高山正之☆新潮「変見自在」

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4名無しさんの主張
最近のサンプルを掲載します。

週刊新潮04.9.9号「変見自在」116
『ビルマの心』

 戦争に負ける。
 日本も一度、体験した。乗り込んできたマッカーサ
ーの言いなりにされた。
 マッカーサーは無抵抗の日本をみんなの前に引き出
し、下卑た笑いを湛えていたぶる。「さあ、みんなにこ
う言え。私は自分の身を守りません。みんなを信用し
て素っ裸で転がっています、と」。
 世に言う平和憲法だ。
 それを聞いて日本には近代化させてもらった恩義の
ある国も、植民地のくびきを外してもらった国もハイ
エナのように飛びついてきて賠償を請求したり、李承
晩ラインを引いたり、あるいは北方四島を持っていっ
たり、日本は酷い目に遭ったものだった。
5名無しさんの主張:04/10/11 06:16:13
 それでもビルマに比べれば日本はまだ幸せな方だっ
たかも知れない。
 ビルマは十九世紀末、英国に植民地になれと通告さ
れた。
 由緒ある王国が拒絶すると、英国は軍艦一隻を送っ
てビルマを叩き潰し、ティボー国王夫妻をインドに流
し、王子と王家につながる人々すべてを処刑した。
 こうすればビルマ国民は心棒を失って国家としての
復元力を大きく失う。ちなみにGHQも天皇ご一家を
中国に遠流するつもりだったが、やればわが身が危な
くなるのをマッカーサーは知っていて、それで実行し
なかったといわれる。
6名無しさんの主張:04/10/11 06:17:18
 さてビルマ。心棒を抜いた英国は次に「ビルマ人の
国」をぶち壊しにかかる。インド人を入れ、華僑を入
れ、周辺の山岳民族モンやカチンを山から下ろしてビ
ルマ人を支配させた。
 マッカーサーもやる気になればそれはできた。日本
に大量の中国人と朝鮮人とフィリピン人を送り込んで
彼らに支配させる。
 等々力不動は取り壊され代りにモスクが建ち、隣に
キリスト教会が並び、向こうには孔子廟が聳える・・・。
冗談ではなくラングーンはまさにそういう景色に変わ
っていった。
 そんな辛酸をなめたビルマ人アウンサンは先の戦争
のさなか、日本軍と行動をともにし、自分の国を取り
戻すのに成功した。
7名無しさんの主張:04/10/11 06:17:50
 しかし日本の敗勢が濃くなると、彼は世話になった
日本に「弓を引く」と通告する。日本についていれば
ビルマ人の国は永遠に取り戻せない。それを察してほ
しい、と。
 このくだりを英戦史家ルイス・アレンが『日本軍が
銃をおいた日』の中で感激して詳述している。
 しかし英国はアウンサンの真情を許さず、ビルマの
独立は認めたものの、彼は暗殺される。
 そして半世紀。世界から忘れ去られている間にビル
マ人は中国の共産ゲリラと戦い、鎖国政策をとって華
僑たちが愛想をつかして出て行くのを待ち、英国の手
先だった山岳民族とも和解して再建を図った。
 そのしるしにビルマ人の国ビルマという国名を、五
族協和を意味するミャンマーに改めている。日本人の
国、日本をやめてしまうというのと同じ大決断だ。
8名無しさんの主張:04/10/11 06:18:39
 そこまでまとめて軍事政権が退こうとしたとき、ア
ウンサンの娘スーチーを英国が戻してきた。彼女は父
の暗殺のあと英国に引き取られて三十年も暮らし、英
国人と結婚もしていた。
 いわば英国の代理人でもある彼女のもとに、かつて
植民地時代に英国の下でいい思いをした華僑や山岳民
族が結集し一大政治勢力と化していった。
 ビルマ人がやっと取り戻した祖国。それを再び植民
地時代に引き戻す英国の動きにビルマ人が怒り、再び
軍事政権が帰ってきた。ビルマの苦悩は続く。
9名無しさんの主張:04/10/11 06:19:33
 世の中、馬鹿が多い。先日の朝日新聞のコラムでア
ジア総局長真田某がミャンマーの「民主化の遅れ」を
さかんに嘆いていた。
 彼はその前にもASEM拡大問題で英国がスーチー
の弾圧を口実にミャンマーの加盟に大反発したと報じ
ていた。ビルマをぶち壊した英国が何か言うなら「申
し訳ない」だろうが。
 彼はビルマを中国より酷い独裁国家風に書く。でも
これが中国ならスーチーに十六年間もぶーたれさせず
にとっくに始末している。
 ビルマは心優しい国だと思わないのだろうか。
 そのミャンマーのエネルギー支援に日本が三十億円
出すと言ったらまた朝日が非難がましく書きたてた。
 日本人は、心のかようビルマに金を出す方が、北朝
鮮に五十億円出すよりははるかにましだと思っている。
(終)