というわけでこっちにも分割して投稿してみます。
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指先一つ動かせない状態で私は息を殺して喘いでいた。
苦しさに僅かでも身じろぎをしようものなら、全身を這い回るつく『あるもの』が実に巧妙に体を締め上げる。
その不自由すぎる感触が最高に気持ちいい。口を塞ぐものに辟易しながら呼吸を繰り返すと、それだけでも身体中から刺激が生じた。
深く息を吐くと少しだけ楽になり、大きく息を吸うと途端に苦しくなる。
それはそれがほんの僅かな隙間もなく私の身体を這い回っていることを示していた。
呼吸を繰り返す度に、私は濃い革の臭いを吸い込むことになる。その革の臭いは、私を興奮させる要素の一つだった。
普段冷静な時に嗅いでも、この時のことを思い出させてエッチな気分にさせてくれるのだから、いまこの時に嗅げばどれほどの効果になるか。
これはきっと私と同じ性癖を持つ人にしかわからない感覚だろう。
そう、性癖だ。
世の中には色んな性癖があるけども、私と同じ性癖を持つ人はそうはいないのではないのだろうか。
少なくとも同好の士というべき人に私は出会ったことがない。
私をこの道に引き込んだ人が、ある意味ではそうと言えなくもないけど、彼はあくまで人をこうすることに喜びを見い出すから、私の側じゃない。
そんな益体もないことを考えていたら、いきなり身体の中から衝撃が走った。
「ひぐっ……!」
思わず身体が震え、体中を這い回るそれにまた身体が締め付けられる結果になった。
それでも突然身体の中に生じたその感触は止まる気配もなく、私を責め立て続ける。
どこまでも私を高めていくその感触に翻弄されるがまま、意識が飛びそうになる。
けれど、不意にその振動が止み、身体の左側面に風を感じた。その不意の感覚に思わず身体を堅くする。
慣れ親しんだ声が降ってきた。
「どうかな? どこか痛いところとか、しんどいところはない?」
柔らかく暖かでこちらのことを案じている声。けれどもその反面どこまでも楽しんでいるような、そんな声が私の耳に入り込んでくる。
それと同時に彼の手が伸びて来て私の口を塞いでいたものをずらした。それだけのことで、私は声を取り戻す。
「うん、っとね……」
私は少し身体を揺すってみて、改めて全身の感触を確かめる。きつくはあるけど、無茶や無理は感じられなかった。
「たぶん……大丈夫。……鬱血とかしてない?」
自分の身体を見れればいいのだけど、今の私にその余裕はない。
そもそも、いまの私の両目は黒い布で覆われていて、光の濃淡程度しか感じとれない。
「外から見える分には異常はないね。いつも通り、綺麗な身体だよ」
そんな風に、言われる方が恥ずかしくなる台詞を臆面もなく口にする彼の声に続いて、カメラのシャッターを切る音がした。
「この写真はまた後で見せてあげるから。めちゃエロくていい感じだよ」
「……そーいうの、恥ずかしいからやめてって言ってるのに」
冷静になった時にいまの自分の姿を見ることほど恥ずかしいことはない。
やられてる最中なら興奮する材料でも、素に戻った時に見せられるのは辛い。
そもそも、私は彼と違ってやられるのが気持ちいいのであって、やっているのを見るのはそんなに好きじゃない。
そんな私の機微くらい理解しているだろうに、彼はただ嫌味に笑うだけ。
また彼の手が伸びて、私の口を塞いでいたものを再び元の位置に戻す。
「むーっ!」
抗議の声をあげようとしたけど、当然その声は口を塞いでいるものが吸収してしまった。
「ごめんごめん。そろそろ時間だからさ。準備しないと」
彼は本当に楽しそうな声で言う。
「荷物の引き渡しはちゃんと時間通りにしないとね」
宅急便に頼んだ引き取りの時間が迫っているようだった。それまでに荷物の準備をしておかなければならない。
その荷物というのは、私なんだけど。
私達が出会ったのは極普通の合コンだった。
