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名無し調教中。:
前スレらしきところで駄文を綴っていたものです。
6さんの世界をお借りして拙い妄想を語らせて頂きます。
無論、一切はフィクションです。
私の可愛い総合職 その1
ディスプレイの右下の数字が、21で点滅した。
これではマンションに戻る頃には11時をまわっているだろう。
溜まりきった下着の片付けは今日も諦めなくてはなるまい。
洗濯機の騒音に、階下の部屋から抗議にきた主婦の、神経質そうな顔を思い出して、
松下美雪はため息をついた。
調子のいい課長は、もう2時間も前に美雪に仕事を押し付けて退社してしまった。
同じ課の一般職の女の子達となると、さらにその一時間前にタイムカードを押している。
美雪をライバル視している四歳上の係長のみは、仕事も無いくせに8時過ぎまで自分の席
についてはいたが、
「女性の帰宅があまり遅くなるのはどんなものかな?松下君もほどほどにね」
などと、皮肉とも嫌がらせともつかぬ科白を残して、オフィスから消えていた。
ほんの数年前なら…
係長の嫌味を思い出して、美雪は苦笑いする。
ほんの数年前なら、係長の言葉は、美雪の闘志に火をつけたはずだ。
女性が、とか、女性なら、とか、性別で人を決め付ける発想には髪の毛一筋程の譲歩も肯
定も与えない。
女性を侮った人間には、その認識の愚かさを、容赦なく身を持って思い知らせる。
それが、松下美雪という人間だったはずだ。
私の可愛い総合職 その2
しかし、今はもうそんな気持ちにはなれない。
美雪がどれほど頑張ってみたところで、それは所詮、女性全体ではなく、美雪一人の評価
を上げることにしかならないということを思い知らされたからだ。
能天気な一般職の女子社員や、系列企業から送り込まれた我侭な派遣社員は、職場など気
に入った合コン相手を見つけるための社交場程度の認識しか持っていない。
仕事で認められようなどとは、毛頭考えていないのだ。
否、むしろ、能力を評価されて、仕事が増えてしまう事を迷惑がっている風さえある。
そして、女性たちがそのように役立たずであることを、男性もまた、望んでいるのだとい
う社会の現実が、入社7年目の美雪の目には、嫌になるほどはっきりとみえてしまってい
るのだ。
…私、何をやってきたんだろう?
ディスプレイに明滅するカーソルに、ぼんやりと視線をやりながら、自問する時間が増え
てきていた。
私の可愛い総合職 その3
「松下主任!」
思考を断ち切る声。
入り口に近いデスクの向こうに、綾瀬美玖の小柄なシルエットがあった。
「忘れ物しちゃいました」
問われていない問いに答えると、仔猫の様に笑った。
美玖は、美雪の会社に雇われているデータ入力専門のアルバイトである。
一見すると専門学校を卒業しているような年齢には見えない、すりきれたジーンズの似合
う、少年のような体つきだ。
しかし、作業の手際は良く、ミスも少ない。
無論、内容がどうこう言うほどの仕事ではないが、愛想のいい振る舞いと、幼くさえ見え
る笑顔で、男性からも女性からも可愛がられている、課内のマスコット的存在だった。
「…そう、大変だったわね」
口元に作って見せた微笑が、老女のもののように見えるだろうことに気づきながらも、
美雪はもう、それを繕う気持ちも持っていなかった。
何故なのかはわからない。
美雪は、この少女のようなアルバイターに好感を抱けなかった。
私の可愛い総合職 その4
別段に非礼があったという訳ではない。
否、むしろ課内唯一の総合職女性を、何かといえば嫌味や悪口の標的とする一般職の女子
社員が大半である中で、「恭謙」などという古い言葉が思い出されるようなへりくだった
態度を堅持し続けてきている彼女は、格別に礼儀正しいとさえ言えた。
言葉を知らない若い世代ゆえの、馴れた口調がないわけではないが、その様子は、体育会
