと思うと
もう涙が止まらんのだが…
aaaああ おれだけのモニカがぁあああぁぁ 。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
>>449 ほんとかよ!そんな切ない展開は絶対イヤだ ・゚・(つД`)・゚・
「なに、ニヤニヤしてんだよ」
はっと我にかえると、森本が目を細くしてこっちを見ている。
「ああ、またモニカちゃーんの妄想ふけってたのか。
帰ったらデートにでも誘おうとか考えてたんだろう」
森本がルパン三世の不二子ちゃんの真似をして語尾を延ばす。
図星をつかれて、俺は思わず森本にヘッドロックをかける。
「あ、いてえな。なにすんだ、このやろう」
森本が抵抗するが俺は離さない。
そのまま二人でベッドの上を転げ回る。
「お前ら、いつのまにかほんとうに仲良くなったな」
平山さんが呆れ顔で俺たちを見ている。
いわれてみれば、まったくそのとおりだ。
最初部屋割りで森本と二人部屋と聞いたときは、
正直いい気分はしなかったものだ。憂鬱だな、というのが本音だった。
だが、いつのまにかすっかり意気投合している。
一緒に生活している、というのもある。そして、この前の試合・・
「お、みんなそろそろ時間だぜー。ミーティングに行くぞ」
ポータブルのDVDプレーヤーで映画を見ていた増嶋さんが立ち上がった。
もうそんな時間か、とカレンも起きる。
みんなが動き出して、自分の部屋に戻る準備をし始める。
「おい、ちゃんとちらかしたもの片付けていけよ」と
森本が叫んだが、みんな聞いているのかいないのか。
森本が口を尖らせて俺を見る。お前も言えよ、ということらしい。
俺は苦笑いしながら肩をすくめてみせる。
やれやれ、あとで簡単に床の掃除をしておこう。
>>449 違うよ、デートの待ち合わせ場所に行く途中で
交通事故にあうんだよ。
そんで、双子の弟がサッカーを始めて甲子園に出るんだよ。
455 :
U-名無しさん:2005/05/16(月) 11:04:48 ID:BJ/2Zo4/0
↓前回までのあらすじ↓
モニカ(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
日本での10日間の強化合宿を経て、オランダ入りした俺たちは、
現地での最終調整を経て、ワールドユースに臨んだ。
初戦の相手は開催国のオランダ。
日本は初戦の固さもあってか、相手のしっかりとした個人技に
ボールを支配されて、ペースをつかめないまま試合を進めてしまう。
中盤でボールを奪えず、いいようにパスを回されてしまう。
やがて、中盤と前線の間が開きだし、平山さんが孤立しはじめる。
前半こそ0−0で持ちこたえたものの、
後半の開始早々にゴール前の混戦から押し込まれて先制点を許すと、
20分にはセットプレイから失点して、2点差をつけられる。
小熊監督は、前田さんを投入してベースの3-5-2から、
左サイドが高い位置で構える3トップに近い形へ変え、
点をとるべく、さらに森本を投入する。
その効果あって後半は何度かチャンスを作るが、
相手もしっかりとゴール前を守り、そのままスコアが動くことはなかった。
後半、多少の見せ場こそ作ったものの、試合全体を通してみれば
オランダに終始完璧に流れを握られて、内容的には完敗といってよかった。
俺はベンチでタイムアップの笛を聞いた。
中四日開けての第2戦はアフリカのベナンが相手。
正直、はじめて名前を聞いた国だったが、
身体能力の高いアフリカ勢、万に一つも油断なんかできない。
試合は、ベナンのスピードと速さに手を焼きつつも、
日本代表も連携の取れたパス回しと組織立った守備で対抗する。
先制点は日本。ボールを奪った本田さんがすばやくサイドに散らし、
中村さんが右サイドから早めのクロス。
このボールを平山さんがヘディングで合わせ、今大会、日本代表の初ゴールを決めた。
後半に入ると、今度は相手ペースの試合になる。
セーフティに行こうという意識が強く出てしまったのか、
相手の個人技に体力を消耗させられたのか、
初戦と同様にFWと中盤との間にギャップができて、ベナンにボールを持たれてしまう。
もはやすっかり名物となっている小熊監督の猛烈な激が飛ぶが、
なかなか中盤に開いてしまったスペースを埋められない。
攻め込むベナン。だが、日本のディフェンス陣も粘り強く相手にしがみつく。
ここで負けたらグループリーグ突破の可能性はほとんどなくなる。
ベナンが立て続けにフォワードの選手を二人投入する。
それを見た小熊監督も動く。兵藤さんに代えて、怪我から癒えたばかりの杉山さんをイン。
ボランチの本田さんを兵藤さんがいたトップ下にスライドさせて、杉山さんがボランチ。
動きの落ちていた兵藤さんを下げ、本田さんをトップ下に上げることで、
前のほうでの守備を厚くするとともに、
カウンター時のパスの出し手も残しておく、という狙いか。
35分にはカレンに代えて原さんを投入。
ピッチに入った原さんは前線で懸命にボールを追う。
小熊監督の激が、それに重なる。
「ボールを追え!コースを切れ!」
点差は1点だったが、最後のほうはベナンも手詰まり感が漂い始めていた。
日本も、何度かカウンターのチャンスを掴み、シュートチャンスもあったが、
追加点を奪うことはできなかった。
結局そのまま1−0でタイムアップ。
決勝トーナメント進出のためには、大きな意味を持つ1勝だ。
460 :
U-名無しさん:2005/05/18(水) 07:50:44 ID:EMzkUgssO
保守
461 :
U-名無しさん:2005/05/18(水) 11:08:22 ID:1DS5ULfaO
リフティング男?
>>261 そんな二番煎じなタイトルなんかイヤだ!ヽ(`Д´)ノ
463 :
462:2005/05/18(水) 20:49:37 ID:yZ8yyYq8O
今日もスタンドは観客が少ない。
それでもスタンドの一角には、青いユニフォームで埋まったブロックが見える。
日本のサポーターたちだ。彼らの唄が聞こえてくる。
こんな遠いところまで俺たちの応援に来てくれる。
異国の地だからこそ、そのありがたみを俺は改めて実感した。
とはいえ、スタンド全体を見渡すとやはり寂しい感じはする。
地元オランダと対戦した開幕戦こそ、そこそこの入りだったが、
この前のベナン戦、そしてこのオーストラリア戦といい、ほとんど客がいない。
オランダ人はあまりユース年代のサッカーに興味がない、という話を
耳にしたが、どうやらほんとうなのかもしれない。
俺たちが予選リーグ3試合を闘うのはパルクスタットリンブルクスタディオン。
最近建てられたスタジアムらしく、
白い半円をつなげた形の屋根がきっちりと観客席を覆っている。
建物がまだ新しさがかもし出す清潔感を漂わせている。
改めて思うのがスタンドとピッチの距離が非常に近い。
日本語で言うとスタジアムというよりも、
サッカー場という言葉が持つイメージのほうがこの場所にふさわしい。
今日は観客がいないから気にならないが、
満員だったら相当な圧迫感を感じるだろう。アウェーだったらなおさらだ。
これが本場のスタジアムなんだ、と俺は妙なところに感心する。
といっても、まだ俺はそのスタジアムのピッチにもたっていないが。
俺たちがベナンに勝った日、オランダはオーストラリアを破り、勝ち点6。
2位以上を確定し、グループリーグ突破を早くも決めた。
今日の相手のオーストラリアは初戦でベナンを2−0で破り、
オランダには0−1の1点差の敗戦だった。
勝ち点3は日本と同じだが、得失点差は+1と日本を上回っている。
すなわちこの試合で勝てば、俺たちは2位以内が確定し、
決勝トーナメント進出が決まる。
引き分けもしくは負けてしまって3位になった場合でも望みはある。
ワールドユースの勝ち上がりはやや変則的な仕組みになっていて、
六つある各グループリーグの3位チームのうち、
上位4チームまでが決勝トーナメントに進出できる。
マスコミは日本代表が勝ち上がるにはどんなパターンがあるが、
あれこれと計算をしているみたいだが、
試合に臨む側にしてみれば、他力本願のケースは計算に入れていない。
オーストラリアに勝ち、きっちり2勝して
2位以内を確保する、それ以外は頭にない。
それに何位で抜けるかによっても、相手の強さが変わってくる。
決勝トーナメント初戦で必ず他のリーグ1位とあてられる3位抜けより、
2位抜けのほうがいいのは誰の目にも明らかだ。
この試合で、グループリーグの3試合で終わりたくない。
まだ、俺は何も掴んでない。何も肌で感じていない。
次の試合を、そしてもっと高みへ。
その切符は願わくば俺自身がピッチにたって掴みたい。
だが現実は今日も俺はベンチからのスタートだ。
今日のシステムはベースにしている3−5−2。
スタメンはGKにいつもどおり大分トリニータの西川さん。
DFは、左にレアルマドリーとの親善試合で名を売ったジェフの水本さん。
真ん中にアジアユースでもキャプテンのイケメンの闘将、増嶋さん。
右に柏の成長株の小林さん。
ボランチはルーキーながら名古屋で完全にスタメンに定着、
評価も急上昇中の本田さんに、
清水でもコンスタントに試合に出ている杉山さんが努める。
今日のトップ下は疲れが見える兵藤さんに代えて水野さん。
今年に入ってジェフでも一気にブレイクし、注目が集まっている有望株だ。
アウトサイドは右にアビスパの中村さん、左にガンバの家長さん。
ともに早い時期からそれぞれ評価の高かったテクニシャンだ。
FWはJ初得点も記録して今季好調のカレン。
そしてこのチームの誰もが認める不動の中心、平山さんだ。
ほぼ小熊監督の考える基本形のスタメンといっていい。
俺の出番があるとすれば、後半ある程度の時間が経過したところだ。
このチームは中盤の流動性が高い、ありていに言ってしまえば、
怪我人が多かったせいで中盤が固めきれてない。
俺もチーム練習では、中盤のすべてのポジションをひととおりやらされている。
三試合目ということもあってスタメン組のスタミナの残り具合も気になるし、
怪我などのアクシデントも考えなくてはいけない。
やるだけだ。俺は心の中で呟く。どんなシチュエーションであれ、
与えられた状況の中でベストを尽くすだけだ。チャンスよ、来い。
ベンチの中で俺は一人祈る。
見ている側にしてみればスペクタクルに欠けるつまらない試合だが、
ピッチにいる側にしてみれば胃が痛くなるような、そんな試合展開になっている。
中盤での激しい潰しあいが延々と繰りかえされている。
この試合の重みがわかっている双方のディフェンス陣が、
集中を切らさずに、激しいチャージで攻撃の芽を摘み取り続ける。
思わずベンチから立ち上がるような決定機もない代わりに、
目を覆ってしまうようなピンチもない。
長い長い膠着状態。どちらかが根負けして穴が開くのを待っている。
やっている側にしてみれば、相手とにらめっこしながら
湯舟に肩まで浸かって我慢し続けるようなそんな辛い持久戦だ。
だが先に音を上げることは許されない。それはすなわち敗北への一本道だ。
ハーフタイムをまたぎ、後半に入る。
開始してしばらくは多少ボールが落ち着かない時間帯があったが、
それが過ぎると、前半と同じようなひりひりするゲーム展開になった。
日本のロングボール、こぼれ玉。相手の出足が早い。
ボールを拾った選手がすばやく前にボールを送るが、そこは日本の中盤が網にかける。
本田さんと水野さんがふたりがかりでボールを奪ってサイドへ。
だが、4−4−2のオーストラリアはしっかりと
人数をかけてサイドの攻防に対処してくる。
突破できずにボールを奪われる。そしてまた前へ。
そのボールをまた日本が奪う。これの繰り返しだ。
だが時間とともにあせりがでてくるのは日本のほうだ。
得失点差ではオランダが日本を上回っている。
引き分けなら2位以上を確保するのはオランダだ。
点をとるしかない。小熊監督はまちがいなく攻撃のオプションを使う。
後半が開始して少しした時点で、控え選手はみんなアップをはじめている。
15分過ぎ、最初に呼ばれたのは前田さん。家長さんと交代する。
前田さんは左足が武器だが、本来サイドの選手ではない。
だが、小熊監督は前田さんの攻撃力を買ってサイド起用を何度か試していた。
前田さんが少し高めに位置する3トップに近い変則的な3−5−2に変わる。
ピッチに入った前田さんが懸命に左サイドをかきまわす。
ゴールに向かえ、という指示なのか、サイドをえぐるだけでなく、
ボールを受けると積極的にエリア目指して中へ切れ込んでいる。
だが、オーストラリアもその辺のエリアは人数をかけて守っている。
なかなかきれいに抜けきるところまでいかない。
逆にオーストラリアはボールを奪うと、
ロングボールを前田さんの後ろのスペース、うちの左サイドに
ほうりこんでくることが多くなった。
どうやら守ってカウンターのサッカーに切り替えたらしいが、
本田さんと水本さんが破綻することなく対処する。
今日のディフェンス陣はいい集中ができている。
残り15分になるかというタイミングで、森本が呼ばれる。
ようやく出番が来たか、という表情で歩いていく。
カレンに代わって森本がイン。ポジションはそのまま2トップの一角。
もう日本は点をとるしかない。オーストラリアは完全に
引き分けを頭に入れたサッカーをしている。この時間帯なら当然だ。
森本が前線で平山さんの周りを衛星のように動き回る。
毎度乙です。
>>467 > 引き分けなら2位以上を確保するのはオランダだ。
オーストラリアでは?
前線に入るロングボール。平山さんが懸命に競る。
オーストラリアのディフェンダーも結構上背があるが、
それでも互角の勝負をしているのはさすが平山さんだ。
そのこぼれ玉を森本が必死に追うが、相手の人数が多い。
たまに足元に収めたときも、すぐに囲まれてつぶされてしまう。
倒されてボールを奪われた森本が悔しそうに腕を振った。
アップしながら横目でピッチを見ていて、ふと不審に思う。
平山さんと森本が前線で孤立しているように見える。フォローがない。
だからパスの出しどころがなくて、
時間稼ぎにキープしてる間に複数の相手に囲まれてボールを奪われてしまう。
後ろの選手がロングボールを放り込むだけで、蹴った後の動きがない。
小熊監督も後ろの選手に、もっと押し上げるように
声を張り上げているが、選手たちの反応は鈍い。
なぜ?確かに3試合目で疲労は蓄積しているが、
そこまで動きが止まってしまうような感じの試合ではなかった。
事実、飛んできたボールにはきちんとすばやく反応している。
押し上げられないのではなくて、押し上げていないのだ。
勝たなければ意味がない試合なのに、と思ったが、すぐに合点がいった。
このまま引き分けで終われば日本は勝ち点を1上積みして4。
いま、同時進行で行ってる他グループの結果次第だが、
勝ち点4なら3位抜けできる可能性はそれなりにある。
だが、ここでオーストラリアに1点奪われて
負けてしまった場合、勝ち点は3どまり。
万が一、ベナンがオランダに勝つと勝ち点で並ばれてしまうし、
仮に3位を確保できたとしても、勝ち点3では
3位抜けの4チームに入れるかは、はなはだ微妙な位置になる。
果敢に攻撃して2位をとるしかない、という試合をするのか、
6分の4の可能性に賭けて、3位突破も睨んだ試合運びをするのか。
3位突破の選択肢が微妙にピッチにいるメンバーの頭にちらついている。
この時間になるとカウンターの恐怖が守備の選手の足を縛る。
その恐怖がラインを押し上げようとする足を止める。
ベンチにいる身としては自力できっちり決めてくれ、と思う。
他会場の結果次第なんてまっぴらだ、と思う。
だが同時にいま、ピッチに立っている守備の選手の気持ちも痛いほどわかる。
リスクを侵す恐怖。自分のミスから決勝点を奪われたらという恐怖。
そのときだった。
「樋口!」滝沢コーチの呼ぶ声。出番だ。
周りでアップしていた選手からふっと息が漏れる。
今日は自分の出番はないことを知った心が漏らすため息だ。
俺は手早くトレーニングウェアを脱いでユニフォーム姿になる。
監督の前に立ち、指示を聞く。
小熊監督の目が俺を射る。話す声はこの大会、大声で激を
飛ばし続けたせいか、すっかりがらがらだ。
「お前はトップ下のポジションに入れ。
中村がでるから水野が右サイドに回るように伝えろ。
お前の仕事は、フォワードとボランチの間のカバーだ。
とにかく走り回ってボールを奪え。早く寄せろ。
どんどんエリア内へシンプルにラストパスを入れていけ。
もう時間はない。最短距離で点を狙っていけ」
俺はうなずく。
ボードを掲げる審判の後ろに立ち、出番を待つ。
目の前に広がるバックスタンドが俺を待っている。
軽くステップを踏んで足を動かす。
モニカ、見てるか。確か生中継あったよな。
もし3試合目まで待たせちゃったのならごめんな。
パンツの腰の部分にそっと手を当てる。
パンツに縫いこんだお守りの感触。
ホペイロの方に事情を話したら、
プレー中にとれたり、邪魔になったりしないよう、ていねいに縫いこんでくれた。
審判の笛。プレーが切れた。
中村さんがラインまで走ってくる。
「後は任せたぞ」「はい」
俺は芝の感触を足の裏で味わいながら、ピッチに走り出す。
センターサークルまで走り、周囲をぐるりと見回す。
緊張をほぐすのと、距離感をしっかり掴むために、
ピッチに入ったらまず周りの景色をじっくり見ろ、というのがタカシのアドバイスだった。
頑張れ!お守り!
474 :
U-名無しさん:2005/05/20(金) 23:21:21 ID:0xw2kcfA0
あげとくよ
まず水野さんのところへいってポジションチェンジの伝達。
多少疲れが見える。最初見たときは、この華奢な体でジェフのあの運動量豊富な
サッカーをこなしているのか、と随分驚かされたものだが、
さすがに3戦目ともなると、タフな水野さんでもいくらかは堪えるらしい。
後ろの本田さんにも大声で監督の指示を伝える。
だが、点を取れといっても、なかなか前へは出てこられないだろう。
そこをカバーするのが俺の役割だ。
時間は残り少ない。オーストラリアは完全に引いている。
ハーフウェーラインまで引いて、本田さんからボールをもらう。
前を見る。前線の選手にはきっちりマークがついている。
動き回り小刻みに進路を変えて、マークを外そうとしているが相手も必死だ。
右サイドの水野さんを見る。
ロングキックを入れると見せかけてフェイント、相手の動きを観察する。
マークがすっと水野さんに近寄ったのが見えた。
あの間隔じゃ放り込んでもチャンスにつながる確率は低いだろう。
ちらりと見る左サイドも状況は同じようだ。
徐々に前に進出。ハーフウェーでは好き放題持たせてもらえるが、
ここから先はそうも行かないだろう。相手の視線がボールを持つ俺に絡みつく。
森本がいったん引いてくさびのパスを受けにくる。森本にパス。
森本は前を向こうと試みるが、背後についているマークがそれを許さない。
俺にボールが返ってくる。
試しに前に突っかけてみるか、という考えが頭をよぎるが、相手の人数が多い。
中央に単独ドリブルで突っかけてボールを奪われたら、
相手に絶好のカウンターの機会を与えることになる。
じゃあ、安全にロングボールで行くか?それは確率も低いし、まさに相手の思う壷だ。
ボランチの二人にもう少しリスクをとってもらって、
前目の位置で顔を出してもらわないと手詰まりだ。
俺はボールを本田さんに預け、自分が前線に入ってみる。
バイタルエリアまで入るときっちり相手のマークがついてくる。
動き回ってみるが、なかなかスペースがない。
何度か縦の動きで引いてパスを受けてみるが、勝負できる位置ではマークが外れない。
ボールを奪われるリスクを考えると、ついついセーフティにボールを戻してしまう。
ボランチにもう少し前でプレーするよう手を振って叫んでみるが、
恐怖に足元を縛られた彼らの動きは鈍い。
観客の声が何かを叫んでいるのが聞こえる。日本のサポーターか。
もう何も考えずに平山さんの頭めがけてほうりこめ、と言っているのだろうか。
確かにもう時間がない。押し上げが期待できないのなら、
自分の力で勝負するしかない。危険は承知のうえで、前を向くしかない。
右でボールを受け、本田さんへ戻すと横へダッシュ。
本田さんからピンボールのようにパスが返ってくる。
足下を通して前を向こうと思ったが、マークもぴったりついてくる。
ダッシュ一本でマークを外そうというのはさすがに押しが太い。
俺はパスのボールをスルーして、そのまま相手の体を抱いて背後に入れ替わる。
見ようによってはボールを離す、軽率な、危険なプレーだ。
怒られるかもしれない。だが、俺にはそれぐらいしかアイディアがなかった。
ええい、ままよ。ステップを切った俺の足元にボールが収まる。
うまくいった。成功だ。目の前には相手のディフェンダーがむき出しだ。
急げ、迷ってる時間はない。後ろから手が伸びてくる気配。すぐに決めろ。
右に平山さん、左に森本。どっちだ?
左の視線を感じた俺は、迷わず正面へショートパス。
森本がラインを巻く、ウェーブの動きで中に入ってくれば、
どんぴしゃであうはずだった。
だが、森本は縦へ、ゴールライン側へ走っていた。
受け手を失ったパスは力なく転がり、相手キーパーが拾い上げる。
森本が怒った表情で手を広げる。俺は言い返したいのをぐっとこらえて、
カウンターに備え、ハーフウェーライン目指して全力疾走する。
キーパーのパントキックが相手フォワードへ。
だが、ハイボールの1対1の競り合いはあっさりと水本さんが勝った。
こぼれたボールを落ち着いて本田さんがキープ。これでカウンターの危険はない。
もう一度やってみる。平山さんとの距離を確保しながら、
横方向へのダッシュを繰り返して相手を撹乱する。
さっきのプレーのおかげでマークがきつい。
ボールも持っていないのに、がしがしと体を当ててくる。
邪険に押し返したが、相手は平然と体を密着させてくる。
俺の様子を見た本田さんが、俺に出すのは無理だと判断して右サイドに散らすが、
サイドも前に突破させてもらえない。水野さんが悔しそうにボールを戻す。
本田さんは逆サイドの前田さんを、前線の平山さんを見るがパスが出せない。
俺は一度ハーフウェーまで引いてボールを受ける。
ここまで戻るとマークは外れるが、相手が残っている分、敵陣にスペースはない。
どうする?こうなったら幸運に期待してパワープレーしかないのか?
杉山さんにボールをあずけて、前線に走る。すかさず二人の視線が俺をマークする。
杉山さんから俺にくさびのパス。ゴールに背を向けてトラップ。
すかさず背中に相手の気配。さらにもう一人来る。
これじゃキープするのがやっとだ。どうする?そう思ったときだった。
「樋口!」迷わず声の方向にパスを出す。
本田さんが上がってきている。本田さんが、ここまで、こんな前まできている。
マークが俺に二人よってきた分、俺の周りにはちょっとしたスペースができている。
本田さんがそのスペースを使って俺のパスを受ける。
相手選手がすかさず本田さんのいるスペースを潰しにかかる。
本田さんは迷わず左へ横パス。そこにきているのは杉山さんだ。
ボランチ二人が上がってきている。思わぬ動きに相手が混乱した。
さすがにこのエリアでプレッシャーをかけなければ、
ゴール前へ精度の高いボールを放り込まれる、と判断した相手が杉山さんのチェックへ。
本田さん、杉山さん二人の動きにつられて相手が動いた分、
今度は俺の周りに小さいスペースができた。
俺はその隙に相手選手の背後に回りこんでからダッシュ。
ほんの一瞬だが相手が俺を見失う。
俺は空いたスペースに動いて杉山さんとの間に縦のパスコースを確保。
俺の目にはパスコースを示す杉山さんと俺の間に伸びる
白いラインが見えたような気がした。
そのラインをなぞるような杉山さんのパス。半身になって受ける体勢を作る。
チェックが来る。ツータッチしてる時間はない。ダイレクトかワンタッチだ。
視野の左すれすれで森本が動き出しているのが見えた、いや感じとった。
俺はキーパーと森本の間に、ダイレクトの柔らかいパス。
ほとんど力を与えない、杉山さんのパスの勢いを使ったショートパス。
ボールは思ったところにコントロールできた。
だが、森本は走りこんできていない。もう一度縦に行っている。
イメージが一致していない。
キーパーの近くに出したい俺と、キーパーと距離をとって受けたい森本と。
二人のイメージがずれてしまっている。
キーパーが慌てて飛び出してきて滑り込みながらキャッチ。俺は天を仰ぐ。
「ここに出せ!」と森本が足元を示しながら絶叫。
俺の中で何かがぷちりと切れる。
「時間がねえんだ!ゴール前で受けろ!!シュートできる位置にいろ!」
負けないような大声で言い返す。森本がきっ、と睨み返してくる。
俺はありったけの力を目にこめて森本の顔から目を離さない。
俺と森本の間に険悪な雰囲気が漂う。
その隙に、相手キーパーがロングスロー。
中央で受けた相手の8番から相手フォワードの足元にくさびのパス。
ボランチ二人が上がりきってしまったうちは、3枚のディフェンスしか残っていない。
フォワードが上がってきた選手に、教科書どおりのリターン、そして自分は裏へダッシュ。
杉山さんと本田さんが懸命に走るが、あれは間に合わないだろう。
フォワードのリターンを受けた相手選手が広大なディフェンスラインの裏へ縦パス一発。
俺は線審をちらりと見るが、オフサイドの旗は上がらない。
相手フォワードと増嶋さん、少し離れて水本さんがボールを追って並走する。
一歩抜け出した相手選手が、よりによってこんなときにと思わせてくれる
絶妙のトラップでぴたりとボールを足元に収める。
増嶋さんが前に回り込んでシュートコースを切るが、そこでフェイント。
増嶋さんの腰が砕ける。それを見て水本さんが思わず寄ってきたところを、
ボールを滑らせて逆を突く。シュートコースがぽっかりと開く。
ああ。やばい。決定的だ。俺は思わず目をつむった。
増嶋(笑)
森本(怒)
平山(消)
その瞬間、鈍い音が敵陣にいる俺の耳まで届いた。
バーだ。バー直撃だ。助かった。俺は思わず安堵で腰が抜けそうになる。
だがほっとしている暇はなかった。そのボールは幸運にも小林さんの足元へ。
その小林さんからすばやくハーフウェーにいる本田さんへ。
俺はすかさず首を振って周囲を、前線の様子を確認。俺の周りには誰もいない。
首を戻したときにはもう本田さんからのパスが来ている。
決定機をものにできなかった相手が微妙に動揺しているのがはっきりとわかる。
もう残り時間は少ない。これが最後のチャンスかもしれない。
俺は迷うことなく、さっきマークがゆるくなってるのを確認した水野さんへパス。
水野さんが右サイドを駆け上がって、タッチラインすれすれでボールを止める。
そのままライン際をドリブルで持ち込む。
マークを緩めたミスに気づいた相手ディフェンスが懸命に戻って中を切る。
水野さんは中へ切れ込もうと、右、左と体を揺らして相手を揺さぶる。
俺は声をかけながらその水野さんの後ろへサポートに走る。
中を見る。水野さんにひとり、俺にひとり、相手が来ている。
二人引き剥がした分、さっきに比べればゴール前が手薄になっている。
水野さんが俺にボールを戻す。ボールが来るまでにゴール前をルックアップ。
相手のディフェンスラインの中、ニアに平山さん、ファーに森本。
その時、森本が俺を見ながら
バックステップを踏んでさらにファーに下がるのが見えた。
森本、わかったぞ。お前の得意なあの動きだよな?
