【姫の話】吉原セリアオペラ【大歓迎】part31

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621援護団 ◆UJ5vO5tTGM

《疑惑の城R》

平成3年(1991年)春のある日。資金繰りに一息ついたオーナーは銀座高級クラブホステスの桂子と
隅田川遊覧船に乗っていた。快晴に恵まれ、船は千住大橋〜白髭橋、言問橋、桜橋の下をゆっくりと
東京湾に向けて南下していく。隅田川沿の桜は満開。絶景であった。苦境を脱したオーナーを桜が祝福している。

「これほどの開放感を味わえるのは久々のことだ。神様は俺を見捨ててはいなかった。これからまた新たな人生が
始まるんだ。」

数々の苦難や修羅場をくぐりぬけ、激戦地吉原でやっと自分の城をもてたオーナー。
借金ごときで簡単に倒れるほどヤワな男ではなかったのである・・・・・・・・。

「最近、石川二代目からはぱったりと連絡が来なくなった。大丈夫だろうか・・・昨年末に会長職を稲畑会初代の息子である
稲畑裕考氏に譲ったらしいが。心配だな。テレビでは佐川急便事件が騒がれ石川二代目の名が取りざた
されてるが、こんなのは大した問題じゃない。あの御方なら乗り切れるだろう。」

それからオーナーは東京お台場にある桂子のマンションに入り浸るようになり、お台場から吉原の店に通勤するのが
常態化していった。店の経営は相変わらず好調。風俗雑誌の取材が頻繁にあり、「稼げる店」ということで姫の応募も
絶えることは無かった。愛人桂子との甘い生活、そして順調に推移するビジネス。
「そろそろ第2、第3の愛人が欲しいもんだ。」
(つづく)
622援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 15:39:08 ID:f5NHf4aR0

そして夏の暑さが和らぎ始めた9月のある日・・・・・・・・。

午前9頃桂子の自宅マンション電話が鳴る。

「おい桂子!電話だぞ。」
「んーーーーーーーー。あなた出てよ!!!」
「ちぇっ。しょうがねえな。」

パンツ一丁姿のオーナーはダブルベッドから身を起こし桂子のガウンをはおり電話へと急いだ。

「もしもし」
相手は店のマネージャー玉袋だった。早口でまくしたてる。
「ああ、社長。玉袋です。早い時間にすいません。先程ですね、横須賀の鬼原さんという人から店に電話がありました。」
「お・に・は・ら・ ・・・・・・?」
「ええ鬼原さんという方です。」

あっ!!石川二代目の秘書の鬼原だ!身長が2メートル近くある大男のあいつだ!

「え?その鬼原さんが僕に電話が欲しいと?ん。分かった。至急だね?了解。ありがとう。夕方に店に顔出すから。頼んだぞ。」
「はい社長。今日も出勤姫のほとんどが口開けからラストまで予約でうまってます。社長はゆっくりしてらして下さい。」

そしてオーナーは石川二代目の自宅に電話をかける。
(つづく)
623援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 15:39:38 ID:f5NHf4aR0

「・・・・・・・モゴモゴ・・・・・・モゴモゴ・・・・・はい、石川企画です。」
「あっ、鬼原さん。ご無沙汰しています東京浅草の○○です。その節は御世話になりました。電話を頂いたそうですね?」
「モゴ・・・モゴ・・・・実は・・・・親方様が・・・・・・モゴモゴ・・・・・・・」
「????鬼原さんちょっと聞こえないのですが。石川二代目がどうかされましたか?」
「モゴモゴ・・・・・・・親方様が危篤なんです。モゴ・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「すぐに・・・・モゴ・・・信濃町の慶洋義塾大学病院に行ってください。モゴモゴ・・・・」

オーナーは頭の中が真っ白になった。あの石川二代目が?危篤?ウソだろう?

「あなたどうかしたの?」
ただならぬ雰囲気を察したのか桂子が呆然と立ち尽くすオーナーの後ろから声をかける。

シャワーも浴びずにオーナーは着替えそのままマンションを飛び出しタクシーに乗り込む。
「信濃町の慶洋義塾病院だ!大至急!急いでいってくれ!!」
「かしこまりました。」

タクシーは猛ダッシュをかけ発進し桂子のマンションを後にした。


《次回につづく》
624名無しさん@入浴中:2009/07/12(日) 16:50:22 ID:ZOjdy0XtO
>>621
これはマルチポストになるのではないでしょうか。
625援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 16:58:50 ID:f5NHf4aR0

《疑惑の城S》

信濃町の慶洋義塾大学病院前には警視庁機動隊員や警察官が大勢おり、
「毎朝新聞」「読買新聞」をはじめ主要マスコミ記者も詰めかけていた。
===佐野急便事件の真相。稲畑会・石川前会長危篤!====
この日の朝刊の1面トップ記事を飾っていた。