系のサークルにおける、部長と新入部員のようだ、と揶揄交じりに同僚に評されたことさ
えあるほどなのだ。
にもかかわらず、美雪の心の中には、この娘との距離を縮める事を躊躇させる、なんらか
のひっかかりがある。
それが何なのか、は、美雪自身にもわからない。
「遅くなるとこのあたりも人気がなくなるし、若い女の子は気をつけなくては駄目よ」
「はーい。あ、でも、松下主任も、美人なんですから危ないですよお」
「私は大丈夫」
美玖への注意が、あの係長の言葉そのままであったことに気づいて、笑いに僅かに自嘲が
混じる。
「もう、オバサンだから」
口にしてから、しまった、と思う。
もう、おばさんだから
おばさんなんて、とんでもないですよお
あの不毛な、社交辞令のやり取りをすることになるだろう。
本当に下らない、言葉をもってしまった猿の儀式。
私の可愛い総合職 その5
「あああ!」
しかし、美雪の倦気含みの予想は、美玖の若い娘らしい、いささか慎みに欠ける悲鳴と、
リノリウムの床を叩く落下物の音で、消し飛んだ。
「なに、この紙袋!」
美玖は底の抜けた紙袋をくしゃくしゃにまるめて屑篭に放り込むと、まっすぐその場にし
ゃがみこんで、床に散乱してしまった「忘れ物」を拾い始めた。
若い女の子の動作は、例えそれが不注意に由来するものであっても、否、そうであればな
おの事、可愛らしく見える。
──私が同じことをやってしまったらどうだろうか?
美雪は、自答する。
年齢に似合わない、粗漏な行為とみなされるだろう。
総合職の松下さんでも、こんなミスをなさるんですね。
女子社員一人の口調が思い浮かぶ。
私が総合職だから、私がベテラン社員だから、
「あの、松下主任、すみません…」
美玖が、伺うような視線を美雪に投げかけている。
「ああ、御免なさい」
埒も無い想像を打ち切ると、美雪は椅子から降りた。
落し物のうちのひとつが、美雪の机の下に隠れてしまっているのだ。
でもこれ、なにかしら?
机と椅子の間、引出しの下にみえている落し物の一部に手を伸ばした。
私の可愛い総合職 その6
手にとったそれは──
20センチほどのピンク色の器具。
側部にスウィッチ。
男性の体の一部位をかたどった、しかし実際のそれには無い、怪しげな突起を散りばめら
れたグロテスクな形状。
「な…」
息を呑んだ。
声が詰まった。
「初めて見たんですか?」
凍りついたように身じろぎもできなくなってしまった美雪の頭上から、美玖の静かな声が
降って来た。
「いやだ、それじゃあ今でも指だけなんですか、松下主任」
常に変わらぬ明るい声に、しかし、これまで一度としてなかった、美雪を見下ろした響き
がある。
わたしのことを見抜いているのだ。
性体験の乏しさも。
どんなふうに夜を過しているのかも。
そしてどんな妄想に、指を熱く湿らせているのか、も
──いや、そうではない。
美玖は、思い付きを口にしているだけだ。
私の事など、何も知っている筈はない。
ああ、そうではなくて、どうしてここにこんな物が?
そうだ、それが問題なのだ。
「綾瀬さん」
声が震えなかったことは、美雪に自身の理性への信頼を回復させた。
──大丈夫だ。
私の理性は、こんなつまらないことに揺らぎはしない。
私の可愛い総合職 その7
「プライベートに口を挟むつもりは」
科白の後半は、美玖の口に吸い取られた。
う…む…と、声が言葉にならないのは、美雪の舌が、既に侵入してきていた美玖の舌に
からめとられていたからに他ならない。
何故、とか、まさか、とか、
浮び上る問いかけは、口元から広がり、全身を洗いはじめた快楽の波の中に泡沫のよう
にはじけ散った。
ブラウスの胸元をくつろげてゆく美玖の指を払いのける力が、両の腕にはもう宿らない。
指は、美雪のウェストを柔らかに撫でるようにして、さらに下へ──
こんなキスがあるのだろうか?
