緊急発言:児童ポルノ禁止法改正案の「児童ポルノ」についての定義は最悪だ!
http://bylines.news.yahoo.co.jp/sonodahisashi/20140603-00035969/ 園田寿 | 甲南大学法科大学院教授、弁護士 2014年6月3日 14時8分(抜粋です。全文はソースにて)
児童ポルノ禁止法改正案の審議が、6月4日の衆議院法務委員会で行われること
が決まったようです。今の国会の会期中に、児童ポルノ禁止法改正案が可決さ
れるのはほぼ確実ではないかと思われます。
今回の改正案の焦点は、児童ポルノの単純所持(児童ポルノを購入したり、ダ
ウンロードしたりして、単に所持している行為)を処罰するかどうかというこ
とです。この単純所持の犯罪化についての危険性はすでに多くの人が発言され
ていますので、ここでは「児童ポルノ」の定義についての改正が提案されてい
る点を問題にしたいと思います。
私は、この新しい定義は、児童ポルノ問題について最悪の結果をまねくおそれ
があると思っています。
改正案の具体的な中身については、すでに公になっていますので、問題となる
定義の部分について見ておきたいと思います。
http://taroyamada.jp/wp-content/uploads/2014/05/f7f0f191e6ccf9c3b31f1399957cac8d.pdf PDF:児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案要綱
■児童の「性器な部位が露出され又は強調されている」ことは重要なのか?
(中略)
つまり、上のような定義を採用すると、性的な部位等が「見えなければ」その
ような画像を「児童ポルノ」として規制できなくなり、極端なことを言えば
(名誉毀損等の問題は別として)、まったく合法な画像として流通するおそれが
あるということなのです。このことは、日弁連の意見書に対する疑問だけでは
なく、それに影響を受けたと考えられる改正案にも妥当することなのです。
■改正案は根本的な誤りを犯している。
児童ポルノの問題性は、「性器等」が「見えているかどうか」あるいは「強調
されているかどうか」ということではありません。児童ポルノの問題性は、児
童に対して性的な虐待を行い、それを記録することによって、児童に対する性
被害を恒久化するという点にこそ存在するのです。議論はあまりにも「ポルノ」
という言葉に引きずられすぎています。
レンタルビデオ店に行けば、性器部分等にモザイク処理を施したアダルトビデ
オがあふれています。これらは、18歳未満の者への貸出しや閲覧等が禁止され
る「有害図書」という判断は受けても、刑法のわいせつという判断を受けるこ
となく、いわば合法的に流通しています。[S:日本では、性器等が「見えている
こと」ことがわいせつ(つまり、犯罪)とされるために、日本のポルノは、性
器等を隠して、全体として極めて情緒的に作られています。そのような制作態
度が、結果的にアダルトビデオを世界一わいせつなものにしているのではない
かと思います。:S]
「児童ポルノ」の定義を(性器等が見えているかどうかといった)事実的な問
題に還元する方法は、ある意味、恣(し)意的な判断を排除し、判断の明確性
を保障するものですが、児童ポルノに関してそのような方法を採用することは
間違った方向に行く可能性があります。児童ポルノにとっては、性器等が見え
ているかどうかはまったく問題ではありません。児童に対する性的虐待が記録
されているかどうか、ここが問題の核心なのです。