俺は森本を信じて水野さんからのパスをダイレクトでゴール前に蹴りこんだ。
平山さんがジャンプ。平山さんにあわせたボールと判断した
ディフェンダーがすかさず平山さんに競りかける。
だが、ボールはその頭のわずか上を通っていく。そうだ、そういうふうに蹴ったんだから。
さっきの森本のバックステップ、ファーに逃げる動きに、ディフェンダーがついていった。
その分、森本と平山さんの間のスペースが少し広がった。
平山さんの後ろのそのスペース。
ゴルフのアプローチショットよろしく、そこへぴたりと落とすのが俺の仕事だ。
バックステップにディフェンスがついてくるのを見た森本が、
今度は一転して正面へダッシュ、ゴール正面のスペースへ猛然と飛び込む。
平山さんの頭を越えたボールに森本のダイビングヘッド。
ボールは鋭角にワンバウンドしてゴール左隅に突き刺さった。
森本が起き上がりながら、左手を突き上げる。
そのまま駆け寄った平山さんと満面の笑みで抱き合う。
そこに水野さんが、前田さんが加わる。
試合を決める劇的な1点に日本の選手の輪ができた。
グループリーグ突破を確実にするゴールに、みんなお祭り騒ぎだ。
俺はそれを横目に、そのまま立っていた場所で、ゆっくりとストッキングをあげる。
体を起こしながら腰にそっと手を当てる。
モニカ見ててくれたか。意思の通じ合ったいいプレーだったろ。
俺もこれで少しは活躍したことになったよな。
時間はカードをもらわない程度にゆっくり使ったほうがいい。
俺は自陣に意気揚々と戻っていく日本の選手の集団を前に見ながら、
ゆっくりゆっくりモニカと話しながら歩いていく。
とりあえず樋口を代表に呼べ。
486 :
U-名無しさん :2005/05/22(日) 23:48:16 ID:QTHoXcFm0
樋口タン ハァハァ
487 :
:2005/05/23(月) 03:48:06 ID:yKlF9dWi0
こんな面白い小説がタダで読めるなんて…涙
作者さんありがとう!
オーストラリアは死に物狂いで前にラッシュしてきたが、
俺たちは落ち着いて時間を使う。ほどなくして試合終了の笛が鳴った。
次の場所へ進むための切符を手に入れた報せだ。
日本のサポーターの拍手と歓声が聞こえる。
相手と握手を交わした後、俺たちは一団となってサポーターの基へ歩く。
スタンドで青が波のように揺れている。
ピッチからはこんな風に見えるんだ。みんなの顔が思いのほかよく見える。
サポーターが興奮さめやらずというように森本の名前を呼ぶ。
コールを浴びた森本が満面の笑みで手を振る。
フォワードはこういうときおいしいよな、と
俺はそれを横目で見て苦笑する。その時だった。
サポーターが俺の名を呼んでいた。
俺は思わず呆然と立ち尽くす。繰り返される熱いコール。
みんなが。俺の名を呼んでいる。
魂を抜かれたように棒立ちになりながら、
俺は自分の名前が繰り返し繰り返し呼ばれるのを聞いていた。
「ちゃんと応えなくちゃ」
いつのまにか隣にいた平山さんが柔和な笑顔を見せている。
「そうだよ、手ぇ振れよ」
森本もいじめっ子の親分みたいな笑顔で俺の背中を叩いた。
俺は深く頭を下げた後、二、三度ぎこちなく手を上げた。
声がさらに大きくなった。上げた腕が少し震えているのがわかる。
サポーターとピッチに別れを告げて、俺たちはロッカールームに戻る。
通路を歩く途中で森本が俺の隣に来た。
「おまえ、よく俺の意図がわかったな」
「森本の初ゴールはテレビで見てて印象に残ってたからな」
森本のJ初ゴール。バックステップでディフェンダーの視界から一瞬消え、
吊られて動いたディフェンダーがあけたスペースでのヘディング。
よくそんなもん覚えてるな、と森本が驚いたように言った。
憧れたからな、とは口が裂けても言わないでおこう。
「もっと俺にああいうボールをくれ。最高のボールだった」
横を見ると森本の真剣な横顔。
点をとるためには妥協しない、その意思が浮かび上がっている。
真顔だとこいつ、結構いい面構えじゃん。まあお世辞にも美男とはいえないが。
「わかってるよ。まだ次があるんだからな」
ああ、と日本の若きストライカーが隣でうなずいた。
「監督、おはようございます」
小熊は、おはよう、と言葉を返す。
声をかけてきたのはフリーライターの元山だった。
サッカーをメインにしてるライターで、
前回、前々回のワールドユース大会でも現地まで来ている。
ユースについても、普段から熱心に記事にしてくれていて、
取材を受けた回数は数え切れないほどだ。
スタッフや選手たちともすっかり顔馴染みになっている。
この商売をやっていると、メディアと常に友好的とはいかない部分もある。
チームの状況によっては、規制めいたものをかけなければいけない場合もあるし
批判をされればこっちも人の子、腹も立つ。
その記事が、根拠がなかったり誤解に基づくものだったりすればなおさらだ。
元山にもそういう部分が皆無というわけではなかったし、
関係者でも元山のことを悪く言う人間もいたが、
それでも大会の何年も前のチームの立ち上げ時から、
ほとんど他のマスコミが取材に来ないような強化合宿まで足を運び、
そのレポートを媒体を通じてファンに届けてくれていることを
考えると、小熊はやはり元山には感謝していた。
「まず、グループリーグ突破おめでとうございます」
ありがとう、と小熊は礼を言う。
「グループリーグ3試合を振り返ってみての感想はどうですか?」
小熊は少しだけ考える。
「やはり楽な試合はひとつもなかったな、と。
対戦したオランダ、ベナン、オーストラリアのどこも、
それぞれ持ち味がある強い、いいチームでした。
その中で2位でグループリーグを通過したことについては、
選手たちをほめてやりたいと思っています」
「一昨日の試合では、樋口君、森本君の
若い二人のホットラインで見事な決勝点を奪いました。
樋口君についてはブラジル遠征から監督が抜擢したわけですが、
いきなりの出番で見事なアシスト。
監督の期待どおりの活躍というところですか」
「期待どおりというか、ああいう場面で活躍できるのは
それだけのものを持っているんじゃないですか」
小熊は一ヶ月前のことを思い出す。ジェフとの練習試合。
試合終了後、小熊は相手ベンチに足を運んだ。
通訳を通じて「今日はありがとうございました」と挨拶する。
分厚い手が差し出される。小熊はその手を握りながら、
その手に秘められた名将の辿ってきた時間に思いを馳せる。
激変した東欧の地図。大きく時代が移り変わる中で、
この手はサッカーの何を、どんな姿を見てきたのだろう。
「どう思われますか、うちのチームを?」
簡単な挨拶をニ、三交わした後、小熊は単刀直入に聞いた。
メディアの質問には難解な答えを返すこの監督も、
おそらく直接相対してたずねれば、
何かを答えてくれるだろうという確信があった。
チームを率いる人間が他人の意見を求めるというのは、
もしかしたら監督としては失格かもしれないが、
小熊は自分が妙なプライドにこだわらない人間だという自覚もあった。
オシム(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
ナケル 。゚(゚´Д`゚)゜。ウァァァン
オシムはおれだけのものだ!!ヽ(`Д´)ノ ↑
モニカの芸能界デビューはまだか?
相手は数秒だけ考えたが、
「中盤が固まっていないね」
「おっしゃるとおりです」
小熊がずっとこのチームの軸として期待していたFC東京の梶山は、
一縷の期待をこめてこの合宿に召集したものの、
結局怪我の具合がおもわしくなく、途中でクラブに返していた。
Jリーグでのプレイを見ても、試合勘が戻っていないのが明らかで、
怪我だけなら本番にまにあうかもしれないが、
試合勘も含めたプレイの質が、本番までに元に戻るのはまず無理だ。
梶山をあきらめなければいけないのは、小熊にとって大きな誤算だった。
また、今回のメンバーはJでレギュラーもしくは
ベンチ入りメンバーとして活躍している選手が前回大会と比べて多い。
それ自体は小熊にとって喜ぶべきことなのだが、
その代償として、候補となる選手たちに怪我が多発している。
Jの過密日程もあって、試合には出ているが慢性的な怪我を抱えている選手も多い。
また、そういった選手はクラブもユースの合宿に出すのを渋る。
その結果、小熊の想定するメンバーが顔をあわせて、連携を深める時間が確保できない。
結局、今回の合宿も戦術面ではチャリティーマッチの即席チームと大差ない有様で、
選手の能力の伸び具合を確認するだけになっているのが実情だった。
「中盤で軸となる選手がほしいね。
技術ではなく、気持ちでチームの軸となる選手が」
さすがによくわかっている。小熊は無言でうなずくしかない。
選手の粒は揃っている。これから本番に連れて行く21人の選考には
頭を悩ませることになるだろう、という予感もあった。
だがその選考が、どの選手も、特に中盤の選手が、
他の選手との比較での選考になるだろうという予感があった。
あいつより、こいつのほうが調子がよさそうだ。
あいつより、こいつのほうが怪我がなくて計算がたちそうだ。
小熊がほしいのは、そういうものを超越した、
こいつだけはなにがあってもオランダへ連れて行きたい。
不安要因があってもこいつがいなければだめだ、と思わせてくれる選手。
そう思わせる存在がほしい。
それ以上、監督は何もしゃべらない。
時間もあれだし、そろそろおいとまするか、と小熊が思ったときだった。
「あのMFの、15番の彼は高校生だそうだね」
樋口のことか。小熊はうなずく。
「彼はサッカー選手に必要な勇気を持っている。それもたくさん。
勇気は大切なものだよ」
そういうと名将は小熊の目を見てウィンクした。
年に似合わずチャーミングな人だ。
どうやら潮時らしい。小熊は礼を言って引き上げることにした。
オシムのお墨付き ハァハァ
俺のオシム(*´Д`)ハァハァハァハァ/lァ/lァ/lァ/lァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ/ヽァ ノ \ア ノ \アノ \ア ノ \ア
オシムが日本を救う!
500 :
U-名無しさん :2005/05/25(水) 20:42:39 ID:uFjKXQN40
おもしろいです。
どきがむねむねです。
おもしろいサッカー小説って
他にネットにないですか?
あかん。またにやにやしてきた
クラブハウス目指して歩きながら、小熊は物思いにふける。
俺の目もなかなか、ということか。
ブラジル遠征のポンチプレッタ戦。前半で決まりかけた試合を、
後半実のあるものにしたのは樋口の投入だった。
他のメンバーの集中が切れかけた中、ひとりで走り回ってプレスをかける。
ボールを奪えば思い切りよく前へ飛び出していく。
それを見た他の選手も動きがよくなり、プレーが積極的になっていった。
候補選手の中で彼が唯一人、ミスしても失うものがない
チャレンジャーの立場であったことを差し引いても、
あの試合で樋口が流れを変えたことは評価できると考えていた。
そして今日のジェフとの試合。樋口をボランチ起用したのは、
梶山の離脱に伴う予定外の事態だったが、
小熊が感心したのは、周囲に違和感を感じさせずプレーしていたことだ。
元々はただの公立高校の生徒。
ブラジル遠征は経験済みとはいえ、今日の相手は正真正銘のJクラブのトップチーム。
レベルを考えても、ゲームの中で浮いてしまっても不思議はないのだが、
そこにいるのが当然であるかのように堂々とプレーしていた。
攻撃は控えろ、と小熊が指示をしたこともあって、
目を見張るようなプレーはなかったが、
試合の雰囲気にすっかり溶け込んでいたのが印象的だった。
樋口の抜擢に疑問を投げかける声は、マスコミのほか
協会内部からも小熊の耳に届いていた。
協会の育成システムをほとんど経験していない樋口の起用は、
ある意味、協会自身の育成システムの自己否定につながる部分もあり、
関係者にとって微妙に癪に障るものらしかった。
だが・・。小熊の腹は固まりつつあった。
「監督?監督?」
元山の声に引き戻される。すっかり自分だけの世界に入り込んでしまった。
小熊は元山に詫びる。
「監督、疲れてるんじゃないですか?3試合怒鳴りっぱなしでしょうから」
小熊の目の前で元山が軽やかに笑う。
いまもきれいだが、この女も若い頃は相当な美人だったに違いない。
言い寄ってくる男にも不自由しなかったろうに、
こんなサッカーの試合追いかけてばかりいたんじゃあ、
男も見つからないぞ、と言いたくなるのをさすがにぐっとこらえる。
そんなことを口にしたらセクハラで大問題になる。
「大丈夫、大丈夫。で、どんな質問だったっけ?」
「今後の樋口君の起用についてはどうですか?
スタメンもありうるんでしょうか」
小熊は首を振り、
「いまのところはまだ連戦に耐えうるだけのスタミナがない。
他にスタートを任せられる選手もいるし、
彼については、後半から流れを変える役割を期待している。
もっとも、勝ち上がっていけば、疲労も蓄積するだろうから、
そのときに応じて、状態のいい者を起用していくことになると思う」
外国に来ている以上、報道が直接選手の目に触れることはまずないが、
メディアの選手への直接取材の中で、ここでしゃべったことが
選手への取材スタンスに影響を与え、それを選手が敏感に感じ取ることもある。
日本にいた選考段階であれば、それを計算して発奮を促すこともあるが、
本番に突入した今は、よほどのことがない限り、
無用な刺激は与えないにこしたことはない。
結果、起用に関するコメントはどうにでもとれるような内容にぼかしておく。
「明日はベスト8をかけて、グループCを2位で突破したモロッコとの対戦になります。
どのような布陣で臨まれる予定ですか?」
「怪我でダメ、という選手はいないので、
いままでの先発をベースにした布陣になると思う。
とはいえ、3試合をこなし、今回は移動もあって、
選手も疲労が抜けていない面もあるのでそのへんは臨機応変に行くつもりです」
本音を言えば、中盤はまだ確固たるスタメンが決まっていない。
グループリーグを終えてもその状態が続いているのは、非常事態とも言えた。
トップ下には水野と兵藤、どちらも捨てがたいが、
こっちへ来てから兵藤が調子を落とし気味なので、
3戦目は水野をトップ下で起用して、ある程度の正解は出たが、
次の試合も水野の先発で行くのか。
右サイドは中村北斗を使ってきたが、ここにカレンを入れて、
2トップの一角に原を入れて試合を始めるオプションも小熊は選択肢に入れている。
ボランチは本田、杉山の二人で決まりだが、
水野をトップ下に入れた場合、兵藤を杉山に代えて先発させる手もある。
これに加え途中交代の切り札、森本と樋口。
彼らが入ったときの組み合わせまで考えれば、バリエーションはさらに増える。
つくづく連携を深める時間を確保できなかったのが惜しまれた。
とはいえどの国の、どのカテゴリーの代表監督もそれは思っていることなのだろうが。
「明日の試合に向けての抱負をお願いします」
元山の言葉に、小熊は遠く日本で試合を見てくれるサポーターに語りかける。
「目標はベスト4ですので、これで満足するわけにはいきません。
いい試合をして、そして勝ちたいと思います」
いい雰囲気だな。ピッチに足を踏み入れるとそんな気持ちになった。
グループリーグ3試合を戦ったケルクラーデを離れ、
今日の舞台は、アルケスタジアム。
相変わらず日本の熱心なサポーターこそいるものの、
観客席全体は閑古鳥が鳴いている。
ここはピッチと観客席の距離がとても近く感じる。
スタンドの傾斜がきついせいもあるのだろうか。
ピッチから見ると、まるで壁のように立っている。
ラインの外はすぐフェンスで囲まれていて、
気分的にはスケート場のリンクの感覚に近い。
しかしこれがヨーロッパのスタジアムの雰囲気なのか。
日本にもいいスタジアムはあるが、やはり何かが違う。
いったいその違いはなんなのだろう。
やはりこれが歴史の重みというやつなんだろうか。
俺は試合と関係のないことにあれこれと思いをはせる。
こういうスタジアムに来ると、サッカーが、少なくともプロのサッカーは、
ショーでありエンターテインメントであることを実感する。
俺たちは差し詰め闘牛士みたいなものだ。
観客の視線の先で、俺たちは体を削りあい、技を競い合う。
きっとエールディビジの試合では、熱くなったサポーターが、
絶叫のような野次を飛ばし続けるのだろう。
そんな熱狂とプレッシャーのるつぼの中で、
客を満足させるプレーを見せたものだけが、このピッチで生き残っていける。
日本にこんなスタジアムがあったら、
サッカーをとりまく雰囲気もまた変わっていくのだろうか。
当然のことながら、今日も俺はベンチスタートだ。
オーストラリア戦までは、せめて一度はピッチに立ちたい、と思っていたのが、
いざ願いがかない、ピッチに立ってみると、
もう一度、もっとあの場所へ、という気持ちが止まらなくなった。
出場機会への渇望は、いままでよりもむしろ今日の方が強い。
既に3試合を消化し、最後のオーストラリア戦から、中二日。間には移動も挟んでいる。
今日はフォワードの一角にカレンに代えて原さん、
そしてボランチは杉山さんが外れて兵藤さんが入るスタメンだ。
昨日の前日練習を見ても、グループリーグで長い時間を戦ってきた
先発組に疲労が蓄積しているのがはっきりと見てとれた。
まちがいなく選手交代で動きがある展開になる。
そのとき呼ばれるのは誰か。
作者タンは相当なサッカー通だよな
でないとこんなの書けんよ
509 :
U-名無しさん:2005/05/27(金) 01:05:41 ID:gIj+YKA60
早く続きが読みたいよ!
まあな
でも、そういう気持ちがあるから余計に面白く読めるわけだからな
512 :
U-名無しさん :2005/05/27(金) 22:16:06 ID:BP/yBakX0
今の代表には樋口が必要だ!
試合がはじまって、すぐにやばいな、というムードがベンチに漂いはじめた。
相手の仕上がりが明らかに日本よりいい。
モロッコは、中三日と日本より一日多く休養がとれている。その差が如実に出ている。
また技術と戦術の方もしっかりしている。
昨日の前日ミーティングで、モロッコのグループリーグの試合をビデオで見た。
小熊監督は相手のプレーを解説しながら
「かつてアフリカといえば、飛び抜けた身体能力だけが
持ち味だった時代があったが、それは過去の話だ。
むしろ、いまアフリカを勝ち上がってくるチームは、
よく整備された戦術と組織をベースにしていることが多い」
と言っていたが、その言葉どおり中盤でショートパスを駆使して、
細かくボールを動かすことで日本のプレスに的を絞らせない。
このオランダワールドユース、アフリカからの出場は4チーム。
モロッコは大陸予選も兼ねたアフリカU-20選手権で4位。
この前、グループリーグで戦ったベナンは3位通過。
一見、アフリカの中ではくみしやすいチームなのかと思うが、
準決勝は、決勝でエジプトを破って優勝したナイジェリアと2−2のドロー。
PK戦で敗れて3位決定戦に廻り、そこでもベナンと1−1のドロー。
そのPK戦で敗れての4位であり、
アフリカ勢は実力的には横一線と見るのが妥当だろう。
むしろアフリカU-20選手権は地元開催でホームの利があったベナンよりも、
モロッコのほうが客観的に見たチーム力は上ではないか、
というのが監督の見立てだった。
細かいパス回しの連続に、スタミナの消耗を考えて追い回すのをセーブすると、
余裕ができた中盤からすかさずフォワードに長いくさびのパスが入る。
この9番が長い手足を生かして、日本の選手のチェックを
ものともせずに、しっかりとボールをキープする。
9番が要注意だというのは、昨日のミーティングでも言われていた。
アフリカU-20選手権では5ゴールを決めていて、チームの得点源だ。
その中には準決勝でナイジェリアから奪った2ゴールも含まれている。
日本の選手が囲んで奪いに行くと、
手薄になったスペースに2列目から選手が飛び出してくる。
またはサイドに大きく散らされてゴール前が脅かされる。
すぐに小熊監督の絶叫がはじまった。
「本田ー、9番をしっかり見ろ、9番だ、しっかり見るんだ!」
「平山、追え!前線からしっかり追え!そうだ、その調子だ!」
まずディフェンスを固めろという小熊の指示。
その檄に応えるように、本田さんはフォワードへのマークを強め、
平山さんは前線で懸命に走り、パスコースを切る。
だが、相手の技術が実にしっかりしている。
プレッシャーを受けても冷静にボールを回す。
距離をぴったり詰めてもなかなかボールを奪えない。
モロッコという大きな大会であまり名前を見ないような国の選手でさえ、
これだけの技量を持っているという事実に、改めて世界は広いと思う。
世界で勝つと口で言うのは容易いが、それがどれだけ難しいことか。
さらにモロッコは技術だけでなく、組織の面でも統率が行き届いている感じだ。
誰かがボールを持つと、ボールを持っていない選手も
スムースに動いてパスコースを確保する。
その連動には相当訓練してきてるな、と思わせるオートマチズムを感じさせる。
も、モロッコばかにすんな!
>モロッコという大きな大会であまり名前を見ないような国の選手でさえ、
>これだけの技量を持っているという事実に、改めて世界は広いと思う。
そう、そうなんだよな〜
なんで海外の選手はトラップ一つとってもあんなに正確で、こっちの選手は
あんなに下手くそなんだろう……
相手フォワードが素早い反転から、ゴール下隅のいいコースへ飛ぶシュートを放つ。
これは西川さんが好セーブ。横っ飛びで左手を伸ばしてはじき出す。
3試合を消化して西川さんの勘もかなり冴えてきている。
次の決定機は前半15分過ぎ。モロッコが右サイドに展開。
それまでは徹底してフォワードの頭にあわせてきていたのが、
一転グラウンダーの早いボールを放り込む。
虚をつかれた日本ディフェンスの反応がほんの少し遅れる。
前に飛び出す西川さん。その体の先で、
相手の9番が足を伸ばす。つま先に当てたシュート。
西川さんの体の下をすり抜けたシュートは、左のポストをかすめて外れた。
相手選手が頭を抱えて悔しがる。
シュートが外れるとベンチからも一斉にふう、という安堵の吐息が漏れる。
前に立っている小熊監督も寿命が縮んだ、という表情だ。
ここで先制されるとこの後の試合展開が非常に苦しくなる。
このビッグチャンスを外して流れがこっちへ向いてくれれば、と思ったが、
モロッコは気落ちすることもなく、しっかりとボールを回している。
日本が相手の中盤からボールが奪えないので、
自信を持ったモロッコの両サイドが次第に高めの位置どりになっている。
その分、こっちの3バックの両脇がそれぞれのサイドに少しずつ引きだされている。
そうすると逆に今度は中央の2トップへの圧力が薄くなり、チャンスを作られてしまう。
それを見たボランチがディフェンスライン近くまで引くようになり、
サイドも中央も劣勢と見たうちの両サイドもじわじわ下がって守備をする。
守備にさく人数が増えた分、なんとか得点を許さず持ちこたえているが、
全体がじわじわと下がり、日本の選手が自陣に押し込められていく。
何度か日本のサポーターの悲鳴が響いたが、
奇跡的にいくつかの決定的なシュートは、ゴールを外れてくれた。
小熊監督が前半で動くとすれば、先制されたときだ。
0−0でいったならば、延長もあるこの試合、
手元の3枚のカードをすぐに切ってくることはしないはずだ。
前半終わりに近づくと、モロッコが
ポゼッションこそ落とさないものの、若干ペースダウンした。
チャンスは多く作れているが点が取れない状況を見て、
勢いで突っ込み続けるだけでなく、一度クールダウンして頭を冷やそう、というところか。
日本もそれを機に、選手同士が声を掛けあって布陣を立て直すが、
ようやく得た休息に一息というところで、ボールを奪って攻め込むには至らない。
読みどおり、0−0では小熊監督は当然動かない。
そのまま前半終了の笛が鳴った。
杉山さんが呼ばれる。おそらく疲労からか動きのよくなかった兵藤さんと交代か。
まだだ。いまはただ熱を溜めるとき。俺は自分に言い聞かせる。
ロッカールームで小熊監督から指示が出たのだろう。
後半になると家長さんのポジショニングが目に見えて下がり目になった。
前半はうちの左サイドからクロスをあげられることが多く、
左のDFの水本さんが対応に終われまくっていた。
ここは人数をかけてまず相手の右サイドを封じ込もうという狙いか。
その分、フォワードの原さんがやや左寄りの位置。
右サイドの中村さんもやや高めの位置から、
時折中に絞りながら相手の中盤の選手に絡んでいく。
全体が少し左に寄った斜めに右上がりの布陣。
左は捨てて右からゲームを作ろうということか。
だが、後半もモロッコのペースでゲームが進んでいる。
ディフェンダーの一瞬の隙をついて強烈なミドルシュートがゴールを襲う。
西川さんが本気でダイブ。ボールは伸ばした左手の先を通り抜け、
そのままゴール裏のフェンスにあたって大きな音を立てた。
枠に行っていたらやばかった。ピッチのみんなが肝を冷やしたのが伝わってくる。
さらに西川さんのパントキックを相手のボランチが奪うと、
即座にこっちの左サイドへ放り込む。
先にボールに追いついていたのは水本さんだったが、
後ろから追いかけてきた相手の右サイドが、
水本さんを引き倒して強引にボールを奪った。
本田さんが、増嶋さんが、主審と線審にファールをアピールするが、
審判は小憎らしい無表情で首を横に振るばかりだ。
日本の守備陣がパニックを起こしながら一斉に戻る。
増嶋さんが内を切りに来るのを見た相手は、いったんフェイントを入れて、
増嶋さんの足を止めてから、中央で待つフリーの9番へ。
相手の左足が振り抜かれるその瞬間、小林さんが猛然とスラィディング。
小林さんの足にあたってはじかれたボールを、
杉山さんがとにかく外へ、とダイレクトで大きく蹴り出した。
ピッチでは小林さんが、みんなによくやった、とぺしぺし頭を叩かれている。
今日何度となく惜しいシュートを放っている9番が
悔しそうに何事かを叫んでいる。
しかし、これだけチャンスを外してくれれば、
いくら地力の違いはあっても、一度は流れが回ってくるはずだ。
攻めて攻めて決定機を作りながら点が入らないのは、気持ち的にしんどいものだ。
一度、流れをつかめれば、モロッコを崩せる可能性は低くない。
後半も15分が過ぎたそのとき、
「樋口!」滝沢コーチから声がかかった。今日は俺が先か。
立ち上がった俺のケツを隣に座っていた森本が叩いた。闘魂でも注入してくれるのか。
小熊監督の指示を聞く。
「そろそろモロッコは攻め疲れが出てくるはずだ。
そこをお前の粘っこいプレスでつぶして、流れを引き寄せろ。
うちがボールを奪って回せるようになれば、
相手の疲労はどんどん大きくなっていくはずだ。
そこを狙ってラストパスを通せ。
お前ならこの試合の流れを持ってこれる。いいな」
頭の中で復誦。わかったとうなずく。
「この前と同じように水野が右サイドに回れ。
お前は水野のポジションに入れ」
オーストラリア戦と同じ形だ。大丈夫、理解できている。
521 :
U-名無しさん:2005/05/29(日) 17:19:30 ID:Kwcb6yST0
あげ
タッチラインのそばに立つと、サポーターたちが
俺の名前を呼んでくれているのが聞こえてきた。
この前の試合でも呼んでくれていたんだろうか。
それとも俺が緊張していて聞こえていなかっただけなんだろうか。
このスタジアムは距離が近いからよく聞こえるのか。
中村さんとの交代。手を軽く合わせて気合いを引き継ぐ。
ピッチへ走り出す。芝が厚い。高い絨毯の上を歩いているような感触だ。
体を回転させながら、二、三度急停止のステップを踏んでみる。
水野さんに指示事項の伝達。お前が入ってきた時点でわかってる、と
いうような表情で水野さんがうなずく。
試合がはじまる。
相手の中盤がボールを持つ。ダッシュで間合いを詰める。
相手が元気のいいのが入ってきやがった、というような醒めた目で横にはたく。
サイドが引いてしまってる分、前にスペースがある。
俺は懸命にダッシュしてそのスペースを埋める。
お前、そんなことしてボール奪えるわけないだろ?
ボールがさっきの選手のところへ戻っていく。
俺はもう一度そのボールを追いかける。
少し前日本人は勤勉な民族だと、言われていた。
それは当たってるかもしれない、とボールを追い続けながら俺は思う。
ブラジル遠征、そしてこの前の試合、
先にプレーが荒くなったのはいつも相手の方だった。
いつまでもあきらめずにボールを追い続ける力、
それは遺伝子レベルでも俺を支えているのかしれない。
相手の左サイドハーフが中に寄ってボールを受けた。
杉山さんが見る。俺が後ろからつぶしにいく。
サイドハーフの選手が空けたライン際のスペースを
サイドバックが風のように上がってくる。
パスが通るが水野さんのマークは外れてない。
サイドでの攻防。俺はボールと、中央にいる相手選手の動きを見るため、
せわしなく首を振って確認する。
相手のサイドハーフと杉山さんがそれぞれ加勢に行く。
2対2の攻防。だがボールを奪ったのは水野さんだった。
水野さんからのパスが来る。周囲に人はいない。
今日のファーストタッチ。気持ちいいくらいボールが足についた。
調子いいかも。俺はそっと自画自賛する。
左サイドから中央にすぅーっと流れてきた家長さんがボールをもらえる位置にいる。
すかさずインフロントの早いパス。
センターサークルの手前で家長さんが前を向く。
相手はセンターバックのふたりに、右サイドバックがしっかり残っている。
右の中盤の二人も十分戻れる位置だ。
家長さんは相手の攻め上がりで空いている右側へドリブルで逃げながら上がりを待つ。
ちらりと横を見ると、さっきボールを奪われた、敵の二人が歩いている。
監督のいうように攻め疲れが出ているのかもしれない。
家長さんがハーフウェーを越えたところで、テンポを落とす。
上がりを待っている。くそ、さぼらせてはもらえねえ。
俺は体にむち打って走るスピードを上げる。
左サイドに向けて斜めに走り、ハーフウェー手前まで
たどり着いたところで、家長さんからパスがきた。
524 :
U-名無しさん:2005/05/30(月) 20:39:05 ID:9bYjUgGB0
☆ チン
☆ チン 〃 ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ ___\(\・∀・) < モニカまだ〜?
