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【小説】「愛の蹉跌」=第34回〜闇に消えた真相〜(エピローグ1)=
品川湾岸警察署の取調室で、大崎刑事から本間恵美子に対する刑事責任追及は不可能と
聞かされた安羅木(やすらぎ)一郎。実在する「岡野芙美江」になりすまし、安羅木を騙し続け、
挙句の果てに安羅木を裏切った悪女である。しかし、刑法上の犯罪に抵触しない、あるいは、
抵触しても証拠がなければ警察は動きようがないのである。安羅木は、
ただ々悔し涙を流し続けるだけであった。・・・さて、ここで一つの疑問が想起する。
そう、安羅木に殺害された佐山治。そして、本間恵美子と、その夫である小田輝義。
佐山治は、小田輝義を恐喝し金を巻き上げていた。小田輝義が、歌舞伎町の元カリスマホストであり、
現在、ホストクラブ運営会社である「リヨンエンタープライズ」社長であること。
さらに、タレントとして芸能界でも大活躍していることは前述した。
では、いかにして佐山治は、小田輝義に食い込んだのか?実は、世間に知られていないある‘事件’
があった。2008年12月のことである。・・・佐山治は、闇金のパシリを副業にしていたが、
本業であるデリヘル店経営もいまだ継続していた。そう、渋谷デリヘル‘東京BIG’である。
しかし、毎月積み重なる累積赤字と広告費負担の重圧に佐山治は苦しんでいた。売上は
かんばしくなく、店が暇だから在籍姫もすぐにやめていく。渋谷の本番デリヘル店であったが、
渋谷や青山にはすでに実績とノウハウを有する競合ライバル店が多数存在する。
風俗店経営の経験が浅い佐山治に、彼ら老舗ライバル店に太刀打ちできる力などなかったのだ。
そんなある日の23時頃。佐山治は、在籍姫(源氏名:ナナ)を助手席に乗せ蔵前橋通りを
走行していた。客の自宅に向かうためである。助手席の姫は、昔、渋谷でよく見かけた
‘顔黒系’のコギャル。仏丁面で無言のまま、携帯をポチポチやっている。車は、新中川を渡り、
西小岩に到着する。「よっしゃ!もうすぐ着くで!ナナちゃん!」
客からは、京成小岩駅まで来い。駅に着いたら自宅マンションまで電話で道案内するから
連絡をよこすようにと言われていた。天気予報通り大雨が降り出す。随分と強い降りだ。
「ありゃ?どこで左折するんや?左折したら京成の駅があるはずなんやけど?」佐山治は、
実はドライバー業務は大の苦手。ずばり方向オンチだからである。以前、西船橋のデリヘルで
アルバイトドライバーをしたことがあるが、道に迷ってばかりで使えないゆえ、
数日で解雇された。今回も...「あれぇわからんわ。ど、ど、お?また川を渡るんか?」
車は、なんと江戸川を越えてしまう。京成小岩駅はとっくに通り過ぎた。そして、
大きな道路標識が目に入る。「げ!千葉県市川市?ありゃりゃ通り過ぎてしもうたわい。
こらあかん!あかん!はよ戻らんと!」「これあかん!あれ反対車線にどう入るんや?
ああ!どないしよう!どないしよう!」 佐山はパニックになる。そうしていたところ、
佐山の営業用携帯が鳴り響いた。佐山はとっさに車を左に止める。ガクン!
急ブレーキの振動で思わずナナ姫は佐山を睨みつける。ご機嫌斜めのようだ。
(佐山)「はい、毎度ありがとうございます!東京BIG店長佐山でーす!」
(男性)「あのさぁ」(佐山)「はいはい。何でございましょうか?」
(男性)「予約してる小岩の田中だけど」(佐山)「ああ!田中様!
すみません。いま向かっているところでして...実は道に迷ってしまいまして。
あと少しで京成小岩駅前に着けると思うのですが...」
(男性客)「着けると思う?なんだそれ(笑)。もうとっくに夜11時過ぎてるじゃん。」
(佐山)「はぁ。大変申し訳ございませんです!すぐに行けると思い、あ、いやいや行きます!
