スマートフォンのSoC 3

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372SIM無しさん
http://www.linleygroup.com/newsletters/newsletter_detail.php?num=4881

iPhone 5が発表された際に、Appleは新しいA6プロセッサに搭載されている
CPUコアの詳細を明らかにしなかった。一方で最近では、AppleはARMから
Cortex-A9や次世代のCortex-A15のライセンスを受けるのではなく、独自にCPUを
設計したという情報が出回っている。AppleがiPhone5用のアプリケーションを
ARMv7sと呼ばれる派生のアーキテクチャ向けの再コンパイルを要求していることは、
A6がA5と同じCortex-A9を使っていないことを示唆している。また、
anandtech.comはA6に使われているCPUはAppleにより独自に設計されたものだとレポートしている。

AppleはA6プロセッサはA5よりも22%小さいとしていることから、ダイサイズは
およそ96mm2と推測される。おそらくA6はSamsungの32nmプロセスで製造されている
ことが予想されるが、確認されているわけではない。iPhone 5は従来の2倍の
GPU性能ということなので、とりあえずA5Xプロセッサと同じ4コアGPUを使っていると
仮定すると、A5Xを32nmにシュリンクしたものは82mm2となり、A6と比べると14mm2小さい。
A5Xのチップ面積のうちCortex-A9が占めるのはわずか7mm2であることから、
14mm2という面積は新しい設計のCPUや新しい画像処理プロセッサ(ISP)を搭載するのに
十分であると言える。

AppleはこれまでのプロセッサではARMからCPUコアのライセンスを受けていたが、
CPUの設計に興味を示した時期は2008年4月にPA Semiを2億7800万ドルで買収した
時まで遡る。この買収で得たものの中にはJim KellerとPete Bannonが率いる高性能な
PowerPC互換プロセッサを開発してきたチームも含まれていた。さらに重要なのは、
このチームのメンバーの何人かは90年代にDigital Equipment (DEC) でPA Semiの
CEOであるDan Dobberpuhlのもとで省電力なStrongARMプロセッサを設計していた経歴を
持っていることである。その一ヶ月後にはAppleは秘密裏にARMのアーキテクチャライセンスを
獲得し、ARM互換プロセッサの設計が可能な企業の一員に名を連ねることとなった。
373SIM無しさん:2012/09/19(水) 17:52:34.88 ID:kk3YjQV5
PA Semiのグループのうち一部はA4プロセッサの開発に携わり、その一方で別のグループは
新しいCPUのためのマイクロアーキテクチャの定義を始めていた。あるAppleのソースによると、
当初Steve Jobsはこの新しいCPUの性能について“insanely great”なものにするよう
目標を掲げていたが、結局Jobsは彼の設計チームといえども物理法則の限界には逆らえない
ことを悟ったという、いずれの理由にせよ、プロジェクトがアーキテクチャの定義をし、
設計を終えるまでには長い時間を必要としたようだ。

その間にPA Semiのトップの人間の何人かがAppleを去っていった。CEOのDobberpuhl、
COOのLeo Joseph、そしてシステムアーキテクチャ部門副社長のMark Hayterである。
しかしPA Semi内でのDobberpuhlとJosephの役割は主にビジネス面で、またHayterは
SoCレベルの仕事をしておりCPUそのものには携わっていなかったので、それほど
重大なものではなかったようだ。KellerとBannonは引き続き開発チームを率いて
設計を続け、Appleは雇用を増やしてチームをさらに大きなものにした。2010年の2月には
ARMフェローでCortex-A8とCortex-A15のテクニカルリーダーでもあるGerard Williamsを
招き入れ、WilliamsはCPUのチーフアーキテクトとなった。Kellerは最近AppleからAMDへ
転職したようだ。

2010年の早いうちにチームはA6のマイクロアーキテクチャの設計を終え、物理設計の
フェーズへと移行した。物理設計能力の強化のために、Appleは2010年4月に1億2000万ドルで
Intrinsityを買収した。この買収によってAppleは高速な回路設計の経験が豊富な
チームを迎え入れた。このチームはSamsungのHummingbird CPU (A4に搭載されたもの)
の高速化を終えたばかりであった。A6はそれからおよそ一年後にテープアウトし、
最初のサンプルは昨年夏にAppleに届けられた。iPhone 5の立ち上げのために、
今年の6月頃には量産を初められる状態になっていたと思われる。

こうして最初のCPU設計が完了したわけだが、Appleはこれで終わるつもりではないようだ。
ARM設計のコアに対抗し続けるために、数年おきに新しいCPUの設計をを継続していく
必要があるだろう。おそらくAppleは既に次世代のCPUの開発に着手しており、
それは64bitのARMv8命令セットを実装していると思われる。この新CPUは2014年までは
出てこないだろうから、2013年の製品は4コア化やGPUの高速化といった構成でCPU自体は
現行のものを頼ることになるだろう。

この時点でAppleは過去4年にわたり、PA SemiとIntrinsityの買収におよそ4億ドル、
ARMのライセンスに数千万ドル、そしてCPU設計そのもののために1億ドルを超える費用を
費やしている。この努力により結果としてAppleはCortex-A15クラスのCPUをSamsungに
3ヶ月ほど先んじて投入できることになった。奇しくもこの3ヶ月の間には書き入れ時となる
ホリデーシーズンを迎え、iPhone 5は250億にものぼる収益をもたらすことになろう。
5億ドルの投資は決して高いものではなかったと言える。