\_/⊂ ⊂_ ) \_____________
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ /|
| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| |
| ペリカン便 |/
前線には平山さんと原さん。だが、しっかりと3人のディフェンダーが見ている。
その手前にも3人の敵。相手の人数は足りている。
どうするか、完全にスローダウンして後ろにボールを戻すか。
ペースを落ち着かせ、自分たちの流れを引き寄せるという意味では悪くない選択だ。
中を向き、視野を確保する。そのとき、ライン際を疾走する水野さんの姿。
気分的にはオーバーラップといっていい長い距離。懸命に上がっている。
胸が熱くなる。だが俺のいる場所からは距離がある。
俺は全身の力をこめてていねいにサイドチェンジのボールを蹴った。
ボールは思い通りの軌跡を描き、右サイドへ飛んでいく。
きれいに蹴られたサイドチェンジのボールは、
それだけでなぜか人の心に美しいと感じさせる。サッカーの不思議の一つだ。
2トップの二人をケアしていた分、
サイドにはちょっとしたベルト程度のスペースが残されている。
全力で走る水野さんの足元に俺のボールがどんぴしゃで入る。軽い満足感。
にわかに前線の動きが慌ただしくなる。
相手ディフェンスが一人、ゴール前から離れて水野さんをケア。
それにともなってゴール前でマークの受け渡し。
家長さんが、俺がゴール前へ走り込む。それを確認する相手の視線。
水野さんが相手に寄せきられる前に早めにクロスをあげた。
平山さんが飛ぶ。相手も飛ぶ。どちらの頭に当たったかわからないボールが
走り込む俺の前に転がってくる。エリアまではまだ5メートルくらいある。
ボールとの距離を測り、前を見る。少し遠いが、ゴール左隅が見える。
行ったれ。左足でミドルシュート。
だが、このキックは芯を食わず、ボールは詰めてきた相手選手に簡単に弾かれる。
そのボールを家長さんがトラップ。俺は少し迷ったが、
バックステップで下がって前に勝負できるスペースを作って、ボールを待つ。
家長さんが俺のほうを見る。蹴った瞬間に驚き。ボールが俺の頭を越えて飛んでいく。
ボールの行方を追うと本田さんが走り込んできていた。
さっきのクロスで中に絞った分、今度は左サイドにもスペースができていた。
家長さんが右に流れたのを見てとった本田さんの華麗な攻め上がり。
自分たちでやっていてもわくわくするような展開だ。
本田さんはサイドに開いて中を向くと、ドリブルで持ち込む素振り。
それを見た相手の選手がたまらずひとり飛び出してくる。
右へ、左へ、相手のディフェンス陣を振り回す。
そして相手の守りを一枚ずつ引き剥がしていく。
相手が出てきたのをみた本田さんは、ノーステップでクロスをあげる。
ニアに走る平山さんにあわせたボール。
平山さんの前には相手ディフェンスは飛び込めてない。打てる。
斜め後方へバックヘッド気味のシュート。
キーパーが反応できない。俺は思わずゴールの期待に息を呑む。
だが、シュートは惜しくもゴールの角に当たってラインを割った。
平山さんが思わず頭を抱える。この試合初めての決定機らしい決定機。
惜しい。けどいまのプレーができるなら、絶対にまたチャンスはある。
それが平山クオリティー
528 :
U-名無しさん:2005/05/31(火) 08:31:32 ID:XHihJdhY0
529 :
U-名無しさん:2005/05/31(火) 08:56:59 ID:YcrPfxTS0
ボールは友達!
530 :
U-名無しさん :2005/06/01(水) 00:29:58 ID:TYSen4mU0
保守
今度はうってかわって日本の攻勢になった。
後半も30分に近くなってモロッコの選手の足が止まってきた。
さっきまでボールを奪いに伸びてきた足が伸びてこない。
さっきまでかかっていたプレッシャーが緩くなっている。
ようやく向こうが積んでいたガソリンが切れたらしい。
これからはガス欠同士の、体に残る一滴の燃料を絞りあうゲームだ。
その意味ではほんとうは条件はようやく同じになったというところ。
だが、前半のプレーとの落差が、モロッコを苦しめ、日本を勇気づける。
さっきまでできていたことができないモロッコと、
さっきまでできなかったことができるようになった日本。この立場の逆転は大きい。
俺がセンターサークルでボールを受ける。
じりじりと前に進むとディフェンダーが出てくる。
それを引き連れて俺が下がると、その脇を本田さんが上がる。
前で受けた本田さんが左右にその高い制球力で自在に散らす。
守備の負担から解放された両サイドが、
やっと攻められる、と嬉々としてドリブルでがんがん勝負する。
前半とは逆にモロッコが自陣に釘付けだ。
ゴール前をしっかり固めてくる。平山さんはもうがちがちにマークされている。
ならば、と俺が、本田さんが、積極的に
ミドルを打っていくが、ゴール前に作られた壁が厚い。
森本か前田さんが欲しい。
原さんもよく体を張っているが、疲れがにじんでいる。
フレッシュなフォワードを入れて、流れがあるうちに決めたい。
だが、ベンチの小熊監督は動かない。
90分で決着がつかなければ、延長戦のあるこのゲーム。
負傷者の出る可能性があることを考えると、監督としては簡単には動けない。
森本がベンチでうずうずしてるのがピッチからもわかる。
小熊監督の頭としては延長の頭から入れてくる考えなのか。
スタジアムの時計を確認する。42分。
ゲームが止まることの少ないクリーンな試合だった。
ロスタイムはほとんどないだろう。
この時間になるとさすがにうちのディフェンス陣にも、
再び失点の恐怖が頭をもたげてきてもおかしくない。
ここでスコアが動けば、ほぼ勝負は決まる。
できればうちの流れのうちに決めておきたいが、ここは我慢なのか。
増嶋さんが自陣の深いところから前線にロングボール。
だがミスったのかボールはフォワードがいないところに飛んでいく。
俺はダメで元々とボールを追ってみるが届く場所ではない。
落下点に入った相手のセンターバックがしっかりとヘディングで跳ね返す。
ボールが俺の頭を越えていく。ボールの軌跡を目で追う。
その瞬間、本田さんと目があった。意思が通じた。
相手のヘディングしたボールは、本田さんのところへ飛んでいく。
それを本田さんがダイレクトでディフェンスラインの裏へ蹴り返した。
もちろんその瞬間には走り出した俺は既にトップスピードにのっている。
縦パス一本で裏をつく攻撃。俺はディフェンスラインを切り裂いて走る。
相手の反応が一瞬遅れた。集中が切れてたのか。ツイてる。
俺が一歩抜け出す。振り返る時間はないが、
俺のすぐ後ろを相手のディフェンダーが走っているのは見なくてもわかる。
533 :
U-モニカ:2005/06/01(水) 13:34:36 ID:d2XrRlXfO
作者さんの書き込み時間が何げに変わったのは、代表の対応に追われているのだろう乙
樋口、打て♪
樋口、打て♪
樋口の下の名前なんだっけ
>>289 > 「そして10番の彼。樋口広樹か」
読み返して自己解決
ボールは俺の走る真正面に落ちてくる。
少しでも右にぶれてたら、相手の方が先に触れてしまうところ。
絶妙のコントロールだ。だが、そこまでどんぴしゃりでも、
俺に与えられた時間はほとんどない。
トラップした瞬間にファールで引き倒されることも覚悟しなくてはいけない。
俺の頭に電流が流れる。回路が計算をはじめる。
エリアまではまだ若干距離がある。
キーパーは前目。一気のドリブル突破をケアしているのか。
目の前でボールがバウンドする。次のバウンドで俺は落下点に入れる。
ますます回路がその計算速度を上げていく。
さらに前に蹴って持ち込むか、いや、バウンドがあわない、
ボールが流れて前に行きすぎてしまいそうだ。
少しでも流れれば、キーパーが飛び出して拾ってしまう。
足元に止めるか。だが、後ろのやつにまちがいなくつぶされる。
ファールをもらえればいいが、審判がとってくれなかったら?
いちかばちか、走ってるはずのフォワードに
自分のイメージを頼りにダイレクトで浮き球を蹴ってあわせてみるか。
どうする?どうする?
ありとあらゆる選択肢が俺の頭の中を流れていく。
ボールが目の前に迫ってくる。さすが本田さん、バウンドして止まるボールだ。
相手の息づかいが耳のすぐ後ろで聞こえる。
俺は右足をバウンドして落ちてくるボールの下に差し込むと高く蹴り上げた。
次の瞬間、足が地面から離れ、俺の体が宙に浮く。
飛び込んできた相手の太い腿で腰からなぎはらわれた。
バランスを失った俺の上体が右側に倒れる。視界がぐらりと90度傾く。
その視界の中を俺が蹴ったボールは、ゆっくりと飛んでいる。
なんであんなにゆっくりなんだろう。俺は思う。
自分だけ時間の流れから切り離されたみたいにいろいろなことを考える余裕がある。
危険なタックルだったけど準備はできていたし、
きれいに倒されたから怪我する心配はなさそうだ。すねや足首には入ってないし。
むしろこのままきれいに倒れる方が大事だ。
変に手をついたりすると指や手首を痛めそうだ。
景色の中でキーパーが二、三歩背走し、バックジャンプ。手を伸ばす。
届くなよ。俺は祈る。
重力に導かれて俺の体がゆっくりと芝の上に落ちていく。
俺の体が地面に落ちたのを待っていたかのように、
俺の蹴ったボールはバーをすれすれにかすめて鋭角にゴールの中に飛び込んでいった。
ああ、よかった。決めたぜ、モニカ。やったよ、俺。
これでまた少しデートの予定が延びちゃうけど、もうちょい待っててくれよな。
ネットが静かに揺れるのが見える。
それを見た瞬間、俺は大きな大きな充足感に包まれる。
試合してるのに、戦ってるのに、安心するって変だよな。
でもうまくいえないけど、すごくすごく嬉しくて幸せな気分なんだ、いま。
なんなんだろうな、この感覚って。
次の瞬間、音が押し寄せてきた。世界が元に戻る。時間が自分に追いつく。
どこかから歓声が聞こえる。あれ、いま聞こえたのは監督の叫び声か?
起きあがって確認しようとしたら誰かの体が覆い被さってきた。平山さんだ。
「すげえ、すげえぞ」興奮状態で俺の頭をぺしぺし叩く。痛い、痛い。
男に上に乗られて喜ぶ趣味はないです、といおうとしたが、
俺の体にかかる重みはどんどん増していく。
おい、俺をこのままこのスタジアムのピッチに埋め込んで人柱にでもする気か。
俺は自由になる手の先で懸命に地面を叩いてタップしたが、
興奮したみんなは誰も気づいていない。
しばらく耐えていると重みがようやく軽くなった。
最期に平山さんが起きあがり、俺の手を引っ張って起こしてくれた。
起きたら起きたでまた笑顔のみんなからはたかれた。
「なんつう、すげえループ打つんだよ!狙ったのか?」
増嶋さんが満面の笑みだ。
「キーパーが少し前に出てたから。トラップしてたらつぶされそうだったし」
俺の返事に増嶋さんが、ひゅーっと口笛を吹く。
たいしたやつだわ、と増嶋さんがあきれたようにつぶやいた。
「おい、絶対にこの試合勝つぞ!」増嶋さんがチームに気合いを入れる。
あちこちから、おう、と雄叫びが返ってくる。
この試合、いける。俺の中で確信めいた予感が広がった。
樋口キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
540 :
U-名無しさん:2005/06/01(水) 23:35:28 ID:T7UXEKsw0
感動で泣きそうだ。・゚・(ノД`)・゚・
よくやったよくやったよくやったよくやったよくやった
542 :
:2005/06/02(木) 02:23:04 ID:DmjtUwGA0
オレもちとウルウルしておりますー!
どっかで制作会社で映画化して下さいー!
( ゚∀゚)o彡゚ ひぐち!ひぐち!!う;え;えええlfkjls;jfぢ1!
ダァーッ ループか! 樋口、そこでループかよ おぃ!!
一瞬遅れてオレらサポは雪崩だー
マージコ 樋口♪
フォッァ 樋口♪
なぜにフリエやねんw
鈴木だったらファウルもらいにいくんだろうな・・・
長く鳴った笛に、平山さんが、原さんが両手を広げる。
勝った。これで次に行ける。
センターサークル付近で俺たちは
軽くハイタッチを交わし、簡単に喜びをもう一度分かちあう。
整列。そしてモロッコの選手たちと順々に握手。
この試合でチャンスを外し捲った相手の9番が泣いている。
俺が力強く手を握ると、俺を抱いて背中をぽんぽんと叩いてきた。
もちろん言葉は通じない。
でも、今日は負けたけど次はこうは行かないぞ。
お前たち、次の試合も負けるなよ、上まで行けよ。
そんな相手の気持ちが、背中に置かれた手からすうっと俺の中に入ってきた。
同じピッチに立って戦った同士だからこそ
わかりあえるものがあることを背中の手が教えてくれていた。
モロッコの選手と離れ、熱狂やまないサポーターの前へ。
これを凱旋というのだと思った。
サポーターたちが興奮の極みにいるのがピッチから観ててもわかる。
その中を増嶋さんのリードに従って、全員そろって手をあげる。大きな拍手。
そして俺のコール。足を止めて、頭を下げた後、手を振って応える。
「随分それっぽくなってきたじゃん」と水野さんに冷やかされた。
「まぐれ、まぐれ」と今日は出番のなかった
森本がちょっと悔しそうに混ぜっかえす。俺は軽く森本に体をぶつける。
みんながこれだけ熱狂的に喜んでくれる。
もちろんできが悪いときにはブーイングが待っているわけだ。
長くやっていれば当然そういう経験もすることになるのだろう。
でも、それでも。これだけみんなを喜ばせてあげられる
サッカー選手って、幸せな人種だよな。
俺たちが挨拶を終えても、ニッポンコールは終わらない。
タッチライン沿いに歩く俺たちの背中に、喜びの声が後ろから降り続ける。
「ベスト8進出おめでとうございます」
元山の言葉に、ありがとうございます、と小熊は頭を下げた。
「モロッコ戦も前半は何度か危ない場面が目立ちましたが、
監督としては後半にうまく修正できた、という感じでしょうか」
「やはり前半は相手の高い身体能力に選手たちが面食らった部分がありました。
後半、相手の動きにこっちが慣れてきたことや、
向こうが前半飛ばしすぎて、後半足が止まってきたこともあって、
後半はだいたい自分たちのやりたいゲームができたように思います」
「そして決勝点はまたしても交代で入った樋口君でした。
起用がズバリ当たったというところですか」
ちょっとピントのずれた質問だな、とも思うが、
マスコミ的にはこういう聞き方になってしまうのもしょうがないのだろう。
「彼がああいう難しい試合の、あの時間帯で
決めるだけの力を持っていたということです」
小熊は簡潔に答える。自分の眼力を誇るつもりはない。むしろその逆だ。
あのゴールまでの距離で、背後からプレッシャーを掛けられた状態で、
ループシュートを打つ、という選択をする意思。
そしてそれを形にした、寸分の狂いもなく狙いどおりの軌道に載せたキック。
あのシーンと同じように裏に走り込む場面は、
比較的頻繁に見かけるありふれた光景だ。
だが、あのときの樋口と同じシチュエーションに立ったとき、
ループシュートを選択し、意図どおりにボールを蹴れる選手がどれほどいるだろう。
俺がどういう起用をしたかは関係ない、完全に樋口個人の力で奪ったゴールだった。
小熊がピントがずれた質問だな、と感じたのはそういう理由だった。
「さて次はいよいよ準々決勝です。
監督はこの大会の目標はベスト4進出だとずっといわれてきましたが、
試合を前にしたいまのお気持ちは?」
「こういう真剣勝負の場でひとつでも高い場所を目指すことの大切さは、
選手たちもよくわかっていると思います。
一試合でも多くこなし、そして何かを学んで今後に生かす。
そのためにも明日はいい結果を出したいと思います」
さりげなくエチャーンに毒吐くあたりリアルすぎてワロスwww
ああ、しかしこの感動はなんだろう・・・本当にいい話だな
550 :
U-名無しさん:2005/06/03(金) 11:54:37 ID:ZeSzn8tn0 BE:67527656-
本当に良く書けてるなあ。
リアルにアニメ化希望(映画だとジャニーズ出てきそうなので嫌だ)
作者はよっぽどサッカーやってた(る?)ね。選手の心情とかリアルすぎ。
物書き出来る元選手ってそうはいないダロ
中西とか真中兄とかしか思いうかばん
それより欧州に詳しい浦和フリーク、ユアサさんなんかを勝手に想像してる
ま、作者佐賀市よりおれら読者はサポとして樋口とモニカの後押ししね
552 :
U-名無しさん:2005/06/03(金) 13:08:02 ID:ZeSzn8tn0 BE:27010962-
まあ、今はワールドユース編なので仕方がないが
早くモニカたんもでてこないかな〜〜と首を長くしてます。
決勝までオランダとは当たらない 次はどこ?
バー連戦(シンギ・・・)も気になるがこっちモネー
とにかく今日はモニカへ電話汁! 森本に邪魔される前にw
「あれ、みんなは?」
ドアを開けるとそこにいたのは平山さんだった。
「カレンや増嶋さんたちとリラックスルームに行ってます。
みんなでアルゼンチンのビデオ見てますよ」
俺たちはモロッコの試合を終えた翌日、すなわち昨日、
準々決勝に備え、ユトレヒトのホテルに移動していた。
「ヒロはいかないの?」
平山さんは俺のことをそんなふうに呼ぶ。
学校では苗字で呼ばれることがほとんどなのでちょっと落ち着かない。
「いま、みんな行ってるから混んでますよ。
後で見に行くつもりです」
じゃあ、俺もそうすっかな、と平山さんが言う。
しばらく俺たちの部屋で一緒に待ってますか、とたずねると
「いいかな?本読んでるだけだから別に一人でいればいいんだけど、
やっぱり部屋に一人でこもってるとどうしてもさみしくて」
平山さんが笑った。俺も笑った。その気持ちはわかる。
俺が窓際に椅子を置いてぼーっと窓の外を見ている後ろで、
平山さんはゆっくりとベッドに座って本を読みはじめた。
ちらっと見ると伸びた足が本当に長い。
「平山さんて、本好きですよね」
読書の邪魔しちゃ悪いかな、と思いつつ話しかけてみる。
平山さんは別に気にした様子もなく
「そんな難しい本、読んでないよ。暇つぶしにいろいろ読んでるだけ」
「でも平山さんて頭もいいんでしょ」
平山さんは口を大きく開けて笑うと、
それはマスコミの書いた嘘だって、と手を振って否定した。
サッカーも上手くて、頭もいいんじゃ鬼に金棒ですね、というと、
「俺はサッカー上手くないよ」と平山さんは首を横に振った。
十分上手いですよ、と俺が言うと、平山さんは真顔になって
「でも、俺はサッカー選手になる気はなかったんだ」
意外な答えに、え、どうしてですか?とたずねると
「自分がサッカーで食っていける人間だとは思えなかったんだ。
だから、大学でサッカーをやって、その後は先生になるつもりでいたんだよ。
で、大峰先生みたいに、学校の部活の指導とかできたらいいなって」
平山さんが大学で教員免許を取得しようとしていたことは、
俺も新聞の報道で見た記憶があった。
「でも小熊監督が急に前回のワールドユースのメンバーに呼んでくれて・・
それまで全然合宿とか参加してなかったんだぜ、
もうびっくりした、としかいいようがないよ。
最初は大学の試験と日程が重なってるんで無理です、って。
でもそれでもいいからとにかく来いって。
一度UAE入りしてから日本に戻って受験して、またUAEに行ったんだぜ。
小熊さんも無茶言うよなあって思ったよ」
平山さんが笑う。俺もつられて笑う。
「でも選ばれても、それでも俺の考えは変わってなかったな。
ワールドユースにでれば、将来子どもたちを教えるときに、
いい経験として話してあげられるかなって、それぐらいの気持ち。
だからワールドユースに選ばれても、ちゃんと受験したんだけどね。
ただワールドユースが終わって日本に帰ってきたら、
もう次はオリンピックだ、みたいな雰囲気になっちゃってるんだよね。
まさかと思ったら本当に合宿に呼ばれるし。
あとはもう流れにのってるだけ。あっという間の出来事だったね。
なんか余計なことを言えるようなムードじゃなかった」
平山さんが苦笑いする。
サッカー雑誌でも、大学に行くような奴を呼ぶなんて・・
みたいな論調の記事がごくたまに出ていた。
そんな雰囲気の中何かを言えば混乱が大きくなるだけなのは、
火を見るよりも明らかだっただろう。
「平山さん、先生のほうは・・」
「うん、もう無理だろうね。これだけ遠征が入ると必要な単位がとれないんだ」
そのことも新聞報道ででていた。
「自分自身、サッカーで食っていけるかというと、
やっぱりいまでも自信はないんだ。
まあこんな性格だからプロはやめておいたほうが
いいのかな、と思ったんだけど。
ただここまでみんなが期待してくれるんだから、
きっと俺にもそれだけの価値があるんだろうと最近は思うんだ。
だからやるだけやってみようと。いまはそう思ってる」
なんとなくしんみりしてしまった。
そんな俺の顔を見て、
「そんな暗くならないでよ。
別に俺自身納得してる話だし、悔いはないからさ」
平山さんがあわてたように言う。
俺は自分自身のことを考える。
サッカーが好きだ。それはまちがいない。
ずっとサッカーをしていたいと思っている。
でも、プロのサッカー選手になるということは、
そういう気持ちとはまったく別の次元の話なのだろうか。
激しい競争の世界、明日の保証のない世界。
サッカーが好きという気持ちだけでは、簡単に飛び込んではいけない世界なのだろうか。
くそっ
平山がちょっと好きになったw
558 :
U-名無しさん:2005/06/04(土) 01:17:46 ID:QBgqZXXQ0
代表戦より魅力的
おとっつぁん、それは言わない約束だよ
小熊監督をA代表に!
561 :
:2005/06/04(土) 01:25:47 ID:ThXZgNup0
毎日更新うれしい!
電車男よりこっちのほうが書籍化、映画化、ドラマ化してほしい!!
モニカ男
平山ガンガレ
ヒ・ラ・ヤマ
ヒ・ラ・ヤマ
とても想像で書いてるとは思えん
553>
×シンギ
○シンジ
俺様はバーレーンでなくて自宅でテレビ観てるナ
565 :
定期告知:2005/06/04(土) 09:19:07 ID:+MtddivH0
「この前の試合でループシュート決めたとき、どんな気持ちだった?」
考え込んでしまった俺に平山さんが優しくたずねる。
「シュート決めたとき、ですか?」「うん」
俺は思い出してみる。
相手のタックルを受けて倒れながら
俺は自分が蹴ったボールがゴールに吸い込まれるのを見ていた。
ああ、あの時。俺は確かになにかを感じていた。
なんだろう、あの気持ち。
気分がよかったけど、快感というのとは少し違う。
なんといえばいいんだろう、いい言葉が見つからない。
「俺がこの前のワールドユースにでたとき、
エジプト戦で点とったのは知ってる?」
知ってます、テレビで見てました。俺は答える。
終始押し込まれる苦しい流れの試合。その中で一本の縦パスから、
鮮やかにディフェンスとキーパーを交わして流し込んだ美しいゴール。
そっか、じゃあ説明はいらないね、と平山さんは言うと
「あれを決めたときね、すごい感動したんだ」
俺の中ですっと腑に落ちるものがある。
ああ、そうか。あのときの俺の気持ち、あれは感動なんだ。
「もちろんいままでに数え切れないほどゴールは決めてる。
大事な試合、大きな試合で決めた思い出のゴールもたくさんある。
でもね、あのとき俺が蹴ったボールが転がっていって、
相手のゴールに入ったとき、そのときのうわぁーって気持ち。
あの時の感動にはかなわないんだ、なんでだろうね」
俺はうなずく。
「わかります、俺が感じたのも同じだと思います」
平山さんは俺の言葉に嬉しそうに微笑むと、
「正直、去年は結構しんどいこともあったんだ。
いつも記者の人にはあれやこれやと聞かれるし、
なかなか怪我や疲労とかでコンディションが上がってこない時期もあってさ。
そうするとね、やっぱりいらいらしてくるんだ」
平山さんの横顔にちょっぴり憂いの色がさす。
辛かったときのことを思い出したのだろうか。
「でもオランダに来て思ったんだ。
あのゴールを決めたときの感動。
あれがあるから、俺、なんだかんだいって頑張ってるのかなって。
あの感動をもう一度味わってみたいって思うんだ」
草食動物のような平山さんの顔がもっと優しくなる。
「いま思うのは、もっと大きな舞台でゴールを決めたら、
俺はどんな気持ちになるんだろうって。
あれ以上、もっと感動できるのかなって。
俺はそれを見てみたいんだ。体験してみたいんだ」
平山さんは首を振って俺の顔を正面から見つめると、
「だから明日はどうしても勝ちたい」
きっぱりと力強く言いきった。
こんな力強さにあふれた人の言葉を聞いたのは久しぶりのような気がした。
「この前はベスト8で終わってしまったから。
はじめて来たみんなには申し訳ない言い方だけど、
ここまでは俺は一度もう見たことのある世界だから。
この上を見なければ、俺の二年間は無駄だったことになってしまう」
ああ、重い。俺はそう思う。
瞬く間に期待のホープとして祭り上げられ、走り続けた前回大会以降の時間。
この人はどれだけの無責任な期待を背負い続けてきたのだろう。
568 :
U-名無しさん:2005/06/05(日) 17:43:05 ID:R9NL1O1aO
保守
「必ずいいパス送りますよ」
控えの俺の根拠のない言葉、それでも平山さんは信じてるよとばかりにうなずく。
「明日は頼むよ。ヒロがでてくると、
なんかチームのリズムがよくなるからさ」
意外な発言に俺はびっくりする。
そうですか、と思わず問い返すと、平山さんは真顔で
「うん、ブラジル遠征ではじめて出てきたときに思った。
その後もヒロがでてくると、チームが活気づくなって感じるよ。
ちょうどジュビロの中山さんみたいな感じかな?
ほら、ヒロって結構意味もなく走り回ったりするじゃん、
あんまりプレスとしては効いてないんだけどさ」
俺は思わず苦笑する。
「ただそれ見てると、俺なんかも前のほういて、
ああ、もうちょっと守備しなくちゃな、もう少し走らなくちゃなって思うんだ。
一番若いやつがあんなに頑張って走ってるんだから、
俺なんかもっと走らなくちゃダメだって。
きっとみんなヒロのプレイを見てそう思ってるんじゃないかな」
そうだったんだ、全然気づかなかった。
俺も自分のプレーで少しは人に何かを伝えられるようになったのだろうか。
モニカ、俺のプレーはお前に何かを伝えてるか?