行きますよ!はい」(男性客)「もういいよ来なくて。別の店の女の子呼ぶから。そんじゃ。」
ガチャン!佐山の対応にブチ切れた客は、一方的に予約をキャンセルし電話を切る。
211 :
名無しさん@入浴中:2012/12/16(日) 04:45:10.52 ID:54Rgk9vMO
(ナナ姫)「あの...?」(佐山)「あ...ナナ、ナナちゃん。あ〜そのぉ〜。ね、ナナちゃん。」
(ナナ姫)「キャンセルでしょ?!」(佐山)「す、すまん。ごめんな。ナナちゃん。
これから都内に戻ってな、錦糸町か、せやな鶯谷あたりで客拾うわ!んじゃいこっ!」
(ナナ姫)「もういいです!今日限りでお店辞めます!」(佐山)「な、なんやて?」
(ナナ姫)「辞めるっていうの!わからない?馬鹿じゃないの?ほんとに!店はど暇だし、
渋谷から江戸川まできてキャンセル食らうし!やってらんねーよっ!じゃあねっサヨナラ!」
そう捨て台詞を吐いたナナ姫は、さっさと車をおり、走って横断歩道を渡った。
総武本線・市川駅が右手に見える。そうか。ナナは、ここから電車で帰ろうというわけか。
ナナが辞めた。残る‘実’在籍姫数はたったの3名だ...ネット上の在籍数は20名。
だが、ほとんどがカラ在籍である。モデル写真を適当にパクって貼り付けているだけなのだ。
「3名か。もうダメやな。店閉めるか。それしかあらへんのか。」
そうつぶやく佐山治であった。・・・(続きは次回)
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【小説】「愛の蹉跌」=第35回〜闇に消えた真相〜(エピローグ2)= 佐山治は、大雨のなか渋谷の事務所に車を引き返すことにした。
寒い12月の深夜である。そして大雨。悪条件が重なっている。しかし、またしても方向オンチの佐山は道に迷ってしまう。
こんどは、なんやら川沿いを走っている。どこで右折?あるいは左折?したのか記憶にない。
きっと江戸川であろう。そして、次の瞬間、車体は右に傾き始め、右前の車輪がカラカラ音を立て始める。
「なんや?!ほなパンクかいや?どうすりゃええんや!」 ついていない男である。ナナ姫に悪態をつかれ退店され、
店は姫不足で廃業の危機に陥ってしまうわ、その上、さらに送迎車のタイヤがパンクとは・・・・・。
身長165cmで体重100キロ超の佐山治。車体が右傾したのは、彼の肥満体も要因であったことは説明を待たない。
佐山は、川沿いに停車する。先ほどより小雨になったようだ。よし、タイヤ交換は今しかない。
左は急な斜面になっており、おそらく現在地は江戸川の土手上のはずだ。佐山は、早速タイヤ交換に取りかかる。
とその時、傘をさし自転車に乗った男性が近付いてきた。傘を顔前にさしているので、前方が見難いのであろう。
「ほな、あれじゃわいの車にぶつかるで!大丈夫かいや!?」 そして、次の瞬間、その後方から赤い外車がスピードを出し、
自転車の「傘」男を追い抜こうとする。が、外車が男性の傘に接触した!『ああっ!!』男性は自転車ごと
土手斜面を転落してしまった。赤い外車は、佐野の車の前に急停車。外車からカップルであろうか?男女が慌てて下車する。
佐山も急な事故に仰天し、3人は雨に濡れた芝生斜面を走り下った。自転車の男性は、まだ30代であろうか、
コートを着ているサラリーマン風。川沿いのコンクリート面に頭部を強打し既に脈がない。死亡したのだ。頭部から真っ赤な血が雨で
ジワジワと拡散していく。男女は、自失呆然と立ったまま、長身の男は恐怖でガタぶる震えていた。連れの女性が携帯を取り出した。
佐山治は、事故を起こした長身男に目をやった。「ん?どこかで見た顔やな?・・・・」
「ま、まさか!?あの歌舞伎町カリスマホストの?そうや、小田輝義やないか!テレビにもよーでとる。そや!小田輝義や!」
217 :
名無しさん@入浴中:2012/12/30(日) 01:11:11.54 ID:TwIu3HmrO
そして...佐山治の‘細くきもい’目が光るまで僅かな時間しかかからなかった。
殺人をはじめ、数々の罪を犯してきた犯罪者、佐山治。起死回生、いや底辺人生から脱出する術を【悪魔】が
佐山に伝授した瞬間であった。・・・事故現場を所轄する葛西東警察署交通係は、
土手を転落し死亡した自転車の男性について、「事故発生時の深夜、強風雨が降っていたことから、自転車の運転操作を誤り、
左斜面の土手に自ら転落した自損事故」と結論付けた。交通係が一応捜査を行ったのであるが、
目撃者がおらず、さらに第三者の故意・過失が介在した証拠が見つからなかったからだ。
そう、小田輝義による加害事故である真相は表沙汰にならなかった。しかし、この事故こそが、
その後の安羅木(やすらぎ)一郎による連続殺人事件への導火線になったのである。・・・(続きは次回)
なんじゃこりゃあ
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220 :
名無しさん@入浴中:2013/01/04(金) 09:45:28.61 ID:l3tmtaBo0
まだ続くの?