もちろん、一見して「それ」と分かる稲畑会の親分衆もあちこちに散見され、その周りを
ごっつい体格のコワモテ子分達が囲みしっかりとガードしている。

オーナーは受付に急いだ。

「すいません。私は○○といいます。こちらに入院している石川進一さんの友人です。」
「しばらくお待ちください。」
病院の事務員が内線電話で誰かと話しているようだ。病室にいる稲畑会関係者に
自分を病室に訪問させてよいかを確認しているのだろう・・・・・。
「お待たせしました。エレベーターで5階にお上がり下さい。エレベーター前で石川さんの
知人がお待ちするそうです。」
「あ、ありがとうございます。」

オーナーはエレベーターホールに駆け足で向かった。
(つづく)
626援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 17:15:11 ID:f5NHf4aR0

「石川二代目から遺言を賜っています。ご安心ください。石川亡き後○○さんのことは私、角山が全力でバックアップします。」

そう角山がオーナーに話しかけても、オーナーは石川をずっと無言のまま凝視していた。
そして、オーナーは石川に擦り寄り手を軽く握る。すると、石川は力強くオーナーの手を握り返した。
驚いたオーナーは石川の目を見る。石川もオーナーを見つめていた。

「○○よ。すまん。俺はもう何もしてやれんようになってしまった・・・・(泣)・・・・」
石川はそうオーナーに語りかけている・・・・オーナーにはそう見えたのだ。

角山がオーナーにまた静かに語りかける。
「○○さん。石川二代目、いや親方様は昨年の貴殿の30年ぶりの訪問を本当に喜んでおられました。
30年前、貴殿が横須賀の港湾現場で必死に働いていた頃、わが横須賀一家は総勢50人足らずの小さな組織でした。
今は全国各地に拠点があり、組員数は2,000へと巨大化しました。でも、親方様は昔の一家のほうが良かった、懐かしいと口癖のように
おっしゃっておられた。貴殿が横須賀におられた、あの頃のアットホームな一家。親方様の若き青春時代の良き思い出だったのです。」
(つづく)
627援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 17:16:11 ID:f5NHf4aR0

「うう・・・(泣)つ、つ、角山さん。ちょっと失礼!!!!」

オーナーは目頭が熱くなり、病室を飛び出しトイレへと駆け込んだ。そして号泣した。・・・・・・

オーナーは複雑な家庭環境に育ち、中学を卒業してすぐに家を飛び出した。人の愛というものを全く知らない。
------人生とは力であり金である。他へのいたわりや愛など邪道。-----
それが生き馬の目をぬく風俗業界で厳しい生存競争を勝ち抜いてきたオーナーの人生哲学であった。
が、それがどうしたことか。なぜオーナーは号泣したのであろうか?
石川二代目という強力な後ろ盾がなくなったから泣いたのではない。それは確かであった。
人の優しさというものをオーナーはこの時50歳にして初めて知ったのであった。

石川進一はその翌朝、家族ならびに稲畑会最高幹部達に看取られながら静かに息を引き取った。享年67歳。
バブル時代にその名を全国に轟かせた超大物ヤクザ。その波乱万丈の人生に幕を閉じたのである。

《次回につづく》

628援護団 ◆UJ5vO5tTGM :2009/07/12(日) 17:17:40 ID:f5NHf4aR0

>>626の前に下記を挿入。

‘ピンポン(音)5階です’
アナウンスがあるとエレベーターの扉が開く。すると、身長150センチ位の超ミニ男がオーナーを出迎えた。
「はじめまして。ようこそおいでになりました。私、石川の部下の角山と申します。」
「こちらこそ!浅草の○○といいます。」
二人は互いに挨拶を済ませ、オーナーは角山から名刺を手渡された。

 稲畑会理事長 
 京葉大熊一家九代目総長
    角山吉宏
 〒・・・・千葉県船橋市・・・・・

この超ミニ男は若い頃石川二代目のもと横須賀で修行をし、その後、千葉県船橋市にある組織を継いだ人物であり、
三代目体制になってからは稲畑会ナンバー2に昇格した。

「親方様より○○さんのことは全て伺っております。では病室に行きましょう。」

2人は5階のVIP専用個人病室へと向かった。

「脳腫瘍がみつかり手術を受けましてね。一時期快方にむかったのですが、残念ながら昨日様態が急変しました。」
角山がオーナーに話しかける。オーナーは病床に伏す石川を一瞥し言葉が出ないほどショックを受けた。
石川二代目はふさふさとしていた白髪はすべて抜け落ち、人口呼吸器に覆われた顔は骸骨の如く痩せこけていた。
死相が如実にあらわれている・・・・・・。
(つづく)