【今年も】ECC行こうかな 楢崎性豪21【オレの年】
最初の切っ掛けがなんやったかもうわからへんけど、なんでかそういう話になって、
先取全員集まってる部屋で順々に誰かの名前を口にする。みんなかなりくつろいでるし、酒もそれなりに入ってるし、結構とんでもないテーマやのに
あんまし気にせんと進んで行く。
『日出』『竜三』『ゴソちゃん』『新字』『守氏』………
どっちかいうたら年令の高いヤツに票が集まりやすい。例に漏れるヤツも居るけど。
ホンマ誰が言い出したんか、オトコばっかし23人、現在盛り上がってるらしい雑談のテーマは…
『この中で、誰にやったら抱かれてもいいか』
どないやねん?マジで返答するだけのテーマか?誰か止めるヤツ居らんかったんか?
……まあ俺も『止めへんかったヤツ』に入るんやけどな……
それはともかく右から順番がまわってきて、俺はさっきから数分間、ひたすらアタマん中で
繰り返してた名前を言うことになる。
「りゅーぞー。」
缶ビールの縁を噛みながら、面倒臭そうにダルそうに、しょうがないので対応してるように
自分のノルマをこなした。
……ちゃんとイヤそうな発音できたか?俺の挙動、どっかおかしくないか?
気になって周りの気配に集中してみたけど、竜三には既に何票か入ってて、今さら一票増えたところで
特に怪訝な反応はなかった。瞬間『おおーっ』って追加票に感嘆が上がったぐらいで。
そうやんな。みんなオトナやもんな。こんなんでいちいち勘ぐってへんよな。
嬉々として誰かの名前言うノリのええヤツも居るし。で、俺の左隣に座ってる竜三。
俺が返答したときちょっと苦笑してたけど、それも別に『また俺?』って意味に取れるし、
不自然でもない。取り敢えずの危険はクリア。助かった。
もう一つの危険。竜三の回答。
オマエ俺より全然オトナやねんから、まさかしょーもないヘマせえへんやろな?
大丈夫やな?注意に注意重ねて、最大限に気ィ配って回答しろよ?
心中で一方的なメッセージ送って俺はビール缶を揺らす。得に意味のない動作。
なんか竜三が居る側の左半身が痺れてるから紛らそうとしてるみたい。
「んーっと…」
そうして竜三が口にしたのは……こんなにこんなに、人が緊張して構えてたのに……
俺、じゃなかった。
………本日のショックその1。
「どういうこと?なんかイヤなん?オマエ失礼ちゃう?」
「……んな怒んないでよ……だってしょーがないじゃん。」
「そーゆー気ィなん?俺なんか御免やて?相手にできるかって?」
「……言ってないでしょーが……」
宴会終了後、竜三の部屋に押し掛けて捲し立てる。
なんで…なんで俺ちゃうの?そんなに俺、どーしょーもない?ダメ?全然?
ムカつくやら情けないやらでかなり興奮状態の俺の背中を、竜三は軽く叩いて宥めようとしてるけど、
そんなんで誤魔化されへん。
だいたい……オマエはあいつにやったらヤられてもええんか?俺じゃなくて?