「そういえばこの前森本が騒いでたけど、
モニカちゃんとはほんとのところどうなんだい?」
急な話の展開に俺は思わず椅子から滑り落ちそうになる。
「なんですか平山さん、藪から棒に」
「いや、モニカちゃんかわいいからさ。どうなんだろうなと思って」
平山さんは楽しそうにニヤニヤしている。
「ただのチームメートですよ。それだけです。別に付きあってないし」
それだけ?と平山さんが聞き返す。意外と突っ込みがきつい。
「うーん・・まあ、チームの中じゃ仲のいいほうだとは思いますよ。
でもそれだけです。お互い別に何もいってないし・・」
公園でのことが頭をよぎり、つい歯切れが悪くなる。
「ヒロはどう思ってるの?モニカちゃんのこと」
どう思ってる、ってどういう意味ですか?と聞き返すと、
平山さんは最高に人の悪そうな笑顔で
「ヒロはモニカちゃんのことが好きなのかってことだよ」
うー・・ん。俺は答えに詰まってしまう。
俺にとって、モニカは学校の他の女たちとは、次元の違う存在だ。
サッカーのことを話せ、一緒にプレイして楽しくて、
そして勉強させられることがたくさんある。
俺にとって大切な存在なのはまちがいない。
でも、それが好きってことなのか・・・真剣に考えるほどよくわからない。
「好きっていうのかよくわからないです。
でも、俺にとって大事な存在だなとは思ってます」
俺の言葉に平山さんは静かにうなずく。
「ま、俺もその手の話について、
人に何か言えるほど経験あるわけじゃないんだけどさ。
ヒロは旅行ってしたりする?」
いいえ、ないです、と首を振ると、じゃあ、俺と同じだな、と平山さんは言って、
「俺もほとんどサッカーの試合なんだけどね、遠くに行くのは。
本かなにかで読んだんだけど、
旅にでて、俺たちみたいにこういう遠征でもいいんだけど、
新しいものをいろいろ見たり、それで感じたりするじゃん。
ああ、きれいな景色だな、とか、ああ、なんでこんなものがあるんだろう、とか、
知らない場所にいくと、新鮮な気持ちで感動したりすることがあるよね」
俺は同意する。
俺にとってはこの数ヶ月、そんな新鮮な体験ばかりだ。
「そのときね、その感動を伝えたいって思った人、
それがね、自分にとって大切な人間なんだって。そうその本に書いてあってね。
俺、それ読んで妙に納得しちゃったんだ。
そうかもしれないって。
今日、こんなものを見たよ。こんなことを考えたよ。
そんな気持ちを遠くにいる誰かに伝えたいと思う気持ち。
それが誰かを好きってことなんじゃないかって」
俺の意識はブラジルのグラウンドから空を見上げていたあの瞬間に飛んでいた。
この目で見てるかのように頭の中にあの空がありありと映し出される。
どこまでも高く、青かったブラジルの空。
少し陽も落ちかけてほのかに赤みも差したきれいな、美しい空。
俺が見たものをモニカにも見てもらえたらなあ、と思った。
俺が感じたものがモニカにも伝わったらなあ、と思った。
そうあのとき、俺は思っていた。モニカがそばにいない寂しさ・・
そんな俺の様子に
「ヒロの答えは聞かないでおくよ。聞かないでもなんとなくわかったし」
平山さんがいたずらっぽい目で見た。
俺は思わず顔がちょっと赤くなる。
「そろそろ俺たちもビデオ見に行こうか。もう幾分すいたろ」
平山さんがベッドの上から立ち上がる。
俺は部屋の鍵を手にとってその後をついて、ドアのほうへ歩く。
目の前に大きな平山さんの背中。
明日。俺はこの人にパスを送りたい。最高のパスを送りたい。
この人のために俺ができることをしたい、そんな気持ちでいっぱいになる。
平山に恋の相談は嫌すぎるw
>目の前に大きな平山さんの背中。
>この人のために俺ができることをしたい、そんな気持ちでいっぱいになる。
樋口君、それが「愛」ってやつだよ
うほっ
576 :
U-名無しさん:2005/06/06(月) 10:14:03 ID:vJgYeFAy0 BE:141807097-
>575
ちゃかすなや(^^ゞ
まあ、それはともかく「男が男に惚れる」って言うのはこういう事なんだろうね。
マジに単行本化→アニメ化キボンヌ
まずい、樋口タンが最終的にネドベドみたいになる妄想をしとる…
(・∀・)イイ!!
水色と白のストライプ。
近くで見ると改めてそのデザインセンスの良さに舌を巻く。
シンプルに美しい。
もちろんそれだけではない。
フットボールの世界ではその組み合わせは、
観る者にとっては憧れの、そしてピッチに立つ者にとっては畏怖の対象だ。
それに対抗できる力を持つのは、あとはカナリアイエローしかない。
心なしか握手を交わしてるスタメンの顔も引きつっているようだ。
ワールドユース準々決勝。相手はアルゼンチン。
グループリーグをぶっちぎりの強さで勝ち上がってきた。
決勝トーナメント1回戦では、グループBを3位通過した中国を、
4−0と文字通り粉砕してこのベスト8進出を決めている。
俺はベンチに座ったまま、水色と白のユニフォームの中から18番を探す。
いた、あいつか。背はさほど高くないが、それなりに厚みのある体つき。
一見人見知りしそうなおとなしそうな顔だちだが、
その眼光の鋭さは、こいつがただものでないことを物語っている。
アルゼンチン代表のホープ、メッシだ。
13歳でスペインに渡りバルセロナへ加入。
この5月リーガで得点を挙げ、バルサの最年少ゴール記録を塗り替えた。
このワールドユースでも既に4得点をあげ、
アルゼンチンの快進撃の原動力となっている。
俺とほぼ同じ年で既にエトーやロナウジーニョと同じピッチに立っている男。
これが世界か。俺は実感する。
ふと気づくと隣に座っている森本も鋭い目つきで、メッシを睨んでいる。
何度もビデオでメッシのプレーをチェックしていたのを俺は知っている。
こいつだってJの数々の最年少記録を塗り替えてきているが、
世界にはまだまだ化け物がいる。
俺も早くピッチに出たい。出て世界を見てみたい。
世界にはどんな奴がいるのか。どんな化け物がいるのか。
そしてそいつらを相手に、俺はどこまでやれるのか。
モニカにあったときもそうだった。
こんなうまい女がいるなんて。
今までの狭い自分の世界では考えられなかった存在。
モニカをきっかけに動きはじめた俺のサッカー。
モニカに負けないように、と懸命に走っていたら、
俺はいつしか日本の若き才能たちの中にほうり込まれていた。
そこでも負けないように喰いついていたら、
とうとう俺はこのオランダまでやってきていた。
俺はメッシを見る。お前は俺にどんな世界を見せてくれる?
俺は平山さんの姿を探す。いつものひょうひょうとした表情。
あなたの気持ちがわかります。
俺も自分がまだ見たことのない世界を見てみたい。
580 :
U-名無しさん:2005/06/07(火) 02:09:19 ID:4FIblYcq0
いつも読んでます
最高です
ミーティングで小熊監督は、
「アルゼンチンは立ち上がりで一気に来るから覚悟しておけ」
という指示を出していたが、そのとおりアルゼンチンは仕掛けてきた。
やはり彼らの中で日本はいまでも格下扱いだ。
格下の相手と戦う時には、序盤で得点を奪ってリードしておくのが、
「間違い」を起こさない一番確実な方法だ。
事実、去年の夏に親善試合でフル代表が戦ったときも、
果敢なプレスとスライディングでボールを奪うと、
開始4分で先制点をとってゲームの流れを決めてしまった。
日本の選手もそれは理解している。
しかし、理解しているのと、実行できるかはまた別の問題だ。
中村さんが鋭いスライディングにボールを奪われる。
そのボールがすばやく前に送られる。
敵のフォワードが左サイドに開いてボールを受ける。
小林さんと杉山さんが二人がかりで道をふさぐ。
だが、相手の技術もしっかりしている。
杉山さんが足を伸ばしてとりにきたところを、
すっとボールをずらして交わすと、中へ逃げるようにドリブル。
小林さんは杉山さんがスクリーンになって追うのが遅れる。
ゴール前にいるフォワードは増嶋さんががちがちに詰めているが、
そんな日本を笑うかのように、エリア手前のスペースへ低い弾道のパス。
予想もしなかった場所へのパスにコンマ数秒、日本の選手の判断が停止する。
そこへ後ろからメッシが走りこんでくる。左からのボールをダイレクトボレー。
ジャストミートのボールがゴールめがけて飛んでいく。
西川さんが必死に横っ飛び、ボールはポストの角に当たって鋭角に跳ね返る。
幸いにそのボールは水本さんのところへ。
アルゼンチンの選手が足を伸ばすが、間髪いれずに遠くへ蹴りだす。
運がよかった。しかし、なんて技術持ってやがる。
挨拶代わりの一発としては、文句なしの効果だ。
ベンチにいる誰かが安堵のため息をこぼした。
サッカー漫画のように簡単にやってくれるが、
あれだけきっちり芯を食って抑えの効いたダイレクトボレーも
そうお目にかかれるものではない。高い技術の裏づけが必要だ。
ベンチでこれだから、近くで見てた日本のディフェンス陣には
もっと強く意識に刷り込まれたことだろう。
アルゼンチンのディフェンスラインからの長いボールが、
引いてきた相手のフォワードにぴたりと入る。
増嶋さんがぴったりついているが、落ち着いて胸で勢いを殺すと、
そのボールをダイレクトで後ろへはたいた。
これでは増嶋さんも何もできない。必要以上に押せばファールをとられるだけだ。
折り返しのボールを受けたのはメッシ。
ポストしたフォワードが前に走る。メッシがすかさず前に長い玉足で出す。
増嶋さんが必死に並走。小林さんも寄って中央を厚く構える。
樋口の愛用スパイクって何?
ワールドユースはadidas履かなきゃならんケド
普段はPUMAのパラメヒコって設定が良いな〜
モニカタソはアメリカ育ちだからNikeのエアズームトータル90Uがいいなぁ。
未だに2は大黒とか好んで履いてるし、3は小野が骨折した時履いてたから嫌い。
作者殿 宜しくお願いいたします。。。。。。。。。
585 :
U-名無しさん :2005/06/08(水) 23:28:13 ID:4qM0++0j0
保守
正直、ここの更新が楽しみの一つ
587 :
U-名無しさん:2005/06/09(木) 04:01:54 ID:q6SwNYhf0
↑
同じく
588 :
U-名無しさん:2005/06/09(木) 07:49:03 ID:+LrfPXPu0 BE:54022638-
あれ?今日は更新ないのかな。
じゃあ保守
だが中央に入った相手の9番はメッシからのボールをヒールで右側のスペースに流す。
そしてそこに斜めに動いたメッシが走りこんでくる。
ディフェンスは枚数がそろっているのに、
二人のコンビネーションでいいように左右に振られてしまっている。
さっきの強烈なミドルが脳裏にある日本のディフェンス陣は、
メッシの切り込みに正直に正面に飛び込んでしまう。
コースを切られたと見てとったメッシは落ち着いて右へ流す。
サイドにいた選手が中央に切れ込んできている。
水本さんがメッシに釣られた今、ゴールとの間の壁は何もない。
エリアに入ると角度のないところから迷わずシュート。
地を這うボールがゴールへ飛ぶが、コースに入ってた西川さんが右手に当ててはじく。
だが、幸運は何度も続かない。詰めていた9番がバウンドしたボールを
軽くヘッドでゴールへ押し込んだ。あっさりと先制点。
痛い。俺は体に針でも刺されたかのように思わず顔をしかめた。
気をつけていて、監督にも言われて意識していたのに、
それでも開始早々に点を奪われてしまったというのはショックが大きい。
顔色を失った選手たちを励ます日本サポーターの声。
小熊監督の激がこだまする。この失点は監督の想定の範囲内なのだろうか。
ボールがセンターサークルに戻って試合再開。
アルゼンチンの出足がいい。おそらく全開モードで来ている。
2点目をとって、試合の流れを決めてしまおう、というのはみえみえだ。
わかっている。わかっているが日本の選手がその勢いに圧されてしまう。
相手の巧みなコンビネーションに、
ただただガードを固めて下がるボクサーのようだ。
相手のクロスを水本さんがヘディングでクリア。
ハーフウェーラインの手前でパスを受けた水野さんが前方へロングパス。
ダッシュを効かせた平山さんの目の前で旗が上がる。
オフサイドだ。平山さんが天を仰ぐ。
相手がすばやいリスタートからボールを前線へ送る。
こういうところがいやらしい。流れを離さない気だ。
また日本のディフェンスが緊張を強いられる。
今頃、ディフェンダーたちは心の中で水野さんを呪っていることだろう、
どうしてもっとキープして時間を稼いでくれないんだ、と。
水野さんにしてみれば、中盤だってプレッシャーが緩いわけじゃない。
囲まれてボールを失うよりも、
前線へ蹴ることで少しでも時間を使うつもりだったはずだ。
だがそれを受ける平山さんも焦りがあるから、オフサイドに引っかかってしまう。
歯車がずれている。流れがどんどん悪くなる。
打開しようという気持ちが焦りを生み、その焦りがまたミスを呼ぶ。
作者さんは代表戦がある時はそっちの原稿で忙しい
焦らず待つことです
空メ〜ル
592 :
U-名無しさん :2005/06/10(金) 22:42:15 ID:bDtfLPHM0
保守
久しぶりのマイボール。本田さんがすばやく左右を確認してサイドへ出すが、
呼吸が合わない。家長さんがバックステップを踏んだ瞬間のパス。
タッチラインを割るボール。日本サポーターのため息。
家長さんが、なんで今出すんだよ、と手振りで訴える。
本田さんも両手を広げて抗議する。
スローインから大きくサイドを変えた展開、
少し激しくいった杉山さんのチェックにメッシが倒れる。笛がすかさず鳴る。
今のはファールじゃないだろう、と杉山さんが珍しく審判に文句を言う。
もちろん審判の判定が変わるわけはない。
嫌な位置でのフリーキック。あっさりとゴール前へほうりこんできた。
増嶋さんがヘディングでクリアするが、相手に寄せられていた分飛距離が出ない。
落ちてきたボールを8番のザバレタがすかさずミドルシュート。
ゴール前の誰かに当たって止まるが、ボールはエリアの中だ。
エリア内での混戦。ごちゃついた、と思った次の瞬間、ネットが揺れていた。
アルゼンチンの選手たちが勢いよくコーナースポットへ走って喜びを爆発させる。
思わず下を向いてしまう日本のディフェンス陣。
2点差。最悪といっていい展開だ。
この試合は一発勝負のトーナメント、あのアルゼンチンから3点とらなければ
次には進めない、という事実が日本に重くのしかかっている。
サポーターたちがエールを送るが、その声は明らかに1点目のときより弱々しい。
時計を見る。20分を過ぎたところ。
コーチングエリアに立つ監督の背中を見る。
おそらく頭の中では交代を考えているだろう。
ピッチではアルゼンチンがいいようにペースを握っている。
怒涛のように前に出てくることこそなくなったが、
カウンターに気をつけながら日本をなぶるようにパスを回す。
穴が、スペースが開けばいつでもついてやるぞ、という余裕だ。
隣で森本がいらついているのがわかる。早く俺を出せ、と思っているのだろう。
その気持ちは俺にもよくわかる。
長い笛。接触があったらしい。アルゼンチンのファール。
ピッチを見ると杉山さんが倒れこんでいる。
しばらく様子を見ていたが、少し様子がおかしい。
杉山さんのそばにいった増嶋さんがスタッフを手招きする。
スタッフが何かを話しているが、その間も杉山さんの顔は歪んでいる。
やがて担架が呼ばれる。杉山さんが乗せられて、反対側のタッチラインの外へ出された。
日本が一人少ないままプレーは再開される。
じっと見ていると、スタッフから×印のサインが出た。怪我らしい。
誰を入れる?もちろん俺も候補の一人だが、
俺のスタミナに不安を感じているらしい小熊監督が果たして俺を呼ぶか。
今日は水野さんのトップ下に、中村さん、家長さんの両サイド。
そして杉山さん、本田さんのボランチ。
普通に考えるなら兵藤さんの投入か。
ただ小熊監督は兵藤さんの調子がこの大会はいまひとつと見ているようだ。
2点差がついていることも考えれば攻撃的に行くことも含め、
サイドに誰か、たとえば左に前田さんを入れて
中村さんか家長さんをボランチに回すという手もありうる。
ふたりともボランチは本職じゃないが、こういう事態に備えて練習自体は何度かしている。
どうする、どのカードを切る?
ああっ!もうイイとこで止めてくれやがる…!!
乙。(;´Д`)ハァハァ
大熊じゃだめだ!小熊を呼べ!
オランダ戦負けちゃったね・・・
樋口がいればと思いました。
>>597 というか寧ろ樋口がU-20代表にいないことに対して
違和感が芽生えてきた今日この頃。
スレ依存・・・
599 :
U-名無しさん:2005/06/11(土) 14:24:02 ID:N4XHW7CS0
今日のオランダ戦みたいな展開だな。
放り込みサッカーで一点しか取れなかったけど
樋口の活躍で逆転を期待
小熊監督が振り向く。俺と目があった。
少し意外だったがどうやら俺を前半から入れることにしたらしい。
いそいで準備してアップをこなす。急げ、だが怪我しないように慎重に。
3点目だけはとられてくれるな、と俺は祈った。
3点目が入ったら、俺が出る前に試合は完全に終わってしまう。
アップを済ませて、小熊監督の指示を聞く。
「お前と本田でボールを溜めてチームを落ち着けろ。
攻撃についてはしばらく忘れろ。
無闇に放り込まず、しっかりボールをキープしろ」
俺はうなずく。
「流れが落ち着いたら徐々に相手に仕掛けていけ。
ただし前半、これ以上の失点だけはするな。
前半2−0なら後半に可能性がある。
常に本田とは前後のポジションになるように注意しろ。
相手のカウンターを常に頭に入れておけ。
相手ボールのときはお前がメッシを抑えろ、わかったな」
タッチライン際に立つ。プレーが切れるまでの間、俺はそっと腰に手をあてる。
手に伝わる感触が俺の緊張を少し和らげる。
プレーが切れた。俺はピッチへ駆け出す。3試合目のピッチ。
水野さんがピッチ中央で俺を待っている。ポジションの確認だ。
続いて本田さんのところへ。監督の指示を伝える。
そして後ろを振り返り、ディフェンスラインと確認。
最後に前線を見る。平山さんと目があった。
頼んだぞ、とその目がいっている。どこにもあきらめの色なんてみえない。
二年間この日が来るのを待ち続けた。簡単にあきらめたりできるわけがない。
目を見るだけで平山さんの気持ちが手にとるようにわかった。
相手ボールでプレーがはじまる。
俺は監督の指示どおりメッシにつく。
ちらりとメッシが俺を見た。
マークをつけてきたか、だがそんなことをしても意味ないぞ、
俺はアジアの雑魚に封じ込まれたりはしない。
言葉を交わしたわけでもないのに、プライドと自信が伝わってくる。
知るか、そんなことは。終わってみればわかる。
俺はお前に絶対に好きにさせない。
メッシが小刻みな動きで俺の視界の中で揺れる。
歩いていたかと思うと、急激にダッシュして引いてボールを受けに行く。
俺は集中を切らさず、後ろからぴったりついていく。
メッシの足元にボールが入った。
後ろに伸ばされたメッシの腕が俺の胸を突く。背中が遠い。
こいつは戻したりしない。俺の中に確信がある。
左か右か、絶対にターンしてくる。ボールだけを見ろ。
俺の体が伸びた手を交わそうと右に寄ったときを見計らって左にターン。
体を寄せるが、メッシはそのまま中央に逃げながら進む。ボールが足元から離れない。
このまま勢いで突破されたら厄介なことになる。
俺は相手の左脇に右肩を入れてボールをとりに行く。
メッシの左手が俺のユニフォームの腹の辺りを引っ張る。
そのままパスを出すか、ドリブルで流れるかと思っていたら、
これだけ体が密着した状態から急停止、そして左足アウトサイドを使って切り返してきた。
俺とメッシの体が離れる。ボールが俺のかかとのすぐ後ろを通る。
602 :
U-名無しさん :2005/06/12(日) 15:22:34 ID:hlLFzEjf0
hosyu
603 :
U-名無しさん:2005/06/12(日) 16:51:10 ID:r4GPF8GjO
「カモン、ボーイ」
おもしれ〜
605 :
U-名無しさん:2005/06/13(月) 00:19:48 ID:JDVy4EKD0
たまらんす
くそったれ。左足を軸に反転してスライディング。
メッシのつま先のすぐ前にあったボールを
かろうじて俺の右足のつま先がはじく、というより押し出した。
軽くジャンプしてメッシが俺の足を飛び越える。
転がったボールを悠々と小林さんが前線へ。
オフェンスモードに入っていたアルゼンチンの選手は近くにいない。
メッシのキープ力を相当信頼しているらしい。
やはりメッシからボールを奪えれば、メッシを抑えられれば、
このゲーム、流れは変わってくるかもしれない。
そのボールが本田さんへ。本田さんが監督の指示どおりゆったりとキープする。
今度はアルゼンチンがボールを追っかけまわす。
本田さんが一度家長さんにあずけ、家長さんは前をきられたのを見ると
おとなしくディフェンスラインへ戻す。
増嶋さんを経由して俺へボールが回ってくる。相手のフォワードが迫ってくる。
ここは安全に小林さんへ。小林さんもパスコースを切られるとバックパス。
エリア手前まで深く引いた増嶋さんが受ける。もう一度ビルドアップ。
バックパスばかりのひどくコンサバなボール回しだが、
それでもこれだけの時間、ボールを保持していられれば
後ろの選手は気分的に少し落ち着く。
しかしアルゼンチンは相変わらず意気盛んで、きついプレスをかけてくる。
モロッコとやったときもスピードの違いにあせらされたが、
アルゼンチンはそれよりも早い。体感で言うとコンマ3秒は詰めが早い。
モロッコもそうだがワールドユースにいる世界の相手は、日本よりもコンマ3秒早い。
そこまでなら慣れることもできる。なんとかついていける。
だが、アルゼンチンはそれよりさらにコンマ3秒早い。
身体能力だけならモロッコのほうが高いかもしれないのに、
それでもアルゼンチンがさらにコンマ3秒早く詰めてこれるというのは、
ボールの動きを、試合の流れを読む力が優れているのか。
ここまで来ると慣れるだけでは克服できない。
追いつけない人間をふるい落としていく、慈悲のない領域のスピードだ。
なんということのないボール回しでさえ、
日本の選手は限界領域での判断を強いられている。
とりあえず前半は最低このままで持ちこたえなくてはいけない。
後半になれば絶対に流れが回ってくる。
だがついに日本のパス回しが決壊した。兵藤さんが囲まれてボールを失った。
すかさず左サイドをダンプカーのようにドリブル突破してくる。
家長さんがストライプのユニフォームを掴むが、
スピードでひきちぎられてバランスを崩して倒れる。やばい。
俺はメッシを探す。いない?どこだ?すぐ消えやがる。
ファーだ。フォワードのような位置取り。ラインの中に入っている。
どうする?マークを続けるか?
だがディフェンスラインに俺も吸収されてしまう。ラインを乱すことにならないか?
一瞬迷うが、そのままメッシにくっつく。
絶対こいつがどこかで勝負してくる。確信めいた予感があった。
低い弾道のクロスは精度がなく、増嶋さんが手前で蹴り返す。
そのボールはツキがないことにもう一度アルゼンチン。
メッシは?今度はエリア手前の位置に下がっている。
俺も下がってつこう、と動いたその瞬間、メッシが猛ダッシュ。
俺は左足で踏ん張り、メッシに懸命についていく。やっぱり二列目からの飛び出しか。
ボールは見なくてもわかる。
ゴール前を大きくまたぐファーポストあたりへのロングボール。
少し前にメッシの背中。こいつにプレーさせたら終わってしまう。
もう一歩、もう一歩早く。こいつの前へ。
俺の体がぐっと前に出る。メッシがジャンプする気配。それにあわせて俺も跳ぶ。
こいつにだけは仕事させない。俺とメッシの背中が空中でこすれあう。
後頭部にボールが当たる衝撃。そのままもつれあうように地面に落ちる。
ボールを捜す。定まらない視界の中で、小林さんからボールが前に送られるのが見えた。
ふうっと息を吐く。大丈夫だ。俺は手をついて立ち上がる。
脇でメッシも体を起こす。特に痛んでもいないようだ。
顔を見るが何を考えているか表情からは読みとれない。
ああ、いま、俺はこいつと戦っている。
アルゼンチンの若き天才と、次代のバルサを担う男と一対一で戦っている。
試合の途中だというのに妙な充実感が俺を包む。
俺はいま、まちがいなく世界を相手にしている。
うおおおおお
おれの気を送るぜ
610 :
U-名無しさん:2005/06/13(月) 08:17:43 ID:X8GRSf0z0 BE:47269073-
うおおおお
ナイスファイト!樋口!
594 :U-名無しさん :2005/06/11(土) 01:24:13 ID:MOS7ewJl0
今日は水野さんのトップ下に、中村さん、家長さんの両サイド。
そして杉山さん、本田さんのボランチ。
普通に考えるなら兵藤さんの投入か。
600 :U-名無しさん :2005/06/12(日) 01:17:34 ID:M19gZd5J0
小熊監督が振り向く。俺と目があった。
少し意外だったがどうやら俺を前半から入れることにしたらしい。
607 :U-名無しさん :2005/06/13(月) 00:28:07 ID:sptj4kNH0
だがついに日本のパス回しが決壊した。兵藤さんが囲まれてボールを失った。
兵藤はベンチだよな?
すごくおもしれぇし楽しみにしてるからこの間違えはチョット残念。。。
612 :
U-名無しさん:2005/06/13(月) 21:47:22 ID:JDVy4EKD0
俺も兵藤嫌いだもん
前半終了の笛が鳴った。
攻撃の形こそできていないが、
守備に関していえば、ある程度立て直せていた感じがある。
その意味では手応えはあった。だが。
俺はスコアボードを見る。刻まれた「2」の文字が重い。
この後、無失点に抑えただけでは何の意味もない。
先に進むには二点差を追いつかなければいけない。
まともにシュートを打ててない状況で二点差を追いつけ、と。
口から小さくため息がこぼれそうになったとき、
左側から平山さんが歩いてくるのが見えた。
はっとする。萎えてる暇はない。昨日考えたことを忘れたのか。
いまはただ点を取り返すことだけ考えればいい。
ロッカールームの雰囲気は微妙だった。
立て直せた部分もあるので、壊滅的に暗いわけではない。
だがやっぱり2−0というスコアは重荷となってのしかかる。
小熊監督が中央に立った。みんなの意識が向く。
「残り45分で最低でも2点とって
追いつかなければ、俺たちのワールドユースはここで終わる。
2点差は楽な点差ではない。だが、十分チャンスのある点差だ。
まだあきらめる必要はまったくない。
先に1点とれれば、追いつける可能性は決して低くない」
ここまでは一般論だ。じゃあ、どうしたら点が取れるのか。
「開始すぐの時間帯を狙って、相手はおそらくとどめを刺しに来る。
立ち上がりはラインは深めにしろ。じっくり守れ。
樋口はメッシのマークを絶対に外すな。
小林も本田も樋口の周囲をケアして、メッシに自由に捌かせるな。
その時間帯はボールを奪ったら、前線へ蹴りこめ。
ただし、人に合わせるな。奥のスペースへきっちり蹴りこめ。
手前で奪われると波状攻撃の餌食になる。
もう一度いうぞ、立ち上がりは相手陣内奥まで深く蹴れ。
平山とカレンはそれを追って常に裏を狙え。
ボールが取れなくても前線から相手を追い込め」
監督は自分の言葉が届いているか確かめるように選手を見渡す。
「立ち上がりをしのげれば、南米の奴らは必ず一度ペースを落とす。
後半、ずっとハイペースで飛ばしてくるなんてことはありえない。
その時間帯でチャンスを掴め。
相手のペースが落ちたな、と感じたら、攻めていけ。
この時間は打ち合い覚悟だ。とにかく点をとれ。
守備については多少のリスクはとれ。点をとらなければ次はない。
中村、家長は常に互いのポジションを見て、どちらかが高めに構えろ。
本田、樋口。どちらかが上がって水野と並んで攻撃を作れ。
攻めのときは三人が逆三角形になるように意識しろ。
最後は平山の頭を使え。平山の頭はアルゼンチン相手でも通用する。
どうしても崩しきれないときは平山で勝負しろ」
口調が熱を帯びる。その熱を伝えるように小熊は選手一人ひとりの目を見る。
「アルゼンチンは強い。だがこいつらを倒さない限り、
日本が世界を制すなんてありえない。
ぶちのめせ、ひとりひとりが対面をねじふせろ。
俺たちは世界に出て行く。世界を獲るんだ。
あと三つ勝てば世界が獲れる。俺たちが世界一になるんだ」
小熊監督の言葉はどんどん熱くなっていく。
この人、本気で世界を獲る気だよ・・。
でもそうだ、本気で獲りに行かなければ手に入るわけがない。
世界一。それはどんな気持ちなんだろう。
世界で最も普及しているスポーツで一番になるというのは。
選手同士の話し合いが始まる。
本田さん、水野さんと俺は打ち合わせる。
どのタイミングでボランチが前に上がるか。
水野さんはどんなイメージで動いて、上がってくるボランチのスペースを作るか。
俺たちは互いの持つイメージを共有しあい、深めていく。
後半開始の時間が来る。円陣を組む。
増嶋さんの掛け声で気合を入れる。俺たちの声がロッカールームに響く。
後半期待!!