221 :
名無しさん@入浴中:2013/01/07(月) 21:25:14.52 ID:vxPiDvm30
内容的には終わったように見えるけど、「(続きは次回)」って書いてあるな。
続くの?終わるの?
222 :
作者:2013/01/08(火) 01:23:51.91 ID:myDVsy2xO
こんばんは。お問い合わせ頂きありがとうございます。続きます。今週中にアップいたしますので、
しばらくお待ちくださいませ。申し訳ございません。今後とも宜しくお願い申し上げます。
【小説】「愛の蹉跌」=第36回〜闇に消えた真相〜(エピローグ3)=
江戸川の河川敷で転落死した男性の傍らに佐山治、カリスマホストでタレントの小田輝義。そして、
小田の連れの女性がいた。小田輝義は、茫然自失とし、ガクガク震えている。小雨になったとはいえ、寒い冬の深夜であった。
女性がとっさに携帯を取り出す。と、佐山治がそれを制止した。(佐山治)「ほな、どこに電話するんや?」
(女性)『決まってるでしょ?警察と消防です。救急車呼ばないと!』(佐山治)「やまときなはれ。わいが黙ってりゃ事故は露見せんやろ。」
(小田)『えっ?な、なんですって?』(佐山治)「わいの車、右前輪タイヤがパンクしてもうたんや。で、あんたらが来る前から、土手に停車しとったと。」
(小田&女性)『・・・・ ・・・・』(佐山治)「ええか?察に連絡されると。疑われるのはこのワシなんやで?
あんたらがさっさと立ち去ると。わいはタイヤ交換終わらせてさーっと逃げると。それでええやんか。」
(小田)『し、しかし、そ、それはあまりにも・・・』(佐山治)「ええから、わいの言うとおりにせえや。」 佐山治は、男性
が小田輝義であること。これに未だ気付かないフリをしていた。(佐山治)「さあ!時間の無駄やで。はよう逃げんかい。」
(小田)『はぁ、分かりました。そうします。じゃあ有難うございました!』(佐山治)「おっと。ちっと待て。
あんたらが去ったあと、もしかしたらパンダ(パトカー)が通るかも知れへん。わいは絶対にあんたらのことはしゃべらん。
が、一応な、何かあった場合のことを考えてや、あんたの連絡先を教えてくれや。」(小田&女性)『えっ?はぁ。し、しかしですね・・・』
(佐山治)「そやから、万が一のときのためや。このまんま事故が露見せんと、それで終わりゃ、わいから連絡したりせえへん。約束する。」
こうして、佐山治は、小田輝義の連絡先を入手した。してやったりである。・・・(それから1週間後)・・・・・(小田)「はい小田です。」
(佐山治)『お〜小田輝義くんかい?』(小田)「は?あなた誰ですか?」(佐山治)『なんや?てめえその口の聞き方は!江戸川の事故、バレへんかったな(笑)。』
(小田)「あっっ!あなた、あの時の・・・」(佐山治)『ウホホ!思い出したかい?』(小田)「そ、そ、そうです、な。ん?あなた、
なぜ僕の名前を知っているのですか?」(佐山治)『へへへ(笑)。ワイはな、あの日、てめえの顔みてすぐ気付いとったわい!なあカリスマホスト君よぉ!』
(小田)「・・・・・」(佐山治)『とりあえず100万円や。100万俺によこせや。』(小田)「な、なんですって?!そ、それはユスリじゃないか!」
(佐山治)『なんや貴様!なんならあの事故を世間に公表したるで?ええんか?
救急車を呼ばずに被害者を救護せずに置き去りにしおって。お前がやったことは犯罪やないかい!口止め料や。』
(小田)「そ、それはあなたがそうしろと。そう言ったからじゃないか!」(佐山治)『ほ?何を言うとんねん。
わいはそんなこと言った覚えはないわい。あんたの車のナンバーちゃんと控えておるんやで!
わいが警察にいってばらしたらあんた捕まるでな。ええんか?こらっ!』こうして佐山治は、
小田輝義という‘金脈’に食い込むことにまんまと成功した。以後、小田輝義は、毎月、
多額の金を佐山治に搾りとられることとなる。そして、悪運はさらに佐山治に味方する。隠蔽された‘事故’
から半年弱の2009年5月。吉原エンペラーの弥生(本間恵美子。別人の「岡野芙美江」になりすました女)を
1人の客が初めて指名した。・・・
227 :
名無しさん@入浴中:2013/01/14(月) 01:23:24.62 ID:/LNPyr4WO
〔安羅木(やすらぎ)一郎〕「それではお待たせ致しました。ご案内となります。本日の御指名御来店まことに有難うございます!
