「公然」とは、多数または不特定のものが認識し得る状態をいう。たとえその当時見聞者が皆無であったとしても、
公然事実を摘示したものということを妨げることはできない。 会議室やトイレでの会話など、少数であってもそれらの者がしゃべって伝播していく可能性があれば、名誉毀損罪は成立する。
いわゆる「公然」とは秘密でない行為を指称し、多数人の面前において人の名誉を毀損すべき事実を摘示した場合には、
その多数人が特定しているときであっても、その行為を秘密ということができない場合は公然ということを妨げることはできない。
道路通行人にも容易に聴取れる状況の下で怒鳴った場合には、公然でないとはいえない。
「名誉」とは、通説はこれを外部的名誉、すなわち社会に存在するその人の評価としての名誉(人が他人間において不利益な批判を
受けない事実で人の社会上の地位または価値)であるとする。これに対して、同罪の名誉とは、名誉感情(自尊感情)であるとする説がある。
この説によれば、法人、あるいは法人でない社団もしくは財団に対する名誉毀損罪は、論理的には成立し難いこととなる。