後半の立ち上がりからやはりアルゼンチンはエンジンを全開にしてきた。
さらにパス回しのスピードをあけ、
どんどん後ろの選手が前線に飛び出してくる。
メッシだけ見てればいい俺はまだしも気が楽だが、
ディフェンスの選手たちは、ひっきりなしに視線を動かして、
目から入ってくる情報を処理するのに必死だ。
メッシが引いてボールを受ける。
絶対に前だけは向かせない、と俺は後ろから足を入れる。
メッシと俺の足がぶつかりあう。
メッシの腕が俺の体を引き剥がして隙間を作ろうとする。
後ろに戻す、という発想はさらさらないらしい。素敵だ。
隙間を開けたら捌かれてしまうのは目に見えている。
テクニックでは向こうに一日の長がある。
不意にメッシの圧力が抜ける。つっかえ棒を失った俺の体がメッシと密着。
その瞬間に体全体で押されて、俺は思わずバランスを崩す。
しまったと思うのと同時にメッシはもう体の向きを変えている。
焦りがつい俺の足をボールを奪いに伸ばしてしまう。
メッシが待ってました、とばかりにステップを踏む。
伸ばした足の先でボールが逃げていく。
伸びきった俺の体は、メッシの動きに対応できない。
やられた、完璧に抜かれた。
メッシは猛然と前線に突っ込んでいく。
この絶対に失点できない時間帯、メッシをフリーにするのはやばすぎる。
メッシの背中。ゴールまではまだ距離がある。
ここならまだ許される。これ以上行かせたら危険すぎる。
俺は迷うことなく背番号を思いっきり掴んで力任せに引き倒した。
即座にホイッスル。審判が猛烈な勢いで走ってくると、
俺の頭上にイエローカードをかざした。
妥当な判定だ。文句をいう気にはなれない。
審判が何事かをしゃべっている。ラフプレイへの注意だろう。
俺は手をかざして審判に恭順の意を示すと、紳士的にメッシの手を掴んで起こした。
怒っているかと思ったが、メッシの表情にはまだ余裕がある。
一枚、イエローを切らせることに成功した。一対一の勝負に勝った。
くそっ。悔しさを消化しきれず心の中で毒づく。
まだだ、まだ我慢だ。
小熊監督が言ったように立ち上がりはひたすらこらえる時だ。
きっと監督の言うとおり、俺たちの時間帯が来る。
そのときは。俺をメッシを見る。絶対に俺の背中を追わせてやる。
619 :
U-名無しさん:2005/06/14(火) 02:11:00 ID:NFy5CwvBO
『カモン、ボーイ』
620 :
U-名無しさん:2005/06/14(火) 04:35:38 ID:fhXCTqGbO
文章だけでこんなにワクワク出来るなんて…作者は天才だ!
621 :
U-名無しさん:2005/06/14(火) 10:45:44 ID:RHmaHAfS0 BE:45018454-
作者さん乗ってきたなあ。
本当にどきどきワクワク。
622 :
U-名無しさん:2005/06/14(火) 23:39:35 ID:KvjkIsGQ0
たまらん
自陣の一番奥から増嶋さんのロングフィード。
ボールが俺の頭の遥か上を飛んでいく。
ハーフウェーを越えたところで、ピッチの中央にいた平山さんが競る。
平山さんの頭でそらされたボールが右サイドへ流れていく。
それがちょうど後ろからスピードを上げて走ってきたカレンの前に転がる。
思わず後ろで見ていて息を呑んだ。
ちょっとした僥倖だ。カレンがそのままボールをかっさらうと
スピードの違いでディフェンスラインを突き破って、一気に体ひとつ出切った。
カレンが長い蹴りだしのドリブルでスピードを上げる。
平山さんが、水野さんが、中村さんが一斉に前線へ走っていく。
アルゼンチンのディフェンダーが追いついて、中を切りながらカレンを抑えにいく。
エリア手前、もうあまりファールはしたくない位置だ。
そのときカレンが絶妙のステップを踏んだ。
スピードを相手に意識させて、完全に縦方向の突破に相手の注意を持っていっておいて、
左足アウトサイドを使って、中へ入り込む。
エリアに侵入、前が開いてる。あれなら打てる。
チャンスに息が止まった瞬間、視界の中でカレンが鉄砲で撃たれたように倒れた。
すかさず笛。審判がペナルティスポットを差しながら走っている。
PKだ。アルゼンチンの選手たちが納得いかないとばかりに詰め寄るが、
審判は左右に首を振って相手にしない。
カレンが倒れたまま動かない。心配になったが様子を見に行った平山さんが
すぐに離れたところを見ると、回復の時間をとっているだけのようだ。
平山さんはアルゼンチンの選手を横目にスポット付近に立っている。
PKは平山さんが蹴れ、というのが小熊監督の指示だった。
だが、この試合に限っては指示がなくとも平山さんは蹴るだろう。
ほんとうにしぶしぶという感じで、
審判を取り囲んでいたアルゼンチンの選手の輪が解ける。
少し足を引きずっているが、カレンはもう立ち上がっている。
平山さんが丁寧にボールをセットする。審判が位置を確認。
俺はエリアの少し手前から念を送る。頼む、平山さん。決めてくれ。
攻撃の選手とアルゼンチンの選手たちがエリアの線ぎりぎりに詰めている。
笛が鳴り、平山さんが助走開始。
ボールを蹴る澄んだ音。右に飛んだキーパーの裏をかいて
ゴール左にボールは吸い込まれた。
平山さんがすかさずネットからボールを回収して、
センターサークルへ向かって走る。笑顔はない。
まだ1点。もう1点とらなければこのPKの意味はない。
試合再開。アルゼンチンが長いボールを蹴って攻め込んでくる。
点をとられたらすぐ取り返すのが一番サッカーでは効果がある。
もちろん日本にとってもここで一気に畳み掛けるのが理想だ。
流れを掴もうとする意思と意思のせめぎあい。中盤で激しい争いがはじまった。
ルーズボールを追った水野さんが、ラフに体ごとつぶされてピッチに倒される。
笛が鳴らない。信じられないという表情の水野さん。
ボールを持った相手の8番に、今度は本田さんが強烈なスライディングタックル。
本田さんにしては珍しいプレー。もつれあって倒れる二人。これも笛はない。
倒れたまま本田さんが足を伸ばしてボールを俺のほうへ蹴る。
そのボールをとりに行く。
樋口!後ろ来てるぞ!
ボールが足元に入った瞬間、前のめりにふっ飛ばされそうになる。
お前、いま肘使っただろう?!俺の体の中で熱がはじける。
マジだ。こいつら、マジで来てやがる。
かろうじて足に引っかけてボールキープ。
俊輔をまねたボールを軸にしてのターン。前を向いて視界を確保する。
目に入ったサイドの中村さんへ考える間もなくパス。
だが、中村さんもハーフウェー付近で前を切られる。
そのボールを中に入ってもう一度受ける。前に少しスペースがある。
左サイド、家長さんはまだ低めの位置だ。前の2枚はしっかり抑えられている。
ここで前線にパスを送ってもゴールまでは遠い。俺の周りは若干スペースがある。
俺はセンターサークルへドリブル。
相手が寄ってきたのを見計らって、ボールを蹴りだしてぎゅっとスピードアップ。
俺の体が前に出た、そう思ったときには俺は芝生に顔をしたたかに打ちつけている。
膝に激痛。ボールがないのに、腹を蹴るかのような脚の入れ方しやがった。
1点差になった途端、ファール覚悟でえぐく当たってきやがる。
笛が鳴るのが聞こえたが、痛みをこらえるのでそれどころではない。
増嶋さんが猛然と抗議している気配をぼんやりと感じるが、そっちを向く余裕もない。
じっと歯を喰いしばってひたすら痛みが引くのを待つ。
痛覚をこらえながら、心を落ち着けて足の筋肉とゆっくり対話する。
ここは大丈夫。よし、ここも大丈夫。よし、やばい怪我とかじゃない。
俺になにか言ってるのが聞こえる。おそらく審判か。
大丈夫か、と水野さんの声。小さく、ほんとに小さくうなづくのがやっと。
俺は少し体を起こし、芝に手をつき四つんばいの体勢で、筋肉が回復するのを待つ。
ようやく呼吸が少しずつ落ち着いてくる。徐々にだが体に力が入るようになってくる。
「樋口ーーっ、大丈夫かーー」小熊監督の声だ。
目だけ動かしてベンチを見ると、いまにもピッチに入ってきそうな勢いだ。
隣では滝沢コーチも心配そうな表情で見ている。
「あれ、どうしたんですか、こんなところで」
リラックスルームに行くと、そこでは滝沢コーチがひとりでビデオを見ていた。
「うん、資料用のテープの編集さ。みんなに見せるやつ」
「え、でもアルゼンチンのはもう・・」
「その次のオランダの奴さ。勝ってからじゃ間に合わないからな」
準々決勝、相手はアルゼンチン。
下馬評ではアルゼンチン圧倒的有利というのは聞くまでもなくわかっていた。
でも、この人はアルゼンチンに勝ったときのことを考えている。
「このテープってコーチが作ってるんですね」
「いや、だいたいはスタッフがポイントになるシーンは抽出しておいてくれる。
ただ、特に強調したいポイントは監督によって異なるからね。
監督とは普段から一緒にいるし、
付き合いも長いからだいたい考えがわかるんでね。
だからだいたい俺が最後の編集はしているかな」
画面の中ではオランダのクインシーが強烈なドリブル突破を見せている。
「そういえば、監督とコーチってうちの岩崎監督と一緒だったんですよね」
「そうだよ。俺と岩崎が小熊さんの一学年下だったんだ」
滝沢コーチが「監督」でなく「小熊さん」と呼ぶのをはじめて聞いた。
「当時、全国制覇したりして強かったそうですね」
「まあ、昔の話だけどな」滝沢コーチは照れたように笑った。
「小熊さんがセンターフォワードで、俺と岩崎がその後ろでパスを出す役割。
まあ、当時としては俺も岩崎もなかなかのレベルだったと思うよ。ただ・・」
ただ?と俺が聞き返すと、
「優勝できたのは、はっきりいって小熊さんのおかげだな。
俺がサッカーやってきた中で、一番すごいと思った選手は小熊さんだよ」
「そんなにすごかったんですか?」
少々意外な感じがして聞き返す。
「外から見たらわからないだろうけどな。小熊さんテクニックないし」
と滝沢コーチは笑う。俺は一緒に笑っていいのか迷って、曖昧な笑みを浮かべる。
「ただ一緒にやってると小熊さんほどすべてを任せられる選手はいなかった。
俺や岩崎がパスやクロスを出すだろう。
そうするとあの人はそれがどんなボールでも飛びついていくんだ。
多少俺たちがミスって横や上下にずれてても、必ず飛び込んでいくんだ。
どんなパスでもお前たちが出したボールは必ず俺が決めてやる、ってね。
だから怪我が多い人でね、あるときなんか鼻の骨折ってるのに、
俺がミスって敵の足元へ出しちゃったボール、
相手が蹴ろうとしてるのにダイビングヘッドで飛び込んで
顔を思いっきり蹴られたときは見てるこっちの血の気が引いたよ」
と滝沢コーチは苦笑いを浮かべた。
「だから、小熊さんにパスを出すときはこっちも真剣だった。
受け手があれだけ体張ってくれる以上、最高のパスを出したいって。
ずれたとこへ出して飛び込ませて怪我させちゃ申し訳ないからな。
小熊さんが欲しいところへ寸分の狂いもなくパスを届ける。
それが俺や岩崎にとって一番大切なことだった。
俺も岩崎もよくパスが正確だ、といわれたけど、
小熊さんが受け手じゃなかったら、あそこまでパスの精度が上がったかわからないな」
滝沢コーチは画面に目をやる。
「今はなんだかんだいってスタジアムに客が入る。
でも、昔はほんと客がいなかったからなあ。
それでもあの人は、ボールに突っ込んでいってた。
怪我したら得になることなんかないのに。
それでもあの人は体を削って戦ってたよ。
高校のときから、代表で一緒にやったときもそれはずっと変わらなかった。
あの人はほんとにサッカーのことしか考えてなかったからなあ・・」
俺は黙って話を聞いている。
「テクニックだけなら、ここにいるお前たちのほうが何倍も上だ。
小熊さんも俺も、岩崎も、お前たちの足元にも及ばないだろう。
ただ、小熊さんの持ってたあの心。
もしかしたら・・あれはまだお前たちは手に入れてないかもな」
意思の力。俺の気持ちは萎えちゃいない。
体中に気合を入れて痛みを追い払う。
こんなことでびびるかよ。これくらい削られたぐらいでひいてたまるかよ。
サポーターの声が聞こえる。俺の名を呼んでいる。
声の一つ一つが俺の背中に砂漠に降る雨のようにしみわたり、俺の体で力となる。
きっと日本でモニカが見ている。タカシだって見てるだろう。
きっと部活のみんなも。そして顔を知らないたくさんの日本のサポーターが。
俺の体に力が戻る。力が蘇る。
まだだ。こんなところじゃ終わらない。
そう、俺は平山さんに約束のパスだって出していない。
ゆっくりと立ち上がる。重心が乗った瞬間、
一瞬痛みがぶり返したがこれくらいどうということはない。
小熊監督と滝沢コーチに手を上げて心配するな、というサインを送る。
監督、あなたが経験した痛みに比べりゃ、これくらい軽いもんですよ。
その時、俺の耳に小熊監督の叫び声が聞こえる。
なんであなたが俺に礼を言うんだよ、監督。
そんな俺の気持ちも知らず、監督の叫び声がピッチに響き渡る。
「サンキュー、サンキューーーッ、樋口ぃー」
サンキューキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
631 :
U-名無しさん:2005/06/15(水) 23:45:13 ID:syr63cCg0
保守
サンキューきたーw
サンキューキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
やっべ、マジ泣ける
がんがれ、樋口ちょーがんがれ
構成も素晴らしいです!
1の後継者さんありがとう 涙ウルウル
サンキューキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
しかし、現実のU−20代表には樋口はいないだよなぁ・・・・。
>>635 優等生だらけなサッカーで終わっちゃったよなぁ……
兵藤out 樋口in……
双方がペースダウンして、中盤での蹴りあいが続いている。
どちらの流れでもない時間。俺たちのプレーも悪くはない。
だがアルゼンチンに時間を使われているという見方もできる。
時計を見ると25分を過ぎたところ。
ベンチをちらりと見ると森本がもうスタンバイしている。
いつものオプションだ。フレッシュな森本を入れて、
あと1点をとりにいく。
残り時間でもう1度ゴールにボールをいれなければ、次はないのだから。
カレンと森本の交代を告げるボードが示される。
カレンがタッチラインに走っていく。
「樋口!」監督が呼んでいる。俺も急いでタッチラインまで走る。
「もう勝負の時間帯だ。常に意識は前だ。
ボールを持ったら必ず平山の位置を確認しろ。
ただし単純にほうりこむな。なるべくサイドに長いパスを一本入れるようにしろ。
どんどん前に出て行け。ただし本田との位置は必ず縦だ」
俺は監督の指示を本田さんに伝える。
平山さんを必ず見ろ、という指示はプレイ時に顔を上げさせ、
攻撃を意識させるという意味では、効果的な意識づけだ。
左サイドでアルゼンチンがダイレクトのリズムのいいパス回し。
長い球足のパスがラインの裏へ出る。
家長さんと水本さんがしっかり対応して
外へ外へ追い出すが、相手もさすがに粘る。
ゴールライン際まで持ち込まれたところで、
水本さんの足にあてて外へ出され、コーナーをとられた。
平山さんがエリアまで戻ってくる。前線には森本が残る。
相手のコーナーキック。ショートコーナーを使ってきた。
家長さんがボールをとりにいくが詰めきる前にクロスが上がる。
中央に入ったボールは平山さんが打点の高いヘディングでクリア。
そのボールがエリアを出たところ、
右サイドよりで待っていた俺のところへ飛んでくる。
ひとり詰めてきたが、胸のトラップでスペースへボールを出すと、
拍子抜けするほどあっさりと交わすことができた。
おかげでサイドに広いスペースがある。俺はスピードをあげてドリブル。
1点負けてる今、攻めなくてどうする。
ラインを右に見ながら一気に駆け上がる。その時だった。
「スケベー!」
俺はドリブルしながらはっとする。
今の声はモニカの声?モニカが来ている?そんなはずはない。
来ていれば必ず連絡はあるはずだし、
ロシア遠征は終わったとはいえ、普通に学校があるはずだ。
モニカがオランダにいるわけはない。
でも、今の声はモニカの声だった・・・・
だが、それ以上考えてる暇はない。ハーフウェー手前で敵が来る。
相手の下半身に視線を飛ばす。
腰の位置が深い。これは飛び込んでこない。遅らせる気だ。
お前に付き合ってる時間はない。
トップスピードのまま迷わず相手の足の間にボールを通す。
脇を抜けるときに掴んでくるのは想定どおりだ。
伸びてきた手を押しのけてそのまま一気に抜き去る。
相手が倒れるのが視野の隅で見える。よし、振り切った。
相手陣内に入った。前に三人、うち二人は森本についている。
森本がスルーパスを欲しがっている。
ラインの裏へ抜け出すタイミングを計って、俺を見ている。
もっと前へ、もっとゴールへ。俺はドリブルでそのまま行く。
自陣エリアから全開で走ってきたので、
体がスピードダウンを欲しているが、ここで休むわけにはいかない。
ペナルティエリアの角にかかる。ディフェンスが飛び出してきた。
スピードを落とさずに、右に、ゴールライン際へ長く出して、
ディフェンスを振り切ってから、森本へ低めのクロスをあわせるイメージが湧く。
一気に相手との距離を詰めて右足のアウトにボールを乗せようとした時、
不意に頭の中で白い光が閃く。読まれてる!?
俺はとっさの判断で右足でボールをまたいで急停止。
右足首に俺の全体重がかかる。
相手の体が大きく右に揺れる。やっぱり右にヤマ張ってやがったか。
左足で中央へ。森本が俺の足元を凝視しているのがほんの一瞬見える。
俺の意識がほんの一瞬、森本へ飛ぶ。
それがディフェンスに伝わり、森本に注意がいった瞬間、
俺はゴール前に突っ込む。ここは自分で行く。
両側から手が伸びてくる。
ゴールはすぐそこだ。キーパーが教科書どおりのポジションで立ちふさがる。
ニアかファーか。ファーだ。右足でフルショット。
しかし一瞬迷った分、コースが中途半端になった。
サイドネットを狙ったイメージより内にいったボールは、キーパーの真正面。
パンチングというよりキーパーが顔面をブロックするような格好ではじく。
そのこぼれたボールに森本が詰めるが、ディフェンダーのほうが一歩早い。
クリアボールが大きく飛んでいく。
くそ、絶好のチャンスだったのに。俺は地面をこぶしで叩く。
もう一点とらなければいけないのに。馬鹿野郎。一瞬の逡巡が悔やまれる。
そこでふと気づく。さっきの声はなんだったんだ?
俺は右サイドと接するように立つメインスタンドを見る。
ただでさえ観客が少ないが、メインはほんとうに人の姿がまばらだ。
その中にはモニカらしい人影はない。
モニカのことだ、俺が見ていることに気づけば必ず立ち上がって、手を振るだろう。
やっぱりさっきのは空耳なのか。
それとも日本で応援しているモニカの声が空間を越えて俺に聞こえたか。
ありえない。俺は首を振る。そんなオカルト話、ほんとにあるはずがない。
あるはずがない。けど・・・・
スタジアムの時計が目に入る。時計の針は5時30分を過ぎたあたりを示している。
日本では今頃、ちょうど深夜になると誰かが言っていた。
でもきっとモニカは起きて、この試合の中継を見てくれている。
そして、きっと俺のプレイのひとつひとつに声援を送っている。
テレビの前で腕を振り上げて、そう練習試合の時のように俺に檄を飛ばしている。
訪れたこともないのに、モニカの家の風景が見えるような気がした。
聞こえるはずがない。・・でも聞こえたっていいじゃないか。
スコアボードの2−1の電光掲示が俺の目に映る。
まだだ、ここで終われない。
閃き:一度だけ敵の攻撃を100パーセントかわすことができる。
樋口がついにニュータイプに……
ということは、最後モニカ死ぬのか
643 :
U-名無しさん :2005/06/17(金) 15:15:33 ID:TDYP5vyM0
hosyu
やっべ・・・・
まじおもしろいね
前田さんがピッチに入ってくる。
アウトは中村さん。家長さんはそのままだ。
監督に確認にいった小林さんがそっと指を三本立てる。
森本、平山さん、前田さんの3トップ。
水野さんが右にスライドして、俺がトップ下へ一列上がる。
3−4−3、実際はワンボランチの3−1−3−3ともいっていい。
点をとるしかないという時の、超攻撃的オプションだ。
アルゼンチン相手にこれだけ守備を薄くするのは
相当なハイリスクだが、1点負けている以上他に手はない。
時計が35分。ロスタイムがあっても15分か。
ここからものにしてきたじゃないか、という自信と、
15分しかない、という弱気が心の中で交錯する。
弱気になるな、と俺は自分自身に喝を入れる。
いまはゴールのことだけ考えろ。
入ってきた前田さんが左サイドで巧みなキープ。
その後ろを追い越した家長さんにボールが渡る。
球離れよくクロス。中央で構える平山さんの頭へ。
だが、ボールは平山さんの手前ではじきかえされる。
平山さんには二人ついている。
ニアへファーへ、平山さんも動いているのだが、
なかなかマークがはがせない。
クリアボールが前田さんのところへ。
ワンタッチで俺へ。ゴール正面。ミドルが打てるコースは開いてない。
シンプルに、開いて待っている右サイドの水野さんへ。
ゴールライン際まで切れ込んだ水野さんが得意の切り返しで、相手を芝に這わせる。
大丈夫だ、みんなあせってはいない。ちゃんと自分のプレーができている。
水野さんが右足に持ち替えてクロス。
今度はニアの平山さんをおとりに使ったファーへのボール。
森本と前田さんがボールに飛びつくが、これもディフェンダーがはじき返す。
相手ボール。さらに前線へパス。中央でボールを受けたメッシが
時間を使いながら、日本の右サイドからじっくり進んでいく。
枚数の少ない日本のディフェンス陣は否応なしに深く構えさせられる。
フォワードがエリア内で流れる動き、呼応するようにメッシのパス。
増嶋さんがそのままマークについているが、お構いなしのシュート。
ボールは枠へ飛んでいくが、コースが切られている分、
西川さんが落ち着いて押さえた。
再び日本ボール。ここまで来るとひとつひとつのプレーの意味が重い。
ハーフウェーまで下がってボールを受ける。
意外とこの時間でもアルゼンチンのラインは高めだ。
なまじラインを下げてゴールに近いところで、
平山さんの頭に合わされるのを嫌っているのか、それとも余裕なのか。
ディフェンスラインでボールが回るが、
確かにこの高さでは平山さんに入れても意味がない。
一回りしたボールが俺のところへ。ゆっくり前に進んでハーフウェーをまたぐ。
水色と白がじわじわと間合いを詰めてくる。
斜め前にいた水野さんが引いてきて、ボールを要求した。
相手のサイドバックがそれについてくる。
俺は水野さんにボールを出す、
水野さんが相手を背負いながらダイレクトで後ろの本田さんへボールを戻す。
その時、俺と水野さん、本田さんのイメージが共有できたのがわかった。
俺は水野さんが引き出したサイドバックの
裏のスペースへ斜めに走って飛び出す。
ディフェンスラインと並んだところで後ろを確認すると、
本田さんがこれもダイレクトで蹴りこんだボールが飛んでくる。
完璧な意思疎通。完全に裏をとった。
ゴールラインまで見通しの言い風景が広がっている。
スムースに全身の筋肉がトップギアに切り替わった。
体の右を通してボールを受けるとそのままドリブル。
九十度左を見てゴール前を確認。平山さん、その後ろに森本か?よく見えない。
もちろん相手選手がしっかりくっついている。
ひとり俺の中を切りに来ている奴がいる。時間はない。
もう一度首をほとんど動かさずに中を確認。距離があるのに平山さんの視線を感じる。
ペナルティアークあたりのポジション。ゴールとはやや距離があるところ。
自分の前にスペースを残している。その位置ということは、ここでいいんですよね?
俺はグラウンダーの低いボールをニアへ、キーパーの前へ蹴った。
平山さんがマークを引きずりながら駆け込んでくる。
頭に合わせるボールを想定した相手の反応がほんのわずか意表を疲れて遅れた。
恵まれた体格を生かして相手を押さえながら、
平山さんがキーパーの飛びつく手の前で右足を伸ばす。
648 :
:2005/06/18(土) 00:09:49 ID:mTQ1jkB60
続きはぁ〜!!
649 :
U-名無しさん:2005/06/18(土) 00:19:16 ID:Hd5jzpv8O
生殺し〜!!
マジコ樋口
ヒ・ラ・ヤマ♪
650 :
U-名無しさん:2005/06/18(土) 00:32:41 ID:Hd5jzpv8O
明日なのか?
続きは明日なのか!
くぅ〜
決めてくれーっ
グーランデ・モンチッチ
ひーらヤマ♪
651 :
わ:2005/06/18(土) 00:55:37 ID:LOkcWeKUO
不思議な話ですね
どんぴしゃのタイミングであったボールは、
キーパーに反応する時間も与えずに一直線にゴールネットに突き刺さった。
追いついた。同点だ。
平山さんが両手を広げて、そのままゴール脇を駆け抜ける。
満面の笑顔。二年の時を越えて、平山さんに笑顔が戻る。
俺はわめきながら平山さんのところへ飛んでいく。
平山さんが俺に気づいて振り向く。俺はそのまま平山さんに飛びついた。
「ナイスパスだ、ヒロ!」
平山さんの声。約束を果たした喜びが俺の背骨を貫く。
俺たちはそのまま喜びを分かち合う。
ああ、最高だ。この喜びを、この感激を、俺は何度でも味わいたい。
審判に促されて自陣に戻る。まだ同点に追いついたばかり。
まだ感動が俺の体の中で震え続けている。
この先を、平山さんと一緒にこの先を見るために、
そしてもっと大きな感動を見つけるために俺たちはもう1点とる。
周囲で一斉に湧き上がった絶叫の中に元山はいた。
スタジアムの記者席。
樋口の低いボールを平山がダイレクトで蹴りこんで追いつくと、
日本人記者たちはみんな立ち上がって、雄たけびを上げた。
この世界では大御所で知られる大隈さんは、
いつもの上品で素敵なロマンスグレーの衣を脱ぎ捨てて、
手が折れるんじゃないかと思うほど机を叩いてる。
その大隅さんと抱き合ったのは、四宮さんだ。
コンフェデから回ってきた彼は、試合前はA代表の試合振りについて
さんざんシニカルな毒を吐き続けていたのが嘘のように、
我を忘れ、夢中になって手を振り上げていた。
見渡せば、誰もメモなんかとっていない。
こんな興奮した記者席を見るのは元山にとって初めてだった。
冷静な視点が売りのはずのジャーナリストが、
みんな仕事を忘れて試合に没頭している。
あのアルゼンチン代表相手に2点を奪った。
がっぷり四つの堂々とした試合運びで、あのアルゼンチンに追いついた。
元山自身も体の震えが止まらない。
ああ、いつ以来だろう。サッカーを見て体が震えるなんて。
学生時代はサッカーなんて何の興味もなかった。
ひょんなきっかけから興味を持ち、いつしかいっぱしのライターになった。
各地の試合に懸命に足を運び、一試合でも多くこの目で見ようと頑張った。
サッカー経験のない自分は、数を見ることでしか、
プロとしての目が養えないと思ったからだ。
でも、専門家としての目を手に入れた一方、
かつて持っていた、そしてこの世界に入るきっかけとなった
純粋なファンとしての興奮は遠いものになった。
でも、それは自分だけじゃない。元山は思う。それは一般のファンやサポーターも同じだ。
オリンピックで、ワールドカップで、各種の大会で、
日本がそこそこの成績を残したことで、みんな中途半端に世界を見た気になっている。
世界を制したわけじゃないのに、なんとなく世界を知った気分になってしまった。
ピッチでは樋口が大きな手振りでパスの方向を指示する。
どこかで見たことある。そうだ、ジョホールバルでの中田英寿だ。
あのときは、日本の選手にも、メディアにも、ファンにも、
まだ見ぬ世界への興奮と、挑戦者としての凛々しさが満ち溢れていた。
日本のサッカーはこれからどこへ行くのだろう?