その頃はまだ気の合う相手というだけで、合コンが終わった後にもたまに連絡を取り合っていただけの間柄だった。
ある時、仕事で色々あって私が落ち込んでいた時に、優しくしてくれた彼に靡いてしまったのは我ながら軽いと思う。
けれどもきちんと付き合っている内により気が合うことがわかり、結果としてそれは良かったのだけど。
ある日、何度目かの行為の最中に彼は特殊な性癖について話して聞かせてくれた。
それはいわゆるSMプレイの延長のようなもので、彼は女の子を閉じ込めてしまうことに喜びを感じる性質だった。
最初はあまりいい気はしなかったけれども、それだけ私を信じてくれていることなのかと思い、悪い気もしなかった。
試しに、ということで大きな段ボールの中に詰められてみてあげることにした。
それが全ての始まりだった。
大きめの段ボールとはいえ、人が一人入れば当然狭い。
裸の身体を丸めて段ボールの底に落ち着くと、自然と身体の奥が熱くなるのを感じた。
そんな馬鹿なと思っていると、彼は柔らかくて軽い毛布を箱の隙間に詰めてきた。
そうすることで、余裕のある空間がなくなり、全身を暖かな毛布に包まれているような状態になる。
当然少し息も苦しくなるのだけど、それ以上に心臓が跳ね回って苦しかった。
そして、箱の蓋が閉じられ、視界が暗闇に閉ざされてしまった。
何も見えない状態では身体の感覚に集中するしかなく、窮屈で苦しいその状態がはっきりと自覚出来た。
さらに速くなる鼓動に、心臓が破れてしまうんじゃないかと心配になった時だった。
ガムテープを伸ばす音がして、蓋にそれが貼られたのは。
詰められることはOKしたけど、まさか蓋をガムテープで閉じるとまでは思っていなかった。
閉じ込められる、と思った瞬間、私の心臓は一際大きく跳ねて、そして、身体の奥に感じる熱は最大に高まった。
あまりに突然だったからその時の私に自覚はなかったけど、多分あの時私は絶頂していたのだと思う。
不自由な手を動かして段ボールの中から蓋を押し上げようとしたけど、ガムテープで止められた蓋はちょっとやそっとじゃ揺るがない。
後から彼に聞いた話だと、凄く扇情的な呻き声が聞こえてびっくりしたのだと言う。
箱から出た後、股間の辺りにあった毛布がお漏らししたみたいに濡れていて、それだけ感じていたことを実感した物だった。
その後、私は箱詰めにされる快感に病み付きになっていった。
彼が用意する色んな箱に、色んな体勢で詰められてみた。
ごく普通の体育座りの状態で入ってみたり、そこから横向きになってみたり。
平たい箱に合わせ、身体を開いたM字開脚の状態で詰められて見たり。
短時間だったけど頭を下にしたまんぐり返しの格好を試してみたり。
細長い箱にミイラみたいに全身をフィルムで巻かれた状態で入ってみたり。
途中からはただ箱に詰められるだけじゃなく、色んなおもちゃを身体中に装備するようになった。
バイブやディルドをあそこの中に入れたり。
首輪はもちろん、手枷足枷なんかも付けたり。
ラバースーツみたいな特殊な服を着てみたり。
全身を緊縛された状態で袋に入れられ、その上で詰められたり。
そうして多種多様な詰められ方を楽しんでいる内に、私達はさらにエスカレートしていった。
指先一つ動かせない状態での『箱詰め』が当たり前になった頃、彼は私を台車の上に載せた箱の中に詰めた。
きちんと箱をして外から中がわからないようにすると、そのまま家の外に運び出した。
箱越しに外の気配が感じられて、物凄く興奮したことをいまでも覚えている。
最初の頃は段ボールに詰められてだったけど、やがてそれはスーツケースに変わった。
スーツケースなら外で持ち歩いていても不自然ではない。
もちろんスーツケースにただ詰められたら窒息して死んでしまうから、改造にそれなりの苦労はあった。
それを乗り越え、引きまわされた時は、異常なほどに興奮したものだった。
