【中央】東京一極集中は賛成?反対?【地方】

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通信情報社会を急ごう          東京では分からぬ地方の惨状
 しかし日本経済の実情は、経済統計では分かりかねる。現実には、この二年間、
日本経済に対する不安と不信は急速に深まっている。経済再生政策の中断、改革の先送り、官僚主導の復活、
緊縮財政と税収現象のデフレスパイラルなど、
現実の不況と将来の不安をかき立てる事ことがあまりにも多い。2001年5月以来の株価低迷は、その表れであろう。
 日本経済への不振と不安は、農業と製造業からはじまった。米価の下落と人口の現象で農村には希望も期待も乏しい。
繊維や木工の伝統的な伝統的な産地は、中国やアジア諸国からの輸入で壊滅的な打撃を受けた。
零細工場と家内労働に頼っていた雑貨製造も大幅に減った。
電機工業や機械部品でも人員削減と実質的な給与引き下げが進んでいる。全国の工場群がどんどん縮小している。
 不況の寒風は、建設業と流通業も及んでいる。建設需要はここ数年減少しているが、公共事業の非効率に助けられて
業者の数と従業員は保たれていた。だがそれもここにきて変わり出した。公共事業は減少したし
民間の設備投資や住宅建設は単価下落も著しい。
 流通業も悲惨だ。そごうやマイカルは破綻し、ダイエー、西武百貨店が経営危機に陥っただけでない。
他にも大型店鋪の閉鎖は多くあり、地方都市には閉鎖したまま放置されている幽霊店鋪は珍しくない。
それ以上に痛ましいのは商店街、閉店した老舗の並ぶシャッター通りが激増している。
人口の現象と高齢化で需要が減り、物価の下落で在庫が不良化し、利益率も低下した。
加えて商圏も移動し、国道端の量販店や都会の大型店に客が流れている。
 
不況は、地方の経済ばかりか社会と文化も破壊している。2002年は、秋の祭りも商店街のイベントもできない街が続出した。
日本の地方は悲惨だ。不動産価格の下落で資産家はいなくなった。
経営不振で高所得者も少ない。商店は閉鎖され、田畑は無耕化し、町村合併で役場も減りそうだ。
拙書『平成三十年』で描いた超過疎化が早々と現実になろうとしている。
 世界に珍しい首都集中
 こうし地方の惨状は、東京には伝わらない。東京は今、巨大ビルの建設と高級ブランドの出店で盛り上がっている。
2002年から03年にかけて完成した東京の大型ビルの延べ床面積はバブル景気真っ最中をはるかに上回る。
全国の建設用大型クレーンの七割以上が東京に集中している、という。
 高級ブランドの出店も多い。銀座や表参道には外国高級ブランドの大型店鋪が次々とできる。
それがまた、地方の若者を呼び集める。それというのも、にほんは世界でも珍しい情報発信一源国家だ。
昭和16年体制による官僚主導で、出版もテレビも全国への情報発信は東京だけがするようになっている。
 出版物も小売りの書店に取次ぐ日販やトーハン等の取次店を東京に集中させたので、
地方の出版物も全部東京に運ばなければならない仕掛けになっている。
テレビは世界に珍しいキー局システムで、全国番組編成権が東京のキー局に握られている。
このため、全国放送番組はほとんど東京で製作されるし、
地方製作番組も東京キー局の好みに合わせてつくらなければならない。
くわえて近年は地方新聞も共同通信など東京発信の記事が増えた。戦前には地方紙のキャンペーンが
全国を揺るがした例が多いが、最近は地方紙が独自の論調を展開する事もほとんど無い。
これでは東京に住み、東京の新聞とテレビを見ている官僚たちに、地方の実情が通じないのも無理はない。
その上、国の出先機関や自治体に出向する高級官僚はほとんど単身赴任、
地方における生活実感も隣近所の付き合いもない。
地方選出の国会議員までもが東京生まれ東京育ちの二世が多く、生活基盤を東京に置いての
「出張選挙」だ。だから、地方の実情を見るよりも、東京の官僚の説明を信じてしまう。
 交通通信が便利になれば、地方の経済も文化も栄える。日本ではそう言われて来た。
外国では確かにそのようになった。戦後、欧米諸国ではみな首都圏の経済文化の比重は低下した。
特に知価革命の進行した80年代は著しい。
 ところが、日本だけは、新幹線や高速道路網ができても、電話やファクスが便利になっても、
必ず東京一極集中が進んだ。特に最近はインターネットの普及が東京集中のてこになっている。
 IT関係の若い事業家や技術者がどっと東京に移住してきた。
作家や評論家の類は東京圏の中でも港区を中心にした半径10キロに集中している。
「IT時代には鎌倉や湘南どころか世田谷でも遠すぎる」というのだ。
対面情報の不透明を解消しよう。
 どうして日本だけは逆なのか。その根底は対面情報の慣習だ。
「とにかく会って面突き合わせて語らなければ本当の事が分からない」という社会だから、
この国の真の実力者、官僚機構にすりよらざるを得ない。
民間同士の事業でも、互いに食事やゴルフに誘いあい、酒肴を交えた社交を積みあげなければ本音には至らない。
こんな世の中では、誰も彼もが東京一極に集中するようになる。
だが、スピードが求められるグローバル時代には、これではやっていけない。
情報の収集と意志の決定に時間と費用がかかるばかりか、情報事体が不正確で不公正になりやすい。
 日本が世界の変化に遅れた原因の一つは、東京一極集中による対面情報慣習にある。
これを改善する為には、欧米並みの通信情報社会にならねばならない。
ブロードバンドや第三世代携帯電話が普及しても、「本音のところはお会いして」では役に立たない。
 これは仕事の仕方だけの問題ではない。
各省に政策の規格審査機能から基礎調査や統計記録の機能までを
縦割りに収めた官僚組織からして対面情報を前提にしたものだ。
 官庁の組織も通信で情報を交換する形に改め、企画審議と調査統計を分離した物にすべきだ。
それが確実かつ安価にできるのはやっぱり首都機能の移転、
それも企画審議機能と調査統計機能を分離して別の場所に移す形の移転だろう。