ピッチでは試合が再開されたが、日本の記者たちは誰も座ろうとしない。
ひたすらひたすら絶叫。みんな顔を真っ赤にして声を張り上げている。
若き代表のサッカーにみんな仕事を忘れて血をたぎらせている。
アルゼンチンのコーナーキック。
ゴール前にほうりこまれたボールを水本がヘディングでクリア。
そのボールが本田を経由して樋口に渡る。樋口が前を見た。
ディフェンスラインの枚数こそ残っているが、中盤はぽっかりと空いている。
攻撃のチャンスだ。時間がもうない。
記者席から見下ろす緑のピッチ、
その中を樋口がひとり風のようなスピードで突き進む。前へ。前へ。
「行けっ!行けっ!樋口、行けっ!」
口からつばを撒き散らすような大隅さんの叫び声。
「樋口、そのまま行けーーー」それに誰かの絶叫が覆いかぶさる。
メッシが懸命に戻って後ろから樋口を追う。メッシが手を伸ばす。
だが樋口は爆発的な加速でその手を振り払い、一気にスピードでちぎり捨てた。
メッシが転倒する。スタジアムの歓声が一段と大きくなる。
もう抑え切れなかった。こらえきれなかった。元川は勢いよく立ち上がる。
「決めちゃえーーーっ、樋口ーー、そのまま決めちゃえーーー」
元川のこぶしが記者席の机を力強く何度も叩く。
その振動に、机の上に置かれていた元川のメモ帳が飛び出して、
机から落ちると、誰かの足元へと転がって消えていった。
655 :
U-名無しさん :2005/06/18(土) 01:24:51 ID:7PNL5QNe0
おもしろい、おもしろすぎる。
電車男なんぞより何倍も面白い!
たまたま開いて200ぐらいまで読んだけど面白いな
スレたったときから見てるが
朝起きたらこのスレ開くのが日課です。
面白すぎ
オレは毎晩寝る前にこのスレ開くのが日課です。
詠み人知らずな作者さんありがとう!
この作品の映画化はいつですか?
(≧▽≦)oひぐち〜!
661 :
U-名無しさん :2005/06/18(土) 15:15:31 ID:RtCY2o280
元山さんが、元川さんになってるね。
662 :
U-名無しさん:2005/06/18(土) 17:07:27 ID:Hd5jzpv8O
悦ちゃん?
悦ちゃんが書いてるの?
熊ジャパンをリアルに見ながら、オランダから思いの丈を一気にぶつけてる?
迫力有り過ぎて、ヤバいくらいに引き込まれるよ。
マジコ樋口、ヒロゴール
ヒーロー、ヒーロー、ヒロゴール♪ オーレ、それは今♪
甲斐バンドはちょっと古いナ
663 :
U-名無しさん:2005/06/18(土) 21:30:08 ID:ttNS3LNRO
保守
664 :
U-名無しさん:2005/06/18(土) 21:59:49 ID:ipN8bbFKO
「カモン、ボーイ」
映画化決定?
ムービー・アイ・エンターテインメントで映画化させていただきます
667 :
:2005/06/19(日) 01:38:03 ID:K8Yb6fZ+0
良くやった!ヒロ!!
まじ、電車より面白いんだけど!!
なぜか実写でなく、アニメが頭に
そして絵は「はじめの一歩」
669 :
U-名無しさん :2005/06/19(日) 21:37:47 ID:U3tsDv6u0
保守
670 :
そー:2005/06/19(日) 22:16:52 ID:hGDG0+JNO
>>670 各キャラごとの深みある個性や、樋口のほとばしるかんじを表現出来るのは井上雄彦しかいない!
…まあサッカーの漫画は描かないだろけどねー
671 :
そー:2005/06/19(日) 22:21:38 ID:hGDG0+JNO
間違った、668!!
時間からみて、おそらくこのプレーが切れたら延長突入だろう。
これが最後のチャンスだ。
最後のスタミナを振り絞ってドリブルしながら、俺は前を見る。
日本のサポーターなのか、観客の出す声が
ひとつの大きな音となって、走る俺の背中を押す。
この音を作るひとりひとりの声。それに応えたい。
左を駆け上がる家長さんに一度出す。ダイレクトで戻ってきたボールを
これもダイレクトで引いてきた森本へ。
バイタルエリアで俺たちのワンタッチパスが美しい幾何学模様を描く。
パスを出してダッシュ、俺の意図を読んだ森本が、
走りこんだスペースへ返してくれる。ぴたりと足元に入った。
正面に平山さんがこっちを向いて立っている。
背中にディフェンダーを背負っているが、
俺に預けろ、と、その体の向きが言っている。
見れば、さっき引いた森本に
ディフェンスがついていった分、平山さんの右側が開いている。
平山さんにボールを出す、そして平山さんの右へダッシュ。
平山さんが教科書どおりのポストプレーで右へ出してくれた。
やっぱりここでしたね。ボールがぴたりと俺の足元に転がってくる。
森本が作ってくれたスペース、平山さんが出してくれたボール。
無駄にはしません。
迷いはなかった。俺はエリアに入るすれすれで、
平山さんのパスを右足で振りぬいた。
「日本、準決勝でオランダに敗れるも
鮮烈な印象を残した新しいJ Boys Soccer
準々決勝であの南米の強国アルゼンチン相手に2点のビハインドを追いつくと、
ロスタイム、樋口の強烈な右足シュートで逆転勝利。
日本中が湧きかえったあの感動的な試合から四日。
U-20日本代表はオランダとの準決勝に臨んだ。
観客動員の面では低調だった本大会だが、
さすがに地元オランダの、しかも準決勝とあって、
スタジアムは満員の観衆で埋まった。
日本代表にとってはまさに完全なアウェーでの試合となった。
オランダは決勝トーナメントで、チリ、ナイジェリアに
それぞれ楽勝といっていい完璧な試合運び。
大会前から優勝候補筆頭にあげられた前評判どおり、
欧州各地のリーグで活躍する若き才能がその力を遺憾なく発揮していた。
現地メディアも、日本がアルゼンチンに勝ったのは大きな驚きだが、
グループリーグでの対戦結果を見てもわかるとおり、
オランダの勝利はほぼ間違いない、という楽観ムードが蔓延していた。
だが若き日本のイレブンたちは、
そんなオランダメディアを蒼白にするような素晴らしい試合運びを見せる。
この日のスタメンは、アルゼンチン戦で負傷した杉山を樋口と入れ替え、
さらにフォワードにはカレンに代えて森本を先発起用。
小熊監督はスーパーサブとして結果を出してきた二人をスタメンで使い、
前半からオランダと正面から打ち合う姿勢を明確にする。
その監督の期待に二人が答える。
樋口は粘り強い守備でボールを奪ったかと思えば、
時にトップ下を任された水野と横並びのポジションをとり、
積極的に攻撃を作っていく。
試合は、戦前の予想とは裏腹に、日本が早いテンポで攻撃を仕掛ける。
前半20分には家長のクロスを平山が頭で落とし、森本が強烈なシュート。
これはキーパーのファインセーブに止められるが、
さらに前半30分、ドリブルで中央に持ち込んだ樋口が、
ディフェンスの一瞬の隙を突いてミドルシュートも、
惜しくもクロスバーに当たってはじかれる。
ハーフタイムをまたいで後半になっても日本の果敢な姿勢は変わらず、
日本の鋭い攻撃がたびたびオランダゴールを脅かす。
後半12分には平山のヘディングシュート、
20分過ぎにゴール前の混戦から水野が惜しいシュートを放つが、
相手キーパーのファインセーブと
オランダの必死のディフェンスにゴールが割れない。
そして、後半30分。それまで懸命のディフェンスで
オランダの攻撃を封じ込んでいた日本守備陣に、綻びが生じる。
前線へのロングボールに抜け出したバベルがキーパーと1対1になり、
しっかりとチャンスをものにしてゴールへ流し込んだ。
しかし、このプレーはリプレイで見る限りオフサイド。
試合後、オランダのテレビニュースもこの場面を何度となく流していたが、
明らかにバベルはディフェンスラインより体ひとつ出ている。
オフサイドルールの明確化が図られた今大会だけに皮肉な誤審となった。
キャプテンの増嶋をはじめ、日本の選手たちは審判に猛抗議するが、
判定がくつがえるわけもなく1点のリードを許すこととなる。
納得のいかないまさにアウェーならではの判定に泣かされる格好となった。
後のなくなった日本はオランダを自陣に釘付けにし、
サンドバッグを叩くボクサーのようにシュートの雨を降らせる。
平山が、森本が、途中投入の前田が、そして樋口が
オランダゴールを一方的に攻めたてるが、
ロスタイム、森本の、平山の決定機も相手の体を張った守備に防がれ、
そのまま無念のタイムアップとなった。
結果だけを見れば、準決勝敗退とナイジェリア越えこそ果たせなかったが、
試合内容はナイジェリア組に勝るとも劣らぬものであったと言えよう。
その証拠にオランダメディアのショックは尋常でないものがあった。
結果よりも内容を追求するといわれるオランダのサッカー。
その彼らの誇る若き精鋭たちが、文字どおり
「試合には勝ったが、サッカーでは負けた」のだ。
試合後私に話しかけてきた何人ものオランダ人たちが、
日本こそ真の勝者だといったのは、敗者への労りばかりではなかったはずだ。
大会を通じてこれだけ内容の濃いゲームを披露できたのも
前半はコンサバに運び、相手の足が止まった後半に
一気に攻撃をかける小熊采配がずばり的中したのが大きい。
だがそれもスーパーサブとして獅子奮迅の活躍をした
樋口の存在あってこそといえよう。
普通の公立高校の、大会前までは無名の高校生。
口の悪い報道陣の中には
「同じ学校のモニカちゃんと間違えたんじゃないのか」
と辛らつなことを言う者もいたが、小熊監督の目は正しかった。
アジアユース以降、関係者以外いないような小さな大会の
観客席にも小熊監督の姿があちこちで見られるようになった。
それは中盤の核となる選手を捜し求める小熊監督の姿だった。
そしてそんな小熊監督が選び出したのが、彼であった。
グループリーグ3試合目のオーストラリア戦で初起用されると、
たびたび決定機を演出し、大会を通じて2得点2アシストの活躍。
いままで消化不良のゲームが続いていたチームに、
樋口のリズムと勇気が加わり、チームに一本の太い背骨ができた。
オランダ戦、大きな身振りで攻撃のタクトを振る樋口の姿は、
かつてのジョホールバルでの中田英寿の姿を髣髴とさせ、
日本の中盤にまた新たな才能が出現したことを内外に示していた。
他の攻撃陣も平山はヘディングの強さを生かしてしっかりとポストプレーを果たし、
森本もゴール前では攻めの姿勢を見せ、積極的にシュートを放った。
アルゼンチン相手の大金星はこの攻撃にかける
果敢な姿勢あってこそのものだった。
それだけに疑問の残る判定で準決勝敗退という結果に
なってしまったのが心底惜しまれる。
きっと彼らなら決勝でブラジルを相手にしても、
日本の新しいJ BOYS SOCCERを世界へ存分にアピールしてくれたに違いない。
だが、彼らのサッカーはこれで終わったわけではない。
もうすぐ再開されるJリーグで、大学で、彼らの試合は続いていく。
世界に誇れる才能のきらめきを見せた彼らが順調に成長し、
いつかもっと大きな舞台で日本のサッカーを世界へ向けて高らかに宣言する日、
その日が来ることを夢見て、この稿を終わりたい。
text by 元山恵理子」
さっきまで窓から見えていた家々がどんどん小さくなり、
点のようになり、やがて雲の下へ消えていった。
さようなら、オランダ。
俺は顔を正面に戻し、正面の壁にすえつけられた見たくもないテレビモニターを眺める。
ヨーロッパの地図が映し出されている。どうやら飛行ルートを説明しているようだ。
隣に座っている森本は、離陸前からすっかり寝入っている。
風邪を引かないように、と体にかけた毛布が少し下がっている。
俺は手を伸ばすとその毛布を森本の体にかけなおしてやった。
ドイツと対戦した3位決定戦は結局2−2のドローになり、
PK戦の結果、俺たちは4位ということになった。
俺たちの試合の後に行われた決勝では、
オランダがブラジルを破り、地元での優勝をなしとげた。
昨日は、協会の好意でみんなで一日オランダ観光を楽しんだ後、
日本に帰るべく俺たちは機上の人になっている。
黙っているとついついこの一ヶ月のことを思い返してしまう。
すぐそこに世界があった。オランダに勝てば、
俺たちが世界一になる可能性だってあった。
おれはふと自分の手を見る。見慣れた自分の手。そこには何もない。
だが、俺は自分がこのワールドユースに挑んだ数か月の過程の中で
かけがえのない何かを掴んだという自信があった。
アルゼンチンとの準々決勝。
終了を告げる笛が鳴り、喜びに沸き立つ俺たち。
その中でやつは俺に声をかけてきた。
俺が振り向くと、やつはやおら水色と白のユニフォームを脱ぎ、俺に差し出した。
俺はちょっとまごつきながら、青のユニフォームを相手に渡す。
互いに相手のユニフォームを露わになった肩にかけて、握手を交わす。
その時、やつが何か言った。
言葉がわからない。ああ、なんて言葉ってのは不便なんだ。
俺の困った表情を見てとったやつが今度は、一音一音区切るようにしゃべった。
あ、これは英語だ。英語なら俺もモニカと話してるから少しはわかる。
「早くヨーロッパに来い。またピッチで会おう」
メッシは俺の目を見てそういった。
俺はしっかりとメッシの目を見返して、わかった、と深くうなづく。
メッシがにっこり笑って、もう一度俺の手を強く握ると去っていった。
俺の意識は機内に戻る。見つめる自分の手。
そこには何もないけど、俺の心にはメッシの手の感触がありありと残っている。
俺はあいつにもう一度会えるのだろうか。
この地球上に無数にあるピッチのどれかで再びボールを前に向き合う時が来るのか。
俺は自分自身に問う。だがその答えは見つからない。
そのまま、ぼんやりと物思いにふけっていると、やがて眠気が押し寄せてきた。
俺は考えるのをやめて、眠気に身を任せる。
モニカ、随分長くなっちまったけど、もうすぐ日本に帰るよ。
まさかデートの約束、忘れてないよな。
何がいいだろう、遊園地、映画、それともJでも見に行くか。
どこだっていい。モニカに話したいことがいっぱいあるんだ。
たくさん貴重な経験をしたよ、大事なことを勉強したよ。
メッシと交換したユニフォーム。
平山さんと二人きりで話したホテルの部屋。
見上げるようにそびえたつスタジアムのスタンド。
通路で見た森本の横顔。
小熊さんの絶叫。
懐かしそうに語る滝沢コーチの顔。
ピッチから見たサポーターたちの幸せそうな笑顔。
視界の中をゆっくり落ちていったボール。
モニカに話したい。
そしてそのことについて二人でいろいろ話したい。
いいだろ、モニカ。
忙しいだろうけど、時間作ってくれるだろ。
話したいことがたくさんたくさんあるんだ。
その時、何か俺の感覚に飛び込んでくるものがあった。
何か前のほうが騒がしい。がやがやとざわついている。
監督たちが座ってる席のあたりだろうか。
俺の意識はもう途切れる手前だ。いまはゆっくり眠らせてくれ。
飛行機の座席に身を預け、俺の意識は少しずつ眠りの中へと消えていく。
∧ ∧
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/ ;______/ ;
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| ///// ( | :| ) ///// | キタキタキタ〜〜〜!!
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\ ) ( \/ ) ) ../
ヽ ........:::::::
作者さんいつも超熱いサッカー小説ありがとう。
おいおい飛行機落ちないだろうな
最後すんごく気になるんですけど・・・
>672から>673への展開は泣きそうになりますた。
685 :
:2005/06/20(月) 00:39:49 ID:dqTHLkD70
お、終わらないよね!?
ほんと、書籍化してくれないかな〜
┃ ━━ /\ /:\
━━ ┃━┃ /::::::::ヽ ━━━━━ /:::::::::ヽ━━━ ■
┃ ┃ /:::::::::::::::ヽ______/ : :::::::::: ヽ
━━ ┃ /:::::::::::::::::::::::::::::: :::::: :::::::::: ヽ ★
┃ ┃ /::::::::::::┏━━━┓\\// ┏━━━┓\
/::::::::::::::: .┗━━━┛━━━━.┗━━━┛ヽヽ
/ | :: :::::::::::/:::::::::::::::::::/ ―――――ヽ ヽ :::::::::::|
/ |::::::::: :::/ |┗┗┗┗┗┗\ ∪ :::::::::|
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// /|:: i し / | |::::::::::/::::::|. | | : |.;*;;∵+・;;\
////|: ノ ( U | |::::::::|:::::::::| | | ∪ :|∵ \\;*;\
//// | '~ヽ | ┓┓┓┓┓┓| |:;*;.\\\
687 :
もしや:2005/06/20(月) 00:54:09 ID:nOU0WXGVO
俺達の樋口BEST ELEVEN入りとか?
作者さんいつもどうもありがとうございます! 涙
うおーめちゃめちゃおもしろいです、作者さんにまじ感謝
感想専用スレとかないんかな?ここに書くと邪魔しちゃう気がして…まとめサイトは携帯で入れないから…
作者さんいつもお疲れ様です。
めちゃくちゃ面白い!
ワールドユース編終わったら、
ドイツW杯編か北京五輪編と続けて欲しい。
691 :
U-名無しさん:2005/06/20(月) 08:16:09 ID:Vo2HrLqE0 BE:60774293-
>689
自分は立てられなかった。
誰か立てて!
外部掲示板で良ければ自分でやりまつが、、、、
694 :
U-名無しさん:2005/06/20(月) 08:47:03 ID:Vo2HrLqE0 BE:78781875-
695 :
689:2005/06/20(月) 10:53:01 ID:zUr8qH90O
〉693
携帯用ありがとうございますm(_ _)m
ただどこが感想スレなのかなのかよくわからんかったです(´・ω・`)
作者さんのWY編なかがき読みました。
WY編は一区切りみたいですね。
嬉しいことに、この後も話は続くとのことなので、楽しみに待ってます。
無理せず、マイペースで描き続けて下さい。
森本×樋口で腐女子もターゲットに入れるとは・・・作者はなかなかの策士だな
698 :
U-名無しさん:2005/06/20(月) 21:49:12 ID:OBXY5AR6O
森本じゃ腐女子のターゲットにゃならんでしょW
森本は髪を伸ばすとあら不思議、イケメンになります。
メガネをとったマジメっ娘が美少女になるのと同じ。
斬新だなおい
森・・ダミだこりゃ
21さん、ひとまず乙
この先、モニカの女子フル代表、ヒロの五輪、その前のW杯緊急召集、そして世界へ挑戦、挫折、J2修行、再び代表へなどなど、ネタは尽きない。J2行くなら是非フリエへ。
702 :
:2005/06/21(火) 08:07:40 ID:vGYd0gzq0
Jクラブいくなら21さんが一番ネタにしやすいクラブへ
703 :
U-名無しさん:2005/06/21(火) 09:06:32 ID:z5XotkVY0 BE:182323499-
浦和の高校の設定だし、タカシもユースにいたので話しがふくらませやすいだろうから
是非ともレッズに入って、今明いているトップ下を勤めて下さい!
お願いします。
704 :
U-名無しさん:2005/06/21(火) 09:08:55 ID:z5XotkVY0 BE:108043968-
そうしたらまた
「ヒロヒロヒロ、ヒロゴール」が歌えるし。
(妄想がふくらむわ〜〜)
705 :
草者:2005/06/21(火) 09:25:28 ID:n+o1CUOxO
ダレデモイイ、タスケテクレ…
706 :
U-名無しさん:2005/06/21(火) 10:15:04 ID:I/suiGl10
(;・∀・)ダ゙イジョブ?
707 :
U-名無しさん:2005/06/21(火) 13:30:17 ID:MkQHfRRi0
いい加減会話やめようよ
現実には樋口はいなかったな…。
>>709 だな・・・。
まあ、でもこの小説で感動できたからよしとするべ。
「事実は小説より奇なり」ってこういう事?
712 :
あ:2005/06/22(水) 12:08:09 ID:lY438OOnO
大熊さんが仮にこの小説を読んだら、勇敢なのに、勇敢でさらに、勇敢でかつ、勝利した。のうちどう思うんだろな。まぁ残念ながらあの人のサッカーみてると勇敢なのに勝っちゃった、ということになるだろうな…。
713 :
あ:2005/06/22(水) 12:11:20 ID:lY438OOnO
勇敢だから、ってのははなから除外ね。有り得ないから
すげえ・・・今全部読んだ。続編、超期待
つか、まずは樋口よりも小熊だ。
小熊が居れば、樋口みたいなのをどっかから見つけるかもしれん。
そのまえにモニ○だろ。
モニワ?
718 :
U-名無しさん:2005/06/22(水) 22:59:37 ID:AdbbA0/iO
モニ○→モニタ
モニワと盛田を足して2で割ったようなハーフ女子高生
強くイキロ!
21さんは、このスレに集う読者の会話を楽しんでると思う
フォ
720 :
U-名無しさん:2005/06/23(木) 13:05:24 ID:QEa5BIz60
______,,,,,,,,,,,,,,,,______
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/ ヽi, ヽ /゙゙゙゙゙゙゙"'‐--‐'"゙゙゙゙゙\ / /:i'
{ } ヽ \ / i/ ./'´
721 :
U-名無しさん:2005/06/23(木) 22:10:00 ID:CJwHIZn0O
保守
作者さんも、この二日間は寝不足だろうなぁ。
早く続きが読みたいけど、ユース敗退で、ストーリー作るの大変そう。
モニカと樋口の恋愛話期待してます。
更新まだー?
724 :
:U-名無しさん:2005/06/24(金) 11:34:04 ID:YCuKugc60
更新まだー?
725 :
U-名無しさん:2005/06/24(金) 12:55:23 ID:oX0rpK3QO
21さんをせかすな
ゆっくり待と〜ぜ ワクワク
726 :
U-名無しさん:2005/06/24(金) 23:43:35 ID:3cJnILLqO
テカテカしながら期待して待っとくぜ!
期待かきこ
728 :
:2005/06/25(土) 00:31:16 ID:NCxz9Lui0
じゃ、俺も。
期待カキコ
729 :
U-名無しさん:2005/06/25(土) 01:39:12 ID:cW57usZ6O
21さんへ、期待かきっこ
オランダ・ドイツとハシゴして、決勝まで取材してからニッポン帰ろうかしら??って
エッチャンのつぶやきが聞こえてきそう。
エッチャン(エリコタン)土産ばなしよろしくね
730 :
期待:2005/06/25(土) 17:14:20 ID:TynZUr64O
保守
731 :
U-名無しさん:2005/06/25(土) 22:14:59 ID:pF6aqOk5O
記念カキコ
732 :
U-名無しさん:2005/06/26(日) 00:48:55 ID:ipXMR7UW0
今日も更新ないのか
ショボーン(´・ω・`)
733 :
:2005/06/26(日) 03:32:34 ID:QRBEB6o50
21さん、ゆっくりしててください。気長に期待してますよ!
734 :
U-名無しさん:2005/06/26(日) 18:31:07 ID:XEJy/k5SO
保守 野沢尚って亡くなってたんだな…(´・ω・`)
>>734 もう、一年経つんだよなぁ…
龍時03-04の後書き読んで
発作的に本を壁に投げつけた後、マジ泣きしてしまった(つД`)
一番楽しみにしてたのは、リュウジの恋愛模様なんだけどね…
龍時・梶・樋口のトライアングルなんて素敵過ぎだろうな
メッシのことを架空の選手だと思ってました。
>>736 平山
龍時 水野
家長 梶山 樋口 カレン
こんな感じか……
739 :
あ:2005/06/27(月) 21:20:37 ID:joZHLyG+O
定期保守
会見場に指定された都内のホテルのバンケットルームでは、
さっきから記者たちがあわただしく出入りを繰り返していた。
部屋の後方には、ずらりとテレビカメラが並んでいる。
誰もが早口で何かをしゃべっている。誰もが早足で動いている。
会見開始時刻の午後6時まであと少し。
元山はさっさと確保した自分の椅子に座って、
記者たちの慌ただしげに動く様子をぼんやりと眺めていた。
いまは他人事のように見ている元山も、
会見が終われば眉を吊り上げてパソコンのキーを叩き、
いくつかの契約先に記事を送らなければいけない。
ただテレビや雑誌記者のように、組織内での事前のあれこれとした段取りに
わずらわされずにすむのは、フリーのポジションの有り難みだった。
もちろんその分切られるのもお手軽なわけだが。
「よっ、恵理ちゃん、余裕だねーー」
振り向くと大隅さんがいた。大手新聞の記者として、
日本リーグの頃からサッカーを追い続けてきたこの世界の大御所だ。
もうそろそろ定年が近いはずだが、海外取材も疲れを見せずにこなしている。
自分に声をかけてくるなんて、この人も時間に余裕があるようだ。
さすがに大隅さんほど重鎮にもなれば、
めんどくさい打ち合わせとは無縁なのだろう。
元山と違うのは大隈の場合発表後に書く原稿も、
じっくりと腰を据えて書けるコラムか、連載の特集だということだ。
「私は発表されてからが勝負ですから」と笑ってかえすと、
ま、そりゃそうだ、と大隈も納得した様子だ。
「けど、発表もなにも、これだけメンバーが固定されてちゃあねえ・・。
どうせほとんどの連中が書いてある予定稿、そのまま送るだけだろう」
大隅さんが、皮肉っぽく笑った。
そう、この後行われるのは、ドイツワールドカップのメンバー発表会見だ。
ドイツへ行くメンバーの名前が直接ジーコの口から読み上げられることになっている。
はじまった!
スレ汚しスマソ
743 :
:2005/06/28(火) 00:43:25 ID:ViBNYgSD0
待ってました!!
744 :
U-名無しさん:2005/06/28(火) 01:33:31 ID:6l4gQmseO
職が無い今、このスレだけが楽しみだよ。
おお、一年後か
しかも、ワールドカップメンバーかよ!
サプライズ人事あるのかな?
それともリアルジーコ?
早く明日になーれ!
747 :
U-名無しさん:2005/06/28(火) 03:07:44 ID:i9MS8+Zg0
おい、全然抜けネーヨ
金返せよ
無職ageんなよ…
来たね〜
恵理ちゃんから再開か。マジコ樋口、どこに入団したのかワクワクだな
750 :
U-名無しさん:2005/06/28(火) 09:41:22 ID:hV9Pv3wiO
ジェフとかだったら最高だな!
大学だったら笑う
752 :
U-名無しさん:2005/06/28(火) 19:40:19 ID:0vagrRyX0
いや笑えない
まさかタカシが?
平山はこの一年でお払い箱ですか?
ジーコの固定された選手選考については、
就任以降たびたびマスコミの批判の対象となった。
新しい選手を呼ばない。呼んでもほとんど試合で使わない。
だが、ジーコは自分の意思を変えることなく、
相変わらず少数精鋭主義を貫いている。
予選を突破したチームをベースにすることが当然、と言い切り、
この一年、親善試合で何人かの新しい選手が招集されたものの、
結局は一年前と骨格となるメンバーは変わっていない。
メディアのみならず、当の代表メンバーやJリーグの選手たち、
そして協会内部でも不満はくすぶり続けているものの、
予選突破、昨年のコンフェデでの善戦と、結果を残してきたジーコ体制と、
それを強力にバックアップする川内会長の後ろ盾の前に、
そういう声はひそやかに物陰でささやかれるにとどまっている。
元山は大隅の言葉にうなづきかけたが、思い直して聞いてみることにした。
「わたしもそう思ってたんですが、
昨日関係者にちょっとあたってみたら、
なにかサプライズがある、みたいなことを口にしてたんですが、
大隅さんなにか情報持ってないですか?」
もし、大隅の耳に入ってなければネタをプレゼントすることになるが
自分のようなライター風情にも漏れてきた情報だ。
大新聞の肩書きを持っている大隅の耳には
入っている確率は非常に高い、と踏んでの鎌かけだった。
大隅の表情が微妙に変化する。やっぱり知ってた。
ほんとに喰えないオヤジだ、と元山は心の中で苦笑する。
「その顔はやっぱり知ってるんですね。で、どんなサプライズなんですか?」
大隅は、恵理ちゃんにはかなわないなあ、と嘆いてみせたが無視する。
元山の厳しい視線に気づき、とぼけるのはあきらめたらしく、大隅が真顔になる。
顔を寄せろ、という身振りに耳を傾けると小声で教えてくれた。
「うちの社も、サプライズがあるって情報はつかんでる。
ただほんとに、誰なのかってのはわかんないんだ。
幹部連中も知ってるのは、意外な選出があるってことだけだ。
昨日の時点では、具体的な名前は会長とジーコだけが知ってるらしい。
いま、うちの若いのがあちこち必死に駆け回ってるよ。
他社もサッカー番はだいたいつかんでるんじゃないかな。
ただ具体的な情報が出てこない以上、どうしようもない」
サプライズくる〜!!