そんな風に、私と彼は詰められる側と詰める側で『箱詰め』プレイを楽しんでいた。
ある時、彼はこんな提案をしてきた。
「ねえ、もっとスリルがあって、興奮するであろうプレイをやってみない?」
いつもなら、新しいプレイをする時には、準備を全て整えた上で私に話を持ちかけてくる。
事前の相談があるというだけで、私はきっといつもとは一線を画した話なのだろうと察していた。
そしてそれは正しかった。
彼の提案してきたプレイ、それが『業者に郵送される』プレイだった。
いままで、私を外に運び出していたのは必ず彼で、他人の手を借りることはなかった。
それは安全面の問題があるからで、厄介なことになりかねないからだった。
そんなリスクを見据えた上で、彼は提案してきたのだ。
確かに、箱の外に他人の気配があるだけで物凄く興奮するのは実証済みだ。
それが外に『いる』だけではなく、自分の詰められた箱に『触れてくる』と思うだけで激しく興奮する。
けれども、それが危険な行為であることは明らかだった。
業者の人は箱の中に人が詰められていることなんて知らない。
それはどんな風に扱われるかわからないということである。
その上、もし万が一トラブルに巻き込まれた際のリカバリーが利かない。
最悪、命を落とす危険もある。そもそも人間の輸送を業者に頼む時点で犯罪行為に等しい。
発覚すれば社会的に終わるかもしれない、危険極まりないプレイ。
だからこそ。
私は、私達はそのプレイに踏み切った。
彼の手によって、私はいつもと変わらない徹底的な拘束を身体に施された。
最初に色々なおもちゃを身体に取りつけて行く。
乳首にはローターを張り付け、あそこには遠隔操作のバイブを入れ、乳首とクリトリスには絞り出すキャップを取りつける。
それだけでも生み出される快感は凄まじい。
口には言葉を奪うボールギャグを噛まされ、その上からタオルで覆われる。
これは涎が外に零れて箱が痛まないための対策であり、必要以上に口の中が乾かないようにするための措置だ。
首筋には首輪を巻き、南京錠で外れないように止めてしまう。
これは別に箱詰めには関係ない要素だけど、彼はこういうのも好きらしいので付き合ってあげている。
首筋にも圧迫が感じられるのは良かったし。
両手を後ろで重ねて縛り、胸の上下に通したベルトで腕ごと締めあげられると、もう私の両手は動かない。
手の先は指の無い手袋でがっちり覆われているため、本当に指先一つ動かせないようになる。
さらに両足は膝を曲げた状態で両足を纏めて革ベルトで固定される。
元々逃げる気もないけど、これで絶対に逃げられない。
限界近くまで身体を丸めた状態でさらに上からベルトが巻かれる。
これで私は身体を伸ばして曲げてを繰り返すことによる移動も出来ない。芋虫以下になった。
目隠しも施されて、私は本当に呻いて感じるだけの存在に変えられる。
そんな私を彼は苦労して持ち上げて、緩衝材を詰めた箱の中に入れる。
緩衝材はクッションのようなものだから、私の身体に合わせて形を変え、まさに隙間のない圧迫感を生み出してくれた。
ちなみに吸水性も十分あるらしく、仮に私が漏らしても大丈夫らしい。漏らしたくはないけど、やむをえない時に備えておかなければならない。
窒息しないために多少の余裕は見ているそうだけど、箱の蓋にも緩衝材は取りつけられていて、蓋を閉めると私の身体は余すところなく詰められる。
その全身を圧迫される感触が最高だった。
これだけでもいつもなら十分なレベルの箱詰めプレイだけど、今回はその先がある。
私はこれから顔も知らない人の手で遠くまで運ばれてしまうのだ。
危険に対する忌避感と人を騙す罪悪感。
そんなネガティブな感情を覚えないでもなかったけど、それ以上に私は興奮していた。
どれほどの快感を覚えられるのか、私の胸は期待で一杯だった。
449 :
名無し調教中。:2012/11/19(月) 00:17:46.54 ID:zsT8Y/tp
完全に蓋が閉じられ、普通に聞こえていた外の音が小さくなった。
