(
>>89,
>>93,
>>105,
>>108のつづき)
若菜の胃の中でパニック状態に陥ったつぶ男たちは、暗闇――少しずつ
目が慣れて来ると、胃壁の裏側を通る血管が発する明かりが胃壁の不気味な
蠢きを照らし出していたが――の中で、自分たちが落ちて来た方向から
「ズザザザザッ」と何かが滑り落ちて来る音を聞いた。
「救援が来たのか?」
つぶ男の中にはそんな淡い期待を抱いた者もいたが、その期待はすぐさま
打ち砕かれ、それどころかつぶ男たちが置かれている絶望的な状況に
追い打ちをかけることとなったのであった。
つぶ男たちの頭上で固く閉ざされていた若菜の噴門がガバッと開き、
大量の食物が乱入して来たのだ。その食物は若菜の白い歯で噛み砕かれ、
唾液でベトベトになっていたが強烈なニンニクの臭いから、その原型が何で
あったかは容易に想像することが出来た――それは、紛れも無くギョーザである。
「うわっ、臭ぇ!!」
ギョーザから放たれるニンニクの臭気は5ミリに縮小されたつぶ男たちの
鼻をひん曲がらせるには十分過ぎる威力だった。若菜の胃には次々とギョーザが送り込まれ、
つぶ男たちは逃げ出す暇も無くギョーザの土壌に埋め立てられて行く。
かろうじてギョーザの土壌を逃れ、胃酸にヒリヒリと手のひらを焼かれながら
胃壁をよじ登る者もいたが噴門までたどり着くのは並大抵のことではない。
「やった!!」
遂に1人のつぶ男が噴門にたどり着き、ぬめる食道をよじ登って脱出しようと足を
ふんばった瞬間だった。
ズザァーッ
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
食道からお茶が流れ込んで、つぶ男を一溜まりもなく押し流してしまったのだ。
数分後、つぶ男は胃の蠕動でギョーザの土壌と混ぜ合わされ、再び噴門に
たどり着くことは出来なかった。