まさかあいつか!
ひ、ひ、ひ、ひ、、、、
兵藤?
760 :
U-名無しさん:2005/06/29(水) 12:07:17 ID:+Rs1A5ei0 BE:90036285-
>759
莫迦ぁ!(笑)
樋口を中盤にいれたらどんな構成になるんだ。
日本は中盤そこそこ揃ってるからなあ
モニ〜タ!
大黒 柳沢
樋口
中村 中田
福西
アレ 中澤 宮本 加治
菅野
だからなんでフリエやねん
入れるならうっちーとナカジをいれてけろ
765 :
U-名無しさん:2005/06/29(水) 14:44:37 ID:+Rs1A5ei0 BE:27010962-
>761
福西が報復攻撃にあって長期離脱。
そこへボランチとしてヒデと組む。
ジーコは実名なんだw
選手以外のことじゃね?
たとえ予想どおりの結果だとわかっていても、
発表内容を一分一秒でも他社より早く抜きたい、知りたいと
思ってしまうのがメディアにいる人間の性だ。
ここ数日、新聞社のサッカー番は、
協会幹部を人の少ないところではつかまえては選手の名前をぶつけ、
選ばれるのかどうか、せめて感触だけでも掴もうと必死になっている。
その結果が今日のスポーツ紙の見出しだ。
「俊輔、ドイツへの誓い」「ヒデ、最後のワールドカップ」と
一見、センセーショナルなものに見えるが、
その実、あっと世間を驚かせるような新しいことは何も書いていない。
ヒデや俊輔がメンバーに落選するのならともかく、
選ばれるのは当たり前のことでそれだけでは本当の意味でニュースにならない。
結局、どこもサプライズに関する確固たる情報はつかめなかった、ということだ。
「そういう恵理ちゃんこそ、なにか持ってないの?」
「持ってたら今頃書いてますよ。大隅さんとしゃべってる時間なんかないです」
元山の切り返しに、そりゃそうだ、と大隅は楽しそうに笑った。
元山は腕の時計を見る。6時を少し回っている。
テレビ中継の視聴率の都合もあるから、
この手の会見は定刻より少し遅れて始まるのが暗黙のお約束だ。
「しかし発想を変えれば、これだけ話が流れている以上、
まちがいなくサプライズはあるんだよな。
だがジーコのが召集したことのあるメンバーを考えると
サプライズといってもあまり考えにくいんだがなあ・・」
大隅が話を続けている。
「大隅さんは誰だと思います?」
深い意図のない、純粋な興味からの質問だ。
「現実的に考えられるサプライズといったら、ゴンかカズだろうな。
トルシエの時と同じように、リーダーシップを重視して呼ぶならば、
そういう選択肢はありだとは思う。
過去の召集はないけれど、例の功労者騒ぎもあったし、
ジーコが彼らを評価しているのは間違いない。
それに正直、それ以外の選手じゃ荷が重いだろう」
おおかたの見方もそんなところだろう、妥当な意見だと思う。
だけど、私は・・・・。
彼が見てみたい。現実として可能性は低いだろうが彼が見てみたい。
「ん、誰か呼んでほしい選手でもいるのか?」
元山の微妙な表情の変化を見てとった大隈が突っ込んできた。
ええ、まあ…と元山は口を濁す。
「まさか、樋口かい?」
思わず大隈の目を見る。
さすがにこの人も伊達や酔狂で大御所といわれているわけではない。
新聞記者としての鋭さを持っているから、ここまでのしてきているのだ。
「さすがに彼はないと思うが・・
そういえば、日本に帰ってきてから
恵理ちゃんのマッチレポート読んだんだけど、ナビスコでデビューしたんだな。
デキはどうだったんだい?よくなってきてたか?」
「いいところまで戻ってきていると思います。
完全に戻ったか、といわれるとあともう少しかな、という感じでしたが。
ただ彼らしさ、は感じさせてくれました」
そうか、と大隈の顔がほころぶ。
「もう少し早く出てくればなあ・・・。
大抜擢があったかもしれないのに。でも、まあ彼はまだ先があるからなあ」
なんだかんだいって大隈もほんとうは
彼が選ばれることをひそかに期待していたのでは、と元山は思った。
あるひとつの試合の、ひとりの選手のプレーが
見るものを魅了して離さない時がサッカーにはある。
そして見る側は、その後もその選手に大きな期待を抱き続ける。
あのワールドユース。あのとき記者席で見ていた大隈も、
どこかで心のどこかで彼に期待しているのかもしれない。
それは一瞬の煌きだった、ということが往々にしてあるとわかっていても。
で、
樋口はどこのチームでナビスコに出たんだぁ〜??
なびす子・・・
J2じゃないんだな。
× マジコ樋口
○ ヒロゴール樋口
なのか? それともうち昇格?
1 埼玉繋がりで浦和入り
2 オシムの指導を請うために千葉入り
3 普通に鹿島、横浜、磐田あたりの強豪入り
個人的には2がよいなぁ。まあ、オシムが来年も指揮を取ってるかは分らないわけだが。
オシムが(・∀・)イイ!
4 埼玉繋がりで大宮入り
m9(^Д^)プギャー
なんだかワクワクさせるじゃないでつかぁ
ボキは鞠だと思うんだな〜w
千葉であってくれお願いだ
川崎入ってYMCAやろうぜ!
ていうか樋口、けがでもしたのかな?
WY戦の最後から予想するに、東アジア選手権で若手新戦力候補としてA代表に抜擢→それなりに活躍→
怪我(骨折とか靭帯損傷等のかなりの大怪我と予想)→Jクラブに入団(飛び級でWYに参加するくらいだ
から怪我を加味してもオファーはざくざくきたはず)→リハビリを経て5月?のナビスコでデビュー、って感
じなんでは?
たかし、サッカー好きか?
>>783 俺はもっと悪いコトを想像してしまった・・・。
今はこの予想が外れてくれることを祈るのみ・・・。
ばーか
サプライズってのは名良橋再召集だよばーか
787 :
U-名無しさん :2005/06/30(木) 23:52:37 ID:7RcYleVq0
保守
ばーかなんて言葉使わないでもっとスパイス効かせなさいな、このスレでは
21さんのタッチが乗れるようにサポート汁マジコ
789 :
U-名無しさん:2005/07/01(金) 01:04:07 ID:uV/AveD7O
たかしがベルディあたりで桶口はFC東京とかどうよ?
千葉か大分のどっちか
やっぱり千葉かな
「しかし、恵理ちゃんが遠征こないからみんなびっくりしてたよ。
まさか国内で原稿、書いてるなんて思いもしなかったなあ。
海外大好きの恵理ちゃんがどうしちゃったの?」
A代表は一週間ほど前までワールドカップメンバーの最終選考も兼ねて、
ヨーロッパの中堅国とのテストマッチを組んだ欧州遠征に出ていた。
ワールドカップ直前の本番を占う大事なゲーム。
いままでの元山ならまちがいなく代表についていった。
今回のテストマッチの記事を書いてほしい、という依頼もいくつか来ていたし、
旅費も含めた取材費付きで何の問題もなく行くことはできた。
だが元山は考えた末にそれらの依頼をていねいに断った。
大隈も気づいたらしい。元山もそこそここの業界じゃ名の売れたライターだ。
「もしかして恵理ちゃん、わざと残ったのかい?彼のデビュー戦見るために」
元山が口を開こうとしたその時、扉が開いて人が入ってきた。
川内会長とジーコの姿。
会場の雰囲気があわただしくなり、急に場の雰囲気が引き締まる。
「じゃ、また後でね」
大隈が手を振って、確保してあるのだろう自分の席へ戻っていく。
壇上、ジーコと川内会長が並んで座った。
まもなく。ドイツ行きのメンバーが明かされる。
平山はどうなった
つーか、モニカは?
>>792 潰れたよ
大学と人間力に漬かり過ぎてな
皆WYの帰りの飛行機でなにやら騒ぎが起こりそうだった事を忘れてるな。
不時着→皆はシートベルトしたり心構えおっけー→樋口ひとり爆睡→
機内をゴロゴロゴロゴロー!→大怪我
796 :
U-名無しさん:2005/07/01(金) 10:35:01 ID:O23Abtcp0 BE:36014944-
>795
乱気流などが予想されてシートベルトするときは、寝ている人は起されるんだよ。
シートを起してってね。
キャビンアテンダントのお姉さんに優しく。
いきなりの時は、みんながベルト出来ないよ。
>>795 騒ぎがおこったのは樋口クンにJからのオファーが殺到したニュースを
機内の新聞で発見したからだよ。
獲得したのはラモス監督の神戸w
798 :
U-名無しさん:2005/07/01(金) 10:57:38 ID:O23Abtcp0 BE:40517036-
>797
>>獲得したのはラモス監督の神戸w
それだけはない。
モニカたんがレッズレディースなのに、神戸なんか行ったら遠距離恋愛になってしまうではないか。
浦和希望だけど、せめて関東圏にシル!
モニカたん→ベレーザ
樋口→鹿島
と予想。
>798
遠距離恋愛でいいんじゃない?
サッカーではあまりにもおいしすぎる展開の彼が
恋愛くらいは壁にぶちあたらなきゃ薄っぺらな人物になってしまいかねない。
モニカが性転換してW杯代表に大抜擢。
モニカはタカシとくっついたよ
樋口は帰る場所がないんだ
「そろそろ来るはずなんだけどなあ」
健二が時計を見てそわそわしている。
樋口広樹はぼんやりと遠くに見える尖塔のような携帯電話会社のビルを眺めた。
五月だとは思えないほど暑かった一日の夕暮れ。
夕焼けの空がきれいだ。
きれいな空を見るたびに、広樹の心の中を一瞬ふっと何かがよぎる。
「おかしいなあ、6時っていったのになあ。
バイト先から近いから、遅れずに着けると思うっていってたのに。
どうすっかな、携帯にかけてみるか」
広樹が気を悪くしないかと健二は少し気にしている様子だ。
「別にいいよ。仕事がちょっと延びてるんじゃない。のんびり待とうよ」
広樹の言葉に健二がほっとする様子が感じとれた。
二人の立っているターミナル駅の改札口は、
周辺のビルから吐き出された帰宅を急ぐサラリーマンで大変な混雑だ。
目の前を行き来する数え切れないほどの人。
周辺では広樹たちと同じように待ち合わせた人たちが、
相手を見つけ、楽しそうに会話を交わしながらどこかへ歩いていく。
そんな光景が目の前で延々と繰り広げられている。
今日、夕方時間あるか、と健二から
電話がかかってきたのはつい数時間前のことだった。
なんでも別の大学の女友達と、それぞれ友人を誘って
二対二の飲み会をやることにしてたのだが、
健二の連れが急に体調を崩したらしく行けなくなってしまった。
健二は急いで友だちをあたってみたが、
みんなサークルやらバイトやらの予定が入っていて、
その結果、広樹にお鉢が回ってきたらしい。
「ほんと急に悪かったなあ」
健二が目の前ですまなそうな顔をしているが、
実のところ広樹はそんなに気にしているわけではなかった。
この手のものを楽しい、と思う気分にはいまいちなれないが、
数少ない大学での貴重な友人である健二と一緒に
飯を食べながら話をする、というのは悪くない時間の過ごし方だった。
なかなか学校に顔を出せない広樹にとって、
授業も含めたいろんな学校の情報を教えてくれる健二は
ありがたい存在であり、健二の面倒見のよさに広樹はずいぶん助けられていた。
今日だってアルコールを口にできない自分を
こういう場に誘ってもらえただけありがたい、と広樹は思う。
「ごめーん、バイト抜け出すの遅くなっちゃって」
不意に間近で甲高い声。
広樹が声のしたほうを見ると女の子の二人組が目の前に立っていた。
健二の様子からすると彼女たちが待ち合わせの相手らしい。
茶髪のショートカットの娘。
この季節には少し早い気もする胸元がやや開き目の服に、
広樹は一瞬つい視線を吸い寄せられてしまう。
開放感に少しあてられながら、
こういうのが普通の若者の世界なんだろうな、と広樹はふと思う。
健二と親しそうに話をしているところを見ると、
この娘が健二の友人らしい。
もう一人は最近の娘には珍しく黒いストレートのロングヘア。
一見、大人しそうな印象を与えるタイプの女の子だ。
どっちも世間一般で言えばかなりかわいい部類に入るだろう。
健二が手早く場を仕切り、簡単に順番に自己紹介を進めていく。
広樹も名乗って頭を下げた。
二人もお返しに名前を教えてくれたが、広樹の頭には入らない。
「じゃ、店は俺が決めちゃっていいかな?」
かわいい子の登場にやる気を出したのか、健二の声のトーンが上がっている。
大学だー
この大学は
徳永タイプ?
宮本タイプ?
某H氏タイプでないと信じたい。
それはそうと、
新ヒロインクル――――――――????
大学か・・・工エエェェ(´д`)ェェエエ工
樋口は大学?
なびす子出場は・・・
ジーコのサプライズはヒマラヤ平山かい?
大学なら慶応DF、日体大GK、岩手の富士大学MF、関東学院大MFの一年生に無名の面白い選手がいるので取材してみて
超不人気の大学キター
平山好きみたいだったからなぁ。
平山に洗脳されて筑波かぁ。
大学行ったらあの樋口もこうなった・・・
みたいな展開、もしかして?
だとしたら神であり、かつ悪魔でもあるんだが。
微妙な展開
いい意味で予想を裏切る展開に期待♪
816 :
U-名無しさん:2005/07/02(土) 04:41:00 ID:jN/MAuVj0
なんかなぁ あんまりもう読みたくない・・・
とか言いつつ明日も読むけどさ・・・
こんないい選手が大学行ってるようじゃ、日本のサッカーは世界の強豪にはなれないよ
期待してただけに悲しい
まあこの世界に2chあったら叩かれまくりだろうなw
819 :
:2005/07/02(土) 06:32:13 ID:rQbyJ3KE0
学校になかなか顔も出せないくらいだから、大学サッカー部に行ったんではなく、
大学生Jリーガーやってるって印象。(間違ってたらすまん)
大学生Jリーガーは結構多そう。川崎の都倉、湘南の中町、千葉の竹田とか。
あと通信だったら水本も。
そういやナビスコ出たんだっけ
大学入って数ヶ月で特別指定ってのも早すぎるから
大学サッカー部ではないんかな
Jリーグ新人王とったときの山瀬は大学生。
>>821 じゃあ山瀬みたいに怪我だらけで即引退だね
劣頭はこんなスレまで荒らすのか・・・
なぁたのむm(__)m
このスレだけは荒さんでくれマジコ頼む
大学生Jリーガーか
正確には中退だが、岡野が現れた94年を思い出す
日大生だったね
モニカは何処言ったのーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!さーヽ(`Д´)ノ!!
今すぐプロへと言うモニカに
将来の為にと大学へ進む樋口
モニカから三下り半をくらったと予想。
モニカは死亡フラグ立ってないか?
モニカタソは海外でプレー中でないの?
ところで女子サッカーはアメリカのプロリーグも中断中で(だから澤が帰ってきたよね?)
今だとどこが最高峰なんだろう?
メッシとヨーロッパで会おうって約束を果たすために語学勉強してるのではないか
ところでタカシが望んでた全国には行けたのかな?
道に面したありきたりな雑居ビルの地下に伸びる階段を順番に降りる。
先頭の健二が階段の行き止まりにある
なんともいえない風格のある木のドアを開けて中に入った。
ここが健二のお目当ての店らしい。
広樹は女の子たちの後、一番最後に続く。
中では健二が店員に自分たちの人数を告げている。
ぱっと中を見た感じ、落ち着いてくつろげそうな、雰囲気のよさそうな店だ。
健二の店選びのセンスはなかなか悪くないらしい。
ふと脇を見た広樹は入り口の脇に、
ダンディな中年の男が若者と並んで写っている写真が
何枚も飾られているのに気づいた。
若者の顔はどれも見覚えがある。どれもJリーグの選手だ。
ヨーロッパで活躍する有名な日本代表選手のものもある。
きっと一緒に写ってる男はこの店のオーナーか店長なのだろう。
ここはサッカーと縁の深い店なのだろうか。
もしかして健二は広樹に気を回してこの店を選んだのかもしれない。
店員に連れられて席に案内される途中、
店の奥に巨大な壁掛けテレビが設置されているのが広樹の目に入った。
その画面には、ジーコと川内キャプテンが並んで映っている。
家にいるとどうしても気になってしまうから、
外で健二と食事をしていれば気も紛れると思ったのに。
広樹は皮肉なめぐり合わせに心の中でそっと苦いものを噛みしめる。
店員が広樹たちを案内したのは細長い店の真ん中辺りの席だった。
丸いテーブルに四つの椅子が囲むように置いてある。
広樹は他の三人の機先を制してさりげなく一番奥の椅子に座った。
その席からだと店の奥にあるテレビは後ろになって見えない。
広樹の右隣に健二が座り、残った席に女の子たちが座った。
まだ飲むには早い時間だというのに、店にはもう何組かの客が入っている。
そのグループのうちのいくつかはサッカーファンのようだ。
広樹の耳に会話の中身が聞こえてきたわけではないが、
同じスポーツが好きな人間というのはなんとなく気配でわかるものだ。
そして広樹が気配を感じたグループは例外なく、
会話が少なめでテレビ画面を真剣な眼差しでじっと見つめている。
「わたし、こういうとこはじめてー。ここ、スポーツバーって言うの?」
茶髪の女の子が嬉しそうにいった。
そうだよ、と健二がいって、この店を見つけるまでの説明をし始めた。
女の子たちが相槌を打ちながら健二の話を聞いている。
広樹はそれをどこか上の空で聞いている。
テレビの音声はよほど絞ってあるらしく、広樹の耳には聞こえない。
「で、実はさぁ、樋口、こいつ本物のJリーガーなんだよ」
突然、振られた話に広樹は少しまごついた。
「えぇー、じゃあプロのサッカー選手って言うこと?」
茶髪の彼女がわかりやすいリアクション。
黒髪の娘もちょっと目を見開いて驚いた表情だ。
いまの嬌声が周囲の客の耳に入らなかったか、思わず広樹は周囲を確認する。
「厳密に言うとプロではないんです。プロの試合には出たけど」
誤解を正す広樹の言葉に怪訝そうな顔をする彼女に、
簡単にJリーグの強化指定選手制度の話をする。
いまは健二と同じ大学の学生であり、厳密にはプロではないこと。
試合に出ても報酬をもらえるわけではないこと。
「ええ、でもレッズと試合したりするの?」
可能性はありますね、というと、
すごーーい、とおおげさな歓声を彼女はあげる。
サッカーにほとんど興味がない人でもレッズの名前は知っている。
野球に興味がなくても、
ジャイアンツを知らない人がほとんどいないのと同じだ。
彼女のそんな無邪気な言葉が広樹には新鮮な感じがした。
いままで広樹が所属していたグループの中では、
日本代表のスタメンは全部言えるのは常識、
Jのクラブも海外のクラブもすらすらと在籍する選手の名前が出てくる。
それが当たり前の世界だった。
でも世の中サッカーに興味がある人ばかりではない。
日本代表といっても中田英寿と俊輔と小野と川口、
そのへんの名前しか知らない人たちは決して少なくない、
いやむしろそういう人たちのほうが社会の中では圧倒的多数だ。
サッカーがすべてじゃない社会との接点があるのは、
貴重なことだ、と最近の広樹は思うようになっていた。
少なくともいまの広樹にとって、精神的に助けられることが少なくない。
「店員さーん、テレビの音大きくしてよー。
そろそろ発表みたいだからさーー」
客の誰かが店員に頼むのが広樹の耳に聞こえた。
「じゃあ日本代表とかにもなったりするんですか?」
今度は黒髪の女の子。広樹は思わず言葉に詰まる。
乙です。
細かいツッコミだが強化指定制度は特別指定制度に変わったんでなかった?
21さん乙です
強化指定制度ってことは大学サッカーってことかな?
乙です。
しかし、樋口とモニカとの間になにかあったのだろうか・・・・。
黒髪のロングの娘が新たなヒロインなのかなぁ。
少なくとも浦和じゃない事はわかった訳か・・やっぱオシムのトコかな?
人間力だったら笑う
838 :
U-名無しさん:2005/07/03(日) 11:30:51 ID:XKpLpcO30
保守
関東なのは間違いないな
まあ、実在Jクラブを舞台にした時点でスレ住人の何割かが離れていくな。
>>21がそれをわかっててやってるならもはや何も言うまい。
841 :
840:2005/07/03(日) 15:01:29 ID:eCDj58t60
あ〜、むろん俺はそうなれば離れていくだけだけど、
他の奴は荒らすなよ・・・
と言っても無理かw
漏れには840が荒らしにしか見えないわけだが
モニカも漢字表記になるんかな? 茂二香? カワィクネェナァ
茂庭みたいでいやーん
「ていうか、かつてヒロは日本代表だったんだよ。
20歳以下限定のU-20っていう代表があるの。
去年それの世界大会がオランダであって、大活躍したんだぜ」
健二が言葉をつなぐ。
黒髪の女の子が口を抑えて、えーーっ、ほんと、すごーーい、と叫ぶ。
広樹は耐えられない居心地の悪さに思わず眉を寄せる。
俺は。ここでいまなにをやっているんだ。
「新聞にも大きく載ったし、テレビのニュースでもやったし。
平山とか森本とかともチームメイトだったんだぜ、
平山とか森本、知らない?」
平山って知ってるーー、背の高い人でしょーー。
金髪の女の子の声。
広樹はどんどんテーブルから自分の意識が遊離していくのを感じる。
広樹を置き去りにして会話は進んでいく。
「でも、どうしてそのままプロにならなかったの?
それだったら高校出てすぐプロになったほうがお金稼げるじゃない」
茶髪の娘が、ふと気づいた、という表情で広樹に尋ねた。
隣に座っている健二の表情がほんのかすか
曇ったように見えたのは広樹の思い込みか。
それはね、と答えようとした広樹の声を
突然店のスピーカーから大音量で流れはじめた音が遮った。
がやがやと猥雑な物音。その中ではっきりとしたマイクの声。
店員が客の求めに応じてテレビのボリュームを大きくしたのだろう。
「なにあれ?」
茶髪の彼女が健二に尋ねた。
「来年やるワールドカップの日本代表のメンバー発表だよ。
サッカーファンならみんな注目してる」
「樋口さんは選ばれないの?」茶髪の女の子が笑顔でたずねる。
「いくらヒロが能力あってもまだ厳しいなあ。
確かに海外だと俺たちくらいの年齢で代表になる奴もいるけど、
ほとんどはもう少し経験をつんでからだなあ。
まあ、今回はヒデとか俊輔に任せて、
ヒロには四年後の代表になってもらおうか」
「そうだよね、日本代表に選ばれる人が発表のときに
こんなところで私たちとご飯食べてちゃいけないよねーー」
彼女が軽やかに笑った。その他意のない明るさに広樹は幾分救われる。
「よし、四年後の代表目指して、今日はいっぱい食べよっ!」
広樹の肩をぽーんと叩く。随分捌けた性格の女の子らしい。
広樹は気が楽になるのを感じていた。
短い選手生活、決して長くはないが、まだ与えられた時間がある。
ジーコの声が耳に入ってくる。
多少独特の発音が聞きづらいが、
誰の名前を呼んでいるのかはだいたい判別できる。
「ナラザキ、セイゴウ・・・」
ジーコの声を追うように「ゴールキーパー、楢崎正剛・・」と
テレビ局が用意したらしい同時通訳の女性の声がかぶる。
楢崎さん。広樹は、練習試合で一緒のチームでプレイしたことを思い出す。
店内の客はみんな会話を中断し、発表される名前に聞き入っている。
「ナカタ、ヒデトシ・・・ナカムラ、シュンスケ・・・」
日本が世界に誇るプレイヤーの名前が呼ばれる。
「オオクボ・・ヨシト・・・・・」
リーガエスパニョーラ二年目も充実のシーズンを送り、
見事代表復帰を果たした大久保の名前も呼ばれた。
いままでに呼ばれたのは22人、あと一人だ。
ジーコが最後の選手の名を告げる。広樹の体に電撃が走る。
すかさず通訳する女性の声。
「最後に樋口広樹。以上23名です」
キーーーターーーーーーー
ををををををををををを
キター*・゚゚・*:.。..。.:*・゚(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゚゚・*!!!!!
おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
851 :
U-名無しさん:2005/07/03(日) 23:24:03 ID:rHwwUlVi0
飛行機の監督席のほうで騒いでいたのはエドゥーが姿を現したからか…
。 。
\ /
キター━━━━━( Д ;)━━━━━━!!!!
/\ /\
/:::::::ヽ____/::::::::ヽ、
丿 ::.__ .::::::::::::: __ ::::ヽ_
/ /。 ヽ_ヽv /: /。ヽ ::::::ヽ
-┼- 丿~~~| / / ̄ ̄√___丶  ̄ ̄\ ::::| ■ ■
-┼- /~~~~/ ━━━ | .:::::::::: / / tーーー|ヽ ..::::: ::|━━━━━━ ▼ ▼
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| ::: | |⊂ニヽ| | :::::| \
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/ / \: ト--^^^^^┤ 丿 \\\ \\\
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_,,-―=''' ̄ _,,-―='' ̄ ヽ / +
 ̄ ̄ _,,-―=''' ̄ \ / . . . .
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,,,-'' / iニ)ヽ, /rj:ヽヽ ヽ/ 。. .
-―'' ̄ ;〈 !:::::::c! |___,/' {.::::::;、! 〉 | -┼- -┼- 丿~~~| |~~~~~| __ ■ ■
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ヽ γ´~⌒ヽ. | / /
――ヽ / ヽ | / /⌒ヽ、
\/ | |_/ / ヽ
代表選出はうれしいんだけど
この一年で何があったのか気になる
きになるーきになるー
代表になるときって、事前に本人に連絡とか行かないもんなの?
連絡取れなかったってことでいいじゃん
あんまり細かく考えてると禿げるぞ
提案。次スレからは感想スレ作らない?
名作に駄レス(これも含めて)が着くのはちょっと・・・
>>857 ガンバの遠藤が初めて代表召集されたとき、
自宅でニュース見て知ってびっくりしたと言ってた記憶がある。
2002の代表発表時、目スレのもの凄さを思い出した。
>>859 賛成!
ー青春小説「モニカ」の感想を語ろうー
でいいのか・・?
分けたら廃れる可能性もある
感想が付くからイイというのもあるよ
俺もわざわざ分ける必要はないと思う。
ワールドカップは来年なのに、もう発表って早くない?
ここは既に2006年なんだっけ?
キタ━━ヽ(・∀・)ノ━(∀・ノ)━(・ノ )━ヽ( )ノ━( ヽ・)━(ヽ・∀)━ヽ(・∀・)ノ━━!!
おまいら、一番のビッグサプライズは
大 久 保 だ ろ ?
869 :
U-名無しさん:2005/07/04(月) 12:30:05 ID:VeBDo77R0
>866
だとしたら
>846
「来年やるワールドカップの日本代表のメンバー発表だよ。
「今年」ではないのか?
まあ、せっかくのすばらしい小説なんだから、あんまり細かいミスに拘らず楽しみませふ。
>>845で
「ていうか、かつてヒロは日本代表だったんだよ。
20歳以下限定のU-20っていう代表があるの。
去年それの世界大会がオランダであって、大活躍したんだぜ」
って言ってるんだから、話の中では2006年だろ。
さあ、ここまで国内板で進んできてアレなのだが、
やはり内容からして次スレは代表板がいいんじゃないかな?
