創薬分子が天然から採れた!!と思ったら・・・な話/たゆたえども沈まず-有機化学あれこれ- 2014年09月14日
http://orgchemical.seesaa.net/article/405374458.html ※抜粋です。全文はソースにて
去年の末頃にこんな論文が発表されました。
Occurrence of the Synthetic Analgesic Tramadol in an African Medicinal Plant / De Waard, M. et al. ACIE 2013, 52, 11780
http://dx.doi.org/10.1002/anie.201305697 トラマドールという鎮痛作用のある合成医薬(μアゴニストのオピオイド鎮痛
剤)がアフリカ、カメルーンの薬用植物から単離、構造決定された、という論
文です。
トラマドール(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%BC%E3%83%AB (中略)
確かにトラマドールはあったのですが、どういうわけか同じ種類の木から採
っているのにトラマドールの含有量が報告より少なかったり、そもそもその量
がサンプルごとでバラバラで、トラマドールが含まれていないモノも。しかも
季節ごとどころか、どういうわけか地域によってトラマドール入りが多かった
り、一方では全然トラマドールが見つからないという謎な結果になりました。
さらに、なぜかトラマドールそのものではなく、哺乳動物がトラマドールを摂
取した際に生じるトラマドール代謝物まで発見されるという事態に。
どういうこっちゃこれ????
というわけで、カメルーンの現地民を調査したところ、驚くべき事態が次々と
発覚したのです。
@農家がトラマドールを過剰摂取していた
トラマドールは鎮痛剤です。一日中、アフリカの超絶な日差しと高温の中で労
働せねばならない農家が地元の市場や路上の売人から購入し(12錠で1ユーロし
ないそうな、現地相場的に安いのか高いのかよくわかりませんが)、摂取すると
のこと。しかも一日の用量的には圧倒的なオーバードーズで。
『一日中働いても疲れを感じない』とかで使ってるそうな。
やべえよやべえよ(((((( ;゚Д゚)))))てかそんな簡単に買えるのかこれ?
と、これだけでいうとアフリカの闇を見ただけになりますが、なんで植物から
トラマドールが出てくるの?ということには答えていません。が、問題はここから。
A 家 畜 に も トラマドールを飲ませてた
( ゚д゚ ) ....は?
論文によると「石臼などの牽引用家畜(牛)が、疲れてへたらないように」投与
してたんだそうで。えーと、トラマドールは人間用なんですが・・・・?もう
ブラックというかなんというか開いた口が・・・
B 競 馬 用 の 馬 にも投与してた
えーと、レースの前にエサに混ぜてあげてたんだってさ。ドーピングちゃうんかこれ。
で、結局どういうことか、というと、
家畜やらの動物にオーバーワークさせるために人間用のトラマドールを投与
→暑いので木陰で涼みがてら、木のそばでジョボジョボ、ブリブリする
→特に乾季で木にトラマドールとその牛代謝物がばっちり吸収される
→化学者「天然の木から創薬化合物、とったどー!」←いまここ
というわけでトラマドールは2次汚染の産物でしたというオチのようで。
いやー、展開が斜め上すぎるでしょこれは(;´Д`)
そしてこんなんまで考えなきゃいけないから物取り大変だわほんと('A`)
しかし冷静に考えてみればこれ、薬による環境汚染に他ならないわけですし、
また雨季になるとトラマドールの含有量が減ってることから水質の汚染の恐れ
も。一方、用法用量を無視した服用に関しても特にトラマドールなどは副作用
もかなりあるので人的影響も相当にあるわけで。このような事例は過去にも
dichlofenacでも知られているようです。
劣悪な労働環境、貧困、教育など様々な要因が絡んだ問題な気がして、衝撃的
な展開の後には色々と考えさせられるものが残った論文でした。