これまでに同衾したどんな男も与えてはくれなかった快感。
身体の内奥から呼び覚まされた官能が、耳朶を紅く染め、白い胸の鼓動を高める。
そして──
「ねえ、美雪さん」
ようやく舌を抜き取った美玖の声
耳にした事の無い、大人びた声
「本当にうぶだったのね。普通、この程度でこんなにはならないわ」
既にショーツの中に忍び込んでいた指を、美雪の鼻先につきつける。
「…いや」
濡れた指先が放つ、自分自身の女の匂いに、美雪は頬を紅潮させてかぶりをふった。
「こんなになったんじゃあ放って置く訳にもいかないけど、でも、私、女の子だし、
どうしてあげようもないわよね」
しかし、美玖のほっそりとした指先は、言葉とは裏腹に美雪の白い首筋を這って、新た
な疼きの源泉を湧き立たせつつあった。
私の可愛い総合職 その8
──からだが、あつい
理性は、懸命に肉体の制御を試みてはいたが、同時にそれが空しいものとなるであろう
こともまた、確信めいて予感された。
「ねえ、どうしたらいいですか、御指示を下さい松下主任?どうしたらいいですか、松
下主任、どうしたらいいですか、松下主任?」
身体をかぶせてきた美玖が、耳元で呪文をささやいた。
スカートは、何時の間にか足元に落ち、今や、美玖の右手首までもがショーツの中に潜
り込んでいる。
そうして、その先にある美雪の一番敏感な部分は、熱く熟れながら、指先に摘み取られ
る瞬間を待つばかりとなっているのだ。
──私は犯されている。
この子供のような年下の女に。
自分が全てを注ぎ込んできた、神聖な仕事の場所で。
男に伍するために獲得した肩書きを呼ばれながら。
「どうしたらいいですか、松下主任?」
美玖の声が遠くから聞こえる
耳の奥でこだまする。
私に女になれ、と。
「どうしてほしいの?言いなさい、美雪!!」
身体の最深部で、ピシリと何かが音を立てた。
「いいます、わ…私を行かせてください!」
間髪を入れず、美玖の指先は美雪の最後の誇りを蹂躙すべく、猟犬のように美雪の部分
に襲い掛かった。
今のは、砕けた音だ。
”松下美雪”が砕けた音だ。
突き上げてくる快感の奔流の中で、美雪はぼんやりとあの「音」の記憶を反復していた。
私の可愛い総合職 その9
それからのことは、美雪自身、後に追憶してみれば、熱に伏していたときの夢の様に頼
りなく、前後のつながりさえも定かではなかった。
にもかかわらず、イメージのみは鮮明だった。
美玖の紅い唇は、頤に、うなじに、胸元に、大腿に、そして美雪のもっとも敏感な部分
にまで這いまわり、女としての官能を発掘していった。
忍ぶように声を潜めていた美雪も、やがては高まりをそのまま言葉に写し、「女」その
ものの泣声をあげ始めた。
「声をあげなさい、もっと大きな」
命令されることが快感だと知った
従う事が愉悦だと思い知った。
「あなたは、私の奴隷、そうね」
「は、はい、そうです」
「私の言う事には、今後も絶対服従しなさい」
「します、し…します」
10歳近くも年下の娘の、しかし、信じ難いほどの妙技に秘唇を嬲りぬかれて、絶頂へ
と登りつめる道程で、美雪は幾度も、屈服の言葉を口にした。
隷従の誓いを宣した。
「美雪、あなたは私のもの、私の可愛いペットよ」
果てていくその瞬間、祝福を得た少女となった自分を、美雪は幻視した。