主人公たちが、架空クラブならいいが実在のJリーガーになってるとすると、
この板でこのまま扱っていくことで微妙な問題が出てくると思うのだ。
かつて「U-31」スレが荒れまくった経緯を知ってる自分としてはそれを恐れる。
(要するにこの板では特定クラブに肩入れした作品は確実に叩かれる)
この作品は粗探しすればいくらでも突っ込める内容だと思うけど、
基本的にサッカー好きが書いてるのだろうから無駄に潰したくない。
あるいはクラブではなくまだ代表を中心に描くのなら、ここでは板違いだ。
>>872 ひとりのサッカー少年の成長を書いているんだから板違いもないんじゃない?
こういう書きこみがなくっていままで続いてきたのに今更言わなくても・・・
ほんと空気よめよ
>>872 これで21さんが書く気なくなったらてめえのせいだからな!
虚構と現実の区別が付いてるから大丈夫。
どんなチームに入っても、どんな選手が出て来ても普通の人間はそんな事を理由に噛み付かない。
ネットの創作にまで文句を言うような輩は荒らしだ。
でも
>>872も作者タンのためを思って発言してる訳で・・・
あんまり叩くのもかわいそうだな
雰囲気は悪くなったけどw
まぁあんまやいのやいの言わないでマターリ待とうよ
私鉄の駅から少し離れたFC東京の小平グランド。
元々平日でも比較的見学者の多いクラブではあるが、今日の混雑は異常だった。
グラウンドの周囲にはずらりと一般の見学客。
出入口にはマスコミが幾重もの垣根を作る。
元山はちょっと離れたところからその喧騒を眺めていた。
グラウンドで小熊監督が選手に檄を飛ばす声がここまで聞こえてくる。
防球ネットに群がる人のわずかな隙間から、
樋口がボールを蹴っているのが見えた。
誰かとの会話に屈託のない笑顔を
浮かべているが、その内心までは読み取れない。
昨日のメンバー発表会見。ひととおりのやりとりが終わると、
記者の質問は樋口広樹の選出に集中した。
― 召集歴のない樋口を抜擢したのはなぜか?
「彼の実力は昨年のワールドユースでの活躍で証明されている。
一時期、調子を崩していたため、召集は見送っていたが、
最近の試合を見て、十分トップフォームに戻っていると判断した。
ベストに戻れば、アルゼンチン戦の活躍を見ればわかるとおり、
彼はメンバーに選ばれてなんら不思議のない選手だ」
― 彼の年齢を考えると、意外な選出という印象があるが?
「世界を広く見渡せば、彼の年齢でA代表のレギュラーとして
活躍している例はいくらでもある。
年齢は問題ではない」
― プロではない樋口を選ぶのは異例のことだと思うが
「確かに異例ではある。
だが樋口は既にJリーグのトップチームの試合に出ているし、
プレーを見ても、プロと伍してやっていくだけの
力を持っている優秀なプレイヤーであることは明らかだ」
― 名前を最後に呼んだということはFWでの起用を考えているのか?
「DF以外のどのポジションもありうる。
ただし、既にこのチームにはそれぞれのポジションで
実績を持った選手たちがいる。
彼もすぐに試合に出られるわけではない。
私は常に調子のいい者を起用していくだけだ」
記者たちの間に小さくないくすぶりを残しながら、会見はそこで終わった。
その後、会見の唯一のサプライズとなった
樋口広樹のメンバー選出をセンセーショナルに取り上げるために、
マスコミは樋口が特別指定を受けているFC東京を通じて、
コメントどりに殺到したがクラブ広報も樋口の所在が把握できず、
本人の選出コメントがどこからも出ない異例の事態となった。
紙面を煽り立てるネタを手に入れそこなった各社の記者は、
昨晩さんざんデスクからどやされたに違いない。
そんな事情もあって、詰めかけた記者たちは今日は一際気合が入っている。
練習前、広報から練習後にワールドカップ選出メンバーの
マスコミ対応の時間を設ける旨の通知があった。
今日こそは、我がペンで思い通りに料理してくれるぞ、
そんな記者たちのエゴイスティックな思惑が元山にはひしひしと伝わってくる。
「さっきちらっと聞いたんだけど、
樋口は昨晩、友人と飯喰ってたんだって。
テレビも全然見なかったし、携帯は充電が切れてたらしくて。
今日の朝になるまで、自分が選ばれたこと知らなかったらしいぞ」
「そうなんだ。そりゃ誰も予想してなかったもんなあ。
本人も夢にも予想してなかったびっくりの抜擢、
メンバー選出を知ったのはなんと翌日の朝。
無心のチャレンジャーがいざワールドカップに挑む…
明日のアウトラインはこんな感じかな」
元山の目の前で記者たちが会話している。
嘘だ。直感的に元山は思った。
彼がメンバー発表の結果を知らなかったはずがない。
おそらくマスコミから一晩だけでも姿をくらましたかったのだろう。
彼が知らないでいられるはずがない……
練習が終わったらしく、選手たちが順々に引き上げてきた。
グラウンドの出入口でサポーターが待つ。
FC東京ではこのスペースが選手とサポーターの交流エリアに指定されている。
練習を終えた選手は、ここでサポーターの
サインや写真撮影の求めに応じることになっている。
樋口が出入口に歩いてくる。カメラのシャッター音が立て続けになる。
そのまますたすたと歩きはじめた樋口に、サポーターから声がかかる。
樋口は足を止め、サポーターの手から受け取った色紙にサインをした。
それをきっかけに何枚もの色紙が樋口の前に差し出される。
さらに周囲では一斉に携帯電話のカメラを構える見学者の輪。
係員が、危険ですから押さないでください、と声を張り上げる。
その様子を各社のテレビカメラが狙う。
一夜にして話題の人となったシンデレラボーイ。
マスコミの得意の切り口で映像が流されるのだろう、と元山には容易に想像がついた。
「ワールドカップ、頑張ってください」
サポーターが樋口に口々に声をかけている。
軽くお愛想程度の笑みを浮かべるが、ほとんど表情を変えずに、
樋口は次から次へと目の前に差し出される色紙に黙々とペンを走らせる。
まるで修行僧みたい。
一見華やかなこの場に不似合いな連想が元山の頭に浮かぶ。
瓦斯か・・・・・
でも応援するぜ広樹ぃぃぃぃぃぃ!
小熊監督がFC東京の監督になって、樋口がそこに特別指定で参加してるということだね。
まあ、納得できる選択ですね。
しかし、モニカが出てこないのが激しく気になる・・・・。
キタ━━━━(Д゚(○=(゚∀゚)=○)Д゚)━━━━━!!
>>883 おれもそこがすごい気になる・・・
東京でキングカジとの絡みが見たいw
「いいか?ヒロ。サイドライン際のペットボトルはこうやって並べるんだ」
「いやそれよりもクロスの練習とか…」
「まぁ待てって…。次はこれだ。
こうやってだな、ちゃんとこまめに水をあげないと丈夫なスイカは育たないんだ」
「出来ればサッカーを教えて下さい」
ガス・・・。
しゃぁないか。
朝日よ、マジコ樋口を漢にしてやっちくり
大学卒業したらフリエに来いョ・涙
特別指定制度ってことはまだ瓦斯に決まった訳じゃないしね
でもフリエってw
>>872 それだけはやめないか?
今でさえかなり増えてきた会話が今以上に増えて
>>21氏の書き込みがほとんど無いまま新スレとか行っちゃいそう
モニカは出ないが、モニワは出てくるね
若輩のヒロがメンバーに選出されて嬉しいけど凄く不安
オレ、樋口の身内状態かもw
890 :
U-名無しさん:2005/07/05(火) 00:31:47 ID:b3A9yz2b0
>妹が全裸で俺の前に現れたのだ・・・
まで読んだ。
初代表がW杯ですか。よくよく考えると、凄い快挙ですな!
実際の自慰弧監督ではあり得なさそうな設定なだけに、21さんも現状には相当鬱憤がたまっているのかしら・・
樋口からちらりほらり見受けられる陰みたいのがすげー気になるッス!
ああ、じれったい。
892 :
U-名無しさん:2005/07/05(火) 10:01:29 ID:tkBdx3Qa0
21は瓦斯サポかよ
21氏ね
893 :
U-名無しさん:2005/07/05(火) 10:02:29 ID:tkBdx3Qa0
つーか大熊門下なら才能を食いつぶしていること間違いなしだな
田嶋 山本 大熊 このあたりが日本サッカー界の癌なのに
好意的に書くのかな
知られてきたせいか煽りも増えてきた。
21さんは気にせず、マイペースで書き続けてください。
小熊だから
大熊じゃないし
調子を崩していたが・・・か
WY後、モニカに何しようとした?>樋口
>>885 ワロタw 加地さん良い味出してるw しかし今は普通に代表でも戦力だからなぁ。
899 :
U-名無しさん:2005/07/05(火) 16:55:17 ID:SuAfHhEeO
無いよ
>>899 俺が書いてもいいけどまずエロパロ板にスレ立ててくれw
902 :
U-名無しさん:2005/07/05(火) 17:55:17 ID:VlnEB29oO
痛い妄想小説だとは思っていたが、やはり瓦斯厨だったか
なんかageる無職が増えてきたな…
クラブハウスの中、記者たちが待つ部屋に
メンバーに選出されたFC東京の選手が順番に姿を現す形で、
即席の記者会見は進められていた。
元山は用意された席の一番後ろの列で会見の様子を眺めている。
一番最初にジーコジャパン不動の右サイドの加地。
次に出場機会にこそ恵まれないがチームの精神的支柱の土肥。
だが、記者たちのお目当ては今日に限っては彼らではない。
雰囲気を察した土肥が、
「皆さんのお目当てはこの次だと思うんで、
僕のはさっさと終わらせましょう」と
ジョークを飛ばすと、記者の間からは思わず苦笑いが漏れた。
土肥と入れ替わりに樋口が部屋に入ってくる。
椅子に腰かけた樋口めがけてカメラのフラッシュがたかれる。
― メンバーに選ばれた感想は?
「青天の霹靂だったのでいまはなにも・・・」
― 選ばれる自信というか感触みたいなものは?
「まったくありませんでした」
― 自分がなぜ選ばれたと思いますか?
「わかりません。ワールドユースでアルゼンチンに勝ったからじゃないですか」
ジーコがブラジル人ということに絡めたちょっとしたウィットに、
記者たちから小さな笑いが起こる。
― ワールドカップという舞台について
「まだ試合に出られると決まったわけではないので、
しっかり練習でアピールして、試合に出られるよう頑張りたいです」
少し固い表情を変えることなく、樋口は淡々と記者の質問に答える。
無味乾燥で優等生的な応答に、
記者たちの熱気が少しずつ萎えていくのが元山にはわかった。
似たようなやりとりが何度か続き、記者たちの質問のタネも枯れ気味だ。
その時、前のほうに座っていた男が手を上げた。
どこかで見たことがある。元山は記憶を辿る。確か某スポーツ紙の記者だ。
ちょっとしたコメントから、やたらと扇情的な、
そのくせ中身のない記事を書くので、選手ばかりか同業者からも白い目で見られている。
― メンバーに選ばれた喜びを誰に一番伝えたい?
元山はそっと息を呑んだ。ポーカーフェイスを崩そうとしなかった
樋口の表情がかすかに変化する。。
「家族に。うちの家族はあまりサッカーに興味がないんで、
伝えても淡々としたものでしたけど」
― 他には?
その言葉にこめられた何かを感じとったのか、
記者を見る樋口の目がすっと細くなった。
「直接は無理ですが、お世話になった人みんなに伝えたいです」
それだけかなあ。記者がわざとらしい大声で言った。
嫌な雰囲気。
広報が慌てたように、もう質問はよろしいでしょうか、と声をかけた。
元山は挙手する。広報が元山の顔を見るとほっとした表情をしてから、
OKのサインを出した。元山は後ろの椅子から立ち上がる。
「ワールドカップのピッチに立つことができたら、
どんなプレーがしたいですか?」
数秒の間。少し考えた後、樋口はゆっくりと答える。
「できるかどうかわからないけど・・・
サッカーの楽しさを見てる人に伝えることができるような・・・
そんなプレーができたらいい、そんなプレーがしたいと思ってます」
なんかモニカとあったのかー!!
加地さんはー!?
でも乙。
もしや、モニカが白血病で!?
キタ━(゚∀゚)━(∀゚ )━(゚ )━( )━( )━( ゚)━( ゚∀)━(゚∀゚)━ !!
21さん乙です
モニカとなにがあったんだーーー
樋口に選ばれるって連絡は行ってたのか
そりゃそうだよな
「じゃあ樋口くん、ガッツポーズお願いしま〜す」とか言われて
恥ずかしい写真が一面に、なんて展開ないのかな?
あの受答えだと「キザな奴」とか「生意気」とかスターを作りたいマスコミに好き勝手書かれそう。
912 :
U-名無しさん:2005/07/06(水) 15:29:00 ID:ve2tbXFiO
敵サポから「森本童貞」みたいなフラッグが出されたりして。
新聞社やテレビ局の記者たちは、慌しくクラブハウスを飛び出していく。
夜のニュースや明日の朝刊でいまの会見の模様が
ごてごてとした修飾とともに報じられるのだろう。
急ぎの原稿のない元山は、玄関に近いロビーでぼんやりと彼らを見送った。
喧騒が去ったクラブハウスはがらんとして寂しい感じがする。
しばらくすると、樋口がバッグを肩にかけて出てきた。
ロビーに座っていた元山と目があう。樋口が軽く会釈した。
この場で取材する気はなかったが、元山は声をかけてみた。
「今日はこの後は学校へ行ったりするの?」
「ほんとなら挨拶にいきたいんだけど、いろいろ準備もあるんで・・
学内でのセレモニーみたいなのも話があったんですけど、
大学の監督さんが時間がないから、
全部帰ってきてからにしてくださいって断ってくれて・・」
昨日発表されたメンバーは、今日を含めて三日間のオフの後、
福島のJヴィレッジに集合して国内合宿に入ることになっている。
その後、埼玉スタジアムで壮行試合を行った後、
一旦解散し、短いオフを取った後、ドイツへ出発するスケジュールだ。
それなりに用意ができていた他のメンバーと違って、
樋口にはいろいろとやらなければならないこともあるだろう。
元山と樋口の会話はそこで切れた。
クラブハウスの空虚な雰囲気がちょっとした沈黙を増幅する。
なにかを聞きたい気もする。もっと彼が何を考えているのか聞いてみたい。
でも元山の口からは問いかけの言葉は出てこなかった。
「ワールドカップ、がんばってね。応援してるよ」
元山の激励に樋口はにっこりと笑った。
「ありがとうございます。がんばってきます」
今日はじめて他人に見せた彼の素顔かもしれない。
樋口は小さく礼をして玄関へ歩きはじめる。
元山の目の前を通り過ぎるとき、
バッグにくくりつけられた二つのお守りが目に入った。
まったく同じデザイン。でも色が違っている。橙と紫のかった青。
バッグの取っ手に異様なほど厳重に結ばれている。
紐で幾重にもぐるぐる巻きにしてあるので、
その部分がこんもりと盛り上がっているほどだ。
「そのお守り・・・」
口にした後ではっとして、元山はその先の言葉をぐっと飲みこんだ。
そんな元山の様子には気づかなかったのか、
「これですか」とふたつのお守りを手にとって樋口は快活に笑うと、
「大事なやつからもらった大切なお守りなんですよ。
絶対になくしたくないから、ついこんなふうになっちゃって。
周りのやつにはそんなに大事なら、家にしまっておけばって
言われるんですけどね、いつも近くに置いておきたいんで」
樋口がもう一度会釈して玄関へ歩いていく。
ガラスの扉越しに見る外は、気持ちよく晴れている。
植込みの緑が日差しを浴びて光り輝くようだ。
元山のいる暗いロビーとの明るさの違いが目に眩しい。
樋口がゆっくりとその明るい世界の中へ歩いていく。
ドアを開けようとする樋口の背中が、外との光のコントラストで黒い影になる。
新聞小説に連載してほしい
モニカ
何かあったんか?
919 :
U-名無しさん:2005/07/07(木) 11:34:02 ID:aQLlR49W0
保守
アルゼンチン戦でのモニカの声
↓
帰国時の機内のざわめき
↓
「直接は無理だけど」
↓
二つのお守り
マジ・・・ですか モニカ
>920
ありえるな
922 :
U-名無しさん:2005/07/07(木) 15:36:06 ID:Cd7ZnwfX0 BE:78782257-
>920
かんべんしてくれ,,,
orz
それだけは・・ヽ(`Д´)ノ!ウワァァン
そろそろかな??
そこで1にでてきたもう一人の女ですよ。
926 :
920:2005/07/08(金) 01:20:40 ID:Mh/haZCMO
みんな、ゴメン 俺が余計なことを書いたようだ
マジコごめん 待とう、21さんを待とう
でも俺もそう思った
>>920 大学の合コンも実は樋口を元気つける為みたいだったし…
。・゚・(ノД`)・゚・。
928 :
:2005/07/08(金) 01:45:51 ID:npaDH9Oe0
モニカタンが心配で仕事捗らんとです…
。・゚・(ノД`)・゚・。
予想は難しいね。当たってしまうと作者は書きにくいだろうし。
いや920を責めるわけじゃないし、当たってるからと言ってるわけでもないけどさ。
難しいかもしれないけど、予想禁止の方向で行こうか。ネタはOKにしてさ。
930 :
920:2005/07/08(金) 09:23:20 ID:Mh/haZCMO
『ストーリー予想禁止』了解
ただ、サポーターとして普段スタンド、ゴール裏で叫んでる試合中の局面予想程度はOKということで
マジコすまなかったm(__)m
931 :
U-名無しさん:2005/07/08(金) 18:49:17 ID:llD6dTTp0
瓦斯
誤爆。。。
よりによって…
瓦斯サポが増えはじめた証拠だと考えると、このスレも終わりが近いな。
食事をするともう何もすることがない。
広樹は部屋のベッドに寝転がったが、まだ夜の8時だ。
こんな早い時間ではさすがに眠気が訪れるわけもない。
Jヴィレッジでの合宿初日。
昼過ぎに集合した後、ジーコの訓示も含めた簡単なミーティング。
初体験の広樹にとっては、雰囲気になれるのがやっとだったが、
それでも周りのメンバーからいざワールドカップという
凛とした空気を痛いほど感じ取っていた。
ライバルたちに勝って自分たちが選ばれたことの誇りと、
本大会へ向けた最後のポジション争いに臨む気迫。
選ばれた男たちが醸し出すオーラがミーティングの部屋に充満していた。
その後夕方にやや軽めのフィジカルトレーニングを行い、
ボールを触ることなく、初日のメニューは終了した。
宿舎に戻って飯を食べてしまうと、今日のスケジュールはおしまいだ。
広樹にしてみれば思いのほか
ついていけた、というのが初日の正直な感想だった。
おいえかれるのではという不安でいっぱいあったが、
どうやら若さというのは貴重な強みらしい。
この数ヶ月、クラブのフィジカルコーチの指示に従って、
きっちりと体を作ってきた効果があったようだ。
もう少し体を動かしたい気分だったが、
本番でベストのコンディションになるように、
試合日程から逆算した綿密な計画に従ってトレーニングメニューが組まれている以上、
あえてここで我を通して、ひとりで練習することもできない。
広樹はじっと天井を眺めてみる。
さっき食堂で食べているとき、誰かが
「お前DVD何持ってきた?」と他の選手に尋ねているのを耳にしたが、
そういうものがあれば少しは暇もつぶせたのかもしれない。
ワールドユースのときも何人かが持参していたのを思い出す。
食事の後は、中田英寿のように部屋に戻って一人で過ごす者もいれば、
小野を中心にビリヤードに興じるグループもある。
そのままレクレーションルームで雑談をしている集団もいるようだ。
ほんとうならば、そういう輪の中へ積極的に入っていかなければいけない。
広樹は天井の染みを見つめながら考える。
集合した中で唯一といっていい、新参者の自分。
早く自分のプレーを周りの選手に知ってもらい、
他の選手のプレーを早く自分も掴まなくてはいけない。
サッカーでチームメートのプレーを知るということは、
ピッチで一緒に練習すればそれで足りる、というものではない。
普段の会話の中から、その選手の性格を知り、考え方の癖を覚えていく。
どんなときに強気になり、どんな状況で弱気になるのか。
ボールだけでなく言葉もやりとりしなければ、
息のあったプレーというのは絶対にできない。
ピッチでのプレーとピッチ外の情報を付き合わせ、
互いにわかりあっていく。連携を深めるというのはそういう作業だ。
サッカーでもやはり行き着くところはコミュニケーションだ。
ここにいてはいけない。早くみんなの中に飛び込んでいかなければ。
広樹はそう思うが、心の中のもやもやが晴れない。
夕方の練習が終わった後の出来事。
それが広樹の心に、なんともえいない影を落としている。
そのとき、部屋のドアが開いた。楢崎が勢いよく入ってくる。
ベッドに寝転がっている広樹を見ると、
「どうした、なにひとりでシケた面してんだ。風呂行こうぜ」
笑って声をかけてくれた。壁に反響するような力強さ。
誰が部屋割りを決めているのか広樹が知る由もないが、
なんとなくこの組み合わせには、
楢崎の意思が働いているように広樹は感じていた。
合宿がはじまってまだ半日だったが、
一度練習試合で同じチームになっただけの広樹にあれこれと声をかけてくれ、
広樹が周囲から浮かないように気をつかってくれている。
この人のことだから面倒見役を買ってでてくれたのかもしれない。
起き上がりこそしたものの広樹から反応がないのを楢崎は見て取ると、
「夕方の記者とのやりとりのこと、まだ気にしているのか?」
いきなりずばりと言い当てられて、広樹は思わず言いよどむ。
「まあ・・そうですね」
「さっき、ツネとヒデが協会の人を通じて
マスコミに申し入れたよ。サッカーに直接関係のない質問はやめてくれって。
もしひどい質問が続くようなら、明日以降、選手は全員取材を受けないって。
広報の人も慌ててたな。さすがにそこまで
俺たちが言うとは思ってなかったらしい」
楢崎が快活に笑った。広樹は驚くばかりだ。
「そこまで・・言ってくれたんですか?」
「ヒデのマスコミ不信はすごいからな。
ヒロの気持ちがよくわかったんだろうな。
でもヒデばかりじゃない。選手みんなが同意してる。
さっきみんな集めて確認したよ。ツネが部屋回って声かけてさ。
反対するやつは誰もいなかった。みんなそれだけ怒ってるんだよ」
広樹は黙って聞いている。
感情がのどの奥から競りあがってくる。
「マスコミも、言葉は悪いが、必要悪だってのは
俺もこの商売やってて、嫌ってほど実感させられたけどな。
気にするな、といわれても無理だろうが、それ以外に方法はない。
余計なことに煩わされて調子を崩したらお前が馬鹿を見るだけだ」
楢崎さんが忠告してくれる。広樹は肯いて、
「俺もわかってるんです。向こうも商売です。
そしてマスコミがファンと選手の架け橋に
なってることも理解してるつもりです。
ただ・・でもやはりあれは俺の中に止めておきたいことなんです」
「それが自然な気持ちだと俺も思う」
楢崎の言葉にすっと広樹の肩が落ちる。
うなだれた広樹の肩に楢崎がそっと手を置いた。
ずっとずっと。この一年間、抑え続けてきた感情。
それが広樹の中であふれる寸前まで来ている。
「もうすぐ一年になるのか」
じっと体をかがめ動こうとしない広樹を楢崎が優しい眼で見る。
「はい」
「モニカちゃんかあ。俺が見たのはあの試合だけだったけど、
ほんとにかわいい娘だったな」
「俺」はゆっくりと顔を上げ、楢崎さんの目を見る。
部屋が静かだ。田舎の夜は都会と違って静寂に満ちている。
闇がすべてを包みこみ、埃の落ちる音さえ聞こえそうな錯覚にとらわれる。
楢崎さんの眼が逃げることなく、真正面から俺を見つめ返している。
「結局、俺、モニカと一試合しか、
あの代表とやった練習試合しか一緒にできなかったんです。
モニカは公式戦に出られないし、
あの試合の後はお互い代表に行くことが多くなって。
とうとう次の機会は来なかった」
そうだったんだ、と楢崎さんが相槌を打ってくれる。
「いまだにあいつが死んだなんて、心のどこかで信じられない」
そうかぁ・・・
・・・
まじかよ・・・・
そんなぁぁあぁぁぁぁあぁぁぁ。゚(゚´Д`゚)゚。
乙
モニカm9゚(゚´Д`゚)゚。プギャー
やばい、泣きそう・・・
944 :
:2005/07/09(土) 00:53:09 ID:71/qk8UZ0
俺も・・・
マジですか・・・
あああ・・・これは・・・
なんとなく、そんな雰囲気だったけど・・・
ショックだ・・
。 。 。。
・゚ ゚・。 。・ ゚・。
。゚ ・。 。・゚ ゚。
。゚ ・。 。 ゚ ゚。
。 ゚。 。゚ ・。
゚ (ノД`)
そういや、そろそろ次スレ?
きちゃった・・
エチーな事しようとして嫌われた、なんて考えてた俺って・・
やべぇ…マジでショックだ…
>>933 931は嫌いなJチームスレへ投稿したんだとw
952 :
U-名無しさん:2005/07/09(土) 02:42:37 ID:gUZPGon30
いやな予感はしてたけど、、、、(/_;。) ウッウッウッ
なんでいきなりコテハンになったのだろう
>953
俺もオモタ。
少し疑ってる俺がいる。
955 :
920:2005/07/09(土) 09:25:22 ID:P708CnVSO
モ、モニカ・・・お前のプレー、世界での活躍、これからだと思ってたのに。期待してたのに・・
モニタなんて言ってる場合じゃなかった
マジコ悲しい
>>953 その前の文章とID同じだし本人だと思うよ
ここだけは捏造こないようにコテつけたんじゃないかなあ
ヽ(`Д´)ノウワァァァンン!!
゚ + 。・゚・。・ヽ(゚´Д`゚)ノ ゚゚。ウァァァン
゚ + 。・゚・。・ヽ(゚´Д`゚)ノ ゜゜。ウァァァン
今思えば
>>785が
なお、最近、原稿見られてるのかな?と思ってしまうくらい
タイミングのいいレスが入りますが、
だったのか・・_| ̄|○||||
もう立ち直れん・・・
このままじゃ感想だけでスレが埋まりそう
新スレどうするよ?
話が年単位で展開するは、ヒロインが死んじゃうはで、はっきり言ってつまんなくなってきた。
試合内容は多少の記述ミスはあるが読み応えがあるのに、登場人物周辺の話が軽すぎて、イマイチ感情移入ができない。また、そのために話が飛んだしまっている。
ただ、サッカー小説としては、今後も期待はしているので、頑張ってください。
次スレシンプルに
今日俺が一人で近所の公園でリフティングをしてたら・U
じゃだめなん?結構このタイトル気に入ってるのに
今日俺が一人で近所の公園でリフティングをしてたら・2巻
これで
エルゴラは、こっちを加筆・訂正してもらって連載すればいいのにw
日本女子サッカー隆盛の物語も一緒に楽しめると思ったのにな。
普通にマンガでもある若手のサクセスストーリーになっちゃった。
>>969 次数→字数だよ
何やってるんだ自分
もう眠いんでおやすみなさい…
次の展開楽しみにしてます
971 :
U-名無しさん:2005/07/10(日) 05:00:44 ID:CCrgiqQAO
あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう
つーか、このまんまだと次スレは瓦斯サポのスクツかあ・・・
まあ、いい想い出のまま去るのが吉かな。
面白い部分もそれなりにあったと思うよ、全部読んでないけどw
つーか作者以外がスレ立てるのってどうなん?他にも作家さんがいるならまだしも、
今の状況でこんなことしたら執筆を強要してるようで気分悪い。
強要されてるように感じて嫌なら書かなきゃいいんだし、自分で別スレたてるでしょ?
書いてくださいって意味で場所を用意してるんだから・・・。
969の真意を読み取れない香具師が小説なんてかけないだろ〜にw
学生で、一応灰皿瓦斯で試合出てるってだけなのに過敏すぎ。
瓦斯マンセー小説じゃないじゃん。
969乙
作者さんが21さんと呼ばれていることを知ってる普通の読者なら、21さん以外のヤツが次スレ立てても気にしない いや、逆に969に感謝だ
21さんも1が立てたスレの文章を放置するのが勿体なくて書き始めた。だから最初から強制、強要はない。
今は、一服の清涼剤を求めてここに集う
ガスだなんだってセチガライこと言わずにマッタリ待とうぜ
因みにオレはフリエだヨン