「あのね、だから、カモフラージュとしては最適だったわけよ。あいつには悪いんだけどさ。」
竜三の両肩を掴んで不機嫌暴騰M∀X快進撃突破中の俺に言い聞かせるように、ゆっくり発音しながら
説明を始めた竜三の顔は、すっごい余裕あって落ち着いてて、やっぱしカッコいい。
見事2位、獲得しただけはある。………ええなぁ……
竜三は2位やった。本人も吃驚してたけど、この結果は俺の方がよっぽど吃驚…つーか焦った。
………傍から見てもええオトコはわかるんやな……
あいつとあいつとあいつと……えーと…あと誰やっけ?今後竜三に近付いて欲しくないヤツ。
近付いたら即、邪魔しに行かなあかんヤツ。
ぜーーーーったい渡さへん。ふざけんな。俺のやっちゅーねん。
「票が多いヤツに入れたら紛れるでしょ?あの時点でトップだったから入れただけだよ。」
1位を獲得したのは竜三が票入れたヤツで、確かにカモフラージュとして充分機能したけど……
「……んでもオマエが俺に入れとったら、あいつの票1コ減って同票やけど1位取れたのに……」
「いや別に…俺、何位でもいいし。それよかオマエにってのは……」
竜三の得票数にイライラしてるクセに、なんでか1位取って欲しかった気もしてる。矛盾。
そうやん。俺に入れたらよかったんや。オマエの票数は変わらへんし、その上で1位やし。
って思っとったら、俺に入れる訳にいかんかった理由を滔々と述べてくれた。
「無理だわ。直前にオマエが俺、指名してるんだし。これで俺がオマエだったら変に疑われると
思わない?なにより……」
その辺は納得するにはちょっと弱い。けど最後の苦笑気味の一言は決定的理由。
「オマエ、ゼロだったから……逆に入れ難くてさ……」
う……………そうやねん………俺、ゼロやってん…………
別に全然、一切、全く、微塵足りとも気にしてへんし!そんな票、集まったところで
困るだけやし!嬉しくもないし!つか、どーでもええし!ホンマに、もう、俺、…………うー………
………本日のショックその2。
誰かに複数票が入るってことはゼロのやつが複数居るってことで、それは当然なんやけど、
そこに自分が加わってんのが結構ショック。俺、そんなにあかんのか……
竜三に抱き着くみたいにズルズル崩れる俺を抱きかかえて、ベッドに座らされる。
「一応言っとくけど、他人の耳、気にせずに答えるなら俺はオマエだから。フォローじゃなくて。」
「……そんなん言うたら余計フォローに聞こえる……」
ボソっと機嫌悪く呟いた俺に竜三は、ちょっと笑って肩を抱いた。
それ、ホンマやったら凄い嬉しいんやけど。なんやったら今からヤったろかコイツ……
承諾も取れたし、まさか文句なんか言われへんやろう。
「……絶対?」
「ん?うん。マジ。」
最終確認のつもりで睨み付けるように探ったら、薄情そうに見えるけど実際は全然そんなことない
口元が緩く笑いの形を作って、快く肯定してくれた。ありがとう。じゃ、そゆことで。
俺は一旦立ち上がって竜三の両脚を掴み、ベッドに放り投げてから自分ものしかかった。
「え?……あれ?そう来ますか……?」
「ハイ。そう来ます。ヤらしてクダサイ。」
もっと吃驚される思ってたのに、なんかわりと余裕の表情やから、こっちも負けへんように
不敵に笑ってみせて、さっそくTシャツ捲って鎖骨に噛み付いた。
「そっか……今日は騎乗位ご希望なのね。」
………ちゃうやんけ…………いや、こんな皮肉に負けたらあかん。
「オマエが乗るん?」
「乗ってんのはオマエでしょ。これさえ脱いだら、そのままブチ込めるんだけど?」
「……………」
えっと……えーっと……
「手も口も止まってまーす。オマエ2つのこと同時に出来ないタイプ?考え事しながらメシ食うとか、
歩きながら息するとか。」
「うわっ!」
効果的な切り返し探してたら腕掴まれて簡単に反転された。
「別にさぁ、されるのは構わないけど、今日みたいに八つ当たり半分なんてのは冗談じゃないなぁ。」
俺の真上、正面からイジワルっぽい目付きで拒否の言葉を吐いた竜三は、そのまま俺を脱がしにかかる。
その…動機は失礼な気もするし、悪かった…ような気もするけど……竜三、なんか遊んでへんか?
「じゃあ次、俺がしたいって言うたら……っ…」
「どーぞどーぞ。いつでもどーぞ。でも……」
身体を這う手の平に意識の何割か持っていかれながら、俺は本日のショックその3を受け止めた。
「途中で、やっぱり欲しがったりしないでよ?」
…………完全否定できへん自分が居る。
…………立ち直るのに時間かかりそう………