彼が箱の壁面を触る音がやけに大きく響く。
少し長い時間が経った頃、準備が完了したのか、彼の手が箱から離れていったようだ。
「聞こえてる、かな? 準備完了だよ」
くぐもった彼の声が外から聞こえてくる。
「ちょっと声が外にどれくらい聞こえるのか知りたいから、声をあげてみてくれない?」
いまさらの確認ね、とは思いつつ、私は請われるままに大きく呻き声をあげてみた。
ボールギャグをされてタオルで覆われているとはいえ、ボールギャグは完全に声を奪うような器具じゃない。
自分が感じる限りでは案外大きな声が出た。窮屈な体勢で出したにしては大きすぎる声だ。
かなり外に聞こえてしまっているんじゃないかと不安に思う。
「もう一回」
彼の声に従ってもう一度声を上げる。少し間があって、彼の声が再び聞こえた。
「うん、静かな場所だとかなりはっきりと聞こえるね。きついかもしれないけど、人が近くにいる時は声をあげちゃダメだよ」
やはり声は外にまで聞こえてしまっているようだ。
箱に詰められた私は、本当に大丈夫なのだろうかといまさらながら不安になる。
その時、玄関チャイムが鳴り響いた。
続く
450 :
名無し調教中。:2012/11/19(月) 00:20:28.09 ID:zsT8Y/tp
最後タイトル入れるの忘れたw
とりあえずここまで。
ほとんどピクシブに上げたのと同じだけど、一部文字数の関係で削ってます。
IDが途中から変わってるのは、連続投稿制限に引っ掛かったから。
こんな感じで大丈夫だったかな?
アドバイスなどなどあればぜひ。
続き頑張ります。
451 :
名無し調教中。:2012/11/20(火) 00:10:17.87 ID:uTJWCcBm
つC
すげえ興奮する!
チャイムを鳴らしたのは、宅配業者の人だった。
彼がそちらの方に向かって歩いていく音がする。
遠くで微かにドアが開いたような気がした。
私は窮屈に押し込められた状態のまま、心臓が大きく音を立てているのを感じる。
まるで体中が心臓になってしまったかのように、鼓動が耳元で響く。
『いやー、わざわざすいませんねぇ。ちょっと重くてね……』
よそいきの彼の声が聞こえてくる。
『全然いいっすよ』
聞こえてきた知らない人の声。若い男の人だとあたりはついた。
いまどきの人らしく、どこか口調が軽い。
『これッすか? うわ……ほんとでかいデスね』
これまでもプレイ中に外から声が聞こえてくるという経験はあった。
けれども、それはただ聞こえてくるというだけで、こんな風に自分に意識を向けられることはなかった。
気付かれたらどうしよう、なんて。いまさらながら恐怖心が湧いてくる。
けれどもそれと同時に、どうしようもなく興奮してしまう自分も感じていた。
『台車とか用意してた方がよかったかな? ……人一人分くらいの重さはあるけど』
笑いながら口にしている彼の顔が目に浮かぶようだ。
本当に人間が一人分入ってるわけだし、なんとも的確な説明だと思ってしまう。
実際には道具などの分もあるからもっと重いだろう。
『何キロくらいっすかね? 50キロ?』
『70はあるんじゃないかなぁ……』
正確な物ではないとはいえ、自分の重さを言われているようでなんだか恥ずかしい。
『ま、二人で来たんで大丈夫っすよ。それじゃ運び出しますねー』
業者の人がそう言うのが聞こえて、箱の外に衝撃が走る。そして、ぐらり、と身体全体が揺れるのを感じた。
持ち上げられたんだ。
(〜〜〜っ!)
なんとか声を出さないように努める。酔いには強いからその意味での心配はしなくていい。
だけど、浮遊感というこの感覚は、中にいるものとしては溜まった物ではなかった。
さらに意地悪なことに、突然身体の中に埋め込まれたバイブが動き始める。
(んぁ……っ、ぅ……ッ!)
彼がよりにもよっていまバイブを動かしたのだとすぐ察する。
(ちょ……っ、何も、いま動かさなくてもいいじゃない……!)