どうぞ御時間までごゆっくりお過ごし下さいませ!」(弥生こと本間恵美子)「いらっしゃいませ〜お部屋は2階です。」・・・
弥生は、その客と個室で対面したまさにその時、血の気が引いていった。(弥生こと本間恵美子)「あっ!あなた!」
(佐山治)『へへへ(笑)われ覚えとるか?わいのこと。おめえ吉原で働いとるとはなぁ。このあいだ店でおめえをアルバムで見つけてな。
いやー偶然やった。てめえの彼氏の小田輝義くんには世話になっとるでな!ま、よろしゅう伝えておけ!』
そう、あの日、江戸川河川敷で事故を起こした小田輝義。彼の連れの女は、弥生こと本間恵美子だったのだ。・・・(次回に続く)
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【小説】「愛の蹉跌」=第37回〜闇に消えた真相〜(エピローグ4)=その後、佐山治は、たびたび吉原エンペラーに来店し、
弥生姫(本間恵美子)を指名したのだが、実は、佐山は彼女からも金銭を喝取していた。
本間恵美子は、金をゆすり取られていた小田輝義のため、佐山の要求に応じざるを得なかったのである。・・・
(小田輝義)「なあ、恵美姉ちゃん。俺どうなっちゃうんだろう!あいつ(佐山)にこのままずっと恐喝され続けなきゃいけないのかよ!
なあ助けてくれよぉ(泣)!身の破滅か?それだけは勘弁だよぉ!(泣)」小田の自宅である渋谷の超高級マンション。
そこで小田は、本間恵美子に泣きついた。本間恵美子は、小田より年上だ。恵美子は、昔からホスト遊びが大好きであったが、
とりわけ小田にぞっこん惚れこんだ風俗姫の1人である。(本間恵美子)『なに言ってるのよ!男が弱気になってどうすんの!
せっかくここまで来たんじゃない!立ち上げたホストクラブは売れ行き絶好調。あなたは今や元カリスマホストの実業家なのよ。
タレントのお仕事も増えていて、これから芸能人としても出世しなきゃいけないの!』(小田)「うん・・・(泣)・・・」
(本間恵美子)『何とかしてあの豚オヤジ(佐山治)を始末する。これしかないわ。』(小田)「えっ!い、いまなんと?」
(本間)『始末するのよ!分からない?消す、つまり殺すしかないってことよ!』(小田)「ええっ(驚)!そ、それは・・・」
(本間)『他に何か方法がある?あいつは相当執念深い豚ジジイだわ。このまんまずっとお金を絞り取られ続けられる。そんな人生なんて考えられない。
あの江戸川の事故の夜。やっぱりね、警察に110通報すべきだったのよ。もう遅いけどね。』(小田)「ど、どうするんだ?恵美姉ちゃん・・・」
(本間)『作戦を練るしかないわね。佐山を殺害する。完全犯罪を実行するの。私がぜんぶ筋書き考えるから任せな。あなたはホスクラ経営とタレントの仕事。
これだけに集中するのよ!いいわね分かった?』小田輝義は、本間恵美子の前でただただ頭を下げ泣きじゃくるだけであった。
231 :
名無しさん@入浴中:2013/01/27(日) 00:33:53.90 ID:QuEzZOjJO
その後、本間恵美子は、興信所を使い、佐山治の過去を徹底的に調査する。戸
籍、身上、犯罪歴調査。それも、
怪しまれないように複数の興信所や個人の探偵事務所を使い分け別々に依頼した。彼女が着目したのは、
佐山治の犯罪歴である。案の定、予想通りというか、佐山には多数の前科前歴があった。そして、27年前、
佐山が少年時代に犯した横浜鶴見の殺人事件の全貌を知ることとなる。本間恵美子は、さらに、この事件の被害者と
その遺族の調査を興信所に依頼。殺害された被害者の娘である「岡野芙美江」を知るところとなった。
『自分が岡野芙美江になりすます。無関係の第3者を使って佐山を殺害させるのは?どうかしら?』すると、
1人の男が本間恵美子の脳裏に浮上した。そう、吉原エンペラーのマネージャー、安羅木(やすらぎ)一郎である。
得体の知れない不器用そうな男。暗い過去の持ち主なのは間違いなさそう。彼は、自分に好意を
もっているのも確かだろう。さて、どうやって奴をおびき寄せるか・・・清楚系の美形と評される吉原きっての人気姫。
しかし、その正体は、底知れぬ恐ろしい魔女だったのだ。(続きは次回)