多様性が失われるソーシャルメディア、「沈黙のスパイラル」へ
http://bylines.news.yahoo.co.jp/tanakazenichiro/20140828-00038649/ 田中善一郎 | IT/メディアジャーナリスト 2014年8月28日 12時20分
インターネットの世界では、提供者から消費者へ、また組織から個人へと、主
役がシフトしていくと見られていた。少し前のWeb2.0時代までは、このような
夢物語が現実味を帯びてきていた。個人が発するブログなどが闊歩した時代で
もあり、少数派の意見でも注目されることが多かった。多様な意見が受け入れ
られるネット世界が定着するかのように思えたのだ。
ところがフェイスブックやツイッターなどのソーシャルメディアが本格化する
に伴い、風向きが変わってきた。インターネットの特徴であった多様性が失わ
れてきているというのだ。ここで紹介するPew Research Centerの調査結果でも、
ソーシャルメディアでは多様な意見を交わすことが減り、「沈黙のスパイラ
ル」現象に陥っているとまとめている。ソーシャルメディアにおいて、多くの
ユーザーは反論を交えて議論しようとせず、特定の意見やニュースに同調する
傾向が強まっているというのだ。
かつてはネット上では政治的な議論がますます活発に展開するものと見られて
いた。特にソーシャルメディアにおいては、異質な人たちの間の接触機会が増
え、多様な主張も聞いてもらえるとの期待が膨らんでいた。ところが実際には、
同質の者同士が結集し特定の意見に皆が同調する流れが加速化することがあ
っても、異質な者同士が結びつくことはあまり起こらなかった。それよりも異
質な者との分断を深めてきているのだ。
スノーデン容疑者によるNSA(米国防総省・国家安全保障局)の機密文書暴露事
件を例に、Pewの調査では次のように報告している。
スノーデン−NSA物語について、米国人の86%もが個人的に議論したがっている
のだが、ソーシャルメディアに投稿したいと答えた人はフェイスブックやツイ
ッター・ユーザーの42%しかいなかった。つまり自己主張したくても、ソーシャ
ルメディアでの投稿を遠慮している人が半数近くいるということだ。
次の表は、政府による情報監視問題についての議論に、どのような環境下であ
れば加わりたいかとのアンケート結果(約1年前の調査)である。
→Pewの調査結果を議論する場はどこか。Pewの調査結果
http://rpr.c.yimg.jp/im_siggoJdBPLz2mhBRawthCsB88Q---x280-n1/amd/20140828-00038649-roupeiro-000-3-view.png 約75%前後の人が、リアルな環境(会食時)で家族や友人となら議論したいと答
えていた。一方でフェイスブックやツイッターの場の議論に加わりたいと答え
た人は約40%に過ぎなかった。ソーシャルがリアルの代替になりえていないようだ。
また、Pewの調査スタッフは「沈黙のスパイラル」現象を取り上げた。友達や家
族、同僚に対しても、異なる意見を擁しているようだとネット上でユーザーは
自分の意見を投稿しないようにしているという。またネット上では、異質な人
とつながったり少数意見が広まることを、遠ざけようとする流れも強まってい
るというのだ。異質な意見を排除しようとする動きの中では、皆と同調して静
かに黙っていたほうが無難と言うことか。(中略。全文はソースにて)
ユーザー参加が売りだったWeb2.0時代には、アーリーアダプターやインフルエ
ンサーなどの能動的なユーザーが主導的な役割を演じてきた。その後のソーシ
ャルメディア時代には、圧倒的多数のサイレントマジョリティーが主役になっ
てきた。フェイスブックのいいよ!とか、ツイッターのリツイート、ピンタレ
ストの画像コピペのように、いかにもユーザーが参加していると思わせるソー
シャルメディア・サービスに、多くの人が満足するようになった。実際に、こ
のようなサイレントな受動的なユーザーが爆発的に増えてきているのだ。提供
者側からすればコントロールしやすい消費者といえそう。提供者主導で配信さ
れるバイラルメディアやキューレーションニュースアプリが流行るのも、こう
した受動的なユーザーのお蔭か。まさに「沈黙(サイレンス)のスパイラル」
が進む。