逃げ場のない狭い箱の中で、私は声を出さないようにその震動に耐えなければならなかった。
身体を動かすことが出来ないから、衝撃を紛らわすことも出来ず、ただただ身体全体が震える。
外にはそんな私の動きは伝わっていないようで、箱は奇妙な浮遊感を保ったまま動き続けた。
私は、ひとまず家の外に運び出されたらしい。
遠くの方で車が動く微かな音が聞こえているし、周りの雰囲気もどことなく変わった。
こんな姿、いや、こんな状態で外に運び出されたのだと思うと、ドキドキが増す。
それも今回は全く見ず知らずの人間にこれから長い時間をかけて運ばれるのだから。
興奮しない訳がない。
バイブによって肉体的にも興奮されられて、私はもう早速気をやりそうになっていた。
『一端降ろすぞー』
そんな業者の声が聞こえたかと思うと、箱が地面に降ろされる衝撃を感じた。
梱包材が衝撃を緩和してくれるとはいえ、やはり身動き一つ取れない状態での衝撃は辛い。
受け身も取れずに地面に叩きつけられるよう、とまではいかなくても、キツイものはキツイ。
『あー、大事に扱ってくださいね。頼んだ通り、壊れ物なんで』
外の彼から見ても少し扱いが乱暴だったのか、そんな風に注意する声がする。
『すんません。それじゃあ、後は任せてください』
『ええ、宜しく頼みます』
彼が離れて行くのが分かる。ここからは彼のフォローがない。
そう思うと、不安で身体の奥が縮こまる。
私は持ち上げられ、トラックの後ろに運び込まれたみたいだった。降ろされる時はまた少し乱暴だった。
本当に荷物として扱われているのだと改めて感じる。
金属が打ちあわされる大きな音がして、扉が閉まったらしい。
そうなると辺りは急に静かになり、少し余裕が出来る。
私はもぞもぞと身体を動かそうとしてみるけど、全身の拘束がそれを全く許してくれない。
むしろさらに全身を締めつけて来ている。錯覚なのだろうけどそんな風に感じた。
やがて車が動き出したのか、細かな震動を感じるようになった。角を曲がる際の慣性の力も感じる。
こうなってしまうと、あとはもう黙っておくことしか出来ない。
時折思い出したように動くバイブに翻弄され、時々止まって新しい荷物が積みこまれる度にドキドキして。
時間の経過も分からず、快感に浸っていた。
頭はぼーっとしていたし、身体は汗ばんで喰い込む拘束具の感触がよりよく感じられた。
安心できるような環境ではないはずなのに、全身を包み込む圧迫感が心地よい。
私のあそこはバイブの震動によって直接刺激を与えられているということもあって、濡れ切っていた。
見るまでも触るまでもなく、これまでにないくらい濡れていることがわかる。
熱い感覚があそこから頭の先までを貫いているようで、喘ぎ声が外に漏れないか気になった。
このエリアでの荷物の集配が終わったのか、これまで頻繁に止まっていたトラックが一気に動き始める。
高速道路にでも乗ったのか、カーブなどで全身にかかる負荷もなくなった。
さすがにこうなると変化がなくて暇だな、と何気なく思った時。
突然、身体の中でバイブが激しく暴れ出した。
「ひぅ、っ……ッ!」
これまでの震動が弱にしか過ぎなかったのだと私は今頃察する。
身体を縮めて、全身を拘束されていたからこそ、弱い振動でも強く感じられていた。
それは、以前にバイブ入りで詰め込まれた時にわかっていたことのはずだったのに、すっかり失念していた。
油断したところに襲いかかって来た凄まじい快感に、私は天に昇るほどの感覚だった。
「んんんんんん〜〜〜ッッ!!」
噛まされたボールギャグを噛み締めて声を耐えようとするけど、歯を食い縛れないためにどうしても声が漏れる。
いま外には誰もいないはずだから平気。そんな風に思っても、無駄だった。
高まる快感に私はどうしようも出来ず、抗うことも出来ない。。
「んあっ、ああっ、あッ、んぅっ」
