【中央】東京一極集中は賛成?反対?【地方】

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98堺屋太一『新都建設』
減少する「過去からの補助金」
最初にも述べたように今日すでに日本は効率の良い社会ではなくなっている。
それでもまだそのことが目立たない理由の一つは、東京の企業と住民に
膨大な「過去からの補助金」が提供されているからである。
 例えば今日、東京の水道料金は全国でも最も安い部類に入る。
近年、東京の水不足は深刻で、毎年のように「水ガメ」が心配されているが、
これを解消するためには福島県や新潟県まで水源を求めなければならず、猛烈な費用がかかる。
そんな東京が水源に近い市町村よりも水道料金が安いのは、
明治、大正時代から造って来た簿価の安い施設や水利権があるからだ。
いわばインフレ利得が、施設整備の早かった東京に集中的に与えられているのである。
 こうした現象を財政学では「過去からの補助金」と呼ぶ。
同じような現象は鉄道にも高速道路にも電話や電力にもある。
例えば現在価格で土地買収を行って新橋から虎ノ門まで高速道路を建設すれば、
たった1.2キロで1台二千円の料金を取らなければ引き合わないと言う。
それなのに首都高速全線が六百円で利用出来るのはもっとも費用のかかる都心部分が
昭和三十九年に(今から見れば)「タダ同然」の土地代で造られているからだ。
東京の地下鉄が京都や名古屋より割安なのも戦前の銀座線や終戦直後に出来た
丸の内線の資本費が極めて低いおかげである。
99堺屋太一 『新都建設』:2006/03/20(月) 10:39:10
ある経済学者試算ではこうした「過去からの補助金」が東京では年間七兆円にもなると言う。
東京のマスコミは「東京の鉄道や高速道路の収益で地方路線の赤字が埋められている」と言うが
東京の鉄道や高速道路を黒字にしているのは「過去からの補助金」なのだ。
それだけ東京人は都市費用を免れているわけで、東京に事業所が集まる原因にもなり、
土地価格の高騰を促す原因にもなっている。
 この事の善悪はともかく東京の規模が拡大し活動が盛んになれば、
こうした「過去からの補助金」の比重が低下することは避けられない。
水道も地下鉄も高速道路も新線ができるごとに料金があがる。
施設を更新するだけでも過去の安価なものにくらべて資本費は上昇する。
 東京は膨張するたびにますます費用のかかる都市になってゆく。
そしてこのことからも東京一極集中の続く限り、
日本全体をますます非効率な国になったしまう。