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日本経済 再生に至る道 1:03/12/23 17:58
朝日新聞2003年12月14日朝刊
冨山 和彦:60年生まれ。コンサルティング会社勤務を経て、03年4月から産業再生
機構専務を務めている。
日本経済が再生する上り坂の途中には、断崖がある。飛び越えようとしても、谷は深く、向
こうは遠い。
手前は、戦後成長モデルのままに停滞する世界。向こうには21世紀型に生まれ変わった新生
日本経済がある。
企業再生の仕事に携わりながり、日々、そんな光景が脳裏に浮かんでいる。
「崖の向こう」と言っても、夢物語の世界ではない。すでに「勝ち組」と呼ばれる一部優良
企業が案現している、新たな現実の姿だ。企業間の競争が活発で、企業に対する融資や投資は、
おカネを生み出す力に応じて行われている。人材も有力な企業に流れる。市場メカニズムがお
カネや人の配分を決めるシステムだ。
私たち、産業再生機構には、事業が立ちゆかなくなった企業の再生案件が持ち込まれる。言
うまでもなく、崖の手前にいる企業群である。再生は崖を渡ることであり、私たちの仕事は断
崖に橋を架けることだ。
企業再生は、過剰債務(重すぎる借金)を軽くする財務面の再建と、収益力の回復・事業本体
の立て直しの二つがセットになっている。前者が応急手術とすれば、後者ま根治治療的な処置
と言って良い。いずれも、容易ではない。
事業本体の立て直しのためには、経営戦略を練り直し、必要ならば新しい「おカネ」や「人」
も投入しなければならない。経営者の交代を要請しなければならない事態も発生しうる。