快感のあまり身体が痙攣し始める。
あそこの中で生じる最大の衝撃の影響で、まるで身体全体がバイブになってしまったかのようだ。
体中が快感を覚えるポイントになってしまったのだろうか。そんなことを考えてしまうくらいに激しい快感の渦。
しかもバイブは震えるだけではなかった。
私はこれから始まるプレイに意識が行っていて気付いていなかったけれど、そのバイブは新型だった。
ぐねりぐねりと身体の中でバイブが蠢き始める。それは身体の中をかき乱されるのと変わらなかった。
「んお、ぅっ!!」
身体を開いて身体の中で蠢くそれの感覚を外に逃したいけど、今の私は身体を縮める体勢から動けない。
明確に、明瞭に、身体の中で前後するバイブの感触が伝わって来る。
あまりにもはっきりしすぎていて気持ち悪いくらいだった。
けれども、理性としてはともかく、そのはっきりとした感覚は一段階上の快感を生じさせる。
「んぁ、んあッ!」
一際激しく不自由な身体が痙攣して――私はおしっこを漏らしてしまった。
じわりとおしりの周りが暖かくなってくる。箱の中に充満する尿の匂いが外に漏れないだろうか。
箱の外までシミが広がったら、中に何かがあると気付かれてしまうかもしれない。
そしたら、警察に通報されて、全てが明るみに出てしまう可能性もある。
そんなことを、私は遠くなる意識の中で思っていた。
パチン、パチン、と金具の外れる音が響く。
その音によって、私は意識を取り戻した。頭の中は朦朧としていて、いまの現状が把握できない。
不意に、息苦しさが緩和された。詰め込まれていた空気が入れ替わる清々しい感覚が全身を打つ。
「うわ、くさっ!」
明瞭にそんな声が聞こえて来た。内容はよくわからない。朦朧とした頭では理解出来ない。
どうやら、私は無事に宛先に届いたようだ。
彼の手が触れてくる。いままで無かった刺激に、敏感になっていた私の身体が勝手に跳ねる。
「おーい。大丈夫……?」
妙に心配しているらしい彼の声がおかしかった。こんなにしたのは彼だというのに。
目隠しを外された私は、イキ過ぎた影響か、霞む目で彼の顔を見た。
「んぁ……っ……ふぁい、ょうふ……」
タオルとボールギャグはまだ取れてないので、不明瞭な声しか出ない。
それでも意思は伝わったのか、彼は安心したような吐息を漏らし、それからカメラのシャッターが切られた。
(もう。撮られたくないって言ってるのに……)
それから伸びてきた指がタオルとボールギャグをずらした。
不自由なく呼吸が出来るようになった私は、ほっと一息吐く。
「その様子だと、凄く良かったみたいだね」
彼は苦笑いを浮かべているようだった。呆れるなんて酷いと思わないでもなかったけど、いまは浸っていたい。
「ありがと……すっごく、よかった……」
私が素直な気持ちを口にすると、彼はごくりと喉を鳴らす。
「いまの顔……凄くエロかった……ああ、くそっ。いまのこそ写真撮れば良かった!」
悔しそうな声を上げる彼。そんな恥ずかしいところを取られるところだった私としてはむしろ助かったけど。
私を箱の中から取り出して、シーツを引いたところに寝かせてくれた。
「とりあえず拘束を全部外しちゃうな」
一つ一つ拘束具が外されて行き、身体の中に埋め込まれていたバイブも抜かれた。
尿やその他の物で汚れていた身体は軽く濡れたタオルで拭いてもらい、綺麗な身体でのびのびと寝っ転がる。
この狭いところから戒めを解かれ、解放されたこの時間が最高に心地いい。
私は全裸のまま、道具や箱の片づけは彼に任せ、目を閉じる。
宅配プレイは気付かれたらどうしようというスリルは特有だけど、リスクを考えると何度も行いたいプレイではない。
彼と相談して次にするプレイはもっともっと興奮するものにしよう。
次はどんな箱詰めプレイをしようか――期待と楽しみはどこまでも尽きなかった。
箱詰め&輸送プレイ おわり